(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、食料品瓶詰用の捻りキャップに使用される捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物において、スチレン系エラストマー(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)、流動パラフィン(C)、および潤滑剤(D)を特定の組成として配合したことによって、食料品瓶詰用の捻りキャップに適したライナー材を得ることができたことに基づいて完成されたものである。
【0021】
従来より、スチレン系エラストマー、ポリプロピレン系樹脂、および流動パラフィンを配合したライナー材は、ペットボトル等の合成樹脂製キャップ、あるいはボトル缶や小口瓶等の金属製PPキャップのような飲料容器の小型キャップ(30φ程度の小径キャップ)に用いられていた。
【0022】
これに対して本発明は、例えば60±20φ程度の食料品瓶詰用の中径〜大径の捻りキャップを対象としている。
【0023】
そしてこのような捻りキャップは飲料容器の小型キャップとはライナー材の要求性能が全く異なり、設計思想や物性面でも相違する。本発明は、このような食料品瓶詰用の捻りキャップにおいて、成分(A)〜(D)を食料品瓶詰用の捻りキャップに特有の観点から検討し特定の組成で用いたことを特徴としている。
【0024】
すなわち、従来技術の飲料容器の小型キャップは、通常モールド成型され、
図1(b)に示すように、飲料ボトルキャップ本体101の密封面101aのライナー材102によるシール部はボトル缶口103の天部周辺を覆い被せる形状で、シール面積が広い。
【0025】
これに対して本発明のライナー材は、
図1(a)に示すように、捻りキャップ本体1の密封面1aにライナー材2がフラットにモールディングされ、シール面は瓶口3の天部のみでシール面積が少ない。
【0026】
そして
図1(b)に示すような従来技術は、小径にも関わらず100Kgf前後の大きな荷重を上方から掛けながら嵌合(巻き締め)させて、完全なシーリングを確保しているのに対し、本発明に用いられる食料品瓶詰用の捻りキャップは中径〜大径にも関わらず2〜5Nmの比較的小さなトルクで巻き締められる。そのため、瓶口部へのライナー材の食い込みには限界がある。
【0027】
従って、食料品瓶詰用の中径〜大径の捻りキャップのライナー材は、密封性確保のため、瓶口天部が食い込みやすい柔らかいガスケットであることが必要である。
【0028】
そして本発明の適用対象の食料品瓶詰製品は、高温殺菌処理が行われるのが通常で、そのためライナー材には耐熱性が要求される。従ってエラストマーやオレフィン樹脂は耐熱性が必要である。また本発明のライナー材は、中径〜大径の捻りキャップに用いられるため、開けやすいライナー材にする必要がある。従って潤滑剤の選定が重要になる。
【0029】
これらを考慮して設計した配合組成が本発明であり、本発明者らの検討によれば、耐熱性を確保するために分子量の大きいスチレン系エラストマーを用いたことで、少ない配合比で要求される耐熱性を確保できた。また、オレフィン樹脂として耐熱性確保の観点からポリプロピレン系樹脂を使用し、これも柔らかいライナー材とするために配合比を少なくしたにも関わらず耐熱性は確保できた。そして本発明では、ホワイトオイルは既存のライナー材に比べて配合量が多い。これはライナー材を柔らかくする目的があるが、大量に配合したにも関わらずライナー材への要求性能、特に耐熱性を損なわない配合が達成できた。さらに潤滑剤として高級脂肪酸アミド等を配合したことで、適正なトルクで開栓でき、内容物への潤滑剤の落ち込みのない捻りキャップを得ることができた。
【0030】
本発明の捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物に配合されるスチレン系エラストマー(A)は、スチレン重合体ブロックとエラストマーブロックとから構成され、スチレン含有量は30〜33質量%である。スチレン含有量がこの範囲内であると、ライナー材の耐熱性とエラストマーの弾性による密封性等を確保することができる。
【0031】
スチレン重合体ブロックに用いられるスチレンモノマーとしては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ビニルピリジン等を挙げることができる。中でも、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0032】
エラストマーブロックは、エチレン−ブチレン(EB)またはエチレン−エチレン−プロピレン(EEP:水素添加イソプレン構造)を含有する。
【0033】
ブロック構造としては、A:スチレン重合体ブロック、B:エラストマーブロックと表すと、A−B−A型等を用いることができ、1種単独でまたは2種以上のブレンドとして用いることができる。
【0034】
たとえば次の構造のSEEPS型、SEBS型を用いることができる。
【0036】
(式中、PSはポリスチレン単位、四角カッコ内はランダムコポリマーであり、mとnは1以上の整数を示す。)
【0038】
(式中、PSはポリスチレン単位、四角カッコ内はランダムコポリマーであり、mとnは1以上の整数を示す。)
これらは、スチレン重合体ブロック−エラストマーブロック−スチレン重合体ブロックの共重合体を得た後、これに水素添加して得られる水素添加変性物である。
【0039】
スチレン系エラストマー(A)は、230℃、2.16kg/10min(JIS K7210)におけるメルトフローレート(MFR)が0であり、高分子量の耐熱性に優れたパウダーである。この耐熱性に優れたパウダーを用いることで食料瓶詰製品の高温殺菌処理を可能としている。
【0040】
すなわち、この流動性のないブロック共重合体を用いることにより、ライナー材は室温では柔軟で、加温時のゴム弾性に特に優れている。130℃では圧縮応力があまり低下せず、その結果として130℃で30分間の加熱殺菌条件で、熱変形または熱収縮に起因する漏洩(液漏れ)が有効に抑制され、さらに保管時、取扱い時の落下に起因する漏洩もまた有効に抑制される。
【0041】
このスチレン系エラストマー(A)は、柔軟性を有し、低モジュラスで、弾性、耐熱耐候性、衛生性等にも優れ、ポリプロピレン系樹脂(B)や流動パラフィン(C)との相溶性も良好である。
【0042】
スチレン系エラストマー(A)は、比重が好ましくは0.88〜0.94、溶液粘度(5質量%トルエン溶液)が好ましくは20〜700mPa・sである。溶液粘度が低過ぎると成形時においてエラストマーに流動性が生じてしまう可能性があり、溶液粘度が高過ぎるとエラストマーが硬くなり、樹脂組成物として流動性、成形加工性が悪くなる傾向が生じる。
【0043】
本発明の捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物におけるスチレン系エラストマー(A)の含有量は、(A)、(B)、(C)の合計量に対して15〜30質量%である。スチレン系エラストマー(A)の含有量が少な過ぎると、ライナー材の弾性が失われて密封性が低下する。スチレン系エラストマー(A)の含有量が多過ぎると、ライナー材が脆くなり圧縮破断が起こりやすくなる。
【0044】
本発明の捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物に配合されるポリプロピレン系樹脂(B)は、加熱殺菌処理(例えば130℃)における圧縮応力を低下することなく、加熱成形性を付与することができる。
【0045】
一般にオレフィン系樹脂を配合することで加熱成形性を付与することができるが、食料瓶詰製品は、通常ホットパック(加熱充填)や充填後の高温加熱殺菌処理を行う場合が多い。従ってライナー材には耐熱性が要求されるため、オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂ではなくポリプロピレン系樹脂の使用が必須となる。
【0046】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンのホモ重合体、プロピレン(主成分)とエチレンおよび/または炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体を用いることができる。例えば、次の物性をもつポリプロピレン系樹脂を好ましく用いることができる。
MFR(230℃、2.16kg/10min JIS K7210):1〜60
比重:0.89〜0.92
硬度(ロックウェル R型):80〜120
熱変形温度(0.45MPa、ASTM D648):70〜110℃
MFRが上記のような範囲にあると、捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物の成形性が良く、また捻りキャップとしての耐熱密封性と耐衝撃性にも優れている。
【0047】
本発明の捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物におけるポリプロピレン系樹脂の含有量は、(A)、(B)、(C)の合計量に対して5〜25質量%である。ポリプロピレン系樹脂の含有量をこの範囲内とすることで、コンパウンドの硬度、抗張力、耐熱性等をバランス良く得ることができる。ポリプロピレン系樹脂の含有量が少な過ぎるとライナー材として造膜できない場合があり、造膜できたとしても脆くて抗張力が劣り、瓶への巻締め時や殺菌処理時等に破断が起こる場合がある。ポリプロピレン系樹脂の含有量が多過ぎると硬度が高くなり過ぎて瓶口への食い込みが悪くなり密封性が劣ってくる。
【0048】
本発明の捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物に配合される流動パラフィン(C)は、スチレン系エラストマー(A)やポリエチレン系樹脂(B)と相溶してモールド成型を可能とする。
【0049】
すなわち流動パラフィン(C)は柔軟性および加熱成形性を付与し、また他の油剤と比較して無味、無臭であるので食品内容物のフレーバーへの影響が極めて少なく有効である。
【0050】
流動パラフィン(C)は比較的軽質の潤滑油留分、例えばスピンドル油留分を硫酸洗浄によって高度に精製した炭化水素油であり、無色無臭で揮発性が低く主としてアルキルナフテン類から構成され、白油(ホワイトオイル)とも称されている。
【0051】
特に、薬用クラスの精製流動パラフィンの性状は6局に規定されているが(d 0.860〜0.905:1987年2月15日 共立出版株式会社発行、化学大辞典9 第749頁参照)、内容物が食料品であることから、このような精製流動パラフィンは特に適している。
【0052】
流動パラフィン(C)の動粘度は、耐熱性、ブリードや内容物への溶出の抑制、成形加工性等を考慮すると、好ましくは20〜70mm
2/s(40℃)である。
【0053】
流動パラフィン(C)の含有量は、(A)、(B)、(C)の合計量に対して45〜65質量%である。含有量をこの範囲内とすることで、捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物の流動性および硬度を中心とした物性を適切な範囲にすることができる。
【0054】
本発明の捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物には潤滑剤(D)が配合される。捻りキャップの開栓トルクは、一般にキャップ径(cm)×2/4±1/4N・mとされるが、潤滑剤(D)を配合することで、開栓トルクをこの範囲内にすることができる。
【0055】
潤滑剤(D)としては、高級脂肪酸アミドやシリコーンオイルが主に配合される。これらを配合することで、ライナー材の表面に潤滑剤(D)がブリードすることにより捻りキャップの開け締めを滑らか(適度のトルク)にすることができる。好ましい構成では、潤滑剤(D)は、(A)、(B)、(C)の合計量に対して高級脂肪酸アミド0.5〜2.0質量%、シリコーンオイル1.0〜8.0質量%を含有する。
【0056】
高級脂肪酸アミドは潤滑性に優れ、開栓トルクを低減する作用は大きいが、ライナー材表面へのブリード量が多いと、高級脂肪酸アミドが内容物へ落ち込む場合や、さらにフレーバーに悪影響を及ぼす場合がある。このような点を考慮すると、高級脂肪酸アミドの含有量は、(A)、(B)、(C)の合計量に対して好ましくは0.5〜2.0質量部である。
【0057】
高級脂肪酸アミドとしては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリル酸アミド、メチレンビスステアリルアミド、エチレンビスラウリルアミド、ステアリルオレイルアミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド等を挙げることができる。中でも、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドが好ましい。
【0058】
シリコーンオイルは、ライナー材表面に滑らかさを付与し、捻りキャップの締まり性を向上させることができる。シリコーンオイルの含有量は、(A)、(B)、(C)の各成分の配合割合にもよるが、ライナー材表面に滑らかさを付与することと、流動パラフィンの多い場合でもブリードを抑制し内容物のフレーバーの低下を抑制すること等を考慮すると、(A)、(B)、(C)の合計量に対して好ましくは1.0〜8.0質量%である。
【0059】
シリコーンオイルとしては、食品衛生や捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物への混合性、分散性等を考慮すると、動粘度100〜10000mm
2/s(20℃)のものが好ましく、より具体的には、このような範囲の動粘度をもつジメチルシリコーンオイルやメチルフェニルシリコーンオイル等が好適である。
【0060】
本発明の捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物には、その効果を損なわない範囲内において他の添加剤を配合することができる。このような他の添加剤としては、例えば、顔料、バリヤー材、酸化防止剤等を挙げることができる。
【0061】
顔料は、ライナー材の着色のために添加され、例えば酸化チタンを用いることができる。酸化チタンの含有量は、例えば(A)、(B)、(C)の合計量に対して0.5〜1.0質量%とすることができる。
【0062】
バリヤー材は、ライナー材のガス透過性の改良のために添加され、例えばイソプレン系エラストマー等を用いることができる。イソプレン系エラストマーの含有量は、例えば、(A)、(B)、(C)の合計量に対して20〜30質量%である。
【0063】
酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトール「3−(3,3−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート」等を用いることができる。
【0064】
本発明の捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物は、(A)、(B)、(C)、(D)等の各成分を公知の方法、例えば、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー等で混合後、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等で溶融混練し、造粒、粉砕等をすることにより調製することができる。
【0065】
本発明の食料品瓶詰用の捻りキャップは、上記のようにして調製した捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物を食料品瓶詰用の捻りキャップ本体における瓶口との密封面に塗布し硬化することにより製造することができる。
【0066】
例えば、捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物を加熱溶融押出機でキャップ本体内面に一定量押出し、冷却下に型押しする方法を用いることができる。
【0067】
捻りキャップ本体としては、ポリプロピレン系樹脂粉末を含有するエポキシフェノール系塗料が瓶口との密封面に塗装されたものが好ましく用いられる。キャップ内面への塗装に通常用いられるエポキシフェノール系塗料は、耐食性を有しているが、本発明の捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物によるライナー材との十分な接着を得ることができない。しかしエポキシフェノール系塗料にポリプロピレン系樹脂粉末を配合することで、モールド成型時に互いのポリプロピレン系樹脂が融合一体化して強力な接着が得られ、ライナー材との強固な接着を確保することができる。また耐食性も劣化することがない。
【0068】
ポリプロピレン系樹脂粉末としては、酸変性ポリプロピレン系樹脂を用いることができる。ポリプロピレン系樹脂粉末の含有量は、エポキシフェノール系塗料(ポリプロピレン系樹脂粉末を含む)の全量に対して5〜20質量%が好ましい。
【0069】
なお、汎用されている塩化ビニルプラスチゾルによるライナー材の場合、塩化ビニル系塗料としか接着しないため塩化ビニル系塗料が使用されるが、塩化ビニル系塗料の耐食性は本来弱く、さらにライナー材の硬化焼き付け時に、塩化ビニルプラスチゾル中の可塑剤で塗膜を溶融して接着するので、可塑剤に溶融された周辺の耐食性は一層低下するが、上記のポリプロピレン系樹脂粉末を含有するエポキシフェノール系塗料と本発明の捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物によるライナー材との組み合わせによれば、耐食性は劣化することがない。
【0070】
捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物の硬化により捻りキャップ本体における瓶口との密封面に形成されるライナー材のJIS A硬度は、好ましくは20〜60である。硬度が小さ過ぎると反発弾性が低下し、硬度が大き過ぎると硬く瓶口に食い込み難くなり密封性や耐衝撃性が低下する。
【実施例】
【0071】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
次の各成分を表1に示す配合量(質量部)で配合し、捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物を調製した。
(スチレン系エラストマー)
エラストマーブロックとしてエチレン−エチレン−プロピレン(EEP)を含有するスチレン系エラストマー(SEEPS型)、スチレン含有量30質量%、比重0.91、MFR0、5質量%トルエン溶液の粘度670mPa・s(30℃)
(ポリプロピレン系樹脂)
密度0.9、230℃、MFR24
(流動パラフィン)
株式会社松村石油研究所、動粘度68mm
2/s(40℃)
(潤滑剤)
オレイン酸アミド、ライオン・アクソ株式会社
エルカ酸アミド、ライオン・アクソ株式会社
シリコーンオイル、信越化学工業株式会社、動粘度350mm
2/s(25℃)
(顔料)
酸化チタン、堺化学工業株式会社
なお、スチレン系エラストマーとポリプロピレン系樹脂のMFRは、株式会社安田精機製作所製のメルトインデックステスターを用いて、230℃、2.16kg/10minの条件で測定した値である。
【0072】
スチレン系エラストマー30質量部、ポリプロピレン系樹脂15質量部、流動パラフィン55質量部、オレイン酸アミド0.5質量部、エルカ酸アミド0.5質量部、シリコーンオイル5質量部、酸化チタン0.6質量部をニーダーで180℃×80分間混練溶融して捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物(コンパウンド)を得た。
【0073】
この捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物について次の評価を行った。
[硬度]
捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物を190℃に加熱したホットプレスで硬化し2mm厚のシートを作製した。このシートの硬度をJIS K6301 TYPE A硬度計を用いて25℃で測定した。
[抗張力・伸び]
捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物を190℃に加熱したホットプレスで硬化し2mm厚のシートを作製した。このシートの抗張力を(株)東洋精機製作所製STROGRAPH VE5D型を用いてJIS K6251に従って測定した。
【0074】
具体的には試験片形状:ダンベル状3号形、引張速度:500mm、測定温度:25℃で測定を行い、500%伸び時の抗張力が2MPa以上を○とし、これ未満を×として評価した。なお、伸びが500%に至らず途中で破断するものは×とした。
[実瓶試験]
捻りキャップ用ライナー材樹脂組成物のライナー材としての性能評価を行うため、62φスクリュウキャップにホットプレスで0.8mm厚のシーリングガスケットを成形し実瓶試験に供した。
【0075】
なお、シーリングガスケットを積層するキャップ本体の密封面側には酸変性ポリプロピレン系樹脂粉末を配合したエポキシフェノール系塗料を塗装した。
【0076】
市販ジャム瓶に80℃の温水を充填してキャップを3.5N・mのトルクで巻き締め、90℃×60分の湯没殺菌処理と118℃×80分の加圧殺菌処理を行い、冷却後5℃、RTおよび38℃に40日間貯蔵し、その後、密封性(真空度)、開栓性(開栓トルク)、ライナー材の状態を次の基準により評価した。なお、真空度は横山計器(株)製VACUUM CANTESTER(日本缶詰協会取扱検査器具)を用いて25℃で測定し、開栓トルクはシンポ工業社製トルクメーター(MODELTNK−100B)を用いて測定した。
(真空度)
○:真空度が20kPa以上
×:真空度が20kPa未満
(開栓トルク)
○:開栓トルクが1.6〜4.6N・m
×:上記以外
(ライナー材の状態)
○:瓶口天リム部のライナー材への食い込み跡が正常である。
×:食い込みが浅過ぎるかまたは深過ぎ、あるいはライナー材の破断や軟化によるタレ等が発生する。
<実施例2>
実施例1において、スチレン系エラストマーを15質量部に、ポリプロピレン系樹脂を25質量部に、流動パラフィンを60質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様に処理してA硬度と抗張力の測定、および実瓶試験による評価を行った。
<実施例3>
実施例1において、ポリプロピレン系樹脂を5質量部に、流動パラフィンを65質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様に処理してA硬度と抗張力の測定、および実瓶試験による評価を行った。
<実施例4>
実施例1において、スチレン系エラストマーを20質量部に、ポリプロピレン系樹脂を25質量部に、流動パラフィンを55質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様に処理してA硬度と抗張力の測定、および実瓶試験による評価を行った。
<実施例5>
実施例1において、ポリプロピレン系樹脂を25質量部に、流動パラフィンを45質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様に処理してA硬度と抗張力の測定、および実瓶試験による評価を行った。
<実施例6>
実施例1において、スチレン系エラストマーを20質量部に、流動パラフィンを65質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様に処理してA硬度と抗張力の測定、および実瓶試験による評価を行った。
<実施例7>
実施例5において、スチレン系エラストマーをエラストマーブロックとしてエチレン−ブチレン(EB)を含有するスチレン系エラストマー(SEBS型:スチレン含有量33質量%、比重0.92、MFR0、5質量%トルエン溶液の粘度42mPa・s(30℃))に変更した。それ以外は実施例5と同様に処理してA硬度と抗張力の測定、および実瓶試験による評価を行った。
<比較例1>
実施例1において、スチレン系エラストマーを10質量部に、ポリプロピレン系樹脂を25質量部に、流動パラフィンを65質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様に処理してA硬度と抗張力の測定、および実瓶試験による評価を行った。
<比較例2>
実施例1において、スチレン系エラストマーを50質量部に、ポリプロピレン系樹脂を5質量部に、流動パラフィンを45質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様に処理してA硬度と抗張力の測定、および実瓶試験による評価を試みた。しかし、この配合組成はニーダー混練工程で溶融混練できずパサパサの状態となり、後工程に進めなかった。これはポリプロピレン系樹脂の割合が少ないことに起因すると考えられる。
<比較例3>
実施例1において、スチレン系エラストマーを20質量部に、ポリプロピレン系樹脂を30質量部に、流動パラフィンを50質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様に処理してA硬度と抗張力の測定、および実瓶試験による評価を行った。
<比較例4>
実施例1において、スチレン系エラストマーを40質量部に、ポリプロピレン系樹脂を20質量部に、流動パラフィンを40質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様に処理してA硬度と抗張力の測定、および実瓶試験による評価を行った。
<比較例5>
実施例1において、スチレン系エラストマーを25質量部に、ポリプロピレン系樹脂を5質量部に、流動パラフィンを70質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様に処理してA硬度と抗張力の測定、および実瓶試験による評価を行った。
<比較例6>
実施例5において、スチレン系エラストマーをエラストマーブロックとしてエチレン−プロピレン(EP)を含有するスチレン系エラストマー(スチレン含有量20質量%、比重0.89、MFR0、5質量%トルエン溶液の粘度40mPa・s(30℃))に変更した。それ以外は実施例5と同様に処理したが、ニーダー混練工程で均一な混練ができず流動パラフィンが表面に浮いた状態となり後工程に進めなかった。これはエラストマーの吸油量が少ないことに起因すると考えられる。
<比較例7>
実施例5において、スチレン系エラストマーをエラストマーブロックとしてエチレン−プロピレン(EP)を含有するスチレン系エラストマー(スチレン含有量35質量%、比重0.92、MFR0、5質量%トルエン溶液の粘度27mPa・s(30℃))に変更した。それ以外は実施例5と同様に処理したが、比較例6と同様の現象によりライナー材として不適当と判断し、後工程へ進めなかった。
<比較例8>
汎用エポキシフェノール系塗料(ポリプロピレン系樹脂粉末を含有しないエポキシフェノール系塗料)をキャップ本体の密封面側に塗装し、実施例1のライナー材を用いてこのキャップにモールド成型を行った。それ以外は実施例1と同様に処理してA硬度と抗張力の測定、および実瓶試験による評価を行った。
【0077】
評価結果を表1、表2に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】