特許第5774945号(P5774945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774945
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】メカニカルシール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   F16J15/34 L
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-187484(P2011-187484)
(22)【出願日】2011年8月30日
(65)【公開番号】特開2013-50141(P2013-50141A)
(43)【公開日】2013年3月14日
【審査請求日】2014年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤永 繁行
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 貴倫
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−185976(JP,A)
【文献】 特開昭63−026465(JP,A)
【文献】 実開昭54−115450(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J15/34 −15/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に一体回転可能に固定された回転密封環と、
前記回転密封環同心に配置され、当該回転密封環の回転側シール面が摺動可能に密接した静止側シール面を有するとともに、複数の円弧状の分割体を環状に組み合わせてなる静止密封環と、
前記静止密封環を保持するとともに前記静止密封環を前記回転密封環に向けて付勢するための弾性部材を保持し、前記静止密封環とともに前記回転密封環に向けて付勢されている環状のリテーナと、を備え、
前記リテーナは、ケーシングに固定されるとともに前記静止密封環が当接しているフランジ部を有するリテーナ本体と、前記静止側シール面側から前記静止密封環を前記フランジ部に向けて締め付け挟持することで当該静止密封環を保持している環状の押さえ部材と、を備え、
前記静止密封環は、前記静止側シール面に対して軸方向反対側の背面が前記フランジ部に当接しており、
前記回転軸と、前記ケーシングとのすき間を密封するメカニカルシールにおいて、
前記フランジ部には、前記静止密封環が当接するとともに、前記回転密封環に向かって漸次拡径するように傾斜するテーパ面が形成されており、
前記静止密封環の前記背面には、前記フランジ部のテーパ面に一致して当接可能なテーパ面が形成されており、
前記フランジ部に形成されたテーパ面と、前記背面に形成されたテーパ面との間には、これらの間を密封する弾性材料からなる環状のシール部材が配置されていることを特徴とするメカニカルシール。
【請求項2】
前記静止密封環は、その軸方向に沿う断面が、当該静止密封環を軸方向に二分する中心線に対して線対称となる形状に形成されている請求項1に記載のメカニカルシール。
【請求項3】
前記シール部材は、前記静止側シール面と径方向においてほぼ一致する位置に設けられている請求項1に記載のメカニカルシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割型の密封環を用いた端面接触型のメカニカルシールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転軸とケーシングとのすき間を密封するために、回転軸に固定された回転密封環と、ケーシング側に固定され前記回転密封環の密封端面に摺接する静止密封環とを備えたメカニカルシールが用いられることがある。このようなメカニカルシールには、分解組立を容易とするため、静止密封環に、複数の円弧状の分割体を環状に組み合わせて構成された分割型の密封環を採用したものがある。
図4に示すように、上記メカニカルシールにおいて、分割型の静止密封環100は、ケーシング(図示省略)に固定されたスプリングリテーナ101に固定されており、その一端面100aが回転密封環102のシール面102aに摺動可能に接触している。また、静止密封環100は、外周面100bがケーシング側に向かって漸次拡径するテーパ面とされている。
【0003】
スプリングリテーナ101は、静止密封環100を回転密封環102に付勢するためのスプリング(図示せず)を固定するための部材であり、静止密封環100の他端面100cが当接しているフランジ部103aを有するリテーナ本体103と、フランジ部103aとの間で静止密封環100を挟持している環状の押さえ板104とを備えている。
押さえ板104は、静止密封環100の外周面100bに当接した当接面104aを有している。当接面104aは、ケーシング側に向かって漸次拡径するテーパ面とされている静止密封環100の外周面100bに当接しているので、押さえ板104がリテーナ本体103に近づくように軸線方向に締め付けられることで、静止密封環100には、縮径される方向の力が作用するとともに、フランジ部103aに押し付けられる方向の力が作用する。
これによって、静止密封環100は、フランジ部103aに押し付けられるとともに、各分割体が突き合わされている突き合わせ面が互いに押圧された状態で、リテーナ本体103と押さえ板104との間で挟持される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−251376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のメカニカルシールでは、分割型の静止密封環100をリテーナ本体103と、押さえ板104とによって挟持して固定しているので、例えば、押さえ板104の締め付けが不均一であると、静止密封環102を構成している分割体に歪が生じ、各分割体の突き合わせ面にすき間が生じて密封性を低下させることがあった。
また、押さえ板104の締め付けが不十分であると、静止密封環100に作用する縮径される方向の力が弱くなるので、上記同様に各分割体の突き合わせ面にすき間が生じ、密封性を低下させることがあった。
【0006】
さらに、押さえ板104の締め付けが適度であったとしても、当該押さえ板104の締め付け方向と、静止密封環100が付勢されて摺接している回転密封環102からの反力の方向とが同じであるため、経時変化によって静止密封環100が変形し押さえ板104の締め付けが弱まった場合、静止密封環100に作用する縮径される方向の力も弱まり、密封性を低下させることも考えられる。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、高い密封性を長期に亘って維持することができるメカニカルシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転軸に一体回転可能に固定された回転密封環と、前記回転密封環同心に配置され、当該回転密封環の回転側シール面が摺動可能に密接した静止側シール面を有するとともに、複数の円弧状の分割体を環状に組み合わせてなる静止密封環と、前記静止密封環を保持するとともに前記静止密封環を前記回転密封環に向けて付勢するための弾性部材を保持し、前記静止密封環とともに前記回転密封環に向けて付勢されている環状のリテーナと、を備え、前記リテーナは、ケーシングに固定されるとともに前記静止密封環が当接しているフランジ部を有するリテーナ本体と、前記静止側シール面側から前記静止密封環を前記フランジ部に向けて締め付け挟持することで当該静止密封環を保持している環状の押さえ部材と、を備え、前記静止密封環は、前記静止側シール面に対して軸方向反対側の背面が前記フランジ部に当接しており、前記回転軸と、前記ケーシングとのすき間を密封するメカニカルシールにおいて、前記フランジ部には、前記静止密封環が当接するとともに、前記回転密封環に向かって漸次拡径するように傾斜するテーパ面が形成されており、前記静止密封環の前記背面には、前記フランジ部のテーパ面に一致して当接可能なテーパ面が形成されており、前記フランジ部に形成されたテーパ面と、前記背面に形成されたテーパ面との間には、これらの間を密封する弾性材料からなる環状のシール部材が配置されていることを特徴としている。
【0009】
上記構成のメカニカルシールによれば、静止密封環を締め付けるフランジ部に、回転密封環に向かって漸次拡径するように傾斜するテーパ面が形成されており、静止密封環の背面に、フランジ部のテーパ面に一致して当接するテーパ面が形成されているので、静止密封環が、押さえ部材によってフランジ部に向けて締め付け押圧されると、静止密封環には縮径される方向に力が作用する。これにより、各分割体の突き合わせ面が互いに周方向に押圧され、当該突き合わせ面にすき間が生じるのを防止することができる。また、静止密封環は、フランジ部側に押圧されることにより縮径される方向の力が作用するので、静止密封環を付勢したときに作用する回転密封環からの反力と同じ軸線方向の力によって縮径することとなる。よって、経時変化によって、押さえ部材の締め付けが低下したとしても、静止密封環を付勢したときの回転密封環からの反力によって、静止密封環には、縮径する方向の力が作用し、各分割体の突き合わせ面にすき間が生じるのを防止することができる。
さらに、押さえ部材の締め付けによって互いに押圧し合う、前記フランジ部に形成されたテーパ面と、静止密封環の背面に形成されたテーパ面との間には、これらの間を密封する環状のシール部材が配置されているので、仮に、隣接する分割体の間で軸方向に位置ずれが生じて、静止密封環のテーパ面に段差が生じたとしても、前記段差に起因して静止密封環の背面側にすき間が生じるのを、弾性材料からなるシール部材によって防止することができる。また、フランジ部のテーパ面と、静止密封環のテーパ面とは、静止密封環を付勢したときに回転密封環から静止密封環に作用する反力によっても互いに押圧し合うので、経時変化によって、押さえ部材の締め付けが低下したとしても、静止密封環を付勢したときの反力によって、シール部材を両面間で押圧保持することができ、当該シール部材の密封性が低下するのを防止できる。
以上のように、本発明のメカニカルシールによれば、分割型の静止密封環において、各分割体の間にすき間が生じるのを確実に防止するとともに、静止密封環の背面とリテーナとの間にすき間が生じるのを確実に防止することができるので、長期に亘って高い密封性を維持することができる。
【0010】
上記メカニカルシールにおいて、前記静止密封環は、その軸方向に沿う断面が、当該静止密封環を軸方向に二分する中心線に対して線対称となる形状に形成されていてもよい。
この場合、静止密封環を軸方向に反転させ、背面側を静止側シール面として使用することができる。このため、何らかの原因により静止側シール面が使用できなくなったとしても、背面側を静止側シール面として使用するといった応急的対応が可能になる。
【0011】
また、上記メカニカルシールにおいて、前記シール部材は、前記静止側シール面と径方向においてほぼ一致する位置に設けられていることが好ましく、この場合、シール部材を、回転密封環からの反力が直接作用する静止側シール面と径方向にほぼ一致する位置に設けることができる。これにより、フランジ部に形成されたテーパ面と、静止密封環の背面に形成されたテーパ面との間でシール部材を確実に押圧し、両者に密接させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長期に亘って高い密封性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るメカニカルシールの断面図である。
図2】静止密封環を軸方向正面から見たときの外観図である。
図3図1中、静止密封環を拡大した部分断面図である。
図4】従来のメカニカルシールの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るメカニカルシールの断面図である。
図1中、メカニカルシール1は、上下水道等の水処理施設に用いられるポンプに装着されており、当該ポンプのポンプケースCと、ポンプケースCの開口c1を貫通して配置されているポンプ軸Sとの間のすき間を密封している。
上記メカニカルシール1は、回転軸としてのポンプ軸Sに一体回転可能に固定された回転密封環2と、回転密封環2のシール面2aが摺動可能に密接した静止密封環3と、この静止密封環3を保持しているスプリングリテーナ4とを備えている。
【0015】
回転密封環2は、ストッパリング5を介してポンプ軸Sに一体回転可能に固定されている。ストッパリング5は、径方向に貫通して形成されたねじ孔5aに螺合されている固定ねじ6をポンプ軸Sに向けて締め込むことで、ポンプ軸Sに対して一体回転可能にかつ、軸方向に移動しないように固定されている。
回転密封環2は、ストッパリング5の軸方向ポンプケースC側に配置されている。回転密封環2のストッパリング5側の端面には、ストッパリング5の端面に突設されたストッパピン7が挿入された孔部2bが形成されている。回転密封環2は、このストッパピン7によってストッパリング5と一体回転可能に連結され、ポンプ軸Sに対して一体回転可能とされている。
回転密封環2の内周側には、当該回転密封環2の内周面とポンプ軸Sの外周面との間をシールするOリング8が配置されている。
また、回転密封環2のシール面2aは、静止密封環3よりも硬質な素材、例えばアルミナ等のセラミックスを溶射等によって回転密封環2の端面に形成した環状の硬質層9を端面側に露出させることによって構成されている。
【0016】
スプリングリテーナ4は、ポンプケースCの開口c1に軸方向移動可能に挿入されており、静止密封環3を保持するとともに、静止密封環3を回転密封環2に向けて付勢するためのスプリング10を保持している。
スプリングリテーナ4は、リテーナ本体11と、環状の押さえ板12とを備えている。リテーナ本体11は、ポンプ軸Sの外周側に配置されるとともにポンプケースCの開口c1に挿入された筒状部11aと、この筒状部11aのポンプケースCの軸方向外側に位置する端部から径外方向に延び、押さえ板12との間で静止密封環3を保持している環状のフランジ部11bとを有している。
【0017】
ポンプケースCの開口c1には、ポンプケースCの外側面c2における開口c1端縁の周囲を覆う環状プレート13aを有するスリーブ13が、開口c1の内周面に内嵌されている。このスリーブ13は、環状プレート13aがボルト14によって外側面c2に密接するように固定されることで、ポンプケースCに固定されている。環状プレート13aには、スリーブ13と、ポンプケースCとの間を密封するためのOリング15が配置されている。
リテーナ本体11の筒状部11aは、上記スリーブ13を介在して開口c1において軸方向移動可能に挿入されている。また、筒状部11aの外周面側には、筒状部11aの外周面とスリーブ13の内周面とを密封するためのOリング16が配置されている。
【0018】
リテーナ本体11のフランジ部11bには、スプリング10を保持するための孔部11b1が形成されている。スプリング10は、孔部11b1によってその軸線方向がポンプ軸Sと平行に保持されている。スプリング10は、一端面が環状プレート13aに当接するとともに、他端面がスプリング受け部材18に当接している。スプリング受け部材18は、押さえ板12に固定された調整ボルト17によって軸方向の位置が調整可能であり、スプリング10は、このスプリング受け部材18によって軸方向に弾性的に圧縮された状態とされている。これによって、スプリング10は、スプリングリテーナ4を、当該スプリングリテーナ4に保持された静止密封環3とともに回転密封環2に向けて付勢している。
【0019】
また、フランジ部11bには、当該フランジ部11bの外周面側と内周面側とを連通しているフラッシング用流路19が形成されている。フラッシング用流路19は、リテーナ本体11の外部から内周面側に向けて、静止密封環3の内周面側の洗浄及び冷却のためのフラッシング用の流体を導入するために設けられている。
【0020】
押さえ板12は、ボルト20によってフランジ部11bに固定されており、フランジ部11bとの間で、静止密封環3を締め付け挟持することで当該静止密封環3を保持している。
【0021】
スプリングリテーナ4に保持された静止密封環3は、カーボン、又はその他の材料を主成分として形成した部材である。静止密封環3は、回転密封環2に同心に配置され、回転密封環2のシール面2aが摺動可能に密接したシール面3aを有している。
図2は、静止密封環3を軸方向正面から見たときの外観図である。図2に示すように、静止密封環3は、2つの円弧状の分割体3bを環状に組み合わせて構成されている。
静止密封環3は、上記二つの分割体3bを環状に組み合わせた状態で、スプリングリテーナ4に保持され、回転密封環2に密接した状態で、当該回転密封環2に向けて付勢されている。
【0022】
図3は、図1中、静止密封環3を拡大した部分断面図である。静止密封環3には、図に示すように、当該静止密封環3の外周面側から軸方向先端側(シール面3a側、及びシール面3aと軸方向反対側の背面側の双方)に向かって漸次縮径している外側テーパ面3cと、静止密封環3の内周面側から軸方向先端側(同上)に向かって漸次拡径している内側テーパ面3dとが、その両側に形成されている。
これら外側テーパ面3c及び内側テーパ面3dは、両側で共にほぼ同一の寸法で形成されている。このため、静止密封環3は、軸方向に沿う断面(長手方向の切断面)における輪郭形状が、当該静止密封環3を軸方向に二分する中心線に対してほぼ線対称となる形状に形成されている。
【0023】
上述のシール面3aは、静止密封環3において回転密封環2側に形成された外側テーパ面3cと内側テーパ面3dとが繋がっている先端部に形成されている。このシール面3aは、回転密封環2のシール面2aに径方向に一定の幅寸法で面接触することで密接している。
静止密封環3における、シール面3a側の外側テーパ面3cと内側テーパ面3dとが繋がる先端部は、当該静止密封環3を形成した時点では、先鋭な状態であり、シール面2aに対して面接触しうるシール面3aは形成されていない。静止密封環3は、メカニカルシールとして使用される前に、メカニカルシール1に組み込まれた状態で、回転密封環2のシール面2aに対して、通常付勢される所定圧力よりも高い圧力で押し付けて当たりを付け(焼付け工程を実施し)、シール面3aを形成する。これによって、静止密封環3を構成している分割体3b同士の突き合わせ部分に段差等が生じていたとしても、焼付け後には段差の無い平坦なシール面3aが形成される。但し、焼付け後も、外側テーパ面3c及び内側テーパ面3dの内、シール面3a以外の焼付けられていない他の部分には、段差が残存していることがある。
【0024】
シール面3a側の外側テーパ面3cには、静止密封環3をフランジ部11bとの間で挟持している押さえ板12が当接している。
一方、静止密封環3における、シール面3aと軸方向反対側の背面に形成された外側テーパ面3cには、フランジ部11bのテーパ面11b2が当接している。
テーパ面11b2は、回転密封環2に向かって漸次拡径するように傾斜してフランジ部11bに形成されている。
静止密封環3の背面側の外側テーパ面3cは、フランジ部11bのテーパ面11b2に一致して当接可能に形成されている。
【0025】
また、背面側の外側テーパ面3cと、フランジ部11bのテーパ面11b2との間には、Oリング30が配置されている。
このOリング30は、ブチルゴム等の弾性材料を用いて形成されており、背面側の外側テーパ面3cに形成された環状溝31に配置されている。環状溝31は、シール面3aと径方向においてほぼ一致する位置に設けられている。よって、この環状溝31に配置されるOリング30も、同様の位置に配置されている。
【0026】
Oリング30は、背面側の外側テーパ面3cと、フランジ部11bのテーパ面11b2とが当接している状態で、弾性的に圧縮され、環状溝31の内側面と、フランジ部11bのテーパ面11b2とに密着し、背面側の外側テーパ面3cと、フランジ部11bのテーパ面11b2との間を密封している。
【0027】
上記のように構成された本実施形態のメカニカルシール1によれば、静止密封環3を締め付けるフランジ部11bに、回転密封環2に向かって漸次拡径するように傾斜するテーパ面11b2が形成されており、静止密封環3の背面に、フランジ部11bのテーパ面11b2に一致して当接する外側テーパ面3cが形成されているので、静止密封環3が、押さえ板12によってフランジ部11bに向けて締め付け押圧されると、静止密封環3には縮径される方向に力が作用する。これにより、各分割体3bの突き合わせ面が互いに周方向に押圧され、各分割体3bの突き合わせ面にすき間が生じるのを防止することができる。また、静止密封環3は、フランジ部11b側に押圧されることにより縮径される方向の力が作用するので、静止密封環3を付勢したときに作用する回転密封環2からの反力と同じ軸線方向の力によって縮径することとなる。よって、経時変化によって、押さえ板12の締め付けが低下したとしても、静止密封環3を付勢したときの回転密封環2からの反力によって、静止密封環3には、縮径する方向の力が作用し、各分割体3bの突き合わせ面にすき間が生じるのを防止することができる。
【0028】
また、組み付け不良等により、隣接する分割体3bの間で軸方向に位置ずれが生じて、背面側の外側テーパ面3cに段差が生じることがある。ここで、静止密封環3の背面と、フランジ部11bのテーパ面11b2との間をシールするために、例えば液体パッキンを用いた場合には、液体パッキンの背面への塗布状態によっては、前記段差に起因して静止密封環3の背面側にすき間が生じるのを防止することができないことがある。
【0029】
この点、本実施形態のメカニカルシール1では、押さえ板12の締め付けによって互いに押圧し合う、フランジ部11bに形成されたテーパ面11b2と、静止密封環3の背面に形成された外側テーパ面3cとの間には、これらの間を密封する環状のOリング30が配置されているので、上述の段差に起因して静止密封環3の背面側にすき間が生じるのをOリング30の自封性によって防止することができる。また、フランジ部11bのテーパ面11b2と、静止密封環3の外側テーパ面3cとは、静止密封環3を付勢したときに回転密封環2から静止密封環3に作用する反力によっても互いに押圧し合うので、経時変化によって、押さえ板12の締め付けが低下したとしても、静止密封環3を付勢したときの反力によって、Oリング30を両面間で押圧保持することができ、当該Oリング30の密着状態が低下して密封性が低下するのを防止できる。
以上のように、本実施形態のメカニカルシール1によれば、分割型の静止密封環3において、各分割体3bの間に生じるすき間を確実に防止でき、高い密封性を長期に亘って維持することができる。
【0030】
また、上記実施形態において、静止密封環3は、その軸方向に沿う断面が当該静止密封環3を軸方向に二分する中心線に対して線対称となる形状に形成されているので、静止密封環3を軸方向に反転させ、背面側をシール面として使用することができる。このため、何らかの原因によりシール面3aが使用できなくなったとしても、シール面3aの背面側をシール面として使用するといった応急的対応が可能になる。
【0031】
また、上記メカニカルシール1において、Oリング30は、シール面3aと径方向においてほぼ一致する位置に設けられているため、Oリング30を、回転密封環2からの反力が直接作用するシール面3aと径方向にほぼ一致する位置に設けることができる。これにより、フランジ部11bに形成されたテーパ面11b2と、静止密封環3の背面に形成された外側テーパ面3cとの間でOリング30を確実に押圧し、両者に密接させることができる。
【0032】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、静止密封環3を、二つの分割体3bによって構成した場合を例示したが、3分割、4分割といったように、より多数の分割体によって構成してもよい。
また、上記実施形態の静止密封環3は、軸方向に沿う断面における輪郭形状が、当該静止密封環3を軸方向に二分する中心線に対してほぼ線対称となる形状に形成した場合を例示したが、これに限定されるものではなく、静止密封環3のシール面3a側の形状は、背面側の形状に関わらず設定することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 メカニカルシール
2 回転密封環
2a シール面
3 静止密封環
3a シール面
3b 分割体
3c 外側テーパ面
3d 内側テーパ面
4 スプリングリテーナ
10 スプリング
11 リテーナ本体
11a 筒状部
11b フランジ部
11b1 孔部
11b2 テーパ面
12 押さえ板(押さえ部材)
30 Oリング
C ポンプケース(ケーシング)
S ポンプ軸(回転軸)
図1
図2
図3
図4