(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、インバータ装置10は、操作盤11、蓋体12、および本体13などを有して構成されている。以下、本体13に対し、操作盤11および蓋体12側をインバータ装置10の上側として説明する。
【0009】
操作盤11は、ダイヤル111、ボタン112、および液晶パネル113などを有している。使用者は、ダイヤル111やボタン112を操作することにより、インバータ装置10の運転内容を決定する。そして、その操作内容やインバータ装置10の運転状態は、液晶パネル113に表示される。この操作盤11は、蓋体12の上側に設けられている。蓋体12は、樹脂などにより下方が開口した矩形の箱状に形成され、本体13の上側に設けられている。本体13は、箱部材14および覆い部材15から構成されている。本体13の内部つまり箱部材14および覆い部材15の内側には空間が形成されている。本体13は、その内部に、
図2に示す半導体モジュール16と基板17とを収容し、さらに
図7に示す放熱器18を収容している。
【0010】
箱部材14は、樹脂などにより全体として箱状に形成されている。具体的には、
図3に示すように、箱部材14は、主に周壁141および仕切り壁142などから構成されている。周壁141は、全体として矩形の筒状に形成されて、その矩形の長手方向における一端部が離間している。この周壁141の離間部分には、
図1に示すように、送風装置19が設けられる。また、周壁141は、
図2および
図7にも示すように、送風装置19に対向する部分に排気口143が形成されている。
【0011】
仕切り壁142は、
図3に示すように、周壁141の筒状の内側部分において、周壁141の上部寄りに設けられている。この仕切り壁142は、板状に形成されて、周壁141に対して直角に設けられている。これにより、仕切り壁142は、周壁141の筒状の内側すなわち箱部材14の内部を、基板17が配置される上部の空間と、放熱器18が配置される下部の空間とに区分けしている。これら周壁141および仕切り壁142は、樹脂などにより一体に形成されている。
【0012】
仕切り壁142は、窓部144を有している。窓部144は、箱部材14の短手方向における中央部分であって、長手方向における送風装置19とは反対側寄りの部分において、仕切り壁142を板厚方向へ貫いて形成されている。この場合、窓部144は、箱部材14の長手方向に長い矩形に形成されている。そして、この窓部144によって、箱部材14の内部における上部の空間と下部の空間とが連通している。箱部材14の下側には、
図1、
図2、および
図7に示すように、底板20が設けられる。この底板20は、例えばアルミやステンレス鋼などの金属板で構成されている。
【0013】
また、箱部材14は、
図3に示すように、遮蔽部145を有している。遮蔽部145は、仕切り壁142の上側にあって、窓部144に対して送風装置19とは反対側における周壁141と窓部144との間に設けられている。この場合、遮蔽部145は、仕切り壁142の上側面において窓部144の縁部から周壁141までの距離が最も短い部分に設けられている。この遮蔽部145は、仕切り壁142の上側面に対して直角に配置された板状の部材によって構成されている。
【0014】
具体的には、遮蔽部145は、板状の部材が仕切り壁142の上側面から上方へ突出して構成されている。この遮蔽部145は、中心部が窓部144の短手方向に対して平行に延び、その両側が折れ曲がって窓部144側における窓部144の短手方向の外側へ広がるように傾斜し、さらにその先が折れ曲がって窓部144の長手方向へ延びている。つまり、遮蔽部145は、窓部144の中心部側へ向かって開口したいわゆる扇状に形成されている。これにより、遮蔽部145は、窓部144の外側の一部を囲んでいる。つまり、遮蔽部145は、窓部144の外側において、送風装置19とは反対側の短手方向の縁部全体を囲んでいる。この遮蔽部145は、仕切り壁142に一体に形成されている。すなわち、周壁141と仕切り壁142と遮蔽部145とは一体に形成されている。
【0015】
放熱器18は、
図7に示すように、本体13の下部の空間すなわち箱部材14の内側において仕切り壁142よりも下方に設けられている。放熱器18は、例えばアルミや銅などの熱伝導率の高い材料で構成された、いわゆるヒートシンクである。放熱器18は、台座部181および複数の放熱部182を一体にして構成されている。台座部181は、仕切り壁142に対して平行な板状に形成されている。放熱部182は、板状に形成され、台座部181に対して直角に設けられている。また、放熱器18の台座部181には、台座部181の上側面から下方へ向かって複数この場合四個の雌ねじ183が形成されている。この雌ねじ183および雌ねじ183にねじ込まれる雄ねじ21によって、半導体モジュール16は、放熱器18の台座部181に取外し可能に取付けられている。この場合、雄ねじ21は、固定部材として機能している。
【0016】
半導体モジュール16は、ダイオードやトランジスタなど複数の半導体素子を一つのパッケージに集約して収めたものである。本実施形態の場合、半導体モジュール16は、電源供給用のいわゆるパワー半導体モジュールなどである。半導体モジュール16は、
図4に示すように、モジュール本体161および複数のピン162などから構成されている。モジュール本体161は、矩形の板状に形成されている。複数のピン162は、モジュール本体161の上側の周縁部から上方へ向かって突出して設けられている。
【0017】
また、モジュール本体161の四隅には取付け穴163が形成されている。この取付け穴163は、モジュール本体161の四隅を円形に板厚方向へ貫いて形成されている。この場合、台座部181の雌ねじ183は、取付け穴163に対向する位置に形成されている。そして、半導体モジュール16は、四個の雄ねじ21によって、放熱器18の台座部181に取外し可能に取付けられている。この場合、半導体モジュール16の下側面は、台座部181の上側面に接触している。
【0018】
この構成において、送風装置19が駆動されると、送風装置19の送風作用によって、送風装置19から箱部材14の内部へ外気が吸い込まれる。そして、送風装置19から箱部材14の内部に入った空気は、複数の放熱部182の間を通り、排気口143から箱部材14の外部へ排出される。このとき、放熱部182と空気との間で熱交換が行われ、放熱部182が冷却される。つまり、半導体モジュール16で生じた熱は、放熱器18の放熱部182から放熱される。これにより、半導体モジュール16は冷却される。
【0019】
また、
図2および
図7に示すように、半導体モジュール16の上側には、基板17が設けられている。基板17は、例えばプリント配線基板などで構成されており、
図5にも示すように、矩形の板状に形成されている。基板17の上側面には、例えばリレーやコンデンサなどの電子部品が設けられるとともに図示しない回路パターンが形成されている。また、基板17は、複数のピン用穴171を有している。ピン用穴171は、半導体モジュール16のピン162にそれぞれ対応し、基板17を板厚方向へ貫いて形成されている。
【0020】
半導体モジュール16は、
図7に示すように、複数のピン162を基板17のピン用穴171に通して設けられている。この場合、ピン162と、基板17に形成された回路パターンとはハンダなどにより電気的に接続されている。このように、半導体モジュール16は、基板17に実装されている。そして、遮蔽部145の上端部は、基板17の下側面に接触している。これにより、遮蔽部145は、仕切り壁142と基板17との間を塞いでいる。
【0021】
また、
図5に示すように、基板17には、複数この場合四個の穴172、173が形成されている。この四個の穴172、173は、
図2に示すように、半導体モジュール16の取付け穴163に対向して、基板17を板厚方向へ円形に貫いて形成されている。この場合、四個の穴172、173のうち、二個の穴172は、基板17の長手方向において送風装置19とは反対側寄りに形成されている。一方、残り二個の穴173は、基板17の長手方向において送風装置19側寄りに形成されている。そして、これら四個の穴172、173は、それぞれ雄ねじ21に対向している。
【0022】
穴172、173の内径は、雄ねじ21の頭部の外径よりも大きく形成されている。この場合、雄ねじ21の頭部は、穴172、173から基板17の上方を臨んでいる。そのため、半導体モジュール16は、基板17に実装された状態であっても、雄ねじ21を基板17の穴172、173に通すことで、放熱器18に取付けることができ、また、放熱器18から取外すことができる。
【0023】
覆い部材15は、
図2にも示すように、箱部材14の上側に設けられて、基板17の上方を覆っている。この覆い部材15は、
図6に示すように、全体として下方が開口した浅い矩形の箱状に形成されている。具体的には、覆い部材15は、主体部151と、複数組この場合二組の大径円筒部152および小径円筒部153とを有して構成されている。これら主体部151、大径円筒部152および小径円筒部153は、樹脂などにより一体に形成されている。つまり、覆い部材15は、主体部151と、大径円筒部152と、小径円筒部153とを一体にして構成されている。
【0024】
この主体部151には、通気口154、155が形成されている。通気口154は、主体部151における短手の周壁のうち、送風装置19とは反対側の周壁を貫いて形成されている。また、通気口155は、主体部151における長手の両側の周壁を貫いて形成されている。これら通気口154、155は、本体13の内部であって仕切り壁142の上側の空間と外部とを連通している。この場合、基板17に形成された穴172、173について、穴172から通気口154までの距離は、穴173から通気口155までの距離に比べて短い。つまり、四個の穴172、173のうち、二個の穴172は、通気口154を介して、本体13の外部に最も近い位置に形成されている。
【0025】
二組の大径円筒部152および小径円筒部153は、基板17に形成された四個の穴172、173のうち、通気口154に近い二個の穴172に対向して設けられている。具体的には、
図6に示すように、大径円筒部152は、円筒に形成されて、主体部151から下方へ垂直に突出して設けられている。そして、大径円筒部152は、基板17の上側面近傍まで延びている。大径円筒部152は、その外径が基板17の穴172の内径よりも大きい寸法に設定されて、穴172の上方を覆っている。また、大径円筒部152は、
図8に示すように、上端側は主体部151の接続部分において上方へ向かって開口しているが、下端側は閉塞している。
【0026】
小径円筒部153は、大径円筒部152よりも小径の円筒に形成されて、大径円筒部152の下端側に設けられている。小径円筒部153の中心軸は大径円筒部152の中心軸に一致している。この小径円筒部153は、その外径が基板17の穴172の内径よりもやや小さい寸法に設定され、基板17の穴172に差し込まれている。また、小径円筒部153は、下端側は下方へ向かって開口しているが、上端側は大径円筒部152との接続部分において閉塞している。そのため、大径円筒部152の内側と小径円筒部153の内側とは連通していない。この場合、大径円筒部152および小径円筒部153は、その外径が異なるので、大径円筒部152および小径円筒部153の境界に段が形成された、いわゆる段付き支柱を構成している。
【0027】
このように、大径円筒部152は、その下端部が、基板17の四個の穴172、173のうち通気口154に近い二個の穴172の上方を覆っている。そして、小径円筒部153は、それぞれ穴172に差し込まれて穴172の内側を塞いでいる。つまり、大径円筒部152および小径円筒部153は、基板17に形成された四個の穴172、173のうち、通気口154に近い二個の穴172を閉塞している。この場合、大径円筒部152および小径円筒部153は閉塞部を構成している。
【0028】
これによれば、インバータ装置10は、第一構成として次の構成を備えている。すなわち、半導体モジュール16は、放熱器18の台座部181に、雄ねじ21によって取外し可能に取付けられている。基板17には、雄ねじ21に対向する複数この場合二個の穴172が形成されている。覆い部材15は、二組の大径円筒部152および小径円筒部153を一体に有している。この二組の大径円筒部152および小径円筒部153は、穴172を塞いでいる。
【0029】
この構成によれば、基板17に形成された穴172、173のうち、インバータ装置10の内部側ではなく外縁側に存在する二個の穴172は、大径円筒部152および小径円筒部153によって塞がれている。そのため、例え半導体モジュール16に不具合が生じて、半導体モジュール16の表面から火花が飛び出たとしても、火花が穴172を通って基板17の上方へ回り込み通気口154などから本体13の外部へ飛び散ることを抑制することができる。また、この場合、小径円筒部153が穴172の内側に差し込まれているため、火花の勢いを効果的に低減することができる。その結果、インバータ装置10の安全性の向上が図られる。
【0030】
また、インバータ装置10は、第二構成として次の構成を備えている。すなわち、箱部材14は、仕切り壁142および遮蔽部145を一体に有している。仕切り壁142は、半導体モジュール16を通す窓部144が形成されている。仕切り壁142は、放熱器18の台座部181の上側面と基板17の下側面との間を仕切っている。遮蔽部145は、半導体モジュール16の外側にあって仕切り壁142の上側面と基板17の下側面との間を塞いでいる。
【0031】
この構成によれば、半導体モジュール16と仕切り壁142との間は、遮蔽部145によって塞がれている。そのため、仮に半導体モジュール16に不具合が生じて、半導体モジュール16の表面から火花が飛び出たとしても、火花が基板17の周囲の隙間すなわち基板17の周縁部と箱部材14の周壁141との間を通って基板17の上方へ回り込み、通気口154などから本体13の外部へ飛び散ることを抑制することができる。その結果、インバータ装置10の安全性の向上が図られる。
【0032】
さらに、第一構成によれば、覆い部材15は、大径円筒部152および小径円筒部153を一体に有している。また、第二構成によれば、箱部材14は、仕切り壁142および遮蔽部145を一体に有している。これによれば、半導体モジュール16から飛び出た火花が本体13の外部へ飛び散ることを抑制できる第一構成および第二構成を、部品点数を増加させることなく採用することができる。これにより、組立性への影響を低減することができ、ひいてはコスト増加の抑制を図ることができる。
【0033】
ここで、半導体モジュール16から飛び出た火花による熱エネルギーが、基板17の下方の空間すなわち仕切り壁142と基板17との間の狭い空間に集中すると、半導体モジュール16の周辺が高温状態となる。そのため、本実施形態では、基板17に形成された四個の穴172、173のうち、外部に連通する通気口154に最も近い二個の穴172を、大径円筒部152および小径円筒部153によって塞いでいる。そして、外部から遠い二個の穴173を開放している。これによれば、四個の穴172、173のうち、外部から遠い二個の穴173を通して熱エネルギーを基板17の上方へ分散させることができる。そのため、火花が通気口154から外部へ飛び散ることを抑制しつつ、基板17の下方の狭い空間に熱エネルギーが蓄積されることを抑制することができる。その結果、インバータ装置10のさらなる安全性の向上を図ることができる。
【0034】
また、遮蔽部145は、仕切り壁142の上側面において窓部144の縁部から周壁141までの距離が最も短い部分に設けられている。そして、この遮蔽部145は、半導体モジュール16の中心部へ向かって開口した、いわゆる扇状に形成されている。これによれば、半導体モジュール16から飛び出た火花を、基板17と箱部材14の周壁141との間に形成される隙間に向かう方向ではなく、その方向とは反対側である半導体モジュール16の中心部側へ向かわせることができる。したがって、火花が基板17の上方へ回り込み本体13の外部へ飛び散ることをより確実に抑制することができる。さらに、火花を半導体モジュール16の中心部へ向かわせることで、火花が他の電子部品に与える影響を低減することができる。その結果、インバータ装置10のさらなる安全性の向上を図ることができる。
【0035】
なお、遮蔽部145は、半導体モジュール16から外部に連通する通気口154、155に最も近い部分に少なくとも一個設ければよいが、複数個設けてもよい。
また、基板17に形成される穴172の数や位置は上記構成に限定されず、例えば四個以上あってもよい。
さらに、固定部材は、雄ねじ21に代えて、例えばボルトなどでもよい。つまり、固定部材は、穴172を通して半導体モジュール16を放熱器18に取付けおよび取外しできるものであればよい。
また、本実施形態では、蓋体12と覆い部材15とは別体に構成されているが、これら蓋体12および覆い部材15を一体に形成してもよい。
さらに、本実施形態では、送風装置19は、排出口143側へ送風する構成としたが、送風装置19の送風方向を逆にしてもよい。つまり、送風装置19は、箱部材14内の空気を、送風装置19から外部へ排出する方向へ送風する構成にしてもよい。この場合、排気口143は、箱部材14内へ外気を取り込む給気口として機能する。
インバータ装置10は、第一構成および第二構成のうち、少なくともいずれか一方を備える構成としてもよい。
【0036】
以上説明した実施形態によれば、半導体モジュールから飛び出た火花が本体の外部へ飛び散ることを抑制することのできる構成を、部品点数を増加させることなく実現することができる。その結果、組立性への影響の低減を図ることができ、ひいてはコスト増加の抑制を図ることができる。
本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変更は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。