(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774949
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】クーラント浄化装置及び堆積した切り屑の除去方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
B23Q11/00 U
B23Q11/00 R
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-202033(P2011-202033)
(22)【出願日】2011年9月15日
(65)【公開番号】特開2013-63477(P2013-63477A)
(43)【公開日】2013年4月11日
【審査請求日】2014年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】393026892
【氏名又は名称】株式会社白山機工
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【弁理士】
【氏名又は名称】木森 有平
(74)【代理人】
【識別番号】100151356
【弁理士】
【氏名又は名称】浅香 小百合
(72)【発明者】
【氏名】内藤 昌則
【審査官】
村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−084709(JP,A)
【文献】
実開平03−126538(JP,U)
【文献】
実開昭60−117041(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B01D 21/18
B01D 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械から排出された切り屑が混じったクーラント液を流入させる沈殿槽と、この沈殿槽の底面に堆積した切り屑を掻き上げる掻き上げ手段と、掻き上げ手段を搬送させる搬送手段を備え、前記搬送手段は、左右一対の無端状チェーンベルトであり、これら一対の間に前記掻き上げ手段が取り付けられ、前記掻き上げ手段は無端状チェーンベルトの下方側のみに取り付けられており、前記掻き上げ手段が取り付けられていない前記無端状チェーンコンベヤ上方側の空間を利用して、クーラント液を工作機械に供給する供給ポンプが沈殿槽の底部に近づけて配されており、搬送手段により掻き上げ手段を所定時間間隔において所定の排出口まで往復動させて切り屑を排出することを特徴とするクーラント浄化装置。
【請求項2】
前記沈殿槽は、直方体形状の本体部と、前記排出口に向かって立ち上がり傾斜する立ち上がり傾斜部とから構成され、前記掻き上げ手段は、少なくとも前記直方体形状の本体部から前記立ち上がり傾斜部の排出口までの間を往復動することを特徴とする請求項1記載のクーラント浄化装置。
【請求項3】
前記掻き上げ手段の前進到達位置を検出する検出手段と後進到達位置を検出する検出手段を備え、これらの検出手段による検出の結果で前記往復動の切り替えを行うことを特徴とする請求項1記載のクーラント浄化装置。
【請求項4】
工作機械から排出された切り屑が混じったクーラント液を流入させる沈殿槽と、この沈殿槽の底面に堆積した切り屑を掻き上げる掻き上げ手段と、掻き上げ手段を搬送させる無端状コンベヤと、沈殿槽に連続して立ち上がり傾斜する傾斜途中に排出口が形成される立ち上がり傾斜部を備え、前記掻き上げ手段は前記無端状コンベヤの下方側のみに取り付けられており、前記掻き上げ手段が取り付けられていない前記無端状チェーンコンベヤ上方側の空間を利用して、クーラント液を工作機械に供給する供給ポンプが沈殿槽の底部に近づけて配されており、無端状コンベヤを所定時間間隔において往復動させるものであり、掻き上げ手段を排出口まで往復動させて切り屑を排出して、排出した後は元の位置に復動作して待機することを特徴とする堆積した切り屑の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、旋盤、フライス盤や研削盤等の工作機械から排出された切り屑が混じったダーティなクーラント液から切り屑を濾過して排出するクーラント浄化装置及び堆積した切り屑の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤、フライス盤や研削盤等の工作機械においては、バイト、カッタ等の切削工具と被加工物(ワーク)とが接触する加工部位にクーラント液(切削液)を供給して当該加工部位の発熱を抑えながら加工を行う湿式タイプが主流になっている。この湿式タイプの工作機械にはクーラント浄化装置が常設されている。クーラント浄化装置は、工作機械から排出された切り屑が混じったクーラント液から切り屑(被加工物から除去された金属片や金属粉)を分離して排出するとともに、濾過手段によって切り屑が取り除かれたクリーンなクーラント液に再生して工作機械に供給する。
【0003】
切り屑が混じったダーティ液から切り屑を分離しながら搬送するクーラント浄化装置としては、チェーンコンベヤに切り屑を掻き上げる掻き板(スクレーパ)が取り付けられるスクレーパ式コンベヤがある。チェーンコンベヤは、周回駆動方式であり、加工部位にクーラント液を供給する供給ポンプがクーラント液の液面付近に配されているか(特許文献1)、又、チェーンコンベヤの位置を外して配されている(特許文献2)。
【0004】
一方、クーラント液を円形タンク内に貯蔵し、攪拌するポンプなど渦流を発生させて円形タンク内に切り屑の堆積を防止する渦流循環型クーラント浄化装置がある。この装置では、攪拌に使用するポンプも工作機械にクーラント液を供給する供給ポンプも円形タンク内に深く沈めるようにして配置されている(特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−126538号公報
【特許文献2】特開2006−159393号公報
【特許文献3】特許第3505710号公報
【特許文献4】特許第3897587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、円形タンクを使用した渦流循環型クーラント浄化装置では、構造が簡単で部品点数が少なくできる利点や、供給ポンプも円形タンク内に深く沈めるようにして配置できる利点を有するが、円形タンク内のクーラント液を渦流を生じさせるので、攪拌に使用するポンプの動力が大きなものが必要になる(100Lあたり100W程度必要と推定される。)問題を有する。また、クーラント液の液温が上昇してしまい、加工部位の発熱を抑えるものとしては好ましくない問題を有する。さらに、円形タンクのためにデッドスペースが生じる。
【0007】
また、チェーンコンベヤのような搬送コンベヤを備えるものでは、回転駆動式で常時駆動させるために、消費電力が嵩む問題や、上記液温上昇の問題を有する。さらに供給ポンプが液面に配されるが、掻き上げ手段が外周に所定間隔で取り付けられ、このため供給ポンプをクーラント液中に深く配置することができず、液面近くに配せざるを得ないという問題や、沈殿槽の水深を深くしなければならず、小型化が図られないという問題も有する。
そして、このような上記従来装置では、切り屑がタンク内に堆積するには、ある程度の時間がかかるにもかかわらず、常時渦流を生じさせるか、又、チェーンコンベヤのような搬送手段を常時駆動させているのが実情である。
【0008】
そこで本発明の目的は、搬送手段や掻き上げ手段を常時稼動させることなく、沈殿槽内に堆積したときだけ切り屑を排出させることが可能にすること、クーラント液の液温上昇をできるだけ抑えること、工作機械にクーラント液を供給する供給ポンプを沈殿槽内に十分に沈めて配置すること、さらに、デッドスペースの削減の図ることが可能なクーラント浄化装置及び堆積した切り屑の除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のクーラント浄化装置は、工作機械から排出された切り屑が混じったダーティなクーラント液を流入させる沈殿槽と、この沈殿槽の底面に堆積した切り屑を掻き上げる掻き上げ手段と、掻き上げ手段を搬送させる搬送手段を備え、搬送手段により掻き上げ手段を所定時間間隔おいて排出口まで往復動させて切り屑を排出することを特徴とする。また、本発明の堆積した切り屑の除去方法は、工作機械から排出された切り屑が混じったダーティなクーラント液を流入させる沈殿槽と、この沈殿槽の底面に堆積した切り屑を掻き上げる掻き上げ手段と、掻き上げ手段を搬送させる無端状コンベヤと、沈殿槽に連続して立ち上がり傾斜する傾斜途中に排出口が形成される立ち上がり傾斜部を備え、無端状コンベヤを所定時間間隔おいて往復動させるものであり、掻き上げ手段を排出口まで往復動させて切り屑を排出して、排出した後は元の位置に復動作して待機することを特徴とする。ここで、搬送手段としては、無端状コンベヤベルトや無端状チェーンベルトや、駆動シリンダー等を使用できる。無端状コンベヤには、無端状コンベヤベルトや無端状チェーンベルトが含まれる。掻き上げ手段としては、スクレーパ(掻き上げ板)や磁石(板状のマグネット)などを使用できる。
【0010】
本発明によれば、沈殿槽の底面に堆積した切り屑を、搬送手段で常時回転駆動させるのではなく、所定時間の間隔をおいて往復動させることで対応する。すなわち、掻き上げ手段を排出口まで往復動させて切り屑を排出して、排出した後は元の位置に復動作して待機するものである。したがって、所定時間間隔をおいて往復動作させたり、切り屑が堆積したときだけ駆動させることも可能である。
【0011】
本発明としては、左右一対の無端状チェーンベルトであり、これら一対の間に前記掻き上げ手段が取り付けられ、前記掻き上げ手段は無端状チェーンベルトの下方側のみに1つ取り付けられていることを特徴とする。
本発明によれば、掻き上げ手段は、無端状コンベヤベルトの下方側にのみ取り付ければ良く、無端状コンベヤベルトの上方側に取り付ける必要はないので、搬送手段の高さを低くすることができる。また、掻き上げ手段の数も1つで十分であるので、無端状コンベヤベルトの長さを短くした装置構成が可能である。
【0012】
本発明としては、クーラント液を工作機械に供給する供給ポンプが備えられ、前記掻き上げ手段が取り付けられていない前記チェーンコンベヤの上方側の空間を利用して沈殿槽の底部に近づけて配されていることが好ましい。
本発明によれば、前記掻き上げ手段は無端状チェーンベルトの上方側には取り付けられていないことから、供給ポンプを沈殿槽の底部に近づけて配することが可能になる。
【0013】
本発明としては、前記沈殿槽は、直方体形状の本体部と、前記排出口に向かって立ち上がり傾斜する立ち上がり傾斜部とから構成され、前記掻き上げ手段は、少なくとも前記直方体形状の本体部から前記立ち上がり傾斜部の排出口までの間を往復動することが好ましい。
本発明によれば、直方体形状の沈殿槽であり、前記一対の無端状チェーンベルトの間に架け渡される掻き上げ手段により、直方体形状の本体部の底部に堆積する切り屑を除去できることから、従来の丸形タンクの場合のようなデッドスペースが生じることはない。
【0014】
本発明としては、前記掻き上げ手段の前進到達位置を検出する検出手段と後進到達位置を検出する検出手段を備え、これらの検出手段による検出の結果で前記往復動の切り替えを行なうことが好ましい。検出手段としては、前記掻き上げ手段と接触してその位置を検出するリミットスイッチが好適である。
本発明によれば、前記検出手段により、前記掻き上げ手段や搬送手段の所定駆動位置を検出して、確実な往復動作を行なうことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、沈殿槽の底面に堆積した切り屑を、搬送手段で常時回転駆動させるのではなく、所定時間の間隔をおいて往復動させることで対応する消費電力を抑えるとともに装置の小型化を図ることができる。また、直方体形状の沈殿槽で、一対の無端状チェーンベルトの幅間隔内に配される掻き上げ手段により沈殿槽の底部全域に亘るように掻き上げるので、従来の丸形タンクのような設置場所におけるデッドスペースを生じさせるようなことがない。また、供給ポンプを沈殿槽の底部に近づけて配することが可能になるので、従来の供給ポンプが上方に突出した状態を抑制でき、装置の小型化が図られる。また、渦流を発生させたり、一定方向に常に流れ(回流)が生じる事態を防止すると共に、液温の上昇を抑制することができる。
さらに、チップ搬送コンベヤを備えた装置であれば、掻き上げ手段を一つ配して、チップ搬送コンベヤを所定時間間隔で往復動させれば良い構造であるので、従来装置を改良しても適用することが容易であるとともに、クーラント液の波を生じさせ難い構造であるので、搬送手段の省電力を図ることができると共に、静穏設計が可能な装置にすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態のクーラント浄化装置を示す正面側からの断面図である。
【
図2】上記実施形態のクーラント浄化装置の平面図である。
【
図3】上記実施形態のクーラント浄化装置の側面側からの断面図である。
【
図4】上記実施形態のクーラント浄化装置の掻き上げ手段が沈殿槽の底部側を移動(往動)する状態を示す正面側の断面図である。
【
図5】上記実施形態の装置と比較する比較例の装置を示す正面側からの断面図である。
【
図6】上記比較例の装置の側面側からの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0018】
本実施形態のクーラント浄化装置1では、
図1から
図4に示すように、沈殿槽2と、沈殿槽2内に配される搬送手段3と、搬送手段を駆動する駆動手段M1と、搬送手段2に取り付けられる掻き上げ手段3と、排出口4より排出された切り屑を収容する廃棄箱5Aと、沈殿槽2上に配される濾過装置6と、クーラント液を工作機械に供給する供給ポンプ9などにより構成されている。また、沈殿槽2の上方には、工作機械から排出される切り屑が混入したダーティ液を管路6aから受けて、比較的大きな切り屑を除去して、廃棄箱5Aに廃棄する濾過装置6が備えられている。
【0019】
濾過装置6は、沈殿槽2の上方に配置され、工作機械から排出された切り屑が混じったダーティなクーラント液を濾過して、濾過した後のクーラント液を沈殿槽2に送る。この濾過装置6による濾過により、比較的大きな切り屑が除去され、廃棄箱5Aに廃棄されるが、細かな切り屑までは濾過されず、細かな切り屑が混入したダーティなクーラント液が沈殿槽2に送られる。なお、沈殿槽2内にドラム式の濾過装置が配されるタイプもあり、本発明はこのような装置にも適用可能であるが、沈殿槽の大きさは、上記濾過装置のために大きなものが必要になる。
【0020】
沈殿槽2は、直方体形状の本体部2aと、本体部と連続して所定角度に立ち上がり傾斜する立ち上がり傾斜部2bとから構成され、この反対側には、垂直な側壁部2cとなっている。この沈殿槽2内の底部に沿うように搬送手段3が配されている。立ち上がり傾斜部2bの上方側には、切り屑Sを排出する排出口7が形成され、排出口7の下方に廃棄箱5Bが配置されている。
【0021】
本実施の形態の搬送手段3は、左右一対の無端状チェーンベルトであり、立ち上がり傾斜部2bの上方側に配された駆動軸J1と、前記側壁側2cに設けられた従動軸J2に掛け渡されている。無端状チェーンベルト3には、掻き上げ手段4が取り付けられている。本実施の形態のスクレーパ(掻き上げ板)4は、往動方向にむかって「く」の字形状に屈曲形成したものであるが、L字形等でも良い。
搬送手段3は、駆動モータM1により往復動作する。往復動作は、駆動モータM1を所定時間間隔で正逆回転させて往復動作させても良いが、本実施の形態では、掻き上げ手段4の前進位置を検出するリミットスイッチLSと掻き上げ手段4の後進位置を検出するリミットスイッチLSとが設けられて、往復動作を制御している。本実施の形態の搬送手段3である無端状チェーンベルト3の上方側3bは、液面eよりも上方になるようにして、電装品である上記リミットスイッチLSを水没させないようにしている。
【0022】
掻き上げ手段4は、沈殿槽2の底部に堆積した切り屑Sを掻き上げるもので、スクレーパ(掻き上げ板)のほか磁石(板状のマグネット)などが使用できる。掻き上げ手段4は、左右一対の無端状チェーンベルト3の幅方向に掛け渡すようにして取り付けられるもので、無端状チェーンベルト3の所定箇所に1個だけ取り付けられている。掻き上げ手段4が無端状チェーンベルト3に取り付けられる位置は、無端状チェーンベルト3の搬送方向の下方側であり、立ち上がり傾斜部2bにおける下方側や、沈殿槽2の本体部2aの側壁側2cに沿う上方側にまでも移動する。すなわち、少なくとも前記駆動軸J1と従動軸J2の間における無端状チェーンベルト3の下方側に設けられている必要があり、本実施の形態では、駆動軸J1側のリミットスイッチLSから従動軸J2のリミットスイッチLSの位置まで移動するものであり、掻き上げ手段4のスタート位置(前方停止位置)St1は、本体部2aの側壁側(
図1中右側)2cの上方位置であり、後方停止位置は前記後方側のリミットスイッチLSの位置である(
図1中右側)。また、左右一対の無端状チェーンベルト3を所定範囲に案内するガイド部材Gが設けられている。
【0023】
供給ポンプ9は、沈殿槽2の本体部2aの底部近傍にまで至るように垂直姿勢で配されている。すなわち、無端状チェーンベルト3の上方側3bには、掻き上げ手段4は設けられていないため、かかる空間を利用して、供給ポンプ9が垂直姿勢で沈殿槽2の底部近傍にまで至るようにクーラント液中に沈められて配されている。供給ポンプ9は、工作機械に送る定量ポンプであり、モータ駆動方式で、下方側に吸引口が設けられている。
【0024】
ここで、掻き上げ手段2は、チェーンコンベヤ3に一つ着脱式に取り付けられている。往復動させるために、所定間隔で複数個設けると、クーラント液による負荷が大きくしたり、対流を生じさせるのみならず、堆積したチップを搬送する距離が長くなるために(往復動作させるので掻き上げ手段の間隔をその分確保する必要があるために)、一つのみであり、これで足りる。
【0025】
次に、本実施の形態の装置1の動作を説明する。
まず、工作機械から流出された切り屑を含有したクーラント液は、沈殿槽2の上方に配置される濾過装置6により濾過されて、比較的大きな切り屑が廃棄箱5A内へと排出される。
【0026】
比較的大きな切り屑が除去されたクーラント液は、濾過装置6から沈殿槽2に送られる。したがって、比較的細かな切り屑Sが沈殿槽2の底部に徐々に堆積する。このため、駆動手段M1を駆動させて、搬送手段3を搬送駆動(往動)させると、掻き上げ手段4は、スタート位置St1から沈殿槽2の底部に至り、それから立ち上がり傾斜部2bにむかって斜め上昇して行くが、立ち上がり傾斜部2bの途中の排出口7から切り屑Sを排出させる。排出すると、駆動軸J1を折り返した位置(リミットスイッチLSの位置)まで搬送駆動するが、リミットスイッチLSが停止位置St2を検出して駆動モータM1を一旦停止させる。そして、所定時間をおいて、駆動手段M1を逆回転させると、今度は搬送手段3が復動動作に移り、沈殿槽2の立ち上がり傾斜部2bを下るようにして底部に至り、それから本体部2aの側面部2cに向かって搬送駆動して、側壁部2cの上方位置近傍のスタート位置St1で停止する。かかる往復動作を所定時間をおいて繰り返すか、或いは、ある程度切り屑が堆積したときにだけ往復動作させる。
【0027】
ここで、堆積状態を検出するセンサを沈殿槽2の底部に取り付け、ある程度切り屑Sが堆積した時に搬送手段3を動作させるようにすることも可能である。
また、掻き上げ手段4を、所定時間間隔をおいて往復動させるが、前進停止位置(前方のリミットスイッチLSの位置)St2でしばらく停止して、クーラント液の波が収束してから、搬送手段3を介してゆっくり復動させて、元のスタート位置St1まで戻すように制御しても良い。このように駆動制御することにより、清音設計で、かつ、消費電力をできるだけ抑えることが可能になる。また、沈殿槽2の流れが従来のように一定方向に向かうものではなく、液温も上昇を起こり難い構造になる。
なお、掻き上げ手段4のスタート位置St1の停止位置において、停止時間を利用して、洗浄装置により掻き上げ手段4を洗浄したり、又、着脱式の掻き上げ手段(スクレーパ)4の交換をすることもできる。また、洗浄手段としては、噴射式の洗浄手段が好ましい。この洗浄手段は、掻き上げ手段4が一つであることに対応して、洗浄手段も一つで良い。
【0028】
ところで、
図5と
図6は、本実施の形態の装置と比較するための比較例11である。この比較例11は、搬送手段3に所定間隔で掻き上げ手段4を複数個取り付けて、搬送手段3を周回動作させるとともに、搬送手段3である無端状チェーンベルト3の上方側3bも液面eに沈むようにしたものである。しかし、このように、無端状チェーンベルト3の上方側3aの高さを低くしているにもかかわらず、掻き上げ手段4は、無端状チェーンベルト3に所定間隔で取り付けられているために、沈殿槽2の底に深く沈めるように配することはできない。
図3と
図4は、沈殿槽2の有効容量(沈殿槽2において適正に利用されることが可能な容量)h1,h2と供給ポンプ9の配置位置(高さ位置)との関係を示している。
これに対して、本実施の形態の装置1によれば、搬送手段3である無端状チェーンベルトの上方側3bが液面eよりも上方であり、また、掻き上げ手段4の数も一つであるから、これらの点からも、一対の無端状チェーンベルト3を駆動させる電力消費を抑制することができる。その消費電力抑制は、稼働時間にもよるが、比較例11との比較では、1/10程度に抑制することも十分に可能である。また、本実施の形態の供給ポンプ9は、従来の無端状チェーンベルト3が配されるタイプの装置で、クーラント液の液面e近くに配さざるをえなかった装置11とは異なり、本実施の形態では、深く沈めることで、沈殿槽2の有効容量h1が確保されているので(比較例11において、沈殿槽2の有効容量を実施例装置1のように確保するためには液面eを高くする必要があり、このため沈殿槽2が大きなものが必要になる。)、その機能を十分に発揮させることができるとともに、これにより、本実施の形態の装置1の全体の高さを比較例11よりも低くでき、装置の小型化にも貢献する。
【0029】
以上、本発明は上記実施の形態に限らず、例えば、従来のスクレーパ式コンベヤやマグネット式コンベヤを改良して、上記往復駆動やスクレーパ等の数や配置位置などを変更することでも実施することが可能である。また、沈殿槽2の立ち上がり傾斜部2bを左右に形成して、掻き上げ手段4の往復動の往動作の場合も復動作の場合も立ち上がり傾斜部2bに押し上げ排出口7から排出させる構造をとることもできる。このように、本発明は、上記実施形態に限られるものではない。
【符号の説明】
【0030】
1 クーラント浄化装置、
2 沈殿槽、2a 立ち上がり傾斜部、2b 底部 2c 側壁部(側壁側)、
3 搬送手段(無端状コンベヤ、無端状チェーンベルト)、
3a 搬送手段の下方側、3b 搬送手段の上方側、
4 掻き上げ手段(スクレーパ)、
5A,5B 廃棄箱、
6 濾過装置、
7 排出口、
9 供給ポンプ、
LS 検出手段(リミットスイッチ)、
S 切り屑