(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774979
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】柱構造体
(51)【国際特許分類】
E04C 3/32 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
E04C3/32
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-287951(P2011-287951)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-136898(P2013-136898A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2013年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】502210529
【氏名又は名称】前田 一峯
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129849
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】前田 一峯
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−242255(JP,A)
【文献】
特開平03−233061(JP,A)
【文献】
特開2006−348739(JP,A)
【文献】
特開2000−120205(JP,A)
【文献】
特開2003−305567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/00 − 3/46
E04B 1/24
E04B 1/38 − 1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物に用いられる柱構造体であって、
縦方向に延在する一対の縦弦材と、これら縦弦材間に架け渡される複数の斜材とを備えてなり、
一対の前記縦弦材は、上下の梁の長手方向に間隔をあけて配置されており、
一対の前記縦弦材の上端部同士は、水平方向に延在する連結材にて連結され、
一対の前記縦弦材の下端部同士は、水平方向に延在する連結材にて連結されており、
前記斜材は、丸型パイプにて構成されており、
前記斜材の端部には、上下一対のスリットが形成され、
上側の前記スリットの先端部の真下に下側の前記スリットの先端部が位置するように、上側の前記スリットの奥行き寸法は、下側の前記スリットの奥行き寸法と異なっており、
前記縦弦材には、ガセットプレートが設けられており、
前記ガセットプレートを前記スリットに挿入して溶接することで、前記斜材が前記縦弦材に接合されている
ことを特徴とする柱構造体。
【請求項2】
前記縦弦材は、H形鋼にて構成されており、そのフランジ面に前記斜材が接合されている
ことを特徴とする請求項1に記載の柱構造体。
【請求項3】
前記斜材の内部には、弾性発泡体が充填されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の柱構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物に用いられる柱構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨造や鉄骨鉄筋コンクリート造の建造物に用いられる柱は、従来、H形鋼や角パイプ材などを単独で利用するのが一般的であったが、トラスを柱として利用することもあった(例えば、特許文献1参照)。トラスを柱に利用すれば、軽量で強い剛性を発揮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−327492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のトラス柱では、斜材に溝形鋼や山形鋼が用いられていたが、溝形鋼や山形鋼では、応力が作用する方向によって剛性が変わるので、構造計算を行う際には、最も弱い部分を基準にしなければならず、これによって全体の板厚を厚くする必要があり、重量化およびコストアップを招いてしまう問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、前記の問題を解決するためになされたものであり、軽量で剛性の高い柱構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明は、建造物に用いられる柱構造体であって、縦方向に延在する一対の縦弦材と、これら縦弦材間に架け渡される複数の斜材とを備えてなり、
一対の前記縦弦材は、上下の梁の長手方向に間隔をあけて配置されており、一対の前記縦弦材の上端部同士は、水平方向に延在する連結材にて連結され、一対の前記縦弦材の下端部同士は、水平方向に延在する連結材にて連結されており、前記斜材は、丸型パイプにて構成されており、前記斜材の端部には、上下一対のスリットが形成され、上側の前記スリットの先端部の真下に下側の前記スリットの先端部が位置するように、上側の前記スリットの奥行き寸法は、下側の前記スリットの奥行き寸法と異なっており、前記縦弦材には、ガセットプレートが設けられており、前記ガセットプレートを前記スリットに挿入して溶接することで、前記斜材が前記縦弦材に接合されていることを特徴とする柱構造体である。
【0007】
このように、斜材が丸型パイプであれば、外周面のどの方向から応力が作用しても剛性が一定であるので、板厚が必要以上に厚くなる部分がないので、必要最小限の板厚にすることができ、柱構造体の軽量化と高剛性化を同時に図れる。
さらに、斜材の端部にスリットが形成され、縦弦材にはガセットプレートが設けられており、ガセットプレートをスリットに挿入して溶接することで、溶接長を確保することができ、固定強度を高められる。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記縦弦材が、H形鋼にて構成されており、そのフランジ面に前記斜材が接合されていることを特徴とする。
【0009】
このように、縦弦材をH形鋼にて構成してFAランクの幅厚比のものを選択すれば、構造計算上有利になり、高層建築物にも適用可能となる。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記斜材の内部には、弾性発泡体が充填されていることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、斜材の長手方向に沿って伝わる音の振動の伝達を抑制できるので、柱の上下方向において、防音効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る柱構造体によれば、軽量化と高剛性化を同時に達成できるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る柱構造体の設置状態を示した側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る柱構造体の設置状態を示した斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る柱構造体の斜材と縦弦材との接合状態を説明するための分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態に係る柱構造体は、鉄骨造の建造物に適用され、骨組の一部として使用される。
【0017】
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る柱構造体1は、縦方向に延在する一対の縦弦材10と、これら弦材間に架け渡される複数の斜材20,20…とを備えてなる。柱構造体1は、その下端が、下階の梁2の上面(または基礎(図示せず)の上面)に連結され、上端が上階の梁3の下面に連結されている。
【0018】
縦弦材10は、H形鋼にて構成されており、垂直に配置されている。H形鋼は、幅厚比がFAランクのものを選択する。一対の縦弦材10,10は、互いに平行になっており、一方のフランジ面11が隣り合う縦弦材10に対向するように配置されている。縦弦材10の上端および下端には、ベースプレート13,13がそれぞれ溶接されている。下端のベースプレート13は、下階の梁2の上フランジ2aに当接して、ボルト14およびナット15にて固定されている。上端のベースプレート13は、上階の梁3の下フランジ3aに当接して、ボルト14およびナット15にて固定されている。
【0019】
互いに対向するフランジ面11には、斜材20を接合するためのガセットプレート12が、直交して突出するように設けられている。ガセットプレート12は、複数設けられており、斜材20の取付位置ごとに配置されている。ガセットプレート12は、矩形形状を呈しており、一本または二本の斜材20を接合可能な高さ寸法(縦長さ)と突出寸法(横長さ)を有している。複数のガセットプレート12のうち、上端および下端に配置されるガセットプレート12が一本の斜材20を接合可能な高さ寸法を有し、それらの間に配置されるガセットプレート12が二本の斜材20を接合可能な高さ寸法を有している(
図1参照)。ガセットプレート12は、フランジ面11の幅方向中央に溶接固定されている(
図2参照)。
【0020】
斜材20は、鋼製の丸型パイプにて構成されている。斜材20は、縦弦材10のフランジ面11に、ガセットプレート12を介して接合されている。斜材20の両端は、軸方向に対して直角な端面になるように切断されている。斜材20の端部には、スリット21が形成されている。スリット21は、ガセットプレート12が挿通可能な幅寸法(ガセットプレート12の厚さ寸法より若干大きい寸法)を有している。スリット21は、斜材20の端部の外周縁部で、互いに対向する二箇所に形成されている。スリット21は、斜材20を取付角度に傾斜させてガセットプレート12に取り付けた状態で、外周縁部の上側と下側に位置する。スリット21の奥行き寸法は、上側のスリット21と下側のスリット21とで異なっており、斜材20を取付角度に傾斜させてガセットプレート12に取り付けた状態で、上側のスリット21の先端部の真下に下側のスリット21の先端部が位置するようになっている。つまり、斜材20を取付角度に傾斜させたときに、斜材20の下端部になる側では、上側のスリット21の奥行き寸法が、下側のスリット21の奥行き寸法よりも長くなっており、斜材20の上端部になる側では、上側のスリット21の奥行き寸法が、下側のスリット21の奥行き寸法よりも短くなっている。
【0021】
斜材20は、スリット21,21にガセットプレート12を挿通させて、スリット21の内周面とガセットプレート12の表面とが付き合わされた部分を溶接することで、ガセットプレート12に接合されている。溶接は、スリット21の内周面の全周に渡って施されている。斜材20の内部には、弾性発泡体(図示せず)が充填されている。弾性発泡体は、断熱性能および遮音性能を有している。弾性発泡体は、斜材20を縦弦材10に溶接固定した後に、斜材20の一端の開口を塞いだ状態で他方の開口から注入して充填するようになっている。
【0022】
柱構造体1の上端部と下端部には、鋼製の丸型パイプにて構成された連結材30が設けられている。連結材30は、水平方向に延在して、縦弦材10,10間の距離を保持するスペーサの役目を果たしている。連結材30の両端は、軸方向に対して直角な端面になるように切断されている。連結材30は、縦弦材10のフランジ面11に直角に当接して、端面の全周に渡って溶接固定されている。なお、本実施形態では、連結材30の端面をフランジ面11に直接溶接固定しているが、斜材20と同様に、スリットを形成して、ブラケットを介して固定するようにしてもよい。
【0023】
このような構成の柱構造体1によれば、斜材20を丸型パイプで構成しているので、斜材の外周面のどの方向から応力が作用しても剛性が一定であるので、板厚が必要以上に厚くなる部分がなく必要最小限の板厚にすることができる。これによって、柱構造体の軽量化と高剛性化を同時に達成することができる。
【0024】
また、縦弦材10をH形鋼にて構成してFAランクの幅厚比のものを選択しているので、構造計算上有利になり、高層建築物にも適用可能となる。
【0025】
さらに、斜材20の端部にスリット21を形成し、ガセットプレート12をスリット21に挿入して溶接することで、溶接長を長く確保することができ、固定強度を高められる。また、スリット21によって溶接長を確保しているので、溶接長を確保するためだけに斜材20の径を大きくする必要がなく、部材の大型化を防ぐことができる。
【0026】
また、斜材20の内部に弾性発泡体を充填したことによって、斜材20の長手方向に沿って伝わる音の振動の伝達を抑制できるので、柱の上下方向において、防音効果を得ることができ、上階と下階の間で騒音が伝わるのを抑制できる。
【0027】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、梁2,3を通し梁として、その間に柱構造体1を接合しているが、これに限定されるものではなく、柱構造体1を通し柱として、その側部に梁を接合するようにしてもよい。
【0028】
また、前記実施形態では、縦弦材10をH形鋼にて構成しているが、これに限定されるものではなく、必要な剛性を有していれば、他の形状の形鋼であってもよいし、鋼管であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 柱構造体
10 縦弦材
11 フランジ面
12 ガセットプレート
20 斜材
21 スリット