特許第5774986号(P5774986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5774986ベシクル組成物及びそれを配合した化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774986
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】ベシクル組成物及びそれを配合した化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20150820BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20150820BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20150820BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20150820BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20150820BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   A61K8/46
   A61K8/04
   A61K8/34
   A61K8/63
   A61Q5/12
   A61Q19/00
【請求項の数】4
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2011-518603(P2011-518603)
(86)(22)【出願日】2010年6月11日
(86)【国際出願番号】JP2010060323
(87)【国際公開番号】WO2010143751
(87)【国際公開日】20101216
【審査請求日】2013年4月8日
(31)【優先権主張番号】特願2009-141711(P2009-141711)
(32)【優先日】2009年6月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山下 美年雄
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−015986(JP,A)
【文献】 特開平10−231230(JP,A)
【文献】 特表平09−508167(JP,A)
【文献】 特開2001−019634(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/132816(WO,A1)
【文献】 フレグランスジャーナル、Vol.32, No.6、2004年6月15日、139〜140頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/46
A61K 8/04
A61K 8/34
A61K 8/63
A61Q 5/12
A61Q 19/00
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C)、
(A)ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、及びジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェートからなる群より選択されるカチオン性界面活性剤
(B)コレステロール及び/又はフィトステロール
(C) 水
を含有することを特徴とし、成分(A)と成分(B)のモル比(A)/(B)が、100/1〜1/4の範囲内にある、ベシクル組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のベシクル組成物を配合することを特徴とする化粧料。
【請求項3】
毛髪用であることを特徴とする請求項に記載の化粧料。
【請求項4】
更に成分(D)として一価の低級アルコールを配合することを特徴とする請求項又はに記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のカチオン性界面活性剤とステロール類と水を構成要素とする経時安定性に優れるベシクル組成物及びそれを配合した化粧料に関するものであり、特には、該組成物を配合した毛髪用化粧料であって、毛髪に適用した場合、毛髪に素早くなじみ、毛髪内部への浸透性に優れ、しっとり感の付与に優れる毛髪用化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コレステロールやフィトステロールなどのステロール類は、毛髪に有効な成分として、毛髪用化粧料への配合検討がなされている。特にコレステロールは毛髪の水分保持機能に関わる成分として元々毛髪内に存在しているが、その含有量は10才前後を境に減少すると言われており(非特許文献1参照)、パサつきのないしっとりとした美しい髪を保つための重要な成分の一つである。
しかし、コレステロールなどのステロール誘導体は、一般に、水にも油にも溶解しにくい難溶性の物質としても知られており(特許文献1参照)、特に、水を媒体とするローション系の製剤に安定に配合することは非常に困難である。そのため、これらの難溶性のステロール誘導体を水性媒体の化粧料に安定に配合する技術の研究が種々行われている。
例えば、4級アルキルアンモニウム塩型カチオン性界面活性剤と、両親媒性物質、ステロール誘導体、水を特定の配合比率において混合することにより、水相が内包されたラメラ液晶の2分子膜小胞体、すなわちベシクルが形成されることが知られている(特許文献2参照)。
また、別の検討として、4級アルキルアンモニウム塩型カチオン性界面活性剤と、ステロール誘導体、セラミドに、カチオン性高分子(特許文献3参照)やシリコーンを(特許文献4参照)配合することにより、ベシクルが形成されることも知られている。
更に、上記特許文献2〜4とは異なるカチオン性界面活性剤として、疎水基内にエステル構造を有するジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェートを用いて、コレステロールなどのステロール類を配合した例もある(特許文献5参照)。
【0003】
【非特許文献1】香粧品科学会誌(Vol.13 No.3 1989 第134頁−第139頁)
【特許文献1】特開2006−176410号公報
【特許文献2】特開2001−97811号公報
【特許文献3】特開2006−199634号公報
【特許文献4】特開2006−199635号公報
【特許文献5】特開2006−182743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2〜4の技術は、いずれも4級アルキルアンモニウム塩型カチオン性界面活性剤を用いたものであり、4級アルキルアンモニウム塩型カチオン性界面活性剤を用いたのでは、ステロール類のベシクル化が十分に行なわれない場合や、経時でベシクルが壊れ析出し結晶化して沈殿するなど安定性が十分でない場合があった。更にこのようなベシクルを毛髪用化粧料に配合し毛髪に適用しても、毛髪になじみ、毛髪内部に浸透していく感じ;浸透感が得られにくく、しっとり感も得がたいという問題があった。
【0005】
また、特許文献5によれば、コレステロール等の難溶性成分は、ベシクル中に安定配合できない場合があり、そのため経時でコレステロール等が析出してしまい、毛髪に有効な効果をもたらし難いという問題があった。
【0006】
従って、本発明は毛髪に有効な成分であるコレステロール等のステロール類を水系媒体に安定に配合でき、且つ経時安定性に優れるベシクル組成物及びそれを配合した化粧料を提供することを課題とする。特には、該組成物を配合した毛髪用化粧料であって、毛髪に適用した場合には、毛髪に素早くなじみ、毛髪内部への浸透性に優れ、しっとり感を付与する効果に優れた毛髪用化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の化学構造を有するカチオン性界面活性剤とステロール類、水を組み合わせることで、経時安定性に優れるベシクル組成物が得られ、該組成物を水系の化粧料に安定的に配合できること、更に、毛髪用化粧料に配合し、毛髪に適用した場合、化粧料が毛髪表面にいつまでも留まることなく素早くなじみ、毛髪内部への浸透性に優れ、有効成分が浸透していく感じを実感でき、しっとり感の付与効果に優れる毛髪用化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(C)、
(A) 下記の一般式(1)
【化1】
(式中、RCO−、RCO−は、同一又は異なって、炭素数8乃至22個の飽和又は不飽和の脂肪族アシル基、Rは−CH、又は−CHOH、又は−COH、m、nは、同一又は異なって、2又は3、Xはハロゲン、メトサルフェート、エトサルフェート又はメトホスフェートを表す)で表されるカチオン性界面活性剤
(B) ステロール類
(C) 水
を含有することを特徴とするベシクル組成物を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、成分(A)と成分(B)のモル比(A)/(B)が、100/1〜1/4の範囲内にあることを特徴とするベシクル組成物を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、成分(B)がコレステロール及び/又はフィトステロールであることを特徴とするベシクル組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、該ベシクル組成物を配合することを特徴とする化粧料を提供するものである。本発明の化粧料の好ましい態様は、毛髪用化粧料である。
【0012】
また、本発明は、該ベシクル組成物、若しくは該化粧料に、更に成分(D)として、一価の低級アルコールを配合することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のベシクル組成物は、経時安定性に優れるものであり、また化粧料に安定的に配合することができる。特に該組成物を配合した毛髪用化粧料は、毛髪に適用した場合には、毛髪へ素早くなじみ、毛髪内部への浸透性に優れ、浸透していく感じを実感でき、しっとり感の付与効果に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明品1のベシクル組成物を、透過型電子顕微鏡で観察した写真である。
図2】本発明品1のベシクル組成物においてベシクルが形成されていることの指標となるマルテーゼクロス像の存在を直交ニコル下で偏光顕微鏡観察した写真である。
図3】毛髪内部への浸透性を評価した毛髪横断面の写真である。 図3−1:本発明品5の試料に浸漬した毛髪横断面の写真。 図3−2:比較品2(蛍光マーカー非添加)の試料に浸漬した毛髪横断面の写真。 図3−3:比較品3の試料に浸漬した毛髪横断面の写真。 図3−4:比較品4の試料に浸漬した毛髪横断面の写真。
図4】本発明品5の試料の毛髪中の結合水比率を評価した結果を示すグラフである。
図5】ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート(DEQ)を含有するベシクル組成物の経時安定性を評価した結果である。
図6】ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(DSAC)を含有するベシクル組成物の経時安定性を評価した結果である。
図7】ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート(DEQ)を含有するベシクル組成物の示差走査熱量(DSC)測定結果である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明について詳細に説明する。
本発明は、所定の成分(A)〜(C)を含有するベシクル組成物に関する。
なお、本明細書において「ベシクル組成物」とは、水中で球状の閉鎖小胞体を意味し、偏光顕微鏡観察でマルテローゼクロス像が観察されるものであり、また別の観察方法としては、透過型電子顕微鏡観察で多重層構造のマルチラメラベシクルが観察されるものをいう。
【0016】
本発明に用いられる成分(A)のカチオン性界面活性剤は、下記の一般式(1)
【化2】
(式中、RCO−、RCO−は、同一又は異なって、炭素数8乃至22個の飽和又は不飽和の脂肪族アシル基、Rは−CH、又は−CHOH、又は−COH、m、nは、同一又は異なって、2又は3、Xはハロゲン、メトサルフェート、エトサルフェート又はメトホスフェートを表す)で表される、2長鎖型のカチオン性界面活性剤で、本発明においてベシクルを形成する2分子膜の主成分である。疎水鎖中にエステル結合を有し(エステルクォートとも称される)、一般に、同一炭素数の長鎖アルキル型のカチオン性界面活性剤と比較して、毛髪のコンディショニング効果に優れており、また生分解性にも優れている。
本発明においては、成分(A)を用いることで、経時安定性に優れ、ベシクル構造における二分子膜の変形性を評価する微視的な膜流動性(以下、「ベシクル膜の変形性」と略す)にも優れたベシクル組成物を調製することができるので、成分(A)により形成されるベシクル中に後述する成分(B)を内包させると、成分(B)等の毛髪有効成分が経時で析出することなどがなく、使用時まで安定に保持できる。そして、毛髪に塗布した際には、毛髪内部まで効率的に浸透し、成分(B)等の毛髪有効成分を安定的に毛髪内部へ送達させ、しっとり感を付与する効果の高いものが得られる。
成分(A)の具体例としては、ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ジステアロイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート等が挙げられ、これらを1種、又は2種以上組み合わせて使用でき、DEHYQUART L80、DEHYQUART F75、DEHYQUART AU56/G、DEHYQUART C4046(いずれもコグニス社製)などの市販品も使用可能である。このうち、特にジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェートが、得られるベシクル組成物の経時安定性や、そのベシクル組成物を配合した毛髪用化粧料を毛髪に塗布した際の浸透性(浸透感)の点から好ましい。
【0017】
本発明の成分(A)のベシクル組成物中の配合量は、特に限定されないが、0.001〜10質量%(以下、単に「%」と略す)が好ましく、0.01〜5%がより好ましい。
配合量がこの範囲であれば、経時安定性やベシクル膜の変形性に優れたベシクル組成物が得られるため、これを化粧料に配合した場合には、使用するまでは非常に安定で、例えば、毛髪に塗布した際には、成分(B)等の毛髪有効成分が毛髪内部まで効率的に浸透し、しっとり感に優れたものが得られる。
【0018】
本発明に用いられる成分(B)のステロール類は、ベシクルの形成、安定化に寄与するとともに、得られたベシクル組成物を、毛髪用化粧料に配合した際の毛髪へのしっとり感の付与に寄与するものとして配合される。
【0019】
例えば、従来汎用されているカチオン界面活性剤として、エステル基を含まない長鎖アルキル基を有する、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(ライオン・アクゾ社製)を含むベシクル系に、ステロール類を添加すると、ベシクル系が凝集等をおこす場合がある。しかしながらエステル基を含む長鎖アルキル鎖を含む上記所定の式(1)で表されるカチオン界面活性剤を含むベシクル系に、ステロール類を添加すると、予期せぬことに、ベシクル系を顕著に安定化することが、本発明者によって見出された。
【0020】
成分(B)のステロール類は、ステロール骨格を持つ物質あるいはその誘導体であればいずれでもよく、例えば、コレステロール、フィトステロール(β−シトステロール、カンペステロール、スティグマステロール、ブラシカステロール等)、ラノステロール、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、マカデミアンナッツ油脂肪酸コレステリル、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル、ヤシ油脂肪酸コレステリル、オレイン酸フィトステリル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(オクチルドデシル・フィトステリル・ベヘニル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・オクチルドデシル)、オレイン酸フィトステリル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができるが、中でも、下記一般式(2)に示すステロール骨格を有し、及びRが脂肪族基(例えば、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、及び直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基)であるステロール類が好ましく、特に、コレステロール、フィトステロールが好ましい。
【0021】
【化3】
【0022】
市販品としては、ニッスイマリンコレステロール(日本水産社製)、マリンコレステロール(共和テクノス社製)、フィトステロール(エーザイ・フードケミカル社製)、ライスステロール(築野ライスファインケミカルズ社製)、EMALEX CS−10(日本エマルジョン社製)、エルデュウ PS−203、エルデュウ PS−304、エルデュウ PS−306(以上、味の素社製)等が使用可能である。
【0023】
本発明の成分(B)の配合量は、特に限定されないが、ベシクル組成物中0.001〜5%が好ましく、0.01〜3%がより好ましい。この範囲で用いれば、ベシクル組成物が良好に形成され、経時安定性に優れ、成分(B)が有効に毛髪内部に浸透するため、十分なしっとり感を感じることができる。
【0024】
また、本発明の成分(A)と成分(B)の配合比は、成分(B)に対する成分(A)のモル比(A)/(B)が、100/1〜1/4が好ましく、9/1〜3/7の範囲内にあることがより好ましい。(A)/(B)のモル比が、この範囲であれば、微視的な膜流動性(ベシクル膜の変形性)に優れ、経時安定性に優れたベシクル組成物となり、毛髪に対して有効な成分(B)を効率的に毛髪内部に浸透させることができ、成分(B)の効果をよりよく発揮できる。
【0025】
本発明に用いられる成分(C)の水は、ベシクルの分散媒体として用いられるものであり、ベシクル組成物及びそれを配合する化粧料の媒体として必須の成分である。その配合量は、他の成分、すなわち、成分(A)、(B)、或いは成分(A)、(B)及び後述する成分(D)や任意に配合する成分の量により適宜決められるが、概ね5〜99%、より好ましくは20〜90%、そしてさらに好ましくは60〜90%の範囲で用いることができる。
【0026】
本発明のベシクル組成物には、上記成分(A)〜(C)の他に、成分(B)の結晶析出に対する経時安定性をより向上させる目的で、25℃において液状である高級脂肪酸を配合することができる。25℃において液状の高級脂肪酸であればいずれを用いてもよく、例えば、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸等の飽和分岐脂肪酸や、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。また不飽和脂肪酸を含む植物油としては、アボカド油、アルモンド油、精製ホホバ油、グレープシード油、ゴマ油、小麦胚芽油、コメヌカ油、大豆油、トウモロコシ胚芽油、ナタネ油、マカデミアナッツ油、メドウホーム油、ピーナッツ油、ローズヒップ油等を用いてもよい。25℃における液状の高級脂肪酸の含有量としては、成分(B)に対して質量比で0.5〜1.5倍量が好ましいものとして挙げられる。
【0027】
本発明のベシクル組成物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、100℃以上に加温した成分(A)、(B)を、90℃以上に加温した成分(C)に分散させ、その後攪拌を続けながら徐々に室温まで冷却させることにより得られる。また、使用感や毛髪への更なる効果等を期待して後述するような任意に配合可能な成分をベシクル調製時に、適宜その性質等に応じて加えても良い。
得られたベシクル組成物の平均粒子径は、概ね100nm〜10μmであるが、好ましくは後述するエクストルーダー等の機器を用いて平均粒子径を50〜500nmとすることにより、経時でもベシクルが崩壊することがなく、平均粒子径の変化(増大)も少ない安定性に優れたものが得られる。
【0028】
上記方法等によって調製される本発明のベシクル組成物は、これを毛髪用化粧料等の種々の化粧料に配合することができる。特に、本発明のベシクル組成物が配合された毛髪用化粧料は、有効成分の毛髪内部への浸透性に優れるので好ましい。
【0029】
本発明は、本発明のベシクル組成物を配合した化粧料にも関する。本発明のベシクル組成物を配合した化粧料には、成分(D)として、低級一価アルコールを配合することができる。
成分(D)の低級一価アルコールは、一般に毛髪用化粧料において、塗布時の乾きの速さや清涼感を奏する上で重要な成分とされており、毛髪へのなじみの良さに寄与するが、ベシクル組成物配合系においては、低級一価アルコールを配合することは経時安定性の確保を困難にするものとして知られている。
しかしながら、本発明においては、上記成分(A)を用いてベシクル組成物を調製することにより、成分(D)の低級一価アルコールを配合しても、経時安定性の良好なものが得られ、このベシクル組成物を配合した毛髪用化粧料を毛髪に適用した場合、素早くなじみ、毛髪内部への浸透性に優れ、有効成分の浸透感を実感でき、しっとり感を付与する効果も高い良好なものが得られる。
成分(D)の低級一価アルコールは、化粧料一般に用いられるものであれば特に制限なく用いることができ、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等を挙げることが出来るが、本発明においてはエチルアルコールが好ましい。
【0030】
本発明の成分(D)の配合量は、特に限定されず、調製する化粧料の目標品質として望まれる特性、例えば、なじみ、毛髪内部への浸透性等に応じて適宜決められるが、化粧料全量中、概ね0.1〜30%が好ましく、1〜30%がより好ましく、1〜25%がさらに好ましく、5〜20%がよりさらに好ましい。
【0031】
本発明の化粧料の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、上記の通り、成分(A)、(B)を、成分(C)に分散させた後、室温まで冷却させてベシクル組成物を調製すること、及び該ベシクル組成物に、成分(D)や、後述の任意成分等を配合すること、を含む方法により製造することができる。配合される任意の成分は、使用感や毛髪への更なる効果等を期待して配合される。
本発明のベシクル組成物を配合し、毛髪用化粧料とすることにより、成分(B)などの有効成分をベシクルを形成せずに配合した毛髪化粧料と比較して、経時安定性に優れ、且つ、使用時の毛髪内部への浸透性、浸透感の実感に優れた、しっとり感の付与効果の高い良好なものが得られる。
特に成分(D)を配合した化粧料においては、成分(D)は、本来、経時安定性の確保を困難なものとする傾向にある成分であるにもかかわらず、本発明のベシクル組成物を配合することで、良好な経時安定性を有し、且つ、例えば、毛髪用化粧料の態様では、毛髪に素早くなじみ、毛髪内部への浸透性、浸透感に優れ、しっとり感を付与する効果に優れたものとすることができる。
【0032】
本発明の化粧料へのベシクル組成物の配合量は、特に限定はなく、化粧料全量中、0.5%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。また、本発明のベシクル組成物をそのまま100%化粧料として用いることもできる。
なお、本発明の化粧料の剤型については特に制限はないが、ベシクルを安定に維持するという観点では、外相が水系である剤型の化粧料として調製するのが好ましい。外相は、水以外に、水に溶解及び/又は分散可能な種々の剤(例えば、エチルアルコール、多価アルコール、塩類、界面活性剤等)を含んでいてもよい。
【0033】
本発明のベシクル組成物及びそれを配合する化粧料には、上記成分(A)〜(C)、及び成分(D)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、これら以外の油剤や界面活性剤、アルコール類、金属セッケン、ゲル化剤、粉体、水溶性高分子、皮膜形成剤、樹脂、保湿剤、抗菌剤、香料、消臭剤、塩類、pH調整剤、清涼剤、紫外線吸収剤、植物抽出物、アミノ酸類、糖類、ビタミン類等の毛髪ケア用美容成分等を配合することができる。
【0034】
油剤としては、常温で液体、ペースト状及び固形状の炭化水素類、ロウ類、エステル類、脂肪酸類(上記25℃で液状の高級脂肪酸であっても、上記25℃で非液状の高級脂肪酸であってもよい)、油脂等の油性成分を使用することができる。具体的には、例えば炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、シリコーン油、フッ素系油剤類、ラノリン誘導体類等が使用可能であり、より具体的には、例えば、オゾケライト、セレシン、パラフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸セチル等のワックス類、ワセリン、流動パラフィン、プリスタン、ポリイソブチレン、スクワラン、スクワレン、流動パラフィン等の炭化水素類、ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ等のロウ類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、シア脂等の固形油、牛脂、牛脚脂、牛骨脂、硬化牛脂、硬化油、タートル油、豚脂、馬脂、ミンク油、肝油、卵黄油等の動物油、ヤシ油、オリーブ油、米胚芽油、米ヌカ油、ヒマシ油、マカデミアンナッツ油、オリーブ油、アーモンド油、アボカド油、ツバキ油、ローズヒップ油、サフラワー油、サンフラワー油等の植物油脂、ホホバ油などの液状ワックス、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、カプリン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸2ーエチルヘキシル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソセチル、ステアリン酸2ーエチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オクチルドデシル、2ーエチルヘキサン酸セチル、2ーエチルヘキサン酸セトステアリル、イソステアリン酸ヘキシル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、オクタン酸イソステアリル、イソペラルゴン酸2ーエチルヘキシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、イソパルミチン酸2ーエチルヘキシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソノナン酸イソノニル、ジオクタン酸エチレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリカプリン酸グリセリル、トリ2ーエチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2ーエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン等のエステル油、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、12−ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、2−エチルヘキサン酸等の脂肪酸類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油、パーフルオロデカン等のフッ素系油、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、硬質ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル等のラノリン誘導体等が挙げられる。
【0035】
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性、非イオン性のいずれでもよく、アニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウムやパルミチン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸セッケン、アルキルエーテルカルボン酸及びその塩、アミノ酸と脂肪酸の縮合等のカルボン酸塩、アルキルスルホン酸、アルケンスルホン酸塩、脂肪酸エステルのスルホン酸塩、脂肪酸アミドのスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩とそのホルマリン縮合物のスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキル及びアリルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、ロート油等の硫酸エステル塩類、アルキルリン酸塩、エーテルリン酸塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩、アミドリン酸塩、N−アシルアミノ酸系活性剤等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、成分(A)以外の、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアミノアルコール脂肪酸誘導体等のアミン塩、アルキル四級アンモニウム塩、芳香族四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、ベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性オルガノポリシロキサン、ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド、糖エーテル、糖アミド等が挙げられる。
【0036】
アルコール類としては、成分(D)以外のものであればよく、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコ−ル、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール等がある。
【0037】
金属セッケンとしては、12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム、ラウリン酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛等が挙げられる。
【0038】
ゲル化剤としては、N−ラウロイル−L−グルタミン酸、α,γ−ジ−n−ブチルアミン等のアミノ酸誘導体、デキストリンパルミチン酸エステル、デキストリンステアリン酸エステル、デキストリン2−エチルヘキサン酸パルミチン酸エステル等のデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル、モノベンジリデンソルビトール、ジベンジリデンソルビトール等のソルビトールのベンジリデン誘導体、ジメチルベンジルドデシルアンモニウムモンモリロナイトクレー、ジメチルジオクタデシルアンモニウムモンモリロナイトクレー等の有機変性粘土鉱物等が挙げられる。
【0039】
粉体としては、通常の化粧料に使用されるものであれば、その形状(球状、針状、板状、等)や粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)、粒子構造(多孔質、無孔質等)を問わず、いずれのものも使用することができ、例えば、無機粉体としては、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、合成雲母、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、モンモリロナイト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン等;有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタン、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、テトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロース、シルクパウダー、ナイロンパウダー、12ナイロン、6ナイロン、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、微結晶繊維粉体、ラウロイルリジン等;有色顔料としては、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、γ−酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した複合粉体等;パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母等;金属粉末顔料としては、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー、ステンレスパウダー等;タール色素としては、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等;天然色素としては、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等から選ばれる粉体で、これらの粉体を複合化したり、油剤やシリコーン、又はフッ素化合物で表面処理を行なった粉体でも良い。
【0040】
水溶性高分子としては、アラビアゴム、トラガカント、ガラクタン、キャロブガム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード、アルゲコロイド、トラントガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン等の植物系高分子、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、ベントナイト、ラポナイト、ヘクトライト等の無機系水溶性高分子等がある。また、この中には、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の皮膜形成剤も含まれる。
【0041】
保湿剤としては、例えば、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムチン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸等のムコ多糖類、大豆タンパク、小麦タンパク等のタンパク質、或いはこれらの誘導体、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられる。
【0042】
抗菌剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸エステル、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール等が挙げられる。
【0043】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられ、PABA系としては、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、パラジヒドロキシプロピル安息香酸エチル等が挙げられ、ケイ皮酸系としては、p−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、4−メトキシケイ皮酸−2−エトキシエチル等が挙げられ、サリチル酸系としては、サリチル酸−2−エチルヘキシル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル等が挙げられ、その他、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。
【0044】
pH調整剤としては、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、リン酸及びこれらの塩、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等、清涼剤としては、L−メントール、カンフル等が挙げられる。
【0045】
植物抽出物としては、シラカバ、ハマメリス、サルビア、ホップ、ローズマリー、バラ、オレンジ、アスパラガス、センブリ、オウゴン、スイカズラ、シソ、トウガラシ、サンショウ、イラクサ、チャ、ニンジン、サボンソウ、イブキトラノオ、ブドウ、海藻、ダイズ、ニワトコ等の植物や生薬の抽出物が挙げられる。
【0046】
アミノ酸類としては、グリシン、プロリン、イソロイシン、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、リジン、セリン、システイン、アセチルシステイン等が挙げられる。
【0047】
糖類としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0048】
ビタミン類としては、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンB及びその誘導体、ビタミンC及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、リノレン酸及びその誘導体等のビタミンF類;フィトナジオン、メナキノン、メナジオン、メナジオール等のビタミンK類;エリオシトリン、ヘスペリジン等のビタミンP類;その他、ビオチン、カルチニン、フェルラ酸等が挙げられる。
【0049】
本発明のベシクル組成物を配合した毛髪用化粧料等の化粧料は、液状、乳液状、クリーム状、ジェル状等、剤型に特に限定はなく調製することができ、例えば、ヘアローション、ヘアミルク、ヘアクリーム、ヘアトリートメント、枝毛コート剤等のアウトバスヘア製品や、リンス、ヘアパック、シャンプー等のインバスヘア製品等の毛髪用化粧料とすることができる。また、噴射剤を配合してエアゾールヘアスプレーやヘアフォームとしての実施も可能である。エチルアルコールなどの成分(D)を配合したヘアローション等の剤型においては、特に有効である。すなわち、通常、成分(B)を乳化組成物に配合した剤型では、成分(D)の配合量が多くなると、安定に配合することが困難となるが、本発明のベシクル組成物を用いた剤型では、経時安定性を確保しつつも、毛髪へのなじみに優れたものとなり、本願の構成とすることの良さが存分に発揮される。
【0050】
成分(D)を配合した化粧料は、例えば、上記のようにして、成分(A)、(B)を、成分(C)に分散させた後、室温まで冷却させてベシクル組成物を調製すること、該組成物に成分(D)を加えることを含む方法により得られる。また、ベシクル組成物の調製同様、使用感や毛髪への更なる効果等を期待して上記任意成分を適宜その性質等に応じて加え製造することができる。
【実施例】
【0051】
次に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0052】
実施例1(本発明品1及び比較品1):ベシクル組成物
下記表に示す処方及び下記製造方法により、本発明の成分(A)を用いたベシクル組成物(本発明品1)と、成分(A)の代わりに一般的な2長鎖の4級アルキルアンモニウム塩型カチオン性界面活性剤を用いたベシクル組成物(比較品1)を調製し、下記の方法によりベシクルが生成されていることを確認し、更に経時安定性をベシクルの変化(平均粒子径)で評価した。なお比較品1で用いた4級アルキルアンモニウム塩型カチオン性界面活性剤は、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(「アーカード2HP−75」ライオン・アクゾ社製)である。
【0053】
<ベシクル生成の確認>
直交ニコル下で偏光顕微鏡(オリンパス社製 DP−70)観察を行ない、ベシクルの存在(ベシクルが形成されていることの指標となるマルテーゼクロス像の存在)を確認した。また、得られたベシクル組成物(精製水10倍希釈分散物に1%リンタングステン酸水溶液を等量に加え、ネガティブ染色)について、透過型電子顕微鏡(HITACHI H−7650 加圧電圧:80kV)を用いて観察した。ベシクルの生成は、多重層構造のマルチラメラベシクルの形成を指標として確認できる。
本発明品1には、偏光顕微鏡の観察により、ベシクルが形成されていることの指標となるマルテーゼクロス像が多数観察され、また、透過型電子顕微鏡の観察により、多重層構造のマルチラメラベシクルが観察された。
本発明品1について、透過型電子顕微鏡で観察した写真を図1に、偏光顕微鏡で観察した写真を図2に示した。
【0054】
【表1】
【0055】
(製造方法)
A:成分1〜3を100℃に加熱溶解する。
B:成分4を90℃に加熱する。
C:BにAを添加してホモミキサーにて混合攪拌する。
D:Cを室温まで冷却して、ベシクル組成物を得た。
【0056】
<経時安定性の評価>
経時安定性の評価として、下記方法により、ベシクルの平均粒子径および状態の変化を経時で測定(観察)し、それを更に下記判定基準を用いて判定した。結果は上記表に併せて示す。
(評価方法)
本発明品1、比較品1のベシクル組成物を60℃に加熱し、PCメンブラン(ポアサイズ:200nm WHATMAN社製)を装着したエクストルーダー(Avanti Polar Lipids社製)内を60℃条件下でそれぞれ10回通過させ試料を調製する。
調製した試料の平均粒子径を、調製直後、30℃のインキュベーターにて3日、及び1ヶ月間静置したものについて、動的光散乱法(Beckman Coulter N5)を用いて測定した。
更に、調製直後の試料の平均粒子径に対する1ヶ月後の試料の平均粒子径の変化(増大)の程度やベシクルの状態変化を、下記4段階判定基準を用いて判定した。
<4段階判定基準>
(判定) :(調製直後に対する1ヶ月後の平均粒子径および状態の変化)
◎(非常に良好):変化が見られない、または調製直後の平均粒子径の2倍以下
○(良好) :2倍より大きく5倍以下
△(やや不良) :5倍より大きく20倍以下
×(不良) :20倍より大きい、またはベシクルの崩壊による定量不能な状態
【0057】
透過型電子顕微鏡及び偏光顕微鏡の観察結果(図1、2)、並びに上記表の結果から明らかな如く、成分(A)を用いた本発明品1のベシクル組成物は、良好なベシクル組成物を形成し、経時安定性においても優れたものであった。
一方、成分(A)の代わりに2長鎖の4級アルキルアンモニウム塩型カチオン性界面活性剤を用いた比較品1のベシクル組成物は、ベシクルは形成されるものの、調製直後のベシクルに比べて、1ヶ月後のベシクルの平均粒子径がひどく増大、或いはベシクルが崩壊(粒度分布のブロード化)してしまい、経時安定性の点で劣るものであった。
【0058】
実施例2(本発明品2〜4):ベシクル組成物
上記本発明品1の調製において成分(A)として使用した、ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート(80%)プロピレングリコール溶液を、ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート(90%)イソプロパノール溶液に代えた以外、同様にしてベシクル組成物を調製した(以下、これを「本発明品2」とする)。また、本発明品1の(A)/(B)のモル比7/3を、1/4にかえた以外は同様にして、ベシクル組成物を調製した(以下、これを「本発明品3」とする)。さらに、本発明品3に、イソステアリン酸を添加して同様にベシクル組成物を調製した(以下、これを「本発明品4」とする)。実施例1と同様に、ベシクルの状態変化を評価した。処方及び結果を下記表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
(本発明品2〜4の製造方法)
A:成分1〜4を100℃に加熱溶解する。
B:成分5を90℃に加熱する。
C:BにAを添加してホモミキサーにて混合攪拌する。
D:Cを室温まで冷却して、ベシクル組成物を得た。
【0061】
<毛髪内部への浸透性の評価(毛髪断面の観察)>
実施例3(本発明品5及び比較品2〜4)
次に、下記表に示す処方及び下記製造方法により、蛍光性のマーカー;ピレン(pyrene)含有ベシクル組成物(試料)を調製し、下記方法により、毛髪内部への浸透性を評価した。
【0062】
【表3】
【0063】
(製造方法)
A:成分1〜5を100℃に加熱溶解する。
B:成分6を90℃に加熱する。
C:BにAを添加してホモミキサーにて混合攪拌する。
D:Cを室温まで冷却し試料を調製した。
【0064】
(評価方法)
(1)上記表及び上記製造方法により調製したピレン含有ベシクル組成物等の試料に毛束(毛髪)を12時間浸漬
(2)(1)から毛髪を取り出して樹脂包埋し、ミクロトームで毛髪横断面の切片作製
(3)(2)の毛髪横断面の切片を蛍光顕微鏡で観察(蛍光顕微鏡の観察条件:励起フィルタ:330−385nm 蛍光フィルタ:420nm 露光時間:0.20S)。得られたベシクル組成物について、蛍光性のマーカーであるピレンの毛髪内部への浸透性を見ることで、ベシクル組成物(コレステロール)の毛髪内部への浸透性の評価とした。
【0065】
上記(3)の蛍光顕微鏡で観察した結果(写真)を図3に示す。
図3の写真のうち、図3−1、図3−2、図3−3、図3−4は、それぞれ、本発明品5、比較品2(蛍光マーカー;ピレン非添加)、比較品3、比較品4の試料に浸漬した毛髪の断面図である。
図3の写真において、青白く光っている部分(白黒図面では白く見える部分)は、蛍光性マーカーであるピレンが存在していることを示している。
図3の写真より、ピレンを配合していない比較品2に浸漬した図3−2は殆ど何も見えず(毛髪断面の形状が分からず)、ピレンを炭化水素油に添加しただけの比較品3に浸漬した図3−3は、ぼんやりと毛髪断面の状態が分かる程度に青く(白黒図面では白く)見えるだけで、成分(A)の代わりに2長鎖の4級アルキルアンモニウム塩型カチオン性界面活性剤を用いた比較品4に浸漬した図3−4は、比較品3に浸漬したものよりはやや青白さ(白黒図面では白さ)が強く毛髪断面の状態が分かるものの、然程違いがないことが分かる。
これに対し、本発明品5のベシクル組成物に浸漬した図3−1は、上記比較試験例に浸漬したものに比べ、毛髪断面全体が明らかに青白く(白黒図面では白く)、毛髪の中心部までよく光っている。
すなわち、成分(A)を用いて調製した本発明品5のベシクル組成物は、毛髪内部への浸透性が非常に高いことが分かる。
これは、成分(A)が、その親油基内に有するエステル結合により微視的な極性を有するため、ベシクル膜の膜流動性(ベシクル膜の変形性)に優れたものとなり、毛髪内部に浸透し易く、そのため高い浸透性が発揮されたものと考えられる。
【0066】
(水分保持能に関する実験条件と結果)
また、上記で調製した本発明品5を毛髪中に浸透させ、毛髪中の結合水比率の定量を行った。その結果を図4に示す。この効果は、毛髪用化粧料(ヘアローション)の毛髪に対するしっとり感付与の効果に関連するものである。なお、測定には近赤外分光光度計「Spectrum400」(Perkin Elmer社製)を用い、被験サンプルとしては、同一人毛からなる毛束(約5g)を利用した。具体的には、以下の通りである。
本発明品5を毛束に塗布し、よく乾燥させて毛髪サンプルを得た。比較対照品として、同一人毛の毛束(約5g)に精製水を塗布し、良く乾燥させた参照用毛髪サンプルを得た。近赤外分光測定は、5350cm−1〜4950cm−1の範囲で行い、得られたスペクトルのピーク面積を、下記式1に適用することで、毛髪中の結合水比率を求めた。
式1
結合水比率(%)={ピーク面積1/(ピーク面積1+ピーク面積2)}×100
ピーク面積1(5150cm−1〜4950cm−1):強い結合水(毛髪から水分蒸散が起こりにくいことを意味する)
ピーク面積2(5350cm−1〜5150cm−1):弱い結合水(毛髪から水分蒸散が起こりやすいことを意味する)
【0067】
図4に示す結果から、精製水を塗布した参照用毛髪サンプルと比較して、本発明品5を塗布した毛髪サンプルは、その毛髪中の結合水比率が、有意に増加していることが理解できる。このことは、本発明品5の塗布により毛髪の水分保持能が向上したことを示しており、即ち、この効果が毛髪に対するしっとり感の付与の起因であることが理解できる。
【0068】
実施例4
(ベシクル組成物の経時安定性評価)
ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート(DEQ)1質量部を水99質量部に分散させて得られたベシクル試料1(即ち、DEQ/CL=10/0(モル比率))、DEQ、及びコレステロール(CL)とをモル比率7/3で予備混合し、そのうちの1質量部を水99質量部に分散させて得られたベシクル試料2(即ち、DEQ/CL=7/3(モル比率))、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(DSAC)1質量部を水99質量部に分散させて得られたベシクル試料3(即ち、DSAC/CL=10/0(モル比率))、並びにDSAC、及びCLとをモル比率7/3で予備混合し、そのうちの1質量部を水99質量部に分散させて得られたベシクル試料4(即ち、DSAC/CL=7/3(モル比率))をそれぞれ調製した。各試料の調製に用いた試薬は、実施例1で用いた試薬とそれぞれ同一である。
【0069】
各試料の調製においては、各成分をテトラヒドロフラン(THF)に溶解後、ロータリーエバポレーターにて溶媒(THF)を除去し、80℃も加熱し、精製水を注ぎ、プローブ式超音波照射機「VCX130PB」(SONIC&MATERIALS社製)を用い、30分間の超音波照射を行って調製した。得られた各試料の固形分濃度は1質量%に統一した。得られたベシクル分散液をエクストルーダーにて複数回処理し、平均粒子径を均一にしてから平均粒子径の経時変化を観察した。
また各試料を偏光顕微鏡で観察し、初期においてはマルテローゼクロス像を確認し、即ち、ベシクルが形成されていることを確認した。
【0070】
結果を図5及び図6にそれぞれ示す。
図5に示す結果から、本発明に係る成分(A)の一例であるジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート(DEQ)を含むベシクル組成物では、コレステロールを添加した試料2のほうが、コレステロールを添加していない試料1と比較して、ベシクル粒子の径が変動せず、経時安定性に優れていることが理解できる。
一方、図6に示す結果から、エステル結合を含まない長鎖アルキル基を有するジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(DSAC)を含むベシクル組成物では、コレステロールの添加により、試料4の経時安定性が顕著に低下したことが理解できる。
【0071】
また、上記で調製したベシクル試料1(即ち、DEQ/CL=10/0(モル比率))、及びベシクル試料2(即ち、DEQ/CL=7/3(モル比率))、については、示差走査熱量を測定したので、その結果を図7に示す。なお、測定には、「DSC7020」(SII社)を用い、参照物質には酸化アルミニウム粉末、昇温条件は1℃/minとして、30℃から110℃の範囲で測定を行った。
図7に示すDSC曲線から、ベシクル試料1において35℃から45℃付近で観察されたDEQのゲル−液晶転移に伴う吸熱ピーク(図中丸印で囲んだ部分)が、ベシクル試料2においては消失していることから、DEQとCLが分子レベルで相溶し、熱的に安定なゲル−液晶中間体が形成されたことが示される。
【0072】
実施例5(本発明品6〜10及び比較品5〜7):毛髪用化粧料(ヘアローション)
下記表に示す下記処方及び下記の製造方法により毛髪用化粧料を調製し、(イ)経時安定性、(ロ)毛髪へのなじみ、(ハ)毛髪への浸透感、(ニ)しっとり感の付与に関して下記の方法により評価した。その結果も併せて下記表に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
(製造方法)
A:成分1〜5を100℃に加熱溶解する。
B:成分8を90℃に加熱する。
C:BにAを添加してホモミキサーにて混合攪拌する。
D:Cを室温まで冷却する。
E:Dに6、7を加え、毛髪用化粧料(ヘアローション)を得た。
【0075】
(評価方法)
(イ)経時安定性
上記実施例1と同じ方法により、経時安定性を判定(評価)した。
【0076】
(評価方法)
(ロ)毛髪へのなじみ
(ハ)毛髪内部への浸透感
(ニ)しっとり感の付与
専門パネル10名による使用テストを行い、(ロ)毛髪へのなじみ、(ハ)毛髪内部への浸透感、(ニ)しっとり感の付与について、それぞれ下記5段階評価基準にて絶対評価し、各試料ごとのパネル全員の評点からその平均値を算出し、それを更に下記4段階判定基準により判定した。
<5段階評価基準>
(評点) : (評価)
5点:非常に良好/非常に強く感じる
4点:良好/強く感じる
3点:普通/やや感じる
2点:やや不良/あまり感じない
1点:不良/感じない
<4段階判定基準>
(判定) : (評点の平均点)
◎ : 4.5点を超える
○ : 3.5点を超え4.5点未満
△ : 1.5点を超え3.5点未満
× : 1.5点以下
【0077】
上記表に示す結果から明らかな如く、本発明品6〜10の毛髪用化粧料はいずれも、比較品5〜7の毛髪用化粧料に比べ、経時安定性に優れ、毛髪に塗布すると素早くなじみ、化粧料が毛髪内部に浸透していく浸透感を実感でき、しっとり感の付与に優れたものであった。また、中でも、本来は経時安定性の確保を困難なものとする傾向にある成分(D)を配合した本発明品9、10は、毛髪へのなじみ、毛髪内部への浸透感、しっとり感の付与等、使用感に優れるだけでなく、十分な経時安定性を示すもので、特に成分(D)としてエチルアルコールを配合した本発明品9は、これを塗布すると毛髪に素早くすっとなじみ、極めて浸透感に優れるものであった。
一方、一般的な2長鎖の4級アルキルアンモニウム塩型カチオン性界面活性剤を用いた比較品5、7は、成分()の代わりにステアリルアルコールを配合した比較品も含め、いずれも経時安定性が悪く、毛髪内部への浸透感にも劣るものであった。
また、成分(B)の代わりに高級アルコールを用いた比較品4は、成分(A)を用いても、経時安定性、及び毛髪内部への浸透感が悪く、しっとり感に付与に劣るものであった。
【0078】
実施例6:ベシクル組成物
(成分) (%)
1.ジパルミトイルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート
90%イソプロパノール溶液 *4 3
2.フィトステロール *5 0.36
3.1,2−ペンタンジオール 5
4.精製水 残量
*4:DEHYQUART AU56/G(コグニス社製 分子量:751)
*5:フィトステロール(エーザイ社製 平均分子量:409.4)
【0079】
(製造方法)
A:成分1〜3を100℃に加熱溶解する。
B:成分4を90℃に加熱する。
C:BにAを添加してホモミキサーにて乳化する。
D:Cを室温まで冷却して、ベシクル組成物を得た。
【0080】
実施例6のベシクル組成物は、実施例1と同様の方法で評価したところ、良好なベシクルが形成され、マルテーゼクロス像が観察された。また、経時での平均粒子径の変化も少なく安定性にも優れたものであった。
尚、実施例6のベシクル組成物において、成分(A)と成分(B)のモル比(A)/(B)は(A)/(B)モル比は4であった。
【0081】
実施例7:毛髪用化粧料(ヘアミルク)
(成分) (%)
1.ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート
80%プロピレングリコール溶液 *1 3
2.コレステロール *3 0.75
3.オリーブ油 0.75
4.プロピレングリコール 5
5.精製水 残量
【0082】
(製造方法)
A:成分1、2、及び3を100℃に加熱溶解する。
B:成分5を90℃に加熱する。
C:BにAを添加してホモミキサーにて混合攪拌する。
D:Cを室温まで冷却してベシクル組成物を得る。
E:Dに成分4を添加して室温まで冷却する。
F:Eを容器に入れて毛髪用化粧料(ヘアミルク)を得た。
【0083】
実施例7の毛髪用化粧料(ヘアミルク)について、実施例1、実施例3と同様の方法にて評価したところ、マルテーゼクロス像が観察され、良好なベシクルが形成されていることがわかった。また、経時安定性、毛髪へのなじみ、浸透感、しっとり感の付与の全てにおいて優れたものであった。
尚、実施例7の毛髪用化粧料(ヘアミルク)において、成分(A)と成分(B)のモル比(A)/(B)は1.8であった。
【0084】
実施例8:毛髪用化粧料(ヘアローション)
(成分) (%)
1.ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート
80%プロピレングリコール溶液 *1 3
2.コレステロール *3 0.36
3.精製水 30
4.ジメチルポリシロキサン(100CS) 0.5
5.イソステアリン酸 0.54
6.プロピレングリコール 5
7.エチルアルコール 5
8.精製水 残量
9.香料 0.1
【0085】
(製造方法)
A:成分1、2、及び5を100℃に加熱溶解する。
B:成分3を90℃に加熱する。
C:BにAを添加してホモミキサーにて混合攪拌する。
D:Cを室温まで冷却しベシクル組成物を得る。
E:Dに成分4、6を加え均一に混合する。
F:Eに成分7〜9を加え均一に混合する。
G:Fを容器に充填して毛髪用化粧料(ヘアローション)を得た。
【0086】
実施例8の毛髪用化粧料(ヘアローション)について、実施例1、実施例3と同様の方法にて評価したところ、良好なマルテーゼクロス像が観察され、良好なベシクルが形成されていることがわかった。また、経時安定性、毛髪へのなじみ、浸透感、しっとり感の付与の全てにおいて優れたものであった。
尚、実施例8の毛髪用化粧料において、成分(A)と成分(B)のモル比(A)/(B)は3.8であった。
【0087】
実施例9:毛髪用化粧料(ヘアエッセンス)
(成分) (%)
1.本発明品1のベシクル組成物 90
2.精製水 4.6
3.グリセリン 5
4.ソルビトール 0.1
5.グリシン 0.1
6.海藻エキス 0.1
7.香料 0.1
【0088】
(製造方法)
A:成分1、2を室温にて均一に混合する。
B:Aに成分3〜6、及び7を加えて均一に混合する。
C:Bを容器に充填して毛髪用化粧料(ヘアエッセンス)を得た。
【0089】
実施例9の毛髪用化粧料(ヘアエッセンス)について、実施例3と同様の方法にて評価したところ、経時安定性、毛髪へのなじみ、浸透感、しっとり感の付与の全てにおいて優れたものであった。
【0090】
実施例10:毛髪用化粧料(ヘアミスト)
(成分) (%)
1.実施例6のベシクル組成物 1
2.加水分解コラーゲン溶液 0.3
3.精製水 残量
【0091】
(製造方法)
A:成分1〜3を室温にて均一に混合する。
B:Aをミスト容器に充填して毛髪用化粧料を得た。
【0092】
実施例10の毛髪用化粧料(ヘアミスト)について、実施例3と同様の方法にて評価したところ、経時安定性、毛髪へのなじみ、浸透感、しっとり感の付与の全てにおいて優れたものであった。
【0093】
実施例11:ボディ用保湿化粧料
(成分) (%)
1.本発明品4のベシクル組成物 0.5
2.L−テアニン 0.1
3.ヒアルロン酸ナトリウム(1%水溶液) 5.0
4.精製水 残量
【0094】
(製造方法)
A:成分1〜4を室温にて均一に混合する。
B:Aを容器に充填してボディ用保湿化粧料を得た。
【0095】
実施例11のボディ用保湿化粧料について、実施例3と同様の方法にて評価したところ、経時安定性、肌へのなじみ、浸透感、しっとり感の付与の全てにおいて優れたものであった。
図4
図5
図6
図7
図1
図2
図3