特許第5774993号(P5774993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5774993肢切断患者の補正容積区画を量定する方法並びにこの方法を実施する装置及びコンピュータプログラム製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774993
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】肢切断患者の補正容積区画を量定する方法並びにこの方法を実施する装置及びコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/05 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   A61B5/05 B
   A61B5/05ZDM
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-531393(P2011-531393)
(86)(22)【出願日】2009年10月14日
(65)【公表番号】特表2012-505673(P2012-505673A)
(43)【公表日】2012年3月8日
(86)【国際出願番号】EP2009007366
(87)【国際公開番号】WO2010043381
(87)【国際公開日】20100422
【審査請求日】2012年10月9日
(31)【優先権主張番号】102008051347.4
(32)【優先日】2008年10月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】モイスル ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーベル ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヴィースコッテン セバスティアン
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−011465(JP,A)
【文献】 特開2006−015039(JP,A)
【文献】 特開平11−155829(JP,A)
【文献】 特開2007−244893(JP,A)
【文献】 特表2008−504082(JP,A)
【文献】 特開2007−181524(JP,A)
【文献】 特開2005−125059(JP,A)
【文献】 特開平11−113871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻tにおける患者の補正された容積区画V(t)を量定する方法であって、前記患者が個別的な身体各部又はその一部を失っている、方法において、
前記患者の体重M(t)を求めるステップと、
時刻tにおける前記患者に関するバイオインピーダンスデータを測定するステップと、
前記測定したバイオインピーダンスデータによって前記患者が個別的な身体各部又はその一部を失っていない場合の容積区画に相当する前記患者の容積区画V′(t)を量定するステップと、
前記容積区画V′(t)又はこれと相関した値に前記失われた身体各部又はその一部について特有の係数kを乗算することによって前記補正容積区画V(t)を量定するステップとを有し、
前記容積区画V′(t)を量定するステップにおいて、補正された体重M′(t)を用い、該補正体重M′(t)は、前記測定した体重M(t)を前記補正係数kで除算した結果としての商から得られ、前記患者が個別的な身体各部又はその一部を失っていない場合の体重に相当する、方法。
【請求項2】
前記容積区画は、以下の群、即ち、無脂肪組織(LTM)、脂肪組織(ATM)、水分過剰容積部(OH)、細胞外水(ECW)、細胞内水(ICW)から成る群から選択された少なくとも1つである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記バイオインピーダンス測定は、全身測定である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記全身測定は、電圧及び電流電極によって実施され、前記電極は、1本の腕又はその一部がない場合且つ/或いは1本の脚又はその一部がない場合、存在する手首の付近及び存在する足首の付近に取り付けられる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記全身測定は、電圧及び電流電極によって実施され、前記電極は、両脚又は両脚の一部がない場合、両方の手首の付近に取り付けられる、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記全身測定は、電圧及び電流電極によって実施され、前記電極は、両腕又は両腕の一部がない場合、両方の足首の付近に取り付けられる、請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記補正係数kは、比較データに基づいて定められ、この場合、前記失われた身体各部又はその一部の比率は、身体各部又はその一部を失っていない比較患者の重量に対するその比率に基づいて定められる、請求項1〜6のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項8】
時刻tにおける患者の補正された容積区画V(t)を量定する装置(10)であって、前記患者が個別的な身体各部又はその一部を失っている、装置において、
前記患者に関するバイオインピーダンスデータの測定のためのバイオインピーダンス測定装置(5)と、
前記測定したバイオインピーダンスデータによって前記患者が個別的な身体各部又はその一部を失っていない場合の容積区画に相当する前記患者の容積区画V′(t)を求め、前記容積区画V′(t)又はこれと相関した値に前記失われた身体各部又はその一部に特有の係数kを乗算することによって前記補正容積区画V(t)を求めるよう構成された評価ユニット(1)と、
前記患者の体重M(t)の入力のための入力ユニット(2)と、を有し、
前記入力ユニット(2)は、前記患者の体重M(t)の手動入力のための入力装置及び/又は前記患者の測定体重M(t)の測定のための秤り(7)を有し、
前記評価ユニット(1)は、前記患者の体重M(t)に基づき、前記測定体重M(t)を前記補正係数kで除算した結果としての商から得られ、前記患者が個別的な身体各部又はその一部を失っていない場合の体重に相当する補正体重M′(t)を求めると共に、前記補正体重M′(t)によって前記容積区画V′(t)を量定するよう構成されている、装置。
【請求項9】
前記容積区画は、以下の群、即ち、無脂肪組織(LTM)、脂肪組織(ATM)、水分過剰容積部(OH)、細胞外水(ECW)、細胞内水(ICW)から成る群から選択された少なくとも1つである、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記評価ユニット(1)は、更に、前記バイオインピーダンス測定値を全身測定値として評価するよう構成されている、請求項8又は9記載の装置。
【請求項11】
前記評価ユニット(1)は、1本の腕又はその一部がない場合且つ/或いは1本の脚又はその一部がない場合、電圧及び電流電極(5a,5b)が存在する手首の付近及び存在する足首の付近に取り付けられることに基づいて前記全身測定値を評価するよう構成されている、請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記評価ユニット(1)は、両脚又は両脚の一部がない場合、電圧及び電流電極(5a,5b)が両方の手首の付近に取り付けられることに基づいて前記全身測定値を評価するよう構成されている、請求項10記載の装置。
【請求項13】
前記評価ユニット(1)は、両腕又は両腕の一部がない場合、電圧及び電流電極(5a,5b)が両方の足首の付近に取り付けられることに基づいて前記全身測定値を評価するよう構成されている、請求項10記載の装置。
【請求項14】
異なる肢切断度に関する種々の補正係数kがメモリユニット(3)に記憶されていて、入力ユニット(2)を介して選択可能である、請求項8〜13のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項15】
請求項1〜7のうちいずれか一に記載の方法をコンピュータに実行させるように動作可能なコンピュータプログラムが記録されているコンピュータで読み出し可能な記録媒体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオインピーダンス測定値によって患者の水和及び/又は栄養状態をモニタする分野に関する。
【背景技術】
【0002】
腎臓は、人体の健康状態を維持するために幾つかの機能を有している。第1に、腎臓は、患者の血液量(血液容積)から過剰の流体を分離することにより流体のバランスを制御する。第2に、腎臓は、血液から廃棄物質、例えば尿素やクレアチニンを除去して血液を浄化するのに役立つ。最後にもう1つ重要なこととして、腎臓は又、健常且つ必要な濃度レベルを保証するために血液中の特定の物質、例えば電解質のレベルを制御する。
【0003】
腎不全の場合、摂取された流体は、身体組織中に貯留し、血液循環又は血管系に対するストレスを増大させる。流体のこの過剰分は、限外濾過による透析処置の実施中、血液から除去されなければならない。除去される流体の量が不十分であると、長期間後の結果は、深刻である場合があり、これにより高い血圧や心不全が生じる場合がある。心不全の発生の恐れは、透析患者において明らかに増大し、流体の過負荷の状態が決定的な要因のうちの1つであるとみなされる。多すぎるほどの流体の除去は、同様に、危険である。というのは、透析患者は、脱水状態になり、これにより高血圧が生じるからである。
【0004】
乾燥重量(話を簡単にするために、「重量」と「質量」という用語は、本願における説明上、同義に用いられており、これは、医療分野における慣例である)は、腎臓が通常通り働いているときに達する患者の体重を定める。換言すると、乾燥重量は、心血管の障害の恐れを最小限に抑えるために到達すべき最適標的重量(又は流体状態)を表している。乾燥重量は、一般的な臨床上のやり方を把握するうえで常に困難な課題であった。というのは、これを判定する定量的方法が存在しないからである。現在において、乾燥重量に関する問題は、間接的な指標、例えば血圧、心エコー図検査及び主観的情報、例えばX線写真を用いて対処されている。さらに、一般に乾燥重量標準として受け取られている条件の集成を定めることは極めて困難であった。
【0005】
患者の流体状態を導き出す前途有望な方法は、バイオインピーダンス測定値の使用を含む。低い交流電流を患者に取り付けられた2本又は3本以上の電極により流し、対応の電位差を測定する。人体の種々の流体区画は、測定信号に互いに異なる仕方で寄与する。多数の周波数の使用により、細胞内水容積(intracellular water volume:ICV)及び細胞外水容積(extracellular water volume:ECV)を求めることができる。このデータにより、流体の過剰又は脱水の意味で水和状態を判定することが可能である。かかる装置の一例は、国際公開第2006/002685号パンフレットに記載されている。かかる装置では、身体組成を患者の他の容積区画、特に脂肪のない組織及び脂肪組織の比率に関して判定することが同時に可能である。このように、結論は、患者の栄養状態に関しても可能である。
【0006】
バイオインピーダンス測定の評価の基礎をなすモデルは、これらモデルが体肢又は身体各部を失っていない患者の体に由来するか全身測定ではなく、特定の身体セグメントに対する分節的測定にのみ制限されるかのいずれかであるということにおいて共通している。
【0007】
この関連で、全身測定をどのように実施すれば個別的な身体各部又はその一部を失っている肢切断患者の身体成分を量定できるかについて問題が生じる。体肢の切断は、健常者集団の場合よりも透析患者集団の方に頻発していることが判明している。この原因は、一般的に、糖尿病である。高すぎる血糖値レベルは、身体の、特に腎臓や体肢の細かい毛管ネットワークを損傷させる。糖尿病の考えられる結果は、腎不全や体肢の切断である。
【0008】
いわゆる4点測定により、健常な被験者の身体の分節的比率を求め、これに基づいて肢切断の影響を調査するための実験が行われた(ウィスコッテン等(Wieskotten et.al),「タングングスバンド・オートマチジエルウングステグニシェン・フェルファーレン・ヒューア・ディ・メディジン‐7.(Tagungsband Automatisierungstechnische Verfahren fur die Medizin-7)」,ウォルクショップ(Workshop)2007,ISBN978‐3‐18‐326717‐0)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2006/002685号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ウィスコッテン等(Wieskotten et.al),「タングングスバンド・オートマチジエルウングステグニシェン・フェルファーレン・ヒューア・ディ・メディジン‐7.(Tagungsband Automatisierungstechnische Verfahren fur die Medizin-7)」,ウォルクショップ(Workshop)2007,ISBN978‐3‐18‐326717‐0
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、肢切断患者の身体成分をバイオインピーダンス測定値によって簡単且つ個々に量定することができる方法を提供するという課題に基づいている。本発明は又、肢切断患者の身体成分を量定するためのかかるバイオインピーダンス測定装置を提供するという課題に基づいている。本発明は又、本発明の方法を実施するためのコンピュータプログラム製品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の教示によれば、これら課題は、請求項1記載の特徴を備えた方法、請求項9の特徴を備えた装置及び請求項19記載の特徴を備えたコンピュータプログラム製品によって解決される。有利な実施形態は、従属形式の請求項の内容である。
【0013】
本発明は、身体成分を量定するために失われた身体各部又は体肢を考慮に入れるために、適合型患者モデルを全く必要とせず、これとは異なり、第1に、患者が失われている身体各部又はその一部のない場合に使用される元の身体モデルから進めることができるという知見に基づいている。身体成分は、この意味では、容積区画が体積単位であれ質量単位であれ、相対的であれいずれにせよ、容積区画として示すことができる人体の部分的コンポーネントを意味するものと理解される。
【0014】
本発明の方法によれば、時刻tにおける患者の補正された容積区画V(t)を量定することができ、患者は個別的な身体各部又はその一部を失っており、最初に、時刻tにおける患者に関するバイオインピーダンスデータを測定し、次に容積区画V′(t)を量定し、次いで容積区画V′(t)又はこれと相関した値に失われた身体各部又はその一部について特有の係数kを乗算することによって補正容積区画V(t)を量定する。
【0015】
容積区画は、例えば、無脂肪組織又は赤身組織(LTM)、脂肪組織(ATM)、水分過剰容積部(OH)、細胞外水(ECW)又は細胞内水(ICW)であるのが良く、或いはこれらパラメータから選択されるのが良い。
【0016】
好ましい実施形態では、バイオインピーダンス測定は、全身測定として実施される。全身測定は、本発明との関連において、電流が少なくとも胴体を含む幾つかの身体セグメントを貫流する測定法を意味するものと理解されたい。1本の腕又はその一部がない場合且つ/或いは1本の脚又はその一部がない場合、全身測定は、電圧及び電流電極によって実施され、電極は、存在する手首の付近及び存在する足首の付近に取り付けられる。両方の脚又は両方の脚の一部が失われている場合、電圧及び電流電極を両方の手首の付近に取り付けるのが良く、両方の腕又は両方の腕の一部が失われている場合、両方の足首の付近に取り付けるのが良い。
【0017】
別の実施形態では、補正係数kは、比較データに基づいて定められ、この場合、失われた身体各部又はその一部の比率は、失われた身体各部又はその一部のない比較患者の重量に対するその比率に基づいて定められる。
【0018】
本発明の方法の特に簡単な用途では、患者の体重M(t)を求め、容積区画V′(t)の量定に当たり、補正された体重M′(t)を用い、該補正体重M′(t)は、測定した体重M(t)を補正係数kで除算した結果としての商から得られる。このように、測定値の評価は、これらが身体各部が切断されていない患者に対して行われているかのように行われる。容積区画V′(t)の量定後、容積区画を存在していない身体各部によってそれに見合って又は比例して補正することができなければならないようにする状況の実現が可能でなければならず、これは、補正係数kの乗算によって本発明に従って首尾良く実施される。
【0019】
本発明の装置は、本発明の方法を実施するよう構成されている。この装置は、患者に関するバイオインピーダンスデータの測定のためのバイオインピーダンス測定装置と、測定バイオインピーダンスデータによって患者の容積区画V′(t)を求め、容積区画V′(t)又はこれと相関した値に失われた身体各部又はその一部に特有の係数kを乗算することによって求めるよう構成された評価ユニット(1)とを有する。
【0020】
本発明のコンピュータプログラム製品によって、バイオインピーダンス測定装置及びプログラマブル評価ユニットを有する装置を本発明に従って、評価ユニットへのコンピュータプログラム製品に記憶されているプログラムの伝送によって構成することができ、それにより、本発明の方法を実施することが可能になる。
【0021】
本発明のそれ以上の細部及び利点は、添付の図面に示されている例示の実施形態により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】時刻tにおける患者の補正容積区画V(t)を量定する装置の実施形態の略図であり、個別的な身体各部又はその一部が患者から失われている状態を示す図である。
図2】失われている身体各部又は体肢の場合に全身バイオインピーダンス測定のためのバイオインピーダンス電極の配置状態を示す図であり、(a)は、身体各部が失われていない場合の比較のための図、(b)は、1本の腕が失われている場合を示す図、(c)は、1本の脚が失われている場合を示す図、(d)は、1本の腕が失われると共に1本の脚が失われている場合を示す図である。
図3】身体各部又は体肢が失われている場合における全身バイオインピーダンス測定のためのバイオインピーダンス電極の配置状態を示す図であり、(a)は、両方の腕が失われている場合を示す図、(b)は、両方の脚が失われている場合を示す図である。
図4】補正係数kを求めるための表を表す図である。
図5図3に示されている配置状態の場合における評価のための追加のパラメータ値に関する例示のデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の装置10の実施形態を示している。個別的な身体各部又はその一部が失われている患者の補正容積区画V(t)を量定するための装置のかかる実施形態は、マイクロプロセッサユニットとして構成された評価ユニット1を有し、このユニットは、マイクロプロセッサプログラムメモリユニット1aを有している。評価ユニット1は、接続手段4により入力ユニット2及びメモリユニット3に接続されている。時刻tにおける患者(個別的な身体各部又はその一部が患者から失われている)の補正容積区画V(t)を量定するプログラムがマイクロプロセッサプログラムメモリユニット1aに記憶されている。
【0024】
バイオインピーダンス測定データを求めるため、バイオインピーダンス測定装置5が設けられており、このバイオインピーダンス測定装置は、接続部6を介して入力ユニット2に接続されている。バイオインピーダンス測定のために種々の電極構成が可能である。図1では、2つの電極要素5a,5bだけがバイオインピーダンス測定装置5に接続されている。電極ユニット5a,5bの各々は、電流放出電極と、電位差受け入れ電極(図示せず)とから成っている。患者から身体各部又は体肢が失われていない場合、2つの電極ユニット5a,5bを図2(a)に概略的に示されているように患者の手首又は足首に取り付けることにより、患者の全身インピーダンスを通常のやり方で求めることができる。
【0025】
加うるに、患者の身長H(t)を測定する手段7が存在するのが良く、この手段は、接続部8を介して入力ユニット2に接続されている。手段7は、先行技術において知られている測定装置から成る。本発明の別の例示の改造型実施形態では、手段7は、患者の体重M(t)を測定する秤量手段を更に含む。
【0026】
図1に示されている例示の実施形態では、入力ユニット2は、インターフェイスを有し、バイオインピーダンス測定値並びにH(t)の値及びM(t)の値は、このインターフェイスを介して、接続部4によりメモリユニット3に直接送られる。同様に、これらの値又はこれら値の一部をユーザにより手動で入力ユニット2に入力することが可能である。
【0027】
メモリユニット3では、加うるに、補正係数kは、種々の肢切断度に従って導入される。これら係数は、身体各部又はその一部を失っていない患者について得られた比較データに基づいて前もって定められる。これら係数は又、マイクロプロセッサプログラムメモリユニット1a内に入れられているコンピュータプログラムの不可欠な積分成分であるのが良い。補正係数をバイオインピーダンス又は重量比較測定から得ることができ、かかる補正係数は、例えば、単純に言えば、百分率重量割合の形態で存在する。かかる例は、個別的な体肢、例えば完全な腕及び脚並びにこれらの一部について図4に示されている。この場合、該当する場合には、追加される個別的な比率により多数の肢切断を考慮に入れることができる。
【0028】
可能な場合には、係数kは又、患者の全質量と比較して患者のそれぞれの肢切断部を秤量することによって個々に決定可能である。
【0029】
本発明の方法を実施するための本発明の装置は、次の通りである。
【0030】
ユーザは、患者の肢切断度の選択を入力ユニット2のところで入力する。従来入れられた情報は、メモリユニット3に既に記憶されているのが良く、従って、新たな入力は不要である。この場合、個別的な患者について入力される値を入力ユニット2により任意の時点で変更することができる。また、かかる情報をメモリカードにより装置10に与える場合があり、ユーザは、メモリカードにより、患者を装置にログオンする。これについての種々の解決策は、当業者にはよく知られている。同じことは、マイクロプロセッサメモリユニット1a中へのコンピュータプログラムの伝送について当て嵌まる。このため、入力ユニット2は、コンピュータプログラムが記憶されているコンピュータプログラム製品のための対応のインターフェイスを有するのが良い。これについての専門家には多くの手段、例えば、CDドライブ、DVDドライブ、USBインターフェイス、シリアル及びパラレルバスシステム、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))又は赤外線インターフェイス、インターネット(Internet(登録商標))接続、種々のメモリカード読み取りシステム等が利用可能である。
【0031】
電圧及び電流電極は、例えば図2(b)〜図2(d)、図3(a)又は図3(b)に従って肢切断度に従って患者に取り付けられる。次に、時刻tにおいて入力ユニット2を介してバイオインピーダンス測定を開始し、時刻tの時点で、1つ又は多数の周波数をもつ電流を電流電極から放出し、対応の電圧値を測定する。電流及び電圧値により、バイオインピーダンス測定装置5は、患者の身体インピーダンス値を求めることができ、これは次の評価のために評価ユニット1にメモリユニット3を介して利用可能となる。次に、評価ユニット1は、細胞外水(ECW)、細胞内水(ICW)、水分過剰容積部(OH)、脂肪のない組織(無脂肪組織)(LTM)及び/又は脂肪組織(ATM)の容積区画を、患者の肢切断度を当初考慮に入れない患者モデルにより求める。かかる方法は、例えば、上述の国際公開2006/002685号パンフレットに示されており、この国際公開を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。
【0032】
バイオインピーダンス測定データの評価のため、評価ユニット1は、補正体重M′(t)を考慮に入れる。補正体重M′(t)は、体重M(t)を記憶補正係数kで除算して得られる。
【0033】
【数1】
【0034】
ここで、この補正体重M′(t)は、これまでの評価プログラムに基づく容積区画の量定の基礎をなしており、即ち、評価は、患者があたかも身体各部又は体肢が失われていないかのように患者の体重に基づいて行われる。次に、今や評価ユニットにより求められた細胞外水(ECW)、細胞内水(ICW)、水分過剰容積部(OH)、無脂肪組織(LTM)及び/又は脂肪組織(ATM)の容積区画を、補正係数kとの乗算によって所望の補正容積区画V(t)に変換する。
【0035】
【数2】




【0036】
次に、結果を出力ユニット9に送り、出力ユニットは、ディスプレイ装置であり、結果をユーザに表示する。それ以上の結果(中間結果であるにせよ最終結果であるにせよいずれにせよ)をディスプレイ上で情報を与える画像に追加するのが良い。
【0037】
動向の分析を可能にするために補正容積区画の結果を装置に記憶させるのが良く、動向分析は、早期の時点で得られた結果を含む。また、最後のデータ及び最近のデータから重み付け平均値を導き出すことによってデータを平均することが有用であることが判明した。この目的のため、データの統計学的広がりを減少させるために先行技術においては種々のアルゴリズムが利用されている。表示される現在の結果の平均値計算の有用な改良は、最後の測定に関する最も高い重み付けに基づくと共に、他の早期の測定値から時間が経過するにつれてこれら早期の測定値の重み付けを減少することによって達成される。
【0038】
両方の腕又は両方の脚の切断の場合、公式の変形は、方程式(2a)〜(2e)に従って必要な場合がある。この場合、電極の配置は、図3に示されているように実施されるのが良い。容積区画を次式で補正値によって補正することが得策であることが判明した。
【0039】
【数3】




【0040】
添え字“FF”は、測定が足から足まで行われた場合(図3(a))を表しており、添え字“HH”は、測定が手から手まで行われた場合(図3(b))を表している。対応の係数m及びオフセットoの例示の値は、図5にコンパイルされている。これらパラメータは、同様に、メモリユニット3に入れられるのが良い。互いに異なる測定形態の場合、本発明の装置は、ユーザが入力ユニット2を介して測定形態を選択することができ(例えば、手から足、手から手又は足から足)、その結果、評価ユニット1が評価においてこれを考慮に入れることができるよう改造可能である。
【0041】
本発明により、容積区画は、バイオインピーダンス測定値によっても肢切断患者において簡単な仕方で首尾良く量定でき、この場合、肢切断のない患者について用いられると共にこれまで確立された身体モデルを大幅な改造なく利用することができる。肢切断に関する特有の係数の決定が必要なだけであり、これは、前もって比較測定によって決定可能である。肢切断の多い特に例外的な状況では、精度を向上させるために追加のパラメータを提供することが示されるのが良い。従来の身体モデルは又、これら状況についてここで更に利用可能である。
【0042】
また、本発明の教示の範囲内にあり、従って、特許請求の範囲に記載された本発明の保護範囲内に含まれるものとして数学的に等価な計算が想到され、この場合、測定オペランド又は中間オペランドに変えて、比例表現又は他の1対1の相関表現が用いられる。かかる手順は、同様に、本発明の教示を利用し、用いられる用語の枠組みに明確に含まれるものである。
図1
図2
図3
図4
図5