(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記仮係止機構は、前記電源側コネクタと前記機器側コネクタとに互いに当接して係止する係止部と被係止部とが設けられ、前記係止部と前被係止部の各係止面の少なくとも一方が順テーパ状の傾斜面とされることで構成されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ装置。
前記機器側コネクタが金属製のケース内に設けられる一方、前記電線がシールド電線であってかつ前記電源側コネクタには前記シールド電線のシールド層が接続されたシールドシェルが装着されており、前記ケースと、前記シールドシェルに設けられた前記ケースに対する取付板とに、前記ボルトと前記ナットとが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなコネクタ装置においてコネクタの離脱操作を一気に行った場合には、以下のような不具合が懸念される。すなわち、電源側コネクタを引き外すことに伴いインターロック回路がオフとなって給電回路が遮断状態にされたとしても、その直後は未だ負荷側回路ひいては雄端子に電荷が残っている場合があり、この状態で両コネクタが完全に離脱されて機器側コネクタの嵌合面が開口されると、作業者が不用意に雄端子に触れて電撃を受ける等の事態を招き兼ねないため、さらなる改良が切望されていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、給電回路の遮断後に遅延時間を経て初めて両コネクタが離脱できるようにするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコネクタ装置は、一の接続端子を備え機器に設けられた機器側コネクタと、前記一の接続端子と接続される他の接続端子を備え、前記機器側コネクタと嵌合されることで給電回路を構成するべく電源側の電線の端末に設けられた電源側コネクタと、互いに螺合されるボルトとナットであって、一方が前記機器に固定的に装着され、他方が前記電源側コネクタに軸線回りの回転のみが可能となるように装着されたものと、前記両コネクタに亘って設けられ、当該両コネクタが正規嵌合したときにオンする一方、それ以外にはオフとなることにより前記給電回路を導通状態と遮断状態とに切り替えるインターロック回路と、が備えられ、前記両コネクタが初めに所定量嵌合されたところで前記給電回路を構成するべく前記接続端子同士が接続を開始するとともに前記ボルトと前記ナットとが当接され、この初期嵌合状態から前記ナットまたは前記ボルトを締め付け方向に回転させることにより
前記電源側コネクタが一体的に前進することで前記両コネクタが次第に嵌合されて、正規嵌合に到ったところで前記インターロック回路がオンとなって前記給電回路が導通状態とされる一方、前記両コネクタの正規嵌合状態から前記ナットまたは前記ボルトを緩める方向に回転させて互いの螺合状態を解除する
動きに伴って前記電源側コネクタが一体的に後退して前記両コネクタが初期嵌合状態まで離脱され、この間に前記インターロック回路がオフとなって前記給電回路が遮断状態とされる設定となっているとともに、前記両コネクタの間には、前記電源側コネクタが初期嵌合位置まで離脱された場合に同電源側コネクタに係止してそれ以上の離脱を規制し、かつ前記電源側コネクタに対して所定以上の離脱力を作用させた場合には、同電源側コネクタの完全離脱を可能とする仮係止機構が備えられて
おり、前記ボルトと前記ナットとは、前記電源側コネクタが初期嵌合状態まで離脱させた場合に前記ボルトと前記ナットの螺合が解除されており、前記電源側コネクタは、初期嵌合位置まで離脱された後は掴んで所定以上の力で引き抜かれるところに特徴を有する。
【0007】
両コネクタが正規嵌合状態にあるときにナットまたはボルトを緩めると、電源側コネクタが次第に機器側コネクタから離脱し、ナットまたはボルトが互いの螺合状態から解除されるまで緩められて、電源側コネクタが初期嵌合位置まで離脱されたところで、電源側コネクタは仮係止機構によってそれ以上の離脱が一旦規制され、その間にインターロック回路がオフとなって給電回路は遮断状態とされる。そののち、電源側コネクタを掴んで所定以上の力で引っ張ると、仮係止機構による係止を解除しつつ電源側コネクタが引き抜かれる。
すなわち、給電回路が遮断状態とされたのち、ある程度の時間遅れてから電源側コネクタが完全に外されることとなり、仮に機器側コネクタの接続端子に電荷が残っていたとしても、遅れの時間の間に同電荷が消失または減少し、その結果作業者が不用意に接続端子に触れることに起因して電撃を受けること等が防止される。
【0008】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記仮係止機構は、前記電源側コネクタと前記機器側コネクタとに互いに当接して係止する係止部と被係止部とが設けられ、前記係止部と前被係止部の各係止面の少なくとも一方が順テーパ状の傾斜面とされることで構成されている。
係止部と被係止部とが係止した状態から電源側コネクタを所定以上の力で引っ張ると、係止部と仮係止部とが傾斜面に沿って相手を乗り越えることで係止が解除され、引き続いて電源側コネクタが引き抜かれる。簡単な構造で仮係止機構が構成される。
【0009】
(2)前記ボルトが前記機器側に装着されている一方、前記ナットが前記電源側コネクタに装着されている。
電源側コネクタにボルトを装着する場合は、頭部側を片持ち状に支持することになるため、装着部は比較的堅牢な構造とする必要があり、また、ボルトを軸線と直角方向の位置調節可能に支持するとなると、ボルトの軸部が振られた傾斜姿勢で支持される可能性があるため、両コネクタを初期嵌合してボルトの軸部の先端を相手のナットに当てる場合にスムーズに当てることができない。
それに対して、小型かつ軽量のナットを電源側コネクタに装着する場合は、その装着部を不必要に堅牢な構造とする必要もなく、また、初めの支持状態でナットの軸線が傾くことも回避できるから、初期嵌合に伴いナットをボルトの先端に自ずから精度良く当てることができ、すなわちコネクタの初期嵌合作業も簡単となる。
【0010】
(3)前記機器側コネクタが金属製のケース内に設けられる一方、前記電線がシールド電線であってかつ前記電源側コネクタには前記シールド電線のシールド層が接続されたシールドシェルが装着されており、前記ケースと、前記シールドシェルに設けられた前記ケースに対する取付板とに、前記ボルトと前記ナットとが設けられている。
ボルトとナットを締結することに伴い両コネクタが嵌合されるとともに、ケースとシールドシェルの取付板とが接触状態とされる。シールドタイプのコネクタ装置に有効に適用できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、給電回路の遮断後に遅延時間を経て初めて両コネクタを離脱することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
一実施形態を
図1ないし
図10に基づいて説明する。
本実施形態は、電源と車載機器とを結ぶ電気系統に介設されるコネクタ装置を例示しており、図
9及び図
10に示すように、ケース10内に装備される機器側コネクタ20と、電源から引き出されたシールド電線30の端末に接続されて上記機器側コネクタ20と嵌合される電源側コネクタ40とから構成されている。
【0014】
機器側コネクタ20は、ジャンクションボックス(以下、J/B)の側面に嵌合凹部22が形成されることで雄ハウジング21が一体的に形成されている。この嵌合凹部22は、
図4に示すように、正面視で左右方向に長い長方形断面をなし、同嵌合凹部22内は左右方向に3つの領域に分けられ、中央部と右端の領域では、それぞれ奥面からバスバーからなる雄端子23(本発明の一の接続端子に相当)が突設されている。両雄端子23は板面を揃えて左右に並んだ姿勢で配設され、嵌合凹部22の奥行の3/4程度の長さ寸法突出している。
嵌合凹部22内の左端の領域には、後記するインターロック回路におけるスイッチ部85(図
10参照)の固定接点86A側を構成する一対の雄タブ24が、左右に所定間隔を開けて並んで突設されている。両雄タブ24は、嵌合凹部22の奥行の4割程度の長さ寸法突出している。
【0015】
機器側コネクタ20には、図示はしないが負荷側回路が構成されており、上記した一対の雄タブ24同士が電気的に接続された状態にあると、インターロック回路がオン状態となって、負荷側回路が導通状態とされる一方、雄タブ24同士が非接続状態である場合には、インターロック回路がオフとなって負荷側回路が遮断状態とされるようになっている。
【0016】
上記の機器側コネクタ20が設けられたJ/Bが、シールド機能を備えたアルミニウム等の金属製のケース10内に収容され、所定位置に固定されている。
より詳細には、
図5,6に示すように、ケース10の側面の所定位置には、機器側コネクタ20の嵌合凹部22の開口よりも一回り大きい長方形の嵌合用開口11が形成されている。J/Bの収容に伴い、機器側コネクタ20の嵌合凹部22が嵌合用開口11と同心に整合し、かつ、嵌合凹部22の開口面が嵌合用開口11の内側(裏側)に所定寸法控えた位置に配される。
【0017】
次に、電源側コネクタ40について説明する。電源側コネクタ40は大まかには、
図1ないし
図3にも示すように、シールド電線30の端末に固着された雌端子35(本発明の他の接続端子に相当)が収容される雌ハウジング41と、この雌ハウジング41の後端部に外嵌されるシールドシェル60とから構成されている。
シールド電線30は、2本の被覆電線31の回りに編組線33が嵌装された形態でシース(図示せず)内に挿通された構造であり、各被覆電線31の端末にそれぞれ雌端子35が固着されている。
【0018】
雌端子35は、導電性に優れた金属板をプレス加工して形成され、上記した機器側コネクタ20に設けられた雄端子23が嵌合接続される扁平な角筒形の接続部36を有しており、同接続部36の後方に設けられたバレル37がかしめられて、被覆電線31の芯線32の端末に固着されている。
【0019】
雌ハウジング41は合成樹脂製であって、雄ハウジング21の嵌合凹部22内に緊密に嵌合可能な扁平なブロック状に形成されている。雌ハウジング41は正面視で左右方向に3つの領域に分けられ、中央部と左端の領域では、それぞれ上記した雌端子35を後方から挿入可能なキャビティ42が形成されている。各キャビティ42の前壁には、雄端子23が挿入可能な端子挿入口43が開口されているとともに、キャビティ42の天井面には、雌端子35の接続部36に弾性的に係止して抜け止めするランス44が形成されている。
各雌端子35は、対応するキャビティ42内にランス44を撓み変位させつつ後方から挿入され、前壁に達する正規位置まで挿入されると、ランス44が復元変位して接続部36に係止することによって、雌端子35はキャビティ42内に抜け止めされて収容されるようになっている。
【0020】
雌ハウジング41における右端の領域には装着孔45が形成され、同装着孔45内に、インターロック回路におけるスイッチ部85の可動接点86Bが装着されている。可動接点86Bは、合成樹脂製の段付きの筒体46内に一対の収容室47が左右に並んで形成され、各収容室47にそれぞれ中継端子48が収容され、両中継端子48の後端同士がショートピン49により接続された構造である。各収容室47の前面壁には、雄ハウジング21側の固定接点86Aとなる雄タブ24が挿入されるタブ挿入口47Aが開口されている。この可動接点86Bが装着孔45内に挿入され、筒体46の前面が装着孔45の前面開口とほぼ面一となる位置で、ロック機構により固定されている。
【0021】
雌ハウジング41の後端部には、シールドシェル60が装着されるようになっている。シールドシェル60は、アルミニウム等の金属板を深絞り等のプレス加工をすることによって形成され、雌ハウジング41の後端部に嵌装可能な長円形の筒形となっている。シールドシェル60の前縁には、取付板となるフランジ61が張り出し形成され、同フランジ61の上縁が山形をなすように延ばされて、その延出部61Aに、後記するナット70の装着部62が設定されている。
【0022】
シールドシェル60は、雌ハウジング41の後端部に対して後方から嵌装され、雌ハウジング41の外面に突設された複数のストッパ51に前縁が当たったところで押し込みが停止され、雌ハウジング41の上下の面に設けられたロック片52の係止突起52Aがシールドシェル60の後縁に係止することにより、
図2及び
図3に示すように、シールドシェル60が雌ハウジング41の後端部の外周に装着される。
シールドシェル60の外周には、
図5に示すように、シールド電線30における編組線33の端末が外嵌され、その外周に嵌めたかしめリング63をかしめることで固定されている。
【0023】
次に、電源側コネクタ40と機器側コネクタ20との嵌合・離脱構造について説明する。
上記した機器のケース10における嵌合用開口11の上縁部には、幅方向の中央部においてスタッドボルト15が水平姿勢で立てられている。
一方、電源側コネクタ40に装着されたシールドシェル60には、スタッドボルト15に螺合するナット70が装着されている。ナット70は、
図1及び
図5に示すように、本体部71の一面側にフランジ72と、同本体部71の中心孔71Aと同心に短寸の円筒部73が突設され、本体部71の中心孔71Aから円筒部73の内周に亘って雌ねじ部74が形成された構造である。雌ねじ部74の前端にはテーパ状の誘い込み面75が形成されているとともに、円筒部73の外周には、フランジ61の表面からケース10の厚さ寸法だけ離間した位置に、Cリング78が差し込まれる差込溝76が形成されている。
【0024】
シールドシェル60におけるフランジ61の上縁の延出部61Aには、ナット70の装着部62が形成されている。詳細には、延出部61Aが叩かれることで後面側に一段後退した形態の装着板64が形成され、この装着板64に、ナット70における円筒部73が挿通される支持孔65が開口されている。この支持孔65は、円筒部73の外径よりも大きい内径を有する円形孔として形成されているとともに、
図5に示すように、雌ハウジング41が雄ハウジング21に対して嵌合された場合に、同支持孔65の中心がスタッドボルト15の軸線上に位置する設定となっている。
【0025】
ナット70は、円筒部73が支持孔65に後方から挿通され、フランジ72が装着板64の後面に当たったところで停止され、そのとき円筒部73の先端はシールドシェル60のフランジ61の前面と面一か少し後退した位置に留まる。この状態から円筒部73の外周の差込溝76にCリング78が差し込まれることで、支持孔65の孔縁部の表裏がCリング78とフランジ72とで挟まれ、これによりナット70は、軸線方向に沿った移動が規制されつつ、軸線回りの回転のみが可能となる形態で支持される。また、ナット70の円筒部73が支持孔65内にクリアランスを持って挿通されていることから、ナット70は同クリアランスの範囲内で、装着板64に沿って軸線と直角方向に位置調節可能となっている。
【0026】
電源側コネクタ40は、ケース10の嵌合用開口11を通って機器側コネクタ20の嵌合凹部22内に嵌合され、所定量(嵌合凹部22の奥行の半分弱)嵌合されたところで(初期嵌合位置)、ナット70の雌ねじ部74の先端が、スタッドボルト15の先端と当接するようになっている。この初期嵌合位置では、図
7に示すように、対応する雄雌の端子金具23,35同士が嵌合接続を開始する一方で
、インターロック回路のスイッチ部85を構成する雄タブ24と中継端子48とは接続前の状態にある。
【0027】
上記の初期嵌合状態から、ナット70をパワーレンチ等の工具により締め込むと、ナット70がスタッドボルト15に沿って前方に螺進しつつ電源側コネクタ40が一体的に前進して嵌合が進められ、シールドシェル60のフランジ61がケース10に当たったところで嵌合が完了する(正規嵌合位置)。この間に、図
9及び図
10に示すように、雄雌の端子金具23,35同士は深く嵌合接続される一方で、雄タブ24と中継端子48とが接続されてインターロック回路がオンされるようになっている。
この正規嵌合状態からナット70を緩めると、ナット70がスタッドボルト15に沿って後方に螺進しつつ電源側コネクタ40が一体的に後退し、すなわち機器側コネクタ20から離脱し、ナット70がスタッドボルト15から外れるまで緩められると、図
7に示すように、電源側コネクタ40は初期嵌合位置まで戻されるようになっている。
【0028】
さて、電源側コネクタ40と機器側コネクタ20との間には、電源側コネクタ40が初期嵌合位置に嵌合された状態で、離脱方向の移動を規制する仮係止機構80が設けられている。以下、仮係止機構80の構造について説明する。
図4に示すように、機器側コネクタ20の雄ハウジング21において、嵌合凹部22の上側領域の中央幅位置には前後方向を向いた凹溝21Aが凹み形成され、これにより嵌合凹部22の上面の中央幅位置に上面壁22Aが形成されている。
この上面壁22Aには、開口の前縁から少し奥側に入った位置から後方に延びるように係止溝25が形成されており、言い換えると係止溝25よりも開口に近い上面壁22Aが係止部26とされ、係止溝25の前面すなわち係止部26の後面が係止面27とされている。
【0029】
一方、雌ハウジング41の上面、詳細には中央のキャビティ42の上面壁には、係止溝25に嵌入可能な被係止部81が突設されており、特に被係止部81の形成位置は、図
7に示すように、電源側コネクタ40が初期嵌合位置まで嵌合された際に、被係止部81が係止溝25の前端に嵌る位置である。
また、被係止部81は、前後両面が順テーパ状の傾斜面となった台形に形成されている。そのため電源側コネクタ40は、被係止部81の後面の係止面82が係止部26の係止面27に係止されることで、初期嵌合位置からの離脱が規制されるものの、電源側コネクタ40を掴んで所定以上の力で引き抜くと、被係止部81の係止面82が順テーパ状の傾斜面となっているために、係止部26が係止面82に沿って被係止部81を乗り越し、これにより係止が解除されるようになっている。
【0030】
続いて、本実施形態の作用を説明する。
電源側コネクタ40では、雌ハウジング41の装着孔45に対して可動接点86Bが装着されるとともに、シールドシェル60に形成された装着部62にナット70が既述した要領によって装着される。また、シールド電線30の端末に電源側コネクタ40が接続され、すなわち2本の被覆電線31の端末に接続された各雌端子35が雌ハウジング41のキャビティ42に収容される一方、編組線33の端末がシールドシェル60に外嵌されてかしめリング63により固着される。
【0031】
このように組み付けられた電源側コネクタ40の雌ハウジング41が、図
5に示すように、ケース10の嵌合用開口11を通して、機器側コネクタ20の雄ハウジング21を構成する嵌合凹部22内に嵌合される。
雌ハウジング41は、被係止部81が突設されたキャビティ42の上面壁を少し撓ませながら嵌合され、図
7に示すように、ナット70の雌ねじ部74の先端が、ケース10から立てられたスタッドボルト15の先端に当たったところで嵌合が停止される(初期嵌合)。このとき、公差の関係で、スタッドボルト15とナット70とが芯ずれしていたとしても、スタッドボルト15の先端が誘い込み面75を押すことに伴って、ナット70を装着板64に沿って移動させつつ芯合わせがなされる。
【0032】
また、上記の初期嵌合状態に到ると、被係止部81が係止部26を通過するために、キャビティ42の上面壁の撓み変位が戻りつつ被係止部81が係止溝25の前端に嵌り、係止面27に係止される。これにより、電源側コネクタ40は初期嵌合位置に保持される。この初期嵌合位置では、
図7に示すように、機器側コネクタ20の雄端子23と、電源側コネクタ40の雌端子35同士が嵌合接続を開始する一方で
、インターロック回路のスイッチ部85を構成する雄タブ24と中継端子48とは接続前の状態にある。
【0033】
この状態から、ナット70をパワーレンチ等の工具により締め込むと、ナット70がスタッドボルト15に沿って前方に螺進しつつ電源側コネクタ40が一体的に前進して嵌合が進められ、
図9及び
図10に示すように、シールドシェル60のフランジ61がケース10に当たったところで嵌合が完了する(正規嵌合位置)。この間に、雄雌の端子金具23,35同士が正規に嵌合接続されることにより、負荷側回路と電源側回路とが接続されて給電回路が構成され、最後に雄タブ24と中継端子48とが接続されることでインターロック回路がオン状態となって負荷側回路が導通状態となり、ひいては給電回路が導通状態となって、電源から負荷に向けて電力が供給されるところとなる。
また、シールドシェル60のフランジ61がケース10に当たって固定されることで、被覆電線31から発生した電磁波ノイズが編組線33を介してシールドシェル60に吸収され、さらにケース10に落とされる現象を呈して、シールド機能が発揮される。
【0034】
メンテナンス等において、電源側コネクタ40を機器側コネクタ20から外す場合は、
図9及び
図10に示す状態から、電源側コネクタ40に設けられたナット70を工具で緩めると、ナット70がスタッドボルト15に沿って後方に螺進しつつ電源側コネクタ40が一体的に後退し、すなわち機器側コネクタ20から離反し
、図7に示すように、ナット70がスタッドボルト15から外れるまで緩められると、電源側コネクタ40は初期嵌合位置まで戻される。
この間に、雄タブ24と中継端子48との接続が解除されることでインターロック回路がオフとなり、負荷側回路すなわち給電回路が遮断状態とされる。
【0035】
そして、電源側コネクタ40が初期嵌合位置まで戻されたところで、被係止部81の係止面82が、係止部26の係止面27に係止されることにより、それ以上の電源側コネクタ40の離脱が一旦規制される。したがって、シールド電線30の重み等により電源側コネクタ40に対して離脱方向の力が作用したとしても、電源側コネクタ40の離脱が進むことはない。
【0036】
電源側コネクタ40が初期嵌合位置まで戻されたら、改めて電源側コネクタ40を手等で掴んで所定以上の力で引き抜き操作する。上記のように、被係止部81の係止面82が順テーパ状の傾斜面となっているために、電源側コネクタ40を所定以上の力で引き抜くと、係止部26が係止面82に沿って被係止部81を乗り越し、すなわち係止が解除されつつ、図
5に示すように電源側コネクタ40が機器側コネクタ20から完全に引き離される。
【0037】
以上のように本実施形態によれば、両コネクタ20,40が正規嵌合状態にあるときからナット70を工具により緩めると、電源側コネクタ40が次第に機器側コネクタ20から離脱し、初期嵌合位置まで離脱されたところで一旦離脱が規制され、その間にインターロック回路がオフとなって負荷側回路すなわち給電回路は遮断状態とされる。そののち、電源側コネクタ40を掴んで所定以上の力で引っ張ると、係止が解除されつつ電源側コネクタ40が引き抜かれる。
すなわち、給電回路が遮断状態とされたのち、ある程度の時間遅れてから電源側コネクタ40が完全に外されることとなり、仮に機器側コネクタ20の雄端子23に電荷が残っていたとしても、遅れの時間の間に同電荷が消失または減少し、その結果作業者が不用意に雄端子23に触れることに起因して電撃を受けること等が防止される。
【0038】
また本実施形態では、両コネクタ20,40の嵌合と離脱を行うボルト(スタッドボルト15)とナット70のうち、ボルト(スタッドボルト15)が機器のケース10に立てられている一方、軸線回りの回転のみが可能となるようにナット70が電源側コネクタ40に装着されている。
軸線回りの回転のみが可能となるようボルトを電源側コネクタ40に装着する場合は、例えばボルトの軸部の根元部分を装着部62の支持孔65に嵌めて支持することになるが、ボルトは軸部が突出した片持ち状に支持されることになるため、装着部62はその負荷に耐えるべく比較的堅牢に形成する必要がある。また、両コネクタ20,40が嵌合された場合におけるボルトとナットとの位置ずれを吸収するために、ボルトの軸部の根元部分を支持孔65内にクリアランスを持って嵌めてボルトの位置調節を可能とする構造を採る必要があるが、そうするとボルトの軸部の先端が大きく下がった姿勢で支持される可能性があり、そのため両コネクタ20,40を初期嵌合してボルトの軸部の先端をナットに当てる場合に、軸部を水平姿勢に持ち上げつつボルトの位置調節をする必要があって、面倒となる嫌いがある。
【0039】
それに対して本実施形態のように、軸線回りの回転のみが可能となるようにナット70が電源側コネクタ40に装着されている場合は、ナット70の一面に短寸の円筒部73を連設し、同円筒部73を支持孔65にクリアランスを持って嵌めつつナット70を装着部62(装着板64)に当てて抜け止めする程度の構造で足りる。そのため、装着部62を不必要に堅牢な構造とする必要もなく、また、ナット70の位置調節も装着板64に沿って移動させるだけで済むから、両コネクタ20,40の初期嵌合作業も簡単となる。
【0040】
また、電源側コネクタ40が初期嵌合位置まで離脱された場合に同電源側コネクタ40に係止して一旦離脱を規制し、かつ電源側コネクタ40に対して所定以上の離脱力を作用させた場合には、同電源側コネクタ40の完全離脱を可能とする仮係止機構80を構成するのに、電源側コネクタ40(雌ハウジング41)における撓み変位可能なキャビティ42の上面壁に、機器側コネクタ20(雄ハウジング21)の嵌合凹部22の天井面に設けられた係止部26に係止可能な被係止部81が突設され、かつ同被係止部81の係止面82を順テーパ状の傾斜面とした簡単な構造で対応しており、製造コストの低減等に寄与し得る。
【0041】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)仮係止機構を構成するに当たり、上記実施形態では、係止部と被係止部の係止面のうち、被係止部の係止面を順テーパ状の傾斜面としたのであるが、係止部側の係止面、あるいは両係止面を順テーパ状の傾斜面としてもよい。
(2)また仮係止機構は、電源側コネクタが初期嵌合位置まで離脱された場合に一旦それ以上の離脱が規制され、かつ電源側コネクタに対して所定以上の離脱力を作用させた場合には同電源側コネクタの完全離脱を可能とする機能を果たす限り、上記実施形態に例示した構造に限らず、他の構造を採用してもよい。
【0042】
(3)ナットを軸線回りの回転のみが可能となるように装着する部分の構造についても、上記実施形態に例示した構造に限らず、適宜に変更し得る。
(4)上記実施形態とは逆に、ナットが機器側に固定的に設けられる一方、ボルトが軸線回りの回転のみが可能となるように電源側コネクタに装着された構造としてもよい。
(5)本発明は、非シールドタイプのコネクタ装置にも同様に適用することが可能である。