(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775017
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】通信装置及び基地局装置
(51)【国際特許分類】
H04W 28/08 20090101AFI20150820BHJP
H04W 80/04 20090101ALI20150820BHJP
H04W 92/08 20090101ALI20150820BHJP
H04W 92/20 20090101ALI20150820BHJP
【FI】
H04W28/08
H04W80/04
H04W92/08 110
H04W92/20
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-62686(P2012-62686)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-197875(P2013-197875A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(72)【発明者】
【氏名】野一色 裕人
(72)【発明者】
【氏名】横田 英俊
【審査官】
田部井 和彦
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0310799(US,A1)
【文献】
特表2012−504898(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/086014(WO,A1)
【文献】
特開2011−135417(JP,A)
【文献】
3rd Generation Partnership Project;Technical Specification Group Services and System Aspects;General Packet Radio Service (GPRS) enhancements for Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network (E-UTRAN) access(Release 11),3GPP TS 23.401,2012年 3月12日,V11.1.0,4.3.15,4.3.16,4.4.9,5.17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有線伝送システムに接続するインタフェースと、
前記有線伝送システムを含む通信ネットワーク経由で移動通信ネットワークの基地局装置とセッションを確立する確立手段と、
前記基地局装置にオフロード用ベアラの設定を要求する要求手段と、
前記基地局装置経由で、前記移動通信ネットワークのコア・ネットワーク以外のネットワークと接続する装置に至る前記オフロード用のベアラを前記セッション上に設定する設定手段と、
を備えており、
前記要求手段は、前記基地局装置に前記オフロード用ベアラの設定を要求する際に、前記有線伝送システムに接続していることを示す情報を前記基地局装置に送信する、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記有線伝送システムに接続していることを示す情報は、前記有線伝送システムが前記通信装置を認証するために使用する情報である、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記設定する手段は、前記基地局装置経由で前記移動通信ネットワークのコア・ネットワークに至るベアラを、前記確立手段が確立する前記基地局装置とのセッション上に設定し、
前記セッションと前記ベアラは1対1に対応する、
ことを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
コア・ネットワークを含む移動通信ネットワークの基地局装置であって、
通信ネットワークに接続するインタフェースと、
前記通信ネットワーク経由で通信装置とセッションを確立する確立手段と、
前記通信装置から前記移動通信ネットワークのコア・ネットワーク以外のネットワークに接続する装置に至るオフロード用のベアラの設定要求を受信すると、前記オフロード用のベアラを、前記セッション上に設定する設定手段と、
を備えており、
前記設定手段は、前記オフロード用のベアラの設定要求の際に、前記通信装置が有線伝送システムに接続していることを示す情報を受信すると、前記オフロード用のベアラの設定を前記移動通信ネットワークのコア・ネットワークに通知しない、
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項5】
前記有線伝送システムに接続していることを示す情報は、前記有線伝送システムが前記通信装置を認証するために使用する情報である、
ことを特徴とする請求項4に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記通信装置から受信する前記通信装置を認証するために使用する情報を、前記有線伝送システム又は前記有線伝送システムが使用する認証装置に送信して、前記通信装置が前記有線伝送システムに接続していることを確認する手段をさらに備えている、
ことを特徴とする請求項5に記載の基地局装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信ネットワークの基地局装置と、該基地局装置に接続する通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP等の標準化団体が規定する各種標準に従う移動通信ネットワークは、基地局装置を含むアクセス・ネットワークと、移動無線端末を管理し、信号のルーティングを行うコア・ネットワークとを含んでいる。移動無線端末は、基地局装置と無線により通信し、基地局装置経由でコア・ネットワークのノード装置との間でベアラを設定し、このベアラを使用して情報の送受信を行う。また、移動通信ネットワークは、移動無線端末のデータ・ベースを有し、データ・ベースに登録された移動無線端末にのみサービス提供を行う。なお、移動通信ネットワークのデータ・ベースに登録される移動無線端末は、移動通信事業者と契約したユーザが所持する端末である。
【0003】
特許文献1は、インターネット等のIPネットワーク経由で、移動通信ネットワークのコア・ネットワークのノード装置に接続するフェムト・セル・アクセス・ポイントを開示している。また、非特許文献1は、フェムト・セル・アクセス・ポイントが、移動無線端末に対して、コア・ネットワークへのアクセスに加えて、コア・ネットワークを経由しない他のネットワークへのアクセス(オフロード)、例えば、インターネット・アクセスを提供するための構成を開示している。具体的には、フェムト・セル・アクセス・ポイントとローカル・ゲートウェイ(L−GW)を接続し、オフロード用のベアラを、移動無線端末とL−GW間で設定して、オフロードさせるトラフィックをL−GWがインターネット等の他のネットワークと送受信するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011−523251号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】3GPP TR23.829、"Local IP Access and Selected IP Traffic Offload (LIPA−SIPTO)",V10.0.1,2011年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フェムト・セル・アクセス・ポイントは、ハンドオーバ制御や、コア・ネットワークに接続するための認証処理等の複雑な処理を行わなければならず、さらに、コア・ネットワークにもフェムト・セル・アクセス・ポイントとの接続に関する処理を行う装置を設けなければならず高価である。また、フェムト・セル・アクセス・ポイントは、移動通信ネットワークの基地局と同じ無線インタフェースにより、移動通信ネットワークのデータ・ベースに登録されている移動無線端末にサービス提供を行うのみである。
【0007】
また、LTE(Long Term Evolution)に準拠した移動通信ネットワークは、移動無線端末が移動通信ネットワークにアタッチしている間、当該移動無線端末に対する少なくとも1つのEPSベアラを維持する。しかしながら、不要な無線リソースの消費や移動無線端末の電力消費を抑えるため、トラフィックが無ければ、ベアラのうちのコア・ネットワーク内部の区間のみを維持し、それ以外の部分、つまり、移動無線端末から基地局経由でコア・ネットワークに至るまでの区間についてのリソースは解放する。したがって、コア・ネットワークは、ベアラにより送受すべき情報が発生するたびに、解放している区間の再設定や、再解放のための制御信号を基地局装置や、フェムト・セル・アクセス・ポイントや、L−GWに送信しなければならない。
【0008】
本発明は、例えば、家庭内といったある領域にある端末に、移動通信ネットワークのコア・ネットワーク又はオフロード接続を提供し、かつ、オフロード接続に対するコア・ネットワークの管理負荷を低減させる通信装置及び基地局装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によると、有線伝送システムに接続するインタフェースと、前記有線伝送システムを含む通信ネットワーク経由で移動通信ネットワークの基地局装置とセッションを確立する確立手段と、前記基地局装置にオフロード用ベアラの設定を要求する要求手段と、前記基地局装置経由で、前記移動通信ネットワークのコア・ネットワーク以外のネットワークと接続する装置に至る前記オフロード用のベアラを前記セッション上に設定する設定手段と、を備えており、前記要求手段は、前記基地局装置に前記オフロード用ベアラの設定を要求する際に、前記有線伝送システムに接続していることを示す情報を前記基地局装置に送信する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の一側面によると、コア・ネットワークを含む移動通信ネットワークの基地局装置であって、通信ネットワークに接続するインタフェースと、前記通信ネットワーク経由で通信装置とセッションを確立する確立手段と、前記通信装置から前記移動通信ネットワークのコア・ネットワーク以外のネットワークに接続する装置に至るオフロード用のベアラの設定要求を受信すると、前記オフロード用のベアラを、前記セッション上に設定する設定手段と、を備えており、前記設定手段は、前記オフロード用のベアラの設定要求の際に、前記通信装置が有線伝送システムに接続していることを示す情報を受信すると、前記オフロード用のベアラの設定を前記移動通信ネットワークのコア・ネットワークに通知しない、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
オフロード接続を設定し、かつ、オフロード接続に対するコア・ネットワークの管理負荷を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態によるネットワーク全体の構成図。
【
図2】一実施形態による通信装置と基地局装置間のプロトコル構成図。
【
図3】一実施形態による通信装置に対するベアラ確立のシーケンス図。
【
図4】一実施形態によるパケット・ヘッダの使用方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0014】
図1は、本実施形態によるネットワークの構成図である。
図1において、基地局装置2とコア・ネットワーク5は、移動通信事業者が提供する、3GPP等の標準化団体が規定する各種標準に従う移動通信ネットワークである。また、移動無線端末3は、当該移動通信事業者又は当該移動通信事業者の移動通信ネットワークを利用できる他の移動通信事業者に加入している加入者の端末であり、
図1の移動通信ネットワークに無線により接続可能である。なお、以下の説明において、基地局装置2は、LTE標準に準拠したeNBであり、コア・ネットワーク5も、所謂、EPC(Evolved Packet Core)であるものとして説明を行うが、本発明は他の規格に従う移動通信ネットワークに対しても適用可能である。
【0015】
移動無線端末3は、所謂、スマートフォン等の携帯電話であり、例えば、電源投入後に、移動通信ネットワークに対してアタッチ処理を行い、EPS(Evolved Packet System)ベアラである基本ベアラを基地局装置2経由でコア・ネットワーク5との間で設定し、IPアドレスを移動通信ネットワークから取得する。ここで、移動無線端末3と基地局装置2との間において、基本ベアラは無線により設定される論理チャネル上で伝送される。
【0016】
通信装置1は、IPプロトコルにより通信するIPネットワーク4経由で基地局装置2と接続する。なお、IPネットワーク4と通信装置1との接続には、例えば、PON(Passive Optical Network)、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)、その他、光ファイバを使用した各種専用線やそれに類似した有線伝送システムを利用できる。本実施形態においては、光ライン終端装置(OLT)8を含むPONを用いるものとする。したがって、通信装置1は、OLT8と接続する光回線終端装置(ONU)を含んでいる。しかしながら、本発明は他の有線伝送システムを使用することができる。
【0017】
IPネットワーク4は、IPパケットをトランスペアレントに転送するネットワークである。本実施形態において、通信装置1は、基地局装置2との間で、IPネットワーク4経由でセッションを確立し、このセッション上で、基地局装置2と通信装置1は、通信装置1とコア・ネットワーク5とを結ぶベアラを設定する。つまり、移動無線端末3と基地局装置2との間で無線により設定する論理チャネルに代えて、通信装置1と基地局装置2は、IPネットワーク4経由のセッションを設定してベアラを搬送する。本実施形態においては、通信装置1と基地局装置2は、L2TP(Layer 2 Tunneling Protocol)に従うセッションを設定するものとする。また、ローカル・ゲートウェイ(L−GW)4は、オフロード・トラフィックのベアラの終端点であり、通信装置1からコア・ネットワーク5を経由することなくインターネット7と送受するトラフィックを処理する。つまり、通信装置1は、コア・ネットワーク5のP−GW(パケット・データ・ネットワーク・ゲートウェイ)に向かうベアラと、L−GW6に向かうベアラをそれぞれ設定し、情報の送信先に応じて使い分けることになる。
【0018】
なお、本実施形態においてセッションを確立するとは、ベアラを伝送するために、通信装置1と基地局装置2が個々の通信を認識できる状態になることを意味する。また、以下の説明では、L2TPの用語に従い、コネクションとセッションを区別して使用する。しかしながら、本実施形態におけるセッションをコネクションと呼ぶ場合もあり、セッションとの用語との異同のみで本発明の範囲は定義されない。
【0019】
図2は、本実施形態における概略的なプロトコル構成図である。通信装置1及び基地局装置2の物理レイヤは、IPネットワーク4の物理レイヤでそれぞれ終端される。つまり、通信装置1及び基地局装置2の物理レイヤは、同じである必要はない。IPネットワーク4は、IPパケットをトランスペアレントに転送し、よって、通信装置1及び基地局装置2のIPレイヤは相互に通信を行うことになる。通信装置1及び基地局装置2のL2TPレイヤは、RFC3931の規定に従いコネクションを設定し、設定したコネクションにセッションを設定する。通信装置1及び基地局装置2の無線プロトコル・レイヤは、セッションを利用してベアラを設定する。具体的には、本実施形態の無線プロトコル・レイヤは、LTE規格に従う、RLC(Radio Link Control)及びPDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤの機能を提供する。つまり、本実施形態においては、LTE規格に従う、MAC(Media Access Control)及び物理レイヤの機能が、IPネットワーク4とインタフェースする物理レイヤと、IPレイヤ及びL2TPレイヤに置き換えられる。しかしながら、それ以外のレイヤの通信についてはLTE規格に従い行われる。
【0020】
また、通信装置1は、移動無線端末3と同様に、SIM(Subscriber Identity Module)を備えており、SIMには、移動通信事業者から割り当てられた識別子であるIMSI(International Mobile Subscriber Identity)及び認証のための秘密値が格納されている。つまり、通信装置1は、移動無線端末3と同じく、移動通信ネットワークに登録された通信装置であり、通信装置1は、移動無線端末3と同じく、SIMに格納されている情報に基づき移動通信ネットワークへのアタッチ処理を行い、基地局装置2経由でコア・ネットワーク5に至る基本ベアラを設定し、移動通信ネットワークからIPアドレスを取得する。以下、詳細に説明する。
【0021】
まず、本実施形態において、OLT8は、通信装置1の認証を行う。認証方法として、例えば、OLT8に通信装置1のMACアドレスを保存しておき、通信装置1が送信するMACアドレスによりOLT8の認証を行うことができる。さらに、OLT8に通信装置1の識別子及びパスワード等の認証情報を保存しておき、この認証情報を通信装置1がOLT8に送信することで認証を行うことができる。なお、OLT8に認証情報を保存するのではなく、RADIUSサーバに保存し、OLT8が、通信装置1から取得した認証情報をRADIUSサーバに送信することで認証を行うこともできる。さらに、1つの認証方法ではなく複数の認証を使用することもできる。
【0022】
続いて、OLT8が通信装置1の認証を行った後の処理について
図3を用いて説明する。通信装置1は、S1において基地局装置2との間で第1のL2TPコネクションを確立する。具体的には、通信装置1がコネクションの要求メッセージを基地局装置2に送信し、基地局装置2が応答メッセージを通信装置1に送信し、通信装置1が接続メッセージを基地局装置2に送信することで、コネクションが確立される。続いて、S2において、通信装置1は、基地局装置2との間で確立した第1のL2TPコネクション上に第1のセッションを確立する。具体的には、通信装置1がセッションの要求メッセージを基地局装置2に送信し、基地局装置2が応答メッセージを通信装置1に送信し、通信装置1が接続メッセージを基地局装置2に送信することで第1のセッションが確立される。なお各セッションは、L2TPコネクションとセッション識別子の組により区別される。
【0023】
通信装置1は、S3において、基地局装置2に対してアタッチ要求メッセージを送信し、これをトリガとして、通信装置1から基地局装置2を経由してコア・ネットワーク5に至る第1のベアラが第1のセッション上に設定される。より具体的には、PDNコネクシションを確立し、確立したPDNコネクション上に第1のベアラを設定する。なお、S3における処理は、移動無線端末3が移動通信ネットワークにアタッチする際の処理と同じでありその詳細は省略するが、第1のベアラの接続先であるAPN(アクセス・ポイント名)は、コア・ネットワーク5のホーム加入者サーバに登録されている。なお、第1のセッションと、第1のベアラとの関係は、ベアラに対して割り当てられるベアラ識別子と、第1のセッションのセッション識別子を関係付けることにより通信装置1及び基地局装置2は認識する。また、S3のアタッチ処理においては、第1のベアラの設定に先立ち、通信装置1はSIMに格納されたIMSI及び秘密値を基地局装置2経由でコア・ネットワーク5に送信し、コア・ネットワーク5による認証を受ける。
【0024】
以上の処理により、通信装置1から基地局装置2経由でコア・ネットワーク5に至るベアラが設定される。続いて、オフロード用のベアラの設定について説明する。
【0025】
オフロード用のベアラについては、コア・ネットワーク5に至るベアラの設定後に続けて設定することも、例えば、オフロード用のデータが発生した時点で設定することもできる。いずれにしても、通信装置1は、オフロード用のベアラの設定が必要であると判断すると、S4において、基地局装置2との間で第2のL2TPコネクションを確立する。具体的には、通信装置1がコネクションの要求メッセージを基地局装置2に送信し、基地局装置2が応答メッセージを通信装置1に送信し、通信装置1が接続メッセージを基地局装置2に送信することで、コネクションが確立される。なお、通信装置1は、このとき
図4(A)に示す様に、L2TP制御メッセージのホスト名AVPフィールドに、オフロード対象のベアラ用のL2TPコネクションであることを示すAPNの値を設定して、基地局装置2にオフロード用であることを通知する。
【0026】
続いて、S5において、通信装置1は、基地局装置2との間で確立した第2のL2TPコネクション上に第2のセッションを確立する。具体的には、通信装置1がセッションの要求メッセージを基地局装置2に送信し、基地局装置2が応答メッセージを通信装置1に送信し、通信装置1が接続メッセージを基地局装置2に送信することで第2のセッションが確立される。なお、各セッションは、L2TPコネクションとセッション識別子の組により区別される。また、このとき、
図4(B)に示すL2TPの制御メッセージのAssigned Cookie AVPフィールドに通信装置1が、有線伝送システムに接続する固定端末であることを示す情報を含める。有線伝送システムに接続する固定端末であることを示す情報は、例えば、OLT8がONU9又は通信装置1を認証するために使用した、例えば、MACアドレス等の認証情報とすることができる。この構成により、例えば、基地局装置2は、OLT8又はOLT8が使用するRADIUSサーバに取得した認証情報を使用して問い合わせを行い、通信装置1が、例えば、PONに接続する固定端末であることを確認できる。
【0027】
通信装置1は、基地局装置2とのオフロード用の第2のセッションを確立すると、S6において、PDNコネクション確立を要求するメッセージをS5で設定した第2のセッションを使用して基地局装置2に送信する。このとき、
図4(C)に示すL2TPのデータ・メッセージのクッキー・フィールドを使用して再度、認証情報を送信することができる。基地局装置2は、この場合、認証情報を使用して再度、通信装置1が移動無線端末ではないことを確認できる。
【0028】
基地局装置2は、PDNコネクション確立を要求するメッセージの受信に応答して、S7で、ベアラ確立を要求するメッセージをL−GW6に送信する。なお、基地局装置2は、S5の処理により、第2のL2TPコネクションがオフロード用であることを認識しているため、第2のL2TPコネクションを使用するベアラをオフロード用と認識できる。つまり、L−GW6に送信すべきものと認識できる。なお、ベアラ確立を要求するメッセージには、例えば、ONU9のMACアドレスや、ONU9の認証情報と、オフロードであることを示すAPNを含める。L−GW6は、ベアラ確立を要求するメッセージを受信すると、含まれるAPNからオフロード用のベアラであることを確認し、通信装置1に割り当てるIPアドレスを選択し、選択したIPアドレスを含むベアラ確立応答メッセージをS8で基地局装置2に送信する。
【0029】
基地局装置2はベアラ確立応答メッセージを受信すると、S9で、ベアラ確立応答メッセージに含まれるIPアドレスを取出して保存し、通信装置1にPDNコネクションが確立したことを示すPDNコネクション確立応答メッセージを送信する。通信装置1は、PDNコネクション確立応答メッセージを受信すると、受信確認のため、S10においてPDNコネクション確立確認メッセージを基地局装置2に送信する。この処理により、通信装置1からL−GWに至るオフロード用のPDNコネクションと、当該PDNコネクション上のベアラが設定される。その後、例えば、通信装置1は、DHCP等により基地局装置2にIPアドレスの割当を要求し、基地局装置2は、S8でL−GW6から取得したIPアドレスを通信装置1に割り当てる。なお、例えば、S9のPDNコネクション確立応答メッセージに割り当てるIPアドレスを含めても良い。
【0030】
以上の構成により通信装置1は、移動無線端末3と同様に基地局装置2経由でベアラを設定し、移動通信ネットワークによるサービスを受けることができる。さらに、移動通信ネットワークのコア・ネットワーク5を経由することなく、インターネット7等にオフロードさせるベアラを設定することができる。なお、通常の移動無線端末3に実装する移動通信ネットワークとの通信に関する機能と、通信装置1に実装する移動通信ネットワークとの通信に関する機能との差は、物理レイヤとMACレイヤのみであり、それ以外の部分は、通常の移動端末3に実装する機能をそのまま使用できる。よって、フェムト・セル・アクセス・ポイントの様な複雑な機能を必要とせず、安価に通信装置1を構成できる。同様に、基地局装置2の機能追加も安価に可能である。
【0031】
特に、上記構成により、基地局装置2は、設定されたオフロード用ベアラを使用するのが有線伝送システム経由でアクセスする通信装置1であることを認識できる。この場合、無線リソース等を節約するために無線リソース等の解放を行う既存のLTEのプロトコルを通信装置1からL−GW6に至るオフロード用ベアラに適用する理由はなくなる。つまり、コア・ネットワーク5は、上記オフロード用ベアラに関する情報を保持する必要がなく、よって、基地局装置2は、オフロード用ベアラの設定をコア・ネットワーク5に通知しない。つまり、上記オフロード用ベアラの制御のためにコア・ネットワーク5は基地局装置2と通信せず、したがって、コア・ネットワーク5の負荷を増加させることがない。なお、コア・ネットワーク5に至るベアラの設定については、コア・ネットワーク5に通知する必要があるため、既存のLTEのプロトコルの動作に従うことになる。つまり、通信装置1からコア・ネットワークに至る区間、つまり、S−GW(サービング・ゲートウェイ)までの区間は、トラフィック量に応じて解放されることになる。しかしながら、コア・ネットワーク5に至るベアラも、オフロード用のベアラと同様、トラフィック量に拘らず、常に、確保しておく構成とすることもできる。この場合、例えば、基地局装置2は、リソースの解放の必要がないオフロード用ベアラの設定であることをコア・ネットワーク5に通知する。
【0032】
なお、通信装置1は、それ自体が通信端末であっても、他の通信装置との通信を中継する装置であっても、それら両方の機能を有するものであっても良い。例えば、通信装置1は、有線LANやUSBといった有線インタフェースや、無線LAN等の無線インタフェース等で、他のデスクトップ型、ラップトップ型、タブレット型等のパーソナル・コンピュータや、その他の通信端末との間で情報を送受するものであっても良い。通信装置1は、移動通信事業者の認証を受けて移動通信ネットワークにアタッチしているため、通信装置1経由で通信するコンピュータ等は、移動無線端末3と同等のサービスを受けることが可能になる。具体的には、例えば、通信装置1と通信するコンピュータ等は、移動通信事業者が通信装置1に対して提供するメール・サービスにおいて通信装置1に送信されたメールを、通信装置1経由で受信することができる。また、通信装置1と通信するコンピュータからの操作によりネットワーク上のウェブサイトで購入した商品の代金等を、通信装置1に対する通信料金と共に通信事業者が請求する様にすることができ、クレジット番号の入力等を省略することができる。
【0033】
なお、上述した実施形態においては、L2TPプロトコルを使用していたが、他のトンネリング・プロトコル等、IPネットワーク上で任意の情報を伝送する任意のプロトコルを使用することができる。また、なお、上述した実施形態において、通信装置1は、IPネットワーク4経由で基地局装置2と接続していたが、IPパケットがトランスペアレントに伝送されるのであれば、VLAN(Virtual LAN)等の他のパケット交換ネットワークであっても良い。