特許第5775024号(P5775024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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5775024先天性免疫応答及び自己免疫疾患の阻害法及び阻害用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775024
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】先天性免疫応答及び自己免疫疾患の阻害法及び阻害用組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/117 20100101AFI20150820BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20150820BHJP
   A61K 31/7115 20060101ALI20150820BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20150820BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20150820BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20150820BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20150820BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   C12N15/00 JZNA
   A61K31/711
   A61K31/7115
   A61K31/7125
   A61P37/06
   A61P17/00
   A61P29/00 101
   A61P19/02
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】82
(21)【出願番号】特願2012-129374(P2012-129374)
(22)【出願日】2012年6月6日
(62)【分割の表示】特願2007-530180(P2007-530180)の分割
【原出願日】2005年8月24日
(65)【公開番号】特開2012-191939(P2012-191939A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2012年7月6日
(31)【優先権主張番号】60/606,833
(32)【優先日】2004年9月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501161136
【氏名又は名称】ダイナバックス テクノロジーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】バラート,フランク
(72)【発明者】
【氏名】コフマン,ロバート エル.
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/014322(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/058179(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/117
A61K 31/711
A61K 31/7115
A61K 31/7125
A61P 17/00
A61P 19/02
A61P 29/00
A61P 37/06
PubMed
Thomson Innovation
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体においてTLR7/8依存性免疫応答を抑制するオリゴヌクレオチドであって、当該オリゴヌクレオチドが、50塩基又は塩基対未満であり、そして免疫調節配列を含み、ここで当該免疫調節配列が、オリゴヌクレオチドの5’末端において少なくとも1のTGCトリヌクレオチド配列を含み、そしてここで当該オリゴヌクレオチドが:
(a)以下の:
5'-TGCTTGCAAGCTAGCAAGCA-3' (配列番号33),
5'-TGCTTGCAAGCTTGCTAGCA-3' (配列番号34),
5'-TGCTTGACAGCTTGACAGCA-3' (配列番号35),
5'-TGCTTAGCAGCTATGCAGCA-3' (配列番号36),
5'-TGCAAGCAAGCTAGCAAGCA-3' (配列番号37),
5'-TGCAAGCTTGCAAGCTTGCA AGCTT-3' (配列番号38),
5'-TGCTGCAAGCTTGCAGATGAT-3' (配列番号39),
5'-TGCAAGCTTGCAAGCTTGCAAT-3' (配列番号41),
5'-TGCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号47),
5'-TGCTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号52),
5'-TGCTTGTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号53),
5'-TGCTTGACATCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号54),
5'-TGCTTGACAGCTTGACAGTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号55),
5'-TGCTTGACAGCTTGATCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号56),
5'-TGCTTGACAGCTTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号57),
5'-TGCTTGACAGCTTGCTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号58),
5'-TGCTTGACAGCTTGCTTGTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号59),
5'-TGCTTGACAGCTTGACAGCATCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号61),
5'-TGCTTGACAGCTTGACAGCATCCTGGAGGGGT-3' (配列番号62),
5'-TGCTTGACAGCTTGACAGCATCCTGGAGGGG-3' (配列番号63),
5'-TGCTTGCAAGCTTGCTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号64),
5'-TGCTTGCAAGCTTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号65),
5'-TGCTTGCAAGCTTGCAAGCATCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号66),
5'-TGCTTGCAAGCTAGCAAGCA-HEG-TCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号68),
5'-TGCTTGCAAGCTTGCTAGCA-HEG-TCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号69),
5'-TGCTTGCAAGCTTGCTAGCA-HEG-TCCTGGAGZ’GGTTGT-3' (配列番号70),
5'-TGCTGCTGGAGZ’GGTTGT-3' (配列番号78),
5'-TGCTGGAGZ’GGTTGT-3' (配列番号79),
5'-TGCTCCTGGAGGGGTTG-3' (配列番号100),
5'-TGCTCCTGGAGGGGTT-3' (配列番号101),
5'-TGCTCCTGGAGGGGT-3' (配列番号102),
5'-TGCTCCTGGAGGGG-3' (配列番号103),及び
5'-TGCTCCTGGAGGG-3' (配列番号104),
{ここで、HEGが、ヘキサ−(エチレングリコール)であり、かつZ’が7−デアザ−dGである}
からなる群から選ばれる配列;又は
(b)項目(a)の配列であって、チミン、シトシン、アデニン、及びグアニンからなる群から選ばれる1の主要塩基が、当該主要塩基の天然又は非天然改変型塩基で置換される配列
を含む、前記オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記免疫応答が、自己免疫疾患と関連する、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記免疫応答の抑制が、自己免疫疾患の1又は複数の症状を緩和する、請求項2に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
前記免疫応答の抑制が、自己免疫疾患の発達を予防又は遅延させる、請求項2に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記自己免疫疾患が、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、リューマチ様関節炎、及び自己免疫皮膚疾患からなる群から選ばれる、請求項2〜4のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記免疫応答が、慢性病原性刺激に関連する、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
前記免疫応答が、炎症性疾患に関連する、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチドが、40又はそれ未満の塩基の長さである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
前記オリゴヌクレオチドが、請求項1の項目(a)を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
前記オリゴヌクレオチドが、以下の:
5'-TGCTTGCAAGCTAGCAAGCA-3' (配列番号33),
5'-TGCTTGCAAGCTTGCTAGCA-3' (配列番号34),
5'-TGCTTGACAGCTTGACAGCA-3' (配列番号35),
5'-TGCTTAGCAGCTATGCAGCA-3' (配列番号36),
5'-TGCAAGCAAGCTAGCAAGCA-3' (配列番号37),
5'-TGCAAGCTTGCAAGCTTGCA AGCTT-3' (配列番号38),
5'-TGCTGCAAGCTTGCAGATGAT-3' (配列番号39),
5'-TGCAAGCTTGCAAGCTTGCAAT-3' (配列番号41),
5'-TGCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号47),
5'-TGCTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号52),
5'-TGCTTGTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号53),
5'-TGCTTGACATCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号54),
5'-TGCTTGACAGCTTGACAGTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号55),
5'-TGCTTGACAGCTTGATCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号56),
5'-TGCTTGACAGCTTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号57),
5'-TGCTTGACAGCTTGCTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号58),
5'-TGCTTGACAGCTTGCTTGTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号59),
5'-TGCTTGACAGCTTGACAGCATCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号61),
5'-TGCTTGACAGCTTGACAGCATCCTGGAGGGGT-3' (配列番号62),
5'-TGCTTGACAGCTTGACAGCATCCTGGAGGGG-3' (配列番号63),
5'-TGCTTGCAAGCTTGCTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号64),
5'-TGCTTGCAAGCTTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号65),
5'-TGCTTGCAAGCTTGCAAGCATCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号66),
5'-TGCTTGCAAGCTAGCAAGCA-HEG-TCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号68),
5'-TGCTTGCAAGCTTGCTAGCA-HEG-TCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号69),
5'-TGCTTGCAAGCTTGCTAGCA-HEG-TCCTGGAGZ’GGTTGT-3' (配列番号70),
5'-TGCTGCTGGAGZ’GGTTGT-3' (配列番号78),
5'-TGCTGGAGZ’GGTTGT-3' (配列番号79),
5'-TGCTCCTGGAGGGGTTG-3' (配列番号100),
5'-TGCTCCTGGAGGGGTT-3' (配列番号101),
5'-TGCTCCTGGAGGGGT-3' (配列番号102),
5'-TGCTCCTGGAGGGG-3' (配列番号103),及び
5'-TGCTCCTGGAGGG-3' (配列番号104),
{式中、HEGは、ヘキサ−(エチレングリコール)であり、そしてZ’が7−デアザ−dGである}
からなる群から選ばれる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
前記オリゴヌクレオチドが、請求項1の項目(b)を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
前記オリゴヌクレオチドが、リン酸改変ポリヌクレオチドを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
前記オリゴヌクレオチドが、ホスホチオエート結合のみを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
前記個体が、ヒトである、請求項1〜13のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
個体においてTLR9−依存性免疫応答の抑制において使用するためのオリゴヌクレオチドであって、当該オリゴヌクレオチドが、以下の:
5'-TGCTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号52),
5'-TGCTTGTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号53),
5'-TGCTTGACATCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号54),
5'-TGCTTGACAGCTTGACAGTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号55),
5'-TGCTTGACAGCTTGATCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号56),
5'-TGCTTGACAGCTTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号57),
5'-TGCTTGACAGCTTGCTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号58),
5'-TGCTTGACAGCTTGCTTGTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号59),
5'-TGCTTGACAGCTTGACAGCATCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号61),
5'-TGCTTGACAGCTTGACAGCATCCTGGAGGGGT-3' (配列番号62),
5'-TGCTTGACAGCTTGACAGCATCCTGGAGGGG-3' (配列番号63),
5'-TGCTTGCAAGCTTGCTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号64),
5'-TGCTTGCAAGCTTCCTGGAGGGGTTGT-3' (配列番号65),
からなる群から選ばれる配列を含む、請求項1〜8の何れか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
個体においてTLR7/8依存性免疫応答の抑制のための医薬組成物であって、
請求項1〜15のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドを含む、前記組成物。
【請求項17】
個体においてTLR7/8依存性免疫応答及びTLR9依存性免疫応答の抑制のための医薬組成物であって、請求項15に記載のオリゴヌクレオチドを含む、前記医薬組成物。
【請求項18】
個体においてTLR7/8依存性免疫応答を抑制するオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物であって、当該オリゴヌクレオチドが50塩基又は塩基対未満であり、そして免疫調節配列を含み、ここで当該免疫調節配列が、オリゴヌクレオチドの5’末端において少なくとも1のTGCトリヌクレオチド配列を含み、そして当該オリゴヌクレオチドが、以下の:
5'-TGCTTGCAAGCTTGCAAGCA-3' (配列番号27),
5'-TGCTTGCAAGCTTGCAAG-3' (配列番号28),
5'-TGCTTGCAAGCTTGCA-3' (配列番号29),
5'-TGCTTGCAAGCTTGCAAGC-3' (配列番号40),及び
5'-TGCTTGCAAGCTTG-3' (配列番号42),
からなる群から選ばれる配列を含む、前記組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫調節ポリヌクレオチドに関する。本発明は、免疫応答を調節するための当該ポリヌクレオチドの投与にも関する。
【0002】
関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、2004年9月1日に出願された米国仮特許出願第60/606,833号の利益を主張する。当該文献をその全てについて本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
免疫は一般的に先天性免疫又は獲得免疫として分類することができる。典型的に、先天性免疫は感染に際し即座に生じて、感染性疾患への早期の防御を提供する一方、獲得免疫応答は抗原特異的エフェクター細胞の生成を伴い、そしてしばしば長期間の防御免疫を伴い遅れて生じる。先天性免疫は、持続性の防御免疫を生じさせないが、後に生じる獲得免疫応答を生じさせる役割を果たしているようである。
【0004】
多くの病原体に対して一般的である特徴を認識するため、そしてエフェクター分子の発現をもたらすシグナル伝達事象を活性化するために、先天性免疫は生殖細胞系列がコードする受容体を使用する。これらのエフェクター分子の幾つかは、最終的に獲得免疫応答を誘導しうる。トル様受容体(TLR)のファミリーは、獲得免疫応答のシグナル伝達に関連し、そして微生物リガンドが幾つかの哺乳動物TLRについて同定されてきた。例えば、TLR2はペプチドグリカン、細菌リポペプチド、及びリポ多糖(LPS)のあるタイプと相互作用し、TLR3は二本鎖RNAと相互作用し、TLR4はLPSと相互作用し、そしてTLR-5は細菌フラジェリンと相互作用する。例えば、Poltorakら、(1998) Science 282:2085-2088; Akiraら、(2003) Immunol. Lett. 85:85-95; Alexopoulouら、(2001) Nature 413:732-738; Hayashiら、(2001) Nature 410: 1099-1103を参照のこと。TLR7は、グアノシンアナログにより、イミダゾキノリン、イミキモド、及びR-848などの抗ウイルス低分子化合物により、そして一本鎖ウイルスRNAにより活性化され、そしてTLR8もR-848及び一本鎖ウイルスRNAにより活性化される。例えば、Leeら、(2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:6646-6651 ; Hemmiら、(2002) Nat. Immunol. 3: 196-200; Jurkら、(2002) Nat. Immunol. 3:499; Heilら、(2004) Science 303: 1526-1529; Dieboldら、(2004) Science 303: 1529-1531を参照のこと。TLR-9は、細菌DNA及び5'-CG-3'配列を含む免疫調節DNAなどの免疫調節核酸分子を認識することが示された。例えば、Hemmiら、(2000) Nature 408:740-745; Bauerら、(2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:9237-9242; Takeshitaら、(2001) J. Immunol. 167:3555-3558を参照のこと。さらに、あるTLR(例えば、TLR-1、TLR-2、及びTLR-6)はヘテロダイマー化し、その微生物リガンドと相互作用し、そして活性化を導くことができ、そうしてTLRファミリーのリガンドレパートリーを拡張することができる(Ozinskyら、(2000) J. Endotoxin Res. 6:393-396; Ozinskyら、(2000) Proc. Natl. Acad. Sci USA 97: 13766-13771を参照のこと)。
【0005】
免疫刺激核酸(ISNA)分子、例えば細菌DNA又は非メチル化5'-CG-3'配列を含むポリヌクレオチドは、サイトカイン産生、並びに樹状細胞及びマクロファージの活性化などの先天性免疫応答を刺激することができ、次にTh1型免疫応答を導くことができる。免疫刺激核酸分子は哺乳動物TLR9との相互作用、並びにTLR9を介したシグナル伝達を通して免疫応答を刺激する(上記Hemmiら、(2000))。哺乳動物DNAは、一般的に、CG配列の出現頻度が低いこと、CG配列の大部分がメチル化シトシンを有することのため、免疫刺激活性を有しない。こうして、哺乳動物免疫システム細胞は、TLR9受容体を介して自己のDNAから細菌DNAを区別するようである。
【0006】
免疫刺激核酸分子は、関節炎の発症機序に関連した。免疫刺激核酸は、自己反応性B細胞、例えばリュウマチ因子(RF)として知られているあるクラスの自己抗体を産生する細胞などの活性化において役割を果たすことが示されてきた。こうして、かかる免疫刺激核酸は、全身性の自己免疫に役割を果たすようである。さらに、免疫刺激核酸は、LPSの毒性を高めることができ、そして遺伝子治療のためのベクター投与の副作用の一因となる。例えば、Dengら、(1999) Nature Med. 5:702-705, Leadbetterら、(2002) Nature 416:603-607, Cowderyら、(1996) J. Immunol. 156:4570-4575、米国特許第6,225,292号を参照のこと。
【0007】
不所望な免疫活性化、例えば先天性免疫応答の不所望な活性化を制御するための戦略を同定する必要性が残っている。
【0008】
本明細書中に引用された全ての特許、特許出願、及び刊行物を、その全てについて本明細書に援用する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、免疫調節ポリヌクレオチド、及び当該ポリヌクレオチドを用いて個体において免疫応答を阻害する方法に関し、そして特にヒトにおいて免疫応答を阻害する方法に関する。
【0010】
一の態様では、本発明は免疫調節ポリヌクレオチド(IRP)を提供する。ある実施態様では、本発明は、本明細書に開示される免疫調節ポリヌクレオチドのいずれかを含む組成物を含む。当該組成物は、例えば、医薬として許容される賦形剤、又は多くの他の成分のうちのいずれかを含んでもよい。
【0011】
別の態様では、本発明は免疫調節化合物(IRC)を提供する。別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載される免疫調節化合物のいずれかを含む組成物を含む。当該組成物は、例えば、医薬として許容される賦形剤又は多くの他の成分のうちのいずれかを含んでもよい。
【0012】
別の態様では、本発明は、免疫系の細胞を、免疫調節配列(IRS)を含むポリヌクレオチドと接触させることを含む免疫応答の阻害方法であって、当該細胞が、免疫応答に寄与する細胞からの応答を阻害するために有効な量のポリヌクレオチドと接触される、上記方法を提供する。
【0013】
別の態様では、本発明は、本発明の免疫調節ポリヌクレオチド又は免疫調節化合物を、個体において免疫応答を調節するために十分な量で当該個体に投与することを含む、個体の免疫応答の調節方法を提供する。本発明の方法に記載される免疫調節は、先天性免疫応答の不所望な活性化に関連する障害を患う個体を含む個体において行われてもよい。
【0014】
別の態様では、本発明は、個体においてTLR7/8依存性の先天性免疫応答を阻害する方法であって、本発明の免疫調節化合物又は免疫調節ポリヌクレオチドを、当該個体においてTLR7/8依存性のサイトカイン産生を抑制するために十分な量で対象に投与することを含み、ここで当該IRP又はIRCがTLR7/8クラスのIRSを含む、前記方法を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、個体においてTLR9依存性の先天性免疫応答を阻害する方法であって、本発明の免疫調節化合物又は免疫調節ポリヌクレオチドを、当該個体においてTLR9依存性サイトカイン産生を抑制するために十分な量で個体に投与することを含み、ここで当該IRP又はIRCがTLR9クラスのIRSを含む、前記方法を提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、個体においてTLR9依存性の先天性免疫応答とTLR7/8依存性の免疫応答を阻害する方法であって、本発明の免疫調節化合物又は免疫調節ポリヌクレオチドを、個体においてTLR9依存性のサイトカイン産生及びTLR7/8依存性のサイトカイン産生を抑制するために十分な量で個体に投与することを含み、ここで当該IRP又はIRCがTLR7/8/9クラスのIRSを含む、前記方法を提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は、自己免疫疾患の1以上の症状を改善する方法であって、本発明の免疫調節化合物又は免疫調節ポリヌクレオチドの有効量を、自己免疫疾患を有する個体に投与することを含む、前記方法を提供する。本発明に記載される免疫調節ポリヌクレオチド又は免疫調節化合物の投与は、SLE及びリューマチ様関節炎を含む自己免疫疾患の1以上の症状を改善する。ある実施態様では、SLEの症状を抑制するために有効な免疫調節ポリヌクレオチド又は免疫調節化合物は、TLR7/8クラス又はTLR9クラス又はTLR7/8/9クラスの免疫調節配列を含む。
【0018】
別の態様では、本発明は、自己免疫疾患の発達を予防又は遅延する方法であって、本発明の免疫調節ポリヌクレオチド又は免疫調節化合物の有効量を、自己免疫疾患を発達させるリスクを有する個体に投与することを含む、前記方法を提供する。本発明に記載される免疫調節ポリヌクレオチド又は免疫調節化合物の投与は、自己免疫疾患の発達を予防又は遅延する。
【0019】
別の態様では、本発明は、炎症性疾患又は障害の1以上の症状を改善する方法であって、本発明の免疫調節ポリヌクレオチド又は免疫調節化合物の有効量を、炎症性疾患又は障害を有する個体に投与することを含む、前記方法を提供する。本発明に記載される免疫調節ポリヌクレオチドの投与は、炎症性疾患又は障害の1以上の症状を改善する。ある実施態様では、本発明の組成物は、慢性炎症性疾患又は障害の症状を改善するのに有効である。
【0020】
別の態様では、本発明は、慢性の病原体刺激(pathogen stimulation)を抑制する方法であって、本発明の免疫調節ポリヌクレオチド又は免疫調節化合物の有効量を、慢性の病原体感染又は疾患を有する個体に投与することを含む、前記方法を提供する。本発明に記載される免疫調節ポリヌクレオチド又は免疫調節化合物の投与は、個体における慢性病原体刺激、例えばマラリア及び慢性ウイルス感染に関連する刺激を抑制する。ある実施態様では、慢性の病原体刺激を抑制するために有効な免疫調節ポリヌクレオチド又は免疫刺激化合物は、TLR7/8クラスの免疫調節配列を含む。
【0021】
幾つかの実施態様では、本発明の組成物は、B細胞又は形質細胞様樹状細胞の応答を阻害する。幾つかの実施態様では、本発明の組成物により阻害される免疫応答は、細胞によるIL-6、IL-12、IFN-α、及び/又はTNF-αなどのサイトカイン産生の阻害、細胞成熟の阻害、及び/又は細胞増殖の阻害を含む。幾つかの実施態様では、本発明の組成物は、TLR9依存性細胞応答、TLR7/8依存性細胞応答、及び/又はTLR7/8/9依存性細胞応答を阻害する。
【0022】
本発明は、好ましくは、本発明の方法を行うためのキットに関する。一般的に、本発明のキットは、(一般的に適切な容器の中に)本発明の免疫調節ポリヌクレオチド及び/又は免疫調節化合物を含み、そして個体の免疫調節における免疫調節ポリヌクレオチド及び/又は免疫調節化合物を使用するための使用説明書をさらに含んでもよい。
【0023】
さらに、式:X1GGGGX23(配列番号)[式中、X1、X2、及びX3はヌクレオチドである。但し、X1=C又はAの場合、X23はAAではない]で表されるヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドが本明細書に提供される。オリゴヌクレオチドの幾つかの例において、X1はC又はAである。式:GGNm1GGGGX23(配列番号)[式中、mは1〜約100、又は1〜約20の整数であり、各Nはヌクレオチドであり、そしてX1、X2、及びX3がヌクレオチドである。但し、X1=C又はAである場合、X23はAAではない]で表されるヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドの幾つかの例において、X1はC又はAである。
【0024】
式:NiTCCNj(GG)km1GGGGX23(配列番号)[式中、各Nはヌクレオチドであり、iは1〜約50の整数であり、jは1〜約50の整数であり、kは0又は1であり、mは1〜約20の整数であり、そしてX1、X2、及びX3はヌクレオチドである。但し、X1=C又はAである場合、X23はAAではない]で表されるヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドが提供される。オリゴヌクレオチドの幾つかの例では、X1はC又はAである。式:X123GGGGAA(配列番号)[式中、X1、X2、及びX3はヌクレオチドである。但し、X3=C又はAである場合、X12はGGではない]で表されるヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドが本明細書に提供される。上記オリゴヌクレオチドの幾つかの例において、少なくとも1のGはZ'により置換される。ここで、Z'=d-デアザGである。
【0025】
配列:5'-TGCTTGCAAGCTTGCAAGCA-3'(配列番号27(C661))又は当該配列の断片であって、その少なくとも10塩基のパリンドローム部分を含む断片を含むオリゴヌクレオチドが提供される。ヌクレオチド配列:5'-TGCNm-3'(配列番号120)[式中、各Nは、ヌクレオチドであり、mは5〜約50の整数であり、そして配列N1-Nmは、少なくとも1のGCジヌクレオチドを含む(つまり、ここで配列Nmは少なくとも1のGCジヌクレオチドを含む)]からなるオリゴヌクレオチドが本明細書で提供される。幾つかの例において、当該オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド配列5'-TGCNmA-3'(配列番号121)からなる。別の例において、当該オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド配列5'-TGCNmCA-3'(配列番号122)からなる。別の例では、当該オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド配列5'-TGCNmGCA-3'(配列番号123)からなる。ヌクレオチド配列TGCNmTCCTGGAGGGGTTGT-3'(配列番号)[式中、各Nはヌクレオチドであり、そしてmは0〜約100の整数である]を含むオリゴヌクレオチドが本明細書に提供される。当該オリゴヌクレオチドの幾つかの例において、配列N1-Nmは、配列5'-TTGACAGCTTGACAGCA-3'(配列番号)の断片を含む。
【0026】
ヌクレオチド配列5'-TGCRRZNYY-3'(配列番号)[式中、ZはCを除く任意のヌクレオチドであり、Nは任意のヌクレオチドであり、そしてさらに、ZがG又はイノシンでない場合、Nはグアノシン又はイノシンである]を含むオリゴヌクレオチドが本明細書に提供される。ヌクレオチド配列5'-TGCRRZNYm-3'(配列番号)、[式中、ZはCを除く任意のヌクレオチドであり、Nは任意のヌクレオチドであり、Yはピリミジンヌクレオチドであり、mは2〜100の整数であり、そしてここで、ZがG又はイノシンでない場合、Nはグアノシン又はイノシンである]を含むオリゴヌクレオチドが本明細書に提供される。
【0027】
免疫応答を阻害する方法であって、免疫系の細胞を、式:X1GGGGX23(配列番号)[式中、X1、X2、及びX3はヌクレオチドである。但し、X1=C又はAである場合、X23はAAではない]で表されるヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドと接触させることを含み、ここで当該細胞が免疫応答に寄与する細胞からの応答を阻害するために十分な量のオリゴヌクレオチドと接触される、前記方法が本明細書に提供される。個体において免疫応答を調節する方法であって、個体に、式:X1GGGGX23(配列番号120)[式中、X1、X2、及びX3がヌクレオチドである。但し、X1=C又はAである場合、X23はAAではない]で表されるヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドを、当該個体における免疫応答を調節するために十分な量で個体に投与することを含む、前記方法が提供される。
【0028】
個体において免疫応答を調節する方法であって、ヌクレオチド配列5'-TGCNm-3'(配列番号120) [式中、各Nはヌクレオチドであり、mは5〜約50の整数であり、そして配列N1-Nmは少なくとも1のGCジヌクレオチドを含む]からなるオリゴヌクレオチドを、当該個体において免疫応答を調節するために十分な量で個体に投与することを含む、前記方法が本明細書に提供される。
【0029】
個体において免疫応答を調節する方法であって、ヌクレオチド配列TGCNmTCCTGGAGGGGTTGT-3'(配列番号)[式中、各Nはヌクレオチドであり、そしてmは0〜約100の整数である]を含むオリゴヌクレオチドを、当該個体において免疫応答を調節するために十分な量で個体に投与することを含む、前記方法が本明細書に提供される。
【0030】
個体においてTLR7/8依存性の先天性免疫応答を阻害する方法であって、ヌクレオチド配列5'-TGCNm-3'(配列番号120) [式中、各Nがヌクレオチドであり、mは5〜約50の整数であり、そして配列N1-Nmは少なくとも1のGCジヌクレオチドを含む]からなるオリゴヌクレオチドを、当該個体においてTLR7/8依存性サイトカイン産生を抑制するために十分な量で個体に投与することを含む、前記方法が本明細書に提供される。
【0031】
個体においてTLR9依存性先天性免疫応答を阻害する方法であって、式:X1GGGGX23(配列番号)[式中、X1、X2、及びX3はヌクレオチドである。但し、X1=C又はAである場合、X23はAAではない]で表されるヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドを、当該個体においてTLR9依存性のサイトカイン産生を抑制するために十分な量で、個体に投与することを含む、前記方法が本明細書に提供される。
【0032】
個体においてTLR9依存性先天性免疫応答及びTLR7/8依存性免疫応答を阻害する方法であって、式:TGCNm(配列番号120) [式中、各Nはヌクレオチドであり、mは5〜約50の整数であり、そして配列N1-Nmは少なくとも1のGCジヌクレオチドを含む]で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドを、当該個体においてTLR9依存性のサイトカイン産生及びTLR7/8依存性サイトカイン産生を抑制するために十分な量で、個体に投与することを含む、前記方法が本明細書に提供される。
【0033】
自己免疫疾患の1以上の症状を改善する方法であって、式:X1GGGGX23(配列番号)[式中、X1、X2、及びX3はヌクレオチドである。但し、X1=C又はAである場合、X23はAAではない]で表されるヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドの有効量を、自己免疫疾患を有する個体に投与することを含む、前記方法が本明細書に提供される。いくつかの実施例において、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)及びリューマチ様関節炎からなる群から選ばれる。自己免疫疾患の1以上の症状を改善するための方法であって、ヌクレオチド配列5'-TGCNm-3'(配列番号120)[式中、各Nはヌクレオチドであり、mは5〜約50の整数であり、そして配列N1-Nmが少なくとも1のGCジヌクレオチドを含む]からなるオリゴヌクレオチドの有効量を、自己免疫疾患を有する個体に投与することを含む、前記方法が本明細書に提供される。自己免疫疾患の1以上の症状を改善するための方法であって、ヌクレオチド配列:TGCNmTCCTGGAGGGGTTGT-3'(配列番号)[式中、各Nはヌクレオチドであり、そしてmは0〜約100の整数である]を含むオリゴヌクレオチドの有効量を、自己免疫疾患を有する個体へと投与することを含む、前記方法が本明細書に提供される。幾つかの例において、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)及びリューマチ様関節炎からなる群から選ばれる。
【0034】
自己免疫疾患の発達を予防又は遅延する方法であって、式:X1GGGGX23(配列番号)[式中、X1、X2、及びX3はヌクレオチドである。但し、X1=C又はAである場合、X23はAAではない]で表されるヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドの有効量を、自己免疫疾患を発達させるリスクにある個体に投与することを含む、前記方法が本明細書に提供される。
【0035】
自己免疫疾患の発達を予防又は遅延する方法であって、ヌクレオチド配列:5'-TGCNm-3'(配列番号120)[式中、各Nはヌクレオチドであり、mは5〜約50の整数であり、そしてN1-Nmは少なくとも1のGCジヌクレオチドを含む]からなるオリゴヌクレオチドの有効量を、自己免疫疾患を発達させるリスクにある個体に投与することを含む、前記方法が本明細書に提供される。
【0036】
自己免疫疾患の発達を予防又は遅延する方法であって、ヌクレオチド配列:TGCNmTCCTGGAGGGGTTGT-3'(配列番号)[式中、各Nはヌクレオチドであり、そしてmは0〜約100の整数である]を含むオリゴヌクレオチドの有効量を、自己免疫疾患を発達させるリスクにある個体に投与することを含む、前記方法が本明細書に提供される。
【0037】
炎症性疾患又は障害の1以上の症状を改善する方法であって、式:X1GGGGX23(配列番号)[式中、X1、X2、及びX3はヌクレオチドである。但し、X1=C又はAである場合、X23はAAではない]で表されるヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドの有効量を、炎症性疾患又は障害を有する個体に投与することを含む、前記方法が本明細書に提供される。炎症性疾患又は障害の1以上の症状を改善する方法であって、ヌクレオチド配列5'-TGCNm-3'(配列番号120)[式中、各Nはヌクレオチドであり、mは5〜約50の整数であり、そして配列N1-Nmは少なくとも1のGCヌクレオチドを含む]からなるオリゴヌクレオチドの有効量を、炎症性疾患又は障害を有する個体に投与することを含む方法が提供される。炎症性疾患又は障害の1以上の症状を改善する方法であって、ヌクレオチド配列:TGCNmTCCTGGAGGGGTTGT-3'(配列番号)[式中、各Nはヌクレオチドであり、そしてmは0〜約100の整数である]を含む有効量のオリゴヌクレオチドを、炎症性疾患又は障害を有する個体へと投与することを含む、前記方法が本明細書において提供される。
【0038】
慢性病原体刺激を抑制する方法であって、X1GGGGX23(配列番号)[式中、X1、X2、及びX3はヌクレオチドである。但し、X1=C又はAである場合、X23はAAではない]を、慢性病原体感染又は疾患を有する個体に投与することを含む、前記方法が本明細書において提供される。
【0039】
さらに、以下の:
i. 式:X1GGGGX23(配列番号)[式中、X1、X2、及びX3はヌクレオチドである。但し、X1=C又はAである場合、X23はAAではない]で表されるヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド;
ii. ヌクレオチド配列:5'-TGCNm-3'(配列番号120)[式中、各Nはヌクレオチドであり、mは5〜約50の整数であり、そして配列N1-Nmは少なくとも1のGCジヌクレオチドを含む]からなるオリゴヌクレオチド;又は
iii. ヌクレオチド配列:TGCNmTCCTGGAGGGGTTGT-3'(配列番号)[式中、各Nはヌクレオチドであり、そしてmは0〜約100の整数である]を含むオリゴヌクレオチド
を含むキットであって、当該オリゴヌクレオチドが適切な容器内に存在し、そして当該キットが個体を免疫調節する際にオリゴヌクレオチドを使用するための取扱説明書を含む、前記キットが本明細書において提供される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1A-1Bは、IRPが免疫刺激核酸(ISNA)により刺激された細胞からのIL-6及びIL-12の産生を阻害することを示すグラフである。図1Aは、ISNA配列番号 (1018)単独で、及びIRP配列番号 (530)、IRP配列番号 (C869)、又は対照配列番号 (C532)と共に刺激されたマウス脾臓の結果を示す。図1Bは、ISNA配列番号 (C274)単独で、及びIRP配列番号 (530)、IRP配列番号 (C869)、又は対照配列番号 (C532)と共に刺激されたマウスCD11c+細胞の結果を示す。
図2図2は、ISNA配列番号 (1018)単独で、及びIRP配列番号 (530)、IRP配列番号 (C869)、又は対照オリゴヌクレオチド配列番号 (C532)と共に刺激されたヒトB細胞からのIL-6産生を示すグラフである。
図3図3は、ISNA配列番号 (1018)単独で、及びIRP配列番号 (C869)又は対照オリゴヌクレオチドと共に、そしてIRP配列番号 (C869)単独で注射されたマウスから得た血清中のIL-6レベルを示すグラフである。共投与されるIRP:ISNAの比、又はIRP:対照オリゴヌクレオチドの比は、3:1〜1:3で変化する。
図4図4は、ISNA配列番号 (1018)単独で、及びIRP配列番号 (C869)又は対照オリゴヌクレオチドと共に、そしてIRP配列番号 (C869)単独で注射されたマウスから得た血清中のIL-12レベルを示すグラフである。共投与されるIRP:ISNAの比、又はIRP:対照オリゴヌクレオチドの比は、3:1〜1:3で変化する。
図5図5は、ISNA配列番号 (1018)単独で、及びIRP配列番号 (C869)又は対照オリゴヌクレオチドと共に、そしてIRP配列番号 (C869)単独で注射されたマウスから得た血清中のTNF-αレベルを示すグラフである。共投与されるIRP:ISNAの比、又はIRP:対照オリゴヌクレオチドの比は、3:1〜1:3で変化する。
図6図6は、一の部位において皮下にISNA配列番号 (1018)を注射され、そして同じ部位又は異なる部位で投与される対照オリゴヌクレオチド又はIRP配列番号 (C869)を注射されたマウスから得た血清中のIL-6レベルを示すグラフである。
図7図7は、一の部位において皮下にISNA配列番号 (1018)を注射され、そして同じ部位又は異なる部位で投与される対照オリゴヌクレオチド又はIRP配列番号 (C869)を注射されたマウスから得た血清中のIL-12レベルを示すグラフである。
図8図8A-8Bは、様々な量のHSV-1感染に応答してマウスCD11c+脾臓細胞によるIFN-α(図8A)及びIL-12(図8B)の産生を示すグラフを示す。
図9A図9A-9Cは、IRPがHSV-1刺激細胞からのサイトカイン産生を阻害することを示すグラフを図示する。図9Aは、様々な濃度のIRP配列番号 (C869)又は対照オリゴヌクレオチドの存在下でHSV-1に応答したマウスCD11c+脾臓細胞によるIFN-αの産生を図示する。
図9B-C】図9A-9Cは、IRPがHSV-1刺激細胞からのサイトカイン産生を阻害することを示すグラフを図示する。図9Bは、様々な濃度のIRP配列番号 (C869)又は対照オリゴヌクレオチドの存在下でHSV-1に応答したマウスCD11c+脾臓細胞によるIL-12の産生を図示する。図9Cは、様々な濃度のIRP配列番号 (C869)又は対照オリゴヌクレオチドの存在下でHSV-1に応答したヒトPDCによるIFN-αの産生を図示する。
図10図10A-10Bは、IRPがインフルエンザウイルス(PR/8)刺激細胞からのサイトカインの産生を阻害することを示すグラフを図示する。図10Aは、様々な量のインフルエンザウイルスに応答したヒトPDCによるIFN-α産生を図示する。図10Bは、様々な濃度のIRP配列番号 (C869)又は対照オリゴヌクレオチドの存在下でインフルエンザウイルスに応答したヒトPDCによるIFN-α産生を示す。
図11図11A-11Bは、IRPがウイルス刺激ヒトPDC細胞からのIFN-αの産生を阻害することを示すグラフを図示する。ウイルス単独、IRP配列番号 (C869)、IRP配列番号 (C661)、又は対照オリゴヌクレオチドの存在下で、HSV-1(図11A、左のグラフ)及びインフルエンザウイルス(図11B、右のグラフ)に応答した細胞によるIFN-α産生を示す。
図12図12A-12Bは、ISNA(図12A)又はLPS、TLR4刺激物(図12B)のいずれかで刺激された脾臓細胞からのIL-6産生についてのIRPの効果を示すグラフを図示する。刺激された細胞をISNA又はLPS単独で、及びIRP配列番号 (530)、IRP配列番号 (C869)、又は対照オリゴヌクレオチドと共にインキュベーションした。
図13図13A-13Dは、TLR7刺激物であるロキソリビンで刺激された脾臓細胞からのIL-6(図13A-13B)及びIL-12(図13C-13D)産生についてのIRPの効果を示すグラフを図示する。刺激された細胞を、ロキソリビン単独で及び様々な量のIRP配列番号 (C869)(図13A-13C)又は対照オリゴヌクレオチド(図13B-13D)と共にインキュベーションした。
図14図14A-14Dは、TLR7/8刺激物であるレシキモド(R848)で刺激された脾臓細胞からのIL-6(図14A-14B)及びIL-12(図14C-14D)産生についてのIRPの効果を示すグラフを図示する。刺激された細胞を、R848単独で、及び様々な濃度のIRP配列番号 (C869)(図14A-14C)又は対照オリゴヌクレオチド(図14B-14D)と共にインキュベーションした。
図15図15A-15Dは、TLR刺激物であるISNA(配列番号 (1018))(図15A)、LPS(図15B)、ロキソリビン(図15C)、及びR848(図15D)で刺激された脾臓細胞からのIL-6産生についてのIRPの効果を示すグラフを図示する。刺激された細胞を、指示したTLR刺激物単独で、そしてIRP配列番号(C869)、IRP配列番号 (C661)、又は対照オリゴヌクレオチドと共にインキュベーションした。
図16図16A-16Bは、ISNA配列番号 (1018)刺激された細胞又はR848刺激された細胞からのIL-6産生をIRPが阻害することを示す。図16Aは、ISNA配列番号 (1018)単独で、及びIRP配列番号 (869)、IRP配列番号 (661)、又はIRP配列番号 (954)と共に刺激されたマウス脾臓細胞の結果を示す。図16Bは、R848単独で、及びIRP配列番号 (869)、IRP配列番号 (661)、又はIRP配列番号 (954)と共に刺激されたマウス脾臓細胞の結果を示す。
図17図17A-17Bは、R848単独で、そしてIRP配列番号 (954)又は対照オリゴヌクレオチドと共に注射された1時間後にマウスから得た血清中のIL-12(図17A)及びTNF-α(図17B)を示すグラフである。
図18図18は、D-ガラクトサミン及びISNA配列番号 (1018)単独で、及びIRP配列番号 (954)、IRP配列番号 (869)、又は対照オリゴヌクレオチドと共に処理された後の生存しているマウスの割合を示すグラフである。
図19図19A-19Bは、ISNA配列番号 (1018)刺激細胞又はR848刺激細胞からのIL-6産生をIRPが阻害することを示すグラフを図示する。図19Aは、ISNA配列番号 (1018)単独で、及びIRP配列番号 (954)、IRP配列番号 (DV019:N-1)、IRP配列番号(DV020:N-2)、IRP配列番号(DV021:N-3)、IRP配列番号(DV022:N-4)、IRP配列番号(DV023:N-5)、又はIRP配列番号(DV024:N-6)と共に刺激されたマウス脾臓細胞の結果を図示する。図19Bは、R848単独で、及びIRP配列番号(954)、IRP配列番号 (DV019)、IRP配列番号 (DV020)、IRP配列番号:(DV021)、IRP配列番号 (DV022)、IRP配列番号 (DV023)、又はIRP配列番号(DV024)と共に刺激されたマウス脾臓細胞の結果を図示する。
図20図20は、治療無し又は15μg又は45μgのIRP配列番号 (954)を週二回注射した後における(NZB×NZW)F1マウスの血清中の抗dsDNA自己抗体のレベルを示すグラフである。
図21図21は、100μgのIRP配列番号 (954)又は対照オリゴヌクレオチドを8〜9月齢で週3回注射された後の生存している(NZB×NZW)F1マウスの割合を示すグラフである。
図22図22A-22Bは、ISNA配列番号 (1018)(図22A)又はR848(図22B)単独で、及びIRP配列番号(869)、IRP配列番号 (661)、IRP配列番号 (954)、又は対照オリゴヌクレオチドで刺激されたヒトB細胞からのIL-6産生を示すグラフである。
図23図23は、UV不活性化HSV-1ウイルス単独で、及びIRP配列番号 (954)又は対照オリゴヌクレオチドと共に刺激されたヒトPDC細胞からのIFN-αの産生を示すグラフである。
図24図24は、熱不活性化インフルエンザウイルス単独で、及びIRP配列番号 (954)又は対照オリゴヌクレオチドと共に刺激されたヒトPDC細胞からのIFN-αの産生を示すグラフである。
図25図25は、抗dsDNA免疫複合体を含む血清単独で、及びIRP配列番号 (954)又は対照オリゴヌクレオチドと共に刺激されたヒトPDC細胞からのIFN-αの産生を示すグラフである。
図26図26は、抗RNP免疫複合体単独で、及びIRP配列番号 (954)又は対照オリゴヌクレオチドと共に刺激されたヒトPDC細胞からのIFN-αの産生を示すグラフである。
図27図27は、ISNA配列番号 (1018)単独で、及びIRP配列番号 (869)、IRP配列番号 (661)、IRP配列番号 (954)、IRP配列番号 (983)、IRP配列番号 (984)、IRP配列番号 (985)、IRP配列番号 (986)、IRP配列番号 (987)、IRP配列番号 (988)、IRP配列番号 (989)、IRP配列番号 (990)、IRP配列番号 (991)又は対照オリゴヌクレオチドと共に刺激されたマウス脾臓細胞からのIL-6産生を示すグラフである。
図28図28は、R848単独で、及びIRP配列番号(869)、IRP配列番号 (661)、IRP配列番号 (954)、IRP配列番号 (983).IRP配列番号 (984)、IRP配列番号 (985)、IRP配列番号 (986)、IRP配列番号 (987)、IRP配列番号 (988)、IRP配列番号 (989)、IRP配列番号 (990)、IRP配列番号 (991)、又は対照オリゴヌクレオチドと共に刺激されたマウス脾臓細胞からのIL-6産生を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明者らは、免疫調節ポリヌクレオチド、及びこれらの免疫調節ポリヌクレオチドを用いて個体、特にヒトにおいて免疫応答を調節する方法を発見した。本発明の組成物は、本明細書に記載された免疫調節ポリヌクレオチドを含む。本発明の免疫調節ポリヌクレオチドは、特に先天性免疫応答、例えば、TLR7/8及び/又はTLR9を介したシグナル伝達に関する応答を含むを阻害する。
【0042】
本発明者らは、本発明の免疫調節ポリヌクレオチドがヒト細胞を含む免疫細胞を様々な方法で効果的に調節することを発見した。本発明の免疫調節ポリヌクレオチドが、IFN-α、IL-6、IL-12、及びTNF-αを含むサイトカインのヒト細胞からの産生を効率的に抑制できることを本発明者らは観測した。本発明の免疫調節ポリヌクレオチドは、TLR7/8及び/又はTLR9受容体を介して刺激された細胞応答、例えばサイトカイン産生を抑制する。本発明者らは、本発明の免疫調節ポリヌクレオチドが、免疫刺激核酸で刺激された細胞、例えばB細胞及び形質細胞様樹状細胞の増殖及び/又は成熟を効果的に抑制できるということを観測した。こうして、本発明のIRPは、遺伝子治療目的のために投与された核酸ベクターの感染又は抑制のため存在する微生物DNAなどのISNAに対する免疫応答を抑制するのに有用である。
【0043】
本発明は、本発明の免疫調節ポリヌクレオチドを個体に投与することにより、個体において自己免疫障害及び慢性炎症性障害を治療及び予防する方法も提供する。
【0044】
本発明のIRP及び/又はIRCを含むキットがさらに提供される。当該キットはさらに、対象において免疫調節するための本発明の免疫調節ポリヌクレオチドを投与するための説明書をさらに含んでもよい。
【0045】
一般技術
本発明の実施にあたり、他に記載がない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の慣用技術を利用するであろう。これらは当該技術分野の範囲内である。かかる技術は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第二版(Sambrookら、1989); Oligonucleotide Synthesis (MJ. Gait編, 1984); Animal Cell Culture (R.I. Freshney編, 1987); Handbook of Experimental Immunology (D. M. Weir & CC. Blackwell編); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller & M. P. Calos編, 1987); Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubelら編, 1987); PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullisら編、1994); Current Protocols in Immunology (J. E. Coliganら編, 1991 ); The Immunoassay Handbook (D. Wild,編、Stockton Press NY, 1994); Bioconjugate Techniques(Greg T. Hermanson編、Academic Press, 1996);及びMethods of Immunological Analysis (R. Masseyeff, W. H. Albert及びN. A. Staines編, Weinheim: VCH Verlags gesellschaft mbH, 1993)などの文献に十分に説明されている。
【0046】
定義
単数形「a」、「an」、及び「the」は、他に記載がない限り複数形を含む。例えばIRP(「an IRP」)は、1以上のIRPを含む。
【0047】
本明細書において交換して使用される場合、「核酸」、「ポリヌクレオチド」、及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、一本鎖DNA(ssDNA)、二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖RNA(ssRNA)、及び二本鎖RNA(dsRNA)、改変オリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオシド、又はそれらの組合せを含む。オリゴヌクレオチドは直線状又は環状の形であってもよいし、又は当該オリゴヌクレオチドは直線状及び環状断片の両方を含むことができる。オリゴヌクレオチドは、一般的にホスホジエステル結合を介して結合されたヌクレオシドポリマーであるが、他の結合、例えばホスホロチオエート・エステルがオリゴヌクレオチド中に使用されてもよい。ヌクレオシドは、糖に結合されたプリン(アデニン(A)又はグアニン(G)、又はその誘導体)或いはピリミジン(チミン(T)、シトシン(C)、又はウラシル(U)、又はその誘導体)塩基からなる。DNAの4個のヌクレオシド・ユニット(又は塩基)は、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、及びデオキシシシチジンと呼ばれる。ヌクレオチドは、ヌクレオシドのリン酸エステルである。
【0048】
本明細書で使用される「免疫刺激核酸」又は「免疫刺激ポリヌクレオチド」は、in vitro、in vivo、及び/又はex vivoで計測される計測可能な免疫応答に影響し及び/又は寄与する核酸分子を指す。計測可能な免疫応答の例は、非限定的に、抗原特異的抗体の産生、サイトカインの分泌、NK細胞、CD4+Tリンパ球、CD8+Tリンパ球、Bリンパ球などのリンパ球集合の活性化又は増加を含む。免疫刺激核酸(ISNA)配列は、先天性免疫応答を刺激することが知られており、特にこれらの応答は、細胞におけるTLR-9シグナル伝達を介して生じる。当該技術分野に知られているように、免疫刺激核酸(ISNA)分子は、微生物源、例えば細菌から単離することができ、遺伝子治療において使用するための核酸ベクター中に存在することもあり、又は本明細書に記載されかつ当該技術分野において知られている技術及び装置を用いて合成することもできる。一般的に、免疫刺激核酸配列は、少なくとも1のCGジヌクレオチドを含み、当該ジヌクレオチドのCはメチル化されていない。従って、微生物感染及び投与されたDNAは、幾つかの場合、先天性免疫応答の刺激をもたらすことができる。
【0049】
本明細書で使用される「免疫刺激」又は「免疫応答を刺激する」という用語は、免疫応答に参加する細胞型の刺激、及び特異抗原物質に対する免疫応答の亢進を含む。免疫刺激核酸により刺激される免疫応答は、一般的に、「Th2型」免疫応答に対立する「Th1型」免疫応答である。Th1型免疫応答は、通常、抗原及び活性化マクロファージ機能に対する「遅延型高感受性」反応により特徴付けられ、そしてIFN-γ、IL-2、IL-12、及びTNF-βなどのTh1関連サイトカインのレベルの増加により生化学レベルで検出することができる。Th2型免疫応答は、一般的に、高レベルの抗体産生、特に、IgE抗体産生、並びに好酸球の数及び活性化の増加、そしてIL-4、IL-5、及びIL-13などのTh2関連サイトカインの発現に関連する。
【0050】
本明細書に使用される「先天性免疫応答」又は「先天性免疫」という用語は、細胞又は個体が病原体の存在を認識し、そして応答する様々な先天性の抵抗性メカニズムを含む。本明細書に使用されるとき、「先天性免疫応答」は、細胞内及び細胞間の事象及び反応であって、当該細胞が病原体関連分子のパターン又はシグナルを認識した際に生じるものを含む。先天性免疫応答において活性である細胞受容体は、トル様受容体(TLR)のファミリーを含み、そして微生物リガンドは、本明細書に記載されるように、幾つかのTLRについて同定されてきた。
【0051】
本明細書に使用される「免疫調節配列」又は「IRS」という用語は、in vitro、in vivo、及び/又はex vivoで計測される計測可能な先天性免疫応答を阻害及び/又は抑制する核酸配列を指す。本明細書に使用される「免疫調節ポリヌクレオチド」又は「IRP」という用語は、in vitro、in vivo、及び/又はex vivoにおいて計測される計測可能な先天性免疫応答を阻害及び/又は抑制する少なくとも1のIRSを含むポリヌクレオチドを指す。TLR、例えばTLR-7、8、又は9の阻害は、非限定的に、例えば、リガンド-受容体結合を阻害し、そしてリガンド-受容体結合後の下流シグナル経路を阻害することによる受容体部位での阻害を含む。計測可能な先天性免疫応答の例は、非限定的に、サイトカインの分泌、NK細胞、CD4+リンパ球、CD8+リンパ球、Bリンパ球などのリンパ球集合の活性化又は増加、形質細胞樹状細胞などの細胞集合の成熟を含む。
【0052】
本明細書に使用される「免疫調節化合物」又は「IRC」という用語は、免疫調節活性を有し、かつIRSを含む核酸部分を含む分子を指す。IRCは、1より多くのIRSを含むか、IRSからなるか、又はそれ自身では免疫刺激活性を有さない核酸部分からなってもよい。IRCは、ポリヌクレオチドからなってもよく(ポリヌクレオチドIRC)、又はさらなる部分を含んでもよい。従って、IRCという用語は、1以上の核酸部分を包含する化合物を含み、当該化合物の少なくとも1つは、非ヌクレオチドスペーサー部分に共有結合されたIRCを含む。
【0053】
「パリンドローム配列」又は「パリンドローム」という用語は、反転された繰り返し配列である核酸配列、例えば、ABCDD'C'B'A'[式中、塩基、例えばAとA'、BとB'、CとC'、DとD'がワトソンクリック塩基対を形成できる。] を指す。このような配列は、一本鎖であってもよく、又は二本鎖構造を形成してもよく、又は同じ条件下でヘアピンループ構造を形成してもよい。例えば、本明細書に使用されるとき、「8塩基パリンドローム」は、パリンドローム配列が8塩基長、例えばABCDD'C'B'A'などである核酸配列を指す。パリンドローム配列が、非パリンドローム配列を含むポリヌクレオチドの一部であってもよい。ポリヌクレオチドは、1以上のパリンドローム配列部分及び1以上の非パリンドローム配列部分を含んでもよい。或いは、ポリヌクレオチド配列は、完全にパリンドローム状であってもよい。1超のパリンドローム配列部分を有するポリヌクレオチドにおいて、パリンドローム配列部分は、互いに重なり合ってもよいし、又はパリンドローム配列部分は互いに重なり合わなくともよい。
【0054】
「3'」という用語は、一般的に、同じポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドにおけるある領域又は位置の3'側(下流)のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドにおける領域又は位置を指す。
【0055】
「5'」という用語は、一般的に、同じポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドにおけるある領域又は位置の5'側(上流)のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドにおける領域又は位置を指す。
【0056】
「会合」という用語は、IRP及び/又はIRCが結合された複合体を指す。かかる会合の結合は、共有及び/又は非共有結合を含む。
【0057】
「アジュバント」は、抗原などの免疫原に加えられた場合に、当該混合物を受けた際に受容者において免疫原に対する免疫応答を非特異的に高めるか又は増強する物質を指す。
【0058】
「ペプチド」という用語は、十分な長さであり、そして当該ペプチドがハプテンであろうとなかろうと生物学的応答、例えば、抗体産生又はサイトカイン活性などの生物学的応答を発揮する組成物であるポリペプチドである。典型的に、当該ペプチドは、少なくとも6アミノ酸残基の長さである。「ペプチド」という用語はさらに、改変されたアミノ酸(天然又は非天然型であろうとなかろうと)を含み、かかる改変は、非限定的に、リン酸化、グリコシル化、ペグ化、脂質化(lipidization)、及びメチル化を含む。
【0059】
「デリバリー分子」又は「デリバリービヒクル」は、特定の部位及び/又は特定のタイミングでIRP及び/又はIRCのデリバリーを促進、許容、及び/又は亢進する化学部分(chemical moiety)である。
【0060】
「個体」は、脊椎動物、例えばトリであり、そして好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物は非限定的にヒト、霊長類、家畜、スポーツ動物、げっ歯類及びペットを含む。
【0061】
物質の「有効量」又は「十分な量」は、有利又は所望の結果、例えば臨床結果を発揮するために十分な量であり、そしてその様なものとして、「有効量」は適用される状況に左右される。TLR-9依存性免疫応答を抑制する組成物を投与する状況では、有効量のIRPは、TLR-9を介した刺激に対する細胞応答を阻害又は低減するために十分な量である。TLR-7/8依存性免疫応答を抑制する組成物を投与する状況において、IRPの有効量は、TLR-7/8を介した刺激に対する細胞応答を阻害又は低減するために十分な量である。有効量は、1回以上の投与で投与することができる。
【0062】
本明細書において使用される「共投与」という用語は、免疫応答を調節するために、十分近い時間のうちに少なくとも2個の異なる物質を投与することを指す。好ましくは、共投与は、少なくとも2個の異なる物質の同時投与を指す。
【0063】
応答又はパラメーターの「抑制」又は「阻害」は、関心の条件又はパラメーターを除いて同じ条件に比べたとき、或いは他の条件と比べたとき、当該応答又はパラメーターを低下させることを含む。例えば、免疫刺激核酸誘導性のサイトカイン産生を抑制するIRPを含む組成物は、例えば、免疫刺激核酸単独で誘導されるサイトカイン産生に比べてサイトカイン産生を低減する。他の例として、先天性免疫応答に関連するサイトカイン産生を抑制するIRPを含む組成物は、例えば、先天性免疫応答単独で産生されるサイトカインの程度及び/又はレベルに比べて、サイトカイン産生の程度及び/又はレベルを低減する。B細胞「抑制」は、例えば、B細胞増殖の低下、B細胞活性化の低下、及び/又は刺激されたB細胞からのIL-6及び/又はTNF-αなどのサイトカイン産生の低下を含む。TLR応答、例えばTLR-7、8、又は9応答の阻害は、非限定的に、例えば、有効なリガンド-受容体結合を予防又は阻害することによる受容体部位での阻害、並びに例えば、有効なリガンド-受容体結合の後の下流シグナル経路の阻害を含む。
【0064】
応答又はパラメーターの「刺激」は、当該応答又はパラメーターの誘発及び/又は亢進を含む。例えば、先天性免疫応答又はTh1応答などの免疫応答の「刺激」は、応答の誘発及び/又は亢進から生じうる応答の増加を意味する。同様に、サイトカイン又は細胞型(例えばCTL)の「刺激」は、サイトカイン又は細胞型の量又はレベルの増加を意味する。B細胞「刺激」は、非限定的に、B細胞増殖の増加、B細胞活性化の誘導、及び/又は刺激されたB細胞からのIL-6及び/又はTNF-αなどのサイトカインの産生の増加を含む。
【0065】
本明細書に使用されるとき、当該技術分野において周知であるように、「治療」は、臨床結果を含む有益な又は所望される結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益又は所望される臨床結果は、非限定的に、検出できるか否かに関わらず、1以上の症状の軽減又は改善、疾患程度の低減、疾患状態の安定化(つまり悪化させないこと)、疾患拡大の予防、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は緩和、及び(一部又は完全な)寛解を含む。「治療」は、治療を受けていない場合の予期される余命に比べて、余命を延ばすことを意味する。
【0066】
疾患又は障害の「緩和」は、障害を治療しない場合に比べて、障害又は疾患の程度及び/又は不所望な臨床徴候が減少され、及び/又は経過のタイムコースが減速又は延長されることを意味する。特に、自己免疫疾患の場合では、当業者によく理解されているように、緩和は、不所望な免疫応答の調節又は低減する際に生じうる。さらに、緩和は、1用量の投与により必ずしも生じるわけではないが、一連の用量を投与した際に生じることが多い。こうして、応答又は障害を軽減するために十分な量は、1回以上の投与において投与されてもよい。
【0067】
本明細書に使用されるとき、「含む(comprising)」という用語及びその同語族は、包含的な意味で使用される。つまり、「含む(including)」及びその同語族と同義である。
【0068】
本発明の組成物
本発明は、個体における先天性免疫応答を調節するための免疫調節配列(IRS)、免疫調節ポリヌクレオチド(IRP)、及び免疫調節化合物(IRC)を提供する。本発明の各IRP及びIRCは、少なくとも1のIRSを含む。
【0069】
本発明の組成物は、免疫調節ポリヌクレオチド又は免疫調節化合物を単独(又は2以上のIRP及び/又はIRCの組合せ)で含む。本発明の組成物は、IRP若しくはIRC及び医薬として許容される賦形剤を含んでもよい。緩衝剤を含む医薬として許容される賦形剤は、本明細書に記載され、そして当該技術分野において周知である(Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Mack Publishing (2000))。
【0070】
免疫調節ポリヌクレオチド及び免疫調節化合物
本発明に従って、IRP又はIRCは、少なくとも1の免疫調節配列を含む。ある場合では、免疫調節配列(IRS)は5'-G,C-3'配列を含む。ある場合では、IRSは、当該ポリヌクレオチドの5'末端又はその付近で、少なくとも1のTGCトリヌクレチド配列を含む(つまり、5'-TGC)。ある場合では、IRSは、5'-GGGG-3'配列を含む。ある場合では、IRSは5'-GGGG-3'配列を含まない。従って、ある場合では、IRP又はIRCは5'-GGGG-3'配列を含まない。ある場合では、5'-GGGG-3'配列を含むIRP又はIRCは、一本鎖形態において使用されるとき特に有効である。ある場合では、5'-GGGG-3'配列を含むIRP又はIRCは、ホスホチオエート骨格を用いて作成される場合に特に有効である。
【0071】
本明細書に示されるように、特定のIRP及びIRCはTLR-7及び/又はTLR-8依存性細胞応答を阻害する。また、特定のIRP及びIRCは、TLR-9依存性の細胞応答を阻害し、そして特定のIRP及びIRCはTLR-7/8依存性細胞応答及びTLR-9依存性細胞応答を阻害する。本明細書に使用される場合、「TLR-7/8」は「TLR-7及び/又はTLR-8」を指す。従って、本明細書に使用される場合、「TLR-7/8/9」は、「(TLR-7及び/又はTLR-8)及びTLR-9」を指す。本明細書に示されるように、特定のIRPはTLR4依存性の細胞応答を阻害しない。
【0072】
免疫刺激核酸及び先天性免疫応答の他の刺激物質は当該技術分野に記載されており、そしてその活性は、サイトカイン分泌、抗体産生、NK細胞活性化、B細胞増殖、T細胞増殖、樹状細胞成熟などの先天性免疫応答の様々な態様を指し示す標準アッセイを用いて容易に計測することができる。例えば、Kriegら、(1995) Nature 374:546-549; Yamamotoら、(1992) J. Immunol. 148:4072-4076; Klinmanら、(1997) J Immunol. 158:3635-3639; Pisetsky (1996) J. Immunol. 156:421 -423; Romanら、(1997) Nature Med. 3:849-854; 上記Hemmiら、(2000);上記Leeら、(2003);WO 98/16247; WO 98/55495; WO 00/61151、及び米国特許第6,225,292号を参照のこと。従って、これらの及び他の方法は、免疫調節性の配列、ポリヌクレオチド、及び/又は化合物を同定、試験、及び/又は確認するために使用することができる。例えば、IRP又はIRCの効果は、先天性免疫応答が刺激されている細胞又は個体をIRP又はIRCと接触させた際に、IRP又はIRCの効果を測定することができる。
【0073】
本明細書に明らかに伝えられるように、本明細書に記載される式に関して、任意及び全てのパラメーターは独立して選択される。例えば、x=0〜2である場合、yはxの値(又は式中で選択できる任意の他のパラメーター)に関わらず独立して選択することができる。好ましくは、IRSを含むIRP又はIRCは、少なくとも1のホスホチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチドである。
【0074】
本明細書に示される様に、開示されたIRSの1のクラスは、特にTLR9依存性の細胞刺激を阻害するのに有効である。従って、当該活性を有するIRSは「TLR9クラス」のIRSと呼ばれる。
【0075】
幾つかの実施態様では、IRSは、式:X1GGGGX23(配列番号1)[式中、X1、X2、及びX3はヌクレオチドである。但し、X1=C又はAである場合、X23はAAではない]で表される配列を含んでもよい。幾つかの実施態様では、IRSは、X1がC又はAである配列番号1の配列を含んでもよい。幾つかの実施態様では、IRSは式:X1GGGGX23(配列番号2)[式中、X1、X2、及びX3はヌクレオチドである。但し、X1=C又はAである場合、X23はAAではない]及び[式中、X1はC又はAである]で表される配列を含んでもよい。
【0076】
幾つかの実施態様では、IRSは式:GGNn1GGGGX23(配列番号3)[式中、nは1〜約100(好ましくは1〜約20)の整数である。各Nはヌクレオチドであり、そしてX1、X2、及びX3はヌクレオチドである。但し、X1=C又はAである場合、X23はAAではない]で表される配列を含んでもよい。幾つかの実施態様では、IRSは、X1がC又はAである配列番号3の配列を含んでもよい。
【0077】
幾つかの実施態様では、IRSは、式:NiTCCNj(GG)km1GGGGX23(配列番号4)[式中、各Nはヌクレオチドであり、iは1〜約50の整数であり、jは1〜約50の整数であり、kは0又は1であり、mは1〜約20の整数であり、そしてX1、X2、及びX3はヌクレオチドである。但し、X1=C又はAであり、X23はAAではない。]で表される配列を含んでもよい。幾つかの実施態様では、IRSは、X1がC又はAである配列番号4の配列を含んでもよい。
【0078】
幾つかの実施態様では、IRSは、式:X123GGGGAA(配列番号5)[式中、X1、X2、及びX3はヌクレオチドである。但し、X3=C又はAである場合、X12はGGではない]で表される配列を含んでもよい。
【0079】
配列番号1、2、3、4、又は5を含むオリゴヌクレオチド配列の例は、以下の配列:
【化1】
を含む。
【0080】
幾つかの実施態様では、IRSは、少なくとも1のGが7-デアザ-dGに置換されている配列番号1、2、3、4、又は5の任意の配列を含んでもよい。例えば、幾つかの実施態様では、IRSは5'-TCCTGGAGZ'GGTTGT-3'(Z'=7-デアザ-dG;配列番号23(C920))を含んでもよい。
【0081】
配列番号1、2、3、4、又は5を含むIRP或いは少なくとも1のGが7-デアザ-dGにより置換されている配列番号1、2、3、4、又は5を含むIRPは、特にTLR9依存性細胞刺激を阻害するのに特に有効である。TLR9依存性の細胞シグナル伝達を阻害するのに有効である他のIRS配列は、以下の:
【化2】
を含む。
【0082】
本明細書に示されるように、幾つかのIRSは、TLR7/8依存性細胞刺激を阻害するのに特に有用である。従って、当該活性を有するIRSは、「TLR7/8クラス」IRSと呼ばれる。例えば、5'-TGCTTGCAAGCTTGCAAGCA-3'(配列番号27(C661))を含むオリゴヌクレオチドは、TLR7/8依存性細胞刺激を阻害する。
【0083】
幾つかの実施態様では、IRSは、配列番号C661の断片を含み、そしてその少なくとも10塩基のパリンドローム部分を含む。例えば、かかる配列は以下の配列:
【化3】
を含む。
【0084】
幾つかの実施態様では、IRPは、配列番号27(C661)、又はその断片からなる。幾つかの実施態様では、IRPは配列番号27(C661)の断片からなり、そしてその少なくとも10塩基のパリンドローム部分を含む。
【0085】
幾つかの実施態様では、TLR7/8依存性の細胞刺激を阻害するのに有効なIRPは、配列:5'-TGCNm-3'[式中、Nはヌクレオチドであり、mは5〜約50の整数であり、そして配列N1-Nmは、少なくとも1のGCジヌクレオチドを含む]からなる。幾つかの実施態様では、かかるIRPは配列5'-TGCNmA-3'、配列5'-TGCNmCA-3'、又は配列5'-TGCNmGCA-3'からなる。例えば、幾つかの実施態様では、IRPは以下の配列:
【化4】
からなってもよい。
【0086】
TLR7/8依存性細胞シグナル伝達を阻害するのに有効である他のIRS配列は、以下の:
【化5】
を含む。
【0087】
IRSの別のクラスは、TLR7/8及びTLR9依存性細胞刺激の両方を阻害するのに特に有効であるものを含む。従って、当該活性を有するIRSは、「TLR7/8/9クラス」IRSと呼ばれる。幾つかの場合、TLR7/8クラスIRSとTLR9クラスIRSの組合せは、TLR7/8/9クラスのIRSをもたらす。
【0088】
TLR7/8/9クラスのIRSは、配列:TGCNmTCCTGGAGGGGTTGT-3'(配列番号6)[ここで、各Nはヌクレオチドであり、そしてmは0〜約100、ある場合では0〜約50、好ましくは0〜約20の整数である。]を含む。
【0089】
幾つかの実施態様では、IRSは、配列N1-Nmが配列:5'-TTGACAGCTTGACAGCA-3'(配列番号7)の断片を含む配列番号6を含む。配列番号7の断片は、当該配列の任意の部位であり、例えば、TTGAC又はGCTTGAである。幾つかの実施態様では、配列番号7の断片は配列番号7の5'末端由来であり、例えばTTGAC又はTTGである。
【0090】
幾つかの実施態様では、IRSは配列5'-TGCRRZNYY-3'(配列番号8)[式中、ZはCを除く任意のヌクレオチドであり、Nは任意のヌクレオチドであり、ここでZがG又はイノシンでない場合、Nはグアノシン又はイノシンである]を含む。別の実施態様では、IRSは配列5'-TGCRRZNポリ(ピリミジン)-3'(配列番号9) [式中、ZはCを除いた任意のヌクレオチドであり、Nは任意のヌクレオチドであり、ここで、ZがG又はイノシンでない場合Nはグアノシン又はイノシンである] を含む。
【0091】
TLR7/8/9依存性の細胞シグナル伝達を阻害するのに有効であるIRS配列の例は、以下の:
【化6】
を含む。
【0092】
本明細書に記載されるように、幾つかのIRPは、TLR9依存性細胞応答を抑制するのに特に有効である。かかるIRPは、非限定的に、配列番号24(C533);配列番号25(C707);配列番号86(1019);配列番号91(C891);配列番号10(C827);配列番号11(C828);配列番号12(C841);配列番号13(C842);配列番号14(C843);配列番号15(C844);配列番号16(C845);配列番号17(C869);配列番号18(C870);配列番号19(871);配列番号20(C872);配列番号21(C873);配列番号22(C874);配列番号23(C920)、及び配列番号66(C908)を含む。
【0093】
本明細書に記載されるように、幾つかのIRPは、TLR7/8依存性細胞応答を抑制するのに特に有効である。かかるIRPは、非限定的に、配列番号17(C869);配列番号23(C920);配列番号27(C661);配列番号38(C793);配列番号29(C794);配列番号33(C917);配列番号34(C918);配列番号40(C919);配列番号28(C921);配列番号29(C922);配列番号41(C923)、及び配列番号66(C908)を含む。
【0094】
IRPは一本鎖又は二本鎖DNA、並びに一本鎖又は二本鎖RNA、又は他の改変ポリヌクレオチドであってもよい。IRPは、直線状であってもよく、環状であってもよく、又は環状部分を含んでもよく、及び/又はヘアピンループを含んでもよい。IRPは天然型又は修飾型、非天然型塩基を含んでもよく、そして改変された糖、リン酸エステル、及び/又は終端を含んでもよい。様々なかかる改変は本明細書に記載される。
【0095】
複素環塩基又は核酸塩基であって、IRPに取り込まれたものは、天然の主要プリン及びピリミジン塩基(つまり、上記ウラシル、チミン、シトシン、アデニン、及びグアニン)、並びに当該主要塩基の天然及び合成改変であってもよい。こうして、IRPは、2'-デオキシウリジン及び/又は2-アミノ-2'-デオキシアデノシンを含んでもよい。
【0096】
IRPは、少なくとも1の改変塩基を含みうる。本明細書に使用されるとき、「改変塩基」という用語は、「塩基アナログ」と同義であり、例えば「改変シトシン」は「シトシンアナログ」と同義である。同様に、「改変」ヌクレオシド又はヌクレオチドは、ヌクレオシド又はヌクレオチド「アナログ」と同義であると定義される。塩基改変の例は、非限定的に、電子吸引部分を、IRPのシトシンのC-5及び/又はC-6に加えることを含む。好ましくは、電子吸引部分はハロゲンであり、例えば、5-ブロモシトシン、5-クロロシトシン、5-フルオロシトシン、5-ヨードシトシンである。塩基改変の他の例は、非限定的に、免疫調節ポリヌクレオチドのウラシルのC-5及び/又はC-6に電子吸引部分を加えることを含む。好ましくは、当該電子吸引部分はハロゲンである。かかる改変ウラシルは、非限定的に、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-フルオロウラシル、5-ヨードウラシルを含みうる。
【0097】
塩基改変の他の例は、1以上のチオール基を塩基に付け加えることを含む。例えば非限定的に、6-チオ-グアニン、4-チオ-チミン、及び4-チオ-ウラシルを含む。塩基改変の他の例は、非限定的に、N4-エチルシトシン、7-デアザグアニン、及び5-ヒドロキシシトシンを含む。例えば、Kandimallaら、(2001 ) Bioorg. Med. Chem. 9:807-813を参照のこと。
【0098】
IRPはリン酸エステル改変ヌクレオチドを含むことがある。その幾つかは、ポリヌクレオチドを安定化すると知られている。従って、幾つかの実施態様は、安定化免疫調節ポリヌクレオチドを含む。例えば、ホスホジエステル結合に加えて、リン酸エステルの改変は、非限定的に、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホールアミデート(架橋又は非架橋)、ホスホトリエステル及びホスホロジチオエートを含み、そして任意の組合せで使用されてもよい。他の非ホスフェート結合が使用されてもよい。幾つかの実施態様では、本発明のポリヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格のみを含む。幾つかの実施態様では、本発明のポリヌクレオチドは、ホスホジエステル骨格を含む。幾つかの実施態様では、IRPは、ホスフェート骨格中のホスフェート結合の組合せ、例えばホスホジエステル及びホスホロチオエート結合の組合せなどを含んでもよい。
【0099】
本発明において使用されるIRPは、1以上のリボヌクレオチド(リボースを唯一又は主要糖成分として含む)、デオキシリボヌクレオチド(デオキシリボースを主要糖成分として含む)、又は当業者に知られているように改変糖を含むことがあり、或いは糖アナログがIRP中に取り込まれてもよい。こうして、リボース及びデオキシリボースに加えて、糖部分は、ペントース、デオキシペントース、ヘキソース、デオキシヘキソース、グルコース、アラビノース、キシロース、リキソース、及び糖「アナログ」シクロペンチル基であってもよい。糖は、ピラノシル又はフラノシル形態であってもよい。IRPにおいて、糖部分は、好ましくはリボース、デオキシリボース、アラビノース、又は2'-0-アルキルリボースのフラノシドであり、そして糖は、α又はβアノマー配置のいずれかの複素環塩基にそれぞれ結合されうる。糖改変は、非限定的に2'-アルコキシ-RNAアナログ、2'-アミノ-RNAアナログ、2'-フルオロ-DNA、及び2'-アルコキシ-又はアミノ-RNA/DNAキメラを含む。例えば、IRPにおける糖の改変は、非限定的に、2'-O-メチル-ウリジン及び2'-O-メチルシチジンを含む。これらの糖又は糖アナログ、及びかかる糖又はアナログが複素環塩基(核酸塩基)に結合している対応する「ヌクレオシド」の製法が知られており、そしてかかる製法が具体的実施例のいずれかに関わる程度を除いて本明細書に記載することを要しない。糖の改変は、IRPの製造の際にリン酸エステルの改変と共に又は組み合わせてされてもよい。
【0100】
IRPは、当該技術分野に周知である技術及び核酸合成装置、例えば非限定的に、酵素法、化学法、及び大きいオリゴヌクレオチド配列の分解を用いて合成することができる。例えば、Ausubelら、(1987);及びSambrookら、(1989)を参照のこと。酵素的に会合される場合、個々のユニットは、例えばT4・DNA又はRNAリガーゼなどのリガーゼを用いてライゲーションすることができる(米国特許第5,124,246号)。オリゴヌクレオチド分解は、米国特許第4,650675号に示されるように、オリゴヌクレオチドをヌクレアーゼに晒すことを介して達成することができる。
【0101】
IRPは、慣用されるポリヌクレオチド単離法を用いて単離することができる。かかる方法は、非限定的に、プローブをゲノム又はcDNAライブラリーにハイブリダイゼーションさせて、共有された構造の特徴を検出すること、及び発現ライブラリーを抗体スクリーニングして、共有された構造の特徴を検出すること、そしてポリメラーゼ連鎖反応により特定の生来の配列を合成することを含む。
【0102】
環状の免疫調節ポリヌクレオチドは、単離され、組換え法を介して合成されるか、又は化学的に合成することができる。環状IRPが単離又は組換え法を介して得られる場合、IRPは好ましくはプラスミドであろう。小さい環状オリゴヌクレオチドの化学合成は、文献に記載される任意の方法を用いて行うことができる。例えば、Gaoら、(1995) Nucleic Acids Res 23:2025-2029; 及びWangら、(1994) Nucleic Acids Res. 22:2326-2333を参照のこと。
【0103】
ポリヌクレオチド及び改変ポリヌクレオチドを製造する技術は当業者に知られている。ホスホジエステル結合を含む天然DNA又はRNAは、一般的に、3'末端において固体支持体に結合された伸張しているオリゴヌクレオチドの5'水酸基に、適切なヌクレオシド・ホスホロアミダイトを連続的に結合させ、続いてホスファイト・トリエステル中間体をホスフェート・トリエステルに参加することにより合成される。所望されるポリヌクレオチド配列が合成されると、ポリヌクレオチドは支持体から取り除かれ、ホスフェート・トリエステル基をホスフェートジエステルに脱保護し、そして水性アンモニア又は他の塩基を用いてヌクレオシド塩基を脱保護する。例えば、Protocols for Oligonucleotides and Analogs, Synthesis and Properties (Agrawal編) Humana Press, Totowa, NJ の中のBeaucage (1993) "Oligodeoxyribonucleotide Synthesis";Warnerら、(1984) DNA 3:401;及び米国特許第4,458,066号を参照のこと。
【0104】
改変ホスフェート結合又は非ホスフェート結合を含むポリヌクレオチドの合成は、当該技術分野において知られている。総説については、Matteucci (1997) "Oligonucleotide Analogs: an Overview" Oligonucleotides as Therapeutic Agents, (DJ. Chadwick及びG. Cardew編) John Wiley and Sons, New York, NYを参照のこと。リン誘導体(又は改変リン酸エステル基)であって、本発明のポリヌクレオチドにおける糖又は糖アナログに結合できる誘導体は、一リン酸、二リン酸、三リン酸、アルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミデートなどでありうる。上記ホスフェート・アナログの製法及びヌクレオチド、改変ヌクレオチド、及びオリゴヌクレオチド中への取り込みはまた知られており、そして本明細書で詳細に記載する必要はない(Peyrottesら、(1996) Nucleic Acids Res. 24: 1841-1848; Chaturvediら(1996) Nucleic Acids Res. 24:231 8-2323;及びSchultzら(1996) Nucleic Acids Res. 24:2966-2973)。例えば、ホスホロチオエート・オリゴヌクレオチドの合成は、天然オリゴヌクレオチドについて上で記載した合成と、酸化ステップが硫化ステップに置き換えることを除いて同様である((Zon (1993) "Oligonucleoside Phosphorothioates" 、 Protocols for Oligonucleotides and Analogs, Synthesis and Properties (Agrawal編) Humana Press, pp. 165-190)。同様に、他のホスフェート・アナログ、例えばホスホトリエステル(Millerら、(1971) JACS 93:6657-6665)、非架橋ホスホロアミデート(Jagerら、(1988) Biochem. 27:7247-7246)、N3'からP5'ホスホロアミデート(Nelsonら、(1997) JOC 62:7278-7287)、及びホスホロジチオエート(米国特許第5,453,496号)が開示された。他のリンに基づかない改変オリゴヌクレオチドも使用することができる(Stirchakら、(1989) Nucleic Acids Res. 17:6129-6141)。
【0105】
様々な複素環塩基及び様々な糖部分(及び糖アナログ)を含む多くの「合成」非天然ヌクレオシドが当該技術分野で利用できるということ;及び本発明の他の基準が満たされるかぎり、IRPが天然核酸の主要な5個の塩基成分以外の1又は幾つかの複素環塩基を含むことができるということが当業者により認識されよう。しかしながら、好ましくは、IRP中の複素環塩基は、非限定的にウラシル-5-イル、シトシン-5-イル、アデニン-7-イル、アデニン-8-イル、グアニン-7-イル、グアニン-8-イル、4-アミノピロロ[2.3-d]ピリミジン-5-イル、2-アミノ-4-オキソピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル、2-アミノ-4-オキソピロロ[2.3-d]ピリミジン-3-イル基を含み、ここで当該プリンは9位で、当該ピリミジンは1位で、当該ピラゾロピリミジンは7位で、そして当該ピラゾロピリミジンは1位でIRPの糖部分に結合される。
【0106】
塩基改変ヌクレオシドの製法、及び当該塩基改変ヌクレオシドを前駆体として用いた改変オリゴヌクレオチドの合成は、例えば米国特許第4.910,300号、第4,948,882号、及び第5,093,232号において記載された。これらの塩基改変ヌクレオシドは、化学合成により、オリゴヌクレオチドの末端又は内部位置のいずれかに取り込むことができるように、設計された。このような塩基改変ヌクレオシドは、オリゴヌクレオチドの末端の位置又は中間の位置において存在し、ペプチドの結合のための部位としての機能を果たすことができる。その糖部分において改変されたヌクレオシドが記載され(例えば、非限定的に、米国特許第4,849,513号、第5,015,733号、第5,118,800号、第5,118,802号を含む)、そして同様に使用することができる。
【0107】
幾つかの実施態様では、免疫調節ポリヌクレオチドは、以下の長さ(塩基又は塩基対):10,000;5,000;2500;2000;1500;1250;1000;750;500;300;250;200;175;150;125;100;75;60;50;40;30;25;20;15;14;13;12;11;10;9;8;7;6;5;4のうちのいずれかより小さい。幾つかの実施態様では、免疫調節ポリヌクレオチドは、以下の長さ(塩基又は塩基対):4;5;6;7;8;9;10;11;12;13;14;15;20;25;30;40;50;60;75;100;125;150;175;200;250;300;350;400;500;750;1000;2000;5000;7500;10000;20000;50000のうちのいずれかより大きい。或いは、免疫調節ポリヌクレオチドは、10,000;5,000;2500;2000;1500;1250;1000;750;500;300;250;200;175;150;125;100;75;60;50;40;30;25;20;15;14;13;12;11;10;9;8;7;6;5;4の上限及び4;5;6;7;8;9;10;11;12;13;14;15;20;25;30;40;50;60;75;100;125;150;175;200;250;300;350;400;500;750;1000;2000;5000;7500から独立して選ばれる下限を有する大きさの範囲のいずれかであってもよい。ここで、下限は、上限より小さい。幾つかの実施態様では、IRPは、好ましくは約200以下の塩基長である。
【0108】
本発明は、本明細書に記載された免疫調節ポリヌクレオチドの製造方法を提供する。当該方法は、本明細書に記載される方法のうちのいずれかであってもよい。例えば、当該方法は、(例えば固体状態合成を用いて)IRPを合成することができ、そしてさらに任意の精製ステップを含んでもよい。精製方法は当該技術分野に知られている。
【0109】
ある実施態様では、本発明は免疫調節活性を有し、そしてIRSを含む核酸部分を含む免疫調節化合物(IRC)に関する。本発明のIRCは、1以上の核酸部分を含み、そして1以上の非核酸スペーサー部分を含む。様々な構造式に合致する化合物は、IRCとして使用することについて予期され、以下の式I-VIIに記載される中心構造を含む。式I-IIIは、「直線状IRC」についての中心配列を示す。式IV-VIは「分枝状IRC」についての中心配列を示す。式VIIは「シングル-スペーサーIRC」についての中心構造を示す。
【0110】
本明細書に与えられる各式において、「N」は、(5'→3'又は3'→5'向きの)核酸部分を指し、そして「S」は、非核酸スペーサー部分を指す。ダッシュ(「-」)は、核酸部分と非核酸スペーサー部分とのあいだの共有結合を示す。ダブルダッシュ(「--」は、非ヌクレオチド核酸スペーサー部分と少なくとも2個の核酸部分とのあいだの共有結合を指す。トリプルダッシュ(「---」)は、非核酸スペーサー部分と複数の(つまり少なくとも3の)核酸部分との間の共有結合を指す。下付き文字は、異なった一の核酸又は非核酸スペーサー部分を指すために使用される。しかしながら異なる核酸部分を区別するための下付き文字の使用は、当該部分が必ずしも異なる構造又は配列を含むということを示すことを意図するものではない。同様に、異なるスペーサー部分を区別するための下付き文字の使用は、当該部分が必ずしも異なる構造を有するということを示すことを意図しない。例えば、上記式IIにおいて、N1及びN2と名付けられた核酸部分は、同じ又は異なる配列を有してもよく、そしてS1及びS2と名付けられたスペーサー部分は、同じ又は異なる構造を有してもよい。さらに、更なる化学部分(例えば、ホスフェート、モノヌクレオチド、さらなる核酸部分、アルキル、アミノ、チオ、又はジスルフィド基又は結合基、及び/又はスペーサー部分)は、中心構造の末端において共有結合されてもよい。
【0111】
直線状のIRCは、中心構造における非核酸スペーサー部分が2以下の核酸部分に共有結合する構造を有する。代表的な直線状のIRCは、以下の式:
1-S1-N2 (I)
1-S1-N2-S2-N3 (II)
1-S1-N2-S2-[Nv-Sv]A (III)
[式中、Aは1〜約100の間の整数であり、そして[Nv-Sv]は、非核酸スペーサー部分に結合された核酸部分のA個のさらなる繰り返しを示す。下付きの「v」は、N及びSが「[Nv-Sv]の各反復のうちから独立して選ばれるということを指し、「A」はある場合1〜約10、ある場合1〜3、ある場合丁度1、2、3、4、又は5である]
に合致する。幾つかの実施態様において、Aは1、2、3、4、又は5の下限と、10、20、50、又は100から独立して選ばれる上限により定義される範囲内の整数である(例えば、3〜10)。
【0112】
代表的な直線状IRCは以下の:
【化7】
[式中、HEGは、ヘキサ-(エチレングリコール)を指す。TEGはテトラ-(エチレングリコール)を指す。]
を含む。
【0113】
好ましい直線状IRCは以下の:
【化8】
を含む。
【0114】
分枝状IRCは、少なくとも3個の核酸部分に共有結合された多価スペーサー部分(Sp)を含む。代表的な分枝状IRCは、以下の式:
[Nv]A---Sp (IV)
[Sv-Nv]A---Sp (V)
(S1-N1)-Sp--(Nv)A (VI)
[式中、Spは、「A」の数量の独立して選択された核酸部分Nv又は(核酸部分に共有結合されたスペーサー部分を含む)Sv-Nvに共有結合された多価スペーサーである]
に記載される。式IV及びVでは、Aは少なくとも3である。式IV及びVの様々な実施態様では、Aは3〜100(を含めた)整数であるが、Aは約3、5、10、50、又は100の下限と、約5、7、10、50、100、150、200、250、又は500から独立して選択される上限により定義される範囲内の整数であってもよく、或いは、Aは500を超えてもよい。式VIでは、Aは少なくとも2であり、2、5、10、50、又は100の下限と5、10、50、100、150、200、250、又は500のうちから独立して選択される上限により定義される範囲の整数であり、或いは500を超える整数であってもよい。
【0115】
代表的な分枝状IRCは以下の:
(N1)2-グリセロール-N1 (IVa)
(N2-HEG)2-グリセロール-N1 (IVb)
(N1-HEG-N2)2-グリセロール-N1 (IVc)
[(N1)2-グリセロール-N12-グリセロール-N1 (IVd)
を含む。
【0116】
好ましい分枝状IRCは、(5'-N1-3'-HEG)2-グリセロール-HEG-5'-N1-3'及び(5'-N1-3'-HEG)2-グリセロール-HEG-5'-N1'を含む。
【0117】
1のスペーサーIRCは、1のスペーサー部分に共有結合された1の核酸部分が存在する構造、つまり:
1-S1 (VII)
を含む。
【0118】
好ましい実施態様では、S1は、例えば上で記載されるように典型的にエステル結合(例えば、ホスホジエステル又はホスホロチオエート・エステル)により結合される小ユニット(例えば、HEG、TEG、グリセロール、1'2'-ジデオキシリボース、C2アルキル-C12アルキル・サブユニットなど)を含むマルチマーの構造を有する。例えば、上記式VIIaを参照のこと。マルチマーは、ヘテロマー又はホモマーであってもよい。一の実施態様では、スペーサーは、エステル結合(例えば、ホスホジエステル又はホスホロチオエート・エステル)により結合されたモノマーユニットのヘテロマー(例えばHEG、TEG、グリセロール、1'2'-ジデオキシリボース、C2アルキル〜C12アルキルリンカーなど)である。例えば、上記式VIIbを参照のこと。
【0119】
代表的な一のスペーサーIRCは、以下の:
1-(HEG)15 (VIIa)
1-HEG-プロピル-HEG-プロピル-HEG (VIIb)
を含む。
【0120】
ある実施態様では、IRCの末端構造は共有結合されており(例えば、核酸部分-核酸部分;スペーサー部分-スペーサー部分、又は核酸部分−スペーサー部分)、環状の形態をもたらす。
【0121】
本発明の免疫調節組成物において使用するためのIRCは、少なくとも1の核酸部分を含む。本明細書に記載される「核酸部分」という用語は、ヌクレオチドモノマー(つまり、モノヌクレオチド)又はポリマー(つまり、少なくとも2個の連続ヌクレオチドを含む)を指す。本明細書に使用されるとき、ヌクレオチドは、(1) ホスフェート基にエステル結合している糖に結合されたプリン又はピリミジン塩基、又は(2) アナログであって、例えば上で記載されるように、塩基及び/又は糖及び/又はホスフェートエステルがアナログにより置き換えられたものを含む。1より多い核酸部分を含むIRCにおいて、核酸部分は、同じであっても異なってもよい。
【0122】
免疫調節組成物中に取り込まれたIRCにおいて使用される核酸部分は、本明細書に開示されるIRS配列のうちのいずれかを含んでもよく、そしてさらに6塩基対以下の配列であってもよい。複数の核酸部分を含むIRCにおいて、核酸部分が同じか又は異なる長さであってもよいということが予期される。ある実施態様では、IRCが1より多い核酸部分を含む場合、当該部分のうちのただ一つのみがIRSを含むことを必要とする。
【0123】
複数の核酸部分を含むIRCにおいて、当該核酸部分は同じであっても異なってもよいということが予期される。従って、様々な実施態様において、免疫調節組成物中に取り込まれるIRCは、(a) 同じ配列を有する核酸部分、(b) 核酸部分の1より多い繰り返し、又は(c) 2以上の異なる核酸部分を含む。さらに、一の核酸部分は、1より多いIRSを含んでもよく、当該IRSは隣接、重なり、又は核酸部分のうちの更なるヌクレオチドにより分離されてもよい。
【0124】
本明細書に記載されるように、幾つかのIRPはTLR9依存性の細胞応答を抑制するのに特に効果的であり、そして幾つかのIRPはTLR7/8依存性の細胞応答を抑制するのに特に効果的である。IRCは1より多いIRPを含んでもよいので、特定用途のための特定の活性を有するIRCを作り上げるために様々な活性を有するIRPを組み合わせることができる。
【0125】
幾つかの場合において、IRC中の2個のIRPの組合せは、IRCの免疫調節活性を、どちらかのIRP単独のものとは異なるものとする。例えば、IRC配列番号68(C913)は、HEG部分を介してIRP配列番号17(C869)に結合されたIRP配列番号33(C917)を含む。IRP配列番号33(C917)は、TLR-7/8依存性細胞応答を阻害するが、TLR-9依存性細胞応答を阻害するものではない。IRP配列番号17(C869)は、TLR-9依存性細胞応答に対して、TLR-7/8依存性細胞応答に対するより高い阻害活性を有する。しかしながら、IRC配列番号68(C913)は、TLR-7/8依存性の細胞応答とTLR-9依存性細胞応答の両者を阻害することにかなり高い活性がある。同じことが、IRC配列番号69(C914)、並びにその成分であるIRP配列番号34(C918)及び配列番号17(C869)についていえる。
【0126】
IRCは、核酸部分に共有結合される1以上の非核酸スペーサー部分を含む。便宜のため、非核酸スペーサー部分を、本明細書中で単純に「スペーサー」又は「スペーサー部分」と呼ぶことがある。スペーサーは、一般的に、約50〜約50000、典型的に約75〜約5000、最も多くの場合約75〜約500の分子量であり、これらは様々な実施態様において、1、2、3の、又は3より多い核酸部分に共有結合される。様々な物質が、核酸部分を接続するために適している。例えば、科学文献において「非核酸リンカー」、「非ヌクレオチドリンカー」、又は「原子価プラットホーム分子(valency platform molecule)」と呼ばれる様々な化合物は、IRC中のスペーサーとして使用されてもよい。ある実施態様では、スペーサーは、多価共有結合されたサブユニットを含み、そしてホモポリマーの又はヘテロポリマーの構造を有してもよい。モノヌクレオチド及びポリヌクレオチドが非核酸スペーサーの定義に含まれないこと、このような除外規定がない場合、核酸部分と隣接する非核酸スペーサー部分とのあいだに差がなくなってしまうことが理解されよう。
【0127】
ある実施態様では、スペーサーは、1以上の脱塩基ヌクレオチド(つまり、ヌクレオチド塩基を欠くが、当該糖及びリン酸エステル部分を有する)であってもよい。代表的な脱塩基ヌクレオチドは、1'2'-ジデオキシリボース、1'-デオキシリボース、1'-デオキシアラビノース、及びそのポリマーを含む。
【0128】
他の適切なスペーサーは、場合により置換されたポリグリコール、場合により置換されたポリアミン、場合により置換されたポリアルコール、場合により置換されたポリアミド、場合により置換されたポリエーテル、場合により置換されたポリイミン、場合により置換されたポリホスホジエステル(例えば、ポリ(1-ホスホ-3-プロパノール)などを含む。任意の置換基は、アルコール、アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、及びプロポキシ)、直鎖又は分枝鎖アルキル(例えば、C1-C12アルキル)、アミン、アミノアルキル(例えば、アミノC1-C12アルキル)、ホスホロアミダイト、ホスフェート、チオホスフェート、ヒドラジド、ヒドラジン、ハロゲン、(例えば、F、Cl、Br、又はI)、アミド、アルキルアミド(例えば、アミドC1-C12アルキル)、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、ハロゲン化スルホニル、イミド酸エステル、イソシアネート、イソチオシアネート、ハロホルメート、カルボジイミド付加化合物、アルデヒド類、ケトン、スルフヒドリル、ハロアセチル、ハロゲン化アルキル、アルキルスルホナート、NR12[式中、R12は-C(=O)CH=CHC(=O)(マレイミド)、チオエーテル、シアノ、糖(例えば、マンノース、ガラクトース、及びグルコース)、α,β-不飽和カルボニル、アルキル水銀、α,β-不飽和スルホンを含む。
【0129】
適切なスペーサーは、多環分子、例えばフェニル又はシクロヘキシル環を含む分子などを含んでもよい。スペーサーは、ポリエーテル、例えばポリホスホプロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、二官能性多環分子、例えば二官能性ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、アシムインダセン(asymindacene)、シム-インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、チアントレン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチインであってもよく、これらは置換又は改変されてもよく、或いはポリエーテル及び多環分子の組合せであってもよい。多環分子は、C1-C5アルキル、C6アルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、ハロゲン、又はハロアルキル基で置換されても又は多置換されてもよい。窒素含有ポリ複素環分子(例えば、インドリジン)は、典型的に適切なスペーサーではない。スペーサーは、ポリアルコール、例えばグリセロール又はペンタエリスリトールであってもよい。一の実施態様では、スペーサーは、1-ホスホプロパン)3-ホスフェート又は1-ホスホプロパン)4-ホスフェート(テトラホスホプロパンジオール及びペンタホスホプロパンジオールとも呼ばれる)を含む。一の実施態様では、スペーサーは誘導化2,2'-エチレンジオキシジエチルアミン(EDDA)を含む。
【0130】
IRCに有用な非核酸スペーサーの具体例は、Cloadら、(1991) J. Am. Chem. Soc. 113:6324; Richardsonら、(1991) J. Am. Chem. Soc. 113:5109; Maら、(1993) Nucleic Acids Res. 21 :2585; Maら、(1993) Biochemistry 32: 1751; McCurdyら、(1991) Nucleosides & Nucleotides 10:287; Jaschkeら、(1993) Tetrahedron Lett. 34:301 ; Onoら、(1991) Biochemistry 30:9914; 及び国際公開第WO 89/02439号により記載された「リンカー」を含む。
【0131】
他の適切なスペーサーは、Salunkheら(1992) J. Am. Chem. Soc 114:8768; Nelsonら、(1996) Biochemistry 35:5339-5344; Bartleyら、(1997) Biochemistry 36: 14502-511; Dagneauxら、(1996) Nucleic Acids Res. 24:4506-12; Durandら、(1990) Nucleic Acids Res. 18:6353- 59; Reynoldsら、(1996) Nucleic Acids Res. 24:760-65; Hendryら(1994) Biochem. Biophys. Acta 1219:405-12; Altmannら(1995) Nucleic Acids Res. 23:4827-35に記載されるリンカーを含む。さらに別の適切なスペーサーは、欧州特許第EP0313219B1号及び米国特許第6,117,657号に記載される。
【0132】
代表的な非核酸スペーサーは、オリゴ-エチレングリコール(例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキサエチレングリコールスペーサー、及び最大約10、約20、約40、約50、約100、又は約200のエチレングリコールユニットを含む別のポリマー)、アルキルスペーサー(例えば、プロピル、ブチル、ヘキシル、及びC2-C12アルキルスペーサー、例えば通常C2-C10アルキル、しばしばC2-C6アルキル)、脱塩基ヌクレオチドスペーサー;グリセロール、ペンタエリスリトール、又は1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサン(例えば、本明細書に記載される対称ダブラー及びトレブラースペーサー(doubler and trebler spacer)部分)から誘導される対称又は非対称スペーサーを含む。スペーサーは、(例えば、アミド、エステル、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、ホスホトリエステル、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、又は他の結合により結合される)前述の化合物のヘテロマー又はホモマーオリゴマー及びポリマーを含んでもよい。
【0133】
適切なスペーサー部分は、電荷及び/又は疎水性をIRCに与えることができ、好ましい薬物動態学的性質(例えば、安定性の改善、血中での滞留時間の延長)をIRCに与え、及び/又はIRCを特定の細胞又は組織に標的することをもたらす。スペーサー部分は、所望される投与様式(例えば経口投与)についての所望される薬理学的性質又は適合性についてIRCを調節するように選択又は改変することができる。便宜のため、スペーサー(又はスペーサー成分)が当該スペーサー成分の由来元である化合物の化学名(例えば、ヘキサエチレングリコール)により呼ばれることがあり、IRCが化合物と隣接する核酸部分又は他のスペーサー成分との複合体を実際に含んでいると理解されるということが、読者により認められよう。
【0134】
1より多いスペーサー部分を含むIRCにおいて、当該スペーサーは、同じであってもよいし又は異なってもよい。こうして、一の実施態様では、IRCにおける非核酸スペーサー部分の全ては、同じ構造を有する。一の実施態様では、IRCは少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、又は少なくとも6、又はそれより多い異なる構造を有する非核酸スペーサー部分を含む。
【0135】
本発明の幾つかの予期される実施態様では、IRCのスペーサー部分は、ある構造を排除するように定義される。こうして、本発明の幾つかの実施態様では、スペーサーは脱落塩基のヌクレオチド又は脱落塩基ヌクレオチドのポリマー以外のものである。本発明の幾つかの実施態様では、スペーサーはオリゴ(エチレングリコール)(例えば、HEG、TEGなど)又はポリ(エチレングリコール)以外のものである。幾つかの実施態様では、スペーサーは、C3アルキルスペーサー以外のものである。幾つかの実施態様では、スペーサーは、ポリペプチド以外のものである。こうして、幾つかの実施態様では、免疫原性分子、例えばタンパク質又はポリペプチドは、スペーサー成分の化合物として適切ではない。しかしながら、上で記載される様に、ある実施態様では、IRCは、ポリペプチドを含むスペーサー部分を含む「タンパク性IRC」である。しかしながら、幾つかの実施態様では、スペーサー部分は、タンパク質性ではなく及び/又は抗原でもない(つまり、当該スペーサー部分は、IRCから単離されたならば抗原とはならない)。
【0136】
一般的に、適切なスペーサー部分は、当該部分が水溶液(例えば、PBS、pH7.0)に不溶性であるところのIRCを提供することはない。こうして、スペーサーの定義からマイクロキャリア又はナノキャリアが除外される。さらに、低い溶解度しか有さないスペーサー部分、例えばドデシルスペーサー(ジアルコール前駆体である1,12-ジヒドロキシドデカンとして計測した場合に5mg/ml未満の溶解度)は、好ましくない。なぜなら、当該スペーサーは、IRCの親水性及び活性を低下しうるからである。好ましくはスペーサー部分は、ジアルコール前駆体として計測した場合に、5mg/mlより大きい溶解度(例えば20mg/ml以上、50mg/ml以上、又は100mg/ml以上)を有する。
【0137】
IRCの電荷は、ホスフェート、チオホスフェート、又は核酸部分の他の基並びに非核酸スペーサー部分の基により与えられてもよい。本発明の幾つかの実施態様では、非核酸スペーサー部分は、正味荷電を有している(例えば、pH7で計測した場合、全体で正の電荷又は負の電荷)。一の有用な実施態様では、IRCは、全体で負の電荷を有する。幾つかの実施態様では、IRCにおけるスペーサー部分の負電荷は、その電荷を増加させるために本明細書に記載されるスペーサーサブユニットを誘導体化することにより増加する。例えば、グリセロールは、2個の核酸部分に共有することができ、残りのアルコールは活性化ホスホロアミダイトと反応することができ、続いて酸化又はスルホン化してそれぞれホスフェート又はチオホスフェートを形成することができる。ある実施態様では、IRC中の非核酸スペーサー部分により与えられる負電荷(つまり1より多いスペーサーが存在する場合電荷の合計)は、IRCの核酸部分により与えられる負の電荷より多い。電荷は、分子式に基づいて計算することができ、又は例えばキャピラリー電気泳動により実験的に測定することができる(Li編、1992, Capillary electrophoresis, Principles, Practice and Application Elsevier Science Publishers, Amsterdam, The Netherlands, pp202- 206)。
【0138】
例示のため、配列番号17(C869)を含むIRC及びマルチユニット・スペーサーは、以下の:
【化1】
[式中、
(C3)15は、ホスホロチオエート・エステルを介して結合される15個のプロピルリンカーを意味し;(グリセロール)15は、ホスホロチオエート・エステルを介して結合される15個のグリセロール・リンカーを意味し;(TEG)8は、ホスホロチオエート・エステルを介して結合された8個のトリエチレングリコール・リンカーを意味し;そして(HEG)4は、ホスホロチオエート・エステルを介して結合された4個のヘキサエチレングリコール・リンカーを意味する]
を含む。あるマルチユニットのスペーサーが正味として負電荷を有すること、そして当該負電荷を、例えばエステル結合モノマーユニットの数を増加させることにより増加させることができるということが認められよう。
【0139】
例示のため、配列番号17(C869)を含むIRC及びマルチユニット・スペーサーは、以下の:
【化9】
[式中、
(C3)15は、ホスホロチオエート・エステルを介して結合される15個のプロピルリンカーを意味し;(グリセロール)15は、ホスホロチオエート・エステルを介して結合される15個のグリセロール・リンカーを意味し;(TEG)8は、ホスホロチオエート・エステルを介して結合された8個のトリエチレングリコール・リンカーを意味し;そして(HEG)4は、ホスホロチオエート・エステルを介して結合された4個のヘキサエチレングリコール・リンカーを意味する]
を含む。あるマルチユニットのスペーサーが正味として負電荷を有すること、そして当該負電荷を、例えばエステル結合モノマーユニットの数を増加させることにより増加させることができるということが認められよう。
【0140】
ある実施態様では、スペーサー部分は多価非核酸スペーサー部分(つまり、「多価スペーサー」)である。この脈絡で使用される場合、多価スペーサーを含むIRCは、3個以上の核酸部分に共有結合されたスペーサーを含む。多価スペーサーは、当該技術分野において「プラットホーム分子」と呼ばれることが多い。多価スペーサーは、ポリマー性又は非ポリマー性であってもよい。適切な分子の例は、グリセロール又は置換グリセロール(例えば、2-ヒドロキシメチルグリセロール、レブリニル-グリセロール);テトラアミノベンゼン、ヘプタアミノベータシクロデキストリン、1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサン、ペンタエリスリトール、及びペンタエリスリトールの誘導体、テトラアミノペンタエリスリトール、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(シクラム)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(シクレン)、ポリエチレンイミン、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、及び置換誘導体、プロピルオキシメチル]エチル化合物(例えば、トレブラー)、ポリエチレングリコール誘導体、例えばいわゆる「Star PEG」及び「bPEG」(例えば、Gnanouら、(1988) Makromol. Chem. 189:2885; Reinら、(WS) Acta Polymer 44:225; 米国特許第5,171,264号を参照のこと)及びデンドリマーを含む。
【0141】
デンドリマーは、当該技術分野に知られており、そして化学的に規定された球形分子であり、一般的に多官能性モノマーをステップ毎に又は反復して反応させて、分枝状の構造を得ることにより製造される(例えば、Tomaliaら、(1990) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 29: 138-75を参照のこと)。様々なデンドリマーが知られており、例えば、アミン-末端化ポリアミドアミン、ポリエチレンイミン、及びポリプロピレンイミン・デンドリマーが知られている。本発明において有用である代表的なデンドリマーは、「デンズ・スター(dense star)」ポリマー又は「スターバースト(starburst)」ポリマー、例えば、米国特許第4.587,329号;第5,338,532号;及び第6,177,414号に記載されるポリマーを含み、いわゆる「ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマー」を含む。本発明の使用に適したさらに別のマルチマー・スペーサー分子は、化学的に規定された非ポリマー性電荷プラットホーム分子、例えば米国特許第5,552,391号;及びPCT出願公開第WO 00/75105号、第WO 96/40197号、第WO 97/46251号、第WO 95/07073号、及び第WO 00/34231号に開示される分子を含む。多くの他の適切な多価スペーサーを使用することができ、そしてそれらは当業者に知られるであろう。
【0142】
核酸分子のプラットホーム分子への会合は、多くの方法により実行することができ、典型的に、1以上の架橋剤と、核酸分子及びプラットホーム分子上の官能基に関する。標準の合成化学技術を用いて、連結基をプラットホームに加える。連結基は、標準合成技術を用いて核酸分子に加えることができる。
【0143】
様々な電荷を有する多価スペーサーは、本発明の実施に有用であり、そして様々な実施態様において、IRCの多価スペーサーは、約3〜約400個、しばしば3〜100個、ときに3〜50個、頻繁に3〜10個の核酸部分、そしてある場合400個より多い核酸部分に結合する。様々な実施態様では、多価スペーサーは、10超、25超、50超、又は500超の核酸部分(これらは同じであっても異なってもよい)に結合される。IRCが多価スペーサーを含む特定の実施態様では、本発明は、IRCの集合に少し異なった分子構造を提供する。例えば、デンドリマーを高原子価として用いてIRCを製造する場合、いくらか分子の異種混合物である多価スペーサーが製造され、つまり各デンドリマー分子に結合された様々な数の(確定範囲内の又は主に確定範囲内の)核酸部分を含む。
【0144】
核酸部分への結合を許容するように誘導された多糖は、IRC中でスペーサーとして使用することができる。適切な多糖は、天然多糖(例えば、デキストラン)及び合成多糖(例えばフィコール)を含む。例えば、アミノエチルカルボキシメチル-フィコール (AECM-フィコール)はInman (1975) J. lmm. 1 14:704-709の方法により製造することができる。AECM-フィコールは、異種2官能性架橋試薬、例えば6-マレイミドカプロン酸アシルN-ヒドロキシスクシンイミド・エステルと反応させることができ、そして次にチオール誘導体化核酸部分に結合することができる(Leeら、(1980) MoI. lmm. 17:749-56を参照のこと)。他の多糖を同様に改変してもよい。
【0145】
通常の方法を用いてIRCを製造することは、本明細書及び当該技術分野における知識により導かれれば当業者の能力の範囲内であろう。核酸部分(例えばオリゴヌクレオチド及び改変オリゴヌクレオチド)を製造する技術は知られている。核酸部分は、非限定的に酵素学的方法及び化学的方法、並びに酵素学的アプローチと化学的アプローチとの組合せを含む技術を用いて合成することができる。例えば、ホスホジエステル結合を含むDNA又はRNAは、3'末端において固体支持体に結合された伸張オリゴヌクレオチドの5'水酸基に適切なヌクレオシド・ホスホロアミダイトを順次結合することによって化学的に合成することができる。DNA合成に有用な固体支持体は、Controlled Pore Glass(Applied Biosystems, Foster City, CA)、ポリスチレン・ビーズマトリクス(Primer Support, Amersham Pharmacia, Piscataway, NJ)、及びTentGel(Rapp Polymere GmbH, Tubingen, Germany)を含む。ひとたび所望されるオリゴヌクレオチド配列が合成されると、オリゴヌクレオチドは支持体から取り除かれ、当該ホスフェート・トリエステル基はホスフェートジエステルに脱保護され、そしてヌクレオシド塩基は、アンモニア水又は他の塩基を用いて脱保護される。
【0146】
例えば、ホスホジエステル結合を含むDNA又はRNAポリヌクレオチド(核酸部分)は、以下のステップ:
a)固体支持体に3'-で結合されたヌクレオシド又は核酸の5'-水酸基から保護基を取り除き、
b)活性化ヌクレオシド・ホスホロアミダイトを、当該5'-水酸基に結合させ、
c)ホスファイト・トリエステルを酸化してホスフェート・トリエステルに酸化し、そして
d)未反応の5'-水酸基をキャッピングする
を繰り返し反復することにより一般的に合成される。ホスホロチオエート結合を含むDNA又はRNAは、酸化ステップが硫化ステップに置き換えられることを除いて、上に記載される様に製造される。所望されるオリゴヌクレオチド配列が合成された場合、当該オリゴヌクレオチドは、支持体から外され、ホスフェート・トリエステル基を、ホスフェートジエステルに脱保護し、そしてアンモニア水又は他の塩基を用いて当該ヌクレオシド塩基を脱保護する。例えば、Beaucage (1993) "Oligodeoxyribonucleotide Synthesis" in PROTOCOLS FOR OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGS, SYNTHESIS AND PROPERTIES (Agrawal編) Humana Press, Totowa, NJ;Warnerら、(1984) DNA 3:401 ;Tangら、(2000) Org. Process Res. Dev. 4: 194- 198;Wyrzykiewicaら、(1994) Bioorg. & Med. Chem. Lett. 4: 1519-1522;Radhakrishnaら、(1989) J. Org. Chem. 55:4693-4699;及び米国特許第4,458,066号を参照のこと。合成配列の核酸部分を自動的に合成するプログラム可能な機械が広く使用されている。例として、Expedite 8909自動化DNA合成機(Perseptive Biosystem, Framington MA); ABI 394 (Applied Biosystems, Inc., Foster City, CA);及びOligoPilot II(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)が挙げられる。
【0147】
例えば、酸分解性5'-保護基及び3'-ホスホロアミダイトを含む塩基保護ヌクレオシド(モノマー)を用いて、ポリヌクレオチドは3'から5'方向に組み立てることができる。かかるモノマーの例は、5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)-保護ヌクレオシド-3'-O-(N,N-ジイソプロピルアミノ)2-シアノエチルホスホロアミダイトを含み、ここで保護ヌクレオシドの例は、非限定的に、N6-ベンゾイルアデノシン、N4-ベンゾイルシチジン、N2-イソブチリルグアノシン、チミジン、及びウリジンを含む。この場合、使用される固体支持体は、3'-で結合された保護ヌクレオシドを含む。或いは、ポリヌクレオチドは、酸分解性3'-保護基及び5'-ホスホロアミダイトを含む塩基保護ヌクレオシドを用いて、5'から3'方向に組立てることができる。かかるモノマーの例として、非限定的に3'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)-保護ヌクレオシド-5'-O-(N,N-ジイソプロピルアミノ)2-シアノエチルホスホロアミダイトが挙げられ、ここで保護ヌクレオシドの例は、非限定的にN6-ベンゾイルアデノシン、N4-ベンゾイルシチジン、N2-イソブチリルグアノシン、チミジン、及びウリジン(Glen Research、Sterling、VA)を含む。この場合、使用される固体支持体は、5'で結合された保護ヌクレオシドを含む。環状核酸成分は、単離でき、組換え法を通して合成でき、又は化学的に合成することができる。化学的な合成は、文献に記載される任意の方法を用いて実施することができる。例えば、Gaoら、(1995)Nucleic Acids Res. 23:2025-2029及びWangら、(1994) Nucleic Acids Res. 22:2326-2333を参照のこと。
【0148】
非核酸スペーサー部分を加えることは、通常の方法を用いて行うことができる。特定のスペーサー部分を加える方法は、当該技術分野に知られており、例えば上で引用される参考文献に記載される。例えば、Durandら、(1990) Nucleic Acids Res. 18:6353-6359を参照のこと。スペーサー部分と核酸部分との間の共有結合は、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、アミド、エステル、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、ホスホロアミデート、ホスホトリエステル、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート及び他のリンケージを含む多くのタイプのうちのいずれかであってもよい。核酸部分を合成するために使用されるのと同じホスホロアミダイト型の化学反応を用いて、スペーサー部分と核酸部分とを結合させることがしばしば都合がよいであろう。例えば、本発明のIRCは、ホスホロアミダイト化学反応(例えば、上記Beaucage, 1993;上記Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry)を用いて自動化DNA合成機(例えば、Expeジte 8909; Perseptive Biosystems, Framington, MA)を用いてうまく合成することができる。しかしながら、所望される場合、自動化DNA合成機により実行されるのと同じ(又は同等の)合成ステップを手動で行うことができるということが当業者により理解されよう。このような合成では、典型的に、スペーサーの1の末端(又はマルチマー・スペーサーのスペーサーサブユニット)は、4,4'-ジメチオキシトリチル基で保護され、もう一方の末端はホスホロアミダイト基を含む。
【0149】
必要とされる保護基及び反応基を有する様々なスペーサーは、市販されている。例えば以下の通りである:
【表1】
【0150】
これら及び様々な他の保護スペーサー部分の前駆体(例えば、DMT及びホスホロアミダイト基保護基)は購入することができるし、又は本明細書に開示されるIRCを製造する際に使用する通常の方法を用いて合成することができる。当該装置は、製品説明書に従って、ヌクレオチドモノマー及びスペーサーを所望される順番で加えるようにプログラムされる。
【0151】
ホスホロアミダイト化学反応の使用が、あるIRCの製造に都合がよいが、本発明のIRCが合成又は製造の特定方法のいずれかにより製造される化合物に限られないことが認められよう。
【0152】
一の実施態様では、1より多いタイプの核酸部分に会合された多価スペーサーを有するIRCが製造される。例えば、(チオール含有ポリヌクレオチドと反応することができる)2個のマレイミド基、及び(アミノ含有核酸と反応することができる)2個の活性エステル基を有するプラットホームが開示された(例えば、PCT出願公開第WO 95/07073号を参照のこと)。これらの2種の活性基は、互いに独立して反応することができる。このことは、各々2個の配列、すなわち全体で4個の核酸部分を含むIRCをもたらす。
【0153】
2個の異なる核酸配列を含む多価スペーサーを有するIRCは、上で記載される対称分枝状スペーサー、及び慣用されるホスホロアミダイト化学反応を用いて(例えば、手動又は自動化方法を用いて)製造することができる。当該対称分枝状スペーサーは、ホスホロアミダイト基、並びに同じでありかつ同時に取り除かれる2個の保護基を含む。一のアプローチでは、例えば第一核酸を合成し、そして対称分枝状スペーサーに結合させ、その保護基を当該スペーサーから取り除く。次に、(同じ配列の)2個の更なる核酸が、(各ステップにおいて、1の核酸部分を合成するために使用される量の二倍量の試薬を用いて)スペーサー上で合成される。
【0154】
同様の方法は、3個の異なる核酸部分(以下において核酸I、II、及びIIIと呼ぶ)を多価プラットホームに結合するために使用することができる(例えば、非対称分枝状スペーサー)。これは、最も一般的に、自動化DNA合成機を用いて行われる。一の実施態様では、非対称分枝状スペーサーは、ホスホロアミダイト基及び独立して取り除くことができる2個のオルソゴナル保護基を含む。最初に、核酸Iを合成し、次に非対称分枝状スペーサーを核酸Iに結合させ、次に保護基のうちの1つを選択的に取り除いた後で核酸IIを加える。核酸IIを脱保護し、そしてキャップし、そして次にスペーサー上の他の保護基を取り除く。最後に核酸IIIを合成する。
【0155】
幾つかの実施態様では、核酸部分(単数又は複数)が合成され、そして反応性連結基(例えば、アミノ、カルボキシレート、チオ、ジスルフィドなど)が、標準合成化学技術を用いて加えられる。当該反応性連結基(これらは、結果として生じるスペーサー部分の一部を形成すると考えられる)は、さらなる非核酸化合物と結合して、スペーサー部分を形成する。連結基は、核酸合成についての標準方法を使用し、文献に記載されるか又は市販されている様々な試薬を使用して核酸に加えられる。例として、保護アミノ基、カルボキシレート基、チオール基、又はジスルフィド基、及びホスホロアミダイト基を含む試薬が挙げられる。ひとたび、これらの化合物が、活性化ホスホロアミダイト基を介して核酸に取り込まれ、そして脱保護されたならば、これらはアミノ、カルボキシレート、又はチオール反応基を核酸に提供する。
【0156】
様々な長さの親水性リンカーは、核酸部分とプラットホーム分子とを結合するために有用である。様々な長さのリンカーが知られている。適切なリンカーは、非限定的に、直線状のエチレングリコールのオリゴマー又はポリマーを含む。かかるリンカーは、以下の式:
1S(CH2CH2O)nCH2CH2O(CH2)mCO22
[式中、n=0〜200、m=1又は2、R1=H又は保護基、例えばトリチル、R2=H又はアルキル又はアリールである]
を有するリンカー、例えば4-ニトロフェニルエステルを含む。これらのリンカーは、チオール反応基、例えば、ハロアセイル(haloaceyl)、マレイアミド(maleiamide)などを含む分子を、アミド結合を介してアミノ基を含む第二分子へとチオエーテルを介して結合させるのに有用である。結合の順番を変化させることができ、つまり、チオエーテル結合は、アミド結合が形成された後又は前に形成されてもよい。他の有用なリンカーは、Sulfo-SMCC(スルホスクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]-シクロヘキサン-1-カルボキシラート)Pierce Chemical Co. 製品番号22322; Sulfo-EMCS(N-[ε-マレイミドカプロイルオキシル・スルホスクシンイミド・エステル) Pierce Chemical Co.製品番号22307; Sulfo-GMBS(N-[γ-マレイミドブチリルオキシ]スルホスクシンイミド・エステル)Pierce chemical co.製品番号22324(Pierce Chemical Co., Rockford, IL)、及び一般式:マレイミド-R-C(O)NHSエステル[式中、R=アルキル、環状アルキル、エチレングリコールのポリマーなど]の類似の化合物を含む。
【0157】
核酸部分を多価スペーサーに共有結合するための特に有用な方法は、上で引用された参考文献に記載される。
【0158】
ある実施態様では、ポリペプチドは、複数の核酸部分が直接又はリンカーを介して共有結合して「タンパク質性IRC」を形成する多価スペーサー部分として使用される。ポリペプチドは、担体(例えばアルブミン)でありうる。典型的に、タンパク質性IRCは、 (a)2〜7個のヌクレオチド長であり、4〜7個のヌクレオチド長であることが多く、或いは2〜6個、2〜5個、4〜6個、又は4〜5個のヌクレオチド長であり、及び/又は(b)低い単離免疫調節活性を有するか、又は単離免疫調節活性を有さない少なくとも1の、そして通常幾つかの、又は多くの核酸分子を含む。タンパク質性IRCの製造方法は、本開示を参照することにより当業者に明らかであろう。例えば、核酸は、当該技術分野に知られている方法により、ポリペプチドスペーサー部分に共有結合することができ、例えば、核酸部分の3'又は5'末端(又は、核酸部分内の内部位置で適切に改変された塩基)と適切な反応基(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド・エステル、シトシン残基のN4アミノ基と直接反応することができる)を有するポリペプチドとの間の結合を含む。さらなる例として、ポリペプチドは、核酸部分に取り込まれたアミン、チオール、又はカルボキシル基を通して核酸部分の遊離5'末端に結合することができる。或いは、当該ポリペプチドは、本明細書に記載される様に、スペーサー部分に結合できる。さらに、一の末端に保護アミン、チオール、又はカルボキシルを含む連結基及びホスホロアミダイトは、ポリヌクレオチドの水酸基に共有結合することができ、そして続いて脱保護されて、当該官能基は、IRCをペプチドに共有結合させるために使用できる。
【0159】
IRP及び/又はIRC複合体及び組成物
IRP又はIRCは、個体に直接投与することができるか、又はそれらは、細胞へのIRP又はIRCデリバリー及び/又は細胞による取り込みを高めるために組成物又は複合体中で投与することができる。組成物又は複合体は、2以上の異なるIRP及び/又はIRC種を細胞に共デリバリーすることを高めるために使用することができる。ある実施態様では、IRCとIRPの混合物は、少なくとも1のIRC及びIRP種をデリバリーするために複合体形成されてもよい。かかるデリバリー組成物又は複合体は、非限定的に、本明細書に記載され、そして当該技術分野に知られている封入複合体及びコロイド様分散システムを含む。かかるデリバリー組成物は、水中油型乳濁液、ミセル、及びリポソームを含む。デリバリー組成物又は複合体は、本明細書に記載される様に、リンカー分子に結合されたIRP及び/又はIRC、プラットホーム分子、ナノ粒子又はマイクロ粒子を含む。かかる結合は、両方とも共有及び非共有結合を含む。他に記載がない限り、IRPについて使用するため本明細書に開示される複合体及び組成物は、IRCに関して使用するのに適している。
【0160】
幾つかの実施態様では、IRP及び/又はIRCは、リンカー分子と会合される。IRP及び/又はIRCタンパク質は、様々な方法、例えば共有及び/又は非共有相互作用で複合体のリンカー部分と会合されうる。
【0161】
IRP及び/又はIRCの3'又は5'末端において、又はIRP及び/又はIRC中の内部位置で適切に改変された塩基において、部分間の結合がなされうる。リンカーがペプチドであり、そして適切な反応基(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド・エステル)を含む場合、リンカーは、シトシン残基のN4基と直接反応することができる。IRP及び/又はIRCのシトシン残基の数及び位置に依存して、1以上の残基での特異的結合が達成されうる。
【0162】
或いは、当該技術分野に知られている改変オリゴヌクレオシドは、IRP及び/又はIRCの末端又は内部位置において取り込まれてもよい。これらは、脱保護された場合に、関心のリンカー上に存在するか又は関心のリンカーに結合している様々な官能基と反応する保護官能基を含んでもよい。
【0163】
リンカーがペプチドである場合、この会合部分は、固体支持体との化学反応を介して、IRP及び/又はIRCの3'末端に結合することができる。例えば、IRP部分は、支持体上に予め合成されたペプチド部分に加えられてもよい(Haralambidisら、(1990a) Nucleic Acids Res. 18:493-499; 及びHaralambidisら、(1990b) Nucleic Acids Res. 18:501-505.)。或いは、3'-末端から伸張している切断可能なリンカーを介して固体支持体に結合されるように、IRPを合成することもできる。支持体からIRPを化学切断した場合、末端チオール基はオリゴヌクレオチドの3'-末端に残る(Zuckermannら、(1987) Nucleic Acids Res. 15:5305-5321 ;及びCoreyら、(1987) Science 238: 1401-1403) か、又は末端アミノ基がオリゴヌクレオチドの3'末端に残る(Nelsonら、(1989) Nucleic Acids Res. 17: 1781 -1794)。アミノ改変IRP及び/又はIRCのペプチドのアミノ基への会合は、Benoitら、(1987) Neuromethods 6:43-72.に記載されるように行うことができる。チオール改変IRP及び/又はIRCの複合体を、ペプチドのカルボキシル基へと結合することは、Sinahら、(1991) Oligonucleotide Analogues: A Practical Approach, IRL Press. に記載される様に行われてもよい。付随するマレイミドを有するオリゴヌクレオチドを、ペプチドのシステイン残基のチオール側鎖に結合することが記載された(Tungら、(1991 ) Bioconjug. Chem. 2:464-465)。
【0164】
会合のペプチド・リンカー部分は、合成の間にオリゴヌクレオチドに取り込まれたアミン、チオール、又はカルボキシル基を通して、IRP及び/又はIRCの5'末端に結合することができる。好ましくは、当該オリゴヌクレオチドが固体支持体に固定される間、保護アミン、チオール、又はカルボキシルを1の末端に含み、そしてもう一端にホスホロアミダイトを含む結合基は、5'-水酸基に共有結合される(Agrawalら、(1986) Nucleic Acids Res. 14:6227-6245; Connolly (1985) Nucleic Acids Res. 13:4485-4502; Kremskyら、(1987) Nucleic Acids Res. 15:2891-2909; Connolly (1987) Nucleic Acids Res. 15:3131 -3139; Bischoffら、(1987) Anal. Biochem. 164:336-344; Blanksら、(1988) Nucleic Acids Res. 16: 10283- 10299;及び米国特許第4,849,513号、第5,015,733号、第5,1 18,800号、及び第5,1 18,802号)。脱保護に続き、アミン、チオール、及びカルボキシル官能基は、当該オリゴヌクレオチドをペプチドに共有結合させるために使用することができる。(Benoitら、(1987);及びSinahら、(1991))。
【0165】
IRP及び/又はIRC複合体は、イオン結合、疎水性相互作用、水素結合、及び/又はファンデルワールス力などの非共有相互作用を介して形成することができる。
【0166】
非共有結合複合体は、ビオチン-ストレプトアビジン複合体などの非共有相互作用を含みうる。ビオチニル基は、例えば、IRP及び/又はIRCの改変塩基に結合することができる(Rogetら、(1989) Nucleic Acids Res. 17:7643-7651)。ストレプトアビジン部分をペプチド部分中に取り込むことは、ストレプトアビジン結合ペプチドとビオチン化オリゴヌクレオチドの非共有結合複合体の形成を可能にする。
【0167】
非共有結合は、オリゴヌクレオチドと相互作用することができる荷電残基を含むリンカー部分を用いて、IRP及び/又はIRCに関するイオン性相互作用介して生じうる。例えば、非共有結合は、一般的に負に荷電されたIRP及び/又はIRCと、ペプチド・リンカー、例えば、ポリリジン、ポリアルギニン、及びポリヒスチジン残基の正に荷電されたアミノ酸残基との間で生じてもよい。
【0168】
IRP及び/又はIRCの脂質への結合は、標準的な方法を用いて形成することができる。これらの方法は、非限定的に、オリゴヌクレオチド-リン脂質複合体 (Yanagawaら、(1988) Nucleic Acids Symp. Ser. 19: 189-192)、オリゴヌクレオチド-脂肪酸複合体(Grabarekら、(1990) Anal. Biochem. 185: 131-135;及びStarosら、(1986) Anal. Biochem. 156:220-222)、並びにオリゴヌクレオチド-ステロール複合体(Boujradら、(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5728-5731)の合成を含む。
【0169】
オリゴヌクレオチドのオリゴ糖への結合は、標準的な既知の方法を用いて形成することができる。当該方法は、非限定的に、オリゴヌクレオチド-オリゴ糖複合体の合成を含み、ここで、当該オリゴ糖は、免疫グロブリンの一部である(O'Shannessyら、(1985) J. Applied Biochem. 7:347-355.)。
【0170】
環状IRP及び/又はIRCのペプチド結合への結合は、幾つかの方法で形成することができる。環状IRP及び/又はIRCが組換え又は化学方法を用いて合成する場合、改変ヌクレオシドが適切である(Ruth (1991) Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, IRL Press.)。環状IRP及び/又はIRCをペプチドに結合するために、標準的な結合技術が使用することができる(Goodchild (1990) Bioconjug. Chem. 1 : 165.)。環状IRP及び/又はIRCが、組換え又は化学方法を用いて単離又は合成される場合、結合は、ペプチド中に取り込まれた化学的に活性な又は光反応性の反応基(例えば、カルベン、ラジカル)により形成することができる。
【0171】
ペプチド及び他の分子をオリゴヌクレオチドに結合するための更なる方法は、米国特許第5,391,723号; Kricka(編) Nonisotopic DNA Probe Techniques, Academic Pressに掲載のKessler (1992) "Nonraジoactive labeling methods for nucleic acids";及び Geogheganら、(1992) Bioconjug. Chem. 3: 138-146.に見ることができる。
【0172】
IRP及び/又はIRCは、他の方法で近接(proximately associated)させることができる。幾つかの実施態様では、IRP及び/又はIRCは、封入により近接される。他の実施態様では、IRP及び/又はIRCは、プラットホーム分子に結合させることにより近接させることができる。「プラットホーム分子」(「プラットホーム」と呼ぶ)は、IRP及び/又はIRCを結合することを許容する部分を含む分子である。別の実施態様では、IRP及び/又はIRCは、表面、好ましくは担体粒子上に吸着することにより近接される。
【0173】
幾つかの実施態様において、本発明の方法は、IRP及び/又はIRCに関連した封入物質を使用する。好ましくはIRP及び/又はIRC及び封入物質を含む組成物は、アジュバント水中油乳濁液、微粒子及び/又はリポソームの形態である。より好ましくは、IRP及び/又はIRCを封入するアジュバント水中油乳濁液、微粒子、及び/又はリポソームは、約0.04μm〜約100μmの大きさの粒子の形態であり、好ましくは以下の範囲:約0.1μm〜約20μm;約0.15μm〜約10μm;約0.05μm〜約1.00μm;約0.05μm〜約0.5μmのうちのいずれかである。
【0174】
微粒子、ビーズ、巨大分子複合体、ナノカプセル、及び液体に基づくシステム、例えば水中油乳濁液、ミセル、混合ミセル、及びリポソームなどのコロイド様分散システムは、IRP及び/又はIRC含有組成物の効果的な封入を提供することができる。
【0175】
封入組成物はさらに、様々な成分のいずれかをさらに含む。これらは、非限定的に、ミョウバン、脂質、リン脂質、脂質膜構造(LMS)、ポリエチレングリコール(PEG)、及び他のポリマー、例えば、ポリペプチド、グリコペプチド、及び多糖を含む。
【0176】
成分の封入に適したポリペプチドは、当該技術分野に知られている任意の物質を含み、そして非限定的に脂肪酸結合タンパク質を含む。改変ポリペプチドは、様々な改変のうちのいずれかを含み、非限定的に、グリコシル化、リン酸化、ミリスチル化、硫酸化、及び水酸化を含む。本明細書に使用されるとき、適切なポリペプチドは、その免疫調節活性を保存するために、IRP及び/又はIRC含有組成物を保護するポリペプチドである。結合タンパク質の例は、非限定的に、ウシ血清アルブミン(BSA)及びエンドウ豆アルブミンなどのアルブミンを含む。
【0177】
他の適切なポリマーは、医薬品の分野において知られている任意のポリマーであってもよく、非限定的に天然ポリマー、例えば、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチ、及び多糖、及び合成ポリマーを含む。天然ポリマーの例は、タンパク質、糖ペプチド、多糖、デキストラン、及び脂質を含む。更なるポリマーは、合成ポリマーであってもよい。本発明において使用するために適した合成ポリマーの例は、非限定的に、ポリアルキル・グリコール類(PAG)、例えばPEG、ポリオキシエチル化ポリオール類(POP)、例えば、ポリオキシエチル化グリセロール(POG)、ポリトリメチレングリコール(PTG)ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸、ポリエチルオキサゾリン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアミノ酸、ポリウレタン、及びポリホスファゼンを含む。合成ポリマーは、直線状又は分枝状、置換又は非置換のホモポリマー、コポリマー、又は2以上の異なる合成モノマーから構成されるブロックコポリマーであってもよい。
【0178】
本発明の封入組成物中に使用するためのPEGは、化学品の販売元から購入するか、又は当業者に知られている技術を用いて合成することができる。
【0179】
「LMS」という用語は、本明細書で使用されるとき、極性脂質の極性頭基が、界面の水相に向くように配置されて膜構造を形成する層状脂質粒子を意味する。LMSの例は、リポソーム、ミセル、コクリート(Cochleates)(つまり、一般的に円筒状のリポソーム)、マイクロ乳濁液、単層ベシクル、多層ベシクルなどを含む。
【0180】
本発明の任意のコロイド状分散システムは、リポソームである。本明細書に使用されるとき、「リポソーム」又は「脂質ベシクル」は、少なくとも1の、そして場合により2以上の二重層脂質膜により結合される小さいベシクルである。リポソームは、リン脂質、糖脂質、脂質、ステロイド、例えば、コレステロール、関連分子、又はその組合せから、非限定的に超音波処理、押出し、又は脂質-デタージェント複合体からデタージェントを取り除くことを含む任意の既知の技術により作成される。リポソームは、場合により、組織標的成分などの追加の成分を含んでもよい。「脂質膜」又は「脂質二重層」は、脂質単独からなる必要はないが、非限定的に、コレステロール及び他のステロイド、脂溶性化学物質、任意の長さのタンパク質、及び他の両親媒性分子を含む他の任意の適切な成分をさらに含むことができる。但し、当該膜の一般的な構造は、疎水性中心を挟み込む2個の親水性表面のシートである。膜構造についての一般的な考察については、例えばLasic (1993) "Liposomes: from Physics to Applications" Elsevier, Amsterdamを参照のこと。
【0181】
IRP及び/又はIRC組成物を含むリポソームの製造方法は当該技術分野に知られている。脂質ベシクルは、当該技術分野に知られている任意の適切な技術により製造することができる。当該方法は、非限定的に、マイクロカプセル化、顕微溶液化、LLC法、エタノール注入、フロン注入、「泡」法、デタージェント透析、水和、超音波処理、及び逆相蒸発を含む(Watweら、(1995) Curr. Sci. 68:715- 724.に総説される)。ベシクルに最も望ましい特性を与えるために技術を組み合わせてもよい。
【0182】
本発明は、組織又は細胞標的成分を含むLMSの使用を包含する。かかる標的成分は、無傷動物、器官、又は細胞培養に投与された場合に、他の組織又は細胞部位に優先して特定の組織又は細胞部位への集合を促進するLMSの成分である。標的成分は、一般的に、リポソームの外部からアクセス可能であり、その結果好ましくは、外側表面に結合されるか又は外側脂質二重層中に取り込まれる。標的成分は、とりわけ、ペプチド、大きいペプチドの或る領域、細胞表面分子又はマーカーに特異的な抗体又はその抗原結合断片、核酸、糖、糖複合体の領域、特別な脂質、小分子、例えば薬剤、ホルモン、又はハプテンであって、前述分子のいずれかに結合されるものでありうる。細胞型特異的細胞表面マーカーに特異性を有する抗体は当該技術分野に知られており、当該技術分野に知られている方法により即座に調製される。
【0183】
LMSは、治療対象である任意の細胞型、例えば、免疫応答を制御し及び/又は免疫応答に関与することができる細胞型、を標的することができる。かかる標的細胞及び器官は、非限定的にAPC、例えばマクロファージ、樹状細胞、及びリンパ球、リンパ組織、例えばリンパ節及び脾臓、並びに非リンパ組織、特に樹状細胞が見られる組織を含む。
【0184】
本発明のLMS組成物は、さらにサーファクタントを含みうる。サーファクタントは、カチオン性、アニオン性、両親媒性、又は非イオン性であってもよい。サーファクタントの好ましいクラスは、非イオン性サーファクタントであり;水溶性であるサーファクタントが特に好ましい。
【0185】
IRP及び/又はIRCがプラットホーム分子に結合することにより近接する幾つかの実施態様では、当該プラットホームは、タンパク質性又は非タンパク質性(つまり、有機性)であってもよい。タンパク質性プラットホームの例は、非限定的にアルブミン、ガンマグロブリン、イムノグロブリン(IgG)、及びオボアルブミンを含む(Borelら、(1990) Immunol. Methods 126: 159-168; Dumasら、(1995) Arch. Dematol. Res. 287:123-128; Borelら、(1995) Int. Arch. Allergy Immunol. 107:264-267; Borelら、(1996) Ann. N.Y. Acad. Sci 778:80-87)。プラットホームは、1超のIRP及び/又はIRCへの結合を含むために多価プラットホームである(つまり、1超の結合又は連結部位を含む)。従って、プラットホームは、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上の結合又は連結部位を含んでもよい。ポリマー性プラットホームの他の例は、デキストラン、ポリアクリルアミド、フィコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、及びポリD-グルタミン酸/D-リジンである。
【0186】
プラットホーム分子を使用する原理は、当該技術分野に知られている。一般的に、プラットホームは、IRP及び/又はIRCについての適切な結合部位を含むために誘導体化される。さらに、又は或いは、IRP及び/又はIRCは、適切な連結基を提供するために誘導体化される。例えば、単純なプラットホームは、二官能性リンカー(つまり、2個の結合部位を有する)、例えばペプチドである。更なる例を以下に記載する。
【0187】
プラットホーム分子は、生物学的に安定であってもよい。つまり、当該分子は、治療効力を与えるために数時間から数日、そして数ヶ月のin vivo排出半減期を示し、そして好ましくは規定された組成の合成一本鎖から構成される。これらは、一般的に、約200〜約1000000の範囲、好ましくは以下の範囲:約200〜約500000;約200〜約200000;約200〜約50000(又はそれ以下、例えば30000)のうちのいずれかの範囲内の分子量を有する。多価プラットホーム分子の例は、ポリエチレングリコール(PEG;好ましくは、約200〜約8000の分子量を有する)、ポリ-D-リジン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、D-グルタミン酸、及びD-リジン(3:2の比)である。使用されうる他の分子はアルブミン及びIgGなどのポリマーである。
【0188】
本発明における使用に適した他のプラットホーム分子は、米国特許5,552,391号に記載される化学的に規定された非ポリマー性の多価プラットホーム分子である。本発明での使用に適した他の化学的に均一に規定された多価プラットホーム分子は、誘導体化2,2'-エチレンジオキシジエチルアミン(EDDA)及びトリエチレングリコール(TEG)である。
【0189】
さらに適した多価プラットホーム分子は、非限定的に、テトラアミノベンゼン、ヘプタアミノベータシクロデキストリン、テトラアミノペンタエリスリトール、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(シクラム)及び1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(シクレン)を含む。
【0190】
一般的に、これらのプラットホームは、標準的な化学合成技術により作成される。PEGは、誘導体化されかつ多価にされなければならず、これは標準技術を用いて達成される。複合体の合成に適した幾つかの物質、例えばPEG、アルブミン、及びIgGは市販されている。
【0191】
IRP及び/又はIRCをプラットホーム分子へと結合することは、多くの方法により行われ、典型的に、1以上の架橋剤と、IRP及び/又はIRC並びにプラットホーム分子上の官能基とに関する。プラットホーム及びIRP及び/又はIRCは、適切な連結基を有さなければならない。連結基は、標準合成化学技術を用いてプラットホームに加えられる。連結基は、標準固相合成技術又は組換え技術のいずれかを用いて、ポリペプチド・プラットホーム及びIRP及び/又はIRCに加えられてもよい。組換えアプローチは、リンカーを結合するために翻訳後修飾を必要とすることもあり、そしてかかる方法は当該技術分野に知られている。
【0192】
一例として、ポリペプチドは、ポリペプチドをプラットホームへと結合するための部位として働く官能基、例えばアミノ、カルボキシル、又はスルフヒドリル基を含むアミノ酸側鎖部分を含む。かかる官能基を有する残基は、当該ポリペプチドがこれらの基を既に含んでいない場合、当該ポリペプチドに結合されてもよい。かかる残基は、固相合成技術又は組換え技術により取り込まれてもよい。これらの両者は、ペプチド合成技術において周知である。ポリペプチドが、糖側鎖を有する場合(又は当該プラットホームが糖である場合)、官能性アミノ、スルフヒドリル及び/又はアルデヒド基は、慣用の化学反応により取り込まれてもよい。例えば、一級アミノ基は、シアン化ホウ素水素ナトリウムの存在下で、酸化型の糖とエチレンジアミンとを反応することにより取り込まれてもよく、スルフヒドリルは、システアミン・ジヒドロクロリドと反応させ、続いて標準的なジスルフィド試薬で還元することにより取り込まれてもよく、一方アルデヒド基は、過ヨウ素酸酸化の後に生成されてもよい。似た様式において、プラットホーム分子は、適切な官能基を有さない場合、官能基を含むように誘導体化されてもよい。
【0193】
様々な長さの親水性リンカーが、IRP及び/又はIRCをプラットホーム分子へと結合するために有用である。適切なリンカーは、エチレングリコールの直線状オリゴマー又はポリマーを含む。かかるリンカーは、式:R1S(CH2CH2O)nCH2CH2O(CH2)mCO22[式中、n=0〜200、m=1又は2、R1=H又はトリチルなどの保護基、R2=H又はアルキル又はアリール、例えば4-ニトロフェニルエステルである]を有するリンカーを含む。これらのリンカーは、チオエーテルを介してハロアセイル(haloaceyl)、マレイミドなどのチオール反応性基を含む分子を、アミド結合を介してアミノ基を含む第二分子へと接続するのに有用である。これらのリンカーは、結合の順番を変えることができる。つまり、チオエーテルを最初に形成することもできるし、又は最後に形成することもできる。
【0194】
ある表面上に吸着させることによりIRP及び/又はIRCが近接する実施態様では、当該表面は、無機又は有機コアのいずれかで作成されるキャリア粒子の形態であってもよい。かかるナノ粒子の例は、非限定的に、ナノ結晶粒子、アルキルシアノアクリレートの重合により作成されたナノ粒子、及びメチリデン・マロネートの重合により作成されたナノ粒子を含む。IRP及び/又はIRCが吸着されうる追加の表面は、非限定的に、活性炭粒子及びタンパク質-セラミックナノ粒子を含む。キャリア粒子の他の例が本明細書に提供される。
【0195】
吸着された分子を細胞へとデリバリーするためのポリヌクレオチド及びポリペプチド表面への吸着は、当該技術分野に周知である。例えば、Douglasら、(1987) Crit. Rev. Ther. Drug. Carrier Syst. 3:233-261 ; Hagiwaraら、(1987) In Vivo 1 :241-252; Bousquetら、(1999) Pharm Res. 16: 141 -147; 及びKossovskyら、米国特許第5,460,831号を参照のこと。好ましくは、吸着表面を含む物質は生分解性である。IRP及び/又はIRCの表面への吸着は、非共有相互作用、例えばイオン性及び/又は疎水性相互作用を介して生じてもよい。
【0196】
一般的に、ナノ粒子などのキャリアの特徴、例えば表面荷電、粒子サイズ、及び分子量は、重合過程の間の重合条件、モノマー濃度、及び安定剤の存在に依存する(Douglasら、1987)。キャリア粒子の表面は、例えば、表面被膜で改変されて、IRP及び/又はIRCの吸着を許容又は高めてもよい。吸着されたIRP及び/又はIRCを有するキャリアタンパク質は、さらに他の物質で被膜されてもよい。かかる他の物質の添加は、本明細書に記載されるように、例えば、対象に投与された際の粒子の半減期を延長してもよいし、及び/又は当該粒子を特定の細胞型又は組織に標的化してもよい。
【0197】
IRP及び/又はIRCが吸着されうるナノ結晶表面が記載されてきた(例えば、米国特許第5,460,831号)。(1μm以下の直径を有する)ナノ結晶コア粒子は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、及び/又は他の医薬品の吸着を促進する表面エネルギー改変層で被膜される。別の吸着表面は、アルキルシアノアクリレートの重合により作成されるナノ粒子である。アルキルシアノアクリレートは、アニオン性重合の方法により、酸性水性溶媒中で重合することができる。重合条件に依存して、小さい粒子は、20〜3000nmの範囲の大きさを有する傾向があり、そしてナノ粒子に特定の表面特性を与え、そして特定の表面荷電を有するものとすることが可能である(Douglasら、1987)。例えば、オリゴヌクレオチドは、テトラフェニルホスホニウム・クロリド又は四級アンモニウム塩、例えばセチルトリメチル・アンモニウム・ブロミドの存在下で、ポリイソブチル及びポリイソゲキシルシアノアクリレート・ナノ粒子に吸着されうる。これらのナノ粒子上へのオリゴヌクレオチドの吸着は、核酸鎖の負に荷電されたリン酸基と、疎水性カチオンとの間のイオン対の形成により媒介されるようである。例えば、Lambertら、(1998) Biochimie 80:969-976, Chavanyら、(1994) Pharm. Res. 11: 1370-1378; Chavanyら、(1992) Pharm. Res. 9:441-449を参照のこと。別の吸着表面は、メチリデン・マロネートの重合により作成されるナノ粒子である。
【0198】
IRP又はIRCは、マイクロキャリア(MC)複合体の形態で投与されてもよい。従って、本発明は、IRP/MC複合体又はIRC/MC複合体を含む組成物を提供する。IRP/MC複合体は、マイクロキャリアの表面に結合されたIRPを含み(つまり、IRPはMC内に封入されていない)、そして好ましくは各マイクロキャリアに結合された複数のIRP分子を含む。ある実施態様では、異なるIRPの混合物は、当該マイクロキャリアが1超のIRP種に結合されるように、マイクロキャリアと複合体形成されうる。IRPとMCとの間の結合は、共有又は非共有結合であってもよい。当業者により理解されるように、IRPは改変又は誘導体化されてもよく、そしてマイクロキャリアの組成は、IRP/MC複合体形成について所望される結合のタイプを収容するように選択及び/又は改変されてもよい。当該同じ記載は、IRC/MC複合体に適用される。ある実施態様では、IRC及びIRPの混合物は、当該マイクロキャリアが少なくとも1のIRC及びIRP種に結合されるように、マイクロキャリアと複合体形成されてもよい。
【0199】
本発明において有用なマイクロキャリアは、約150、120、又は100μmの大きさより小さく、より一般的に約50〜60μmの大きさであり、好ましくは約10μmの大きさであり、そして純水に不溶性である。本発明に使用されるマイクロキャリアは、好ましくは生分解性であるが、生分解性ではないマイクロキャリアも許容される。マイクロキャリアは、一般的に固相、例えば「ビーズ」又は他の粒子であるが、生分解性のポリマー又は油などを含む水中油乳濁液などの液相マイクロキャリアも予期される。マイクロキャリアとして使用するために適した広範囲の生分解性の物質及び生分解性でない物質が当該技術分野に知られている。
【0200】
本発明の組成物又は方法において使用するためのマイクロキャリアは、一般的に約10μmの大きさ未満であり(例えば、約10μm未満の平均直径、又は10μmのスクリーン・フィルターを通過する少なくとも約97%の粒子)、そしてナノキャリア(つまり、約1μmの大きさ未満のキャリア)を含む。好ましくは、マイクロキャリアは、約9、7、5、2、又は1μm或いは900、800、700、600、500、400、300、250、200、又は100nmの上限と、約4、2、又は1μm或いは約800、600、500、400、300、250、200、150、100、50、25、又は10nmの独立して選ばれる下限との間の大きさを有するマイクロキャリアから選ばれる。ここで当該下限値は、上限値より小さい。幾つかの実施態様では、マイクロキャリアは、約1.0〜1.5μm、約1.0〜2.0μm、又は約0.9〜1.6μmの大きさを有する。ある好ましい実施態様では、マイクロキャリアは、約10nm〜約5μm又は約25nm〜約4.5μm、約1μm、約1.2μm、約1.4μm、約1.5μm、約1.6μm、約1.8μm、約2.0μim、約2.5μm又は約4.5μmの大きさを有する。マイクロキャリアがナノキャリアである場合、好ましい実施態様は、約25〜約300nm、50〜約200nm、約50nm又は約200nmのナノ粒子を含む。
【0201】
固相生分解性マイクロキャリアは、非限定的に生分解性のポリエステル類、例えばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、及びそのコポリマー(ブロックコポリマーを含む)、並びにポリ(乳酸)及びポリ(エチレングリコール)のブロックコポリマー;ポリオルソエステル類、例えば3,9-ジエチリデン-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(DETOSU)に基づくポリマーなど;ポリ無水物、例えばセバシン酸などの比較的親水性のモノマーに基づくポリ(無水物)ポリマーなど;ポリ無水物イミド類、例えばグリシン又はアラニンなどのアミノ酸を取り込むセバシン酸誘導性モノマーに基づく(つまり、アミノ末端窒素を介したイミド結合によりセバシン酸に結合される)ポリ無水物ポリマー;ポリ無水物エステル類;ポリホスファゼン類、特にカルボン酸基の生成を介してポリマー骨格の切断を触媒できる加水分解性エステル基を含むポリ(ホスファゼン類)(Schachtら, (1996) Biotechnol. Bioeng. 1996: 102);及びポリアミド類、例えばポリ(乳酸-コ-リジン)を含む生分解性ポリマーから製造されうる。
【0202】
マイクロキャリアの製造に適した様々な非生分解性の物質が知られており、非限定的に、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、シリカ、セラミック、ポリアクリルアミド、デキストラン、ヒドロキシアパタイト、ラテックス、金、及び強磁性又は常磁性物質を含む。ある実施態様は、金、ラテックス及び/又は磁性ビーズを除外する。ある実施態様では、マイクロキャリアは、第二物質(例えば、ポリスチレン)で封入した第一物質(例えば、磁性物質)から作られてもよい。
【0203】
固相マイクロスフィアは、当該技術分野に知られている技術を用いて製造される。例えば、それらは、乳濁液-溶媒抽出/蒸発技術により調製することができる。一般的に、当該技術において、ポリ無水物、ポリ(アルキル-α-シアノアクリレート類)、及びポリ(α- ヒドロキシエステル類)、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)及びポリ(カプロラクトン)などの生分解性ポリマーは、塩化メチレンなどの適切な有機溶媒中に溶解されて、分散相(DP)の乳濁液を構成した。DPは、溶解したサーファクタント、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)又はポリビニルピロリドン(PVP)を含む過剰体積の水性連続相(CP)中で高速ホモジェナイズすることにより乳化する。CP中のサーファクタントは、分離されそして適切な大きさの乳濁液滴の形成を保証することになる。有機溶媒は次にCP中に抽出され、そしてシステム温度を上昇させることにより蒸発される。固体マイクロ粒子は、次に遠心又はろ過により分離され、そして例えば、凍結乾燥又は吸引を適用することにより乾燥させて、その後4℃で貯蔵する。
【0204】
平均サイズ、サイズ分布、及び乾燥マイクロスフィアの表面電荷などの物理化学的性質を測定することができる。サイズ特性は、例えば動的光散乱技術により測定され、そして表面電荷は、ゼータ電位を計測することにより測定される。
【0205】
液相マイクロキャリアは、リポソーム、ミセル、油滴、及び他の脂質又は油に基づく粒子であって、生分解性ポリマー又は油を取り込むものを含む。ある実施態様では、生分解性のポリマーは、サーファクタントである。他の実施態様では、液相マイクロキャリアは、スクアレン又は植物油などの生分解性油を取り込んでいるため生分解性である。一の好ましい液相マイクロキャリアは、水中油乳濁液の油滴である。好ましくはマイクロキャリアとして使用される水中油乳濁液は、生分解性の物質、例えばスクアレンを含む。
【0206】
共有結合性IRP/MC複合体は、当該技術分野に知られている任意の共有架橋技術を用いて結合されてもよい。典型的に、IRP部分は、当該IRP部分がマイクロキャリアに結合される部位を提供するために、さらなる部分(例えば、遊離アミン、カルボキシル基又はスルフヒドリル基)を取り込むか又は改変されたヌクレオチド塩基(例えばホスホロチオエート)を取り込むように改変されよう。当該複合体のIRP部分とMC部分との間の結合は、IRPの3'又は5'末端でなされるか、又はIRPの内部で適切に改変された塩基においてなされうる。マイクロキャリアは、一般的に、共有結合が形成される部分を取り込むように一般的に改変されるが、マイクロキャリア上に通常存在する官能基が使用されてもよい。IRP/MCは、共有複合体の形成を許容する条件下(例えば、架橋剤の存在下で、又はIRPとの共有結合を形成する活性化部分を含む活性化マイクロキャリアを使用することにより)で、IRPとマイクロキャリアとをインキュベーションすることにより形成される。
【0207】
様々な架橋技術は当該技術分野において知られており、そしてアミノ、カルボキシル、及びスルフヒドリル基と反応する架橋剤を含む。当業者に明らかであるように、架橋剤及び架橋プロトコルの選択は、IRP及びマイクロキャリアの形態、並びにIRP/MC複合体の所望される最終形態に左右されるであろう。架橋剤は、同種二官能性又は異種二官能性のいずれであってもよい。同種二官能性架橋剤が使用される場合、架橋剤はIRP及びMC上の同じ部分を利用する(例えば、アルデヒド架橋剤は、IRP及びMCの両者が1以上の遊離アミンを含む場合IRPとMCを共有結合するために使用されてもよい)。異種二官能性の架橋剤は、IRP及びMC上の異なる部位を利用し(例えば、マレイミド-N-ヒドロキシスクシンイミド・エステルは、IRP上の遊離スルフヒドリル及びMC上の遊離アミンを共有結合するために使用されうる)、そしてマイクロキャリア間の結合の形成を最小限にするため好ましい。多くの場合、マイクロキャリア上の第一架橋部分とIRP上の第二架橋部分とを介して架橋することが好ましい(ここで、第二架橋部分は、マイクロキャリア上に存在することはない)。IRP/MC複合体を生成する1の好ましい方法は、異種二官能性の架橋剤とインキュベーションすることによりマイクロキャリアを活性化し、次に反応に適した条件下でIRPと活性化MCとをインキュベーションすることによりIRP/MC複合体を形成することによる。架橋剤は、反応性部分の間に「スペーサー」部分を含んでもよいし、又は架橋剤中の2個の反応性部分は直接結合されていてもよい。
【0208】
一の好ましい実施態様では、IRP部分は、マイクロキャリアに架橋するために少なくとも1の遊離スルフヒドリル(例えば、5'-チオール改変塩基又はリンカーにより提供される)を含み、一方当該マイクロキャリアは遊離アミン基を含む。これらの2個の基と反応する異種二官能性架橋剤(例えば、マレイミド基及びNHS-エステルを含む架橋剤)、例えばスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレートなどは、MCを活性化するために使用され、次にIRPを共有結合により架橋して、IRP/MC複合体を形成する。
【0209】
非共有結合性IRP/MC複合体は、結合対がIRPとMCを連結する場合と同様に、任意の非共有結合又は相互作用、例えばイオン性(静電)結合、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、又は2以上の異なる相互作用の組合せ、により連結されてもよい。
【0210】
好ましい非共有結合性IRP/MC複合体は、典型的に、疎水性又は静電(イオン性)相互作用、又はその組合せにより複合体形成される(例えば、結合対を利用して、IRPと、MCに結合されたポリヌクレオチドとの間の塩基対を介して形成される)。ポリヌクレオチド骨格の親水性性質のため、複合体を形成するために疎水性相互作用に頼るIRP/MC複合体は、疎水性の高い部分を取り込むために、一般的に当該複合体のIRP部分を改変することを必要とする。好ましくは、疎水性部分は、生体適合性、非免疫原性であり、そして当該組成物の対象とする個体(例えば哺乳動物、特にヒトにおいて見られる)において天然に生ずる。好ましい疎水性部分の例は、脂質、ステロイド、ステロール、例えばコレステロール、及びテルペンを含む。疎水性部分をIRPに結合する方法は、IRPの形態と、疎水性部分の性質に当然左右されるであろう。当該疎水性部分は、IRPにおける任意の都合のよい部位、好ましくは5'又は3'末端で加えられてもよく、コレステロール部分をIRPに加える場合、当該コレステロール部分は、好ましくは、慣用される化学反応を用いてIRPの5'末端に加えられる(例えば、Godardら、(1995) Eur. J. Biochem. 232:404-410を参照のこと)。好ましくは、疎水性結合により結合されるIRP/MC複合体において使用するためのマイクロキャリアは、疎水性物質、例えば油滴又は疎水性ポリマーから作製されるが、疎水性部分を取り込むように改変された親水性物質は、同様に利用されてもよい。マイクロキャリアがリポソームであるか、又はルーメンを含む他の液相マイクロキャリアであり、かつIRPがMCの外面に会合することが所望される場合、IRP/MC複合体は、MC製造過程の間にIRPの封入を避けるために、MCを製造後IRPとMCを混合することによって形成される。
【0211】
静電結合により結合される非共有IRP/MC複合体は、ポリヌクレオチド骨格の高い負電荷を利用する。非共有結合性IRP/MC複合体において使用するマイクロキャリアは、生理的pH(例えば約pH6.8〜7.4)において一般的に正に荷電されている(カチオン性である)。当該マイクロキャリアは本質的に正電荷を有してもよいが、通常正電荷を有していない化合物から作られたマイクロキャリアが誘導体化されるか、又はそうでなければ改変されて正電荷(カチオン性)にされてもよい。例えば、当該マイクロキャリアを製造するために使用されるポリマーは、正に荷電された基、例えば一級アミンなどを加えるように誘導体化されてもよい。或いは、正に荷電された化合物は、製造の間にマイクロキャリアの構築において取り込まれてもよい(例えば、正に荷電されたサーファクタントが、結果として得られるマイクロキャリア粒子に正電荷を与えるために、ポリ(乳酸)/ポリ(グリコール酸)の製造のあいだに使用されてもよい)。
【0212】
例えば、カチオン性マイクロスフィアを製造するために、例えば、1,2-ジオレオイル-1,2,3-トリメチルアンモニオプロパン(DOTAP)、セチルトリメチルアンモニウム・ブロミド(CTAB)、又はポリリジンは、これらの相における溶解度に従ってDP又はCPのいずれかに加えられる。
【0213】
IRP/MC複合体は、好ましくは水性混合物中でポリヌクレオチドと粒子をインキュベーションすることによりカチオン性マイクロスフィア上に吸着させることにより前もって形成することができる。かかるインキュベーションは、任意の所望される条件下、例えば室温又は冷蔵庫の温度(例えば4℃)で行われてもよい。カチオン性のマイクロスフィアとポリヌクレオチドとは比較的迅速に会合するので、インキュベーションは、5、10、15分又はそれ以上、例えば一晩及びそれより長いインキュベーションのいずれであってもよい。例えば、IRPは、ポリヌクレオチドと粒子とを一晩4℃にて水中でインキュベーションすることにより、カチオン性マイクロスフィア上に吸着することができる。しかしながら、カチオン性マイクロスフィア及びポリヌクレオチドが同時に会合するので、IRP/MC複合体は、ポリヌクレオチド及びMCを単純に共投与することにより形成することができる。マイクロスフィアは、ポリヌクレオチド会合の前において及び後において大きさ及び表面電荷について特徴付けられてもよい。選択されたバッチは、例えばヒト末梢血単核細胞(PBMC)及びマウス脾臓細胞アッセイにおいて、適切な対照に対する活性について評価してもよい。当該製剤は、適切な動物モデルにおいて評価されることもある。
【0214】
ヌクレオチド塩基対により結合される非共有結合性IRP/MC複合体は、慣用される方法論を用いて製造されてもよい。一般的に、塩基対結合性IRP/MC複合体は、IRPに少なくとも部分的に相補するポリヌクレオチド(「捕捉ポリヌクレオチド」)が結合された(好ましくは共有結合された)マイクロキャリアを用いて製造される。IRPと捕捉ヌクレオチドとの間の相補性断片は、好ましくは少なくとも6、8、10、又は15の連続塩基対であり、より好ましくは少なくとも20の連続する塩基対である。捕捉ヌクレオチドは、当該技術分野において知られている任意の方法によりMCに結合されてもよく、そして好ましくは5'又は3'末端においてIRPに共有結合される。幾つかの実施態様では、5'-GGGG-3'配列を含むIRPは、この配列の当該部分を一本鎖のまま維持するであろう。
【0215】
別の実施態様では、結合対は、IRP/MC複合体においてIRPとMCとを連結するために使用されてもよい。当該結合対は、受容体及びリガンドであってもよく、抗体及び抗原(又はエピトープ)でもよく、又は高い親和性で(例えば約10〜8より小さいKd)で結合する他の任意の結合対であってもよい。好ましい結合対の一のタイプは、ビオチンとストレプトアビジン、又はビオチンとアビジンであり、これらはかなり強固な複合体を形成する。IRP/MC複合体結合を媒介するために結合対を使用する場合、IRPは典型的に共有結合により、当該結合対の一のメンバーで誘導体化され、そしてMCは結合対のもう一方のメンバーで誘導体化される。2個の誘導体化された化合物がIRP/MC複合体形成をもたらす。
【0216】
本発明の方法
本発明は、個体、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおいて免疫応答を調節する方法であって、当該個体に本明細書に記載されるIRS含有ポリヌクレオチドを投与することを含む、前記方法を提供する。本発明により提供される免疫調節方法は、非限定的に、免疫刺激性核酸分子、例えば細菌DNAにより刺激される免疫応答を抑制及び/又は阻害する方法を含む。本発明はまた、TLR7/8及び/又はTLR9誘導性の細胞応答を阻害する方法を提供する。本発明は、非限定的に自己免疫に関連する症候を含む、不所望の免疫活性に付随する症候を改善するための方法を提供する。
【0217】
IRS含有ポリヌクレオチドは、免疫応答を調節するために十分な量で投与される。本明細書に記載されるように、免疫応答の調節は、液性及び/又は細胞性であってもよく、そして本明細書に記載されるように、当該技術分野において標準技術を用いて計測される。
【0218】
ある実施態様では、当該個体は、不所望な免疫活性化に関連する障害、例えばアレルギー性疾患又は病気、アレルギー及び喘息を患う。アレルギー性疾患又は喘息を有する個体は、現存するアレルギー疾患又は喘息の目立った症状を患う個体である。
【0219】
ある実施態様では、個体は、不所望の免疫活性化に関連する障害、例えば自己免疫疾患及び炎症性疾患を患う。自己免疫疾患又は炎症性疾患を患う個体は、現存する自己免疫疾患又は炎症性疾患の目立った症状を患う個体である。
【0220】
自己免疫疾患は、2個の広いカテゴリー:器官特異的及び全身性に分けることができる。自己免疫疾患は、非限定的に、リューマチ様関節炎(RA)、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、II型糖尿病、多発性硬化症 (MS)、早発閉経などの免疫関連不妊症、強皮症、シュ-グレン疾患、白斑、脱毛症(禿)、多内分泌腺機能低下、グレーブス病、甲状腺機能低下症、多発性筋炎、尋常性天疱瘡、落葉天疱瘡、炎症性腸疾患、例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎、B型肝炎ウイルス(HBV)及びC型肝炎ウイルス(HCV)に関連する自己免疫肝炎、下垂体機能不全、移植片-対-宿主疾患(GvHD)、心筋炎、アジソン病、自己免疫皮膚疾患、ブドウ膜炎、悪性貧血、及び副甲状腺機能低下症を含む。
【0221】
自己免疫疾患は、非限定的に、橋本甲状腺炎、I型及びII型自己免疫多内分泌腺症候群、腫瘍随伴性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、線状IgA疾患、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、妊娠性類天疱瘡、瘢痕性類天疱瘡、本態性混合クリオグロブリン血症、小児性慢性水疱性疾患、溶血性貧血、血小板減少性紫斑病、グッドパスチャー症候群、自己免疫性好中球減少、重症筋無力症、イートン・ランバート筋無力症症候群、スティフマン症候群、急性播種性脳脊髄炎、ギラン-バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、伝導遅延を伴う多巣性運動ニューロパチー、モノクローナル免疫グロブリン血症を伴う慢性ニューロパチー、オプソノクローヌス-筋クローヌス症候群(opsonoclonus-myoclonus syndrome)、小脳変性症、脳脊髄炎、網膜症、原発性胆汁性肝硬変、硬化性胆管炎、グルテン感受性腸疾患、強直性脊椎炎、反応性関節炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、混合性結合組織病、ベーチェット症候群、乾癬、結節性多発性動脈炎、アレルギー性血管炎、及び肉芽腫症(チャーグ・ストラウス疾患)、多発性血管炎オーバーラップ症候群、過敏性血管炎、ウェーゲナー肉芽腫症、側頭動脈炎、タカヤス動脈炎、川崎病、中枢神経系の孤在性血管炎、閉塞性血栓血管炎、サルコイドーシス、糸球体腎炎、及び寒冷症を含んでもよい。これらの病気は医学分野において周知であり、そして例えば、「Harrison's Principles of Internal Medicine」、第14版、Fauci A Sら編、New York: McGraw-Hill, 1998を参照のこと。
【0222】
全身性疾患SLEは、ほぼ全ての細胞に豊富に存在する抗原に対する抗体、例えば抗クロマチン抗体、抗スプライソソーム抗体、抗リボソーム抗体、及び抗-DNA抗体の存在により特徴付けられる。結果として、SLEの影響は、様々な組織、例えば皮膚及び腎臓において見られる。自己反応性T細胞はSLEに関与する。例えば、マウス・ループス・モデルにおける研究により、非DNAヌクレオソーム抗原、例えばヒストンが、自己反応性T細胞であって、抗DNA産生B細胞を働かせることができるT細胞を刺激することが示された。IFN-αの血清レベルの増加がSLE患者において観察され、そして熱及び皮膚発疹を含む疾患活性及び重篤度の両方に、並びに疾患プロセスに関連する必須マーカー(例えば、抗dsDNA抗体タイター)に相関することが示された。循環系において存在する免疫複合体が、患者のIFN-αを引き起こすことができ、そうして増加したIFN-αの慢性的な存在を維持することが示された。免疫複合体の2の異なるタイプ:DNA/抗DNA抗体複合体、及びRNA/抗リボヌクレオタンパク質-RNA抗体複合体が、ヒトPDCからIFN-αを誘発することが記載された。DNAがTLR-9のリガンドであり、そしてRNAがTLR-7/8のリガンドであるので、これら二つの経路がTLR-9及びTLR-7/8シグナル伝達をそれぞれ利用し、その結果IFN-αを慢性的に誘導し、そうしてSLEの病因に関与するということが予期される。従って、TLR-7/8及びTLR-9応答を阻害するのに効果的であるIRP及び/又はIRC組成物は、SLEを治療するのに特に有効であろう。
【0223】
ある実施態様では、個体は自己免疫疾患を発達させるリスクを有し、そしてIRP又はIRCが、当該自己免疫疾患を遅延又は予防するために有効な量で投与される。自己免疫疾患を発達させるリスクを有する個体は、例えば、自己免疫疾患を発達させる遺伝性の又は他の素因を有する個体を含む。ヒトにおいて、特定の自己免疫疾患への感受性は、HLA型に関連し、あるものは特定のMHCクラスIIアレルと強く関連し、そして他のものはMHCクラスIアレルに関連する。例えば、強直性脊椎炎、急性前部ブドウ膜炎、及び若年性リューマチ様関節炎はHLA-B27と関連し、グッドパスチャー症候群及びMSはHLA-DR2と関連し、グレーブス疾患、重症筋無力症及びSLEはHLA-DR3と関連し、リューマチ様関節炎及び尋常性天疱瘡はHLA-DR4と関連し、そして橋本甲状腺炎はHLA-DR5と関連する。自己免疫疾患に対する他の遺伝的素因は、当該技術分野に知られており、そして個体は、当該技術分野に知られているアッセイ及び方法によりかかる素因の存在について試験することができる。従って、幾つかの場合では、自己免疫疾患を発達させるリスクを有する個体を同定することができる。
【0224】
本明細書に記載されるように、本発明のIRPは、特にサイトカイン、例えば非限定的に、IL-6、IL-12、TNF-α、及び/又はIFN-αの産生を特に阻害し、そしてB細胞増殖及び/又は形質細胞様樹状細胞の分化の活性化を抑制してもよい。従って、本発明のIRP及びIRCは、個体において免疫刺激核酸に応答した免疫を抑制するのに特に有効である。
【0225】
自己免疫疾患を研究するための動物モデルが当該技術分野に知られている。例えば、ヒト自己免疫疾患に最も似ているようである動物モデルは、高発生率の特定疾患を自然に発達させる動物種を含む。かかるモデルの例は、非限定的に、I型糖尿病に似た疾患を発達させる非肥満糖尿病(NOD)マウスを含み、そしてニュージーランド・ハイブリッド、MRL-Faslpr及びBXSBマウスなどのループス様疾患を引き起こす傾向を有する動物を含む。自己免疫疾患が誘導される動物モデルは、非限定的に、多発性硬化症のモデルである実験自己免疫脳脊髄炎(EAE)、リューマチ様関節炎のモデルであるコラーゲン誘導性関節炎(CIA)、及びブドウ膜炎のモデルである実験自己免疫ブドウ膜炎(EAU)を含む。自己免疫疾患の動物モデルは、遺伝子操作により作製され、そして例えば炎症性腸疾患についてはIL-2/IL-10ノックアウトマウス、SLEについてはFas又はFasリガンドのノックアウトマウス、及びリューマチ様関節炎についてはIL-1受容体アンタゴニストノックアウトマウスを含む。
【0226】
従って、当該技術分野において標準的である動物モデルは、自己免疫障害の治療について本発明の方法及び組成物の活性及び/又は有効性をスクリーニング及び/又は評価するのに適している。
【0227】
ある実施態様では、個体は、慢性炎症性応答に関連する障害を患う。IRPの投与は、免疫調節、つまり、炎症応答の低下をもたらしうる1以上の先天性免疫応答関連サイトカインのレベルの低下をもたらす。不所望な免疫応答に関連する記載された障害を患う個体の免疫調節は、当該障害の1以上の症状の低減又は改善をもたらす。
【0228】
本発明の他の実施態様は、ウイルスに晒されたか又は感染した個体の免疫調節治療に関する。ウイルスに晒されるか又は感染した個体へのIRP又はIRCの投与は、ウイルス誘導性のサイトカイン産生の抑制をもたらす。ウイルスに応答して産生されたサイトカインは、ウイルス感染に適した環境を助長しうる。ウイルス誘導性のサイトカイン産生の抑制は、ウイルス感染を制限するか又は予防するように働くこともある。
【0229】
ある実施態様では、個体は、慢性病原体刺激、例えば慢性ウイルス感染及びマラリアに関連する病原体刺激に関連する疾患又は障害を患う。TLR-7/8応答を阻害するのに有効であるIRP及び/又はIRC組成物は、慢性病原体刺激に関連する疾患及び症状を治療するのに特に効果的であろう。
【0230】
本発明の方法は、当該障害の標準的なケアをなす他の治療、例えば全身性コルチコステロイド治療(コルチソン)などと組み合わせて実施されてもよい。
【0231】
幾つかの状況では、自己抗原に対する末梢寛容は、失われる(か又は破壊され)、そして結果として自己免疫応答が生じる。例えば、EAEに対する動物モデルにおいて、先天性免疫受容体TLR9又はTLR4を介した抗原提示細胞(APC)の活性化は、自己寛容性を破壊し、そしてEAEの誘導をもたらすことが示された(Waldnerら、(2004) J. Clin. Invest. 113:990-997)。
【0232】
従って、幾つかの実施態様では、本発明は、TLR9依存性の細胞刺激を抑制又は低減する方法を提供する。IRPの投与は、TLR9依存性の細胞応答の抑制をもたらし、1以上のTLR9関連サイトカインのレベルの低下を含む。TLR9依存性細胞刺激の抑制において使用するのに適したIRPは、TLR9と関連する細胞応答を阻害又は抑制するIRPである。
【0233】
幾つかの実施態様では、本発明は、TLR7/8依存性の細胞刺激を抑制又は低減するための方法を提供する。IRPの投与は、1以上のTLR7/8関連サイトカイン・レベルの低下を含むTLR7/8依存性細胞応答の抑制をもたらす。TLR7/8依存性細胞刺激の抑制において使用するために適したIRPは、TLR7/8に関連する細胞応答を阻害又は抑制するIRPである。
【0234】
本明細書に記載されるように、幾つかのIRPは、TLR9依存性細胞応答及びTLR7/8依存性細胞応答の両方を抑制する。幾つかのIRPは、TLR9依存性細胞応答を抑制するが、TLR7/8依存性細胞応答を抑制しない。幾つかのIRPはTLR7/8依存性細胞応答を抑制するが、TLR9依存性細胞応答を抑制しない。従って特定のIRPは、特定の免疫応答を制御するために投与することができる。
【0235】
投与及び免疫応答の評価
IRP又はIRCは、本明細書に記載されるように他の医薬品と組み合わせて投与することができ、そして生理的に許容されるその担体と組み合わせることができる(及びその様なものとして本発明はこれらの組成物を含む)。IRP又はIRCは、本明細書に記載されるもののいずれであってもよい。
【0236】
免疫応答の調節用の全ての組成物と同様に、特定のIRP又はIRC製剤の投与の有効量及び方法は、個体、どの病気が治療されるのか、及び当業者に明らかである他の因子に基づいて変えられてもよい。考慮される因子は、IRP又はIRCがデリバリー分子と共に又はデリバリー分子と共有結合させて投与されるか否か、投与経路、及び投与される用量の回数を含む。このような因子は、当該技術分野に知られており、そして必要以上の実験をすることなくかかる決定をすることは、当業者の技術の範囲内である。適切な用量範囲は、所望される免疫応答の調節(例えば、免疫刺激核酸に応答するIFN-α又は他のサイトカイン産生の抑制)を提供する範囲である。免疫刺激核酸に対する免疫応答の抑制が所望される場合、適切な用量範囲は、免疫刺激核酸による所望された免疫刺激を提供する範囲である。一般的に、用量は、投与されるIRP含有組成物の全体量よりはむしろ、患者に投与されるIRPの量により決定される。デリバリーされるIRPの量で与えられるIRPの有用な用量範囲は、例えば以下の:0.5〜10mg/kg、1〜9mg/kg、2〜8mg/kg、3〜7mg/kg、4〜6mg/kg、5mg/kg、1〜10mg/kg、5〜10mg/kgのいずれかから選ばれてもよい。各患者に与えられる絶対量は、生物学的利用能、クリアランス率、及び投与経路などの薬理学的特性に左右される。
【0237】
特定のIRP又はIRC製剤の投与の有効量及び方法は、個々の患者、所望される結果及び/又は障害のタイプ、疾患ステージ、及び当業者に明らかな他の因子に基づいて変わりうる。特定の適用において有用な投与経路は、当業者に明らかである。投与経路は、非限定的に、局所、皮内、経皮、経粘膜、表皮、非経口、胃腸管、及び鼻咽頭及び肺、例えば経気管支及び経肺胞(transalveolar)を含む。適切な用量範囲は、血中レベルにより計測したとき約1〜50μMの組織濃度を達成するために、十分なIRP含有組成物を提供する範囲である。各患者に与えられる絶対量は、生物学的利用能、クリアランス率、及び投与経路などの薬理学的特性に左右される。
【0238】
本明細書に記載されるとき、不所望の免疫活性化が生じているか、又は生じそうである組織は、IRP又はIRCの好ましい標的である。こうして、リンパ節、脾臓、骨髄、血液、並びにウイルスに晒された組織へのIRP又はIRCの投与は、投与の好ましい部位である。
【0239】
本発明は、非限定的に、生理学的に許容されるインプラント、軟膏、クリーム、リンス、及びゲルを含む局所適用に適したIRP又はIRC製剤を提供する。代表的な皮膚投与の経路は、侵襲性が少ない経路、例えば経皮透過、上皮投与、及び皮下注射などである。
【0240】
経皮投与は、IRP又はIRCが皮膚に浸透し、そして血流に入ることを許容できるクリーム、リンス、ゲルなどを適用することにより達成される。経皮投与に適した組成物は、非限定的に、医薬として許容される懸濁液、オイル、クリーム、及び軟膏であって、皮膚に直接適用されるか、又は経皮装置(いわゆる「パッチ」)などの保護担体中に取り込まれるものを含む。適切なクリーム、軟膏などの例は、例えば、医師用卓上参考書において見つけることができる。経皮透過は、イオントフォレシスにより、例えば数日またはそれより長い期間のあいだ無傷の皮膚を介して連続的に生成物をデリバリーする市販のパッチを使用して達成されてもよい。当該方法の使用は、比較的高い濃度での医薬組成物の制御透過を許容し、組合せ薬の導入を許容し、そして吸収促進剤を同時に使用することを許容する。
【0241】
非経口投与経路は、非限定的に、中心静脈ラインへの直接注射、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、又は皮下注射を含む。非経口投与に適したIRP又はIRC製剤は、一般的に注射のためにUSP水又は水中に剤形され、そしてさらにpH緩衝液、塩充填剤、保存剤、及び他の医薬として許容される賦形剤を含む。非経口注射用の免疫調節ポリヌクレオチドは、注射液用の医薬として許容される滅菌等張溶液、例えば生理食塩水及びリン酸緩衝生理食塩水中に剤形されてもよい。
【0242】
胃腸管投与経路は、非限定的に、経口摂取及び直腸経路を含み、そして例えば、経口摂取用の医薬として許容される粉末、ピル、又は液体、及び直腸投与用の座剤の使用を含むことができる。
【0243】
鼻咽頭及び肺投与は、吸入により達成され、そして鼻腔内、経気管支、及び経肺胞経路などのデリバリー経路を含む。本発明は、乾燥粉末吸入デリバリーシステム用に、非限定的にエアロゾル並びに粉末形態を形成するための液体懸濁液を含む、吸入による投与に適したIRP又はIRCの製剤を含む。IRP又はIRC製剤の吸入による投与に適した装置は、非限定的に、アトマイザー、バポライザー、ネブライザー、及び乾燥粉末吸入デリバリー装置を含む。
【0244】
当該技術分野に周知であるように、本明細書に記載される投与経路に使用される溶液又は懸濁液は、以下の成分:注射用の水、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレン・グリコール、又は他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又は メチルパラベンなどの抗菌物質;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化物質;エチレンジアミンテトラ酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩などの緩衝剤、並びに塩化ナトリウム又はデキストロースなどの等張調節剤のうちのいずれか1以上を含むことができる。pHは酸又は塩基、例えば塩酸又は水酸化ナトリウムで調節することができる。非経口製剤は、アンプル、使い捨てシリンジ、又はガラス若しくはプラスチック製の多用量バイアル中に封入されてもよい。
【0245】
当業者に周知であるように、注射用途に適した医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び滅菌注射水溶液又は分散液の即席調製用の滅菌粉末を含む。静脈内投与では、適切な担体は、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, NJ)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。全ての場合、当該組成物は、滅菌性でなければならず、そして容易にシリンジに充填できる程度に流動性であるべきである。製造及び貯蔵条件下で安定であるべきであり、そして細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレン・グリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びその適切な混合物を含む溶媒又は分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被膜を使用することにより、分散の場合において必要とされる粒子サイズを維持することにより、そしてサーファクタントを用いることにより維持することができる。微生物活動の予防は、様々な抗細菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成することができる。等張剤、例えば、糖、ポリアルコール類、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましいこともある。注射用組成物の長期間の吸収は、組成物内に吸収を遅延する物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることによりもたらすことができる。
【0246】
当該技術分野において周知であるように、滅菌注射溶液は、上で記載された成分の1つ又は組合せた適切な溶媒中において必要とされる量の活性化合物を取り込み、必要に応じてろ過滅菌することにより製造することができる。一般的に、分散は、塩基性分散媒及び上で記載されたものからの必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクル中に活性化合物を取り込むことにより調製される。滅菌注射溶液の製造のための滅菌粉末の場合、好ましい製法は、前もって滅菌ろ過された溶液から活性成分の粉末及び所望の追加成分をもたらす吸引乾燥及び凍結乾燥である。
【0247】
上記組成物及び投与方法は、非限定的に本発明のIRP及びIRCの製剤を投与する方法を記載することを意味する。様々な組成物及び装置を製造する方法は、当業者の能力の範囲内であり、そして本明細書において詳細に記載しない。
【0248】
免疫刺激の抑制におけるIRP又はIRCの活性の分析(定量的及び定性的の両方)は、本明細書に記載される任意の方法によるものであり、例えば非限定的に、B細胞などの特定の細胞集合の増殖の抑制又は低下を計測すること、樹状細胞(形質細胞様樹状細胞)及びT細胞などの特定の細胞集合の成熟の抑制を計測すること、並びに非限定的にIFN-α、TNF-α、IL-6、及び/又はIL-12などのサイトカインの生成の抑制を計測することを含む。特定の細胞型の数を計測することは、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いて達成することができる。細胞の特定集合の成熟を計測することは、細胞成熟の特定のステージに特異的なマーカー、例えば、細胞表面マーカー、計測することにより達成することができる。細胞マーカーの発現は、例えば、RNA発現を計測すること、又はFACS分析により特定のマーカーの細胞表面発現を計測することにより計測することができる。樹状細胞の成熟を計測することは、例えば、Hartmannら、(1999) Proc. Natl. Acad. Sci USA 96:9305-9310に記載されるように実行することができる。サイトカイン濃度は、例えば、ELISAにより計測することができる。先天性免疫応答を含む免疫応答の抑制を評価するためのこれらの及び他のアッセイは当該技術分野に知られている。
【0249】
本発明のキット
本発明はキットを提供する。ある実施態様では、本発明のキットは、一般的に本明細書に記載される任意のIRP及び/又はIRCを含む1以上の容器を含む。当該キットは、さらに、本明細書に記載される方法のいずれか(例えば、免疫刺激核酸に応答する抑制、TLR-7/8及び/又はTLR-9依存性応答の抑制、自己免疫疾患の1以上の症状の改善、慢性炎症性疾患の症状の改善、ウイルスに応答したサイトカイン産生の低下)についてIRP及び/又はIRCを使用することに関する適切な使用説明のセット、一般的に書面の使用説明書を含む。
【0250】
当該キットは、任意の都合のよい適切なパッケージング中にパッケージされたIRP及び/又はIRCを含んでもよい。例えば、IRP又はIRCが乾燥製剤である場合(例えば凍結乾燥又は乾燥粉末)、弾力性のある栓を通して液体を注入することにより容易に再懸濁されるように、弾力性のある栓を備えるバイアルが通常使用される。弾力性のない取り外し可能な蓋(例えば密封ガラス)又は弾力性のある栓を備えるアンプルは、IRP又はIRCの液体製剤に通常多く使用される。特定の装置、例えば吸入器、鼻腔内投与装置(例えばアトマイザー)、シリンジ又は輸液装置、例えばミニポンプなどと組み合わせて使用するためのパッケージが考慮される。
【0251】
IRP及び/又はIRCの使用に関する使用説明は、一般的に、意図された使用方法についての用量、投与スケジュール、及び投与経路についての情報を含む。IRP又はIRCの容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば多用量パッケージ)、又は単位用量未満であってもよい。本発明のキットにおいて与えられた使用説明は、典型的にラベル又はパッケージ内容物に記載された使用説明であるが(例えば、キット中に含まれた紙面)、機械により読み込み可能な使用説明(例えば磁気又は光学保存ディスク)も許容される。
【0252】
幾つかの実施態様では、本発明のキットは、投与用の複合体としてIRP及び/又はIRCを生成させるための物質、例えば封入物質、マイクロキャリア複合体物質などを含む。一般的に、当該キットは、IRP又はIRC及び複合体物質の分離された容器を含む。IRP又はIRC及び複合体は、好ましくは提供されたIRP又はIRCと複合体物質とを混合して、IRP又はIRC-複合体の形成を許容する形態で供給される。当該形態は、IRP又はIRC-複合体が非共有結合により結合される場合に好ましい。当該形態は、IRP又はIRC複合体が異種二官能性架橋剤を介して架橋されるか;或いはIRP/IRC又は複合体のいずれかが「活性化」形態で提供される場合に(例えば、IRP/IRCと反応性の部分が利用できるように、異種二官能性架橋剤に結合される場合に)好ましい。
【0253】
以下の例は、非限定的に本発明を説明するために提供される。
【実施例】
【0254】
実施例1:IRS含有ポリヌクレオチドによる細胞の先天性免疫応答の調節
免疫調節ポリヌクレオチド(IRP)(つまり、少なくとも1のIRSを含むポリヌクレオチド)又は対照サンプルを、ヒト及びマウス細胞において先天性免疫応答の免疫調節(IR)活性についてアッセイした。IR活性を、サイトカイン応答、細胞成熟、及び細胞増殖を含む先天性免疫応答の幾つかの指標を測定することによりアッセイした。他に記載がない限り、試験されたポリヌクレオチドは、完全に改変されたホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドであった。
【0255】
免疫刺激核酸(ISNA)を細胞培養に加えることにより、被験細胞において先天性免疫応答を刺激した。IRP又は対照サンプルを次に細胞培養に加えた。細胞をインキュベーションした後に、培養培地中の特定のサイトカインのレベルについて、細胞成熟及び/又は細胞増殖の状態について細胞培地及び/又は細胞を試験した。
【0256】
マウス脾臓細胞を96ウェルプレートのウェルに分注した(7×107細胞/ml)。配列番号119(1018)又は配列番号99(C274)などのISNAを細胞に0.7μMの濃度で加え、そしてIRP試験サンプル又は対照サンプルを細胞に加えた。細胞をさらに48時間インキュベーションした。各ウェルから培地を回収し、そしてIL-6及びIL-12サイトカイン濃度について、免役アッセイELISAを用いて試験した。ELISAを実行するために、我々は、抗IL-6抗体(カタログ番号554400及び554402、Pharmingen, SanDiego, CA)及び抗-IL-12抗体(カタログ番号551219及び554476、Pharmingen, SanDiego)を使用し、そして製造者により推奨されるプロトコルを用いた。1.4μM、0.7μM、0.14μM、及び0.07μM、又は2:1、1:1、1:5、及び1:10の比のIRP:ISNAを含む様々な濃度で試験した。他の比を、実験デザインに依存して試験した。対照サンプルは、ISNAのみ、IRPのみ、培地のみ、及びISNA又はIRSのいずれも含まない対照オリゴヌクレオチド配列番号75(C532)を含んだ。
【0257】
IRPは、ISNA刺激マウス脾臓細胞及びCD11c+細胞からのIL-6及びIL-12の分泌を阻害した。マウス細胞についてのかかるアッセイからえた結果の例を、図1A〜1Bに示す。図1Aは、ISNA配列番号 (1018)単独で、様々な量の異なる二種のIRP(配列番号92(530)及び配列番号17(C869))と共にISNA配列番号 (1018)で、並びに対照配列(配列番号90(C532))で刺激された脾臓細胞の結果を示す。図1B は、ISNA配列番号 :5'-TCG TCG AAC GTT CGA GAT GAT-3'(C274)単独で、及び異なる2種のIRP(配列番号92(530)及び配列番号17(C869))と共にISNA配列番号: (C274)で、並びに対照配列(配列番号90(C532))で刺激されたCD11c+細胞の結果を示す。図1A及び1Bで示唆されるように、IRPのいずれかの存在が、ISNAに応答して細胞により産生されるIL-6及びIL-12の量の低下をもたらす。IRPによるサイトカイン産生の阻害は、IRPの用量に応答した。
【0258】
IRPは、ISNA刺激マウス脾臓細胞及びCD11c+細胞からのIL-6及びIL-12の分泌を阻害した。マウス細胞についてのかかるアッセイからえた結果の例を、図1A〜1Bに示す。図1Aは、ISNA配列番号75(1018)単独で、様々な量の異なる二種のIRP(配列番号92(530)及び配列番号17(C869))と共にISNA配列番号75(1018)で、並びに対照配列(配列番号76(C532))で刺激された脾臓細胞の結果を示す。図1Bは、ISNA配列番号 :5'-TCG TCG AAC GTT CGA GAT GAT-3'(C274)単独で、及び異なる2種のIRP(配列番号92(530)及び配列番号17(C869))と共にISNA配列番号: (C274)で、並びに対照配列(配列番号76(C532))で刺激されたCD11c+細胞の結果を示す。図1A及び1Bで示唆されるように、IRPのいずれかの存在が、ISNAに応答して細胞により産生されるIL-6及びIL-12の量の低下をもたらす。IRPによるサイトカイン産生の阻害は、IRPの用量に応答した。
【0259】
Marshallら (2003) J. Leukoc Biol. 73:781 -92に記載される方法を用いて、ヒトB細胞及びヒトPDCを単離した。ヒトB細胞を分散させ、インキュベーションし、そして各ウェルから培地を回収し、 そしてMarshallら、(2003)に記載されるようにELISAによりIL-6サイトカイン濃度について試験した。IRP(配列番号92(530) 及び配列番号17(869))を、2.8μM、0.7μM、及び0.175μMを含む様々な濃度で、又は4:1、1:1、及び1:4のIRP:ISNAの 比で試験した。対照サンプルは、ISNA(配列番号 (1018))、IRP(配列番号92(530)及び配列番号17(869))のみ、培地のみ、及びISNA又はIRSのどちらも含まない対照オリゴヌクレオチド(配列番号90(532))を含んだ。
【0260】
Marshallら (2003) J. Leukoc Biol. 73:781 -92に記載される方法を用いて、ヒトB細胞及びヒトPDCを単離した。ヒトB細胞を分散させ、インキュベーションし、そして各ウェルから培地を回収し、そしてMarshallら、(2003)に記載されるようにELISAによりIL-6サイトカイン濃度について試験した。IRP(配列番号92(530)及び配列番号17(869))を、2.8μM、0.7μM、及び0.175μMを含む様々な濃度で、又は4:1、1:1、及び1:4のIRP:ISNAの比で試験した。対照サンプルは、ISNA(配列番号75(1018))、IRP(配列番号92(530)及び配列番号17(869))のみ、培地のみ、及びISNA又はIRSのどちらも含まない対照オリゴヌクレオチド(配列番号76(532))を含んだ。
【0261】
IRPのin vivo活性をマウスで試験した。1群のマウス(1群あたり5匹)を各々25μgのISNA(配列番号 (1018))単独で、又は75μg、 25μg、又は8.5μgの対照オリゴヌクレオチド若しくはIRP配列番号17(C869)と組み合わせて皮下注射した。3:1、1:1、及び1:3の IRP:ISNA比を動物に共投与した。他の対照群に生理食塩水、対照オリゴヌクレオチド単独、又はIRP配列番号17(C869)単独を注射した。核酸 の注射後2時間で血清を回収し、そしてIL-6、IL-12、及びTNF-αの血清レベルを、以前にIL-6及びIL-12について記載されたようにイム ノアッセイを用いて、そしてマウス抗TNF-α Quantikine(R&D System, Inc., Minneapolis, MN)を用いて測定した。これらのアッセイの結果を図3〜5に示した。ISNAと共にIRPを投与することは、ISNAのみを受けた動物の血清中のサイトカイン量に比較して低減された血清中の各サイトカインの量をもたらした。
【0262】
IRPのin vivo活性をマウスで試験した。1群のマウス(1群あたり5匹)を各々25μgのISNA(配列番号75(1018))単独で、又は75μg、25μg、又は8.5μgの対照オリゴヌクレオチド若しくはIRP配列番号17(C869)と組み合わせて皮下注射した。3:1、1:1、及び1:3のIRP:ISNA比を動物に共投与した。他の対照群に生理食塩水、対照オリゴヌクレオチド単独、又はIRP配列番号17(C869)単独を注射した。核酸の注射後2時間で血清を回収し、そしてIL-6、IL-12、及びTNF-αの血清レベルを、以前にIL-6及びIL-12について記載されたようにイムノアッセイを用いて、そしてマウス抗TNF-α Quantikine(R&D System, Inc., Minneapolis, MN)を用いて測定した。これらのアッセイの結果を図3〜5に示した。ISNAと共にIRPを投与することは、ISNAのみを受けた動物の血清中のサイトカイン量に比較して低減された血清中の各サイトカインの量をもたらした。
【0263】
IRP及びISNAが動物に異なる部位で投与された場合のIRPのin vivo活性を試験した。当該実験において、25μgのISNA(配列番号 (1018))を単独で、又は25μgのIRP(配列番号 17(C869))と組み合わせて皮下注射したマウスの群(1群あたり5匹)において、サイトカイン応答を比較した。ISNAが全ての動物において皮下注 射された一方、IRPはISNAと同じ側の脇腹に皮下(SC1)、ISNAとは反対の脇腹に皮下(SC2)、腹腔内(IP)、静脈内(IV)、筋肉内 (IM)、又は鼻腔内(IN)注射した。対照群に生理食塩水、IRP(配列番号17(C869))を単独で、又はISNA(配列番号 (1018))と 共に対照オリゴヌクレオチドを同じ脇腹に皮下注射した。
【0264】
IRP及びISNAが動物に異なる部位で投与された場合のIRPのin vivo活性を試験した。当該実験において、25μgのISNA(配列番号75(1018))を単独で、又は25μgのIRP(配列番号17(C869))と組み合わせて皮下注射したマウスの群(1群あたり5匹)において、サイトカイン応答を比較した。ISNAが全ての動物において皮下注射された一方、IRPはISNAと同じ側の脇腹に皮下(SC1)、ISNAとは反対の脇腹に皮下(SC2)、腹腔内(IP)、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、又は鼻腔内(IN)注射した。対照群に生理食塩水、IRP(配列番号17(C869))を単独で、又はISNA(配列番号75(1018))と共に対照オリゴヌクレオチドを同じ脇腹に皮下注射した。
【0265】
核酸の注射の2時間後に血清を回収し、そしてIL-6及びIL-12の血清中のレベルを測定した。図6に示されるように、試験された全ての部位(つまり、SC1、SC2、IP、IV、IM、及びIN)でIRPの投与は、ISNAに応答して産生されたIL-6の量の明らかな抑制をもたらした。図7に示されるように、試験された全ての部位でIRPの投与は、ISNAに応答した血清IL-12の量の抑制をもたらした。
【0266】
in vitro及びin vivoで行われたアッセイにより、IRPがISNAの刺激活性を抑制するために、IRP及びISNAが同じ時間に同じ部位に共投与される必要がないということが示された。
【0267】
実施例2:IRP活性及びTLR-依存性細胞応答
本明細書に記載されるように、IRPは、TLR-9シグナル伝達に関連する活性又は応答を阻害する。IRP活性並びにTLR-9及び他のTLRに関連する活性又は応答をさらに調査するために、実験を行った。
【0268】
I型単純ヘルペス(HSV-1)に感染させたマウス脾臓細胞及びヒトPBMC及びPDCは、IFN-αを産生することにより応答し、そして当該応答はTLR-9シグナル伝達に依存する。インフルエンザウイルス(PR/8株)で感染したマウス脾臓細胞及びヒトPBMC及びPDCは、IFN-αを産生することにより応答するが、当該応答はTLR-7/8シグナル伝達によって生じ、そしてTLR-9には依存しない。感染細胞により産生される先天性免疫応答サイトカインについてのIRPの効果が試験された。
【0269】
上で記載されたように製造したマウスCD11+脾臓細胞に、様々な量のHSV-1を感染させた。免疫アッセイ(PBL Biomedical Laboratories, Piscataway, NJ)により計測されるIFN-αの量及び当該細胞により産生されるIL-12の量を計測し、そして感染について使用されたウイルス量と比較した。図8A-8Bは、感染に用いられたHSV-1の量(感染多重度、MOI)に応答したIFN-α及びIL-12の産生の例を記載する。10MOIのHSV-1で感染された細胞は、明らかにIFN-α及びIL-12bの両方を産生した。
【0270】
次にマウスCD11+脾臓細胞に、様々な量のIRP配列番号17(C869)(7、3.5、又は1.75μM)又は対照オリゴヌクレオチドの存在下で10MOIのHSV-1を感染させ、そして産生されたIFN-α及びIL-12の量を測定した。図9A及び9Bに示されるように、配列番号C869は、試験された濃度の各々において脾臓細胞からのIFN-α及びIL-12の産生を明らかに阻害した。IRP配列番号17(C869)は、図9Cに示されるようにHSV-1感染ヒトPDCからのIFN-αの産生を阻害した。これらの結果は、IRP配列番号17(C869)がTLR-9依存性細胞応答を阻害することに合致する。
【0271】
ヒトPDCに様々な量のインフルエンザウイルス(PR/8株)を感染させた。当該細胞により産生されるIFN-αの量が計測され、そして感染に使用されたウイルス量と比較された。図10Aは、感染に使用したインフルエンザウイルスの量(感染多重度、MOI)に応答したIFN-αの産生の例を記載する。10MOIのインフルエンザウイルス(PR/8株)で感染された細胞は、明らかに感染に応答してIFN-αを産生した。
【0272】
次に、ヒトPDCに、様々な量の配列番号17(C869)(7、3.5、又は1.75μM)、又は対照オリゴヌクレオチドの存在下で10MOIのインフルエンザウイルス(PR/8)株を感染させ、そして産生されたIFN-αの量を測定した。図10Bに示されるように、IRP配列番号17(C869)は、用量依存性の様式で細胞からのIFN-αの産生を明らかに阻害した。これらの結果は、IRP配列番号17(C869)がTLR-7/8依存性の細胞応答を阻害することに一致した。
【0273】
配列番号27(C661)が、HSV-1及びインフルエンザウイルス(PR/8)で刺激された細胞を示差的に阻害することが発見された。ヒトPDCに、配列番号17(C869)、配列番号27(C661)、又は対照オリゴヌクレオチドの存在下で30MOIでHSV-1を感染させた。幾つかの実験では、HSV-1の他の濃度を使用して同様の結果を得た。Duramadら、(2003) Blood 102:4487に記載されるようにPDCを濃縮し、そして致死量のUVを照射したHSV-1とインキュベーションした。図11A-11Bに示されるように、配列番号27(C661)は、当該細胞からのIFN-αの産生に対し阻害効果を示さなかったが、IRP配列番号17(C869)は完全にIFN-αの産生を阻害した。配列番号17(C869)、配列番号27(C661)、又は対照オリゴヌクレオチドの存在下で、インフルエンザウイルス(PR/8)を10MOIでヒトPDCに感染させた。図11A-11Bに示されるように、当該細胞によるIFN-αの産生についての配列番号27(C661)の阻害効果は、IRP配列番号17(C869)の効果に匹敵した。従って、異なるIRP種は、細胞に対して異なる阻害効果を有することがある。例えばIRP配列番号27(C661)は、TLR-7/8依存性細胞応答を阻害するが、TLR-9細胞応答を阻害しない。
【0274】
マウス脾臓細胞は、TLR-4刺激を介してLPSに応答してIL-6を産生する。IRP配列番号17(C869)及び配列番号92(530)及び対照オリゴヌクレオチドを、LPS刺激脾臓細胞によるIL-6産生に対するその効果について試験した。図12A-12Bに記載されるように、いずれのIRPもLPS刺激脾臓細胞からのIL-6の産生を阻害しなかった。対照的に、4分の1以下の濃度のいずれかのIRPは、ISNA刺激脾臓細胞からのIL-6産生を阻害した。従って、IRP配列番号17(C869)又はIRP配列番号92(530)のどちらも、TLR-4依存性細胞応答を阻害しない。
【0275】
TLR-7/8依存性応答についてのIRP配列番号17(C869)の効果を、2個のTLRアクチベーターを用いてさらに試験した。ロキソリビン(7-アリル-7,8-ジヒドロ-8-オキソ-グアノシン)は、抗腫瘍応答における合成アジュバントとして作用し、そして先天性免疫システムの細胞をTLR-7依存性シグナル経路を介して選択的に活性化することが示される(Heilら、(2003) Eur. J. Immunol 33:2987-2997)。マウス脾臓細胞を、様々な濃度のIRP配列番号17(C869)又は対照オリゴヌクレオチドの存在下でロキソリビン(100μM)で刺激し、そして産生されるIL-6及びIL-12の量を測定した。図13A-13Dに示されるように、IRP配列番号17(C869)は、用量依存性の様式で細胞からのIL-6のTLR-7誘導性の産生を阻害したが、細胞によるIL-12産生には影響しなかった。
【0276】
レシキモド(R-848)は、TLR-7及びTLR-8シグナル伝達の刺激薬である。マウス脾臓細胞を、様々な濃度のIRP配列番号17(C869)又は対照オリゴヌクレオチドの存在下でR-848(1μM)で刺激し、そして産生されたIL-6及びIL-12の量を測定した。図14A-14Dに示されるように、IRP配列番号17(C869)は、用量依存性の様式で細胞からのTLR-7/8誘導性のIL-6産生を阻害したが、当該細胞によるIL-12産生には影響しなかった。
【0277】
様々なTLR刺激の阻害について試験した場合、配列番号27(C661)はTLR-7/8依存性の細胞応答を阻害するが、TLR-4依存性又はTLR-9依存性の細胞応答を阻害しないことが発見された。図15A-15Dに記載される様に、IRP配列番号27(C661)は、100μMのロキソリビンで刺激された脾臓細胞からのIL-6産生、及び1μMのR848で刺激された脾臓細胞からのIL-6産生を阻害した。これにより、配列番号27(C661)がTLR-7/8依存性細胞応答を阻害するのに有効であることが示された。しかしながら、図15A-15Dはまた、配列番号27(C661)は、ISNA刺激された脾臓細胞又はLPS刺激された脾臓細胞からのIL-6産生を阻害しないことも示す。こうして、配列番号27(C661)は、TLR-9又はTLR-4依存性の細胞応答を阻害するのに有効ではない。
【0278】
実施例3:IRS-含有ポリヌクレオチドのTLR依存性活性化
一連の実験において、マウス脾臓細胞は、様々なIRP又は対照オリゴヌクレオチドと共に、R848(TLR7/8シグナル伝達)又はISNA配列番号 (1018)(TLR-9シグナル伝達)のいずれかで刺激した。表1は、2回の実験からの結果を含む。与えられた値は、R848単独でのIL-6応答 に比較した、IRP又は対照オリゴヌクレオチドの存在下でのIL-6応答の割合である
【0279】
【表1】
【0280】
表2はISNA配列番号 (1018)(TLR-9シグナル伝達)で刺激された細胞からの結果を含む。与えられた値は、ISNA単独でのIL-6又はIL-12応答に比較した、IRP又は対照オリゴヌクレオチドの存在下でのIL-6又はIL−12応答の割合である。
【0281】
【表2】
【0282】
【表3】
【0283】
【表3】
【0284】
表4及び5は、ISNA配列番号 (1018)(TLR-9シグナル伝達)刺激細胞からの結果を含む。与えられた数値は、ISNA単独でのIL-6又は IL-12応答に比較した、IRP又は対照オリゴヌクレオチドの存在下でのIL-6(表4)又はIL-12(表5)の割合である。
【0285】
【表4】
【0286】
【表5】
【0287】
表6は、代表的なIRSと、TLRシグナル伝達の阻害におけるその有効性を載せる。
【表6】
【0288】
一連の用量応答実験において、マウス脾臓細胞を、様々なIRP又は対照オリゴヌクレオチドと共にR848(TLR-7/8シグナル伝達)又はISNA配列番号 (1018)(TLR-9シグナル伝達)で刺激した。表7は、様々な割合のIRP:ISNAで存在するIL-6産生の結果を含む。与えられる数値 は、ISNA単独でのIL-6応答に比較した、IRP又は対照オリゴヌクレオチドの存在下におけるIL-6の割合である。
【0289】
【表7】
【0290】
【表8】
【0291】
【表8】
【0292】
【表9】
【0293】
【表9】
【0294】
【表10】
【0295】
実施例4
マウス脾臓細胞を、ISNA配列番号 (1018)(0.7μM)又はR848(1μM)単独で、及びIRP配列番号17(869)、IRP配列番号27(661)、IRP配列番号52(954)の増加量と共に活性化した。図16A-16B に記載されるように、IRP配列番号17(869)及びIRP配列番号52(954)は、ISNA配列番号 (1018)に応答したIL-6産生の強力 な阻害剤であり、一方IRP配列番号27(661)及びIRP配列番号52(954)は、R848の活性化の強力な阻害剤である。
【0296】
実施例4
マウス脾臓細胞を、ISNA配列番号75(1018)(0.7μM)又はR848(1μM)単独で、及びIRP配列番号17(869)、IRP配列番号27(661)、IRP配列番号52(954)の増加量と共に活性化した。図16A-16Bに記載されるように、IRP配列番号17(869)及びIRP配列番号52(954)は、ISNA配列番号75(1018)に応答したIL-6産生の強力な阻害剤であり、一方IRP配列番号27(661)及びIRP配列番号52(954)は、R848の活性化の強力な阻害剤である。
【0297】
6〜12週齢のBALB/cマウスに20mgのD-ガラクトサミンを溶解させた生理食塩水を腹腔内注射し、そして50μgのISNA配列番号 (1018)を単独で、或いは200μg、100μg、又は50μgのIRP配列番号52(954)若しくはIRP配列番号17(869)又は対照オ リゴヌクレオチドODNと組み合わせて皮下注射した。次に7日間にわたりマウスの生存率について評価した。通常のマウスでは、50μgのISNA配列番号 (1018)は死を誘導しなかったが、マウスにD-ガラクトサミンを前処理した場合、炎症に極めて感受性になりそしてすぐに死亡した。図18に 示されるように、不活性対照ODNが死を防がない一方、IRSは用量依存性の様式で死を防ぐことができる。最も高い用量では(200μgのIRS)、 100%のマウスが保護され、100μgのIRSでは約90%、そして1:1の比で60%超が保護された。こうして、これらのデーターにより、IRSの強 力なin vivo活性が裏づけされる。
【0298】
マウス脾臓細胞を、ISNA配列番号 (1018)(図19A)又はR848(図19B)単独で活性化し、そして配列番号52(954)、IRP配列番号100(DV019)、IRP配列番号120(DV020)、IRP配列番号102(DV021)、IRP配列番号103(DV022)、IRP配列番号104(DV023)、及びIRP配列番号105(DV024)からなる分解産物と共に活性化した。
【0299】
DV0配列は、「IRS954Nマイナス配列」(N=1〜6のヌクレオチドが3'末端から取り除かれたIRS954):
配列番号100 DV019:5'-TGCTCCTGGAGGGGTTG
配列番号101 DV020:5'-TGCTCCTGGAGGGGTT
配列番号102 DV021:5'-TGCTCCTGGAGGGGT
配列番号103 DV022:5'-TGCTCCTGGAGGGG
配列番号104 DV023:5'-TGCTCCTGGAGGG
配列番号105 DV024:5'-TGCTCCTGGAGG
である。
【0300】
図19A及び図19Bに記載されるように、細胞をIRP配列番号52(954)、IRP配列番号100(DV019)、IRP配列番号101(DV020)、IRP配列番号102(DV021)、IRP配列番号103(DV022)、IRP配列番号104(DV023)の存在下で培養した場合にIL−6産生が低下し、配列番号105(DV024)では阻害がなかった。このことにより、IRP配列番号53(954)の活性が3'末端配列を切断した後においても保持されるということが示唆された。
【0301】
図19A及び図19Bに記載されるように、細胞をIRP配列番号52(954)、IRP配列番号 (DV019)、IRP配列番号 (DV020)、IRP配列番号 (DV021)、IRP配列番号 (DV022)、IRP配列番号 (DV023)の存在下で培養した場合にIL−6産生が低下し、配列番号 (DV024)では阻害がなかった。このことにより、IRP配列番号53(954)の活性が3'末端配列を切断した後においても保持されるということが示唆された。
【0302】
(NZB×NZW)F1マウスを治療をしないままにするか、又は週二回、15μg又は45μgのIRP配列番号52(954)を用いて治療した。疾患の第一徴候がマウスに現れた場合に4〜5月齢で治療を開始した。図20に記載される様に、治療を施さない場合に血清中の抗-dsDNA自己抗体レベルが時間とともに増加した。IRP配列番号52(954)を注射されたマウスは、自己抗体のレベルを低減した。当該自己抗体は、狼瘡になりやすいマウスの疾患の進行に影響する能力を示す。
【0303】
8〜9月齢でありそして既に疾患状態の(NZB×NZW)F1マウスに100μgのIRP配列番号52(954)又は対照オリゴヌクレオチドを週3回注射した。図21に記載されるように、IRP配列番号52(954)での治療は、対照オリゴヌクレオチドでの治療に比べて、マウスの死亡率を低減した。
【0304】
精製したヒトB細胞を、ISNA配列番号(1018)又はR848単独で、そしてIRP配列番号17(869)、IRP配列番号27(661)、IRP配列番号52(954)又は対照オリゴヌクレオチドと共に活性化した。図24に示されるように、これらのオリゴヌクレオチドの阻害活性のパターンは、マウス及びヒトにおいて似ている。特にIRP配列番号52(954)は、両方の刺激で刺激されたヒトB細胞からのIL-6産生を阻害した。
【0305】
ヒトPDCをUV不活性化HSV-1ウイルス(MOI:5)単独で、そしてIRP配列番号52(954)又は対照ヌクレオチドと共に感染させた。図23は、ウイルス単独に応答したIFN-αの産生に関してIRP配列番号52の強い阻害効果の例を示す。
【0306】
ヒトPDCを熱不活性化インフルエンザウイルス単独で(MOI:2)、そしてIRP配列番号52(954)又は対照オリゴヌクレオチドと共に感染させた。図24は、ウイルス単独に応答したIFN-αの産生について、IRP配列番号52(954)の強力な阻害効果の例を示す。
【0307】
ヒトPDCを、UV不活性化(60mJ)U937細胞の存在下で、抗-dsDNA陽性SLE患者から取得された10%血清のみの存在下で、及びIRP配列番号52(954)又は対照オリゴヌクレオチドと組み合わせて培養した。図25に記載されるように、抗-dsDNAを含む血清はPDCを活性化することができ、そしてIFN-αを誘導することができる。培地に加えられた場合、IRP配列番号52(954)は、IFN-α応答を阻害することができる一方、対照オリゴヌクレオチドは影響を与えることはなかった。これにより、IRP配列番号52(954)が、SLE患者から得たサンプルを使用する当該in vitroアッセイにおいて、PDC活性化を有意に阻害することができることが示される。
【0308】
マウス脾臓細胞をISNA配列番号 (1018)又はR848のみで、及びIRP配列番号17(869)、IRP配列番号77(661)、IRP配列番号52(954)、IRP配列番号106(983)、IRP配列番号107(984)、IRP配列番号108(985)、IRP配列番号109(986)、IRP配列番号110(987)、IRP配列番号111(988)、IRP配列番号112(989)、IRP配列番号113(990)、IRP配列番号114(991)、又は対照オリゴヌクレオチドと共に活性化した。図27及び図28に記載される様に、非ヌクレオチド群を加えることは、活性の完全な消失をもたらすことはなかったが、応答レベルを調節することができた。
【0309】
マウス脾臓細胞をISNA配列番号75(1018)又はR848のみで、及びIRP配列番号17(869)、IRP配列番号77(661)、IRP配列番号52(954)、IRP配列番号 (983)、IRP配列番号 (984)、IRP配列番号 (985)、IRP配列番号 (986)、IRP配列番号 (987)、IRP配列番号 (988)、IRP配列番号 (989)、IRP配列番号 (990)、IRP配列番号 (991)、又は対照オリゴヌクレオチドと共に活性化した。図27及び図28に記載される様に、非ヌクレオチド群を加えることは、活性の完全な消失をもたらすことはなかったが、応答レベルを調節することができた。
【0310】
図1図1A-1Bは、IRPが免疫刺激核酸(ISNA)により刺激された細胞からのIL-6及びIL-12の産生を阻害することを示すグラフである。図1Aは、ISNA配列番号119(1018)単独で、及びIRP配列番号91(530)、IRP配列番号17(C869)、又は対照配列番号75(C532)と共に刺激されたマウス脾臓の結果を示す。図1Bは、ISNA配列番号99(C274)単独で、及びIRP配列番号91(530)、IRP配列番号17(C869)、又は対照配列番号75(C532)と共に刺激されたマウスCD11c+細胞の結果を示す。
図2図2は、ISNA配列番号119(1018)単独で、及びIRP配列番号91(530)、IRP配列番号17(C869)、又は対照オリゴヌクレオチド配列番号17(C532)と共に刺激されたヒトB細胞からのIL-6産生を示すグラフである。
図3図3は、ISNA配列番号119(1018)単独で、及びIRP配列番号17(C869)又は対照オリゴヌクレオチドと共に、そしてIRP配列番号17(C869)単独で注射されたマウスから得た血清中のIL-6レベルを示すグラフである。共投与されるIRP:ISNAの比、又はIRP:対照オリゴヌクレオチドの比は、3:1〜1:3で変化する。
図4図4は、ISNA配列番号119(1018)単独で、及びIRP配列番号17(C869)又は対照オリゴヌクレオチドと共に、そしてIRP配列番号17(C869)単独で注射されたマウスから得た血清中のIL-12レベルを示すグラフである。共投与されるIRP:ISNAの比、又はIRP:対照オリゴヌクレオチドの比は、3:1〜1:3で変化する。
図5図5は、ISNA配列番号119(1018)単独で、及びIRP配列番号17(C869)又は対照オリゴヌクレオチドと共に、そしてIRP配列番号17(C869)単独で注射されたマウスから得た血清中のTNF-αレベルを示すグラフである。共投与されるIRP:ISNAの比、又はIRP:対照オリゴヌクレオチドの比は、3:1〜1:3で変化する。
図6図6は、一の部位において皮下にISNA配列番号119(1018)を注射され、そして同じ部位又は異なる部位で投与される対照オリゴヌクレオチド又はIRP配列番号17(C869)を注射されたマウスから得た血清中のIL-6レベルを示すグラフである。
図7図7は、一の部位において皮下にISNA配列番号119(1018)を注射され、そして同じ部位又は異なる部位で投与される対照オリゴヌクレオチド又はIRP配列番号17(C869)を注射されたマウスから得た血清中のIL-12レベルを示すグラフである。
図8図8A-8Bは、様々な量のHSV-1感染に応答してマウスCD11c+脾臓細胞によるIFN-α(図8A)及びIL-12(図8B)の産生を示すグラフを示す。
図9A図9A-9Cは、IRPがHSV-1刺激細胞からのサイトカイン産生を阻害することを示すグラフを図示する。図9Aは、様々な濃度のIRP配列番号17(C869)又は対照オリゴヌクレオチドの存在下でHSV-1に応答したマウスCD11c+脾臓細胞によるIFN-αの産生を図示する。
図9B-C】図9A-9Cは、IRPがHSV-1刺激細胞からのサイトカイン産生を阻害することを示すグラフを図示する。図9Bは、様々な濃度のIRP配列番号17(C869)又は対照オリゴヌクレオチドの存在下でHSV-1に応答したマウスCD11c+脾臓細胞によるIL-12の産生を図示する。図9Cは、様々な濃度のIRP配列番号17(C869)又は対照オリゴヌクレオチドの存在下でHSV-1に応答したヒトPDCによるIFN-αの産生を図示する。
図10図10A-10Bは、IRPがインフルエンザウイルス(PR/8)刺激細胞からのサイトカインの産生を阻害することを示すグラフを図示する。図10Aは、様々な量のインフルエンザウイルスに応答したヒトPDCによるIFN-α産生を図示する。図10Bは、様々な濃度のIRP配列番号17(C869)又は対照オリゴヌクレオチドの存在下でインフルエンザウイルスに応答したヒトPDCによるIFN-α産生を示す。
図11図11A-11Bは、IRPがウイルス刺激ヒトPDC細胞からのIFN-αの産生を阻害することを示すグラフを図示する。ウイルス単独、IRP配列番号17(C869)、IRP配列番号27(C661)、又は対照オリゴヌクレオチドの存在下で、HSV-1(図11A、左のグラフ)及びインフルエンザウイルス(図11B、右のグラフ)に応答した細胞によるIFN-α産生を示す。
図12図12A-12Bは、ISNA(図12A)又はLPS、TLR4刺激物(図12B)のいずれかで刺激された脾臓細胞からのIL-6産生についてのIRPの効果を示すグラフを図示する。刺激された細胞をISNA又はLPS単独で、及びIRP配列番号91(530)、IRP配列番号17(C869)、又は対照オリゴヌクレオチドと共にインキュベーションした。
図13図13A-13Dは、TLR7刺激物であるロキソリビンで刺激された脾臓細胞からのIL-6(図13A-13B)及びIL-12(図13C-13D)産生についてのIRPの効果を示すグラフを図示する。刺激された細胞を、ロキソリビン単独で及び様々な量のIRP配列番号17(C869)(図13A-13C)又は対照オリゴヌクレオチド(図13B-13D)と共にインキュベーションした。
図14図14A-14Dは、TLR7/8刺激物であるレシキモド(R848)で刺激された脾臓細胞からのIL-6(図14A-14B)及びIL-12(図14C-14D)産生についてのIRPの効果を示すグラフを図示する。刺激された細胞を、R848単独で、及び様々な濃度のIRP配列番号17(C869)(図14A-14C)又は対照オリゴヌクレオチド(図14B-14D)と共にインキュベーションした。
図15図15A-15Dは、TLR刺激物であるISNA(配列番号119(1018))(図15A)、LPS(図15B)、ロキソリビン(図15C)、及びR848(図15D)で刺激された脾臓細胞からのIL-6産生についてのIRPの効果を示すグラフを図示する。刺激された細胞を、指示したTLR刺激物単独で、そしてIRP配列番号17(C869)、IRP配列番号27(C661)、又は対照オリゴヌクレオチドと共にインキュベーションした。
図16図16A-16Bは、ISNA配列番号119(1018)刺激された細胞又はR848刺激された細胞からのIL-6産生をIRPが阻害することを示す。図16Aは、ISNA配列番号119(1018)単独で、及びIRP配列番号17(869)、IRP配列番号27(661)、又はIRP配列番号52(954)と共に刺激されたマウス脾臓細胞の結果を示す。図16Bは、R848単独で、及びIRP配列番号17(869)、IRP配列番号27(661)、又はIRP配列番号52(954)と共に刺激されたマウス脾臓細胞の結果を示す。
図17図17A-17Bは、R848単独で、そしてIRP配列番号52(954)又は対照オリゴヌクレオチドと共に注射された1時間後にマウスから得た血清中のIL-12(図17A)及びTNF-α(図17B)を示すグラフである。
図18図18は、D-ガラクトサミン及びISNA配列番号119(1018)単独で、及びIRP配列番号52(954)、IRP配列番号17(869)、又は対照オリゴヌクレオチドと共に処理された後の生存しているマウスの割合を示すグラフである。
図19図19A-19Bは、ISNA配列番号119(1018)刺激細胞又はR848刺激細胞からのIL-6産生をIRPが阻害することを示すグラフを図示する。図19Aは、ISNA配列番号119(1018)単独で、及びIRP配列番号52(954)、IRP配列番号100(DV019:N-1)、IRP配列番号101(DV020:N-2)、IRP配列番号102(DV021:N-3)、IRP配列番号103(DV022:N-4)、IRP配列番号104(DV023:N-5)、又はIRP配列番号105(DV024:N-6)と共に刺激されたマウス脾臓細胞の結果を図示する。図19Bは、R848単独で、及びIRP配列番号52(954)、IRP配列番号100(DV019)、IRP配列番号101(DV020)、IRP配列番号102(DV021)、IRP配列番号103(DV022)、IRP配列番号104(DV023)、又はIRP配列番号105(DV024)と共に刺激されたマウス脾臓細胞の結果を図示する。
図20図20は、治療無し又は15μg又は45μgのIRP配列番号52(954)を週二回注射した後における(NZB×NZW)F1マウスの血清中の抗dsDNA自己抗体のレベルを示すグラフである。
図21図21は、100μgのIRP配列番号52(954)又は対照オリゴヌクレオチドを8〜9月齢で週3回注射された後の生存している(NZB×NZW)F1マウスの割合を示すグラフである。
図22図22A-22Bは、ISNA配列番号119(1018)(図22A)又はR848(図22B)単独で、及びIRP配列番号17(869)、IRP配列番号27(661)、IRP配列番号52(954)、又は対照オリゴヌクレオチドで刺激されたヒトB細胞からのIL-6産生を示すグラフである。
図23図23は、UV不活性化HSV-1ウイルス単独で、及びIRP配列番号52(954)又は対照オリゴヌクレオチドと共に刺激されたヒトPDC細胞からのIFN-αの産生を示すグラフである。
図24図24は、熱不活性化インフルエンザウイルス単独で、及びIRP配列番号52(954)又は対照オリゴヌクレオチドと共に刺激されたヒトPDC細胞からのIFN-αの産生を示すグラフである。
図25図25は、抗dsDNA免疫複合体を含む血清単独で、及びIRP配列番号52(954)又は対照オリゴヌクレオチドと共に刺激されたヒトPDC細胞からのIFN-αの産生を示すグラフである。
図26図26は、抗RNP免疫複合体単独で、及びIRP配列番号52(954)又は対照オリゴヌクレオチドと共に刺激されたヒトPDC細胞からのIFN-αの産生を示すグラフである。
図27図27は、ISNA配列番号119(1018)単独で、及びIRP配列番号17(869)、IRP配列番号27(661)、IRP配列番号52(954)、IRP配列番号106(983)、IRP配列番号107(984)、IRP配列番号108(985)、IRP配列番号109(986)、IRP配列番号110(987)、IRP配列番号111(988)、IRP配列番号112(989)、IRP配列番号113(990)、IRP配列番号114(991)又は対照オリゴヌクレオチドと共に刺激されたマウス脾臓細胞からのIL-6産生を示すグラフである。
図28図28は、R848単独で、及びIRP配列番号17(869)、IRP配列番号(27)、IRP配列番号52(954)、IRP配列番号106(983)、IRP配列番号107(984)、IRP配列番号108(985)、IRP配列番号109(986)、IRP配列番号110(987)、IRP配列番号111(988)、IRP配列番号112(989)、IRP配列番号113(990)、IRP配列番号114(991)、又は対照オリゴヌクレオチドと共に刺激されたマウス脾臓細胞からのIL-6産生を示すグラフである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B-C】
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]