特許第5775030号(P5775030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775030
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】視覚障害者の振込取引支援装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20150820BHJP
   G07D 1/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   G07D9/00 426C
   G07D1/00 351
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-142045(P2012-142045)
(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公開番号】特開2014-6710(P2014-6710A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2014年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】清水 治
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−149320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00
G07D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATMのボードに隣接して設けられ、3行4列、3行3列、4行3列または4行4列でそれぞれのキー上部に点字を有する視覚障害者専用押しボタン・キーを有し、
該押しボタン・キーを押すことにより点字イメージを入力可能とし、該3行4列、3行3列、4行3列または4行4列の押しボタン・キー配列の平面上方に取り消し押しボタン・キーを、該平面下方に確定押しボタン・キーを有することを特徴とするATM用の押しボタン・キー装置。
【請求項2】
前記取り消し押しボタン・キー及び確定押しボタン・キーの上部にも点字を有することを特徴とする前記請求項1記載のATM用の押しボタン・キー装置。
【請求項3】
ATMのボードのタッチパネル上に3行4列、3行3列、4行3列または4行4列で設けられた視覚障害者も使用できるタッチ・キーを有し、
該タッチ・キーを押すことにより点字イメージを入力可能とし、該3行4列、3行3列、4行3列または4行4列のタッチ・キー配列の平面上方に取り消しタッチ・キーを、該平面下方に確定タッチ・キーを有することを特徴とするATM用のタッチパネル。
【請求項4】
常時は退避し、必要時に前記タッチパネル上にスライドさせるスライド自在の視覚障害者入力支援用プラスティック板を設けたことを特徴とする前記請求項3記載のATM用のタッチパネル。
【請求項5】
前記プラスティック板にはタッチパネル上にスライドさせたとき、タッチパネルの各タッチ・キーに対応する位置上に孔が空けられていて該孔を介してタッチ入力できることを特徴とする前記請求項4記載のATM用のタッチパネル。
【請求項6】
前記プラスティック板にはタッチパネル上にスライドさせたとき、タッチパネルの各タッチ・キーに対応する位置上に空けられた孔と共に、前記3行4列、3行3列、4行3列または4行4列の各タッチ・キーに対応した孔の平面上方に取り消しタッチ・キーに対応する取り消しキー孔を、該平面下方に確定タッチ・キーに対応する確定キー孔を有することを特徴とする前記請求項4または5記載のATM用のタッチパネル。
【請求項7】
前記プラスティック板にはタッチパネル上にスライドさせたとき、タッチパネルの各タッチ・キーに対応する位置上に孔が空けられると共に、該孔の平面近傍に点字を有することを特徴とする前記請求項4〜6の内、いずれか1項記載のATM用のタッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点字キーやタッチ・キーによる文字入力を可能とさせ、視覚障害者でも振込取引を可能とさせるATMに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ATMでは視覚障害者支援として、「引出取引」、「預入取引」、「残高照会取引」、「通帳記帳取引」が行えるよう、各メーカーではハンドセット方式、テンキーボード方式、触覚記号方式にて対応している。例えば、特開2000−251121号公報や特開平8−55261号公報には、プッシュボタンを備えたハンドセットをATMに備え、音声ガイドにより振込み取引を行う提案がなされている。また、特開平8−55261号公報の図5〜7には、ハンドセットを用いて音声ガイドにより視覚障害者が振込みを行う場合の手順が示されている。
【0003】
しかし、どのメーカーのどの方式においても「振込取引」をATMのボードから健常者と同じ様な操作で可能とさせているものはない。
また、上記ハンドセットのプッシュボタンは、図6に示すように、通常4行3列の配列である。そして、ハンドセットを手に持って操作するため音声が聞き難く、また、プッシュボタンが小さいため、プッシュボタン操作が視覚障害者にはスムーズにできない欠点がある。
【0004】
また、ATMの操作パネルのタッチパネル上に点字キーを設けるものが特開2009−212031号公報(図13)や特開2006−172182号公報に示されているが、図5に示すように、従来は取り消しキーや確定キーが4列4行の最下段左右に設けられているため、視覚障害者は押し間違いを起こし易い欠点がある。なお、図5において、左側は既存テンキーの例であり、右側はこれに対応させて点字キーを配置したイメージを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−251121号公報
【特許文献2】特開平8−55261号公報
【特許文献3】特開2009−212031号公報
【特許文献4】特開2006−172182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、視覚障害者支援として、ATMのボードを用い、健常者と同じ様な操作で「振込取引」を可能とさせるATMの入力手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るATM用の押しボタン・キー装置は、ATMのボードに隣接して設けられ、3行4列、3行3列、4行3列または4行4列でそれぞれのキー上部に点字を有する視覚障害者専用押しボタン・キーを有し、該押しボタン・キーを押すことにより点字イメージを入力可能とし、該3行4列、3行3列、4行3列または4行4列の押しボタン・キー配列の平面上方に取り消し押しボタン・キーを、該平面下方に確定押しボタン・キーを有することを特徴とする。
【0008】
さらに、前記取り消し押しボタン・キー及び確定押しボタン・キーの上部にも点字を有することを特徴とする。
また、本発明に係るATM用のタッチパネルは、ATMのボードのタッチパネル上に3行4列、3行3列、4行3列または4行4列で設けられた視覚障害者も使用できるタッチ・キーを有し、該タッチ・キーを押すことにより点字イメージを入力可能とし、該3行4列、3行3列、4行3列または4行4列のタッチ・キー配列の平面上方に取り消しタッチ・キーを、該平面下方に確定タッチ・キーを有することを特徴とする。
【0009】
さらに、常時は退避し、必要時に前記タッチパネル上にスライドさせるスライド自在の視覚障害者入力支援用プラスティック板を設けたことを特徴とする。
さらにまた、前記プラスティック板にはタッチパネル上にスライドさせたとき、タッチパネルの各タッチ・キーに対応する位置上に孔が空けられていて該孔を介してタッチ入力できることを特徴とする。
【0010】
さらにまた、前記プラスティック板にはタッチパネル上にスライドさせたとき、タッチパネルの各タッチ・キーに対応する位置上に空けられた孔と共に、前記3行4列、3行3列、4行3列または4行4列のタッチ・キーに対応した孔の平面上方に取り消しタッチ・キーに対応する取り消しキー孔を、該平面下方に確定タッチ・キーに対応する確定キー孔を有することを特徴とする。
【0011】
さらにまた、前記プラスティック板にはタッチパネル上にスライドさせたとき、タッチパネルの各タッチ・キーに対応する位置上に孔が空けられると共に、該孔の平面近傍に点字を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記構成により、点字キーやタッチ・キー入力により従来困難とされていた視覚障害者による振込先入力や依頼元入力の操作を容易にさせることができる。
従って、視覚障害者が、ATMのボード上で、容易に、かつ、確実に「振込取引」等の操作を健常者と同様の操作で可能となる。
【0013】
このことにより、視覚障害者団体と金融庁からの次の要望に応えられる。
●視覚障害者でも、ATMで振込取引が行なえる。
●視覚障害者支援ATMで振込取引を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の視覚障害者の入力支援用押しボタン・キーボードの説明図である。
図2】本発明の視覚障害者の入力支援用タッチパネル・キーボードの説明図である。
図3図1図2の視覚障害者の入力支援用キーボードの拡大図である。
図4図3の点字入力手順の説明図である。
図5】従来の入力キーの配列を示す。
図6】従来のハンドセットの入力キーの配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図4を参照しながら本発明に係る視覚障害者の振込取引支援装置について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る視覚障害者の振込取引支援用のATMのボードの配置を示す。該ATMのボード2に隣接して視覚障害者専用押しボタン・キー1が設けられている。なお、図1において、2はATMのボード、3は静脈認証装置、4はハンドセット、9は手の形を表示したものである。6及び7は、以下に述べる取消キー及び確定キーである。
【0016】
(実施例1)
図3には、実施例1の図1の前記視覚障害者専用キー1の拡大図を示す。該キーは3行4列でそれぞれのキー上部に点字を有する押しボタン型のキーである。該キーの配列は、左側キー10〜15が五十音キーであり、右側キー16〜21が濁音、撥音、特殊音/数字キーの配列である。なお、図3の説明は、後述する図2の場合にも同様に適用される。
【0017】
図4には、その操作例を示す。図4(1)に示すように、30の手順で押しボタンキーを押すと、31の点字イメージのデータが入力され、32のように音声ガイドから「ミ」の音がガイドされて入力を確認する。同様に、図4(2)に示すように、34の手順で押しボタンキーを押すと、35の点字イメージのデータが入力され、36に示すように、音声ガイドから「ズ」の音がガイドされて入力を確認する。同様に、図4(3)に示すように、37の手順で押しボタンキーを押すと、38の点字イメージのデータが入力され、39に示すように、音声ガイドから「ホ」の音がガイドされて入力を確認する。このように、点字入力は操作キーの回数が通常より多く、キー入力後には必ず確定キーを押す必要がある。確定キーは操作回数が多く、視覚障害者が他のキーと押し間違いがなく、かつ、容易に操作できることが望ましい。なお、図4の説明は、後述するタッチ・キーの場合にも同様に適用される。
【0018】
上記視覚障害者専用キー1の特徴は、取消キー6が3行4列の主キー配列群の上方に設けられていて、確定キー7が3行4列の主キー配列群の下方に設けられている点である。このことにより、従来、図5に示すように、4列4行内の主キー配列の左右に設けられていた、テンキーと同じ大きさの取消キーと確定キーが視覚障害者にとって誤認し易かった欠点が改良されるという顕著な効果が生じる。なお、前記取り消しキー及び確定キーの上部にも点字を有することが望ましい。本発明のキー配置は、図3に示すように、確定キー7が3行4列の主キー配列群の下方に3行4列の主キー配列群のキーよりは大きなキーで設けられており、また、上方に設けられている取り消しキー6と位置的に明確に分離されている。従って、その位置が視覚障害者にも分かり易く、しかも、大きさが異なるので、他のキーとの押し間違いがない。本発明のキー配置は、視覚障害者でも「他のキーとの押し間違いがなく、かつ、容易に操作できる」というニーズに対応した最適なものとなっている。なお、上記主キー配列群は、3行4列のみならず、3行3列、4行3列、4行4列等でもよい。
【0019】
(実施例2)
図2は、本発明の実施例2の視覚障害者も使用できるタッチ・キー8を示す。図2のATMのボード2上にはタッチパネルが設けられていて、その右下コーナーには、前記と同様の3行4列のキー配列及び取消キー25,確定キー26のキー領域が設けられている。
【0020】
該タッチ・パネル上には、プラスティック板(例えば、アクリル板)からなる視覚障害者入力支援用ガイド板23が摺動可能に設けられている。前記プラスティック板にはタッチパネル上にスライドさせたとき、タッチパネルの各タッチ・キーに対応する位置上に孔が空けられていて、視覚障害者は該孔を介してタッチ入力できるようになっている。該視覚障害者入力支援用ガイド板23は、通常はATMのボードの右外側28に収納されていて、視覚障害者がタッチパネルを用いるときのみATMのボード上に移動させて使用される。健常者の場合は、上記視覚障害者入力支援用ガイド板23の収納状態でタッチパネルを用いる。なお、引き出し爪24は、上記ガイド板23をATMのボード上に移動させる場合に用いられる。
【0021】
この実施例2の場合も、上記視覚障害者も使用できるタッチ・キー8の特徴は、テンキーとは大きさの異なる取消キー25が3行4列の主キー配列群の上方に設けられていて、テンキーとは大きさの異なる確定キー26が3行4列の主キー配列群の下方に設けられている点である。
【0022】
このことにより、従来、大きさがテンキーと同じで4行4列内の主キー配列の左右に設けられていた取消キーと確定キーが視覚障害者にとって誤認し易かった欠点が改良されるという顕著な効果が生じる。実施例1と同様に、本発明の実施例2のキー配置は、視覚障害者でも他のキーとの押し間違いがなく、かつ、容易に操作できるという、視覚障害者のニーズに対応した最適なものとなっている。
【0023】
前記プラスティック板にはタッチパネル上にスライドさせたとき、タッチパネルの3行4列の主キー配列群の各タッチ・キーに対応する位置上に孔が空けられていると共に、上記3行4列のキー配列の平面上方に取り消しキーに対応する取り消しキー孔25を、該平面下方に確定キーに対応する確定キー孔26を有する。
【0024】
また、前記プラスティック板にはタッチパネル上にスライドさせたとき、タッチパネルの各キーに対応する位置上に孔が空けられていると共に、該孔の平面上方や下方、あるいは、左側や右側のいずれか近傍に点字を有していてもよい。このことにより、視覚障害者は孔の位置のみならず、各孔がどのキーに対応するかを確認することができる。
【0025】
また、前記確定キーに対応する確定キー孔26は、前記3行4列の主キー配列群の各タッチ・キーに対応する位置上の孔より大きいので、視覚障害者にも分かり易く、入力ミスが少ない。
【0026】
なお、実施例1と同様に、上記主キー配列群は、3行4列のみならず、3行3列、4行3列、4行4列等でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のATM入力キーは、ATMの操作パネル上に設けられ、視覚障害者が容易に、かつ、確実に、振込み等の操作ができるので、このようなATMのニーズは高く、産業上の利用性が高い。
【0028】
また、視覚障害者団体と金融庁からの次要望にも応えられる。
●視覚障害者でも、ATMで振込取引が行なえる
●視覚障害者支援ATMで振込取引を提供できる
従って、社会的ニーズにも対応し、産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0029】
1 視覚障害者用押しボタン・キー
2 ATMボード
3 静脈認証装置
4 ハンドセット
6 取消キー
7 確定キー
10〜15 五十音キー
16〜21 濁音・撥音・特殊音/数字キー
23 視覚障害者入力支援用ガイド板
24 引き出し用爪
25 取消キー
26 確定キー
図1
図2
図3
図4
図5
図6