(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガス化炉内のガス化反応は、炉内の空気量が不足すると、低温となりタールが高濃度に発生する。タールを多く含んだガスは、ガス化炉下流の各機器において凝縮し、膠着等の動作不良を引き起こす。特に、エンジンにおいては、過給機や吸気バルブ等が膠着し、動作不良の原因となる。
【0006】
また、炉内の空気量が過多となり高温になり過ぎると、灰溶融のトラブルの原因となるため、燃料原料とガス化剤である空気との割合および、それらの接触率を良好に制御する必要がある。
【0007】
燃料となるチップには、切削チップと破砕チップ(いわゆるピンチップ)とがあり、破砕チップは、用途が少なく安価であるため、ガス化原料として利用することが望まれている。一方、破砕チップは、チップ同士が絡み合い、流動性が悪くブリッジしやすいとともに、空隙率も大きいという特徴がある。また、破砕チップの安息角が大きくなり(破砕チップの稜線の傾斜が急勾配となる)、空気の流れが偏流しやすくなる。
【0008】
このため、以下の問題が発生する。
(1)ガス発熱量の低下
炉内偏流により、全体としては空気過多となりやすく、燃料が燃焼傾向となり、燃焼ガスとチャーの接触率も悪くなる。また、燃料のブリッジにより原料の供給が断続的となり、発熱量が低下する。
(2)タールの発生
炉内偏流となるため、全体として空気過多となる一方で、炉内に空気が不足する領域が発生する。空気が不足する領域では低温となるため、タールが発生する。
【0009】
また、ガス化炉内では、燃料の内部がガス化することにより、空洞化によるブリッジ状態が発生する場合がある。このブリッジ状態が発生すると、空洞上部の燃料が崩れて一気に崩壊することとなる。このブリッジ崩壊時には、大量の燃料(加熱不十分の生原料)が、ガス化炉下部の高温部に供給されることになる。このため、温度バランスが崩れ、ガス化炉内の温度が急激に低下し、温度低下により大量のタールが発生する。
【0010】
特許文献1に記載のバイオマスガス化システムは、ホッパに攪拌羽根を設けているため、ホッパ内の攪拌羽根を回転させてバイオマス粉粒体がブリッジを形成するのを防止できるが、ガス化炉内部でブリッジが発生した場合、そのブリッジを解消することはできない。
【0011】
そこで、本発明は、ガス化炉内部に発生したブリッジを解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、固体原料を供給する内筒を外筒の上部に有するガス化炉において、前記内筒内に挿入され、ガス化炉の上下方向を長手方向とする攪拌部材と、前記攪拌部材を、前記内筒内に堆積する固体原料から離間させる待機位置と前記待機位置よりも下方のガス化炉内部の固体原料内の所定位置との間で昇降させる駆動部とを備え、前記駆動部は、前記攪拌部材を下降させるブリッジ解消動作時に、前記攪拌部材を攪拌部材軸回りに回転させる回転駆動部を備えたことを特徴とする。
【0013】
前記本発明は、ガス化炉内部に発生するブリッジを解消することができる。また、攪拌部材を部材軸回りに回転させることで、固体原料を均すことが可能となる。
【0014】
さらに、攪拌部材をブリッジ解消時以外は、内筒上部に待機させて常時燃焼熱に曝されることを防止できるので、攪拌部材の耐熱性も向上する。
【0015】
前記ガス化炉のブリッジ解消装置において、前記攪拌部材が下降する所定位置が、前記内筒内の固体原料のブリッジを解消するブリッジ解消位置と、前記外筒内の固体原料のブリッジを解消するブリッジ解消位置の少なくとも2箇所以上であることを特徴とする。
【0016】
前記本願発明は、内筒および外筒のどちらでもブリッジが発生しても解消することができる。
【0017】
前記ガス化炉のブリッジ解消装置において、前記攪拌部材の待機位置と待機位置よりも下方の所定位置とを検出する検出手段を、前記内筒よりも上方位置に設けたことを特徴とする。
【0018】
前記本願発明は、検出手段が燃焼熱に曝されることを防止できるので、検出手段の耐熱性が向上する。
【0019】
前記ガス化炉のブリッジ解消装置において、前記攪拌部材は、部材軸に沿って上下側が尖った板部材を備えることを特徴とする。
【0020】
前記本願発明は、部材軸に沿って上下側が尖った板部材を備えるため、攪拌部材の固体原料への抜き差しが容易となる。また、固体原料を均す作業が向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、ガス化炉内部に発生するブリッジを解消することができる。また、攪拌部材を部材軸回りに回転させることで、固体原料を均すことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1〜
図11は、本発明の一実施形態を示す。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るガス化炉をバイオマス燃料をガス化させるガス化システムに採用した概略図である。ガス化システム1は、
図1に示すように、例えば、固体原料として木質系材料を燃料とする木質バイオマス発電プラントである。ガス化システム1は、燃料供給装置10、ガス化炉20、昇降式攪拌装置30、サイクロン45、ガス冷却装置(熱交換器)40、スクラバー50、貯水槽60、冷却塔70、フィルタ80、誘引ブロワ90、エンジン発電機100、および余剰ガス燃焼装置200等で構成されている。
【0025】
燃料供給装置10は、ガス化炉20に燃料を供給するもので、ホッパ11、モータ12および燃料吐出用のスクリュー13を備えている。そして、モータ12の周波数をインバータ制御することによって、スクリュー13の回転速度を制御し、ガス化炉20への燃料投入量を調整する。
【0026】
ガス化炉20は、燃料供給装置10からの燃料をガス化するものである。ガス化炉20内には、燃料のガス化を促進させるためガス化剤(空気)が供給される。なお、
図1に示す点線矢印は「空気」の流れる経路を示す。
【0027】
サイクロン45は、ガス化炉20からのガスに含まれる大きな塵等を遠心分離によって除去する。なお、
図1に示す実線矢印は「ガス」の流れる経路を示す。ガス化炉20とサイクロン45との間には、ガス経路101が接続されている。
【0028】
熱交換器40は、サイクロン45からのガスを冷却するガス冷却装置である。熱交換器40内には、ガスを洗浄する散水ノズル41が設けられる。サイクロン45と熱交換器40との間には、ガス経路102が接続されている。
【0029】
スクラバー50は、熱交換器40からのガスを水によって洗浄、冷却する。貯水槽60は、スクラバー50および熱交換器40に供給する水を貯溜する。貯水槽60には、熱交換器61が設けられる。熱交換器40とスクラバー50との間には、ガス経路103が接続されている。
【0030】
貯水槽60内の水は、ポンプ62によって散水ノズル41およびスクラバー50に圧送される。貯水槽60内の水は、熱交換器40およびスクラバー50から貯水槽60に戻る。つまり、貯水槽60内の水は、ガスに含まれるススやタール等を含む。以下、貯水槽60内の水を「循環水」という。なお、
図1に示す二点鎖線矢印は「循環水」の流れる経路を示す。
【0031】
冷却塔70は、熱交換器40および熱交換器61に供給する水を貯溜する。冷却塔70内の水は、ポンプ71によって熱交換器40および熱交換器61に圧送される。
【0032】
冷却塔70内の水は、熱交換器40および熱交換器61から冷却塔70に戻る。冷却塔70の水は、熱交換器61によって貯水槽60内の循環水を間接的に(貯水槽60内の循環水と冷却塔70の水とが混ざらないように)冷却するとともに、熱交換器40によってガスを間接的に(ガスと冷却塔70の水とが混ざらないように)冷却する。つまり、冷却塔70内の水は、ガスに含まれるススやタール等を含まない。以下、冷却塔70内の水を「冷却水」という。なお、
図1に示す一点鎖線矢印は「冷却水」の流れる経路を示す。
【0033】
フィルタ80は、ガスに含まれる小さな塵等を濾過する。スクラバー50とフィルタ80との間には、ガス経路104が接続されている。
【0034】
誘引ブロワ90は、負圧作用によってガス化炉20からのガスをエンジン発電機100側に誘引する。
【0035】
フィルタ80は、ガス経路106を介してエンジン発電機100および余剰ガス燃焼装置200に接続されている。このガス経路106の途中には、前記誘引ブロワ90が接続されている。
【0036】
エンジン発電機100は、ガスエンジンによって発電機を駆動する。余剰ガス燃焼装置200は、余ったガスを燃焼処理する。
【0037】
次に、ガス化炉20の詳細について説明する。
図2は、攪拌羽根の待機位置を示すガス化炉の正面断面図、
図3は、攪拌羽根の中間位置を示すガス化炉の正面断面図、
図4は、攪拌羽根の下端位置を示すガス化炉の正面断面図である。
【0038】
ガス化炉20は、
図2に示すように、外筒からなるガス化炉本体21と、内筒23とを備えている。ガス化炉本体21の下側には、ガス出口22が設けられる。ガス化炉20内の底部には、燃料を攪拌する底部攪拌羽根29が設けられている。ガス化炉20内の残留物(ガス化後の灰等)は、排出コンベア(図示省略)によってガス化炉20外部に排出される。
【0039】
ガス化炉本体21の上端部からは、内筒23が上方に突出する。内筒23は、その内部に燃料を導入する円筒状の部材である。内筒23は、ガス化炉本体21と互いの軸中心が一致するように上下方向に立設されている。内筒23の上下両端部はそれぞれ開口されている。なお、内筒23の上端開口部は、蓋24によって閉塞することも可能である。
【0040】
内筒23の下部は、ガス化炉本体21内に上方から差し込まれ、上下方向においてガス化炉本体21内に臨み、下端開口235がガス化炉本体21の中程に位置している。内筒23の上部は、ガス化炉本体21の上端部から上方に突出し、内筒23の上端部(一箇所)からは、ガス化剤(空気)が導入されるようになっている。内筒23上部の外周一側には、燃料供給装置10からの燃料が投入される投入口231が開口されている。
【0041】
投入口231には、投入管232の一端部が連通される。投入管232は、他端部が斜め上方に延びるように設けられ、投入管232の他端部からは燃料供給装置10からの燃料5が投入される。
【0042】
ガス化炉本体21には、内筒23の下端開口235よりも下方位置にくびれ部210が設けられている。このくびれ部210は、ガス化炉本体21の中心方向に向けて突出する環状凸部からなる。くびれ部210は、ガス化炉本体21の内周面21aの開口面積が下方に向けて次第に小さくなる傾斜面211aを有する縮小開口部211と、この縮小開口部211下端から下方に延設される開口212aを有するスロート部212と、このスロート部212から開口面積が次第に大きくなる傾斜面213aを有する拡大開口部213とから構成されている。
【0043】
具体的には、縮小開口部211の上端の開口面積は、ガス化炉本体21の内周面21aが形成する開口面積と同等に設定されている。縮小開口部211の下端の開口面積は、スロート部212の開口面積と同等で、しかも、内筒23の開口面積と同等に設定されている。拡大開口部213の上開口面積は、スロート部212の開口面積と同等で、しかも、拡大開口部213の下開口面積は、ガス化炉本体21の内周面21aが形成する開口面積と同等に設定されている。
【0044】
ガス化炉20の上部には、昇降式攪拌装置30が設けられている。昇降式攪拌装置30は、内筒23に上方から挿入され、ガス化炉20の上下方向を長手方向とする攪拌部材としての攪拌羽根31と、攪拌羽根31を任意の高さまで段階的に昇降させる駆動部32とを備えている。
【0045】
図5は、攪拌羽根の下部を示す斜視図、
図6は、ガス化炉の断面を示す概略平面図である。攪拌羽根31は、上部が駆動部32に接続され下方に垂下する縦軸(攪拌部材軸)33と、縦軸33の下部に設けられた一対の羽根部34とから構成されている。羽根部34は、平板からなり縦軸33の直径方向に突設されている。羽根部34は、縦軸33に沿って上下側が尖った板部材から構成されている。
【0046】
すなわち、羽根部34の下縁34aは、縦軸33の径外方向に向けて次第に上向きに傾斜している。このように、羽根部34の下縁34aが上向きに傾斜しているので、羽根部34が下降する際に、羽根部34を燃料に容易に刺すことができるようになっている。
【0047】
また、羽根部34の上縁34bは、縦軸33の径外方向に向けて次第に下向きに傾斜している。このように、羽根部34の上縁が下向きに傾斜しているので、羽根部34を上昇させる際に、燃料内の羽根部34を容易に抜くことが可能となる。
【0048】
また、縦軸33には、縦軸33に沿って一対の線条の補強用部材33aが設けられている。この補強用部材33aにより、縦軸33の曲げ剛性の補強が図られている。
【0049】
駆動部32は、攪拌羽根31を昇降させる昇降駆動部35と、縦軸33回りに攪拌羽根31を回転させる回転駆動部36とを備えている。昇降駆動部35は、シリンダ機構やモータ機構等により、攪拌羽根31を昇降させるものである。回転駆動部36は、攪拌羽根31が下降する際に、攪拌羽根31を所定角度だけ回転さるモータ機構等である。
【0050】
また、攪拌羽根31は、複数段階の所定高さ位置で昇降動作が停止するようになっている。具体的には、攪拌羽根31は、最上段の待機位置X(
図2参照)と、第1位置としての中間位置Y(
図3参照)と、第2位置としての下端位置Z(
図4参照)との3段階位置で位置変更できるようになっている。
【0051】
待機位置Xとは、内筒23内に堆積された燃料5と離間するように、燃料5よりも所定高さ上方の位置をいう。中間位置Yとは、内筒内の燃料5のブリッジを解消するブリッジ解消位置であって、攪拌羽根31の最下端(縦軸33の先端)が、内筒23の下端開口235に略達する位置か、攪拌羽根31の最下端が、内筒23の下端開口235から若干突出する位置をいう。下端位置Zとは、ガス化炉本体21内の燃料5のブリッジを解消するブリッジ解消位置であって、攪拌羽根31の羽根部34が、くびれ部210を貫通する位置をいう。
【0052】
また、待機位置Xにおいて、攪拌羽根31の羽根部34は、燃料5の投入方向(
図6に矢印で示す方向)に対して平行となる回転角度位置で停止している。このように羽根部34の回転角度位置を設定することにより、投入される燃料5が羽根部34に当接して反射するのを防止でき、燃料5が片寄って内筒23内に堆積するのを防止することが可能となる。
【0053】
攪拌羽根31は、駆動部32側に固定された検出手段としての複数個(本実施形態では3個)のリミットスイッチLSH、LSM、LSLにより位置決めされる。すなわち、上段のリミットスイッチLSHは、攪拌羽根31を待機位置Xで停止させる。中段のリミットスイッチLSMは、攪拌羽根31を中間位置Yで停止させる。下段のリミットスイッチLSLは、攪拌羽根31を下端位置Zで停止させる。
【0054】
リミットスイッチLSL、LSM、LSHは、内筒23よりも上方位置に設けられている。このようにリミットスイッチLSL、LSM、LSHを、内筒23よりも上方位置に配置することにより、燃料の燃焼時の熱の影響を可及的に受けないようにして、リミットスイッチの信頼性を長期にわたって維持することが可能となる。
【0055】
図2に示すように、内筒23上部には、内筒23内に堆積する燃料5の高さ位置(燃料の堆積高さ)を検出するためのレベルセンサ25が設けられている。このレベルセンサ25は、内筒23内軸方向(上下方向)に垂れ下がり且つ下端に錘251を有するチェーン252と、錘251を昇降すべく、チェーン252を巻き上げたり、巻き戻したりする駆動部を有する計測部(図示省略)とを備えている。このレベルセンサ25で内筒23内に堆積する燃料5の上面位置を計測する際には、チェーン252の伸長により錘251が下降し、その錘251が燃料5に接したときに、計測部が錘251の重量変化(錘の重量バランスの変化)を検知して燃料5の高さを求めることができる。このような燃料5のレベル検出は、定期的且つ連続的(例えば、1分間隔)に行なう。
【0056】
図2に示すように、ガス化炉本体21内には、複数個の圧力センサ26a、26b、26cが取り付けられている。圧力センサ26a、26b、26cは、ガス化炉本体21内の圧力(以下「内圧」という。)を検出する。
【0057】
圧力センサ26aの取付位置は、ガス化炉本体21内の上部(好ましくは上端部)である。つまり、圧力センサ26aは、ガス化炉20内に堆積する燃料5から離間した位置に取り付けられている。圧力センサ26aは炉内の内筒レベル制御が適正でない場合の検知に用いられる。
【0058】
圧力センサ26bは、スロート部212に取り付けられている。圧力センサ26cは、スロート部212よりも下部側(ガス化炉本体21の底部またはその近傍)に取り付けられている。圧力センサ26b、26cはスロート部212でのブリッジ検知に用いられる。
【0059】
図2に示すように、ガス化炉本体21内には、複数個の温度センサ27a、27b、27cが取り付けられている。温度センサ27a、27b、27cは、ガス化炉本体21内の温度を検出する。一対の温度センサ27a、27bの取付位置は、ガス化炉本体21の内周面21aで且つくびれ部210の上部である。つまり、温度センサ27a、27bは、ガス化炉本体21内に堆積する燃料5から離間した位置に取り付けられている。
【0060】
また、温度センサ27a、27bは、
図6に示すように、ガス化炉本体21の中心に対して直径方向に離間して設けられている。このように、温度センサ27a、27bを離間させることにより、ガス化炉本体21内の2箇所の温度を検知することが可能となる。温度センサ27a、27bは、炉内の内筒レベル制御が適正でない場合の検知に用いられる。
【0061】
温度センサ27cは、スロート部212よりも下部側(ガス化炉本体21の底部またはその近傍)に取り付けられている。温度センサ27cは、スロート部212でのブリッジ検知に用いられる。
【0062】
レベルセンサ25、圧力センサ26a、26b、26cおよび温度センサ27a、27b、27cは、
図1及び
図7に示すように制御装置28に接続されている。制御装置28は、レベルセンサ25、圧力センサ26a、26b、26cおよび温度センサ27a、27b、27cのそれぞれの検出信号に基いて昇降式攪拌装置30を制御するものである。例えば、内筒23内の偏流時および内筒23内の燃焼部と燃料との間に空間(縁切れ)が生じるブリッジが発生した場合には、中間位置Yにて昇降式攪拌装置30で攪拌操作を実行し、くびれ部210のブリッジ発生時には、下端位置Zにて破壊操作を実行する。
【0063】
なお、レベルセンサ25、圧力センサ26a、26b、26cおよび温度センサ27a、27b、27cは、炉内雰囲気状態を監視するための検出手段に相当するものである。
【0064】
制御装置28には、昇降式攪拌装置30が接続されている。制御装置28は、処理部281と、記憶部282とを有する。
【0065】
処理部281は、CPU(Central Processing Unit)等で構成される。記憶部282は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0066】
次に、以上の構成からなるガス化システム1を使用して燃料5をガス化させる通常運転を行なう場合について説明する。
【0067】
先ず、燃料5を燃料供給装置10のホッパ11に投入する。燃料供給装置10は、モータ12がスクリュー13を所定回転速度で回転させる。スクリュー13を介して燃料5をガス化炉20の内筒23に供給する。内筒23内部に投入された燃料5は、ガス化炉本体21内に供給され、内筒23の下端開口235から上方に所定高さ(炉内レベル目標値)まで堆積される。そして、かかる燃料5が燃焼を開始しガス化する。
【0068】
なお、
図2に示すように、内筒23内に堆積される燃料5は、上部から乾燥層・乾留層A、酸化層Bおよび還元層Cが形成される。また、昇降式攪拌装置30の攪拌羽根31は、待機位置Xにあるため、攪拌羽根31が燃料5投入の際に支障となることはない。
【0069】
ガス化炉20内で発生したガスは、ガス出口22から吸引されガス経路101を介してサイクロン45に供給される。サイクロン45が、ガス化炉20からのガスに含まれる大きな塵等を遠心分離によって除去する。
【0070】
サイクロン45により、大きな塵等が除去されたガスは、ガス経路102を介して熱交換器40に供給され、熱交換器40により冷却される。熱交換器40で冷却されたガスは、ガス経路103を介してスクラバー50に供給され、スクラバー50において水によって洗浄、冷却される。
【0071】
スクラバー50で洗浄、冷却されたガスは、ガス経路104を介してフィルタ80に供給される。
【0072】
フィルタ80は、ガスに含まれる小さな塵等を濾過する。誘引ブロワ90は、負圧作用によってガス化炉20からのガスをエンジン発電機100側に誘引する。誘引ブロワ90を通過したガスは、エンジン発電機100に供給される。エンジン発電機100は、ガスエンジンによって発電機を駆動する。余ったガスは、余剰ガス燃焼装置200に供給される。余剰ガス燃焼装置200は、余ったガスを燃焼処理する。
【0073】
次に、燃料のブリッジ解消制御について説明する。
【0074】
タールは、内筒内部の炉内レベルが適正範囲内にない場合や、スロート部212でブリッジが発生し、そのブリッジが崩壊した場合に発生する。このため、炉内の内筒レベルが適正でない場合やスロート部212でのブリッジを検知し、ブリッジを早期に解消することにより、タールによる機器への影響を防止するのが燃料のブリッジ解消制御である。
【0075】
本実施形態は、内筒23内の燃料を攪拌する中間位置制御と、下端位置でのブリッジを破壊する下端位置制御とを行う。また、中間位置制御の成立条件と、下端位置制御の成立条件との両方が成立した場合には、下端位置制御を優先的に行うものとする。
【0076】
先ず、攪拌羽根の中間位置制御について、
図8および
図9を参照しながら説明する。
図8は、攪拌羽根の中間位置制御を示す概略図、
図9は、攪拌羽根の中間位置制御を示すフローである。
【0077】
ガス化炉20内部の雰囲気状態を監視するための検出手段であるレベルセンサ25により、燃料5の内筒23内レベル計測を行ない、燃料5の炉内レベルHを検出する(S1)。そして、炉内レベルHと炉内レベル限界位置Hhhを超えていないか確認する(S2)。炉内レベル限界位置Hhhを超えていない場合、炉内レベルHと予め設定された炉内レベル上限位置Hhとを比較する(S3)。ここで、炉内レベル限界位置Hhhとは、内筒23の下端開口235位置からの高さであって、燃焼不可能な高さをいう。従って、炉内レベル限界位置Hhhに達している場合には、中間位置ブリッジ解消動作条件成立と判定する(S12)。
【0078】
ガス化炉20内部の雰囲気状態を監視するための検出手段が、圧力センサ26aである場合、圧力センサ26aにより、炉内圧力(内圧)P1を計測し(S4)、内圧P1と予め設定された基準圧力(所定値)Paとを比較する(S5)。ここで、基準圧力Paとは、例えば、大気圧をいう。通常運転時、ガス化炉20内部は大気圧以下であるが、内圧P1が基準値Pa以上である場合には、ガス化炉本体21(内筒23内部)に空気の偏流が発生していると考えられる。かかる偏流は、内筒23内部に堆積する燃料5に空気の流れ難い部分と、不用意に流れる部分とが形成される。空気の流れ難い部分は、温度が低下してタールが発生し易く、空気が不用意に流れ易くなると、空気が二重構造内の空間(ガス化炉本体21内周面と、内筒23外週面との間で形成される空間)内部にまで供給されやすくなり、発生したガスが燃焼したりする原因となる。そのため、中間位置ブリッジ解消動作条件成立と判定する(S12)。
【0079】
温度センサ27aにより内筒23の外周部分の空間温度T1を計測し(S6)、炉内温度T1と予め設定された基準温度(所定値)Tbとを比較する(S7)。ここで、基準温度Tbとは、ガス化炉20内で燃料のガス化が通常に行なえる温度をいう。炉内温度T1が基準温度Tb以上である場合には、偏流による異常高温燃焼と考えられるため、中間位置ブリッジ解消動作条件成立と判定する(S12)。
【0080】
また、温度センサ27bにより内筒23の外周部分の空間温度T2を計測し(S8)、炉内温度T2と基準温度Tbとを比較する(S9)。炉内温度T2が基準温度Tb以上である場合には、同様に中間位置ブリッジ解消動作条件成立と判定する(S12)。なお、温度センサ27a、27bによる計測は所定時間(例えば、5秒間)行う。
【0081】
T1とT2との温度差の絶対値|T1−T2|を演算し、この温度差の絶対値が閾値(所定置)Ta以上である場合(S10)には、片流れによる異常高温燃焼であり、中間位置ブリッジ解消動作条件成立と判定する(S12)。
【0082】
また、前記の条件を満たさない場合であっても、前回の動作後タイマーが所定時間(例えば、15分)経過したと判断した場合(S11)に、中間位置ブリッジ解消動作が成立したと判定する(S12)。
【0083】
以上のように、ステップ2、ステップ5、ステップ7、ステップ9、ステップ10およびステップ11の中間位置ブリッジ解消動作条件の何れか一つが成立しており、さらに、前回動作後タイマーにより前回の動作から所定時間(例えば、1分)経過していることを確認し(S13)、しかも、下端位置解消条件が成立していないことを条件(S14)として、中間位置ブリッジ解消動作を実行する(S15)。なお、前回動作後タイマーにより前回の動作から所定時間経過していることを確認するのは、昇降式攪拌装置30の攪拌羽根31が不用意に昇降動作するのを防止するためである。
【0084】
中間位置ブリッジ解消動作が実行されると、昇降式攪拌装置30の駆動部32が作動する。昇降駆動部35は、待機位置にある攪拌羽根31を、中間位置まで下降させる(
図3参照)。このとき、回転駆動部36は下降する攪拌羽根31を回転させる。この結果、羽根部34は回転しながら燃料に入り込むこととなり、燃料を略均等に均すことが可能となる。また、内筒23内の燃焼部と燃料との間に空間(縁切れ)が生じるブリッジが発生しても、そのブリッジを早期に解消することができる。
【0085】
また、中間位置Yまで到達した攪拌羽根31は、所定回転位置で固定した状態で上昇する。このため、羽根部34はスムーズに燃料から抜かれることなり、均された燃料に影響することはほとんどない。
【0086】
次に、下端位置解消制御について、
図10および
図11を参照しながら説明する。
図10は、攪拌羽根の下端位置制御を示す概略図、
図11は、攪拌羽根の下端位置制御を示すフローである。なお、くびれ部210部分は、開口面積が小さいため、このくびれ部210部分でブリッジを起こしやすい。
【0087】
下部攪拌条件が成立(S21)しており、圧力センサ26bで内圧を計測した後に(S22)、底部攪拌羽根29で炉下部の攪拌を行う(S23)。この攪拌動作を所定時間行った後に(S24)、再び圧力センサ26bで内圧を計測する(S25)。そして、先に計測した内圧P(2−0)が、後に計測した内圧P(2−1)以上であるか否かを判断する(S26)。後に計測した内圧P(2−1)以上である場合には、攪拌によるP2の回復がないと判断し、下端位置ブリッジ解消動作条件成立と判定する(S33)。
【0088】
圧力センサ26bで計測した圧力P2が、所定圧PCよりも小さい場合(S27)、(S28)には、燃料が圧密となっており圧損が上昇する。このことより、スロート部212でブリッジが発生していると判断し、下端位置ブリッジ解消動作条件成立と判定する(S33)。
【0089】
圧力センサ26cの内圧P3を計測し(S29)、P2とP3との相関関係の値が、所定値Aよりも大きい場合には、ブリッジが発生していると判断し(S30)、下端位置ブリッジ解消動作条件成立と判定する(S33)。P2とP3との相関関係は、例えば、P2/(P3−P2)>Aの関係を有している。
【0090】
温度センサ27cの計測した温度T3と所定温度TCとを比較し、温度T3と所定温度TC以上の場合(S31)、(S32)は、スロート部212の下方に空洞化が発生してチャーが存在しないか少ないと考えられるため、スロート部212でブリッジが発生していると判断し、下端位置ブリッジ解消動作条件成立と判定する(S33)。
【0091】
以上のように、ステップ26、ステップ28、ステップ30およびステップ32の下端位置ブリッジ解消動作条件の何れか一つが成立した場合には、前回動作時間t2(例えば、1分)が経過していることを条件として(S34)、下端位置ブリッジ解消動作を実行する(S35)。
【0092】
下端位置ブリッジ解消動作が実行されると、昇降式攪拌装置30の駆動部32が作動する。昇降駆動部35は、待機位置にある攪拌羽根31を、下端位置Zまで下降させる(
図4参照)。このとき、回転駆動部36は下降する攪拌羽根31を縦軸33回りに回転させる。この結果、羽根部34は回転しながら燃料に入り込むこととなり、ブリッジを破壊することが可能となる。なお、攪拌羽根31は、回転させることにより、ブリッジを確実に破壊することはできるが、攪拌羽根31は、回転させずに下降さることより、ブリッジを破壊することは可能である。
【0093】
また、下端位置Zまで到達した攪拌羽根31は、所定回転位置で固定した状態で上昇する。
【0094】
以上のように、本実施形態のガス化炉20は、攪拌羽根31を縦軸33回りに回転させながら燃料内に入れていく構成であるため、燃料にラットホールが形成されるのを防止することができる。すなわち、攪拌羽根31を回転させない単なるプッシャー機能だけでは、燃料にラットホールを形成し、ガス化に影響があるが、攪拌操作を加えることにより、穴を埋め燃料の堆積レベルの均一化を図ることができる。
【0095】
また、攪拌羽根31は、未稼働時においては待機位置(燃料に接触しない位置)Xにあるため、高温雰囲気になく、攪拌羽根31の耐久性が向上する。
【0096】
しかも、攪拌羽根31の縦軸33には、縦軸33に沿って一対の線条の補強用部材33aが設けられているので、攪拌羽根により挿入時の剛性が高くなり、曲げに強くなる利点がある。
【0097】
また、昇降式攪拌装置30を設けているので、ガス化性能改善が可能となる。すなわち、投入量変動の低減および燃料とガスの接触率の改善により、ガス発熱が改善するとともに、変動率も低減できる。
【0098】
また、定期的かつ所望に応じて昇降式攪拌装置30によりブリッジ解消動作を行うことにより、大きなブリッジ崩壊での大量のタール発生を抑制できる。
【0099】
しかも、安価な原料でガス化発電が可能となることから、ランニングコストの低減を図ることが可能となる。
【0100】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、ガス化炉本体21内面にくびれ部210を有する場合について例示したが、くびれ部210は、必ずしも設ける必要はない。くびれ部210を有さないガス化炉であってもブリッジが発生する場合があるため、攪拌羽根31を所定位置まで下降させ、ブリッジを解消することは可能である。
【0101】
また、攪拌羽根31が下降する所定位置は、中間位置Yと下端位置Zの2箇所以外に、3箇所以上の複数位置で停止させることも可能である。例えば、内筒23およびガス化炉本体21のそれぞれで攪拌羽根31が下降する所定位置を複数設定することが可能である。
【0102】
また、ガス化炉本体21および内筒23の断面開口形状は、円形、矩形状等の任意の形状が採用可能である。