特許第5775038号(P5775038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5775038活性炭又は活性炭原料を含む筒状炭素質体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775038
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】活性炭又は活性炭原料を含む筒状炭素質体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 31/08 20060101AFI20150820BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20150820BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20150820BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20150820BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20150820BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   C01B31/08 Z
   C02F1/28 D
   B01J20/20 A
   B01J20/30
   A61L9/01 B
   A61L9/16 D
【請求項の数】1
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-166023(P2012-166023)
(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公開番号】特開2014-24706(P2014-24706A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2013年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】313014077
【氏名又は名称】トクラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124958
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 建志
(72)【発明者】
【氏名】上川 秀哉
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−232042(JP,A)
【文献】 特開2005−013883(JP,A)
【文献】 特開2011−255310(JP,A)
【文献】 特開2005−314149(JP,A)
【文献】 特開平06−114096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/00 − 31/36
A61L 9/01
A61L 9/16
B01J 20/20
B01J 20/30
C02F 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径0.2〜200μmの活性炭又は活性炭原料と、第一のバインダーと、水で洗い流される有機バインダーと、を少なくとも含む混合物を混練し筒状に押し出して長手方向に沿って孔が形成された長尺な筒状成形体を形成し、該筒状成形体を水で洗って前記有機バインダーを除去し、水で洗った前記筒状成形体を乾燥させ、前記第一のバインダーが残留し長手方向に沿って孔が形成された長尺な筒状炭素質体であって該筒状炭素質体の内外方向へ流体が流通可能とされた筒状炭素質体を製造することを特徴とする筒状炭素質体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭又は活性炭原料を含む炭素質体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、活性炭とイオン除去部材と中空糸膜とを別々の位置に格納した浄水器カートリッジが示されている。活性炭は、水道水に含まれる遊離残留塩素や有機物等の微量成分を除去する。イオン除去部材は、水道水に含まれる金属イオンを除去する。中空糸膜は、水道水に含まれる鉄さびといった濁り成分等を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−194596号公報
【特許文献2】特開2009−23889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水道水中に含まれる種々の成分を除去するためには、中空糸膜や活性炭等を別々の位置に格納する構造を浄水器カートリッジに設ける必要がある。
【0005】
なお、特許文献2には、脱臭装置のカートリッジに対してランダムな向きに多数詰めるペレット状の活性炭を短い円筒状に形成することが示されている。ペレット状の活性炭に貫通孔を形成するのは、脱臭カートリッジ内の風量を多くするためであり、個々の円筒状活性炭の内外方向へ空気を流通させるためではない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決する新規の筒状材料の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、平均粒径0.2〜200μmの活性炭又は活性炭原料と、第一のバインダーと、水で洗い流される有機バインダーと、を少なくとも含む混合物を混練し筒状に押し出して長手方向に沿って孔が形成された長尺な筒状成形体を形成し、該筒状成形体を水で洗って前記有機バインダーを除去し、水で洗った前記筒状成形体を乾燥させ、前記第一のバインダーが残留し長手方向に沿って孔が形成された長尺な筒状炭素質体であって該筒状炭素質体の内外方向へ流体が流通可能とされた筒状炭素質体を製造する態様を有する。
【0008】
すなわち、形成された長尺な筒状成形体を水で洗うと、第一のバインダーが残留し、この第一のバインダーにより筒状炭素質体の形状が保持される。また、有機バインダーが洗い流されることにより、筒状炭素質体の内外方向へ繋がる隙間が適度に拡がり、内外方向への流量が適度に増える。
ここで、平均粒径0.2〜200μmの活性炭原料とバインダーとを含み内外方向へ流体が流通可能とされた賦活前の筒状炭素質体の場合、賦活すれば筒状活性炭として機能する。
平均粒径0.2〜200μmの活性炭を含む長尺な筒状炭素質体は、内外方向へ流体が流通可能であるので、流体を筒状炭素質体の内外方向へ流通させて濾過するときに活性炭の機能が発揮される。例えば、本筒状炭素質体を濾過カートリッジに適用する場合、中空糸膜や活性炭を別々の位置に格納する必要が無くなる。
【0009】
各請求項に係る発明において、上記平均粒径は、50μm以上の粒子についてはJIS K1474:2007(活性炭試験方法)に規定される50%粒径(D50、メジアン径)とし、50μm未満の粒子についてはJIS K5600-9-3:2006(塗料一般試験方法−第9部:粉体塗料−第3節:レーザ回折による粒度分布の測定方法)に準拠した粒子径分布からJIS Z8819-2(粒子径測定結果の表現―第2部:粒子径分布からの平均粒子径又は平均粒子直径及びモーメントの計算)に従って求められる重み付き体積平均粒子径とする。
上記活性炭原料は、賦活前の原料や炭化前の原料が含まれる。すなわち、上記賦活には、炭化処理後に賦活処理することが含まれる。
上記流体には、水といった液体、及び、空気といった気体が含まれる。
筒状炭素質体には、金属処理剤といったイオン交換体等、活性炭、活性炭原料及びバインダー以外の素材が含まれても良い。
【0010】
ところで、上記筒状炭素質体の外側面に100kPaの動水圧を加えたときの該筒状炭素質体の単位長さ当たりの流量が0.5〜70mL/min・100mmとされると、流体を筒状炭素質体の内外方向へ流通させて良好に濾過することができる。
【発明の効果】
【0013】
発明によれば、濾過能力に加えて活性炭の性能を有する新規の筒状炭素質体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は筒状炭素質体1を例示する斜視図、(b)は筒状炭素質体1を例示する正面図、(c)は筒状活性炭10の構造を例示する正面図、(d)は賦活前の筒状炭素質体20の構造を例示する正面図。
図2】疎水性バインダーを用いた筒状活性炭10の製造方法の参考例を示す流れ図。
図3】水溶化したバインダーを用いた筒状活性炭10の製造方法の参考例を示す流れ図。
図4】水で洗い流されるバインダーと残留するバインダーを用いた筒状活性炭10の製造方法を例示する流れ図。
図5】(a)及び(b)は活性炭原料21を用いた筒状活性炭19の製造方法の参考例を示す流れ図、(c)は活性炭原料21を用いた筒状活性炭19の製造方法を例示する流れ図。
図6】(a)は濾過カートリッジ30の側面を例示する図、(b)は濾過カートリッジ30の流出口側端部を例示する図、(c)は濾過カートリッジ30の流入口側端部を例示する図、(d)は濾過カートリッジ30の要部を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下に説明する実施形態は、本発明を例示するものに過ぎない。
【0016】
(1)長尺な筒状炭素質体の説明:
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る筒状炭素質体を説明する。
本筒状炭素質体1は、平均粒径0.2〜200μmの活性炭11又は活性炭原料21と、バインダー(12又は22)とを含み、長手方向LD1に沿って孔(貫通孔2)が形成された長尺な筒状炭素質体であって、該筒状炭素質体の内外方向RD1へ流体が流通可能とされている。内外方向RD1は、筒状炭素質体1における内側面3と外側面4とを繋ぐ方向を意味する。
【0017】
図1(a)に示す筒状炭素質体1は、円筒状とされている。ここで、筒状炭素質体1の平均外径をDとする。筒状炭素質体は、円筒状以外にも、楕円管状、角筒状、等の非円筒状でも良い。平均外径Dは、筒状炭素質体の最も長い部分の測定値と最も短い部分の測定値との相加平均とする。
図1(a)に示す筒状炭素質体1の断面形状は、図1(b)に示す正面図のように環状とされている。ここで、筒状炭素質体1の平均内径、すなわち、孔(2)の平均直径をdとする。孔(2)の断面形状は、円形以外にも、楕円形、多角形、等の非円形でも良い。この場合、平均内径dは、孔の最も長い部分の測定値と最も短い部分の測定値との相加平均とする。
【0018】
平均外径Dは、例えば、0.3〜3.0mm、より好ましくは0.4〜2.5mm、さらに好ましくは0.5〜2.0mmとすることができる。平均内径dは、例えば、0.1mm以上かつ(D−0.2)mm以下、より好ましくは0.2mm以上かつ(D−0.4)mm、さらに好ましくは0.3mm以上かつ(D−0.3)mmとすることができる。
平均外径Dに対する筒状炭素質体1の長さLの比L/Dは、例えば、2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上とすることができる。
【0019】
筒状炭素質体1には、図1(c)に示すような筒状活性炭10、及び、図1(d)に示すような賦活前の筒状炭素質体20が含まれる。
筒状活性炭10は、平均粒径0.2〜200μmの活性炭11と、バインダー12とを含み、長手方向LD1に沿って貫通孔2が形成された長尺な筒状活性炭であって、該筒状活性炭の内外方向RD1へ流体が流通可能とされている。筒状炭素質体20は、平均粒径0.2〜200μmの活性炭原料21と、バインダー22とを含み、長手方向LD1に沿って貫通孔2が形成された長尺な筒状炭素質体であって、該筒状炭素質体の内外方向RD1へ流体が流通可能とされている。なお、内外方向RD1へ流体が流通することには、流体が外側面4から筒状炭素質体に入って内側面3から孔(2)へ出ることと、流体が内側面3から筒状炭素質体に入って外側面4から外へ出ることとの両方が含まれる。
【0020】
図1(c)に示す筒状活性炭10は、粒状の活性炭11同士がバインダー12で点接着され、活性炭11の粒子間に隙間5がある。この隙間5を流体が内外方向RD1へ流通する。活性炭11は、平均粒径を求めることができればよく、粉砕状、繊維状、等でも良い。
図1(d)に示す賦活前の筒状炭素質体20は、粒状の活性炭原料21同士がバインダー22で点接着され、活性炭原料21の粒子間に隙間5がある。活性炭原料21は、平均粒径を求めることができればよく、粉砕状、繊維状、等でも良い。筒状炭素質体20を賦活すると、活性炭を含み長手方向に沿って孔が形成された長尺な筒状活性炭であって、該筒状活性炭の内外方向へ流体が流通可能とされた筒状活性炭となる。バインダー22が有機バインダーである場合、炭化処理を含む賦活処理時にバインダーが熱分解して消失することがある。バインダー22が耐熱性の無機バインダーである場合、賦活処理後にバインダーが残ることがある。
【0021】
活性炭原料21は、賦活することによって活性炭を形成することができればよく、植物系、石炭系、石油系、合成樹脂系、天然素材系、各種有機灰、等を用いることができる。植物系の炭素質材料には、ヤシ殻やアーモンド殻といった果実殻、木材、おが屑、竹、草、等を用いることができる。石炭系の炭素質材料には、泥炭、亜炭、かつ炭、瀝青炭、無煙炭、等を用いることができる。石油系の炭素質材料には、石油ピッチ等を用いることができる。合成樹脂系の炭素質材料には、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ユリア系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、等を用いることができる。天然素材系の炭素質材料には、木綿といった天然繊維、レーヨンといった再生繊維、アセテートといった半合成繊維、等を用いることができる。
【0022】
粉砕状の活性炭には、活性炭原料の賦活物を砕いて得られる活性炭、活性炭原料の粉砕物を賦活して得られる活性炭、等を用いることができる。粉砕状活性炭には、100メッシュ(直径0.15mm)よりも小さい粉末活性炭が含まれるものとする。粒状の活性炭には、ヤシ殻系活性炭、木炭、竹炭、石炭系活性炭、合成樹脂系活性炭、等を用いることができる。粒状活性炭は、賦活物を砕いて所定粒度にふるい分けして得られる活性炭でも良いし、所定粒度の炭素質材料を賦活して得られる活性炭でも良い。粒状活性炭には、粉末活性炭が含まれるものとする。繊維状の活性炭には、石炭ピッチ、石油ピッチ、合成樹脂系活性炭、天然素材系活性炭、等を用いることができる。
【0023】
活性炭11及び活性炭原料21の平均粒径は、0.2〜200μmが好ましく、1〜150μmがより好ましく、2〜130μmがさらに好ましい。平均粒径を前記下限以上とすることにより、筒状炭素質体を内外方向へ流れる流体が好ましい流量に増える。また、平均粒径を前記上限以下とすることにより、例えば中空糸膜のような好ましい濾過性能(例えば濁り成分除去性能)が得られる。
活性炭や活性炭原料は、一種類でもよいが、二種類以上の組合せでもよい。性質及び/又は粒度分布の異なる二種類以上の活性炭を用いると、各除去物質をバランス良く処理可能な筒状活性炭を得ることができる。
【0024】
バインダー12,22には、熱可塑性バインダー、熱硬化性バインダー、無機バインダー、等を用いることができる。バインダーは、疎水性でもよいし、親水性(水溶性を含む。)でもよい。
熱可塑性バインダーには、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)といったポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートといったポリエステル、熱可塑性エラストマー、これらの樹脂を親水化した樹脂、これらの樹脂に改質剤といった添加剤を添加した樹脂、これらの樹脂の混合物、等を用いることができる。なお、これらの樹脂は、熱可塑性樹脂に含まれるものとする。疎水性の熱可塑性バインダーの具体例として、三井化学株式会社社製ポリエチレンパウダー(ミペロン(登録商標)、旭化成ケミカルズ株式会社製ポリエチレンパウダー(サンファイン(登録商標))、等を挙げることができる。親水性の熱可塑性バインダーの具体例として、三井化学株式会社製ポリオレフィン水性ディスパージョン(ケミパール(登録商標))等を挙げることができる。
【0025】
無機バインダーには、p−アルミナ(Al23・nH2O)、リン酸系バインダー、ケイ素系バインダー、チタン系バインダー、等を用いることができる。また、層状ケイ酸塩鉱物などの粘土状鉱物も無機バインダーとして用いることができる。
水溶性バインダーには、上述したp−アルミナの他、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、リン酸アルミニウム系バインダー、等が含まれる。p−アルミナ、CMC、PVA等、水で洗い流される水溶性バインダーは、筒状炭素質体を押出成形する際の増粘剤として機能する。
【0026】
バインダーは、一種類でもよいが、二種類以上の組合せでもよい。なお、水に対して残留性を示す残留性バインダー(第一のバインダー)と、水で洗い流される非残留性バインダー(第二のバインダー)とを併用すると、水で洗った筒状炭素質体に残留性バインダーが残り、この残留性バインダーにより筒状炭素質体の形状が保持される。また、非残留性バインダーが洗い流されることにより、筒状炭素質体の内外方向RD1へ繋がる隙間が適度に拡がり、内外方向RD1への流量が適度に増える。残留性バインダー100重量部に対する非残留性バインダーの配合比は、例えば、0.1〜1000重量部、より好ましくは1〜500重量部、さらに好ましくは3〜300重量部とすることができる。
【0027】
バインダーの配合量は、例えば、活性炭又は活性炭原料100重量部に対して2〜100重量部、より好ましくは3〜50重量部とすることができる。バインダーの配合量を前記下限以上とすると、筒状炭素質体の中で活性炭又は活性炭原料の粒子同士が好ましい接着力で接着される。また、バインダーの配合量を前記上限以下とすると、活性炭の活性を有する表面が好ましい割合で残り、筒状活性炭が好ましい吸着活性を示す。バインダーの配合比は、筒状炭素質体の形状保持性の観点から、活性炭又は活性炭原料の平均粒径が小さくなるほど多くするのが好ましい。
活性炭又は活性炭原料とバインダーに水を添加して混練する場合、水の添加量は、例えば、活性炭又は活性炭原料100重量部に対して25〜300重量部、より好ましくは50〜150重量部とすることができる。水の添加量を前記下限以上にすると、均一性の良好な混練物を形成することができる。水の添加量を前記上限以下にすると、筒状炭素質体の筒形状を良好に保つことができる。
【0028】
筒状炭素質体1の構成成分は、活性炭又は活性炭原料とバインダーの組合せのみでも良いが、活性炭又は活性炭原料100重量部に対して0.1〜60重量部程度の添加剤を添加しても良い。添加剤には、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、キレート樹脂、これらの組合せ、といったイオン交換体等を用いることができる。陽イオン交換樹脂やキレート樹脂は、金属処理剤として機能する。繊維状活性炭、繊維状活性炭原料、等の繊維状材料を添加すると、筒状炭素質体1のしなやかさが増し、筒状炭素質体1が折れ難くなる。
添加剤の平均粒径を求めることができる場合、添加剤の平均粒径は、0.2〜200μmが好ましく、1〜150μmがより好ましく、2〜130μmがさらに好ましい。平均粒径を前記下限以上とすることにより、筒状炭素質体を内外方向へ流れる流体が好ましい流量に増える。また、平均粒径を前記上限以下とすることにより、好ましい濾過性能が得られる。
【0029】
内外方向RD1へ流体が流通可能な筒状炭素質体1の流通性能は、例えば、筒状炭素質体1の外側面4に所定圧力Pの流体圧を加えたときの筒状炭素質体1の単位長さUL当たりの流量Qで定量化することができる。
水を流通させる場合、例えば、筒状炭素質体1の外側面4にP=100kPaの動水圧を加えたときの筒状炭素質体1のUL=100mm当たりの流量Qを流通性能の定量値とすることができる。この流量Qは、0.5〜70mL/min・100mmが好ましく、4〜60mL/min・100mmがより好ましく、6〜50mL/min・100mmがさらに好ましい。流量Qを前記下限以上とすることにより、筒状炭素質体を内外方向へ流れる流体が好ましい流量となる。また、流量Qを前記上限以下とすることにより、好ましい濾過性能が得られる。すなわち、流量Qを前記範囲内とすることにより、流体を筒状炭素質体1の内外方向RD1へ流通させて良好に濾過することができる。
なお、流量Qを多くするためには、活性炭又は活性炭原料の平均粒径を大きくしたり、筒状炭素質体の肉厚{(D−d)/2}を小さくしたり、水で洗い流される非残留性バインダーの配合比を多くしたりすればよい。流量Qを少なくするためには、活性炭又は活性炭原料の平均粒径を小さくしたり、筒状炭素質体の肉厚{(D−d)/2}を大きくしたり、水で洗い流される非残留性バインダーの配合比を少なくしたりすればよい。
【0030】
平均粒径0.2〜200μmの活性炭11を含む長尺な筒状活性炭10は、内外方向RD1へ流体が流通可能であるので、流体を筒状活性炭10の内外方向RD1へ流通させて濾過するときに活性炭11の機能が発揮される。例えば、筒状活性炭10を濾過カートリッジに適用する場合、中空糸膜や活性炭を別々の位置に格納する必要が無くなり、濾過カートリッジの組み立て作業も容易となる。
【0031】
(2)筒状活性炭の製造方法の説明:
次に、図2〜5の流れ図を参照して筒状活性炭の製造方法の例を説明する。
図2に示す製法は、疎水性の熱可塑性バインダーを用いて筒状活性炭10を製造する例を示している。この例は、途中で水13を添加するため、平均粒径0.2〜200μmの活性炭11に予め疎水性のバインダー12を付着させている。
【0032】
加熱混合工程S1では、活性炭11とバインダー12と必要に応じて添加剤14とを含む素材を液状分散媒非存在下で加熱混合する。バインダーの軟化温度が範囲Tsl〜Tsh(℃)で示される場合、加熱温度の下限をTshとすればよい。軟化温度は、JIS K7206:1999(プラスチック―熱可塑性プラスチック―ビカット軟化温度(VST)試験方法)に規定されるビカット軟化温度とする。バインダーの軟化温度が不明である場合、軟化温度よりも高い融点を加熱温度の下限とすればよい。また、バインダーの発火点が最低温度Tilで示される場合、加熱温度の上限をTil未満とすればよい。なお、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂の発火点は、通常、350℃以上であるため、加熱混合温度の好ましい上限は350℃未満である。バインダーの融点が範囲Tml〜Tmhで示される場合、加熱温度のより好ましい上限はTml+70℃とすればよく、加熱温度の好ましい下限はTmhとすればよい。以下の熱処理工程S7も、同様である。
加熱混合には、ニーダー、ラボプラストミル、ホイール型、ボール型、ブレード型、ロール型等の混合装置に前加熱や直接加熱といった加熱の機能が備わったものを使用することができる。混合装置の回転速度は、混合物の温度の偏りを少なくする速度であればよく、例えば、2〜200rpmとすることができる。加熱混合の時間は、例えば、10〜120分とすることができる。
【0033】
破砕工程S2では、冷えて固化した塊状の加熱混合物を破砕装置で所定の平均粒径(例えば20〜200μm程度)に破砕する。破砕前に、添加剤15を加熱混合物に添加しても良い。破砕の温度は、バインダー12の融点未満が好ましく、バインダー12の軟化温度未満がより好ましく、室温でも良い。
破砕には、ミキサー、ブレンダー、ミル、ジョークラッシャー、ジャイレトリクラッシャー、コーンクラッシャー、ハンマークラッシャー、ボールミル、ローラーミル、高速回転ミル、ジェットミル、等の破砕装置を使用することができる。破砕装置の回転速度は、例えば、50〜50000rpmとすることができる。破砕の時間は、例えば、1〜120分とすることができる。
【0034】
混合工程S3では、破砕工程S2で得られた破砕物と水(液状分散媒)13と必要に応じて添加剤16とを含む素材を混合装置で混合する。混合には、ミキサー、ブレンダー、水平円筒型、V型、二重円錐型、正方立体型、S型、連続V型、ボールミル型、ロッキング型、クロスロータリー型、リボン型、スクリュー型、ロター型、パグミル型、遊星型、タービン型、高速流動型、回転円板型、等の混合装置を使用することができる。混合装置の回転速度は、混合物の温度の偏りを少なくする速度であればよく、例えば、15〜200rpmとすることができる。
なお、添加剤14,15,16は、上述した各種添加剤を使用することができ、同じ種類でもよいし、異なる種類でもよい。
【0035】
混練工程S4では、混合工程S3で得られた混合物を混練装置で混練する。「混練」は、分散質の表面全体に液状分散媒をコーティングする分散操作を意味する。混練には、ニーダー等の混練装置を使用することができる。
【0036】
押出工程S5では、混練工程S4で得られた混練物を押出装置で筒状に押し出し、所定の長さに切断する。押出装置のバレルのヘッド(下流側の端部)には、筒状炭素質体の断面形状に合わせた筒状に材料を押し出す環状の押出口を有するダイを取り付けると良い。筒状に押し出された成形体は、細長い軟質材料で形成されているため、真っ直ぐとならず曲がっていることが多い。
押出には、一軸押出成形機、二軸押出成形機、等の押出装置を使用することができる。
【0037】
整形工程S6では、押出工程S5で押し出された長尺な筒状成形体を所定の形状(例えば直線状)に整える。ここで、直線状は、真っ直ぐな形状を意味するものとする。整形には、載置面上で筒状成形体を転がして直線状に近付ける装置、筒状成形体を直線状の溝に入れて直線状に近付ける装置、等を使用することができる。
【0038】
熱処理工程S7では、整形された筒状成形体をバインダーの軟化温度以上で熱処理する。熱処理には、オーブン等の加熱装置を使用することができる。熱処理後、軟化温度未満まで冷えると、バインダーが固化し、長尺な筒状活性炭10が形成される。
【0039】
図3に示す製法は、水溶化した熱可塑性バインダーを用いて筒状活性炭10を製造する例を示している。この例は、上述した加熱混合工程S1及び破砕工程S2を不要にしている。なお、工程S3〜S7は、図2で示した工程と同様であるので、詳しい説明を省略する。
本製法の混合工程S3では、活性炭11とバインダー12と水13と必要に応じて添加剤14とを含む素材を混合装置で混合する。以後、混練工程S4で混合物を混練装置で混練し、押出工程S5で混練物を押出装置で筒状に押し出して所定の長さに切断し、整形工程S6で長尺な筒状成形体を所定の形状に整え、熱処理工程S7で筒状成形体をバインダーの軟化温度以上で熱処理する。熱処理後、軟化温度未満まで冷えると、バインダーが固化し、長尺な筒状活性炭10が形成される。
【0040】
図4に示す製法は、水に対して残留性を示す熱可塑性バインダー(第一のバインダー)、及び、非残留性の水溶性バインダー(第二のバインダー)を用いて筒状活性炭10を製造する例を示している。この例は、図3で示した工程S3〜S7の後に水洗浄工程S8と乾燥工程S9が付加されている。非残留性バインダー12Bには、CMCやPVAといった有機バインダー等、水で洗い流されるバインダーを用いることができる。なお、工程S3〜S7は、図2で示した工程と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0041】
本製法の混合工程S3では、活性炭11と残留性バインダー12Aと非残留性バインダー12Bと水13と必要に応じて添加剤14とを含む素材を混合装置で混合する。以後、混練工程S4、押出工程S5及び整形工程S6を経て、熱処理工程S7で筒状成形体を残留性バインダー12Aの軟化温度以上で熱処理する。熱処理後、軟化温度未満まで冷えると、残留性バインダー12Aが固化し、長手方向に沿って貫通孔が形成された長尺な筒状成形体の形状が保持される。
【0042】
水洗浄工程S8では、長尺な筒状成形体を水で洗って非残留性バインダー12Bを除去する。このとき、残留性バインダー12Aが残り、この残留性バインダー12Aにより筒状成形体の形状が保持される。また、非残留性バインダー12Bが洗い流されることにより、筒状活性炭の内外方向RD1へ繋がる隙間5が適度に拡がり、内外方向RD1への流量が適度に増える。
最後の乾燥工程S9では、水で洗った筒状成形体を乾燥させる。製造される筒状活性炭10は、残留性バインダー12Aが残留し長手方向LD1に沿って貫通孔2が形成された長尺な筒状活性炭であり、該筒状活性炭の内外方向RD1へ流体が流通可能とされている。
【0043】
以上説明したように、本製造例は、例えば中空糸膜のような濾過能力に加えて活性炭の性能を有する新規の筒状活性炭の製造方法を提供することができる。
【0044】
図5(a)〜(c)に示す製法は、活性炭原料21を用いて賦活前の筒状炭素質体20を製造し、この筒状炭素質体20から筒状活性炭19を製造する新規の製造方法の例を示している。
図5(a)は、疎水性の熱可塑性バインダーを用いて筒状炭素質体20を製造し、筒状活性炭19を製造する例を示している。省略した途中の工程S2〜S6は、図2で示した工程S2〜S6と同様である。
【0045】
本製法の加熱混合工程S1では、活性炭原料21とバインダー22と必要に応じて添加剤24とを含む素材を液状分散媒非存在下で加熱混合する。以後、破砕工程S2で加熱混合物を所定の平均粒径に破砕し、混合工程S3で破砕物と水と必要に応じて添加剤とを含む素材を混合し、混練工程S4で混合物を混練し、押出工程S5で混練物を筒状に押し出して所定の長さに切断し、整形工程S6で長尺な筒状成形体を所定の形状に整え、熱処理工程S7で筒状成形体をバインダーの軟化温度以上で熱処理する。熱処理後、軟化温度未満まで冷えると、バインダーが固化し、長尺な筒状炭素質体20が形成される。
【0046】
賦活工程S10では、筒状炭素質体20を賦活して筒状活性炭19を形成する。賦活とは、炭素質材料の微細孔を発達させ多孔質に変える反応である。賦活には、水蒸気、二酸化炭素、空気、等の存在下で高温処理するガス賦活、塩化亜鉛、硫酸塩、リン酸、等で薬品処理する薬品賦活、薬品と水蒸気を併用する賦活、等がある。筒状炭素質体20の賦活には、炭化処理後に賦活処理することが含まれる。炭化処理は、例えば、窒素、アルゴン、等の不活性雰囲気下、600〜800℃で筒状炭素質体を炭化する処理とすることができる。炭化処理後の賦活処理は、例えば、水蒸気、二酸化炭素、等の酸化性ガスの雰囲気下、700〜1100℃、より好ましくは800〜1000℃で筒状炭素質体を活性化する処理とすることができる。炭化処理があると活性炭としての活性が高まるので好ましいものの、炭化処理を省略して賦活処理を行うこともできる。
【0047】
以上説明したようにして、活性炭原料とバインダーとを含み内外方向へ流体が流通可能とされた賦活前の筒状炭素質体20から、活性炭原料を含み内外方向へ流体が流通可能とされた筒状活性炭19が形成される。従って、本製造例は、例えば中空糸膜のような濾過能力に加えて活性炭の性能を有する新規の筒状炭素質体を提供することができる。
【0048】
図5(b)は、水溶化した熱可塑性バインダーを用いて筒状炭素質体20を製造し、筒状活性炭19を製造する例を示している。本製法の混合工程S3では、活性炭原料21とバインダー22と水23と必要に応じて添加剤24とを含む素材を混合装置で混合する。省略した途中の工程S4〜S6は、図3で示した工程S4〜S6と同様である。熱処理工程S7では、筒状成形体をバインダーの軟化温度以上で熱処理する。軟化温度未満まで冷えた後、賦活工程S10では、筒状炭素質体20を賦活して筒状活性炭19を形成する。
【0049】
図5(c)は、残留性の熱可塑性バインダー(第一のバインダー)、及び、非残留性の水溶性バインダー(第二のバインダー)を用いて筒状炭素質体20を製造し、筒状活性炭19を製造する例を示している。省略した途中の工程S4〜S8は、図4で示した工程S4〜S8と同様である。
本製法の混合工程S3では、活性炭原料21と残留性バインダー22Aと非残留性バインダー22Bと水23と必要に応じて添加剤24とを含む素材を混合装置で混合する。以後、混練工程S4、押出工程S5及び整形工程S6を経て、熱処理工程S7で筒状成形体を残留性バインダー22Aの軟化温度以上で熱処理する。熱処理後、軟化温度未満まで冷えると、長尺な筒状成形体の形状が保持される。水洗浄工程S8では、長尺な筒状成形体を水で洗って非残留性バインダー22Bを除去する。乾燥工程S9では、水で洗った筒状成形体を乾燥させる。形成される筒状炭素質体20は、残留性バインダー22Aが残留し長手方向に沿って貫通孔が形成された長尺な筒状炭素質体であり、該筒状炭素質体の内外方向へ流体が流通可能とされている。賦活工程S10では、筒状炭素質体20を賦活して筒状活性炭19を形成する。
【0050】
(3)筒状活性炭を適用した濾過カートリッジの説明:
種々の方法で形成される長尺な筒状活性炭は、例えば、図6(a)〜(d)に示すような濾過カートリッジ30に使用することができる。図6(a)では、上半分を断面視している。濾過カートリッジ30は、筒状活性炭10(筒状活性炭19も可。以下、同様。)を複数束ねた筒状活性炭束50がケース40内に固定されている。
ケース40は、略円筒状の本体部41と、互いに本体部41の軸方向AD1の反対側に設けられた流入端42及び流出端43とを有している。流入端42には、濾過前の流体の流入口42aが形成されている。流出端43には、濾過後の流体の流出口43aが形成されている。ケース40は、熱可塑性樹脂といった合成樹脂、ステンレスといった金属、セラミックス、活性炭、等で形成することができる。
【0051】
筒状活性炭束50を構成する各筒状活性炭10は、流出端43側が開口端7である一方、流入端42側に閉塞端6が形成されている。閉塞端6は、例えば、筒状活性炭10の閉じる前の開口端を加熱して潰すことにより形成することができる。また、筒状活性炭10の閉じる前の開口端をポッティング剤等で塞いで閉塞端6を形成しても良い。筒状活性炭束50は、各筒状活性炭10が閉塞端6を合わせ開口端7を合わせて複数束ねられ、開口端7を有する開口端部52がポッティング剤60でケース流出端43に固定されている。従って、筒状活性炭束50の閉塞端部51が流入口42a側の流路44に配置され、この流入口側流路44に各筒状活性炭10の外側面4が配置され、各筒状活性炭10の孔(2)が流出口43a側の流路45とされている。
なお、ポッティング剤には、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、不飽和ポリエステル樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、といった硬化性樹脂系接着剤、ホットメルトといった熱可塑性樹脂系接着剤、等を用いることができる。ホットメルトには、PEといったポリオレフィン系の接着剤、EVA樹脂(エチレン・酢酸ビニルコポリマー)系の接着剤、等を用いることができる。むろん、ポッティング剤以外の固定手段で開口端部52をケース流出端43に固定してもよい。
【0052】
流入口42aから流入した流体は、流入口側の流路44から各筒状活性炭10を内外方向へ流通して孔(2)に入り、流出口43aから流出する。平均粒径0.2〜200μmの活性炭を含む長尺な筒状活性炭に内外方向へ繋がる隙間があるので、例えば中空糸膜のような好ましい濾過性能が得られる。また、筒状活性炭は、単なる炭素材料でないので、流体を各筒状活性炭の内外方向へ流通させて濾過するとき、活性炭の機能が発揮される。従って、本濾過カートリッジ30は、中空糸膜や活性炭を別々の位置に格納する必要が無くなる。
【0053】
なお、各筒状活性炭の閉塞端6が流入口側流路44に配置され開口端7が流出口側流路45に配置されると濾過能力が長期間得られるので好ましいものの、各筒状活性炭の閉塞端6が流出口側流路45に配置され開口端7が流入口側流路44に配置されてもよい。
【0054】
濾過カートリッジ30は、水等の液体を処理する液体用カートリッジや、空気等の気体を処理する気体用カートリッジに使用することができる。濾過カートリッジ30を浄水器カートリッジに使用すると、水道水に含まれる鉄さびといった濁り成分等を除去する中空糸膜の濾過機能と、水道水に含まれる遊離残留塩素や有機物等の微量成分を除去する活性炭の機能とが得られる。また、濾過カートリッジ30を空気清浄カートリッジに使用すると、空気中に含まれる浮遊粒子を除去する濾過機能と、空気中に含まれる臭気成分を除去する活性炭の機能とが得られる。
【0055】
なお、筒状活性炭の原料に性質及び/又は粒度分布の異なる二種類以上の活性炭や添加剤を用いると、各除去物質をバランス良く処理可能な筒状活性炭を得ることができる。例えば、比較的大きい粒状フェノール活性炭は、賦活が抑えられることにより、トリハロメタンの吸着に優れた0.7nm付近の細孔が発達している。一方、比較的小さいヤシ殻系活性炭や繊維状活性炭は、賦活が進んで表面積が大きく、残留塩素の除去に優れている。そこで、粒状フェノール活性炭と、ヤシ殻系活性炭や繊維状活性炭と、必要に応じて金属処理剤とを用いて造粒活性炭を形成すると、ヤシ殻系活性炭単独や、フェノール活性炭単独や、金属処理剤単独では得られない複合した除去能力を得ることができる。
【0056】
上述した本技術のメリットとして、以下のことも考えられる。
例えば、筒状活性炭の断面積を中空糸膜と同等の断面積とすることができるので、粒子径の小さい活性炭を使用した濾過カートリッジに生じ易い目詰まりを抑制することができる。従って、濾過カートリッジを小型化、高性能化することが可能になる。また、小型化により、カートリッジ収納部の長さ及び径方向の制限が緩和され、濾過カートリッジを略円柱状にとらわれない形状にすることができ、デザインの自由度が高まる。
筒状活性炭を束ねて濾過カートリッジを形成することにより、ケース内の空間に対して効率良く筒状活性炭を収容することができ、また、粒状活性炭を密に充填したときに生じる圧力集中を分散することができる。従って、流量を増やし、高い濾過性能を実現することができる。
【0057】
抗菌剤を含めて筒状活性炭を形成することにより、長期止水時に微生物により発生する臭いを抑制することが可能になる。
筒状活性炭で最終処理を行うことにより、膜や膜ケースといった樹脂部品から発せられる樹脂臭や味を抑制することが可能になる。
また、動植物の遺体由来の複雑な混合物で水環境中に普遍的に存在しているNOM(天然有機物;Natural Organic Matter)の除去にも、筒状活性炭を使用することができる。
【0058】
(4)実施例:
以下、実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は以下の例により限定されるものではない。
【0059】
[実施例]
以下の実施例において、「活性炭」はヤシ殻系活性炭(クラレケミカル株式会社製GW48/100を遊星ボールミルFRITSCH社製P-5型にて平均粒径8μm又は20μmとしたもの)、「第一のバインダー」はポリオレフィン水性ディスパージョン(三井化学株式会社製、商品名:ケミパール(登録商標)S100)、「第二のバインダー」はCMC(アズワン株式会社製)、である。ブレンダーには、株式会社井上製作所PLM-15を用いた。押出成形機には、真空混錬押出成形機を用いた。流量測定及び濾過モジュール作製のためのホットメルトには、株式会社モレスコ製ホットメルト(商品名:モレスコメルト(登録商標)ME-125)を用いた。
【0060】
[実施例1]
平均粒径8μmとした活性炭100重量部、第一のバインダー20重量部、第二のバインダー7重量部、水98重量部、をブレンダーに入れ、室温下、500rpmで10分間、混合した。混合物を押出成形機に入れ、混練して長さ100mmに押出成形した。直線状に整形し、120℃で2時間熱処理した後に第一のバインダーを固化させ、第二のバインダーを取り除くため流水で4時間洗浄した。得られた筒状炭素質体サンプルは、複数本の平均値として、平均外径0.85mm、平均内径0.12mm、長さ98.9mm、重量0.05g、であった。
【0061】
[実施例2]
平均粒径20μmとした活性炭100重量部、第一のバインダー15重量部、第二のバインダー5重量部、水80重量部、をブレンダーに入れ、室温下、500rpmで10分間、混合した。混合物を押出成形機に入れ、混練して長さ100mmに押出成形した。直線状に整形し、120℃で2時間熱処理した後に第一のバインダーを固化させ、第二のバインダーを取り除くため流水で4時間洗浄した。得られた筒状炭素質体サンプルは、複数本の平均値として、平均外径1.0mm、平均内径0.3mm、長さ99.2mm、重量0.07g、であった。
【0062】
[比較例1]
中空糸膜サンプルとして、ポリスルホン製中空糸膜(NOK株式会社製、平均外径0.4mm、平均内径0.3mm)を長さ100mmに切断したものを用いた。
【0063】
[流量の測定]
実施例1,2及び比較例1の筒状サンプルの一端をホットメルトで閉じ、外側面に100kPaの動水圧を加えて内側面から出てくる水の流量を測定した。
【0064】
[濾過カートリッジサンプルの作製]
実施例1,2及び比較例1の筒状サンプルの一端をホットメルトで閉じたものを500本束ねて内径80mmのカラムに充填し、開口した筒状サンプルの他端を塞がないようにホットメルトで固定し、濾過カートリッジサンプルを作製した。
【0065】
[濾過能力の測定]
JIS S3201「家庭用浄水器試験方法」に準じて、濁度標準液0.1mgカオリン/mLを用いて濁度2.0度に調整した原水を上記濾過カートリッジサンプルに2L/minで10分間通水し、濾過水の濁度を測定した。
【0066】
[吸着性能の評価]
JIS S3201「家庭用浄水器試験方法」に準じて、遊離残留塩素濃度2.0mg/Lの水溶液を上記濾過カートリッジに2L/minで10分間通水し、遊離残留塩素濃度を測定した。
【0067】
[試験結果]
試験結果を表1に示す。
【表1】
表1に示すように、実施例1,2の筒状炭素質体サンプルは、内外方向へ流体が流通可能とされていた。
また、実施例1,2の筒状炭素質体サンプルは、中空糸膜のように濾過性能を有していた。
さらに、実施例1,2の筒状炭素質体サンプルは、活性炭の吸着性能を有していた。
従って、本発明の筒状炭素質体は、濾過性能に加えて活性炭の性能を有することが確認された。
【0068】
(5)具体例:
次に、具体例を示して本発明を説明するが、本発明は以下の例により限定されるものではない。
【0069】
[具体例]
以下の具体例において、「第一のバインダー」、「第二のバインダー」、「ブレンダー」、「押出成形機」及び「ホットメルト」は上記実施例と同じものを用い、「活性炭原料」はヤシ殻を用いるものとする。
【0070】
[具体例1]
平均粒径8μmとした活性炭原料100重量部、第一のバインダー20重量部、第二のバインダー7重量部、水98重量部、をブレンダーに入れ、室温下、500rpmで10分間、混合する。混合物を押出成形機に入れ、混練して、平均外径0.85mm、平均内径0.12mm、長さ100mmを目標として押出成形する。直線状に整形し、120℃で2時間熱処理した後に第一のバインダーを固化させ、第二のバインダーを取り除くため流水で4時間洗浄する。得られる筒状炭素質体サンプルに対して窒素存在下700℃で10分間炭化処理を行い、その後、水蒸気存在下900℃で15分間賦活処理を行って、筒状活性炭サンプルを得る。
【0071】
[具体例2]
平均粒径20μmとした活性炭原料100重量部、第一のバインダー15重量部、第二のバインダー5重量部、水80重量部、をブレンダーに入れ、室温下、500rpmで10分間、混合する。混合物を押出成形機に入れ、混練して、平均外径1.0mm、平均内径0.3mm、長さ100mmを目標として押出成形する。直線状に整形し、120℃で2時間熱処理した後に第一のバインダーを固化させ、第二のバインダーを取り除くため流水で4時間洗浄する。得られた筒状炭素質体サンプルに対して窒素存在下700℃で10分間炭化処理を行い、その後、水蒸気存在下900℃で15分間賦活処理を行って、筒状活性炭サンプルを得る。
【0072】
[流量]
具体例1,2の筒状活性炭サンプルの一端をホットメルトで閉じ、外側面に100kPaの動水圧を加えて内側面から出てくる水の流量を測定する。流量は、0.5〜70mL/min・100mmになると推測される。
【0073】
[濾過カートリッジサンプルの作製]
具体例1,2の筒状活性炭サンプルの一端をホットメルトで閉じたものを500本束ねて内径80mmのカラムに充填し、開口した筒状活性炭サンプルの他端を塞がないようにホットメルトで固定し、濾過カートリッジサンプルを作製する。
【0074】
[濾過能力]
JIS S3201「家庭用浄水器試験方法」に準じて、濁度標準液0.1mgカオリン/mLを用いて濁度2.0度に調整した原水を上記濾過カートリッジサンプルに2L/minで10分間通水し、濾過水の濁度を測定する。濁度は、2.0度から低下すると推測される。
【0075】
[吸着性能]
JIS S3201「家庭用浄水器試験方法」に準じて、遊離残留塩素濃度2.0mg/Lの水溶液を上記濾過カートリッジサンプルに2L/minで10分間通水し、遊離残留塩素濃度を測定する。遊離残留塩素濃度は、2.0mg/Lから低下すると推測される。
【0076】
以上のことから、活性炭原料を用いた筒状炭素質体を賦活した筒状活性炭も、濾過性能に加えて活性炭の性能を有すると推測される。
【0077】
(6)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、新規の筒状材料の技術等を提供することができる。むろん、従属請求項に係る構成要件を有しておらず独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1…筒状炭素質体、2…貫通孔、3…内側面、4…外側面、5…隙間、
6…閉塞端、7…開口端、
10,19…筒状活性炭、11…活性炭、12,22…バインダー、
20…賦活前の筒状炭素質体、21…活性炭原料、
30…濾過カートリッジ、
40…ケース、41…本体部、42…流入端(流入口側の端部)、42a…流入口、
43…流出端(流出口側の端部)、43a…流出口、
44…流入口側の流路、45…流出口側の流路、
50…筒状活性炭束、51…閉塞端部、52…開口端部、
60…ポッティング剤、
LD1…長手方向、RD1…内外方向、AD1…軸方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6