(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775059
(24)【登録日】2015年7月10日
    
      
        (45)【発行日】2015年9月9日
      
    (54)【発明の名称】ピペットチップ
(51)【国際特許分類】
   B01L   3/02        20060101AFI20150820BHJP        
   G01N  35/10        20060101ALN20150820BHJP        
   G01N   1/00        20060101ALN20150820BHJP        
【FI】
   B01L3/02 D
   !G01N35/10 G
   !G01N1/00 101K
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】15
      (21)【出願番号】特願2012-275879(P2012-275879)
(22)【出願日】2012年12月18日
    
      (65)【公開番号】特開2013-136052(P2013-136052A)
(43)【公開日】2013年7月11日
    【審査請求日】2013年10月18日
      (31)【優先権主張番号】11010189.6
(32)【優先日】2011年12月23日
(33)【優先権主張国】EP
    
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】591121683
【氏名又は名称】エッペンドルフ  アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf  AG
          (74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷  勉
          (74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高  弘幸
          (74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷  知彦
          (74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原  要
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】ヨッハン・ベーゼ
              
            
        
      
    
      【審査官】
        岡谷  祐哉
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          米国特許第06197259(US,B1)    
        
        【文献】
          欧州特許出願公開第02138234(EP,A1)    
        
        【文献】
          特表平05−500025(JP,A)      
        
        【文献】
          米国特許第07335337(US,B1)    
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L      1/00−99/00
G01N      1/00−  1/34        
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  液体通過用に下端(3)に下部開口(4)および上端に上部開口(6)を有する細長い小管形状を有するピペットチップであり、
  上部開口(6)に隣接する内周部に座部領域(30)を有し、
  前記座部領域は、ピペット装置(31)の規格化された円錐取付け部分(37)に接続するために利用され、
  前記座部領域(30)は、内側に向けて放射状に突き出ている軸方向に伸びる第1リブ(12)を備えた保持領域(11)を有し、
  前記保持領域(11)の下方で、封止領域(19)が、取付け部分(37)上でピペットチップ(1)の保持および封止を確保する接続力によって座部領域(30)にピペットチップ(1)が接続されるとき、第1リブ(12)が部分的に可塑変形し、かつ、当該弾性変形が、第1リブ(12)の外側の座部領域(30)で生じるように構成されているピペットチップ。
【請求項2】
  請求項1に記載のピペットチップにおいて、
  前記第1リブ(12)が、円周上に均等に分布されているピペットチップ。
【請求項3】
  請求項1また2に記載のピペットチップにおいて、
  3〜12個の第1リブ(12)を有するピペットチップ。
【請求項4】
  請求項1から3のいずれかに記載のピペットチップにおいて、
  前記取付け部分(37)でピペットチップ(1)の保持および封止を確保するための接続力によって、当該取付け部分(37)にピペットチップ(1)が接続されたとき、第1リブ(12)は、取付け部分(37)が占める位置に応じて規格化された円錐取付け部分(37)と重なり合う外形を有し、
  当該外形は、少なくとも0.1mmである
  ことを特徴とするピペットチップ。
【請求項5】
  請求項1から4のいずれかに記載のピペットチップにおいて、
  上部開口(6)に隣接し、当該上部開口の内側で内向き放射状に突き出ており、軸方向に伸びる第2リブ(13)を有し、
  当該第2リブ(13)が、第1リブ(12)よりも内向き軸方向に小さく伸び、2個の第1リブ(12)の間ごとに配置されているピペットチップ。
【請求項6】
  請求項5に記載のピペットチップにおいて、
  取付け部分(37)でピペットチップ(1)の保持および封止を確保するための接続する力によって当該取付け部分(37)にピペットチップ(1)を接続したとき、前記第2リブ(13)が、変形しない必要な大きさに構成されているピペットチップ。
【請求項7】
  請求項5または6に記載のピペットチップにおいて、
  第1リブ(12)および/または第2リブ(13)が、内向き放射状に先細りの輪郭を有するように構成されているピペットチップ。
【請求項8】
  請求項7に記載のピペットチップにおいて、
  第1リブ(12)および/または第2リブ(13)が、三角形、台形または放物線状の輪郭を有するように構成されているピペットチップ。
【請求項9】
  請求項5から8のいずれかに記載のピペットチップにおいて、
  ピペットチップは、外周に溝彫り(28)を有し、当該溝彫り(28)は、第1リブ(12)および/または第2リブ(13)に重なるように構成されているピペットチップ。
【請求項10】
  請求項1から9のいずれかに記載のピペットチップにおいて、
  前記ピペットチップは、前記第1リブ(12)が配置される領域および/または封止領域(19)において上部開口に向けて円錐形に拡張するように構成されているピペットチップ。
【請求項11】
  請求項1から10のいずれかに記載のピペットチップにおいて、
  前記封止領域(19)で環状に内向きに突き出ている封止ノーズ(20)を有するように構成されているピペットチップ。
【請求項12】
  請求項1から11のいずれかに記載のピペットチップにおいて、
  前記保持領域(11)の壁の厚みは、封止領域(19)の壁の厚みより大きくなるように構成されているピペットチップ。
【請求項13】
  請求項1から12のいずれかに記載のピペットチップにおいて、
  前記ピペットチップは、規格化された円錐取付け部分(37)での差し込み接続を制限する手段を有し、
  当該接続力が、取付け部分(37)でピペットチップ(1)の保持、封止および第1リブ(12)の部分的に可塑的な変形を確実に達成させるとき、当該制限する手段は、取付け部分(37)で差し込み接続を停止するように構成されているピペットチップ。
【請求項14】
  請求項13に記載のピペットチップにおいて、
  接続領域を制限する手段(29)は、下方の封止領域(19)から上部開口に向けて円錐形に広がる制動領域(29)である
  ことを特徴とするピペットチップ。
【請求項15】
  請求項1から14のいずれかに記載のピペットチップにおいて、
  前記ピペットチップは、プラスチック材料で作成されており、ポリオレフィン、ポリプロピレンおよびポリエチレンのいずれかで構成されているピペットチップ。
 
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、ピペットチップに関する。
 
【背景技術】
【0002】
  ピペットチップは、ピペットおよび他の計量装置とともに液体を測定するために用いられる。以下において、ピペットおよび計量装置は、「ピペット装置」として要約される。ピペットチップは細長い管状体を備えている。当該ピペットチップの下端に液体をピペットで移す開口およびピペット装置の取付け部分に接続されるための上部接続用の開口を有する。標準的な接続構造を有する規格化された円錐取付け部分は、公知である。それは、多くの製造業者によって一様に利用されており、かつ、円錐取付け部分の特定の平均直径および特定の円錐角度によってピペットチップごとに特徴付けられている。
【0003】
  ピペット装置は、ガス排除要素を備えている。当該ガス排出要素は、軸方向に移動可能なシリンダを有するピストンである。ガス排除要素は、取付け部分の管孔に連通している。ピペットチップは、その上部開口にピペットの取付け部分を押圧することによって、取付け部分に密封固定される。
【0004】
  取付け部分に着座しているピペットチップに液体を吸い込むまたはピペットチップから液体を放出するために、気柱は、ガス排出要素によって同様に変位される。気柱がピペットチップから遠ざけられるとき、一定量の液体が下部開口を通してピペットチップに吸い込まれる。ピペットチップに向けて気柱を移動することによって、ある量の液体が下部開口を通してピペットチップから放出される。
【0005】
  大部分のピペット装置は、エジェクタを備えている。取付け部分からエジェクタを押して取り外すためにピペットチップの上端に力が作用する。このとき、取付け部分からピペットチップを取り外すために、ユーザは、汚染されたピペットチップへの接触から回避される。
【0006】
  ピペット装置は、ユーザの手のみで保持および操作可能な手動式ピペットである。ピペット装置は、計測ステーションでもありまたはワークステーションに内蔵されることもあり得る。全てのケースにおいて、ガス排除要素は、手動またはモータによって作動させることができる。ピペットチップの接続および取り外しは、手動またはモータによっても行うことが可能である。
【0007】
  誤ったピペットの取り扱い動作を回避するために、ピペットチップは、取付け部分に密封して取り付けられなければならない。さらに、取付け部分へのピペットチップの接続および取付け部分から取り外すための力は、あまり高くてはならない。従来のピペットチップにおいて、ピペットチップと円錐取付け部分間の接触領域は、円錐台のようになっている。ピペットチップを接続するとき、ピペットチップは、取付け部分によってその円周で弾性的に拡大される。バネ特性は急勾配であるので、高い接続力を利用しなければならない。接続後に、それに応じて高い静止摩擦が取付け部分とピペットチップの間に作用する。ピペットチップが取り外されるとき、この静止摩擦は克服されなければならない。ピペットチップを接続または取り外すための高い力による負担が、ユーザにかけられる。接続および取り外しがモータ駆動部によって行われる限り、これらは、それに応じて強力でなければならないし、高いエネルギー消費を必要とする。
【0008】
  文献US 6,197,259B1は、6ポンドおよび3ポンド(26.7Nおよび13.3N)の軸方向の小さなそれぞれの力でピペット取付け部分へのマウントおよび取り外しを容易かつ確実に可能とするピペットチップを記載している。ピペットチップは、管状ピペット部分を有する。当該管状ピペット部分は、ピペットチップが塞がれるピペット取付け部分の直径よりも大きな内径をその上部に有する円錐上部を有する。さらに、ピペットチップは、上端部と中央部の間の接続に中空中央部分と環状封止領域を有する。取付け部分にピペットチップが挿入されたとき、環状封止領域は、外向き放射状に拡大されるように、値「x」よりも小さい内径を有し、取付け部分の封止ゾーンの下端に係合するように設計されている。それによって、取付け部分の封止ゾーンとピペットチップの封止領域の間に液体不浸透性シーリングが生じる。さらに、ピペットチップは、封止領域の隣に横方向安定化手段を有する。当該横方向安定化手段は、取付け部分にピペットチップを安定させるために、取付け部分の外面と係合する。少なくとも3つの接点を有するこれら横方向安定化手段は、円周方向に間隔を置かれており、ピペットチップの内面から内向きに伸びている。接点の直径は、取付け部分の自由端と容易に係合するとともに、取付け部分が、接点の配置部分でピペットチップの側面を拡張することなく取付け部分に沿ってスライド可能にする必要な大きさにされる。壁によって液体がはぎ取られるように、横向き外側への力が、ピペットチップに作用したとき、ピペットチップが横に移動するのを防止するために、接点は、取付け部分でピペットチップの横方向の支持をもたらす。取付け部分の封止ゾーンの下端が、ピペットチップの封止領域に係合するとき、ピペットチップは、封止領域で拡大し、直ちに当該封止ゾーンの下端で隣接する。接点が、取付け部分の先端を案内し、取付け部分に安定かつ安全に配置するとき、接点を支持するピペットチップの側壁は、内向きに変形して拡張されない。これによって、最小限の力のみが、挿入時に取付け部分に及ばされる。
【0009】
  文献US 7,339,373B1は、人間工学的に設計されたピペットチップを記載している。当該ピペットチップは、ピペットにシャフトに安全に接続することができ、さらに、接続および取り外しに費やされる軸方向の力が、同時に大幅に減少させられる。人間工学的なピペットチップには、射出成形で作られる薄い拡張間隙が具備されている。ピペットシャフトが、ピペットチップの封止領域に挿入されるとき、曲げバネ原理によってピペットチップの上端を拡大するのに必要な力を減らすために、当該拡張部分は、両側に分厚い壁部分および/または第2の弾性体が接している。さらに、ピペットチップは、その内側に1個あるいは複数個の突起を有する。当該突起は、ストッパとしてピペットチップにピペットシャフトを入れる差込み口の深さを制限することを目的とする。
【0010】
  文献は、細長い管状体でプラスチックのピペットチップを記載している。当該ピペットチップは、下端にピペットで取り込む開口を有し、上端にピペット装置の固定軸に接続するための差込み開口を有する。上端近くに、ピペットチップは、閉曲線に沿って循環し、異なる円周位置で下端から異なる距離に第1帯を有する。循環帯は、内側に接触領域を有し、回転平面に広がる。第2帯は、上端部まで伸びている。当該第2帯は、下端から最も遠く離れている循環帯の位置から始まる。循環帯の内側の接触領域において、ピペットチップは、ピペット装置の取付け部分を封止して入り込む。ピペットチップを取り外すとき、ピペット装置のエジェクタは、ピペットチップの上端で第2帯を押す。第2帯によって取り外す力は、下端から最大限に遠く離れている循環帯の位置に伝達される。循環帯のこれらの位置は、このことにより下端の方へ多少押圧される。ピペットチップの管状体に直角に適応される平面に対し、循環帯は、いくらか押圧されて扁平になる。第2帯は、硬い領域を形成し、力の伝達時に比較的弱い変形だけを受ける。循環帯は、横方向に第2帯に適応するので、当該循環帯は、第2帯の方向に導かれる力によって比較的容易に変形することができる。結果として、循環帯はいくらか拡大し、循環帯または接触領域の内側と取付け部分のそれぞれの間の静止摩擦が、それに応じて減少する。したがって、取付けシャフトからピペットチップを分離するための必要な力は、減少させられる。さらに、ピペットチップは、循環帯の領域でより曲げやすい。その結果、取付け部分にピペットチップを接続する力も減少させられ、異なる寸法を有する取付けシャフトに接続するのに好都合である。
【0011】
【特許文献1】米国出願公開公報US 6,197,259B1
【特許文献2】米国出願公開公報US 7,339,373B1
【特許文献3】欧州出願公開公報EP1 520 624 B1
 
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
  上記各文献のピペットチップにおいて、ピペットチップおよび取付け部分の寸法のバリエーションは、ピペットチップの弾性拡張によって補償される。座部領域のピペットチップの内径が、標準サイズより大きく下回り、または、取付け部分の外径が、標準サイズを大きく超える場合のそれぞれについて、接続および取り外しの高い力が、結果として生じる。
 
【課題を解決するための手段】
【0013】
  この事情に鑑みて、本発明は、ピペット装置から取り外すための必要な力が減少するピペットチップを提供する課題に基づき、外径許容誤差は、当該取り外し力に対してほとんど影響しない。
【0014】
  この目的は、当該課題は、請求項1の特徴を有するピペットチップによって成し遂げられる。ピペットチップの有利な実施態様は、下位の請求項において示される。
【0015】
  本発明のピペットチップは、
  液体通過用に下端の下部開口および上端に上部開口を有する細長い小管形状を有し、
  前記上部開口に隣接する内周部に座部領域を有し、
  当該座部領域は、ピペット装置の規格化された円錐取付け部分に接続するために利用され、
  前記座部領域は、内側に向けて放射状に突き出ている軸方向に伸びる第1リブを備えた保持領域を有し、
  当該保持領域の下方の封止領域は、取付け部分にピペットチップの保持および封止を確保する接続力によって座部領域にピペットチップが接続されるとき、第1リブが部分的に弾性変形し、かつ、当該弾性変形が、第1リブの外側の座部領域で生じるように構成されている。
【0016】
  本発明のピペットチップが、ピペット装置の規格化された円錐取付け部分に接続されたとき、軸方向第1リブの領域での表面圧力は、軸方向第1リブの可塑変形を生じさせる。さらに、ピペットチップは、弾性力のある第1リブの外側の座部領域で弾性力をもって変形する。接続力の一部は、第1リブの塑性変形のために消費され、当該接続力の他の一部は、弾性変形で蓄積される。その結果、ピペットチップは、付勢によって取付け部分に保持される。第1リブは、横方向にピペットチップを支持するので、当該ピペットチップは、横方向の力の影響を受けて振動しない。ピペットチップを取り外すために、弾性変形によって蓄積される力だけは、克服されなければならない。ピペットチップが取り外されるとき、第1リブの塑性変形に割り当てられる接続力の一部が、新たに蓄積される応力として克服される必要はない。取り外し力は、ピペットチップと取付け部分の間の弾性付勢によって生じている摩擦力を克服しなければならない。ピペットチップおよび取付け部分の外径の許容誤差は、第1リブの塑性変形によって補償され、従来のピペットチップの弾性変形に比べて座部領域の弾性変形に与える作用が少ない。取り外し力の外径許容誤差の影響は、これによって減少される。
【0017】
  したがって、取付け部分から本発明のピペットチップを取り外すためには、小さい取り外し力だけが費やされる。これは、エジェクタを有する手動式ピペットのユーザが親指によって当該取り外し力を作用させることにより開放される。ユーザは、前腕および手によって必要な取り外し力を容易に発揮することができる。同様に、モータ駆動エジェクタも本発明のピペットチップによって開放される。
【0018】
  座部領域の弾性変形は、封止領域内および/またはリブ間の保持領域内において起こり得ることがある。弾性変形は、封止領域、または、リブ間の領域に限定することができ、または、リブ間の領域内と同様に封止領域内において起こりうる。リブの塑性変形および座部領域の弾性変形は、座部領域の形状およびピペットチップの材料で決定される。リブの塑性変形は、特にリブ輪郭で決定される。リブの領域でのピペットチップの壁厚は、この領域の弾性変形の量を決定する。リブの領域での当該壁厚は、ピペットチップがしっかりとそこで機能する大きさとして選択されることができ、リブの塑性変形だけが生じる。封止領域の弾性ゴムまたは塑性変形は、特に、封止領域のピペットチップの壁厚によって決定されることができる。この場合、内部の封止領域で広がる封止ノーズの形状で決定される。
【0019】
  規格化された円錐取付け部分は、ピペットチップの寸法ごとに、特定の平均直径および特定の円錐角度によって決定される。これは、下表にまとめられる:
【0020】
【表1】
【0021】
  直径仕様の許容誤差は、+/−0.05  mmおよび角度仕様の許容誤差は+/−0.3°である。
【0022】
  一実施態様によれば、リブは、円周の上に一様に割り当てられる。座部領域のピペットチップの均一な変形および支持は、これによって好適にされる。
【0023】
  さらなる実施態様によれば、ピペットチップは、3〜12個のリブ、好ましくは5〜7個の第1リブ、さらに好ましくは6個の第1リブを備えている。均一な支持は、これによって達成される。可塑変形可能なリブ形状を有する上述の第1リブ数は、容易に製造することができる。
【0024】
  さらなる実施態様によって、前記取付け部分でピペットチップの保持および封止を確保するための接続力によって、当該取付け部分にピペットチップが接続されたとき、リブは、取付け部分が占める位置に応じて、規格化された円錐取り付け部分と重なり合う外形を有し、その外形は、少なくとも0.1mm、好ましくは少なくとも0.2mmおよび/または最も効果的には0.5mm、さらに最も好ましくはましくは0.3mmである。この形状の重なりは、リブの部分的な塑性変形を支持する。
【0025】
  さらなる実施態様によれば、ピペットチップは、上部開口に隣接し、当該上部開口の内側で内向き放射状に突き出ている軸方向に伸びる第2リブを有し、当該第2リブは、2個の第1リブ間ごとに配置される。第2リブは、取付け部分でピペットチップの付加的なガイドとして機能することができ、ピペットチップが取付け部分に接続されるとき、当該第2リブは変形を受けない、または、第1リブよりも小さい変形をするだけである。好ましい実施形態によれば、取付け部分でピペットチップの保持および封止を確保するための接続力によって当該取付け部分にピペットチップを接続したとき、第2リブは、変形しない必要な大きさにされる。
【0026】
  さらなる実施態様によれば、第1リブおよび/または第2リブは、内向き放射状に先細りの輪郭を有する。輪郭の内端で軸方向リブの塑性変形は、これによって支持される。さらなる実施態様によれば、第1リブおよび/または第2リブは、三角形、台形または放物線の輪郭を有する。
【0027】
  好ましい実施態様によれば、ピペットチップは、外周に溝彫りを有し、当該溝彫りは、第1リブおよび/または第2リブに重なる。当該溝彫りは、例えば、リブ領域でピペットチップを固定し、または、ピペットチップに特性を与えるのに役立つ。溝彫りがピペットチップに特性を与えるのに役に立つという場合、第1リブおよび/または第2リブより上の溝彫りの配置が、透明なピペットチップの溝彫りの認知可能性を支持する。さもなければ、第1リブおよび/または第2リブは、溝彫りとして知覚されることができる。
【0028】
  さらなる実施態様によれば、ピペットチップは、リブが配置されておよび/または封止領域にある領域の上部開口に向けて円錐形に拡張する。ピペット装置の取付け部分の挿入は、これによって支持される。原則として、前述の領域は円錐形状に代えて円筒形状を有することができる。ただし、リブは塑性変形によって規格化された円錐取付け部分に適合され、封止領域に循環封止ノーズを存する。それによって、封止領域は取付け部分を圧迫する。
【0029】
  さらなる実施態様によれば、封止領域は、その内側の円周上で内向き環状に突き出ている封止ノーズを有する。封止ノーズは、例えば封止ビードまたはシールリップである。
【0030】
  さらなる実施態様によれば、ピペットチップは、リブが配置される領域を有し、壁厚は封止領域の壁厚よりも大きい。ピペットチップは、軸方向リブの領域ではより硬い。それによって、リブの塑性変形は支持される。
【0031】
  さらなる実施態様によれば、前記ピペットチップは、規格化された円錐取付け部分での接続を制限する手段を有する。接続する力が、取付け部分でピペットチップの保持および封止およびリブの可塑変形を確実に達成させるとき、当該手段は、取付け部分での接続を停止する。軸方向リブの可塑変形は、これを通じて適切な範囲に制限することができる。前記制限する手段は、接触によって形成され、当該手段は、ピペットチップの内周から内向きに突き出た1個または複数個の突起によって形成される。
【0032】
  さらなる実施態様によれば、接続を制限する手段は、下方の封止領域から上部開口に向けて円錐形に広がる制動領域である。規格化された円錐取付け部分の接続が実行されるとき、取付け部分の下端が制動領域に衝突し、取付け部分の挿入移動が、制動領域の円錐形状によって徐々に停止される。これによって、ユーザは従来の接触部材による負担をかけられない。また、従来の接触部材は、急激に接続移動を止める。
【0033】
  ピペットチップは、好ましくはプラスチック材料で形成される。さらに好ましくは、ピペットチップは、ポリオレフィン、好ましくはポリプロピレンまたはポリエチレンで形成されている。さらなる実施態様によれば、ピペットチップは、光透過可能であり、好ましくは透明である。さらに好ましくは、ピペットチップは、射出成形によって製造される。ピペットチップの内径および/または外径は、下部開口から上部開口に向けて増加することが好ましい。
【0034】
  以下に、本発明は、その実現可能な実施例を添付の図面を用いてさらに詳細に説明される。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1a】軸方向リブおよび環状封止ノーズを有するピペットチップの側面図である。
【
図1b】
図1aに示すピペットチップの縦断面図である。
【
図1c】
図1aに示すピペットチップの拡大底面図である。
【
図1d】
図1aに示すピペットチップの拡大平面図である。
【
図1e】
図1aに示すピペットチップの破断斜視図である。
【
図2】
図1のピペットチップが接続されるときの取付け部分とピペットチップの側面図である。
【
図3】
図1のピペットチップの封止領域に挿入された取付け部分の部分縦断面図である。
【
図4】本発明のピペットチップ(a)と従来のピペットチップ(b)の接続および取り外しの比較を示す図である。
【
図5a】異なるサイズのピペットチップを接続するための規格化された円錐取り付け部分の平均直径および円錐角度を示す。
【
図5b】異なるサイズのピペットチップを接続するための規格化された円錐取り付け部分の平均直径および円錐角度を示す。
 
【発明を実施するための形態】
【0036】
  本出願において、ピペットを扱うときのピペットチップの方向に基づき「上」および「下」と呼称する。つまり、ピペットチップが垂直な正しい位置に置かれ、下部開口が下側に位置するとともに、上部開口が上側に位置する。
 
【0037】
  異なる実現可能な実施例の以下の説明において、一致する特徴は、同一参照符号によって示される。
 
【0038】
  図1によれば、ピペットチップ1は、細長い管状体2を備えている。当該ピペットチップ1は、下端3に下部開口4を有し、上端5に接続用の上部開口6を有する。下部開口4は、上部開口6より小さい。
 
【0039】
  管状体2の内径および/または外径は、下部開口4から上部開口6に向かうにつれて大きくなっている。この実施例では、管状体2は、下側に円錐形の先端部分7と、当該先端部より傾斜の小さな円錐中央部分8および当該中央部分より上にヘッド部分9を有する。本発明のピペットチップ1は、特に、部分的または連続的に下部開口4から上部開口6に向けて広がっていてもよい。
 
【0040】
  上部開口6に直接に隣接するヘッド部分9は、拡大された直径の挿入領域10を有する。当該挿入領域10は、ヘッド部分9の短い部分のみを通じてのびている。挿入領域10の下側は、保持領域11と繋がっており、当該保持領域11でリブ12、13が、ヘッド部分9の内周から内向きに突出している。それらは、軸方向に延伸する第1リブ12を有し、当該第1リブ12は、第2リブ13よりも内向きに長く突き出ている。つまり、軸方向に延伸する第2リブ13は、内向き第1リブ12よりも突き出ていない。
図1dおよび
図1eにおいて、1本の第1リブ12は、第2リブ13よりも遠くにピペットチップ1の内周から突き出していることを認識できる。1個の第2リブ13は、2個の第1リブ12の間に常に配置される。
 
【0041】
  上部で、第1リブ12および第2リブ13は、挿入領域10に続いて各々短面取り14、15を有する。
 
【0042】
  その上部で、ヘッド部分9は、外向きに突き出すシリンダ域16を有する。シリンダ領域16は、その下側で外側ステップ17によって規制される。その内部で、ヘッド領域は、内側ステップ18を有する。第1リブ12および第2リブ13は、内側ステップ18を交差して伸びる。その下側で、それらは、封止領域19に達している。そこで、ビード形状の環状封止ノーズ20は、内部でヘッド部分9の外周から突き出ている。第1リブ12および第2リブ13は、封止ノーズ20まで伸びている。第2リブ13は、内側ステップ18の領域にジャンプ位置21を有する。
 
【0043】
  第1リブ12および第2リブ13は、内側ステップ18より上の領域に第1および第2放物線形状の輪郭22、23を有する。当該輪郭は、その領域で第1および第2扁平部分24、25を有し、内向きに最も遠くて突き出している。放射線形状の輪郭は、先ず最大幅の位置26、27まで上から下に向けて広がり、当該位置26、27から内側ステップ18まで再びより狭くなる。
 
【0044】
  さらに、ヘッド部分9は、外側でシリンダ領域16の外周で表面上に突き出ている水滴形状の溝彫り28を有する。内側ステップ18より上で、溝彫り28の端縁は、第1リブ12の端縁および第2リブ13の端縁と重なっている。
 
【0045】
  封止ノーズ20の下部で、円錐制動領域29は、封止領域19に接合しており、下方および上方のそれぞれにおいて、下方へと先細りになり、上方へと広がっている。
 
【0046】
  第1および第2リブ12、13において、ヘッド部分9は、封止領域19と同様に、内側ステップ18より上側および内側ステップ18より下側で僅かに円錐形状である。制動領域29において、その形状は、ヘッド部分9よりも鋭角な円錐形状になっている。
 
【0047】
  第2リブ13、封止領域19および制動領域29の両領域は、「座部領域30」としてまとめられる。
 
【0048】
  制動領域29の下方で、中央部分8は、管状体2を制限する。
 
【0049】
  図2によれば、手動式ピペット31は、ハンドグリップ形のハウジング32を備えている。ハウジング32は、空気を変位させるための変位要素33を含み、当該変位装置33は、作動させられる作動部材36が配置されるとともに、さらなる作動部材36に連動するエジェクタ35も同様に配置される。下側で、規格化された円錐取付け部分37は、ハウジング32の下側に配置されている。
 
【0050】
  ピペットチップ1は、取付け部分37を塞ぐことができる。
 
【0051】
  図3によれば、ピペットチップ1が、座部領域30で規格化された円錐取り付け部分37を塞ぐとき、部分的に可塑的に変形する。これは、
図3に示す取付け部分37および第1リブ12の外形が重なる領域にある場合である。ピペットチップ1の壁は、第1リブ12と第2リブ13の間でわずかに弾性変形する。封止ノーズ20において、封止ノーズ20および取付け部分37の外形が互いに重なる示された位置に対して、ピペットチップ1の壁が外向きにいくらか歪むように座部領域30が弾性変形させられ、封止ノーズ20および取付け部分37の外形が互いに重なる。
 
【0052】
  制動領域29は、取付け部分37(
図3の左側)の下端38で可塑的に変形する。これは、下部取付け部分の端部38および制動領域29の外形が重なり合う場合である。
 
【0053】
  図4aによれば、接続する力の一部は、ピペットチップ1の塑性変形のために必要とされる。接続する力の他の一部は、ピペットチップ1の変形の弾力性のある部分に割り当てられる。したがって、接続する力の一部は、ピペットチップ1の塑性変形のために、不可逆的に消費される。取付け部分からピペットチップ1を取り外すために必要な力は、ピペットチップ1を弾性変形させるために割り当てられる接続する力の一部を克服するだけである。
 
【0054】
  したがって、本発明のピペットチップ1の利用にあたり、取り外す力は、従来のピペットチップ1よりも小さく、接続する力によって弾性変形させるだけである。従来のピペットチップにおいて、接続する力および取り外す力は、一致する。これは、
図4bに示されている。
 
【0055】
  図5は、あるシリンジサイズを有するピペットチップ1に対して上側の規格化された円錐取付け部分37の平均直径および円錐角度のそれぞれを示す。平均直径は、ミリメートルおよび円錐角度を度で示される。ピペットチップサイズの程度として、ピペットチップ1が満たすことのできる充填量のそれぞれの範囲が、マイクロミリリットルおよびミリリットルでそれぞれ示される。取付け部分37の平均直径は、取付け部分37の下端のおよび上端の間の直径に対応する。それは、取付け部分の下端および上端の間に中央に必ずしも配置されている直径によって厳格に分配される必要はない。しかしながら、平均直径は、取付け部分の下端および上端の間の中央に正確に収めることもできる。
 
【0056】
  さらに、平均直径(+/−0.05mm)および角度表示(+/−0.3°)の許容誤差は、
図5において示される。取付け部分37は、対応する許容誤差で製造される。
 
 
【符号の説明】
【0057】
  1  …  ピペットチップ
  2  …  管状体
  3  …  下端
  4  …  下部開口
  5  …  上端
  6  …  上部開口
  7  …  円錐先端部分
  8  …  円錐中央部分
  9  …  ヘッド部分
10  …  挿入領域
11  …  保持領域
12  …  軸方向第1リブ
13  …  軸方向第2リブ
14  …  第1短面取り
15  …  第2短面取り
16  …  シリンダ領域
17  …  外側ステップ
18  …  内側ステップ
19  …  封止領域
20  …  封止ノーズ
21  …  ジャンプ位置
22  …  第1放物形状
23  …  第2放物形状
24  …  第1扁平部分
25  …  第2扁平部分
26  …  最大幅の位置
27  …  最大幅の位置
28  …  水滴形状の溝彫り
29  …  円錐制動領域
30  …  座部領域
31  …  手動式ピペット
32  …  ハウジング
33  …  排出要素
34  …  作動部材
35  …  エジェクタ
36  …  第2作動部材
37  …  円錐取付け部分
38  …  取付け部分下端