特許第5775078号(P5775078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5775078耐水性応力分散材料を用いる、組織損傷を低減するための方法及び製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775078
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】耐水性応力分散材料を用いる、組織損傷を低減するための方法及び製品
(51)【国際特許分類】
   A61B 19/08 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   A61B19/08
【請求項の数】4
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-525681(P2012-525681)
(86)(22)【出願日】2010年8月19日
(65)【公表番号】特表2013-502281(P2013-502281A)
(43)【公表日】2013年1月24日
(86)【国際出願番号】US2010045958
(87)【国際公開番号】WO2011022527
(87)【国際公開日】20110224
【審査請求日】2013年8月19日
(31)【優先権主張番号】61/235,982
(32)【優先日】2009年8月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(73)【特許権者】
【識別番号】512043603
【氏名又は名称】アドルフォ エメ.リナス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】アドルフォ エメ.リナス
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン イー.クランプ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ティー.ショルツ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ジェイ.パークス
【審査官】 毛利 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−526567(JP,A)
【文献】 特表昭59−501446(JP,A)
【文献】 特開2007−229520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の組織を保護するために外科的手技中に使用されるキットであって、
互いに反対方向を向いた第1及び第2の主表面と、少なくとも1つの主表面の少なくとも一部の上面に配置される感圧性接着剤と、前記感圧性接着剤上に配置される剥離ライナと、を有する軟質ポリマーフィルム、を含む外科的切開ドレープと;
互いに反対方向を向いた第1及び第2の主表面を有し、前記表面の少なくとも1つの上に配置される剥離ライナを有する耐水性応力分散層であって、厚さが1mm超であって10mm以下であり、疎水性材料によって作られたものであって、光学的に透明である、耐水性応力分散層と;
前記外科的切開ドレープ及び前記応力分散層を封入する無菌包装と;
を含むキット。
【請求項2】
患者の組織を保護するために外科的手技中に使用されるキットであって、
互いに反対方向を向いた第1及び第2の主表面を有し、前記表面の少なくとも1つの上に配置される剥離ライナを有する耐水性応力分散層であって、厚さが1mm超であって10mm以下であり、疎水性材料によって作られたものであって、光学的に透明である、耐水性応力分散層と;
術前皮膚用調製品と;
前記応力分散層及び前記術前皮膚用調製品を封入する無菌包装と;
を含むキット。
【請求項3】
患者の組織を保護するために外科的手技中に使用されるキットであって、
互いに反対方向を向いた第1及び第2の主表面と、少なくとも1つの主表面の少なくとも一部の上面に配置される感圧性接着剤と、前記感圧性接着剤上に配置される剥離ライナと、を有する軟質ポリマーフィルムと;
互いに反対方向を向いた第1及び第2の主表面を有し、前記表面の少なくとも1つの上に配置される剥離ライナを有する耐水性応力分散層であって、厚さが1mm超であって10mm以下であり、疎水性材料によって作られたものであって、光学的に透明である、耐水性応力分散層と;
術前皮膚用調製品と;
前記軟質ポリマーフィルム及び前記応力分散層を封入する無菌包装と;
を含むキット。
【請求項4】
互いに反対方向を向いた第1及び第2の主表面と、前記第1の主表面の上面に配置される感圧性接着剤と、前記感圧性接着剤上に配置される第1の剥離ライナと、を有する軟質ポリマーフィルムと;
互いに反対方向を向いた第1及び第2の主表面を有し、厚さが1mm超であって10mm以下であり、疎水性材料によって作られ、光学的に透明である、耐水性応力分散層であって、耐水性応力分散層は前記フィルムの第2の主表面上に配置されて応力分散複合体を形成し、前記応力分散層の前記軟質ポリマーフィルムとは反対側の表面上に配置された第2の剥離ライナを有する、耐水性応力分散層と;
前記応力分散複合体を封入する無菌包装と;
を含む製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2009年8月21日出願の米国仮特許出願第61/235,982号の利益を主張するものであり、その全体を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
患者の回復を促進し、予後を改善し、かつコストを低減するために、全ての外科分野が最小侵襲治療法へ向けて進んでいる。整形外科における最小侵襲手術の現在の試みとしては、例えば、切開が長さ約10センチメートル(cm)(従来用いられている長さ約30cmとは対照的)である単一切開人工股関節置換術が挙げられる。現在の文献は、より短い切開を「短切開」術と呼んでおり、いずれの長さの切開を用いても同様の予後が得られるが、組織損傷は、より短い切開の方が一般的に大きい。組織損傷は、特に、切開(すなわち、創傷)縁部及びその付近において、更に開腹手技においても大きな問題となる場合がある。この組織損傷は、瘢痕をより目立たせる場合がある。
【0003】
外科的切開ドレープは、典型的に、術前調製品を適用した後に患者の皮膚に適用される、接着剤でコーティングされた有機ポリマーのドレープである。施術者は、そのドレープを貫いて切開する。このように、切開部位の周囲の皮膚表面において、ドレープが、手術の準備手順後に残る細菌の移動を物理的に制限する。このような手術中に用いられる外科的切開ドレープは、非常に柔軟性であり、かつ切開縁部に沿ってドレープを持ち上げることなく外科的に皮膚を牽引するために皮膚に対する接着力が高くなるように設計されている。しかし、フィルム及び接着剤に用いられる材料は、ほぼ全ての手技においてある程度生じる組織の牽引中の高い圧縮力及び/又は伸長力による外傷から皮膚を保護するようには設計されていない。これらの力は、特に、外科的手技を通して長時間牽引された後、組織の壊死、目立つあざ、及び/又は長期の術後疼痛の可能性を有する神経損傷を導く場合がある毛細血管流分布を引き起こす。更に、大きな力の下で長時間牽引されると、創傷縁部に沿って皮膚が伸長して、術後の再付着が困難になる場合もある。このような切開応力及び組織損傷を低減して、より早く治癒することができ、審美的により優れ、部位の感染を低減することができ、かつ術後疼痛を低減することができることによって、患者の予後をより良くする必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、応力分散層の使用を通して、外科的手技中に組織を保護するための方法及び製品を目的とする。このような材料の使用は、広い領域にわたる牽引によって引き起こされる力を分散することによって切開応力及び組織損傷の低減を補助し、それによって、以下のうちの1つ以上を可能にする:より早い治癒、より優れた外観、部位の感染低減、及び術後疼痛の低減。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施形態では、本発明は、外科的手技中に患者の組織を保護する方法であって、対向する第1及び第2の主表面を有する耐水性応力分散層を提供する工程であって、応力分散層の少なくとも一部では第1の主表面と第2の主表面との間の厚さが少なくとも1mmである、工程と;応力分散層が患者の組織(この組織、例えば皮膚は、典型的に、術前皮膚用調製品で処置されている)の形状に一致するように、応力分散層を患者に接着させる工程と;応力分散層を通して組織を切開する工程と;開創器を用いて切開に沿って組織を牽引する工程と;を含み、応力分散層が牽引中に伸長及び/又は圧縮されるものである方法を提供する。
【0006】
本明細書における全ての方法について、好ましくは、応力分散層は、牽引中に裂けることはなく、より好ましくは、応力分散層は、伸長及び/又は圧縮されている間、牽引によって応力分散層が切開に沿って患者からずれることのないように、十分に患者に接着している。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、外科的手技中に患者の組織を保護する方法であって、対向する第1及び第2の主表面を有する軟質ポリマーフィルムを提供する工程と;対向する第1及び第2の主表面を有する耐水性応力分散層を提供する工程であって、応力分散層の少なくとも一部では第1の主表面と第2の主表面との間の厚さが少なくとも1mmである、工程と;軟質ポリマーフィルム及び応力分散層が互いに付着して応力分散複合体を形成し、応力分散複合体が、患者の組織の形状に一致して患者に接着するように軟質ポリマーフィルムと応力分散層とを互いに接触して配置する工程と;応力分散複合体を通して組織を切開する工程と;開創器を用いて切開に沿って組織を牽引する工程と;を含み、応力分散複合体が牽引中に伸長及び/又は圧縮されるものである方法を提供する。
【0008】
更に別の実施形態では、本発明は、外科的手技中に患者の組織を保護する方法であって、対向する第1及び第2の主表面を有し、その少なくとも1つの主表面の少なくとも一部の上面に感圧性接着剤を有する軟質ポリマーフィルム、を含む外科的切開ドレープを提供する工程と;対向する第1及び第2の主表面を有する自立型耐水性応力分散層を提供する工程と;外科的切開ドレープを患者(この患者の組織、例えば皮膚は、典型的に、術前皮膚用調製品で処置されている)に接着させる工程と;自立型応力分散層を外科的切開ドレープに接着させる工程と;切開ドレープ及び応力分散層を通して組織を切開する工程と;開創器を用いて切開に沿って組織を牽引する工程と;を含み、外科的切開ドレープ及び応力分散層が牽引中に伸長及び/又は圧縮されるものである方法を提供する。
【0009】
更に別の実施形態では、本発明は、外科的手技中に患者の組織を保護する方法であって、術前皮膚用調製品を提供する工程と;対向する第1及び第2の主表面を有する自立型耐水性応力分散層を提供する工程と;患者の皮膚を術前皮膚用調製品で処置する工程と;術前皮膚用調製品で処置された領域全体にわたって、患者に自立型応力分散層を接着させる工程と;術前皮膚用調製品及び応力分散層を通して組織を切開する工程と;開創器を用いて切開に沿って組織を牽引する工程と;を含み、術前皮膚用調製品及び応力分散層が牽引中に伸長及び/又は圧縮されるものである方法を提供する。
【0010】
方法に加えて、本発明はキットを提供する。外科的手技中に患者の組織を保護するために使用されるキットの1つの代表的な実施形態は、対向する第1及び第2の主表面と、少なくとも1つの主表面の少なくとも一部の上面に配置される感圧性接着剤と、感圧性接着剤上に配置される剥離ライナと、を有する軟質ポリマーフィルム、を含む外科的切開ドレープと;対向する第1及び第2の主表面を有し、表面のうちの少なくとも1つの上に配置される剥離ライナを有する耐水性応力分散層と、を含む。典型的に、キットは、外科的切開ドレープ及び応力分散層を封入する無菌包装を含む。
【0011】
別の実施形態では、外科的手技中に患者の組織を保護するために使用されるキットは、対向する第1及び第2の主表面を有し、表面の少なくとも1つの上に配置される剥離ライナを有する耐水性応力分散層と、術前皮膚用調製品を含む。典型的に、キットは、応力分散層及び術前皮膚用調製品を封入する無菌包装を含む。
【0012】
更に別の実施形態では、外科的手技中に患者の組織を保護するために使用されるキットは、対向する第1及び第2の主表面と、少なくとも1つの主表面の少なくとも一部の上面に配置される感圧性接着剤と、感圧性接着剤上に配置される剥離ライナと、を有する軟質ポリマーフィルムと;対向する第1及び第2の主表面を有し、表面のうちの少なくとも1つの上に配置される剥離ライナを有する耐水性応力分散層と;術前皮膚用調製品と、を含む。典型的に、キットは、外科的切開ドレープ及び応力分散層を封入する無菌包装を含む。
【0013】
また、本発明は、対向する第1及び第2の主表面と、第1の主表面上に配置される感圧性接着剤と、感圧性接着剤上に配置される剥離ライナと、を有する軟質ポリマーフィルムと;対向する第1及び第2の主表面を有する耐水性応力分散層であって、耐水性応力分散層は応力分散複合体を形成するフィルムの第2の主表面上に配置されており、応力分散層の、軟質ポリマーフィルムとは反対側の表面上に配置された剥離ライナを有する、耐水性応力分散層と;応力分散複合体を封入する無菌包装を含む製品を提供する。好ましくは、応力分散層の少なくとも一部では第1の主表面と第2の主表面との間の厚さは、少なくとも1mmである。
【0014】
また、本発明は、患者の皮膚に接着する応力分散層又は複合体を提供する。1つの実施形態では、これは、所望により、患者の皮膚上の術前皮膚用調製品又はバリアフィルムと;対向する第1及び第2の主表面を有する耐水性応力分散層であって、応力分散層の少なくとも一部では第1の主表面と第2の主表面との間の厚さが少なくとも1mmである、耐水性応力分散層と;を含み、耐水性応力分散層は、患者の皮膚に直接、又は患者の皮膚上の任意の(そして好ましい)術前皮膚用調製品若しくはバリアフィルム(存在する場合)を通して接着される。必要に応じて、この実施形態では、切開ドレープを患者上の耐水性応力分散層に接着させてもよい。この実施形態では、好ましくは、術前皮膚用調製品が存在する。
【0015】
別の実施形態では、患者の皮膚に接着される応力分散複合体は、所望により、患者の皮膚上の術前皮膚用調製品又はバリアフィルムと;対向する第1及び第2の主表面を有し、その少なくとも1つの主表面の少なくとも一部の上面に配置される感圧性接着剤を有する軟質ポリマーフィルム、を含む外科的切開ドレープと;対向する第1及び第2の主表面を有する耐水性応力分散層であって、応力分散層の少なくとも一部では第1の主表面と第2の主表面との間の厚さが少なくとも1mmである、耐水性応力分散層と;を含み、外科的切開ドレープは、患者の皮膚に直接、又は患者の皮膚上の任意の(そして好ましい)術前皮膚用調製品若しくはバリアフィルム(存在する場合)を通して、感圧性接着剤により接着され、耐水性応力分散層は、感圧性接着剤とは反対側の表面上で切開ドレープに付着する。この実施形態では、好ましくは、術前皮膚用調製品が存在する。
【0016】
用語「耐水性」は、応力分散層についての記述では、有意ではない量の水を吸収する材料を指す。有意ではない量とは、乾燥形態で、23℃の脱イオン水に4時間浸漬し(任意の剥離ライナなしで)、吸い取り乾燥(blotted dry)させたとき、その水の重量の10%未満(好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下)を意味する。したがって、耐水性層は、耐水性ではない(そして、吸水性であってもよい)幾つかの材料を含んでもよいが、層全体としては耐水性である。
【0017】
用語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で、特定の利点をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかしながら、同一の又は他の状況下で、他の実施形態も好まれる可能性がある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の引用は、他の実施形態が有用でないことを含意するものではなく、本発明の範囲内から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0018】
本明細書で使用する時、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、同じ意味で使用される。したがって、例えば、耐水性ポリマーを含む応力分散層は、応力分散層が「1つ以上の」耐水性材料を含むことを意味すると解釈することができる。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語「又は」は、その内容に別段の明確な指示がなされていない場合は、一般に「及び/又は」を含む通常の意味で用いられている。
【0020】
用語「及び/又は」は、列挙されている要素の1つ又は全て、あるいは、列挙されている要素の任意の2つ以上の組み合わせを意味する(例えば、苦痛の予防及び/又は治療は、苦痛の予防、治療、又は、更には治療及び予防の両方を意味する)。
【0021】
また本明細書において、端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包含される全ての数(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、など)が包含される。
【0022】
本発明の上述の「課題を解決するための手段」は、本発明の開示される各実施形態又は全ての実施を記載することを目的としていない。以下の説明により、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願の幾つかの箇所で、実施例の一覧として説明を提供するが、実施例は種々の組み合わせにて使用することが可能である。いずれの場合にも、記載した一覧は、代表的な群としてのみ役立つものであり、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】剥離ライナ上に配置された応力分散層を含む本発明の1つの実施形態の断面図。
図2a】軟質ポリマーフィルム上に配置された応力分散層を含む本発明の2つの実施形態の断面図。
図2b】軟質ポリマーフィルム上に配置された応力分散層を含む本発明の2つの実施形態の断面図。
図3a】不均一な厚さを有する応力分散層を含む本発明の2つの実施形態の断面図。
図3b】不均一な厚さを有する応力分散層を含む本発明の2つの実施形態の断面図。
図4】切開ドレープ及び応力分散層を含むキットを示す図。
図5】従来の外科的切開ドレープを用いて牽引された切開の写真。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、組織を切開し、組織を牽引して開口部を大きくすることを含む外科的手技中に、外科的手技によって影響を受ける組織(例えば、患者の皮膚及び下層の組織)を保護するための方法及び製品を目的とする。このような方法及び製品は、応力分散層を用いる。典型的に、顕著な外傷を引き起こす可能性のある牽引を含む最小侵襲外科的手技は、本発明の方法及び製品から恩恵を受けることができ、様々な外科的手技が、本発明から恩恵を受けることができる。外科的手技は、特に自動牽引装置(例えば、手持ち式開創器、挿入開創器等)を用いるとき、及び/又は牽引プロセスにおいてこの作用が必要とされるとき(例えば、骨又はその一部を取り外すため)に、牽引及び顕著な外傷を含む様々な手技であってもよい。このような手技は、例えば、移植手術(例えば、肝移植)、心臓血管手術、帝王切開、及び前後修復(結腸直腸癌について)、及びヘルニア修復を含む最小侵襲又は開腹であってもよい。
【0025】
具体的には、方法及び製品は、患者の組織(例えば、皮膚)を保護するために外科的手技において応力分散層を使用することを含む。耐水性応力分散層は、疎水性ポリマーを含む。本発明の方法では、この応力分散層は、患者の組織の形状に一致するように患者に接着される。これを達成するために、応力分散層は、本質的に粘着性である材料であり、組織に直接接着されてもよい。あるいは、感圧性接着剤を通して組織に接着されてもよい。あるいは、応力分散層は、患者に接着され得る切開ドレープに接着されてもよい。患者の組織に応力分散層を接着するためにどのような方法又は機構を用いようとも、本発明の方法は、応力分散層を通して組織を切開する工程と、組織を牽引する工程とを含み、応力分散層は牽引中に伸長及び/又は圧縮されるものである。典型的に、応力分散層の少なくとも一部は、開創器と組織との間に配置され、好ましくは、応力分散層は、牽引中に裂けない。より好ましくは、牽引によって、応力分散層が伸長及び/又は圧縮されている間、切開に沿って患者から応力分散層がずれることのないように、十分に組織に接着する。
【0026】
特定の実施形態では、方法及び製品は、好ましくは切開ドレープの形態の軟質ポリマーフィルムと、応力分散層とを使用することを含む。これら材料は、((製造業者又は施術者によって)外科的手技前に、又は外科的手技中に)互いに付着し、外科的手技中に組織(例えば、皮膚)に接着される。これら材料は、不透明であってもよいが、好ましくは、軟質ポリマーフィルム及び応力分散層を通して施術者が下層の組織を見ることができるように十分に透明(透明又は半透明)である。本発明の方法は、軟質ポリマーフィルム(存在する場合)、応力分散層、及び組織を貫いて切開する工程と、施術者(例えば、外科医)が下層の身体構造にアクセスしやすくなるように切開を牽引する工程とを含む。典型的に、軟質ポリマーフィルム(存在する場合)及び応力分散層の少なくとも一部は、開創器と組織との間に配置される。組織、軟質ポリマーフィルム、及び応力分散層は、全て牽引され、牽引によって軟質ポリマーフィルム及び応力分散層は伸長及び/又は圧縮される。
【0027】
制限することを意図するものではないが、応力分散層は、開創器によって印加される単位面積当たりの力(圧力)を吸収し、広げ、及び/又は減少させて、特に皮膚のしわにおける毛細血管床に対する圧力を減少させると考えられる。また、圧力の減少が、他の生じ得る組織損傷を軽減することができる。例えば、組織を補強することによって組織が伸長するのを防ぐことができる。これは、以下のうちの1つ以上をもたらすことができる:より早い治癒、より優れた外観、部位の感染低減、及び術後疼痛の低減。また、創傷縁部に沿って組織が膨張するのを防ぐことによって、閉鎖を促進し、加速することもできる。したがって、本明細書で使用される応力分散層は、ほぼ全ての手技である程度生じる、組織の牽引中の高い圧縮及び/又は伸長力による外傷から皮膚及び下層の組織を保護するよう設計される。
【0028】
応力分散層は、軟質ポリマーフィルムと共に用いてもよく、軟質ポリマーフィルムを用いなくてもよいが、両方を用いることが一般的に好ましい。すなわち、例えば、応力分散層は、典型的には術前皮膚用調製品でまず処置される患者の組織(例えば、皮膚)に適用することができる。あるいは、応力分散層は、典型的に、術前皮膚用調製品で処置した後、患者の組織に最初に適用される切開ドレープ等の軟質ポリマーフィルムに適用してもよい。また、本明細書に更に記載されるような応力分散層を使用する別の方法も想定される。
【0029】
応力分散層は、例えば、図1に示すように、剥離ライナ12上に配置することができる応力分散材料の単層10として提供されてもよい。剥離ライナが、応力分散層の一方又は両方の主表面上に存在してもよい。応力分散層は、本質的に粘着性であってもよく、及び/又はその上に感圧性接着剤の層を含んでもよい。
【0030】
あるいは、図2aに示すように、軟質ポリマーフィルム及び応力分散層は、応力分散層20が軟質ポリマーフィルム22の表面上に(例えば、コーティング又は押出成形によって)配置されている応力分散複合体として提供されてもよい。この実施形態では、軟質ポリマーフィルム22は、応力分散層20が配置されるのとは反対側の軟質ポリマーフィルム22の表面上に感圧性接着剤24の層を含んでもよく、含まなくてもよい。図2aに示す実施形態は、典型的に、感圧性接着剤24を用いて患者に適用されて、患者の組織と応力分散層との間に配置される軟質ポリマーフィルムが得られる。
【0031】
あるいは、図2bに示すように、軟質ポリマーフィルム及び応力分散層は、応力分散層20が軟質ポリマーフィルム22の表面上に(例えば、コーティング又は押出成形によって)配置されている応力分散複合体として提供されてもよい。この実施形態では、応力分散層20は、軟質ポリマーフィルム22が配置されるのとは反対側の応力分散層20の表面上に感圧性接着剤24の層を含んでもよく、含まなくてもよい。図2bに示す実施形態は、典型的に、感圧性接着剤24を用いて患者に適用されて、患者の組織と軟質ポリマーフィルムとの間に配置される応力分散層が得られる。
【0032】
図2a及び2bの応力分散層及び軟質ポリマーフィルムは、(任意の介在する材料を用いずに)互いに直接付着してもよく、例えば、感圧性接着剤の使用を通して付着してもよい。これらは、同じ大きさであってもよく、又は図2a及び2bに示すように、軟質ポリマーフィルム22の面積が、応力分散層20よりも広くてもよい。本明細書に示される図のそれぞれにおいて、層/フィルムの相対的な大きさ(例えば、厚さ及び長さ)は、必ずしも相対的比率でなくてもよい。
【0033】
応力分散層は(2つの主表面の間の)厚さが均一であるように図1、2a、及び2bには示されているが、厚さは、材料の長さに沿って変動してもよい。例えば、図3a及び3bに示すように、応力分散層は、中央が厚く、縁部が薄くてもよい(例えば、図3aに示すようにテーパ形状である)。
【0034】
幾つかの実施形態では、軟質ポリマーフィルム及び応力分散層は、キット中に別々の2つの物品として提供されてもよい(図4)。例えば、キット40は、無菌包装41内に、軟質ポリマーフィルム43、感圧性接着剤44の層、及び剥離ライナ45を含む外科的切開ドレープを含んでもよく、応力分散層46は、剥離ライナ48上に配置されるこのような層を含んでもよい。このような応力分散層は、例えば、市販の創傷包帯であってもよい。すなわち、応力分散層は、市販の外科的切開ドレープと組み合わせて、耐水性材料を含有する市販の創傷包帯の形態で提供されてもよい。次いで、これら2つの別々に提供される物品は、手術前又は手術中に施術者によって互いに付着されてもよい。これによって、施術者が、望ましい場所に軟質ポリマーフィルム(例えば、外科的切開ドレープ)を適用し、次いで応力分散層(例えば、創傷包帯)をポリマーフィルム上のいずこにでも配置することが可能になる。
【0035】
幾つかの実施形態では、応力分散層及び術前皮膚用調製品は、キット中の2つの別々の物品として提供されてもよい。他の実施形態では、軟質ポリマーフィルム、術前皮膚用調製品、及び応力分散層は、キット中に別々の物品として提供されてもよい。このようなキットは、典型的に、無菌包装に包装される。
【0036】
したがって、手術用に提供されるとき、本明細書で用いられる様々な物品(軟質ポリマーフィルム、応力分散層、切開ドレープ等)は滅菌されている。本明細書では、滅菌は、医療業界で典型的に用いられる任意の手段により(例えば、エチレンオキシド又は過酸化水素等の滅菌ガスにより、加熱により、又はX線、ガンマ線、電子ビーム等の他の放射線技術により)実施することができる。
【0037】
更に、応力分散層は単独で用いてもよいが、典型的には、軟質ポリマーフィルムと共に用いられる。軟質ポリマーフィルム(例えば、外科的切開ドレープ)は、典型的に、最良の結果を得るために、応力分散層と患者の組織(例えば、皮膚)との間に配置される。しかし、応力分散層が、軟質ポリマーフィルムと組織との間に配置され得ることも想定される。後者はあまり好ましくないが、それは、軟質ポリマーフィルムと組織との間にギャップが生じることがあり、これが望ましくない液貯留をもたらす場合があるためである。
【0038】
軟質ポリマーフィルム
有用な軟質ポリマーフィルムは、好ましくは、透明又は半透明のポリマー材料である。軟質フィルムの材料は、好ましくは、長い手術中にフィルムを通して水分を蒸発させることができる。柔軟性は、フィルムが患者の身体部分に一致するのに十分な程度である。本発明の軟質ポリマーフィルムは、典型的に、切開ドレープ(例えば、従来の外科的切開ドレープ)の形態で提供される。
【0039】
切開ドレープは、患者の皮膚における細菌からの細菌汚染に外科創傷が曝露されるのを最低限に抑えるために、外科的手技で一般的に用いられている。手術部位を覆うことによって、無菌の作業面が提供され、非無菌領域と外科創傷との間での微生物の移動を最小限に抑えるのを補助する。また、これら手段は、患者の血液及び他の体液における病原体への曝露から医療従事者を保護するのに役立ち得る。また、切開ドレープは、手術部位に布地ドレープ等の他の物品を確実に固定するために使用される場合もある。
【0040】
外科的切開ドレープを適切に機能させるために、切開ドレープは、特に、施術者(例えば、外科医)が清浄な外科的切開を行うことができるように切開点に直接適用された後しわがない。ドレープにおけるしわは、施術者がドレープを通して皮膚を見ることを困難にする(透明又は半透明であり、かつ視認可能であることが望ましいが、必須ではない)。更に、切開ドレープにしわがある場合、切開ドレープは、これらしわにおいてドレープの下を流体がチャネリングすることにより皮膚上の細菌が創傷に入ることを防げない場合がある。切開点において無菌表面を維持することは、外科創傷の感染を防ぐのに役立つ。
【0041】
従来の外科的切開用材料の軟質ポリマーフィルムは、通常、剥離ライナで被覆される一方の側面上に接着剤を有する透明なポリマーフィルムである。好適な従来の切開ドレープの例としては、3M Company,St.Paul,MNから商標名STERI−DRAPE及びIOBANとして入手可能なものが挙げられる。このようなドレープは、実質的に透明(透明又は半透明)であり、切開縁部(すなわち、創傷縁部)にしっかりと接着する感圧性接着剤でコーティングされた1つの主表面を有する軟質フィルムを含み、これが、バリアを皮膚細菌叢に維持するのを補助する。このようなドレープは、身体の輪郭と一致する。他の従来の切開ドレープは、例えば、T.J.Smith and Nephew Ltd.、Medline、及びCardinal等の供給元から入手可能である。好適な切開ドレープは、例えば、米国特許第4,310,509号、同第4,323,557号、同第4,452,845号、同第4,584,192号、同第5,803,086号、同第5,979,450号、同第5,985,395号、同第6,939,936号;米国再発行特許第31,886号、及び同第31,887号に記載されている。
【0042】
典型的に、切開ドレープは、透明又は半透明な軟質ポリマー材料から形成される。材料は、好ましくは、長い手術中にフィルムを通して水分を蒸発させることができる。切開ドレープに特に好適な材料としては、ポリオレフィン類、例えば、低密度ポリエチレン及び特にメタロセンポリエチレン(例えば、Dow Chemical Co.から商標名ENGAGEポリエチレンとして入手可能)、ポリウレタン類、例えば、ポリエステル又はポリエーテルポリウレタン類(例えば、B.F.Goodrich,Cleveland,OHから商標名ESTANE熱可塑性ポリウレタンとし入手可能)、ポリエステル類、例えば、ポリエーテルポリエステル(例えば、Du Pont Co.,Wilmington,DEから商標名HYTRELポリエステルエラストマーとして入手可能)、並びにポリアミド類、例えば、ポリエーテルポリアミド(例えば、ELF Atochem,North America,Inc.,Philadelphia,PAから商標名PEBAX樹脂とし入手可能)が挙げられる。更に、フィルムは、患者に適用するときの柔軟性を改善するために、軟質であり、好ましくは、若干弾性である。これらの理由のために、好ましいフィルムは、ポリウレタン類、ポリエーテルポリエステル類、及びポリエーテルポリアミド類である。フィルムは、典型的に、200マイクロメートル以下の厚さを有し、130マイクロメートル以下の厚さを有することが多く、52マイクロメートル以下の厚さを有することが更により多い。フィルムは、典型的に、少なくとも6マイクロメートルの厚さを有し、少なくとも13マイクロメートルの厚さを有することが多い。
【0043】
特定の実施形態では、軟質フィルムの少なくとも1つの表面の少なくとも主な部分は、感圧性接着剤でコーティングされる。軟質フィルムの全長が接着剤でコーティングされるが、外科的切開ドレープがその有用な機能を発揮することを可能にする任意の主な部分をコーティングしてもよく、例えば、接着剤は、ドレープの全幅又は全長をコーティングする必要はない。例えば、患者からドレープを取り外すのを補助するため、又はフィルムのハンドル部の取り付けを補助するために軟質フィルムの縁部のいずれかに非コーティング部分が含まれてもよい。軟質フィルムの接着剤コーティングは、好ましくは、体温で粘着性である感圧性接着剤であり、皮膚にしっかりと接着する。皮膚表面に均一に付着させることにより、無菌術野の維持に役立つ。創傷(すなわち、切開)の牽引の結果として手術中にフィルムに印加される応力、暖湿環境、及び外科医の手及び器具が創傷を出入りするときにフィルムが遭遇する可能性のある摩耗のために、しっかりと接着することが好ましい。
【0044】
好適な感圧性接着剤は、皮膚適合性であり、例えば、米国特許第4,310,509号、同第4,323,557号、同第6,216,699号、及び同第5,829,422号、並びに国際公開第00/56828号及び同第00/78885号に記載されているものが挙げられる。また、米国特許第6,855,386号に記載されているように、湿式貼り合わせ感圧性接着剤を用いてもよい。好適な感圧性接着剤としては、例えば、ホットメルトプロセスによりコーティング可能なポリマー樹脂組成物が挙げられ、その成分は、最終的な接着剤組成物の所望の接着特性を提供するように選択される。本発明において有用な感圧性接着剤組成物の例としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、Kraton PolymersからKRATONという商標名で入手可能なもの等の、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−ブタジエン、スチレン−イソプレン、及びこれらの誘導体を含むが、これらに限定されないスチレンブロックコポリマー、ポリビニルエーテル、ポリ(メタ)アクリレート(アクリレート及びメタクリレートの両方を含む)、ポリアルファオレフィン等のポリオレフィン類、シリコーン類、及びこれらのブレンド又は混合物に基づくものが挙げられる。特に好ましい接着剤組成物は、ポリ(メタ)アクリレート(アクリレート及びメタクリレートの両方を含む)に基づく。また、ポリアクリレートは、N−ビニルラクタム、(メタ)アクリルアミド、スチレン、メチルビニルエーテル、ポリスチレンマクロマー、酢酸ビニル等であるが、これらに限定されない他のビニル非アクリレートモノマーを含んでもよい。感圧性接着剤は、典型的に、200マイクロメートル以下の厚さを有し、150マイクロメートル以下の厚さを有することが多く、100マイクロメートル以下の厚さを有することがより多く、50マイクロメートル以下の厚さを有することが更により多い。感圧性接着剤は、典型的に、少なくとも10マイクロメートルの厚さを有し、少なくとも20マイクロメートルの厚さを有することが多く、少なくとも30マイクロメートルの厚さを有することが更により多い。
【0045】
感圧性接着剤は、本質的に粘着性であるポリマー製剤から作製することができる。望ましい場合には、粘着付与剤をベースとなるポリマー製剤に添加して、感圧性接着剤を形成することができる。有用な粘着付与剤としては、例えば、ロジンエステル樹脂類、芳香族炭化水素樹脂類、脂肪族炭化水素樹脂類、及びテルペン樹脂類が挙げられる。例えば、油、可塑剤、酸化防止剤、紫外線(「UV」)安定剤、水素添加ブチルゴム、色素、染料、生体接着剤組成物で用いられるもの等のヒドロコロイド粒子、並びに米国特許第5,750,134号及び同第5,633,010号に開示されている創傷包帯、更なる抗微生物剤、酸化防止剤、及び硬化剤を含む他の材料を特別な目的のために添加してもよい。
【0046】
商標名IOBANとして入手可能なもの等の幾つかの切開ドレープは、抗微生物剤、好ましくはヨードフォアを接着剤中に含有する。ドレープの接着剤に対する抗微生物剤の添加は、皮膚に対する殺菌/静菌環境の維持によって手術感染の可能性を更に最小化して、細菌数を大きく減少させるのを補助するという更なる利点を提供する。好適な任意の抗微生物剤は、例えば、米国特許第5,369,155号のカラム12の32行目〜39行目に記載されており、これは、ヨウ素及びヨードフォアを含む。例えば、感圧性接着剤に任意で配合され得るこのような抗微生物剤としては、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、2−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシブタン酸、マンデル酸、グルコン酸、酒石酸、サリチル酸、並びにこれらの誘導体(例えば、ヒドロキシル、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、アルキル基、ハロゲン、並びにこれらの組み合わせで置換された化合物)等であるが、これらに限定されないアルファ−ヒドロキシ酸;サリチル酸等のベータヒドロキシ酸;C8〜C18脂肪酸;C8〜C18不飽和脂肪酸;C8〜C18アルキルラクチレート及びその塩類;C8〜C18スルホン酸及びその塩類;少なくとも8個の炭素原子の少なくとも1本のアルキル鎖及び/又はベンジル基を有する四級アンモニウム界面活性剤;パラクロロメタキシレノール(PCMX);トリクロサン;ヘキサクロロフェン;グリセロールモノラウレート、グリセロールモノカプリレート、グリセロールモノカプレート、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノカプレート等であるが、これらに限定されないグリセリン及びプロピレングリコールの脂肪酸モノエステル;フェノール;ポリヘキサメチレンビグアニド等であるが、これらに限定されないポリ四級アミン;クロルヘキシジン塩;ベンゼトニウムハロゲン化物及び塩化メチルベンゼトニウム等の誘導体;少なくとも8個の炭素原子の少なくとも1本のアルキル鎖を有する四級アンモニウムシラン類;塩化銀、酸化銀、及びスルファジアジン銀等であるが、これらに限定されない銀及び銀塩;メチル、エチル、プロピル、及びブチルパラベン;オクテニデン;過ホウ酸塩等の過酸化水素を発生する化合物、過酸化水素とポリビニルピロリドンとの複合体(例えば、ISP製のPeroxydone)、ティーツリー油等の天然油、グレープフルーツ種子抽出物等、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0047】
従来の外科的切開ドレープは、典型的に、使用前に無菌接着剤表面を保護するために接着剤に対する剥離ライナを有する。剥離ライナは、紙、プラスチックでコーティングされた紙、プラスチックフィルム、織布、不織布、又はニット生地、並びにフィルム生地積層体等の様々な材料で作製することができる。好ましい剥離ライナ材料としては、臨床医がそれを通して患者を見ることができ、それによってフィルムを正確に配置することができる透明なポリマーライナが挙げられる。好ましい透明なポリマーライナとしては、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン類、又はポリエステルライナ、並びにポリオレフィンでコーティングされたポリエステル等の積層体が挙げられる。ガンマ線滅菌を意図する製品の場合、紙、ポリエチレン、ポリエステル、又はポリエチレンでコーティングされたポリエステルライナの使用が好ましい。
【0048】
剥離ライナを用いることなく創傷をそれ自体で覆う場合、軟質フィルムは、通常、シリコーン等の剥離コーティングで裏側が処理される。応力分散層が軟質フィルムの裏側に配置されるように用いられる場合、剥離コーティングが典型的には用いられず、それによってフィルムと応力分散層との間を確実に接着させる。
【0049】
また、軟質フィルムは、軟質フィルム基材に対する接着剤の接着力を高めるために、その上に感圧性接着剤をコーティングする前に処理されてもよい。軟質フィルムに対する感圧性接着剤及び/又は応力分散層の接着力を高めるために有用な処理としては、化学的下塗り及びコロナ処理が挙げられる。
【0050】
応力分散層
本発明で使用するのに好適な応力分散層は、耐水性である。このような耐水性応力分散層は、乾燥形態で、23℃の脱イオン水に4時間浸漬し(任意の剥離ライナなしで)、吸い取り乾燥させたとき、非常に僅かな水(10重量%未満、好ましくは5重量%以下)しか吸収しないか、又は全く水を吸収しない(例えば、1重量%以下)。応力分散層は、自立型層(すなわち、軟質ポリマーフィルム上に配置される必要はないが、例えば、感圧性接着剤上で用いられることの多い1つ以上の種類の剥離ライナによって所望により保護されてもよい十分に一体性である層)の形態であってもよく、又は(例えば、切開ドレープの)軟質ポリマーフィルムに取り付けられる(例えば、コーティングされる又は押出成形される)層であってもよい。応力分散層は、対向する第1及び第2の主表面を有する、別々の物品(例えば、フィルム上にコーティングされるか、創傷包帯のように2枚のフィルム間に挟まれる耐水性層)の一部として提供されてもよい。
【0051】
広くは、応力分散層は、腰又は肩等の身体の輪郭に一致するのに十分な程度適合性である。また、応力分散層は、砕けたり、又は別の方法で使用中にばらばらになったりして、切開部位に微粒子が残らないように、十分に凝集性かつ一体性を有する。
【0052】
応力分散層は、下層の組織に、細菌数を低減するために皮膚上の所定の位置に残る皮膚調製品のコーティングに、及び/又は軟質ポリマーフィルムに(例えば、組織に直接付着する外科用ドレープ)に対して良好に付着させるために、本質的に粘着性であるか、又は感圧性接着剤に適合する。感圧性接着剤を応力分散層と併用する場合(例えば、応力分散層上のコーティングとして、又は応力分散層が付着するフィルムとして)、外科的切開ドレープについて本明細書に記載されるものと同じ種類であってもよい。
【0053】
理想的には、応力分散層は、身体の目印及び切開を行う部位を見ることができるように透明であるが、不透明な材料を用いてもよい。僅かに着色してもよいが、好ましくは、部位をよく見ることができるようにするために、僅かである。また、材料は、好ましくは、メスによって容易に切断され、切開を行っている間メスに結合することがないようにそれを貫通することができる。
【0054】
牽引中、応力分散層の縁部、及び所望により軟質ポリマーフィルムは、好ましくは、裂けていない間、切開部に巻き込まれる。より好ましくは、応力分散層は、応力分散層と下層の組織及び/又は任意の軟質ポリマーフィルムとの間にギャップ又は隙間を形成しない。すなわち、好ましくは、応力分散層及び軟質ポリマーフィルムは、用いられる場合、切開(すなわち、切開縁部)に沿って組織の縁部からずれない。これらギャップ又は隙間に、洗浄液又は体液が集まり、これが感染の可能性を上昇させる恐れがある。
【0055】
切開応力再分散に好適な応力分散層は、好ましくは、身体に対する生体適合性の問題を有しない材料を含む。典型的な生体適合性試験としては、特に、細胞毒性、感作、炎症、遺伝毒性、急性全身毒性、血液適合性、及び亜慢性毒性の判定が挙げられる。これらの試験は、製品に用いられる材料が患者にとって有害ではないこと、材料が身体細胞と接触したときに負の反応を引き起こさないこと、及び外科的洗浄液又は体液との接触により製品から漏れだす任意の材料が全身毒性作用を引き起こさないことを保証する。
【0056】
応力分散層は、固体又は多孔質であってもよい。多孔性は、材料を通して水分を蒸発させるために望ましい場合がある。多孔性は、例えば、応力分散材料を連続気泡発泡体にすることによって付与することができる。あるいは、応力分散材料の独立気泡発泡体及び固体層は、材料中に貫通孔を有してもよい。例えば、幾つかの材料は、穴を残すために後で除去されるピンを有するベルト上に押出成形されてもよい。あるいは、穴は、打ち抜いたり、掘削したり、燃やしたり(例えば、レーザーにより)してもよく、他の方法で形成してもよい。穴は、接着剤コーティングを通して延在してもよく、しなくてもよい。
【0057】
本発明の方法及び製品において有用な好適な応力分散層は、疎水性材料を含む。このような疎水性材料は、少なくとも、生理食塩水洗浄液又は体液により手術中に材料が抽出されないので、親水性材料(創傷治癒を目的とするヒドロゲル、及び典型的なヒドロコロイド等)よりも好ましい。
【0058】
疎水性材料の例としては、多くのポリマー材料が挙げられる。それらは、熱可塑性、流延、及び/又は架橋されてもよい。特に有用なのは、応力吸収に対して弾性特性を有する組成物である。例えば、ポリアミド類(Arkema,Philadelphia,PAから商標名PEBAXとして入手可能なもの等)、ポリウレタン類(Lubrizol Corp.,Wickliffe,OHから商標名TECOPHILICとして入手可能なもの等)、コポリエステル類(Eastman Chemical,Kingsport,TN)、エラストマー合金、ポリオレフィン類(Dow Chemical,Midland,MIから商標名INFUSEとして入手可能なもの等)、及びスチレンブロックポリマー(スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−ブタジエン、スチレン−イソプレン、及びこれらの誘導体を含むKraton Polymers,Houston,TXから商標名KRATONとして入手可能なもの等)等の熱可塑性エラストマーをホットメルトコーティングして、応力分散層を形成することができる。他のエラストマーとしては、シリコーン類、スチレンブタジエン類、ポリイソブチレン類、ポリイソプレン類、エチレンプロピレンポリマー、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。
【0059】
また、フリーラジカル又は縮合化学反応を用いて、ホモポリマー又は広範囲にわたる出発モノマー物質とのコポリマーを調製して、本発明の耐水性応力分散層で用いられる疎水性材料を製造することができる。また、このような化学反応は、反応を実施するために溶媒又は水を用いてもよい。次いで、得られるポリマーをコーティングし、乾燥させて溶媒を除去してもよく、コーティング前に溶媒を回収し、押出成形等の技術によってポリマーをコーティングして耐水性層を形成してもよい。アクリレート、メタクリレート、N−ビニルラクタム、(メタ)アクリルアミド、スチレン、ビニルエーテル、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸等の広範囲にわたるモノマーが適切である。耐水性層の凝集及び弾性を制御するために、可塑化剤、色素、放射性蛍光物質、又は他の添加剤とポリマーを組み合わせてもよく、更に変性してもよい。
【0060】
材料及びその特性(例えば、弾性率)に依存して、応力分散層の厚さは変動してもよい。また、材料を架橋してもよく(例えば、化学又は放射線手段によって)、これは、材料の柔軟性又は剛性に影響を与える場合がある。
【0061】
応力分散層の材料は、本質的に粘着性であってもよい。感圧性接着剤の弾性は、応力分散層を形成するために厚いフィルムをコーティングすることによって利用することができる。ホットメルト、溶液、エマルション、又は放射線硬化技術が、代表的なコーティング方法である。ホットメルト又は放射線硬化系は、厚い層を形成するために溶媒の乾燥が必須ではないという点で特に有用である。幾つかの例では、応力分散層の送達系は、粘着性表面を保護するために単純な剥離ライナである。あるいは、応力分散層の縁部を超えて延在する薄い接着剤コーティングされたポリマー裏材を用いて、例えば、皮膚及び/又は軟質ポリマーフィルム(例えば、切開ドレープ)に接着し、外部の汚染に対するバリアを提供する境界を形成することもできる。
【0062】
応力分散材料の上面は、好ましくは、外科医及び看護士の邪魔になる場合がある反射及びグレアを防ぐためにマット仕上げを有する。
【0063】
幾つかの実施形態では、応力分散層は、抗微生物剤を含有してもよい。応力分散層に対する抗微生物剤の添加は、皮膚に対する殺菌/静菌環境の維持によって手術感染の可能性を更に最小化して、細菌数を大きく減少させるのを補助するという更なる利点を提供する。好適な任意の抗微生物剤は、例えば、米国特許第5,369,155号のカラム12の32行目〜39行目に記載されており、これは、ヨウ素及びヨードフォアを含む。例えば、感圧性接着剤に任意で配合され得るこのような抗微生物剤としては、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、2−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシブタン酸、マンデル酸、グルコン酸、酒石酸、並びにこれらの誘導体(例えば、ヒドロキシル、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、アルキル基、ハロゲン、並びにこれらの組み合わせで置換された化合物)等であるが、これらに限定されないアルファ−ヒドロキシ酸;サリチル酸等のベータヒドロキシ酸;C8〜C18脂肪酸;C8〜C18不飽和脂肪酸;C8〜C18アルキルラクチレート及びその塩類;C8〜C18スルホン酸及びその塩類;少なくとも8個の炭素原子の少なくとも1本のアルキル鎖及び/又はベンジル基を有する四級アンモニウム界面活性剤;パラクロロメタキシレノール(PCMX);トリクロサン;ヘキサクロロフェン;グリセロールモノラウレート、グリセロールモノカプリレート、グリセロールモノカプレート、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノカプレート等であるが、これらに限定されないグリセリン及びプロピレングリコールの脂肪酸モノエステル;フェノール;ポリヘキサメチレンビグアニド等であるが、これらに限定されないポリ四級アミン;クロルヘキシジン塩;ベンゼトニウムハロゲン化物及び塩化メチルベンゼトニウム等の誘導体;少なくとも8個の炭素原子の少なくとも1本のアルキル鎖を有する四級アンモニウムシラン類;塩化銀、酸化銀、及びスルファジアジン銀等であるが、これらに限定されない銀及び銀塩;メチル、エチル、プロピル、及びブチルパラベン;オクテニデン;過ホウ酸塩等の過酸化水素を発生する化合物、過酸化水素とポリビニルピロリドンとの複合体(例えば、ISP製のPeroxydone)、ティーツリー油等の天然油、グレープフルーツ種子抽出物等、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0064】
材料及びその特性(例えば、弾性率)に依存して、応力分散層の厚さは変動してもよい。対向する第1及び第2の主表面を有する応力分散層の厚さは、典型的に、第1の主表面と第2の主表面との間が少なくとも1ミリメートル(mm)、好ましくは少なくとも2mmである。2mm超の応力分散層は、少なくとも、この厚さは、例えば伸長及び/又は圧縮の結果として牽引によって加えられる応力をよりよく分散するので好ましい。応力分散層が厚すぎる場合、施術者が、切開の有効な配置のために下層の生体構造(例えば、骨ばっている隆起)を感じることができない場合がある。また、応力分散層の厚さが増すにつれて、曲線状の身体表面に対する適合性が典型的に低下する。応力分散層の厚さは、典型的に、10mm以下であり、8mm以下であることが多く、5mm以下であることが更により多い。厚さの代表的な範囲は、3mm〜5mmである。切開の大きさの変動、切開部位の生体構造、開創器の大きさ、及び所望の外科的手技は、様々な厚さの応力分散層を必要とする場合があり、これは、施術者によって決定することができる。
【0065】
応力分散層の大きさは、作製される切開の大きさに依存して広範囲にわたる大きさであってもよい。典型的な応力分散層は、切開の所望の長さよりも各末端において少なくとも2cm長い。典型的な応力分散層は、切開の各辺の幅が少なくとも3cmであり、4cm以下であることが多い(典型的な応力分散層の幅は6cm〜8cmになる)。必要に応じてより大きな層を用いてもよいが、このような層は、典型的に無駄が多く、適用が困難になる場合がある。
【0066】
応力分散層の厚さは、典型的に、全体にわたって均一である。しかし、所望の効果を得るために材料全体にわたって厚さが変動し得るように、凹凸があったり不均一であったりしてもよい(例えば、図3a及び3bを参照)。例えば、切開領域内及び周囲がより厚くてもよく(例えば、材料の中央部)、領域の残部より薄くてもよい(例えば、材料の縁部がテーパ形状)、これは、縁部における適合性を高めることができる。縁部が薄くなると縁部における段差がより小さくなるので、テーパ形状の構造(図3aに示すように)は、特定の実施形態において望ましい場合があり、それは特に、軟質ポリマー材料が応力分散層の上に存在する場合である。
【0067】
応力分散層は、使用前に表面を保護するために応力分散材料に対する剥離ライナを有してもよい。剥離ライナは、紙、プラスチックでコーティングされた紙、プラスチックフィルム、織布、不織布、又はニット生地、並びにフィルム生地積層体等の様々な材料で作製することができる。好ましい剥離ライナ材料としては、臨床医がそれを通して患者を見ることができ、それによってフィルムを正確に配置することができる透明なポリマーライナが挙げられる。好ましい透明なポリマーライナとしては、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン類、又はポリエステルライナ、並びにポリオレフィンでコーティングされたポリエステル等の積層体が挙げられる。ガンマ線滅菌を意図する製品の場合、紙、ポリエチレン、ポリエステル、又はポリエチレンでコーティングされたポリエステルライナの使用が好ましい。
【0068】
術前皮膚用調製品及びバリアフィルム
術前皮膚用調製品は、様々な周知の種類であってもよい。本明細書で使用するとき、術前皮膚用調製品としては、防腐性皮膚用調製品、ポリマーフィルム形成剤を有する防腐性皮膚用調製品、及び微生物シーラント又はバリアとして有用なフィルム形成調製品が挙げられる。また、Kimberly Clarkから商品名INTEGUSEALとして入手可能なもの(切開ドレープの所定の位置で皮膚に直接適用されるシアノアクリレート)等の術前ポリマーバリアフィルムを用いてもよい。他の術前皮膚用調製品及びバリアフィルムは、米国特許第4,584,192号、同第4,542,012号、同第7,459,167号、及び同第7,030,203号、並びに米国出願公開第2008/0046004号及び同第2007/0147947号を含む多くの特許に記載されている。
【0069】
使用方法
本発明の方法は、外科的手技中に組織を保護し、例えば、治癒した切開の外観を改善することを含む。典型的に、本明細書に記載される方法は、患者の組織、例えば皮膚を、術前皮膚用調製品で処置することを含む。
【0070】
特定の実施形態では、方法は、術前皮膚用調製品上で患者に切開ドレープを適用した後、切開ドレープ上に応力分散層を適用する工程;又は応力分散層をドレープに適用し、次いで、応力分散複合体を患者に適用する工程;又は術前皮膚用調製品上で組織(例えば、皮膚)に応力分散層を適用した後、応力分散層上に切開ドレープを適用する工程;又は(切開ドレープを用いることなく)DuraPrep等の術前皮膚用調製品上に応力分散層を適用する工程;又はKimberly Clarkから商品名INTEGUSEALとして入手可能なもの(切開ドレープの所定の位置で皮膚に直接適用されるシアノアクリレート)等の術前ポリマーバリアフィルム上に応力分散層を適用する工程を含む。
【0071】
特定の実施形態では、本発明は、外科的手技中に患者の組織を保護する方法であって、術前皮膚用調製品を提供する工程と;対向する第1及び第2の主表面を有する自立型耐水性応力分散層を提供する工程と;患者の皮膚を術前皮膚用調製品で処置する工程と;術前皮膚用調製品で処置された領域全体にわたって、患者に自立型耐水性応力分散層を接着させる工程と;術前皮膚用調製品及び応力分散層を通して組織を切開する工程と;開創器を用いて切開に沿って組織を牽引する工程と;を含み、術前皮膚用調製品及び応力分散層が牽引中に伸長及び/又は圧縮されるものである方法を提供する。特定の実施形態では、方法は、自立型耐水性応力分散層を患者に接着させる前又は後に、術前皮膚用調製品で処置された領域全体にわたって患者に切開ドレープを接着させる工程を更に含む。「後」の場合、切開ドレープは、応力分散層に接着され、これは、術前皮膚用調製品上で患者の皮膚に接着される。「前」の場合、応力分散層は、切開ドレープに接着され、これは、術前皮膚用調製品上で患者の皮膚に接着される。
【0072】
特定の実施形態では、本発明の方法は、対向する第1及び第2の主表面を有する耐水性応力分散層を提供する工程であって、応力分散層の少なくとも一部では第1の主表面と第2の主表面との間の厚さが少なくとも1mmである、工程と;応力分散層が患者の組織の形状に一致するように、応力分散層を患者に接着させる工程と;応力分散層を通して組織を切開する工程と;開創器を用いて切開に沿って組織を牽引する工程と:を含み、応力分散層は牽引中に伸長及び/又は圧縮されるものである。特定の実施形態では、応力分散層の主表面の少なくとも1つを軟質ポリマーフィルムに付着させて、応力分散複合体を形成し;応力分散層の接着は、応力分散複合体が患者の組織の形状に一致するように、患者に応力分散複合体を接着させることを含み;切開は、応力分散複合体を通して組織まで切開を行うことを含む。
【0073】
上記方法は、応力分散層を単独で用いてもよく、外科的切開ドレープ等の軟質ポリマーフィルムと共に用いてもよい。この実施形態では、方法は、対向する第1及び第2の主表面を有し、1つの主表面の少なくとも一部の上面に配置される感圧性接着剤の層を有する軟質ポリマーフィルム、を含む外科的切開ドレープを提供する工程と;外科的切開ドレープを患者に接着させる工程と;応力分散層を切開ドレープに付着させる工程とを更に含み、切開は、応力低減材料及び外科的切開ドレープを通して組織まで切開を行うことを含む。別の実施形態では、方法は、対向する第1及び第2の主表面を有し、1つの主表面の少なくとも一部の上面に配置される感圧性接着剤の層を有する軟質ポリマーフィルム、を含む外科的切開ドレープを提供する工程と;応力分散層を患者に接着させる工程と;切開ドレープを応力分散層に接着させる工程とを更に含み、切開は、応力低減材料及び外科的切開ドレープを通して組織まで切開を行うことを含む。
【0074】
外科的手技中に患者の組織を保護するための本発明の好ましい方法は、応力分散層及び軟質ポリマーフィルムの使用を含む。このような方法は、対向する第1及び第2の主表面を有する軟質ポリマーフィルムを提供する工程と、対向する第1及び第2の主表面を有する応力分散層を提供する工程であって、応力分散層の少なくとも一部では第1の主表面と第2の主表面との間の厚さが少なくとも1mmである、工程と;軟質ポリマーフィルム及び応力分散層が互いに付着して応力分散複合体を形成し、応力分散複合体が、患者の組織の形状に一致して患者に接着するように、軟質ポリマーフィルムと応力分散層とを互いに接触して配置する工程と;応力分散層を通して組織を切開する工程と;開創器を用いて切開に沿って組織を牽引する工程と;を含み、応力分散層は牽引中に伸長及び/又は圧縮されるものである。
【0075】
このような方法の1つの実施形態では、患者上において、軟質ポリマーフィルムと応力分散層とを互いに接触して配置することは、応力分散層と軟質ポリマーフィルムとを含み、所望により感圧性接着剤を用いた、応力分散複合体を形成し、患者上に応力分散複合体を配置し、応力分散複合体を患者に接着することを含む。軟質ポリマーフィルム及び応力分散層は、外科的手技前に(例えば、製造業者によって)互いに付着して応力分散複合体を形成してもよい。
【0076】
このような方法の別の実施形態では、患者上において、軟質ポリマーフィルムと応力分散層とを互いに接触して配置することは、軟質ポリマーフィルム及び応力低減材料が互いに付着して応力分散複合体を形成する前に、軟質ポリマーフィルム及び応力分散層のうちの1つを患者と接触して配置することを含む。例えば、患者上において軟質ポリマーフィルムと応力分散層とを互いに接触して配置することは、患者上に応力分散層を配置し、応力分散層を患者に接着させ、次いで、応力分散層上に軟質ポリマーフィルムを配置して、応力分散複合体を形成することを含む。あるいは、患者上において軟質ポリマーフィルムと応力分散層とを互いに接触して配置することは、患者上に軟質ポリマーフィルムを配置し、軟質ポリマーフィルムを患者に接着させ、次いで、軟質ポリマーフィルム上に応力分散層を配置して、応力分散複合体を形成することを含む。
【0077】
応力分散層及び任意の軟質ポリマーフィルムは、好ましくは、組織の牽引中に裂けない。より好ましくは、応力分散層、及び任意の軟質ポリマーフィルムは、牽引によって、切開の縁部に沿って患者から応力分散層がずれないように、組織に十分接着する。
【0078】
好ましくは、軟質ポリマーフィルム及び応力分散層、並びに任意の感圧性接着剤は、軟質ポリマーフィルム及び応力分散層を通して施術者が組織を見ることができるのに十分な程度透明(透明又は半透明)である。これは、特に、施術者が所望の位置で組織に印を付けている場合、切開される下層の組織を施術者がよりよく見ることを可能にする。必要に応じて、軟質ポリマーフィルム及び/又は応力分散層は、切開及び/又は縫合において施術者を補助するために可視格子(例えば、1cmの正方形)を含んでもよい。
【0079】
軟質ポリマーフィルムは、好ましくは、外科的切開ドレープとして提供される。多くの実施形態では、軟質ポリマーフィルム、応力分散層、又は両方は、その少なくとも1つの主表面の少なくとも一部の上面に感圧性接着剤を含む。この感圧性接着剤は、典型的に、軟質ポリマーフィルムと応力分散層との間の付着機序を提供する。
【0080】
特定の実施形態では、軟質ポリマーフィルムは、フィルムの少なくとも1つの主表面上に第1の感圧性接着剤を有する切開ドレープとして提供される。特定の実施形態では、応力分散層は、その少なくとも1つの主表面上に第2の感圧性接着剤を含む。特定の実施形態では、2つのこのような感圧性接着剤が共に用いられる場合(例えば、応力分散複合体物品において)、第1及び第2の感圧性接着剤は、好ましくは、外科的手技中に、切開ドレープ及び応力分散層が互いに接着したままであり、かつ応力分散複合体が切開縁部にしっかりと接着されるように選択される。
【0081】
外科的切開ドレープを用いる1つの代表的な実施形態では、本発明の方法は、対向する第1及び第2の主表面を有し、その少なくとも1つの主表面の少なくとも一部の上面に感圧性接着剤を有する軟質ポリマーフィルム、を含む外科的切開ドレープを提供する工程と;対向する第1及び第2の主表面を有する自立型耐水性応力分散層を提供する工程と;外科的切開ドレープを患者に接着させる工程と;自立型耐水性応力分散層を外科的切開ドレープに接着させる工程と;切開ドレープ及び応力分散層を通して組織を切開する工程と;開創器を用いて切開に沿って組織を牽引する工程と;を含み、切開ドレープ及び応力分散層が牽引中に伸長及び/又は圧縮されるものである。好ましくは、牽引によって、牽引中に伸長及び/又は圧縮されている間、切開に沿って患者から外科的切開ドレープ及び応力分散層がずれることはない。
【0082】
特定の実施形態では、応力分散層は、複数の層として提供されてもよい。例えば、1つの実施形態では、応力分散層は、折り畳まれて、二重層として適用されてもよい。すなわち、自立型応力分散層を、例えば外科的切開ドレープに接着するとき、施術者は、二重の応力分散層を形成し(例えば、それを折り畳むことによって)、2つの層を外科的切開ドレープに接着してもよい。
【0083】
特定の実施形態では、応力分散層は、複数の片として提供されてもよい。例えば、1つの実施形態では、切開部位の両側に1枚ずつ、2枚の応力分散層を患者に適用してもよい。すなわち、自立型応力分散層を、例えば外科的切開ドレープに接着するとき、施術者は、切開部位の片側に(例えば、外科的切開ドレープ上に)1枚以上の応力分散層を配置し、もう片側に1枚以上の応力分散層を配置して、応力分散材料を通して切断することを避けてもよい。
【0084】
また、本発明は、製品、特に、応力分散層と軟質ポリマーフィルムとを含むキットを提供する。例えば、キットは、対向する第1及び第2の主表面と、少なくとも1つの主表面の少なくとも一部の上面に配置される感圧性接着剤と、感圧性接着剤上に配置される剥離ライナと、を有する軟質ポリマーフィルム、を含む外科的切開ドレープと;対向する第1及び第2の主表面を有し、表面のうちの少なくとも1つの上に配置される剥離ライナを有する耐水性応力分散層と;外科的切開ドレープ及び応力分散層を封入する無菌包装とを含んでもよい。
【0085】
別のキットは、対向する第1及び第2の主表面を有し、表面の少なくとも1つの上に配置される剥離ライナを有する耐水性応力分散層と、術前皮膚用調製品と、応力分散層及び術前皮膚用調製品を封入する無菌包装とを含む。更に別のキットは、対向する第1及び第2の主表面と、少なくとも1つの主表面の少なくとも一部の上面に配置される感圧性接着剤と、感圧性接着剤上に配置される剥離ライナと、を有する軟質ポリマーフィルム、を含む外科的切開ドレープと;対向する第1及び第2の主表面を有し、表面のうちの少なくとも1つの上に配置される剥離ライナを有する耐水性応力分散層と;術前皮膚用調製品と;外科的切開ドレープ及び応力分散層を封入する無菌包装とを含む。このようなキットでは、好ましくは、応力分散層の少なくとも一部では第1の主表面と第2の主表面との間の厚さは、少なくとも1mmである。
【0086】
本発明は、対向する第1及び第2の主表面と、第1の主表面上に配置される感圧性接着剤と、感圧性接着剤上に配置される剥離ライナと、を有する軟質ポリマーフィルムと;対向する第1及び第2の主表面を有する耐水性応力分散層であって、耐水性応力分散層は応力分散複合体を形成するフィルムの第2の主表面上に配置されており、応力分散層の、軟質ポリマーフィルムとは反対側の表面上に配置された剥離ライナを有する、耐水性応力分散層と;応力分散複合体を封入する無菌包装とを含む製品を提供する。好ましくは、応力分散層の少なくとも一部では第1の主表面と第2の主表面との間の厚さは、少なくとも1mmである。
【0087】
また、本発明は、患者の皮膚に接着する応力分散層及び/又は複合体を提供する。1つの実施形態では、これは、所望により、患者の皮膚上の術前皮膚用調製品又はバリアフィルムと;対向する第1及び第2の主表面を有する耐水性応力分散層であって、応力分散層の少なくとも一部では第1の主表面と第2の主表面との間の厚さが少なくとも1mmである、耐水性応力分散層と;を含み、耐水性応力分散層は、直接、又は患者の皮膚上に存在する場合には、任意の術前皮膚用調製品若しくはバリアフィルムを通して、患者の皮膚に接着される。この実施形態では、切開ドレープは、好ましくは、耐水性応力分散層に接着される。
【0088】
別の実施形態では、本発明は、患者の皮膚に接着する応力分散複合体であって、所望により、患者の皮膚上の術前皮膚用調製品又はバリアフィルムと;対向する第1及び第2の主表面を有し、その少なくとも1つの主表面の少なくとも一部の上面に配置される感圧性接着剤を有する軟質ポリマーフィルム、を含む外科的切開ドレープと;対向する第1及び第2の主表面を有する耐水性応力分散層であって、応力分散層の少なくとも一部では第1の主表面と第2の主表面との間の厚さが少なくとも1mmである、耐水性応力分散層と;を含み、外科的切開ドレープは、直接、又は存在する場合には、患者の皮膚上の任意の術前皮膚用調製品若しくはバリアフィルムを通して、感圧性接着剤により接着され、耐水性応力分散層は、感圧性接着剤とは反対側の表面上で切開ドレープに付着する応力分散複合体を提供する。
【0089】
本発明の例示的な実施形態
1.外科的手技中に患者の組織を保護する方法であって、
対向する第1及び第2の主表面を有する耐水性応力分散層を提供する工程であって、応力分散層の少なくとも一部では第1の主表面と第2の主表面との間の厚さが少なくとも1mmである、工程と;
応力分散層が患者の組織の形状に一致するように、応力分散層を患者に接着させる工程と;
応力分散層を通して組織を切開する工程と;
開創器を用いて切開に沿って組織を牽引する工程と;
を含み、応力分散層が、牽引中に伸長及び/又は圧縮されるものである、方法。
【0090】
2.応力分散層の主表面の少なくとも1つを軟質ポリマーフィルムに付着させて、応力分散複合体を形成し;応力分散層の接着が、応力分散複合体が患者の組織の形状に一致するように、患者に応力分散複合体を接着させることを含み;切開が、応力分散複合体を通して組織を切開することを含む、実施形態1に記載の方法。
【0091】
3.対向する第1及び第2の主表面を有し、1つの主表面の少なくとも一部の上面に配置される感圧性接着剤の層を有する軟質ポリマーフィルム、を含む外科的切開ドレープを提供する工程と;
外科的切開ドレープを患者に接着させる工程と;
応力分散層を切開ドレープに付着させる工程と;
を更に含み、切開が、応力低減材料及び外科的切開ドレープを通して組織を切開することを含む、実施形態1に記載の方法。
【0092】
4.対向する第1及び第2の主表面を有し、1つの主表面の少なくとも一部の上面に配置される感圧性接着剤の層を有する軟質ポリマーフィルム、を含む外科的切開ドレープを提供する工程と;
応力分散層を患者に接着させる工程と;
外科的切開ドレープを応力分散層に接着させる工程と;
を更に含み、切開が、応力低減材料及び外科的切開ドレープを通して組織を切開することを含む、実施形態1に記載の方法。
【0093】
5.牽引によって、牽引中に応力分散層が伸長及び/又は圧縮されている間、切開に沿って患者から応力分散層がずれることのない、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
6.外科的手技中に患者の組織を保護する方法であって、
対向する第1及び第2の主表面を有する軟質ポリマーフィルムを提供する工程と;
対向する第1及び第2の主表面を有する耐水性応力分散層を提供する工程であって、応力分散層の少なくとも一部では第1の主表面と第2の主表面との間の厚さが少なくとも1mmである、工程と;
軟質ポリマーフィルム及び応力分散層が互いに付着して応力分散複合体を形成し、応力分散複合体が、患者の組織の形状に一致して患者に接着するように、軟質ポリマーフィルムと応力分散層とを互いに接触して配置する工程と;
応力分散複合体を通して組織を切開する工程と;
開創器を用いて切開に沿って組織を牽引する工程と;
を含み、応力分散複合体が、牽引中に伸長及び/又は圧縮されるものである、方法。
【0095】
7.患者上において、軟質ポリマーフィルムと応力分散層とを互いに接触して配置することが、応力分散層と軟質ポリマーフィルムとを含み、所望によりこれらの間に感圧性接着剤を用いた、応力分散複合体を形成し、患者上に応力分散複合体を配置し、応力分散複合体を患者に接着することを含む、実施形態6に記載の方法。
【0096】
8.軟質ポリマーフィルム及び応力分散層が、互いに付着して外科的手技前に応力分散複合体を形成する、実施形態7に記載の方法。
【0097】
9.患者上において、軟質ポリマーフィルムと応力分散層とを互いに接触して配置することが、軟質ポリマーフィルム及び応力低減材料が互いに付着して応力分散複合体を形成する前に、軟質ポリマーフィルム及び応力分散層のうちの1つを患者と接触して配置することを含む、実施形態6に記載の方法。
【0098】
10.患者上において軟質ポリマーフィルムと応力分散層とを互いに接触して配置することが、患者上に応力分散層を配置し、応力分散層を患者に接着させ、次いで、応力分散層上に軟質ポリマーフィルムを配置して、応力分散複合体を形成することを含む、実施形態9に記載の方法。
【0099】
11.患者上において、軟質ポリマーフィルムと応力分散層とを互いに接触して配置することが、患者上に軟質ポリマーフィルムを配置し、軟質ポリマーフィルムを患者に接着させ、次いで、軟質ポリマーフィルム上に応力分散層を配置して、応力分散複合体を形成することを含む、実施形態9に記載の方法。
【0100】
12.軟質ポリマーフィルムが、従来の外科的切開ドレープとして提供される、実施形態6〜11のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
13.応力分散層の少なくとも一部では第1の主表面と第2の主表面との間の厚さが2mm超である、実施形態6〜11のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
14.軟質ポリマーフィルム、応力分散層、又は両方が、その少なくとも1つの主表面の少なくとも一部の上面に配置される感圧性接着剤を有する、実施形態6〜13のいずれか1つに記載の方法。
【0103】
15.切開を行う前に、応力分散層を通して組織を見ることができるようにする工程を更に含む、実施形態1〜14のいずれか1つに記載の方法。
【0104】
16.応力分散層の厚さが均一である、実施形態1〜15のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
17.応力分散層が本質的に粘着性である、実施形態1〜16のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
18.外科的手技中に患者の組織を保護する方法であって、
対向する第1及び第2の主表面を有し、その少なくとも1つの主表面の少なくとも一部の上面に感圧性接着剤を有する軟質ポリマーフィルム、を含む外科的切開ドレープを提供する工程と;
対向する第1及び第2の主表面を有する自立型耐水性応力分散層を提供する工程と;
外科的切開ドレープを患者に接着させる工程と;
自立型耐水性応力分散層を外科的切開ドレープに接着する工程と;
切開ドレープ及び応力分散層を通して組織を切開する工程と;
開創器を用いて切開に沿って組織を牽引する工程と;
を含み、外科的切開ドレープ及び応力分散層が、牽引中に伸長及び/又は圧縮されるものである、方法。
【0107】
19.応力分散層の外科的切開ドレープに対する接着が、二重の応力分散層を外科的切開ドレープに接着させることを含む、実施形態18に記載の方法。
【0108】
20.牽引によって、牽引中に伸長及び/又は圧縮されている間、切開に沿って患者から外科的切開ドレープ及び応力分散層がずれることのない、実施形態18又は19に記載の方法。
【0109】
21.耐水性応力分散層が多孔質である、実施形態1〜20のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
22.耐水性応力分散層がマット仕上げを有する、実施形態1〜21のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
23.患者の組織が、術前皮膚用調製品で最初に処置される、実施形態1〜22のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
24.患者の組織が、バリアフィルムで最初に処置される、実施形態1〜23のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
25.外科的手技中に患者の組織を保護する方法であって、
術前皮膚用調製品を提供する工程と;
対向する第1及び第2の主表面を有する自立型耐水性応力分散層を提供する工程と;
患者の皮膚を術前皮膚用調製品で処置する工程と;
術前皮膚用調製品で処置された領域全体にわたって、患者に自立型耐水性応力分散層を接着させる工程と;
術前皮膚用調製品及び応力分散層を通して組織を切開する工程と;
開創器を用いて切開に沿って組織を牽引する工程と;
を含み、術前皮膚用調製品及び応力分散層が、牽引中に伸長及び/又は圧縮されるものである、方法。
【0114】
26.自立型耐水性応力分散層を患者に接着させる前又は後に、術前皮膚用調製品で処置された領域全体にわたって患者に切開ドレープを接着させる工程を更に含む、実施形態25に記載の方法。
【0115】
27.外科的手技が最小侵襲外科的手技である、実施形態1〜26のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
28.外科的手技が開腹外科的手技である、実施形態1〜27のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
29.患者の組織を保護するために外科的手技中に使用されるキットであって、
対向する第1及び第2の主表面と、少なくとも1つの主表面の少なくとも一部の上面に配置される感圧性接着剤と、感圧性接着剤上に配置される剥離ライナと、を有する軟質ポリマーフィルム、を含む外科的切開ドレープと;
対向する第1及び第2の主表面を有し、表面の少なくとも1つの上に配置される剥離ライナを有する耐水性応力分散層と;
外科的切開ドレープ及び応力分散層を封入する無菌包装と;を含むキット。
【0118】
30.患者の組織を保護するために外科的手技中に使用されるキットであって、
対向する第1及び第2の主表面を有し、表面の少なくとも1つの上に配置される剥離ライナを有する耐水性応力分散層と;
術前皮膚用調製品と;
応力分散層及び術前皮膚用調製品を封入する無菌包装と;を含むキット。
【0119】
31.患者の組織を保護するために外科的手技中に使用されるキットであって、
対向する第1及び第2の主表面と、少なくとも1つの主表面の少なくとも一部の上面に配置される感圧性接着剤と、感圧性接着剤上に配置される剥離ライナと、を有する軟質ポリマーフィルムと;
対向する第1及び第2の主表面を有し、表面の少なくとも1つの上に配置される剥離ライナを有する耐水性応力分散層と;
術前皮膚用調製品と;
外科的切開ドレープ及び応力分散層を封入する無菌包装と;を含むキット。
【0120】
32.応力分散層の少なくとも一部では第1の主表面と第2の主表面との間の厚さが少なくとも1mmである、実施形態29〜31のいずれか1つに記載のキット。
【0121】
33.対向する第1及び第2の主表面と、第1の主表面の少なくとも一部の上面に配置される感圧性接着剤と、感圧性接着剤上に配置される剥離ライナと、を有する軟質ポリマーフィルムと;
対向する第1及び第2の主表面を有する耐水性応力分散層であって、耐水性応力分散層は応力分散複合体を形成するフィルムの第2の主表面上に配置されており、応力分散層の、軟質ポリマーフィルムとは反対側の表面上に配置された剥離ライナを有する、耐水性応力分散層と;
応力分散複合体を封入する無菌包装と;を含む製品。
【0122】
34.応力分散層の少なくとも一部では第1の主表面と第2の主表面との間の厚さが少なくとも1mmである、実施形態33に記載の製品。
【0123】
35.患者の皮膚に接着される応力分散層であって、
所望により、患者の皮膚上の術前皮膚用調製品又はバリアフィルムと;
対向する第1及び第2の主表面を有する耐水性応力分散層であって、応力分散層の少なくとも一部では、第1の主表面と第2の主表面との間の厚さが少なくとも1mmである、耐水性応力分散層と;
を含み、耐水性応力分散層が、直接、又は存在する場合には、患者の皮膚上の任意の術前皮膚用調製品若しくはバリアフィルムを通して、患者の皮膚に接着される応力分散層。
【0124】
36.耐水性応力分散層に接着される切開ドレープを更に含む、実施形態35に記載の患者の皮膚に接着される応力分散層。
【0125】
37.患者の皮膚に接着される応力分散複合体であって、
所望により、患者の皮膚上の術前皮膚用調製品又はバリアフィルムと;
対向する第1及び第2の主表面を有し、その少なくとも1つの主表面の少なくとも一部の上面に配置される感圧性接着剤を有する軟質ポリマーフィルム、を含む外科的切開ドレープと;
対向する第1及び第2の主表面を有する耐水性応力分散層であって、応力分散層の少なくとも一部では第1の主表面と第2の主表面との間の厚さが少なくとも1mmである、耐水性応力分散層と;
を含み、外科的切開ドレープが患者の皮膚に直接、又は存在する場合には、患者の皮膚上の任意の術前皮膚用調製品若しくはバリアフィルムを通して、感圧性接着剤により接着され、耐水性応力分散層が、感圧性接着剤とは反対側の表面上で切開ドレープに付着する応力分散複合体。
【0126】
38.応力分散層が複数の片で提供される、実施形態35〜37のいずれか1つに記載の層又は複合体。
【0127】
39.耐水性応力分散層が、ポリアミド、ポリウレタン、コポリエステル、スチレンブロックポリマー、シリコーン、スチレンブタジエン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、エチレンプロピレンポリマー、天然ゴム、合成ゴム、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される疎水性ポリマーを含む、実施形態1〜38のいずれかに記載の方法、製品、キット、層、又は複合体。
【0128】
40.耐水性応力分散層が、アクリレート、メタクリレート、N−ビニルラクタム、(メタ)アクリルアミド、スチレン、ビニルエーテル、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるモノマーから調製される疎水性ポリマーを含む、実施形態1〜38のいずれかに記載の方法、製品、キット、層、又は複合体。
【実施例】
【0129】
本発明の目的及び利点は、下記の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈すべきではない。
【0130】
(実施例1)
重量比50/50の、KRATON 1117(Kraton Polymers,Houston,TX)とKaydol Mineral Oil(Sonneborn,Inc.,Mahwah,NJ)との混合物を300℃で溶融混合し、冷却するために鋳型に注いだ。厚さ4mmのゲルを厚さ25マイクロメートルのHYTREL 4056ポリエステルフィルム(HYTREL,DuPont Elastomers,Inc.,Wilmington,DE)に積層した。この10cm×15cmの片をIOBAN 2抗菌性切開ドレープ(3M Health Care,St.Paul,MN)に、ゲルの粘着性側がドレープフィルムと接触するように積層して、応力分散複合体を形成した。
【0131】
(実施例2)
75/25のエチルヘキシルアクリレート/アクリル酸の混合物(BASF,Ludwigshafen,Germany)を0.3%のIRGACURE 2959(Ciba Specialty Chemicals,Basel,Switzerland)と合わせた。溶液をローラーミル上に置いて、IRGACUREを溶解させた。次いで、この溶液を、深さ約3.2mmの10cm×10cmのシリコーン成形鋳型に注いだ。25マイクロメートルのポリエチレンのシートを成形型中の溶液に適用して、酸素を除去した。成形型中の溶液を、6つのSylvania 350ブラックライト(Silvania Division,Osram GmbH,Danvers,MA)からなるブラックライトボックス内で、2.5cmの距離で5分間硬化させた。硬化した接着剤を成形型から取り出した。上層フィルムを除去した後、厚さ25マイクロメートルのHYTREL 4056ポリエステルフィルムを光硬化したポリマーに積層した。次いで、このフィルム及びゲルを、IOBAN 2抗菌性切開ドレープのシートに積層して、応力分散複合体を形成した。
【0132】
(実施例3)
重量比50/50のINFUSE 9000(Dow Chemical,Midland MI)とKaydol鉱油とを300℃で溶融混合し、冷却するために鋳型に注いだ。厚さ4mmの可塑化オレフィンブロックポリマーを、約5cmの間隔でメスで直線的に切断した。切開切断に沿った反対向きの牽引の中間は、ブロックポリマーの良好な弾性を示した。
【0133】
比較例4
従来の手術準備手順を用いた後、外科医は、意図する手術部位上にIOBAN 2抗菌性切開ドレープ(3M Company,St.Paul,MNの製品)を置いた。切開後、外科医は開創器を用いて下層の組織を露出させた。牽引された部位を観察すると、皮膚及び被覆材料が横方向に圧縮され、多数のしわを生じさせて、図5に示すように顕著な皮膚応力の指標を形成していた。
【0134】
患者に接着されている実施例1〜3で調製された種類の材料の切開及び牽引後、切開部位の周囲の皮膚表面は、図5に示されるよりも少ない応力しわを示し、これは、牽引の応力が、手術の過程中に圧縮損傷から皮膚を保護する応力分散層によって散逸したことを示すと考えられる。
【0135】
本明細書中に引用される特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、その全体が参照することによって組み込まれる。本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する「特許請求の範囲」によってのみ限定されると意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5