特許第5775079号(P5775079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5775079擬似鉱石及びこれを利用した解析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775079
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】擬似鉱石及びこれを利用した解析システム
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/00 20060101AFI20150820BHJP
   E21C 41/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   G01V1/00 Z
   E21C41/00
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-527786(P2012-527786)
(86)(22)【出願日】2011年8月5日
(86)【国際出願番号】JP2011067960
(87)【国際公開番号】WO2012018118
(87)【国際公開日】20120209
【審査請求日】2014年6月6日
(31)【優先権主張番号】特願2010-176677(P2010-176677)
(32)【優先日】2010年8月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】国見 敬
(72)【発明者】
【氏名】芥川 真一
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−235542(JP,A)
【文献】 特開2001−337173(JP,A)
【文献】 特開昭62−52485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00
E21C 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱床内あるいは地盤内に埋設される擬似岩石であって、
前記鉱床内あるいは地盤内に存在する岩石の平均的な形状及び大きさを有する筐体と、
該筐体の中心を原点とする3次元座標(X軸、Y軸、Z軸)に対し、各軸の正負の方向に作用する応力を検出する歪みセンサと、
前記3次元座標の各軸方向に作用する加速度を検出する三軸加速度センサと、
前記3次元座標に対し、特定の方向の振動を与える加振器と、
前記歪みセンサ及び前記三軸加速度センサそれぞれの検出値を特定パターンの振動パルスに変換し、前記加振器に出力する制御装置と、
を備えたことを特徴とする擬似岩石。
【請求項2】
前記擬似岩石は個別にID振動パルスが割り振られ、前記制御装置は、前記歪みセンサ及び前記三軸加速度センサの検出値に対応した特定パターンの振動パルスを前記加振器に出力する際、前記ID振動パルスを合わせて出力することを特徴とする請求項1記載の擬似岩石。
【請求項3】
前記制御装置は、前記三軸加速度センサまたは個別に設けた振動センサが前記ID振動パルスの振動を検出した際、自らの電源をオンにする電源制御手段を備えていることを特徴とする請求項2記載の擬似岩石。
【請求項4】
三軸地磁気センサをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の擬似岩石。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の擬似岩石を地上で管制する地上管制装置であって、
前記擬似岩石に対し該擬似岩石のID振動パルスを送信し、該擬似岩石のトリガーを行う送信用バイブレータと、
前記擬似岩石の加振器からの振動を検出する受信センサと、
を備えたことを特徴とする地上管制装置。
【請求項6】
前記受信センサが、前記擬似岩石から当該擬似岩石のID振動パルスに対応する振動とともに、前記歪みセンサ及び前記三軸加速度センサの検出値に対応する振動パルスを検知し、該擬似岩石のID振動パルスと合わせて当該擬似岩石の前記歪みセンサ及び前記三軸加速度センサの各検出値を解析するデータ解析装置をさらに備えたことを特徴とする請求項5記載の地上管制装置。
【請求項7】
前記受信センサは、前記鉱床あるいは地盤の外周の少なくとも3箇所に配置され、前記擬似岩石の加振器から信号の到達時間の相違に基づいて、当該擬似岩石の鉱床内あるいは地盤内における3次元位置を解析する位置解析装置をさらに備えたことを特徴とする請求項5または6記載の地上管制装置。
【請求項8】
前記擬似岩石の各歪みセンサの検出値あるいは前記三軸地磁気センサの検出値に基づいて、当該擬似岩石の3次元座標(X軸、Y軸、Z軸)の鉛直方向に対する傾斜角あるいは水平方向の傾斜角を解析する3次元座標解析装置をさらに備えるようにしたことを特徴とする請求項6または7記載の地上管制装置。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項記載の擬似岩石と、請求項5〜8のいずれか1項記載の地上管制装置を組み合わせたことを特徴とする鉱床内あるいは地盤内の岩石挙動解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱床崩落時や液状化現象発生時の岩石の挙動を解析するための擬似岩石、及びこれを利用した解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉱床の下部を広く切り出し、地表に及ぶまで鉱床全体を崩落させ、下部より鉱石を抜き出す方法(ブロックケービング法)が、鉱床の深部化に伴う経済性の観点から注目されている。
【0003】
従来、地下坑道、鉱床あるいは地層内の異常を検出・解析するため、さまざまな装置や手法が提案されており、下記特許文献1には、地下掘削ボーリング孔に形成した人工亀裂に設置される圧力測定プローブを設け、地下坑道の変位を監視する技術が、下記特許文献2には、岩石塊の表面の変位を測定する技術が、そして、下記特許文献3には、調査坑に注入した高速磁性流体に磁場を印加して、地下のフラクチャ構造を解析する技術がそれぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開2005−37313号公報
【特許文献2】日本国特表平11−506540号公報
【特許文献3】日本国特開平6−66950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先行技術文献によれば、坑道の解析や岩石塊の表面の変位等を計測することが可能になるが、ブロックケービング法においては、鉱床内の岩石に、どのような応力が負荷されたとき、どのような挙動を取りながら崩落するのかが、崩落開始のタイミングや崩落の規模をシミュレーションする際、きわめて重要なパラメータとなる。
一方、大震災の発生時に、埋め立て地等において、いわゆる液状化現象の発生が懸念されているが、このような液状化現象の発生メカニズムを解析する上でも、地盤を構成する岩石の挙動を解析することが、効果的な防災対策を講じる上での基礎データとなる。
【0006】
そこで、上記の課題を解決するため、本発明においては、鉱床内あるいは地盤内に、これを構成する平均的な形状、大きさ(鉱床では採掘時の平均的な形状,大きさ)を有する擬似岩石を配置し、崩落時あるいは液状化現象発生時に、岩石に作用する応力、それに伴う岩石の挙動を計測し、これを収集して解析することにより、崩落開始のタイミング、崩落の規模、液状化現象の発生メカニズムをシミュレーションするための正確な基礎データを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、本発明の鉱床内あるいは地盤内に埋設される擬似岩石においては、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、
(1)前記鉱床内あるいは地盤内に存在する岩石の平均的な形状及び大きさを有する筐体と、該筐体の中心を原点とする3次元座標(X軸、Y軸、Z軸)に対し、各軸の正負の方向に作用する応力を検出する歪みセンサと、前記3次元座標の各軸方向に作用する加速度を検出する三軸加速度センサと、前記3次元座標に対し、特定の方向の振動を与える加振器と、前記歪みセンサ及び前記三軸加速度センサそれぞれの検出値を特定パターンの振動パルスに変換し、前記加振器に出力する制御装置とを具備した。
【0008】
(2)前記擬似岩石は個別にID振動パルスが割り振られ、前記制御装置は、前記歪みセンサ及び前記三軸加速度センサの検出値に対応した特定パターンの振動パルスを前記加振器に出力する際、前記ID振動パルスを合わせて出力するようにした。
【0009】
(3)前記制御装置は、前記三軸加速度センサまたは個別に設けた振動センサが前記ID振動パルスの振動を検出した際、自らの電源をオンにする電源制御手段を備えるようにした。
【0010】
(4)三軸地磁気センサをさらに備えるようにした。
【0011】
また、本発明の上記擬似岩石を地上で管制する地上管制装置は、
(5)前記擬似岩石に対し該擬似岩石のID振動パルスを送信し、該擬似岩石のトリガーを行う送信用バイブレータと、前記擬似岩石の加振器からの振動を検出する受信センサとを具備する。
【0012】
(6)前記受信センサが、前記擬似岩石から当該擬似岩石のID振動パルスに対応する振動とともに、前記歪みセンサ及び前記三軸加速度センサの検出値に対応する振動パルスを検知し、該擬似岩石のID振動パルスと合わせて当該擬似岩石の前記歪みセンサ及び前記三軸加速度センサの各検出値を解析するデータ解析装置をさらに備えるようにした。
【0013】
(7)前記受信センサは、前記鉱床あるいは地盤の外周の少なくとも3箇所に配置され、前記擬似岩石の加振器から信号の到達時間の相違に基づいて、当該擬似岩石の鉱床内あるいは地盤内における3次元位置を解析する位置解析装置をさらに備えるようにした。
【0014】
(8)前記擬似岩石の各歪みセンサの検出値あるいは前記三軸地磁気センサの検出値に基づいて、当該擬似岩石の3次元座標(X軸、Y軸、Z軸)の鉛直方向に対する傾斜角あるいは水平方向の傾斜角を解析する3次元座標解析装置をさらに備えるようにした。
【0015】
さらに本発明の鉱床内あるいは地盤内の岩石挙動解析システムは、上記(1)〜(4)の擬似岩石と、上記(5)〜(8)の地上管制装置を組み合わせることにより構成した。
【発明の効果】
【0016】
本発明の擬似岩石によれば、鉱床内あるいは地盤内に存在する岩石の代表的な形状及び大きさを有する筐体により、鉱床内あるいは地盤内に存在する岩石が他の岩石等から受ける応力や圧力の平均値を、歪みセンサ等で正確に測定することができ、しかも、3次元座標の各軸方向に作用する加速度を検出する三軸加速度センサと、特定の方向の振動を与える加振器により、振動により地上側と通信を確立でき、応力や圧力の方向を特定しながら、崩落開始のタイミング、崩落の規模、液状化現象の発生メカニズムをシミュレーションするための正確な基礎データを得ることができる。
【0017】
また、本発明の地上管制装置によれば、上記の擬似岩石のトリガーを行う送信用バイブレータと、擬似岩石の加振器からの振動を検出する受信センサを備えることにより、擬似岩石と振動による通信を可能として、擬似岩石の起動や、得られた検出データを地上において正確に受信することが可能となる。
【0018】
さらに本発明の岩石挙動解析システムによれば、上述の擬似岩石と地上管制装置を組み合わせることにより、鉱床あるいは地盤の所定箇所に、岩石挙動を正確に計測する計測システムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は本発明に係る擬似岩石の構造を示す図である。
図2図2は三軸加速度センサにより擬似岩石の鉛直方向の傾斜角を測定するための原理を示す図である。
図3図3は三軸地磁気センサにより擬似岩石の水平方向の傾斜角を測定するための原理を示す図である。
図4図4は擬似岩石内部の回路接続構成を示すブロック図である。
図5図5は歪みゲージの応力と検出値との関係を示す図である。
図6図6は地上管制装置の基本構成の平面図である。
図7図7は地上管制装置の基本構成の縦断面図である。
図8図8(A)は地上管制装置の送信用バイブレータが送出する4つの振動パルスを示し、図8(B)は4個の擬似岩石が備えているそれぞれ別個のIDを示す振動パルスを示している。
図9図9(A)は地上管制装置における送信用バイブレータが送出する4つの振動パルスを示し、図9(B)は複数の擬似岩石のうち送信用バイブレータが送出した4つの振動パルスで特定される擬似岩石が自己の三軸加速度センサにより検知する振動パルを示し、図9(C)は前記特定された擬似岩石が自己の加振器により地上管制装置に対して順次送信する自分のIDの振動パルスと、これに続く三軸加速度センサ、三軸地磁気センサ、温度センサ、各歪みゲージの検出値に対応する振動パルスを示している。
図10図10(A)は擬似岩石が加振器により地上管制装置にID振動パルス、各センサの検出値を送信する際のデータストリームを示し、図10(B)は本発明で使用する振動による1ビットを示し、図10(C)は振動による1ビットの構成を示している。
図11図11は複数の擬似岩石と地上管制装置との振動によるデータ通信を示す図である。
図12図12は長期にわたり計測する際のトリガー例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を鉱床崩落時の岩石挙動の解析に適用した際の実施例を図面とともに説明する。
【実施例】
【0021】
本実施例は、鉱床崩落時の岩石挙動の解析システムであることから、使用する擬似岩石は、鉱床から取り出される際の平均的な大きさ、形状に設定し、特に、設置位置、向き等は意識せず、崩落時における鉱床内の岩石の挙動を測定するのに適した状態で設置されるものである。
【0022】
図1に本実施例に係る擬似岩石の構造を示す。
図1において、100が本実施例に係る擬似岩石である。擬似岩石100の筐体は、外殻球(圧力外壁)1と内殻球2の二重構造となっており、外殻球(圧力外壁)1は、鉄あるいはステンレスなどから成型され、鉱床内において岩石から受ける圧力に耐え得るような強度を有している。内殻球2の内部には、三軸加速度センサ3、三軸地磁気センサ4、加振器(バイブレータ)5、温度センサ6及び電気制御ユニット(エレクトリック・コントロール・ユニット。以下、ECUという)7が収容されている。
外殻球1と内殻球2は、擬似岩石100のX軸、Y軸、Z軸の正負両方向に延びる6本の柱状部材8により連結されており、この柱状部材8には、それぞれ、歪みセンサである歪みゲージ9が2個取り付けられ、外殻球1と内殻球2の間のスペース11を利用して、二次電池などの電池スペースとしている。
なお、三軸地磁気センサ4は、後述するように、擬似岩石100の水平面におけるN軸に対する傾斜角を測定する際に使用するものであり、鉛直方向(重力作用方向)に対する傾斜角のみを測定する際は不要である。また、三軸地磁気センサ4を使用する場合は、擬似岩石100の内部で地磁気を正確に測定できるよう、外殻球1はステンレス等、地磁気を透過する素材とする必要がある。
【0023】
なお、この実施例では、擬似岩石100の筐体を外殻球1と内殻球2からなる二重構造の球体としたが、立方体、直方体あるいは平行に対向面を有する立体形状であればよく、鉱床内に分布する岩石の平均的な形状等に応じて適宜定めればよい。
【0024】
歪みゲージ9は、崩落開始前後、鉱床内の他の岩石との接触や衝突などにより、外殻球1に作用する圧力や衝撃を、これに伴い発生する各柱状部材8の歪みにより計測するもので、こうした圧力や衝撃を、擬似岩石100のX軸、Y軸、Z軸の正負両方向の6軸方向に高精度に検出することができる。
なお、この擬似岩石100は、鉱床内あるいは地盤内の適当な箇所に少なくとも1箇所設置されるが、複数個配置した方が、崩落現象を解析する上でより高精度のデータを収集することが可能になる。
【0025】
加振器5は、例えば、携帯電話に使用されているような、偏心ウエイトをモータで高速回転することにより、所定方向に振動を与えるもので、この振動は、三軸加速度センサ3により検出され、擬似岩石100のX軸、Y軸、Z軸方向の振動が検出される。なお、加振器5は、このようなタイプのものに限られることなく、コイルを用いたものなど、電動型加振器であればいずれを採用してもよい。
【0026】
ところで、擬似岩石100(図1)は鉱床内において、適当な向きで初期値に設置、埋設されるものであり、しかも、鉱床内においても、周辺の岩石から受ける圧力により様々な方向に回転することになる。したがって、擬似岩石100のX軸、Y軸、Z軸は、地表面における東西方向、南北方向、鉛直方向(重力作用方向)のグローバル座標に対し、さまざまな方向を傾斜することになる。
崩落を解析する際、特に、擬似岩石100に対しグローバル座標の鉛直方向からみてどのような方向に圧力や衝撃が発生したかを判定することが必要である。
【0027】
ここで、図2に示されるように、擬似岩石100(図1)のX軸、Y軸、Z軸が鉛直方向に対し、それぞれθx、θy、θzで傾斜しているものとする。
三軸加速度センサ3のX軸センサ出力(Vx)、Y軸センサ出力(Vy)、Z軸センサ出力(Vz)に基づいて求めた加速度ベクトルを(Vx、Vy、Vz)、加振器5による振動の擬似岩石100のX軸、Y軸、Z軸における単位ベクトルを(a、b、c)とすると、この加速度ベクトルには、水平面に対し鉛直方向に重力加速度VGが作用しているので、オイラー角と方向余弦行列の関係から、
X軸 (a.b.c)(1.0.0)=cosθx=Vx/VG
Y軸 (a.b.c)(0.1.0)=cosθy=Vy/VG
X軸 (a.b.c)(0.0.1)=cosθz=Vz/VG
と表すことができる。
したがって、この関係式を利用することにより、X軸センサ出力(Vx)、Y軸センサ出力(Vy)、Z軸センサ出力(Vz)に基づいて、θx、θy、θzを位相解析により求めることができる。
これにより、各歪みゲージ9により検出した、外殻球1に作用する、鉱床内の岩石からの圧力や衝突などが、グローバル座標の鉛直方向に対しどの方向に作用したかを正確に解析することができる。
【0028】
グローバル座標の鉛直方向のみならず水平方向の傾斜角を特定する場合は、三軸地磁気センサ4を使用する。
この三軸地磁気センサ4は、図3に示されるように、擬似岩石100(図1)のX軸、Y軸、Z軸に対し、水平面におけるN−S方向に作用する地磁気の方向成分を検出するもので、X軸、Y軸、Z軸の方向の地磁気センサ出力をそれぞれVHX、VHY、VHZとし、N極方向に設置された際の地軸センサ出力をVH、地磁気の単位方向ベクトルを(A、B、C)とすると、鉛直方向の特定と同様に、
X軸 (A.B.C)(1.0.0)=cosθHX=VHX/VH
Y軸 (A.B.C)(0.1.0)=cosθHY=VHY/VH
Z軸 (A.B.C)(0.0.1)=cosθHZ=VHZ/VH
と表すことができる。
したがって、擬似岩石100のN−S方向に対する傾斜角を特定する必要がある場合、この関係式を利用することにより、VH及びVHX、VHY、VHZに基づいて、θHX、θHY、θHZを位相解析により求めることができる。
これにより、各歪みゲージ9により検出した、外殻球1に作用する、鉱床内の岩石からの圧力や衝突などが、NS方向に対しどの方向に作用したか解析することができる。
【0029】
図1に戻って、擬似岩石100の内殻球2の内部に格納されたECU7には、電池スペース11に収容されたバッテリ44(図4)から電力が供給されており、三軸加速度センサ3、三軸地磁気センサ4、温度センサ6、各歪みゲージ9が入出力インターフェース(図示なし)を介してECU7のCPU43に接続されている。加振器5を構成するモータはCPU43がトランジスタ48のベース48Bの電圧をオンオフ制御することで回転する。
ECU7は、後述する地上管制側200(図7)に設置された送信用バイブレータ10から起動振動を受信したとき、それに応答して、各加速度センサ3の各検出値を対応する周波数に変換して、加振器5を作動させて地上管制装置200に発信したり、あるいは、各加速度センサ3の検出値を検出時間とともに時系列データとしてメモリ42(図4)に記憶させるものである。
【0030】
図4に擬似岩石100内のブロック図を示す。
上段のR1とR2が、X軸正方向に延びる柱状部材に取り付けられた歪みゲージ9の抵抗値を示し、R3とR4が、X軸負方向に延びる柱状部材に取り付けられた歪みゲージの抵抗値を示している。抵抗値R1とR2の直列回路とR3とR4の直列回路とでブリッジを組み、抵抗値R1とR2の接続点B1にバッテリ44の正電圧を印加し、抵抗値R3とR4の接続点B2に接地電位を印加し、抵抗値R1とR3の接続点B3を差動アンプU1の第1入力端子(マイナス端子)に接続し、抵抗値R4とR2の接続点B4を差動アンプU1の第2入力端子(プラス端子)に接続することで、歪みに伴う各抵抗値R1〜R4の変化が、差動アンプU1の出力端子(OUT端子)から出力される。この検出値はアナログ/デジタル(A/D)変換器41を介してCPU(中央演算装置)43に入力され、X軸正方向(引っ張り方向)あるいは負方向(圧縮方向)にどのような応力が発生したかを検出することができる。SW1〜SW3はCPU43によって制御されるスイッチで、SW1をON、SW2とSW3をOFFにすれば、差動アンプU1の出力が選択されてA/D変換器41に読み込まれる。同様の操作で差動アンプU1〜U3までの3チャンネルを1チャンネルのA/D入力で読み込める。A/Dの半導体は通常8チャンネル入力が一般的なのでこのようにして3チャンネルを1チャンネルのA/D入力で読み込んでいる。
CPU43にはメモリ42が接続されている。A/D変換器41とメモリ42とCPU43は1つの基板上に取り付けられてECU7(図1)を構成している。
R5〜R8、R9〜R12についても同様である。すなわち、R5〜R8はY軸正方向(R5とR6)および負方向(R7とR8)に延びる柱状部材8(図1)に取り付けられた歪みゲージ9の抵抗値を示し、また、R9〜R12はZ軸正方向(R9とR10)および負方向(R11とR12)に延びる柱状部材8に取り付けられた歪みゲージ9の抵抗値を示しており、それぞれ、Y軸の正方向あるいは負方向に、Z軸の正方向あるいは負方向に、どのような応力が発生したかをCPU43によって検出される。
【0031】
加速度センサ3X、3Y、3Zは三軸加速度センサ3を示している。そして地磁気センサ4X、4Y、4Zが三軸地磁気センサ4を示している。三軸加速度センサ3と三軸地磁気センサ4は温度センサ6とともに、A/D変換器41を介してこれらの検出値がECU7を構成するCPU43に入力される。そして、CPU43はトランジスタ48のベース電圧48Bを制御することにより加振器5のモータをオンオフ制御する。44は電池である。46は各センサに供給するための電源をON/OFFするスイッチであり、ECU7(CPU43)によって制御される。このスイッチ46は待機時はOFFされており、システムの消費電力を低減して、内蔵バッテリーの寿命を延ばしている。また、上述したように、地上管制装置200からのID振動パルスを受信した際にECU7(CPU43)によりONされて、各センサが起動して計測を開始する。
【0032】
図5は歪みゲージ9(図1)の応力(横軸)と検出値(縦軸)との関係を示す図で、歪みゲージ9にX軸、Y軸、Z軸方向の圧縮応力(正方向)または引っ張り応力(負方向)が加わると、作動アンプU1(図4)の検出値(電圧)はそれに比例して出力されることが判る。
【0033】
図6は地上管制装置の基本構成を示す平面図で、図7はその縦断面図である。図6および図7において、地上管制装置200には、各擬似岩石100(図7の101〜104)の制御を行うための送信用バイブレータ10と、加速度センサあるいは振動センサからなる受信センサ50とが複数個(図6の51〜59)、鉱床300を囲んで設置されている。
パソコンPCは受信センサ50(図6の51〜59)と送信用バイブレータ10を制御するもので、パソコンPCの中に制御用のプログラムがあり、このプログラムによって送信用バイブレータ10を制御して擬似鉱石101〜104(図7)へ信号を送り、擬似鉱石101〜104からの信号を受信センサ50で受信して、この受信信号の内容の解析と、各受信センサ51〜59(図6)の信号の到達時間の差から、擬似鉱石101〜104の位置を特定するなどの動作をする。
擬似岩石100(図7では101〜104の4個)は鉱床300の内部の計測地点に設置・埋設されるものであり、鉱床内の岩石密度あるいは成分によっては、地上と無線交信することは困難である。そこで、擬似岩石100(図1)の中にある内殻球2(図1)に収容している各歪みゲージ9と加振器5を使用して、地上管制装置200と振動伝搬による通信を利用する。
すなわち、各擬似岩石100の加振器5が地上管制装置200への送信器の役割を果たし、三軸加速度センサ3が地上管制装置200から送られて来る振動を受け取る受信器の役割を兼用している。
なお、本実施例では、三軸加速度センサ3を地上管制装置からの送信振動を受信する受信器として兼用しているが、専用の加速度センサを設置してもよい。
【0034】
一方、図6および図7に示されるように、地上管制装置200には、各擬似岩石100(101〜104)の制御を行うための送信用バイブレータ10と、受信センサ50(図6では、51〜59)が設置されている。この受信センサ50は、鉱床の周囲に複数個(図示例は、45°間隔に8個の受信センサ51〜58を)配置し、感度向上の観点から鉱床の中央部にも1個の受信センサ59を配置するのが好ましい。
【0035】
各擬似岩石100は、それぞれ別個のIDを備えており、図8(A)および図8(B)において、例えば図8(B)に示すように4個の擬似岩石101〜104を使用する場合、地上管制装置200の送信用バイブレータ10(図7)は、図8(A)に示すようにスタートとエンドの振動パルスと、その間に2つの振動パルスを有する4つの振動パルス分の時間(TV)の期間に、各疑似岩石のトリガーを行う。
すなわち、ID0の擬似岩石101には、スタートとエンドの間に振動パルスがなく、(1、0、0、1)の振動パターンのIDが割り当てられ、同様にID1〜ID3の擬似岩石102〜104には、それぞれ、(1、0、1、1)、(1、1、0、1)、(1、1、1、1)のIDが割り当てられている。
これにより、各擬似岩石101〜104は、地上管制装置200の送信用バイブレータ10から送信される後述のTV期間の振動パルスのパターンにより、自己のID振動パルスを識別し、個別に各ECU7(図4)を待機状態からの起動を行ったり、三軸加速度センサ3、三軸地磁気センサ4、温度センサ6、各歪みゲージ9の検出値などを、加振器5を介して各自のID振動パルスととともに地上管制装置200に送信し、振動伝搬によるデータ通信の確立が行われる。
【0036】
図9(A)〜図9(C)は、地上管制装置200において、受信センサ50の第1受信センサ51(図6)と同じ箇所に設置された送信用バイブレータ10{図8(A)}の作動と、ID3の擬似岩石104{(図8(B)}との間で振動による通信が確立される様子を示しており、TVの期間、地上管制装置200は図9(A)に示す(1、1、1、1)のID振動パルス91を送信用バイブレータ10により送信すると、図9(B)に示すように、Δt1後に、ID3の擬似岩石104{図8(B)}はその内部に収容している三軸加速度センサ3(図1)により、自分のID振動パルス92を検知する。
自分のID振動パルスであるID3を受信した擬似岩石104は、ECU7が備えている電源制御手段により電源オンにして、図9(C)に示すように、内部に収容している加振器5(図1)により自分のIDであるID3の振動パルス93を地上管制装置200に返した上で、次のパルス列94から、三軸加速度センサ3、三軸地磁気センサ4、温度センサ6、各歪みゲージ9等の検出値を、対応する振動パルスに変換して、加振器5により地上管制装置200に順次送信する。なお、ここで使用する振動による1ビットは5秒である(後述)。
【0037】
図10(A)は、擬似岩石100が加振器5により地上管制装置200にID振動パルス、各センサの検出値を送信する際のデータストリームを示している。送信データ80は、図8(B)で説明したように、スタート時に1ビット、複数個の擬似岩石の中から特定の擬似岩石を選ぶID認識用に2ビット、スタート用に1ビット、次いで各種のセンサ出力用として、まず、図2で説明した擬似岩石100のX軸、Y軸、Z軸が鉛直方向に対してそれぞれ傾斜している傾斜角θx、θy、θz用にそれぞれ4ビット、図3で説明した擬似岩石100のN−S方向に対する傾斜角θHX、θHY用にそれぞれ4ビット、X軸・Y軸・Z軸の3方向用の各歪みゲージ9の応力PX、PY、PZ用にそれぞれ4ビット、温度センサ6のセンサ出力用に4ビット、そしてエンド用に2ビットが割り振られている。なお、傾斜角θHZは後で計算から求めることができるので、傾斜角θHZ用のビットは用意していない。
ここで使用する振動による1ビットは、図10(B)の1ビットの構成を拡大図10(C)で示すように、偏心モータの振動により作られるもので、60ヘルツ程度の正弦波の5秒程度の集合体で構成されている。
【0038】
図11は、ID0〜ID3の4個の擬似岩石101〜104が、地上管制装置200の送信用バイブレータ10から送信されるスタートID加振により区間(i)にてトリガーされ、それぞれΔt1〜Δt4後に、4個の擬似岩石101〜104のそれぞれの三軸加速度センサ3(図1)が(ii)の区間で受信し、さらにそれぞれΔt1〜Δt4後の区間(iii)において、各自のID振動パルスとセンサ検出値を加振器5(図1)により発信し、これを地上管制装置200の送信用バイブレータ10と同位置に設けた受信センサ51(図6)が検出する様子を示している。
なお、鉱床300(図7)の内部においては、崩落などに伴いさまざまな周波数、波形の振動がランダムに発生しているが、上述のような地上管制装置200と個別の擬似岩石101〜104との通信に使用する規則的な周波数を有する振動とは明確に識別できるので、鉱床内で発生する振動がノイズとなることは原理的にない。
仮に他の振動源等によりノイズの影響が予想される場合には、地上管制装置からのID振動パルスの発生と、対応する擬似岩石からのID振動パルスの応答を複数回繰り返せば、ノイズによる誤動作をさらに確実に防止することができる。
【0039】
振動によるデータ通信が確立した後は、擬似岩石の鉱床内における3次元座標を特定する必要がある。前述のように、地上管制装置200には複数の受信センサ51〜59(図6)が設置されており、特定の擬似岩石の鉱床内における3次元座標に対応して、この擬似岩石と受信センサとの直線距離が異なる。
一般に特定の鉱床内においては、振動は一定の速度で伝搬するから、図11に示されているように、地上管制装置200の送信用バイブレータ10からのID振動パルスに応答して、各擬似岩石101〜104が自分のID振動パルスを受信するまでの時間(Δt1)、そして、各擬似岩石101〜104の加振器5がこれに受信を完了するまでの時間(Tv)を経た後、自分のID信号パルスと各センサの検出値を送信し、地上管制装置200の受信センサ51がこれを受信するまでの時間は、それぞれΔt1〜Δt4を要することになる。
したがって、地上管制装置の送信用バイブレータ10がID振動パルスの発振を開始した瞬間から、地上管制装置の各受信センサ51〜59が該当する擬似岩石の加振器5による振動を受信するまでの時間から、Δt1とΔTvを減算した値は、各受信センサ51〜58と後の擬似岩石の距離に比例することになる。
したがって、GPSと同様の原理で、地上管制装置は、少なくとも3個の受信センサの受信タイミングを解析することにより、擬似岩石の鉱床内における3次元位置を正確に特定することができる。
【0040】
なお、以上の実施例では、擬似岩石と地上管制装置との間での振動による通信を確立し、擬似岩石に作用する圧力、応力、衝撃力の大きさや方向を地上管制装置でリアルタイムに解析するようにしているが、擬似岩石内のECU7(図4)のメモリ42(図4)に各センサの検出値を,計測時間とともに格納し、擬似岩石を取り出した後にこのメモリ42に記録されたデータを共通の時間軸で解析することも可能である。
【0041】
また、非常にゆっくりとした長期にわたる崩落を計測する場合は、図12に示されるように、地上管制装置200から例えば24時間毎に1回、区間(t1)で実施する。すなわち、各擬似岩石へ起動信号を送信し、各センサの検出値を取得する。その後の区間(t2)は各擬似岩石の電源をオフするような信号を送信するようにしてもよい。各擬似岩石は24時間に30分程度起動するようにタイマー制御するようにしている。地上管制装置200は常時待機状態とし、各擬似岩石はタイマー制御で24時間に30分程度起動し、実施する。このように、擬似岩石はタイマー回路のみ動作させ、必要時にメイン基板に電源を供給することにより、低消費電源回路を構成することができる。
【0042】
本出願は、2010年8月5日出願の日本特許出願2010−176677に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したとおり、本発明によれば、鉱床内あるいは地盤内に、これを構成する平均的な形状、大きさを有する擬似岩石を配置し、この擬似岩石と地上管制装置との間で、振動伝搬による通信を確立することにより、無線等を利用した通信の確立が困難な鉱床内あるいは地盤内に埋め込まれた擬似岩石から、崩落開始前後あるいは液状化現象発生前後に他の岩石等から受ける応力や、それに伴う挙動を正確に測定することが可能になる。
この測定値を利用することにより、ブロックケービング法を採用した採掘時の崩落開始のタイミング、崩落の規模、あるいは液状化現象発生時における、液状化現象の発生メカニズムを、高精度にシミュレーションすることができ、採掘現場の安全対策、防災対策等に広く利用されることが期待される。
【符号の説明】
【0044】
1 外殻球(圧力外壁)
2 内殻球
3 三軸加速度センサ
4 三軸地磁気センサ
5 加振器(バイブレータ)
6 温度センサ
7 電気制御ユニット(ECU)
8 柱状部材
9 歪みゲージ
10 送信用バイブレータ
11 電池スペース
41 アナログ/デジタル(A/D)変換器
42 メモリ
43 CPU
44 バッテリ
48 トランジスタ
48B ベース
50、51〜59 受信センサ
100、101〜104 本実施例に係る擬似岩石
200 地上管制装置
300 鉱床
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12