(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775093
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】能動フォトニック結晶構造を有する高出力量子カスケードレーザ
(51)【国際特許分類】
H01S 5/343 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
H01S5/343
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-544494(P2012-544494)
(86)(22)【出願日】2010年10月7日
(65)【公表番号】特表2013-514659(P2013-514659A)
(43)【公表日】2013年4月25日
(86)【国際出願番号】US2010051740
(87)【国際公開番号】WO2011084201
(87)【国際公開日】20110714
【審査請求日】2013年10月3日
(31)【優先権主張番号】12/639,178
(32)【優先日】2009年12月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591013274
【氏名又は名称】ウィスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170715
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 和道
(72)【発明者】
【氏名】ボーツ ダン
(72)【発明者】
【氏名】モースト リューク ジェイ
【審査官】
佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−012886(JP,A)
【文献】
特開昭60−133780(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0043794(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザアレイデバイスであって、
(a)コアを含む量子カスケードレーザ構造と、
(b)前記量子カスケードレーザ構造の上方に光閉じ込め材料の少なくとも1つの層と、前記量子カスケードレーザ構造の下方に光閉じ込め材料の少なくとも1つの層とを含む光閉じ込め構造と、
(c)前記光閉じ込め構造の上方にクラッド材料の少なくとも1つの層と、前記光閉じ込め構造の下方にクラッド材料の少なくとも1つの層とを含むクラッド構造と、
(d)横方向に離間した複数のトレンチ領域であって、前記量子カスケードレーザ構造の一部が該横方向に離間した複数のトレンチ領域の下方に配置されるように、前記量子カスケードレーザ構造内へ部分的に縦方向に延びる、トレンチ領域と、
を備え、各トレンチ領域は、半絶縁性材料を含む下側トレンチ層と、前記半絶縁性材料の屈折率よりも高い屈折率を有する材料を含む上側トレンチ層とを備え、前記トレンチ領域は更に、前記レーザアレイデバイスにおける素子領域によって分離された素子間領域を構成し、
前記素子間領域に対応する基本横モードの有効屈折率は、前記素子領域に対応する基本横モードの有効屈折率よりも大きく、更に、前記レーザアレイデバイスは、全ての素子領域の間に漏洩波による強い結合がある横方向共振条件に適合する同相アレイモードを生成するよう設計されている
ことを特徴とする半導体レーザアレイデバイス。
【請求項2】
前記各トレンチ領域は更に、前記上側トレンチ層の上方に配置された熱伝導材料の層を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記クラッド構造及び前記横方向に離間した複数のトレンチ領域の上に配置された金属の層を更に含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記金属層の下側表面と前記量子カスケードレーザ構造の最上面との間の距離は、前記素子領域におけるよりも前記素子間領域においてより小さい、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記デバイスは、連続波又は準連続波作動中に、少なくとも2.5Wのコヒーレント平均出力パワーを有して8μmで放出するよう構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記デバイスは、少なくとも15%のウォールプラグ効率を提供するよう構成される、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記素子間領域に対応する基本横モードの有効屈折率と前記素子領域に対応する基本横モードの有効屈折率との間の屈折率ステップが、少なくとも0.05である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記素子領域の幅は、前記素子間領域の幅の約5倍である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記トレンチ領域は、前記量子カスケードレーザ構造の厚みの少なくとも25%を通って延びる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記レーザアレイの外側縁部において前記素子領域に隣接する境界領域を更に備え、該境界領域はトレンチ領域と同じ材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記コアは複数の結合レーザ段を含み、前記複数の結合レーザ段の各々は、電子入射器と、少なくとも1つの量子井戸を有するアクティブレーザ発振領域と、電子反射器とを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記アクティブレーザ発振領域は深井戸構造を有する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記コアは複数の結合レーザ段を含み、前記複数の結合レーザ段の各々は、電子入射器と、少なくとも1つの量子井戸を有するアクティブレーザ発振領域と、電子反射器とを含み、前記量子カスケードレーザ構造は、AlInAs障壁層とInGaAs井戸層とを交互に含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項14】
前記アクティブレーザ発振領域は深井戸構造を有する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記下側トレンチ層はInPを含み、前記上側トレンチ層はInGaAsを含み、前記熱伝導材料はn-−InPを含む、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
半導体レーザアレイデバイスを製造する方法であって、
(a)構造体に横方向に離間した複数のトレンチを形成する段階を有し、前記構造体は、
(i)コアを含む量子カスケードレーザ構造と、
(ii)前記量子カスケードレーザ構造の上方に光閉じ込め材料の少なくとも1つの層と、前記量子カスケードレーザ構造の下方に光閉じ込め材料の少なくとも1つの層とを含む光閉じ込め構造と、
(iii)前記光閉じ込め構造の上方にクラッド材料の少なくとも1つの層と、前記光閉じ込め構造の下方にクラッド材料の少なくとも1つの層とを含むクラッド構造とを備え、前記トレンチは、前記量子カスケードレーザ構造の一部が前記トレンチの下方に配置されるように、前記構造体内へ縦方向に延び、前記量子カスケードレーザ構造を部分的に通り、
前記方法は更に、
(b)前記トレンチの各々に、半絶縁性材料を含む下側トレンチ層を成長させる段階と、
(c)前記トレンチの各々に、前記半絶縁性材料の屈折率よりも大きい屈折率を有する材料を含む上側トレンチ層を成長させる段階と、
を有し、これにより素子間領域によって分離される複数の素子領域が前記レーザアレイデバイスに構成され、前記素子間領域に対応する基本横モードの有効屈折率は、前記素子領域に対応する基本横モードの有効屈折率よりも大きく、更に、前記レーザアレイデバイスは、全素子領域間に漏洩波による強い結合がある横方向共振条件に適合する同相アレイモードを生成するよう設計されている
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記各上側トレンチ層の上方に熱伝導材料の層を成長させる段階を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記クラッド構造の上に金属の層を堆積させる段階を更に含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ミサイル回避システム、レーザ光音響分光法(LPAS:laser photo-acoustic spectroscopy)、国土安全保障用途、国防用途における距離測定用照射体、医療診断及び空間伝送などの分光用途において、中波長赤外線(MWIR:mid-wavelength infrared)から長波長赤外線(LWIR:long-wavelength infrared)の範囲(即ち、4〜12μm)で放出する小型レーザ源が現在大きな関心を集めている。しかしながら、十分に強力で小型のレーザ源が無いことが、現在のところこれらの分野での開発を大きく制限している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】米国特許第7,403,552号明細書
【特許文献2】米国特許第7,558,305号明細書
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】D.ボテツ(D. Botez)及びD.R.シフレス(D. R. Scifres)編集による書籍「ダイオードレーザアレイ(Diode Laser Array)」,ケンブリッジ大学出版(Cambridge University Press),1994年7月のD.ボテツ(D. Botez)「モノリシック位相ロック半導体レーザアレイ(Monolithic Phase-Locked Semiconductor Laser Arrays),第1章第50〜53頁
【非特許文献2】バイ等(Bai et al.),アプライドフィジックスレターズ(Appl. Phys. Lett.),88,091112(2006年)
【非特許文献3】ビスムト等(Bismuto et al.),アプライドフィジックスレターズ(Appl. Phys. Lett.),93,231104(2008年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの態様は、量子カスケードレーザ構造を含む半導体レーザアレイデバイスを提供する。量子カスケードレーザ構造は、少なくとも1つのコアを備えた量子カスケードレーザ構造と、量子カスケードレーザ構造の上方に光閉じ込め材料の少なくとも1つの層と、量子カスケードレーザ構造の下方に光閉じ込め材料の少なくとも1つの層とを含む光閉じ込め構造と、光閉じ込め構造の上方にクラッド材料の少なくとも1つの層と、光閉じ込め構造の下方にクラッド材料の少なくとも1つの層とを含むクラッド構造と、量子カスケードレーザ構造内に部分的に縦方向に延びる、横方向に離間した複数のトレンチ領域と、を備える。各トレンチ領域は、半絶縁性材料を含む下側トレンチ層と、半絶縁性材料の屈折率よりも大きい屈折率を有する材料を含む上側トレンチ層とを備える。下側及び上側トレンチ層に加えて、各トレンチ領域は更に、上側トレンチ層の上方に配置された熱伝導材料の層を含む。これらのトレンチ領域は、レーザアレイデバイスにおいて素子領域により分離される素子間領域を構成する。
【0005】
レーザアレイデバイスは、素子間領域に対応する基本横モードの有効屈折率は、前記素子領域に対応する基本横モードの有効屈折率よりも高いことを特徴とする。加えて、本デバイスは、素子領域の全ての間で漏洩波による強い結合がある横方向共振条件に適合する同相アレイモードを生成するよう設計されていることを特徴とする。
【0006】
任意選択的に、金属の層をデバイスのクラッド構造の上に配置することができる。デバイスの一部の実施形態において、素子間領域では、金属の層の下側表面と量子カスケードレーザ構造の最上面との間の距離は、素子領域におけるものよりも小さく、量子カスケードレーザ構造からの熱除去を向上させるようにする。
【0007】
デバイスの一部の実施形態は、連続波又は準連続波作動中に、少なくとも2.5Wのコヒーレント平均出力パワーを有して8μmで放出するよう構成される。このような一部の実施形態において、デバイスは、少なくとも15%のウォールプラグ効率を提供するよう構成される。
【0008】
素子間領域に対応する基本横モードの有効屈折率と、素子領域において対応される基本横モードの有効屈折率との間の屈折率ステップは通常、従来の能動フォトニック結晶構造のものよりも遙かに大きい。例えば、素子間領域において対応される基本横モードの有効屈折率と、素子領域に対応する基本横モードの有効屈折率との間の屈折率ステップは、少なくとも0.05とすることができる。
【0009】
本発明の別の態様は、上述のタイプの半導体レーザアレイデバイスを製造する方法を提供する。この方法は、構造体内に横方向に離間した複数のトレンチ領域を形成する段階と、トレンチの各々に、半絶縁性材料を含む下側トレンチ層を成長させる段階と、トレンチの各々に、半絶縁性材料の屈折率よりも大きい屈折率を有する材料を含む上側トレンチ層を成長させる段階とを含み、これにより、素子間領域によって分離される複数の素子領域がレーザアレイデバイスに構成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】能動フォトニック結晶(APC:active-photonic-crystal)構造を有し同相光学モードで作動するレーザの概略図を示す。
【
図2】APC構造を有する量子カスケードレーザの1つの実施形態の概略断面図を示す。
【
図3】深井戸構造を有する量子カスケードレーザ構造の1つの段に対する伝導帯エネルギーの概略図であり、垂直方向の矢印がエネルギーレベル4と3の間のレーザ遷移を示す。
【
図4】
図2のデバイスの素子間領域における横屈折率プロファイルを示している。
【
図5】素子間間隔の関数として、3つの素子間領域を備えたAPC構造を有する量子カスケードレーザの同相上側隣接及び下側隣接モードにおける閾値電流密度を示しており、矢印が同相モードでの横共振を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
中波長から長波長(即ち、4〜12μm)の赤外放射線を放出することができる半導体レーザアレイデバイスが提供される。本デバイスは、準連続波又は連続波(CW:continuous wave)作動中にハイパワー及び高ウォールプラグ効率で動作することができる。本デバイスは、ミサイル回避システム、レーザ光音響分光法、軍事防御距離測定における標的用照射体、医療診断、空間伝送、及び包装用レーザマーキングを含む、様々な用途で使用するのに好適である。
【0012】
基本的な実施形態において、デバイスは、1つ又はそれ以上の能動コアを備えた量子カスケードレーザ(QCL:quantum cascade laser)構造と、光閉じ込め構造と、クラッド構造と、光閉じ込め構造及びクラッド構造を通り、部分的にQCL構造内にまで縦方向に延びる、横方向に離間した複数のトレンチ領域とを含む。トレンチ領域は、その各々が半絶縁性材料を含む下側トレンチ層とその半絶縁性材料よりも高い屈折率を有する材料を含む上側トレンチ層とを備え、レーザアレイデバイスに素子領域によって分離された横方向に離間した複数の素子間領域を構成する。加えて、基本横モードにおける高屈折率又は高有効屈折率の境界領域が、レーザアレイデバイスの外縁で素子領域に隣接して設けられる。これらの境界領域は、トレンチ領域と同じ物質から構成されるのが望ましい。
【0013】
光閉じ込め構造は、QCL構造の上方の光閉じ込め材料の1つ又はそれ以上の層と、QCL構造の下方の光閉じ込め材料の1つ又はそれ以上の層とを含む。クラッド構造は、光閉じ込め構造の上方のクラッド材料の1つ又はそれ以上の層と、光閉じ込め構造の下方のクラッド材料の1つ又はそれ以上の層とを含む。
【0014】
レーザアレイデバイスは、素子領域における基本横モードと、素子間領域における基本横モードとに対応するよう構成され、ここで素子領域(「低屈折率領域」)における基本横モードの有効屈折率は、素子間領域(「高屈折率領域」)における基本横モードの有効屈折率よりも小さい。その結果として、漏洩波により全ての素子領域間で強い結合が存在する横方向共振条件に適合する同相アレイモードを有する能動フォトニック結晶(APC)を備えたデバイスが得られる。反導波レーザアレイにおけるこのような横方向共振条件の説明は、上記の非特許文献1で見ることができる。
【0015】
図1は、同相モードの横方向共振条件に適合したAPCレーザ構造の概略図を示す。
図1で提示される半導体レーザアレイデバイスでは、APCの低屈折率素子領域上で選択的に増強されたゲインは、3つ又は4つの低屈折率素子領域しか持たないデバイスから高い(例えば、>15%)ウォールプラグ効率を有する高平均パワー(例えば、約2.5〜3.0W)に対する空間単一モード作動を提供する。このデバイスでは、エネルギーの99%までが高ゲイン低屈折率素子領域にあり、より高次のモードは、高屈折率素子間領域において光学的損失により弁別されるので、望ましい同相モードは、レーザ発信に有利に働く。通常、素子間領域における基本横モードの有効屈折率と、素子領域における基本横モードの有効屈折率との間の屈折率ステップは、約0.05〜0.10である。この屈折率ステップは、上述の量子カスケードレーザ構造(上記の非特許文献2を参照)よりもおよそ一桁大きく、従って、そのデバイスとは違って、ビームパターンは、熱レンズ効果による影響を受けず、ワット範囲の平均パワーに対する準CW及び/又はCW作動は、近回折限界ビームにおいて達成することができる。
【0016】
APC構造を有する半導体レーザアレイデバイスの1つの実施形態が、
図2において概略的に示されている。例示の目的で、
図2のデバイスは、InPベースのシステムに関して説明されている。しかしながら、構造は、GaAs又はGaSbのような他の半導体系に基づくことができる。
図2のデバイスにおいて図示するように、デバイスのQCL構造は、量子井戸及び障壁の超格子から構成されるコア202を含む。コアは、複数の結合レーザ段(例えば、少なくとも10、少なくとも25、又は少なくとも30)を提供し、その各々が、電子入射器、少なくとも1つの量子井戸を有するアクティブレーザ発振領域、及び電子反射器を含む。コアは、深井戸構造を有するレーザ段を含むのが望ましい。深井戸構造において、アクティブレーザ発振領域における量子井戸は、隣接する電子入射器の量子井戸の底部よりもエネルギーが低い井戸底部を有する。深井戸構造の使用は、キャリア漏れを抑制するので有利であり、デバイス性能を温度変化に左右されないようにし、より強力で効率的な作動を可能にする。一部の実施形態において、QCL構造は1つよりも多くのコアを含むことができる。複数のコアを有するQCL構造の説明は、上記の非特許文献3において見ることができる。
【0017】
図3は、深井戸構造を有し且つ8〜9μm範囲で放出するよう設計された量子カスケードレーザ構造の1つの実施形態における伝導帯エネルギーの概略図を示す。この実施形態の量子カスケードレーザ構造は、AlInAsとInGaAsの交互する層を含む深井戸構造である。この構造は、有機金属気相成長法(MOCVD:metal-organic chemical vapor deposition)によって成長し、種々の井戸及びコアを構成する障壁層を含む多層構造を提供することができる。深井戸量子カスケードレーザ構造の更に詳細な説明は、上記の特許文献1及び2で見ることができる。
【0018】
本デバイスの光閉じ込め構造は、光閉じ込め材料の少なくとも1つの下側層と、光閉じ込め材料の少なくとも1つの上側層とを含む。一部の実施形態において、光閉じ込め構造は、光閉じ込め材料の1つよりも多い上側及び/又は下側層を含むことができる。
図2のデバイスにおいて、光閉じ込め構造は、下側及び上側光閉じ込め層204、206(例えば、n
-−InP)を含む。
【0019】
光閉じ込め構造と同様に、クラッド構造は、クラッド材料の1つよりも多い上側層と1つよりも多い下側層とを含むことができる。
図2のデバイスにおいて、クラッド構造は、上側クラッド層208(例えば、n
+−InP)を含む。下側クラッド層は、デバイスが成長する基材層209(例えば、n−InP)により提供される。加えて、
図2に示すクラッド構造は、追加の上側クラッド層210(例えば、n
++−InP)を含む。光閉じ込め構造は、これらにわたる適切な電気伝導を提供し、クラッド層と協働してQCL構造に放出される光の光閉じ込めを可能にするような適切な屈折率を有するように選択される。追加のクラッド層210を利用して、構造上に堆積される金属(例えば、Au)の層への吸収損失を抑制することができる。
【0020】
レーザアレイデバイスの素子間領域は、光閉じ込め及びクラッド構造の上側セクションを通って部分的にQCL構造202内に延びる充填トレンチ216である複数のトレンチ領域に相当する。充填トレンチの各々は、近隣の素子領域におけるQCL構造に隣接した下側トレンチ層218を含み、該下側トレンチ層は、充填トレンチが延びるQCL構造の低電圧部分を通じた漏洩電流を阻止するための半絶縁性材料(例えば、FeドープInP又は半絶縁性InP)を含む。充填トレンチは、QCL構造内に十分な距離を延びることができる。例えば、一部の実施形態において、充填トレンチは、QCL構造の段の少なくとも25%に延びる。これは、量子カスケードレーザ構造における段の少なくとも50%を充填トレンチが延びる実施形態を含む。充填トレンチの各々は更に、半絶縁性材料よりも高い屈折率を有する材料を含む上側トレンチ層220を備える。例えば、
図2に示す実施形態において、上側トレンチ層は、n
-−InGaAsから構成することができる。充填トレンチの各々は更に、高い熱伝導材料(例えば、n
-−InP)を含む上側トレンチ層の上方に追加のトレンチ層222を任意選択的に含むことができ、更にまた、追加のトレンチ層222の上に金属層212(例えば、〜5μmのめっきAu層)を含むことができる。
図4は、
図2の線A−A’から見た、素子間領域(金属層を除く)を通る横断屈折率プロファイルの概略図を示している。
【0021】
図2に描いた充填トレンチ設計は、高い熱伝導材料(即ち、InP)が存在すること、及び金属層がQCL構造に近接していることに起因して、デバイスの素子領域から横方向の熱を除去することができる。加えて、この充填トレンチ設計は、以下の実施例においてより詳細に説明するように、同相モードにおけるレーザ発振のみを選択するためのモード間の弁別を可能にする。
【0022】
本発明の半導体レーザアレイデバイスは、有機金属気相成長法(MOCVD)を使用して基材上にQCL構造を成長させることにより製造することができる。次いで、QCL構造をパターン形成し、反応性イオンエッチングと湿式化学エッチングとの組み合わせを用いることによりトレンチを作製することができ、選択的MOCVD再成長を利用して、APC構造の高屈折率素子間領域を形成することができる。
図2に示す実施形態において、Si
3N
4ストライプマスクを用いて、エッチングによりInP、InGaAs、及びInGaAs/AlInAs材料層を除去することができる。例えば、CH
4/H
2/Ar/Cl
2/BCl
3ガス混合物で電子サイクロトロン共鳴(ECR:Electron Cyclotron Resonance)エッチングを用いる。B及びGaの反応物を除去し、ぼほ完全な側壁の滑らかさを確保するためには、最終湿式化学エッチングが望ましいとすることができる。誘電マスクを用いて、APCの高屈折率素子間領域を構成する種々のトレンチ層の選択的MOCVD成長を実施することができる。
【0023】
以下の実施例においてより詳細に説明するように、本発明の半導体レーザアレイデバイスは、CW及び準CW作動中に高パワー及び高ウォールプラグ効率で作動することができる。例えば、本発明のデバイスの一部の実施形態は、少なくとも2.5Wの平均出力パワーを有する回折限界ビームと、準CW作動下の20%デューティサイクルで少なくとも15%のウォールプラグ効率を有する8μm放射レーザを提供する。これは、少なくとも3Wの平均出力パワーを有する回折限界ビームと、準CW作動下の20%デューティサイクルで少なくとも20%のウォールプラグ効率を有する8μm波長レーザ発振を提供するデバイスを含む。
【実施例】
【0024】
この実施例において示す計算は、同相モードでのレーザ発振のみを選択する本発明の半導体レーザアレイデバイスの充填トレンチ設計の能力を示し、さらに、8μm波長での準CW(即ち、20%デューティサイクルで)作動中に高コヒーレント平均出力パワー及び高ウォールプラグ効率を達成するデバイスの少なくとも特定の実施形態の能力を示している。
【0025】
素子間領域の充填トレンチ設計は、QCL構造との著しく低減した横フィールド重なり、並びにクラッド構造の上に堆積された金属に対する強い吸収損失の両方に起因して、フィールドをQCL構造から引き離し、これにより2つの望ましい特性、即ち、高有効屈折率及び低モードゲインを一度に達成する。
図2の設計における金属は、QCL構造の最上層に近付けられ、これらの領域における強い吸収を確保するようにする。
図2に示す設計では、高屈折率素子間領域の損失係数は、98cm
-1であるのに対し、低屈折率素子領域では7cm
-1に過ぎない。所望の同相モード(
図1)での優先的なレーザ発振は、横共振点及びその近傍で生じる。λ=8.0μm及び(横方向の)屈折率ステップが0.07では、横共振は、s=6.0μmにおいて生じるよう計算され、ここで、sは高屈折率素子間領域(
図1)の幅である。共振点及びその近傍では、同相モードは、その領域におけるフィールドの〜99%を有するが、非共振モードは、その領域におけるフィールドの86%程度を有する。その結果、同相モードの〜1%だけ高屈折率素子間領域の損失が「認められ」、非共振漏洩モードは遙かに多くの損失が「認められる」。
【0026】
共振時に中央遠距離電磁界ローブ(central far-field lobe)において大きなエネルギー量(即ち、〜67%)を得るために、低屈折率素子領域幅dは、sよりも約5倍大きいのが望ましい。説明の目的で、30μmのd値を用いて、3つの低屈折率素子領域を含む、
図2に示す構造について一次元解析を実施することができる。
図5は、高反射率(HR:high-reflectivity)コーティングをバックファセット上に有する3mm長デバイスにおいて、所望の同相モード及びこれに隣接する高次モードに対する計算閾値電流密度Jthを示している。Jth値において、以下の基準式を用いることができる。
【数1】
ここで、α
endはミラー損失、α
w,mはm次モードでの導波路損失、gはゲイン係数(8μmQCLにおいて〜10cm/KA)、Γ
2D,mはm次モードでの2次元閉じ込め係数である。モード弁別器は、同相モード共振近傍で有意に変化するので、α
w、m及びΓ
2D,m項である。
図5から分かるように、共振点及びその近傍では、同相モードは、上述のように、高屈折率の部位での損失が最少量であるのが「分かる」ので、最高Γ
2D値及び最低α
w、m値の両方を有する理由からレーザ発信するのに特に好ましい。((各低屈折率部位において)結合一次モードから構成されるAPCモードはまた、そのΓ
2D値が共振点又はその近傍での同相モードのΓ
2D値よりも小さいために抑制される。)同相モードのレーザ発振は、s変動が〜2.0μm規模領域を上回るのが好ましい。ビーム幅≦2倍では、回折限界(即ち、同相モード及び隣接モードの組み合わせ)は、幅3.0μm程度の領域にわたって変化する可能性がある。従って、両方の場合において、製造公差は、フォトリソグラフィーにより容易に達成される。
【0027】
説明の目的で、〜3Wのコヒーレント平均出力パワーを得るのに使用されるパラメータも決定することができる。コアにおいて深井戸量子カスケードレーザ構造を利用する10μm幅アパーチャデバイスからの推定平均パワーは0.5Wである。30μm幅低屈折率素子領域を備えた4素子領域構造は、6.0Wに相当する。APC関連の損失に起因するパワーペナルティが〜7%、合計パワーの67%が主遠距離電磁界ローブにおいて放出されると仮定すると、投射可能回折限界平均パワーは、〜3.6Wである。〜7%パワーペナルティ、及び主ローブパワーのみが収集されることを考慮すると、この実施形態において20%デューティサイクルで投射最大ウォールプラグ効率は、2.5Wの平均出力パワーで15.6%である。
【0028】
しかしながら、放出パワーが空間的にコヒーレントであり、フラットな位相面のものである限り、振幅−位相変換の方法を用いて中央ローブで全ての光を集めることができる。したがって、1つの実施形態において、パワーの95%は、中央ローブで集めることができ、必要な光学系により10%の出力低下を生じる可能性がある。その結果、有効パワーは、20%のウォールプラグ効率で3.2Wが供給される状態になる。
【0029】
本明細書で使用される場合、別途指定のない限り、単数形態は「1つ又はそれ以上」を意味する。本明細書にて記載された全ての特許、出願、引例、及び公表物は、あたかも引用により個別に組み込まれたのと同程度に引用により全体が本明細書に組み込まれる。
【0030】
当業者には理解されるように、あらゆる全ての目的において、特に本明細書を提供することに関して、本明細書で開示される全ての範囲は、あらゆる可能な部分的範囲及びそれらの部分的範囲の組合せも包含する。あらゆる記載された範囲は、その同じ範囲が少なくとも等しい半分、三分の一、四分の一、五分の一、十分の一などに分割されることを十分に説明し且つ可能にすると容易に認識することができる。非限定的な実施例として、本明細書で検討された各範囲は、下位の三分の一、中位の三分の一、及び上位の三分の一などに容易に分解することができる。同様に当業者には理解されるように、「まで」、「少なくとも」、「より大きい」、及び「よりも少ない」などの全ての表現は、列挙された数を含み、且つその後に上述のような部分的範囲に分解することができる範囲を意味する。最後に、当業者には理解されるように、範囲は各個々の部分要素を含む。
【0031】
本発明は、本明細書に包含される実施形態及び例証に限定されず、以下の請求項の範囲内にある実施形態の一部及び異なる実施形態の要素の組み合わせを含む、これらの実施形態の修正形態を含むことを特に意図するものである。