【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、以下の特徴を有する減圧濃縮器によっても達成される。
【0007】
本発明による減圧濃縮器は、
気密な状態で封じることができる蓋を備える減圧チャンバと、
減圧チャンバ内に配置され、乾燥させようとするサンプルが入った少なくとも1つの容器を収容するための少なくとも1つの収容部を備えている遠心ロータと、
減圧チャンバの外側に配置され、遠心ロータを駆動する駆動モータと、
減圧チャンバへと接続された真空ポンプと、
減圧チャンバに組み合わせられ、減圧チャンバ内の少なくとも1つのサンプルの温度を調節する温度調節装置と、
減圧チャンバに組み合わせられ、減圧チャンバ内の圧力を検出する圧力センサと、
駆動モータ、真空ポンプ、温度調節装置、および圧力センサへと接続され、減圧チャンバ内の圧力センサによって検出される圧力によって減圧濃縮の終了点の検出を行い、終了点であると判断された場合に減圧濃縮を終了させる制御評価装置と
を備えている。
【0008】
上記目的は、以下の特徴を備える方法によってもさらに達成される。
【0009】
サンプルの減圧濃縮のための本発明による方法においては、
乾燥させようとするサンプルが入った少なくとも1つの容器を、減圧チャンバ内の遠心ロータに配置し、減圧チャンバを気密の状態に封じる過程と、
遠心ロータを回転させる過程と、
減圧チャンバの排気を行う過程と、
前記少なくとも1つのサンプルを、減圧チャンバ内で温度調節する過程と、
減圧チャンバ内の圧力を検出する過程と、
検出した圧力によって、減圧濃縮の終了点への到達を検出する過程と、
終了点への到達時に減圧濃縮を終了させる過程と
を備える。
【0010】
減圧濃縮の最中における減圧チャンバ内の圧力は、漏れの結果として流れる可能性がある空気とサンプルから気化する液体とからなる、吸い出される気体および/または蒸気の質量流束によって決定される。乾燥の終了点においては、サンプルの液体がもはや気化することがないため、最後に述べた影響はなくなる。この時点を、減圧チャンバ内の圧力を監視することによって明らかにすることができる。本発明は、減圧濃縮の終了点を、減圧チャンバにおいて検出される圧力によって検出し、終了点であると判断されたときに減圧濃縮を終了させるという事実にもとづいている。結果として、減圧濃縮を完全に自動で行うことができる。材料の組成ならびに/あるいは気化する液体および/または気化する溶媒の材料データを前もって知っている必要はない。完全に乾燥させたサンプルを過熱させてサンプルを熱によって損傷させてしまうことがない。さらに、減圧濃縮の時間が短縮される。減圧濃縮の効率が向上する。加えて、技術的には、本発明は、原理的に、圧力センサおよび相応に設計された制御評価装置を設置するだけでよいため、容易に実現が可能である。制御評価装置は、特に、相応に構成されたハードウェアまたはソフトウェア制御のデータ処理装置であってよい。
【0011】
減圧チャンバにおいて測定される圧力による減圧濃縮の終了点の検出は、さまざまな方法で行うことができる。一実施の形態によれば、検出した圧力を少なくとも1つの所与の値と比較し、この少なくとも1つの所与の値へと到達したときに、減圧濃縮を終了させる。例えば、所与の値は、漏れが存在する可能性がある特定の減圧チャンバにおいて、特定の真空ポンプを使用して、サンプルからすべての水分が気化した後に達成できる最小の圧力(最終圧力)に相当する。例えば、長い排気時間にわたって徐々に最終の圧力へと達することを考慮するために、複数の所与の値をあらかじめ定めることができる。結果として、比較的短い排気時間は、比較的高い圧力の所与の値の測定を表わし、きわめて長い排気時間においては、最終圧力の測定が、減圧濃縮の終了点に達したことを表示する。さらに、例えば圧力‐時間曲線の導関数、または圧力‐時間曲線の積分、または圧力‐時間の比など、検出した圧力およびおそらくは例えば時間などといったさらなる検出データから導出された値を、これらの導出値についての所与の値と比較することができる。
【0012】
さらなる実施の形態によれば、終了点への到達まで減圧チャンバの圧力を徐々にしか下げることができない比較的送出速度の小さい真空ポンプが、減圧チャンバへと適用され、したがって終了点への到達時に、サンプル成分の気化および解放が存在しないがために減圧チャンバ内の圧力が急激に低下し、終了点への到達がこの急激な圧力低下を使用して検出される。急激な圧力低下は、とくに容易に検出が可能である。この方法によれば、終了点をきわめて確実に検出することができる。
【0013】
さらなる実施の形態によれば、(a)排気段階(ポンプ段階)の継続時間のあいだ真空ポンプをオンにし、かつ/または減圧チャンバを減圧し、(b)排気停止段階(スイッチーオフ段階)の継続時間のあいだ真空ポンプをオフにし、かつ/または減圧チャンバから減圧を切り離し、(c)排気停止段階の最中に減圧チャンバ内の圧力を検出し、(d)排気停止段階において検出される圧力によって、減圧濃縮の終了点に達したか否かを判断し、(e)終了点であると判断された場合に減圧濃縮を終了させ、終了点に達していない場合には工程(a)〜(e)を繰り返す。
【0014】
この実施の形態の根底にある考え方は、真空ポンプをオフにし、さらに/あるいは減圧チャンバから減圧を切り離したときに、サンプルの液体成分の気化の結果として、減圧チャンバの圧力が上昇する点にある。真空ポンプに集まる可能性がある液体を追い出すために、新鮮な空気による真空ポンプのフラッシングに加え、排気停止段階(スイッチ‐オフ段階)が任意に使用される。その後の排気段階において、真空ポンプは、排気停止段階において気化した液体を排出しなければならない。サンプルの乾燥が進むと、液体の気化が少なくなることに対応して、排気停止段階における圧力の上昇がどんどん小さくなる。結果として、その後の排気段階において、真空ポンプは、より少ない量を排気するだけでよい。したがって、排気停止段階における圧力の上昇を評価することによって、終了点の検出を行うことが可能である。気密に封じられた減圧チャンバにおいて、圧力の増加は、サンプルからさらなる蒸気が解放されたことを表わしている。圧力の上昇のうちの気化した液体の解放による成分を検出するために、存在する可能性がある減圧チャンバの漏れを、サンプルを含んでいない減圧チャンバでの試行作業の際の圧力の上昇から検出して、差し引くことができる。排気停止段階において、もはや漏れに起因する上昇を差し引くと圧力の上昇がない場合、終了点に到達している。
【0015】
さらなる実施の形態によれば、圧力センサによって減圧チャンバ内の圧力を検出することによって、減圧チャンバ内の圧力が設定値へと調節され、真空ポンプの制御または指令信号(例えば、速度センサの信号、あるいは真空ポンプの電気式の駆動モータの電流または電圧)を評価することによって、減圧濃縮の終了点が検出される。気密に封じられた減圧チャンバにおいて、液体の気化がない場合、真空ポンプが駆動されることがなく、これによって終了点に達していることが示される。生じうる減圧チャンバの漏れは、サンプルなしでの実験によって検出することができる。したがって、ここで真空ポンプに必要とされる制御または指令信号を検出して、サンプルを乾燥させるときの制御または指令信号から差し引くことができる。このようにして、制御または指令信号のうちでサンプルからのさらなる気体の解放にもとづく部分を、検出することが可能である。これがなくなったとき、終了点に達している。
【0016】
減圧濃縮のプロセスを、さまざまなやり方でキャンセルすることができる。一実施の形態によれば、駆動モータおよび/または真空ポンプおよび/または温度調節装置をオフにすることによって、さらには/あるいは減圧チャンバの蓋を開くことによって、減圧濃縮を終了させる。
【0017】
サンプルは、好ましくは放射熱によって温度調節される。例えば、この目的のために、減圧チャンバの壁が加熱される。一実施の形態によれば、一定の乾燥条件の維持および/またはサンプルの過熱の防止のために、減圧チャンバに組み合わせられた温度調節装置および温度センサが、減圧チャンバ内の温度を監視し、かつ/または減圧チャンバ内の温度を設定値へと調節する制御/評価装置へと接続されている。設定値は、おそらくは乾燥対象のサンプルに応じて設定可能である。
【0018】
上記目的は、請求項1の特徴を備える減圧濃縮器によってさらに達成される。
【0019】
本発明による減圧濃縮器は、
気密な状態で封じることができる蓋(7)を備える減圧チャンバ(2)と、
減圧チャンバ(2)内に配置され、乾燥させようとするサンプルが入った少なくとも1つの容器(5)を収容するための少なくとも1つの収容部(4)を備えている遠心ロータ(3)と、
減圧チャンバ(2)の外側に配置され、遠心ロータ(3)を駆動する駆動モータ(6)と、
減圧チャンバ(2)へと接続された真空ポンプ(15)と、
減圧チャンバ(2)に組み合わせられ、減圧チャンバ(2)内の少なくとも1つのサンプルの温度を調節する温度調節装置(8)と、
遠心ロータ(3)の上方の中央に開放し、かつ真空ポンプ(15)へと接続されている吸引チューブ(10)内
に位置しており、吸引チューブ(10)内の温度を検出する温度センサ(11)と、
駆動モータ(6)、真空ポンプ(15)、温度調節装置(8)、および温度センサ(11)へと接続され、サンプルの温度を設定値へと調節する制御評価装置(18)と
を備えている。
【0020】
この減圧濃縮器は、好都合には、上述した減圧濃縮器のさらなる特徴のうちの少なくとも1つを有することができる。
【0021】
上記目的は、請求項10の特徴を備える方法によってさらに達成される。
【0022】
サンプルの減圧濃縮のための本発明による方法においては、
乾燥させようとするサンプルが入った少なくとも1つの容器を、減圧チャンバ内の遠心ロータに配置し、減圧チャンバを気密の状態に封じる過程と、
遠心ロータを回転させる過程と、
減圧チャンバの排気を行う過程と、
前記少なくとも1つのサンプルを、減圧チャンバ内で温度調節する過程と、
遠心ロータの上方の中央に開放し、かつ減圧チャンバを減圧するための吸引チューブ内の温度を検出する過程と、
検出した温度によって、サンプルの温度を設定値へと調節する過程と
を備える。
【0023】
本発明によるこの方法は、好都合には、すでに説明した方法のさらなる特徴のうちの少なくとも1つを有することができる。
【0024】
温度センサが、減圧チャンバ内に開放し、かつ真空ポンプへとつながっている吸引チューブ内に配置されているため、解放された蒸気に密に接触する。吸引チューブが、温度センサを減圧チャンバの周囲の領域から遮るため、温度センサと減圧チャンバの壁との熱交換によって測定が影響されることがない。結果として、サンプルの温度のより正確な監視および/または調節が可能になり、減圧濃縮の効率が向上する。
【0025】
好ましい実施の形態によれば、吸引チューブが、遠心ロータの中央に整列している。遠心ロータの中央においては、サンプルから解放された蒸気をきわめて容易に吸い込むことができ、したがってサンプルの温度を、吸引チューブ内に配置された温度センサによってきわめて容易に測定することができる。
【0026】
温度調節装置は、好ましくは加熱装置であって、特に電気加熱装置である。加熱装置は、特に、減圧チャンバの少なくとも1つの内壁を加熱するように配置および構成される。好ましくは、減圧チャンバのすべての内壁が一様に加熱される。
【0027】
本発明を、いくつかの実施の形態についての添付の図面を参照して、以下で説明する。