特許第5775107号(P5775107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775107
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】減圧濃縮器および減圧濃縮法
(51)【国際特許分類】
   B01D 1/00 20060101AFI20150820BHJP
   F26B 5/04 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   B01D1/00 Z
   F26B5/04
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-43422(P2013-43422)
(22)【出願日】2013年3月5日
(62)【分割の表示】特願2007-294108(P2007-294108)の分割
【原出願日】2007年11月13日
(65)【公開番号】特開2013-150980(P2013-150980A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2013年4月3日
(31)【優先権主張番号】102006054481.1
(32)【優先日】2006年11月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591121683
【氏名又は名称】エッペンドルフ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf AG
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ラムホールド
(72)【発明者】
【氏名】クラース・ヴァン・デン・ベルグ
(72)【発明者】
【氏名】バート−オーラフ・グリム
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフガング・ゲーマン
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ・ヘス
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス・フランケ
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−504518(JP,A)
【文献】 特表2002−504413(JP,A)
【文献】 特開平07−027479(JP,A)
【文献】 特開2003−106768(JP,A)
【文献】 特開昭61−211201(JP,A)
【文献】 特開2005−140536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00 − 5/00
F26B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密な状態で封じることができる蓋(7)を備える減圧チャンバ(2)と、
減圧チャンバ(2)内に配置され、乾燥させようとするサンプルが入った少なくとも1つの容器(5)を収容するための少なくとも1つの収容部(4)を備えている遠心ロータ(3)と、
減圧チャンバ(2)の外側に配置され、遠心ロータ(3)を駆動する駆動モータ(6)と、
減圧チャンバ(2)へと接続された真空ポンプ(15)と、
減圧チャンバ(2)に組み合わせられ、減圧チャンバ(2)内の少なくとも1つのサンプルの温度を調節する温度調節装置(8)と、
遠心ロータ(3)の上方の中央に開放し、かつ真空ポンプ(15)へと接続されている吸引チューブ(10)内に位置しており、吸引チューブ(10)内の温度を検出する温度センサ(11)と、
駆動モータ(6)、真空ポンプ(15)、温度調節装置(8)、および温度センサ(11)へと接続され、サンプルの温度を設定値へと調節する制御評価装置(18)と
を備えたことを特徴とする減圧濃縮器。
【請求項2】
減圧チャンバ(2)内の吸引チューブ(10)は、蓋(7)の下方を、蓋(7)の中央から外側に延びている
ことを特徴とする請求項1に記載の減圧濃縮器。
【請求項3】
減圧チャンバ(2)内の吸引チューブ(10)は、蓋(7)の内部を、蓋(7)の中央から外側に延びている
ことを特徴とする請求項1に記載の減圧濃縮器。
【請求項4】
吸引チューブ(10)の開口は、遠心ロータ(3)の中央に向いている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の減圧濃縮器。
【請求項5】
減圧チャンバ(2)に組み合わせられ、減圧チャンバ(2)内の圧力を検出する圧力センサ(17)を備え、
前記制御評価装置(18)は、圧力センサ(17)へと接続され、減圧チャンバ(2)内の圧力センサ(17)によって検出される圧力によって減圧濃縮の終了点の検出を行い、終了点であると判断された場合に減圧濃縮を終了させるものであり
前記制御評価装置(18)は、圧力センサ(17)で減圧チャンバ(2)内の圧力を検出することによって、減圧チャンバ(2)内の圧力を設定値へと調節するように真空ポンプ(15)を駆動制御するものであって、該真空ポンプ(15)に送られる駆動用の指令信号とサンプルなしで同様の制御が行われた場合に真空ポンプ(15)に送られる駆動用の指令信号とが同じレベルとなったら減圧濃縮の終了点を検出する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の減圧濃縮器。
【請求項6】
前記真空ポンプ(15)は、終了点への到達まで減圧チャンバ(2)内の圧力を徐々に下げる空ポンプ(15)である請求項に記載の減圧濃縮器。
【請求項7】
前記制御評価装置(18)は、駆動モータ(6)をオフすること、真空ポンプ(15)をオフすること、温度調節装置(8)をオフにすること、蓋(7)を開くことの少なくともいずれか一つによって、減圧濃縮を終了させる請求項5または6に記載の減圧濃縮器。
【請求項8】
減圧チャンバ(2)に組み合わせられた温度調節装置(8)および温度センサ(9)は、減圧チャンバ(2)内の温度を監視し、かつ/または減圧チャンバ(2)内の温度を設定値へと調節する制御評価装置(18)へと接続されている請求項1〜のいずれか一項に記載の減圧濃縮器。
【請求項9】
サンプルの減圧濃縮のための方法であって、
乾燥させようとするサンプルが入った少なくとも1つの容器を、減圧チャンバ内の遠心ロータに配置し、減圧チャンバを気密の状態に封じる過程と、
遠心ロータを回転させる過程と、
減圧チャンバの排気を行う過程と、
前記少なくとも1つのサンプルを、減圧チャンバ内で温度調節する過程と、
遠心ロータの上方の中央に開放し、かつ減圧チャンバを減圧するための吸引チューブ内の温度を検出する過程と、
検出した温度によって、サンプルの温度を設定値へと調節する過程と
を備えたことを特徴とする減圧濃縮法。
【請求項10】
減圧チャンバ内の圧力を検出する過程と、
検出した圧力によって、減圧濃縮の終了点への到達を検出する過程と、
終了点への到達時に減圧濃縮を終了させる過程と
を備え
減圧チャンバ内の圧力を設定値へと調節するように真空ポンプ(15)を駆動制御するものであって、該真空ポンプ(15)に送られる駆動用の指令信号とサンプルなしで同様の制御が行われた場合に真空ポンプ(15)に送られる駆動用の指令信号とが同じレベルとなったら減圧濃縮の終了点に達したか否かを検出する
ことを特徴とする請求項に記載の減圧濃縮法。
【請求項11】
前記減圧チャンバが、終了点への到達まで減圧チャンバ内の圧力を徐々に下げるンプへと接続され請求項10に記載の減圧濃縮法。
【請求項12】
減圧濃縮のプロセスを、遠心ロータを停止させること、減圧チャンバへの減圧の適用を終了させること、減圧チャンバの温度調節を終了させること、減圧チャンバを開放することの少なくともいずれか一つによって終了させる請求項10または11に記載の減圧濃縮方法。
【請求項13】
減圧チャンバ内の温度が監視され、かつ/または減圧チャンバ内の温度が設定値へと調節される請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧濃縮器および減圧濃縮法に関する。
【背景技術】
【0002】
減圧濃縮は、化学工業および研究室において、特に固体‐液体抽出の領域において、湿潤した熱的に不安定なサンプルを乾燥させるために使用されている。この点に関し、減圧下では液体の沸点が低くなるという事実が利用されている。結果として、湿潤したサンプルから、液体を減圧下で比較的低い温度において沸騰させて逃がすことができる。この目的のため、サンプルは、真空ポンプによって排気される減圧チャンバに配置される。液体が制御なくサンプルから解放されることを防ぐため、前記サンプルは、遠心ロータ内で減圧チャンバに配置される。気化のための熱は、電気または他の加熱装置によって生成される。解放された液体蒸気は、真空ポンプによって吸い出される。真空ポンプによってきわめて強い真空を生成し、乾燥性能をきわめて効果的なものにするために、減圧チャンバと真空ポンプとの間に適宜配置される凝縮器および/または極低温トラップによって、真空ポンプの上流で液体蒸気を捕まえることができる。
【0003】
減圧濃縮の終了点は、サンプルが乾燥し、かつ/または気化した液体がもはやサンプルから出ることがなくなる時点である。公知の減圧濃縮は、液体が完全にサンプルから出てしまうことを保証するため、長すぎる遠心分離時間にて作業されている。しかしながら、サンプルが充分に長くは乾燥されず、残余の液体のかなりの部分がサンプル内に残ってしまう恐れが存在する。また、サンプルを強く加熱することによって残余の流体を気化させるために、濃縮プロセスの終わりにおいて再びサンプルの加熱をオンにすることが知られている。すでに完全に乾燥しているサンプルをさらに加熱すると、サンプルの過熱につながる可能性がある。
【0004】
減圧下では伝導による熱の伝達が著しく小さくなるため、サンプルを加熱するために、特に放射熱またはマイクロ波が使用される。温度に敏感な複数のサンプルの過熱は、避けなければならない。DE 699 18 734 T2号によれば、減圧濃縮器において気化する液体サンプルの温度が、気化プロセスの際の圧力を検出することによって割り出され、採取された圧力に比例した圧力データ信号が生成され、この圧力データ信号が電子データ信号処理ユニットへと伝達される。電子データ信号処理ユニットは、圧力データ信号をサンプルの1つ以上の既知の揮発性成分の蒸気圧に対応する温度値へと変換するために、サンプル中に存在する揮発性成分についてのデータへとアクセスする。この点に関し、液体および/または溶媒の指示が必要とされ、該当の溶媒についてのデータが存在していなければならない点が、不都合である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の事情に鑑み、本発明の目的は、減圧濃縮のための効率的な装置および効率的な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、以下の特徴を有する減圧濃縮器によっても達成される。
【0007】
本発明による減圧濃縮器は、
気密な状態で封じることができる蓋を備える減圧チャンバと、
減圧チャンバ内に配置され、乾燥させようとするサンプルが入った少なくとも1つの容器を収容するための少なくとも1つの収容部を備えている遠心ロータと、
減圧チャンバの外側に配置され、遠心ロータを駆動する駆動モータと、
減圧チャンバへと接続された真空ポンプと、
減圧チャンバに組み合わせられ、減圧チャンバ内の少なくとも1つのサンプルの温度を調節する温度調節装置と、
減圧チャンバに組み合わせられ、減圧チャンバ内の圧力を検出する圧力センサと、
駆動モータ、真空ポンプ、温度調節装置、および圧力センサへと接続され、減圧チャンバ内の圧力センサによって検出される圧力によって減圧濃縮の終了点の検出を行い、終了点であると判断された場合に減圧濃縮を終了させる制御評価装置と
を備えている。
【0008】
上記目的は、以下の特徴を備える方法によってもさらに達成される。
【0009】
サンプルの減圧濃縮のための本発明による方法においては、
乾燥させようとするサンプルが入った少なくとも1つの容器を、減圧チャンバ内の遠心ロータに配置し、減圧チャンバを気密の状態に封じる過程と、
遠心ロータを回転させる過程と、
減圧チャンバの排気を行う過程と、
前記少なくとも1つのサンプルを、減圧チャンバ内で温度調節する過程と、
減圧チャンバ内の圧力を検出する過程と、
検出した圧力によって、減圧濃縮の終了点への到達を検出する過程と、
終了点への到達時に減圧濃縮を終了させる過程と
を備える。
【0010】
減圧濃縮の最中における減圧チャンバ内の圧力は、漏れの結果として流れる可能性がある空気とサンプルから気化する液体とからなる、吸い出される気体および/または蒸気の質量流束によって決定される。乾燥の終了点においては、サンプルの液体がもはや気化することがないため、最後に述べた影響はなくなる。この時点を、減圧チャンバ内の圧力を監視することによって明らかにすることができる。本発明は、減圧濃縮の終了点を、減圧チャンバにおいて検出される圧力によって検出し、終了点であると判断されたときに減圧濃縮を終了させるという事実にもとづいている。結果として、減圧濃縮を完全に自動で行うことができる。材料の組成ならびに/あるいは気化する液体および/または気化する溶媒の材料データを前もって知っている必要はない。完全に乾燥させたサンプルを過熱させてサンプルを熱によって損傷させてしまうことがない。さらに、減圧濃縮の時間が短縮される。減圧濃縮の効率が向上する。加えて、技術的には、本発明は、原理的に、圧力センサおよび相応に設計された制御評価装置を設置するだけでよいため、容易に実現が可能である。制御評価装置は、特に、相応に構成されたハードウェアまたはソフトウェア制御のデータ処理装置であってよい。
【0011】
減圧チャンバにおいて測定される圧力による減圧濃縮の終了点の検出は、さまざまな方法で行うことができる。一実施の形態によれば、検出した圧力を少なくとも1つの所与の値と比較し、この少なくとも1つの所与の値へと到達したときに、減圧濃縮を終了させる。例えば、所与の値は、漏れが存在する可能性がある特定の減圧チャンバにおいて、特定の真空ポンプを使用して、サンプルからすべての水分が気化した後に達成できる最小の圧力(最終圧力)に相当する。例えば、長い排気時間にわたって徐々に最終の圧力へと達することを考慮するために、複数の所与の値をあらかじめ定めることができる。結果として、比較的短い排気時間は、比較的高い圧力の所与の値の測定を表わし、きわめて長い排気時間においては、最終圧力の測定が、減圧濃縮の終了点に達したことを表示する。さらに、例えば圧力‐時間曲線の導関数、または圧力‐時間曲線の積分、または圧力‐時間の比など、検出した圧力およびおそらくは例えば時間などといったさらなる検出データから導出された値を、これらの導出値についての所与の値と比較することができる。
【0012】
さらなる実施の形態によれば、終了点への到達まで減圧チャンバの圧力を徐々にしか下げることができない比較的送出速度の小さい真空ポンプが、減圧チャンバへと適用され、したがって終了点への到達時に、サンプル成分の気化および解放が存在しないがために減圧チャンバ内の圧力が急激に低下し、終了点への到達がこの急激な圧力低下を使用して検出される。急激な圧力低下は、とくに容易に検出が可能である。この方法によれば、終了点をきわめて確実に検出することができる。
【0013】
さらなる実施の形態によれば、(a)排気段階(ポンプ段階)の継続時間のあいだ真空ポンプをオンにし、かつ/または減圧チャンバを減圧し、(b)排気停止段階(スイッチーオフ段階)の継続時間のあいだ真空ポンプをオフにし、かつ/または減圧チャンバから減圧を切り離し、(c)排気停止段階の最中に減圧チャンバ内の圧力を検出し、(d)排気停止段階において検出される圧力によって、減圧濃縮の終了点に達したか否かを判断し、(e)終了点であると判断された場合に減圧濃縮を終了させ、終了点に達していない場合には工程(a)〜(e)を繰り返す。
【0014】
この実施の形態の根底にある考え方は、真空ポンプをオフにし、さらに/あるいは減圧チャンバから減圧を切り離したときに、サンプルの液体成分の気化の結果として、減圧チャンバの圧力が上昇する点にある。真空ポンプに集まる可能性がある液体を追い出すために、新鮮な空気による真空ポンプのフラッシングに加え、排気停止段階(スイッチ‐オフ段階)が任意に使用される。その後の排気段階において、真空ポンプは、排気停止段階において気化した液体を排出しなければならない。サンプルの乾燥が進むと、液体の気化が少なくなることに対応して、排気停止段階における圧力の上昇がどんどん小さくなる。結果として、その後の排気段階において、真空ポンプは、より少ない量を排気するだけでよい。したがって、排気停止段階における圧力の上昇を評価することによって、終了点の検出を行うことが可能である。気密に封じられた減圧チャンバにおいて、圧力の増加は、サンプルからさらなる蒸気が解放されたことを表わしている。圧力の上昇のうちの気化した液体の解放による成分を検出するために、存在する可能性がある減圧チャンバの漏れを、サンプルを含んでいない減圧チャンバでの試行作業の際の圧力の上昇から検出して、差し引くことができる。排気停止段階において、もはや漏れに起因する上昇を差し引くと圧力の上昇がない場合、終了点に到達している。
【0015】
さらなる実施の形態によれば、圧力センサによって減圧チャンバ内の圧力を検出することによって、減圧チャンバ内の圧力が設定値へと調節され、真空ポンプの制御または指令信号(例えば、速度センサの信号、あるいは真空ポンプの電気式の駆動モータの電流または電圧)を評価することによって、減圧濃縮の終了点が検出される。気密に封じられた減圧チャンバにおいて、液体の気化がない場合、真空ポンプが駆動されることがなく、これによって終了点に達していることが示される。生じうる減圧チャンバの漏れは、サンプルなしでの実験によって検出することができる。したがって、ここで真空ポンプに必要とされる制御または指令信号を検出して、サンプルを乾燥させるときの制御または指令信号から差し引くことができる。このようにして、制御または指令信号のうちでサンプルからのさらなる気体の解放にもとづく部分を、検出することが可能である。これがなくなったとき、終了点に達している。
【0016】
減圧濃縮のプロセスを、さまざまなやり方でキャンセルすることができる。一実施の形態によれば、駆動モータおよび/または真空ポンプおよび/または温度調節装置をオフにすることによって、さらには/あるいは減圧チャンバの蓋を開くことによって、減圧濃縮を終了させる。
【0017】
サンプルは、好ましくは放射熱によって温度調節される。例えば、この目的のために、減圧チャンバの壁が加熱される。一実施の形態によれば、一定の乾燥条件の維持および/またはサンプルの過熱の防止のために、減圧チャンバに組み合わせられた温度調節装置および温度センサが、減圧チャンバ内の温度を監視し、かつ/または減圧チャンバ内の温度を設定値へと調節する制御/評価装置へと接続されている。設定値は、おそらくは乾燥対象のサンプルに応じて設定可能である。
【0018】
上記目的は、請求項1の特徴を備える減圧濃縮器によってさらに達成される。
【0019】
本発明による減圧濃縮器は、
気密な状態で封じることができる蓋(7)を備える減圧チャンバ(2)と、
減圧チャンバ(2)内に配置され、乾燥させようとするサンプルが入った少なくとも1つの容器(5)を収容するための少なくとも1つの収容部(4)を備えている遠心ロータ(3)と、
減圧チャンバ(2)の外側に配置され、遠心ロータ(3)を駆動する駆動モータ(6)と、
減圧チャンバ(2)へと接続された真空ポンプ(15)と、
減圧チャンバ(2)に組み合わせられ、減圧チャンバ(2)内の少なくとも1つのサンプルの温度を調節する温度調節装置(8)と、
遠心ロータ(3)の上方の中央に開放し、かつ真空ポンプ(15)へと接続されている吸引チューブ(10)内に位置しており、吸引チューブ(10)内の温度を検出する温度センサ(11)と、
駆動モータ(6)、真空ポンプ(15)、温度調節装置(8)、および温度センサ(11)へと接続され、サンプルの温度を設定値へと調節する制御評価装置(18)と
を備えている。
【0020】
この減圧濃縮器は、好都合には、上述した減圧濃縮器のさらなる特徴のうちの少なくとも1つを有することができる。
【0021】
上記目的は、請求項10の特徴を備える方法によってさらに達成される。
【0022】
サンプルの減圧濃縮のための本発明による方法においては、
乾燥させようとするサンプルが入った少なくとも1つの容器を、減圧チャンバ内の遠心ロータに配置し、減圧チャンバを気密の状態に封じる過程と、
遠心ロータを回転させる過程と、
減圧チャンバの排気を行う過程と、
前記少なくとも1つのサンプルを、減圧チャンバ内で温度調節する過程と、
遠心ロータの上方の中央に開放し、かつ減圧チャンバを減圧するための吸引チューブ内の温度を検出する過程と、
検出した温度によって、サンプルの温度を設定値へと調節する過程と
を備える。
【0023】
本発明によるこの方法は、好都合には、すでに説明した方法のさらなる特徴のうちの少なくとも1つを有することができる。
【0024】
温度センサが、減圧チャンバ内に開放し、かつ真空ポンプへとつながっている吸引チューブ内に配置されているため、解放された蒸気に密に接触する。吸引チューブが、温度センサを減圧チャンバの周囲の領域から遮るため、温度センサと減圧チャンバの壁との熱交換によって測定が影響されることがない。結果として、サンプルの温度のより正確な監視および/または調節が可能になり、減圧濃縮の効率が向上する。
【0025】
好ましい実施の形態によれば、吸引チューブが、遠心ロータの中央に整列している。遠心ロータの中央においては、サンプルから解放された蒸気をきわめて容易に吸い込むことができ、したがってサンプルの温度を、吸引チューブ内に配置された温度センサによってきわめて容易に測定することができる。
【0026】
温度調節装置は、好ましくは加熱装置であって、特に電気加熱装置である。加熱装置は、特に、減圧チャンバの少なくとも1つの内壁を加熱するように配置および構成される。好ましくは、減圧チャンバのすべての内壁が一様に加熱される。
【0027】
本発明を、いくつかの実施の形態についての添付の図面を参照して、以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】減圧濃縮器を大まかな概略の斜視図で示す。
図2】吸引チューブをカバーの下方に備えている減圧濃縮器の減圧チャンバを断面で示す。
図3】吸引チューブをカバー内に位置させてなる他の構成の減圧濃縮器の減圧チャンバを断面で示す。
図4】エタノールの気化中の減圧チャンバ内の圧力の時間経過を示す。
図5】水の気化について、減圧チャンバ内の圧力の時間経過を示す。
図6図5の終点の拡大詳細を示す。
図7】終了点に達した後に真空ポンプを停止させた場合について、サンプルなしの減圧チャンバの圧力の時間経過を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1によれば、減圧濃縮器は、減圧チャンバ2を備えるハウジング1を有し、減圧チャンバ2に、サンプル容器5のための複数の収容部4を備える遠心ロータ3が配置されている。減圧チャンバ2の外側には、遠心ロータ3を駆動するための駆動ユニット6(例えば、電動モータを備えている)が、ハウジング1に配置されている。
【0030】
減圧チャンバ2の上部は、折り返しが可能な封止カバー7からなる蓋によって封じられている。
【0031】
加熱装置8が、減圧チャンバ2に組み合わせられており、減圧チャンバ2を囲む電気抵抗ワイヤを有している。加熱装置の過熱を防止するために、加熱装置8の温度を測定するための温度センサ9が、加熱装置8に組み合わせられている。
【0032】
吸引チューブ10が、遠心ロータ3の上方の中央に開放しており、カバー7の下方および/またはカバー7内を半径方向に延びている。吸引チューブ10の開口は、遠心ロータ3に軸方向において整列している。
【0033】
さらなる温度センサ11が、吸引チューブ10内に位置している。
【0034】
図2によれば、温度センサ11が、カバー7の下方の吸引チューブ10に配置されている。吸引チューブ10は、好ましくは、遠心ロータ3または容器5の挿入および取り出しのために取り除くことができるよう、折り返し可能であり、回動可能であり、あるいは撓ませることが可能である。
【0035】
図3によれば、吸引チューブ10が、減圧チャンバ2のカバー7に一体化されている。どちらの場合も、吸引された蒸気の流れが温度センサ11の周囲を流れるため、優秀な伝熱値が減圧下でも達成される。吸引された蒸気ゆえ、吸引チューブ10の内側の温度が温度センサ11と同じ温度に達し、したがって熱の放射が生じる可能性がないため、吸引チューブ10は熱の放射を防いでいる。また、減圧チャンバ2の壁から吸引チューブ10への熱伝導も、吸引チューブ10を壁に対して相応に絶縁することによって回避することができる。
【0036】
吸引チューブ10は、バルブ12を介して極低温トラップ13へと接続されている。この極低温トラップは、バルブ14を介して真空ポンプ15へと接続されている。さらなるバルブ16が、真空ポンプ15の上流に存在している。バルブ12、14、16を、電気的に制御することができる。
【0037】
さらに、圧力センサ17が減圧チャンバ1へと接続されている。
【0038】
駆動モータ6、加熱装置8、バルブ12、14、16、温度センサ9、11、真空ポンプ15、および圧力センサ17は、電気ケーブル(図示せず)を介して制御評価装置18へと電気的に接続されている。
【0039】
減圧抽出を実行するとき、遠心ロータ3が、容器5を挿入した状態で回転させられる。さらには、さらなる温度センサ11によって、容器5内のサンプルの温度が監視され、容器4の内部のサンプルが指定の温度をとるように、加熱装置8が調節される。温度センサ9によって、加熱装置8において生じうる過熱を検出するようになっている。
【0040】
さらに、ポンプ15が、バルブ12、14が開かれてバルブ16が閉じられているときに、気体が減圧チャンバ2から吸引チューブ10を通って吸い出されるように運転される。吸い込まれた蒸気は、真空ポンプ15に可能な限り大きな処理能力を持たせ、減圧チャンバ2において可能な限り強力な真空を達成するために、極低温トラップ13において凝縮させられる。
【0041】
減圧チャンバ1の圧力は、圧力センサ17によって連続的に検出される。
【0042】
蒸気が真空ポンプ15においても凝縮するため、やはり特定の乾燥時間の経過後に、バルブ12、14が閉じられ、真空ポンプ15がオフにされる。新鮮な空気がバルブ16を通って真空ポンプ15へと導かれ、結果として、存在している水分が真空ポンプ15から追い出される。その後に、バルブ16が閉じられ、真空ポンプ15が再び起動され、バルブ12、14が開かれる。
【0043】
減圧チャンバ2において、圧力が徐々に低下する。これを、溶媒としてエタノールを含むサンプルの例について、図4に示す。曲線の棘は、溶媒のさらなる解放および漏れに起因して減圧チャンバ内の圧力が再び上昇する排気停止(スイッチ‐オフ)の段階に関係している。
【0044】
この例においては、比較的低い出力の真空ポンプ15が使用されており、したがって約15mbar程度の最終圧力が、全実験時間にわたって徐々に達成されている。これは、排気停止段階における棘の高さが、溶媒の気化がほとんどないために例外的に低い場合である。
【0045】
したがって、減圧チャンバ2の平均圧力をポンプの最終圧力(約15mbar)と比較することによって、いつ終了点に達したのかを検出することが可能である。原理的には、圧力曲線の勾配も、終了点の検出に適している。さらに、排気停止段階の最初および終わりにおける減圧チャンバ2の圧力の差、すなわち棘の高さを、使用することが可能である。
【0046】
上述の制御、監視、調節、および評価のプロセスは、制御評価装置18によって制御される。
【0047】
図5および図6は、水を含んでいるサンプルを使用した場合の減圧チャンバ1の圧力の低下を示している。水は、エタノールよりもはるかに低い蒸気圧を有するため、乾燥時間は、エタノールの場合よりもはるかに長い。次に、終了点において最終圧力に到達している。また、圧力曲線の勾配が著しく降下している。さらに、終了点に達した後の棘の高さが、排気停止段階における圧力の上昇が漏れにのみ起因して生じるため、きわめて低い。
【0048】
システムの漏れの値は、減圧濃縮器をサンプルなしで運転して、最終の圧力に達した後に真空ポンプ15を停止させることで、容易に検出することができる。図7によれば、減圧チャンバ1の内部において、漏れゆえに圧力が徐々に上昇している。排気停止段階において、棘の推移がこの漏れ曲線に一致するとき、終了点に到達している。
【0049】
あるいは、可変速の真空ポンプ15において、真空ポンプ15の内部の圧力センサが、制御変数(真空ポンプの吸気口の圧力)を検出するために有用であると考えられる。真空ポンプ15の制御または指令信号(例えば、速度センサの信号、あるいは電動モータの電流または電圧)が低下するとすぐに、真空ポンプ15が漏れの結果として進入する空気の他にはもはや減圧チャンバから蒸気を届けないので、遠心分離の終点に達する。
【0050】
原理的には、乾燥をより速くするため、より強力な真空ポンプ15を使用することも可能である。その結果、減圧チャンバ2において、上述の例よりも迅速に最終圧力に到達する。しかしながら、遠心分離の終点を、例えば排気停止段階における棘の高さを監視することによって容易に特定することが可能である。
【0051】
さらには、終了点を特定するために、排気停止段階における圧力上昇の勾配を検出することが考えられる。この勾配は、終了点に達した後では、その後に気化する液体サンプルの成分が存在しないため、急激に低下する。
【符号の説明】
【0052】
2 … 減圧チャンバ
3 … 遠心ロータ
4 … 収容部
5 … 容器
6 … 駆動モータ
7 … 封止カバー(蓋)
8 … 加熱装置(温度調節装置)
10 … 吸引チューブ
11 … 温度センサ
15 … 真空ポンプ
18 … 制御評価装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7