特許第5775142号(P5775142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775142
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】異相ポリオレフィン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20150820BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20150820BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   C08L23/10
   C08L23/08
   C08K3/34
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-500409(P2013-500409)
(86)(22)【出願日】2011年2月18日
(65)【公表番号】特表2013-523900(P2013-523900A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】EP2011052397
(87)【国際公開番号】WO2011117032
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2014年2月12日
(31)【優先権主張番号】61/341,578
(32)【優先日】2010年4月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10157987.8
(32)【優先日】2010年3月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】メクレンブルク,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マサリ,パオラ
(72)【発明者】
【氏名】チアラフォニ,マルコ
【審査官】 井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−017139(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/061843(WO,A1)
【文献】 特表2005−530900(JP,A)
【文献】 特開昭58−222132(JP,A)
【文献】 特表2008−501829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00− 23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)
A1)60〜80重量%の、結晶性プロピレンホモポリマーまたは最高で5重量%のエチレン及び/又は一種以上のC4-10α−オレフィンを含むコポリマーで、該ホモポリマーまたはコポリマーのMFR値(230℃、2.16kg)が25〜40g/10分であり、その室温(25℃)でのキシレン可溶性成分の含量が7重量%以下であるものと、
A2)20〜40重量%の、エチレンと一種以上のC4-10α−オレフィンとの一種以上のコポリマーで、15〜35重量%の前記C4-10α−オレフィンを含むものと、
を含むポリマーブレンドであって、
該ポリマーブレンド(A)のMFR値が最大で30g/10分であり;エチレンの総量が20重量%以上であり;C4-10α−オレフィンの総量が4.5重量%以上であり;C4-10α−オレフィンの総量に対するエチレンの総量の比が2.3以上であり、室温でのキシレン可溶性成分の固有粘度が1.5dl/g以下である(なお、上記の(A1)と(A2)の量は、ポリマーブレンド(A)の総重量に対する値である)ものと;
B)タルク鉱物充填剤(なお、成分(B)の量が、該組成物の総重量に対して22〜40重量%である)と
を含み、
ポリマーブレンド成分(A)が、140℃以上のDSC溶融ピーク(TmA1)と区別可能な、80〜140℃の溶融ピーク(TmA2)を示すDSCサーモグラフ特性を有するポリマー組成物。
【請求項2】
さらに、
C)A2)とは異なる弾性ポリマーであって、硬度(ショアA、ASTM D−2240)が80以下であるものを含む(なお、成分(C)の量は、組成物の総重量に対して1〜15重量%である)請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
A)
A1)60〜80重量%の、結晶性プロピレンホモポリマーまたは最高で5重量%のエチレン及び/又は一種以上のC4-10α−オレフィンを含むコポリマーであり、該ホモポリマーまたはコポリマーのMFR値(230℃、2.16kg)が50/10分以下であり、その室温(約25℃)でのキシレン可溶性成分の含量が7重量%以下であるものと、
A2)20〜40重量%の、エチレンと一種以上のC4-10α−オレフィンとの一種以上のコポリマーで、15〜35重量%の前記C4-10α−オレフィンを含むものと、
を含むポリマーブレンドであって、
該ポリマーブレンド(A)のMFR値が最大で30g/10分であり;エチレンの総量が20重量%以上であり;C4-10α−オレフィンの総量が4.5重量%以上であり;C4-10α−オレフィンの総量に対するエチレンの総量の比が2.3以上であり、室温でのキシレン可溶性成分の固有粘度が1.5dl/g以下である(なお、上記の(A1)と(A2)の量は、ポリマーブレンド(A)の総重量に対する値である)ものを76〜60重量%;
B)タルク鉱物充填剤を22〜30重量%;及び
C)A2)とは異なる弾性ポリマーであって、硬度(ショアA、ASTM D−2240)が80以下であるものを2〜10重量%含む請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
成分(C)の分子量分布(GPCで測定したMw/Mn)が1〜3である請求項2または3に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
成分(C)が、エチレンとC3-10α−オレフィンとのコポリマーで、該C3-10α−オレフィンに由来する単位を少なくとも20重量%含むものから選ばれる請求項2または3に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
成分(C)が、
(a)エチレンと1−オクテンとの弾性コポリマーで、20〜45重量%の1−オクテンを含むもの(13C−NMR分析)と、
(b)エチレンと1−ブテンとの弾性熱可塑性コポリマーで、20〜40重量%の1−ブテンを含むもの(13C−NMR分析)
からなる群から選ばれる請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含む成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形物に高い寸法安定性と高い表面品質が求められる用途に用いられる、例えば非晶性スチレン系ポリマーが材料として用いられている、美観上の要件の厳しい装置のケース(例えば、白物製品可視部部品や人工芝や園芸用品)の分野や、また工具収容箱やバッテリーケース、玩具、カバンなどの分野に用いられる成形物部品、特に射出成形で得られる成形物部品の製造に利用可能な異相ポリオレフィン組成物に関する。このような材料をポリオレフィン材料で置き換えるのに求められる性質のバランスは難しい課題であり、適当なポリマーの構造と成分の選択のために努力が必要である。
【背景技術】
【0002】
国際出願WO2005/014715には、曲げ弾性率が1000MPaを越える、特に1100MPaを越えるものの、全体として優れた機械的性質と低熱収縮率のバランスを維持している、以下の組成(重量%)のポリオレフィン組成物が記載されている:
(A)60〜85重量%の、多分散度指数が5〜15であり、メルトフローレートが20〜78g/10分である広分子量分布プロピレンポリマーと、
(B)15〜40重量%の、少なくとも65重量%のエチレンを含む、部分的にキシレンに可溶なオレフィン。
【0003】
WO2005121240には、具体的なプロピレンポリマーやエチレン/α−オレフィンコポリマーで、必要なら他の弾性成分や鉱物充填剤を含むもので、特に高い曲げ弾性率と非常に低い熱収縮率に特徴があるものが開示されている。
【0004】
WO2005121240に開示されている鉱物充填剤(例えば、タルク)の量は、最大でもその組成物の20重量%である(実施例では、0.85と6重量%)。
【0005】
全体としての性質のバランスは、完全に満足できるものではなく、特に成形収縮は、スチレン系ポリマー(ABS)などの他材料と比較可能な値に到達していない。
【0006】
国際特許出願WO2008079998には、アイソタクチックプロピレンと弾性衝撃改質剤(エンゲージ)のブレンドを含むタルクを充填したTPOが開示されている。この衝撃改質剤は、幾何学的に束縛のある触媒で得られるコポリマーであり、その組成は、ポリカーボネート/ABS材料の曲げ弾性率とHDTをもつ低光沢の組成物が得るように選ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在もなお、優れた性質のバランスをもつ、特に優れたABSやPS材料と同等の熱収縮率と表面品質(高い光沢均一性と耐引掻性)のバランスをもつポリオレフィン組成物に対するニーズが存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、
A)
A1)60〜80重量%、好ましくは65〜75重量%の、プロピレンホモポリマーまたは最高で5重量%のエチレン及び/又は一種以上のC4-10α−オレフィンを含むコポリマーであって、該ホモポリマーまたはコポリマーのMFR値(230℃、2.16Kg)が50g/10分以下、好ましくは25〜40g/10であり、その室温(約25℃)でのキシレン可溶性成分の含量が7重量%以下、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下であるものと
A2)20〜40重量%、好ましくは25〜35重量%の、エチレンと一種以上のC4-10α−オレフィンの一種以上のコポリマーで、15〜35重量%、好ましくは20〜30重量%の前記C4-10α−オレフィンを含むものと、
を含むポリマーブレンドであって、
該ポリマーブレンド(A)のMFRが、最大で30g/10分、好ましくは10〜30g/10分、より好ましくは15〜25g/10分であり、エチレンの総量が20重量%以上であり、C4-10α−オレフィンの総量が4.5重量%以上、好ましくは5〜15重量%以上であり、C4-10α−オレフィンの総量に対するエチレンの総量の比が2.3以上、好ましくは3以上であり、キシレン可溶性成分の室温での固有粘度が1.5dl/g以下、好ましくは1.1〜1.5dl/gである(なお、上記の(A1)と(A2)の量は、ポリマーブレンド(A)の総重量に対する値である)ものと;
B)タルク鉱物充填剤(なお、成分(B)の量は、該組成物の総重量に対して20〜40重量%、好ましくは22〜30重量%である)とからなるポリマー組成物に関する。
【0009】
必要なら、またさらに好ましくは、本発明の組成物が、さらに、
C)A2)とは異なる弾性ポリマーであって、硬度(ショアA、ASTM−D2240)が80ポイント以下、好ましくは60ポイント以下、より好ましくは55ポイント以下であるもの(なお、任意成分(C)が存在する場合、その量は組成物の総重量に対して1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%である)を含むことが好ましい。
【0010】
上記定義より明らかなように、本発明の組成物が成分(A)と(B)を含むとき、(A)の量は80〜60重量%、好ましくは78〜70重量%である。成分(A)と成分(B)と任意成分(C)とを含むとき、(A)の量は、本組成物の総重量に対して79〜45重量%であり、好ましくは76〜60重量%である。
【0011】
つまり、本発明のポリマー組成物は、成分(A)と(B)と(C)を次の量で含むポリオレフィン組成物である。
A)76〜60重量%
B)22〜30重量%
C)2〜10重量%
【0012】
また、「コポリマー」という用語は、2個以上のコモノマーを含むポリマーを包含することは明らかである。
【0013】
結晶性のプロピレンポリマー成分と一種以上の、エチレンとC4-10α−オレフェンとのコポリマーを含む本発明のポリオレフィン組成物は、曲げ弾性率とIZOD衝撃強度、高い表面品質(光沢および耐引掻性)、有機媒体(脂肪族及びアルコール性媒体)、接触した場合の耐化学薬品性の必要とされる好ましいバランスを示す。上記の性質に加えて、本発明の組成物は小さな成形収縮を示す。上記の性質のため、この組成物から得られる最終製品は、高い寸歩安定性と優れた美観を持つこととなる。
【0014】
本発明の組成物は、比較的高いMFR値を持ち、また上記の適当なバランスの性質を持つため、容易にいろいろな種類の最終製品または半製品に加工可能であり、特に射出成形法を用いて加工可能である。特に、これらの組成物は、適当なバランスの引張弾性率[>1500MPa(ISO527−1.2)]と耐引掻性に加えて、0.65%(MD)未満で0.9%(TD)未満の低成形収縮率と、65%を越える(黒色試料で)また、70%を越える、好ましくは80%を越える(白色試料で)高光沢度とを示す。これらの性質は、分析方法の欄で詳細に説明する方法で測定したものである。
【0015】
本発明の充填組成物は、以下の性質の一つ以上をもつことがより好ましく、また有利である。
−成形収縮率が、好ましくは0.5%MD未満で0.75%TD未満
−引張弾性率が、好ましくは1600〜2200MPa、より好ましくは1800MPaより大きい
−23℃でのシャルピーノッチ無し衝撃強度(ISO179/1eU)が、好ましくは40KJ/m2以上、より好ましくは100KJ/m2より大きい。
【0016】
本発明の充填組成物の溶融体積流量(MVR、ISO1133による)は、好ましくは15g/10分以上であり、さらに20g/10分以上、例えば15〜60g/10分の範囲であり、特に20〜60g/10分の範囲である。
【0017】
ポリマーブレンド成分(A)は通常、非常に高光沢で高い曲げ弾性率をもつ結晶性のポリマー成分(マトリックス)であり、好ましくは900Mpaより大きな、好ましくは950Mpaより大きな、さらに好ましくは1000MPaより大きな曲げ弾性率(イソ178)と、好ましくは60°での光沢度が90%を越える結晶性のポリマー成分(マトリックス)である。上述のように、室温でキシレンに可溶な結晶性プロピレン成分(A1)の量は、7重量%以下であり、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下である。このようなキシレン可溶性成分の含量の値は、93%以上の、好ましくは95%以上のアイソタクチック指数に相当する。
【0018】
通常、エチレン成分(A2)のコポリマー(ゴム)は、室温で部分的にキシレンに可溶である。室温でキシレンに可溶な成分(A2)の量は、好ましくは成分(A2)の約50〜87重量%であり、より好ましくは50〜70重量%である。
【0019】
好ましくは、本発明のポリマーブレンド成分(A)は、140℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは160℃を越える高温でのDSC溶融ピーク(TmA1)と区別可能な、80〜140℃の、好ましくは100〜125℃の高温での溶融ピーク(TmA2)を示すDSCサーモグラフ特性をもつ。いずれかの理論によるのではないが、TmA2は、成分(A2)のエチレン結晶(不溶性分画)に由来し、TmA1は、成分(A1)のプロピレン結晶に由来する。このDSCサーモグラフは、分析方法欄に記載の方法で得られる。
【0020】
成分(A1)と(A2)用の典型的なC4-10α−オレフィンには、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンが含まれ、1−ブテンが特に好ましい。
【0021】
本発明の組成物は、存在するなら成分(C)と(B)をポリマーブレンド(A)に機械的に混合して製造することができる。このようなポリマーブレンド(A)は、(A1)と(A2)の機械的混合により製造され、あるいは好ましくは、少なくとも2つの逐次工程からなる逐次重合で製造され、その場合、成分(A1)と(A2)は、それぞれ前工程で形成されたポリマーと使用した触媒の存在下で行われる連続した別工程で形成される。この触媒は、第一の工程でのみ添加されるが、その活性は続く全ての工程で持続する。
【0022】
重合は、連続重合でもバッチ重合でもよいが、既知の方法により液相で、不活性希釈剤の存在下又は非存在下で、気相で、あるいは気液混合法で行われる。この重合を気相で行うことが好ましい。
【0023】
重合工程の反応時間と圧力と温度は、極めて重要というわけでないが、温度は50〜100℃であることが最もよい。圧力は大気圧であっても、これ以上であってもよい。
【0024】
分子量の調整は、既知の調整剤、特に水素を用いて行われる。
【0025】
このポリマーブレンド(A)を、少なくとも2個の連結された重合ゾーン中での気相重合プロセスで製造することもできる。この種の方法が、欧州特許出願782587に述べられている。
【0026】
上記の重合は、立体特異的チーグラー−ナッタ触媒の存在下で行うことが好ましい。上記触媒の必須成分は、活性型ハロゲン化マグネシウム上に少なくとも一個のチタン−ハロゲン結合をもつチタン化合物と電子供与体化合物が担持された固体触媒成分である。もう一つの必須成分(共触媒)は、有機アルミニウム化合物、例えばアルミニウムアルキル化合物である。
【0027】
必要なら外部供与体を添加してもよい。
【0028】
本発明の方法で一般的に使用される触媒で、アイソタクチック指数が93%以上、好ましくは95%以上であるポリプロピレンを製造することができる。上述の特徴をもつ触媒は、特許文献中ではよく知られている。特に優れているのは、米国特許4,399,054と欧州特許45977に記載の触媒である。他の例が、米国特許4,472,524に見出される。
【0029】
上記触媒中で電子供与体(内部供与体)として使用される固体触媒成分には、エーテルとケトン、ラクトン、N、P及び/又はS原子を含む化合物、モノ−及びジカルボン酸のエステルからなる群から選ばれる化合物が含まれる。
【0030】
この内部供与体は、好ましくはモノまたはジカルボン有機酸のエステルから、例えば安息香酸やマロン酸、フタル酸、特定のコハク酸のエステルから選ばれる。これらは、例えば、米国特許4522930や欧州特許45977、国際特許出願WO00/63261とWO01/57099に記載されている。特に好適なのは、フタル酸エステルとコハク酸エステルである。アルキルフタレート、例えばジイソブチルフタレートやジオクチルフタレート、ジフェニルフタレート、ベンジル−ブチルフタレートが好ましい。
【0031】
上記ジエステルの典型例は、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパンや、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソアミル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンである。
【0032】
他の適当な電子供与体は、コハク酸エステル、好ましくは下の式(I)のコハク酸エステル:
【0033】
【化1】
【0034】
[式中、基R1とR2は、相互に同一であっても異なっていてもよく、C1-20の直鎖又は分岐鎖のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基であり、必要ならヘテロ原子を含む基である;基R3〜R6は、相互に同一であっても異なっていてもよく、水素またはC1−C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基であり、必要ならヘテロ原子を含む基であり、基R3〜R6は、同一炭素原子に結合し、相互に結合して環を形成できる;ただし、R3〜R5が同時に水素であるとき、R6は、3〜20個の炭素原子を持つ一級分岐状、二級または三級のアルキル基、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基から選ばれる基である]から選ばれるか、下の式(II)のコハク酸エステル:
【0035】
【化2】
【0036】
[式中、基R1とR2は、相互に同一であっても異なっていてもよく、C1-20の直鎖又は分岐鎖のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基で、必要ならヘテロ原子を含んでいてもよい基であり、基R3は、少なくとも4個の炭素原子を有し、必要ならヘテロ原子を含む直鎖状アルキル基である]から選ばれる。
【0037】
他の適当な電子供与体は1,3−ジエーテルである。適当なジエーテルが、公開欧州特許出願361493と728769に記載されている。
【0038】
上述の触媒成分の製造は、いろいろな方法で行われる。
【0039】
例えば、MgCl2・nROH付加物(特に球状粒子の形のもの、式中のnは一般的には1〜3であり、ROHはエタノール、ブタノールまたはイソブタノールである)を過剰量の電子供与体化合物を含むTiCl4と反応させる。反応温度は、一般的には80〜120℃である。次いでこの固体を単離し、もう一度電子供与体化合物の存在下あるいは非存在下でTiCl4と反応させ、この後、これを分離し、全ての塩素イオンが消失するまで炭化水素で何度も洗浄する。
【0040】
この固体触媒成分中の、Tiとしてのチタン化合物の含量は、一般的には0.5〜10重量%である。固体触媒成分上に固定されて残る電子供与体化合物の量は、一般的には、二ハロゲン化マグネシウムに対して5〜20モル%である。
【0041】
この固体触媒成分の製造に使用できるチタン化合物は、チタンのハロゲン化物とハロゲンアルコラートである。四塩化チタンが好ましい化合物である。
【0042】
上記の反応の結果、活性型のハロゲン化マグネシウムが形成される。ハロゲン化物以外のマグネシウム化合物、例えばマグネシウムカルボキシレートから出発して活性型ハロゲン化マグネシウムを形成させる他の反応は文献中に既知である。
【0043】
共触媒として用いられるAl−アルキル化合物には、Al−トリエチルやAl−トリイソブチル、Al−トリ−n−ブチルなどのAl−トリアルキルや、相互にOまたはN原子、またはSO4またはSO3基を経由して結合した2個以上のAl原子を含む鎖状または環状のAl−アルキル化合物があげられる。
このAl−アルキル化合物は、一般的にはAl/Ti比率が1〜1000で使用される。
【0044】
外部供与体として使用できる電子供与体化合物には、アルキルベンゾエートなどの芳香族酸のエステル、また特に少なくとも一個のSi−OR結合(式中、Rは炭化水素基)をもつケイ素化合物が含まれる。
【0045】
ケイ素化合物の例としては、(tert−ブチル)2Si(OCH32、(シクロヘキシル)(メチル)Si(OCH32、(フェニル)2Si(OCH32、(シクロペンチル)2Si(OCH32があげられる。上記の式を持つ1,3−ジエーテルを使用することも有利である。内部供与体がこれらのジエーテルの一つの場合、外部供与体を除くことができる。
【0046】
これらの触媒を少量のオレフィンと前接触させてもよい(前重合)。
【0047】
もし存在するなら、成分(C)は、エチレンとC3-10α−オレフィンのコポリマーであって、少なくとも20重量%、好ましくは20〜70重量%のC3-10α−オレフィンを含むもの(13C−NMR分析)から選ばれることが好ましい。好適な市販のコポリマー成分(C)は、メタロセン触媒または幾何的に拘束された触媒で製造されたものであり、通常その分子量分布(Mw/Mn、GPCでの測定)は1〜3である。
【0048】
弾性ポリマー成分(C)の好ましい例は:
(a)エチレンと1−オクテンとの弾性コポリマーで、20重量%〜45重量%の1−オクテンを含むもの(13C−NMR分析);好ましくは密度が0.89g/ml未満(ASTM−D792により測定)であるもの;
(b)エチレンと1−ブテンとの弾性熱可塑性コポリマーで、20重量%〜40重量%の1−ブテンを含む(13C−NMR分析)もの;好ましくは、密度が0.89g/ml未満(ASTM−D792により測定)であるもの;である。
【0049】
コポリマー(b)の具体例は、ダウケミカル社製のエチレン−ブテン−1のランダムコポリマーゴム・エンゲージ7467であり、その密度は0.862g/cm3(ASTM−D792)であり、MFRが1.2g/10分(ASTM−D1238、190°/2.16Kg、技術的にISO1133に相当する基準)、硬度ショアA(ASTM−D2240)が52である。本発明の組成物中で使用されるタルク鉱物充填剤成分(B)、好ましい純白のものは、通常、粒子内にラメラ(プレート状)構造を持つケイ酸マグネシウム−水和物で、平均(d50)径が0.1〜10μmsの範囲であり、トップカットが1〜40μmの範囲であるもの、より好ましくは平均(d50)径が5μm以上のもの(ISO13317−3、X線沈降法粒度分布測定)。
【0050】
本発明の組成物はさらに、従来から使用されている添加物を、例えば酸化防止剤や加工安定剤、光安定剤、離型剤、静電防止、核剤、着色剤を含むことができる。
【0051】
上述のように、本発明の組成物は、成分(A)と(B)と、必要なら(C)とを混合して製造できる。既知のいずれの混合器を備えた混合装置も、例えば密閉式混合機やエクストルーダーを使用することができる。例えば、バンバリーミキサーまたは一軸バス・エクストルーダーまたは二軸マンスまたはベルネル&フレイデレル型エクストルーダーを使用することができる。
【0052】
本発明はまた、最終の射出成形品を、例えば、上記ポリオレフィン組成物からできた、美観的な要件のある装置ケース(例えば、白物製品の可視部材料、人工芝や庭園製品)や工具箱用ケース、バッテリーケース、玩具、カバンを提供する。
【0053】
本発明の実施方法とその利点を、以下の実施例中で開示する。これらの実施例は説明のみを目的とするのであって、本発明の範囲を制限することを意図するものでは決してない。
【0054】
ポリマー組成物の特性評価に以下の分析方法を用いる。
溶融質量流量(MFR)と溶融体積流量(MVR):230℃/2.16KgでISO1133により測定、これらは同じである。
灰分(1h/625℃):ISO3451/1
[I.V.]固有粘度:テトラヒドロナフタレン中で135℃で測定
エチレンとブテンの含量:I.R.スペクトロスコピーによる
曲げ弾性率:ISO178
引張特性:引張弾性率と引張応力、降伏歪、引張応力、破断歪は、ISO527により測定
シャルピーノッチ付衝撃試験:ISO179/1eA、23℃と0℃
シャルピーノッチ無し衝撃試験:ISO179/1eU、23℃と0℃
アイゾッド衝撃試験:ISO180、23℃と0℃
【0055】
キシレン可溶性及び不溶性の分画
2.5gのポリマーと250cm3キシレンを、冷却器とマグネチックスターラーを備えたガラスフラスコに入れる。温度を、30分間以内に溶媒の沸点まで上げる。次いで、得られた透明溶液を還流下に置き、さらに30分間攪拌する。次いで、この密閉フラスコを30分間、氷水浴中に入れ、さらに25℃に温度調整された水槽に入れる。このようにして形成された固体を、急速濾紙で濾過する。100cmの濾液を、熱板上で窒素流下で加熱された、前もって重量を測定したアルミニウム容器に注ぎ入れ、溶媒を蒸着させて除く。次いでこの容器を80℃で真空下の炉に入れて、一定の重量となるまで放置する。次いで室温で(25℃)でキシレン可溶性ポリマーの重量%を計算する。
【0056】
室温でキシレンに不溶なポリマーの重量%を、そのポリマーのアイソタクシシティー指数と考える。この値は、実質的に、沸騰n−ヘプタンによる抽出で求めたアイソタクシシティー指数(これは、ポリプロピレンのアイソタクシシティー指数と定義されるものである)に相当する。
【0057】
熱的性質(DSC):
ポリマー組成物(A)の融点(TmA1)と(TmA2)を測定する。
【0058】
ISO11357/3に準じて、試料重量を5〜7mgとし、加熱速度と冷却速度を20℃/分、温度操作範囲を40℃〜200℃として示差走査熱量分析(DSC)を行う。縦方向(MD)と横方向(TD)の成形収縮:24時間後に、DIN−A5/4mmの板上で測定、溶融物の均一な流動と配向を確実とするため全幅にわたりフィルムゲートを設ける。射出成形装置サンドレット・シリーズ7−190型(なお、190は、型締力が190トンであること示す)中で、210×145×4mmの板を成型した。
【0059】
射出条件は次の通りである:
融点=210℃;
射出成形圧力=80bar
金型温度=30℃;
射出時間=11秒間;
保持圧力=50bar
保持時間=30秒間;
冷却時間=20秒
サイクル時間=76秒
スクリュー速度=80rpm(1/分)
【0060】
この板を、成形24時間後(成形収縮)と80℃で48時間焼成後(合計収縮率)にノギスで測定する。収縮率は次式で与えられる。

縦方向の収縮率(MD)=(210−測定値)/210×100
横方向の収縮率(TD)=(145−測定値)/145×100

式中、210は、成形直後に測定した板の流動方向(MD)の長さ(mm)であり、145は、成形直後に測定した流動方向(TD)に直行する方向の長さ(mm)である。測定値は、関係する方向の板の長さである。データを表3に示す。

板の光沢;鏡面光沢度(ガードナー光沢度ともよばれる)を、厚みが1mmの高光沢板上で60°の角度でISO−2813により測定。
【0061】
以下の条件で作動するクラウス・マッフェイ射出成形機KM150−700C2型中で、試験するポリマーそれぞれを用いて、10個の長方形試料(55×60×1mm)を射出成形する。
溶融温度:200℃
溶融温度プロフィル::ゾーン1:180℃、ゾーン2:185℃、ゾーン3:190°C、
ゾーン4:190℃、射出機:190℃
金型温度:30℃
射出成形圧力:48bar
背圧:15bar
射出速度:95mm/秒
射出時刻:0.22秒
保持圧力:80bar
滞留時間:10秒
冷却時間:15秒
サイクル時間36秒
スクリュー速度80rpm(1/分)
射出圧力の値は、上述の時間内に金型を完全充填するのに充分である必要がある。
【0062】
入射角が60°の時に試験試料の表面から反射される光束の量を光沢度計で測定する。表2に示す値は、各試験ポリマーの10試料の平均光沢値である。
【0063】
用いた光沢度計は、入射角を60°に設定したツェントナー光度計ZGM1020または1022である。その測定原理は、ASTM−D2457に記載されている。装置の校正は、既知の光沢値をもつ試料で行った。データを表3に示す。
【0064】
耐引掻性
耐引掻性は、DIN−A5板の上に10Nの荷重をかけてエリクソン五本指引掻試験システムで測定した。
【0065】
このエリクソン引掻試験機では、力が5N〜20Nでの耐引掻性の評価が可能である。試験では、引掻具を1000rpm/分の速度として、10Nの力を印加した(力が弱いと充分な引掻きが起こらない)。この引掻具は、直径が1mmの円形突起を経由して表面と接触する。この試験機で、20本のラインからなるパターン(一方向に10本、これに直角な方向に10本)を作り、その後、耐引掻性は、引掻表面と非引掻表面の間の明るさの差を測定して決定する。この明るさの差は、BYKガードナー装置(または同等の光度計)により測定され、その結果得られる値のΔL(dL)値(シーラブ・システム)OMSは、引掻深さと直接相関している。したがって、dLを化合物の耐引掻性の指標として用いた。
【0066】
各試験ポリマーを用いて異なる表面粗さ(粗粒、微粒、平滑)をもつ三枚の板を作製した。板は、クラウス・マッフェイ射出成形機KM150−700C2型で、次の条件にて射出成形した。
溶融温度:210℃
溶融温度プロフィル:ゾーン1:190℃、ゾーン2:200℃、ゾーン3:210℃、ゾーン4:210℃、ゾーン5:210℃、射出機:210℃
金型温度:30℃
射出成形圧力:80bar
背圧:10bar
射出速度:7mm/秒
射出時間:11s
保持圧力:50bar
保持時間:30秒
冷却時間:20秒
サイクル時間:76秒
【0067】
これらの板を引掻試験にかけた。データを表3に示す。
【実施例】
【0068】
ポリマーブレンド成分(A)を、表1に示す条件下で気液混合重合法により連続運転中のプラントで製造した。一つの反応器から直後の反応器に製品を送る装置を備えた直列の二個の反応器中で、触媒系の存在下で重合を行った。
【0069】
固体触媒成分の調整:
欧州特許EP728769の実施例5、行48〜55に記載のチーグラー−ナッタ触媒を調整した。トリエチルアルミニウム(TEAL)を共触媒として用い、またジシクロペンチルジメトキシシランを外部供与体として用いた。その重量比を表1に示す。
【0070】
触媒系と前重合処理
上述の固体触媒成分を、12℃で24分間、アルミニウムトリエチル(TEAL)と、また外部電子供与体成分としてのジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)とに接触させた。TEALと固体触媒成分との重量比は20であり、TEALとDCPMSの重量比は10であった。
【0071】
次いで、この触媒系を、約5分間20℃の液体プロピレン中に懸濁させて重合させ、その後第一の重合反応器に投入する。
【0072】
重合例A
重合は、一つの反応器から直後の反応器に製品を送る装置を備えた一連の二個の反応器中で、触媒系の存在下で連続的に行う。第一の反応器は液相反応器であり、第二の反応器は流動床気相反応器である。第一の反応器でポリマー成分A1(マトリックス)を製造し、第二の反応器でポリマー成分A2(ゴム)を製造する。
【0073】
反応中、温度と圧力は一定に保つ。水素を分子量調節剤として用いる。気相(プロピレンとエチレンとブテンと水素からなる)を、ガスクロマトグラフィーで連続的に分析する。プロセス条件を表1に示す。
【0074】
重合終了後、粉末を排出し、窒素流下で乾燥させる。
【0075】
表2中の最終ポリマー組成物中のキシレン可溶性分とコモノマー含量に関するデータは、このようにして得られたポリマーで、必要なら安定化されたものを用いる測定で得られるものである。
【0076】
次いで、このポリマー粒子をエクストルーダーに投入し、1800ppmのDMDBS透明剤/核剤(ミラド3988)を含む既存の添加物パッケージと混合して有核組成物を得る。
【0077】
このポリマー粒子を、窒素雰囲気下で、回転速度が250rpm、溶融温度が200〜250℃の二軸押出機で押し出す。
【0078】
最終のポリマーブレンド組成物(A)の他の物理的機械的性質のデータもまた、表2に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例1と4と6では、得られたポリマー組成物(A)を機械的に成分(B)と混合し、実施例5と7と8では、得られたポリマー組成物(A)を、上述の条件下での射出により成分(B)と(C)と混合した。着色剤と酸化防止剤や光及び熱安定剤、防酸剤と離型剤(例えばErucamide)を含む既存の添加物パッケージを、表3に示す比率で組成物に混合した。このようにして得られた最終組成物の性質も表3に示す。
【0081】
添加成分
−エンゲージ7467:(頁3の記述を参考)、任意成分(C)として使用;
−IMIファビ社製タルクHM4:平均粒度(メジアン径D50)が約10μmの純白のタルク、粉末成分(B)として使用;
−リオ・チントミネラルズ社製タルクジェットファイン3CA:平均粒度(D50)が約1μim(圧縮後)の純白の微細タルク粉末、成分(B)として使用;
−既存の添加物パッケージ
−黒着色剤:BK MB−コルカラーE30/90(デグサ)
−白着色剤:二酸化チタン−TI−PURE R−104(被覆された淡白青色の二酸化チタン)
−比較例では、成分(A)に代えて他のポリマーブレンド(HECO2とHECO3の異相組成物)を使用する。比較用ポリマーブレンドの構造と性質を表2に示す。
【0082】
比較例2cと3c
本発明の成分(A)に代えて、異なるポリマーブレンドであるHECO2を実施例2cでHECO3を実施例3cで使用して、実施例1を繰り返した。
【0083】
参照例1
黒着色剤と添加剤パッケージのみが添加されたポリマーブレンド成分(A)を、参照のために報告する。
【0084】
参照例2
白着色剤と添加物パッケージのみが添加されたポリマーブレンド成分(A)を、参照のために報告する。
【0085】
このようにして得られた最終組成物の性質も表3に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
【表3-1】
【0088】
【表3-2】