特許第5775143号(P5775143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775143
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】スチールパンチナイフ
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/44 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   B26F1/44 B
   B26F1/44 D
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-501210(P2013-501210)
(86)(22)【出願日】2010年7月16日
(65)【公表番号】特表2013-522060(P2013-522060A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】SE2010050851
(87)【国際公開番号】WO2011119082
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2013年5月16日
(31)【優先権主張番号】1050274-8
(32)【優先日】2010年3月23日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141081
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 庸良
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ヘンリクソン
(72)【発明者】
【氏名】スベン−インゲ マットソン
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−004599(JP,A)
【文献】 特開2010−023137(JP,A)
【文献】 特開2005−297163(JP,A)
【文献】 特開昭63−312099(JP,A)
【文献】 特開昭58−047523(JP,A)
【文献】 米国特許第04568323(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙、ボール紙、板紙、段ボール、プラスチックシート、レザーラバーなどから、任意の形のパーツを打ち抜くためのスチールパンチナイフであって、
一端に切れ刃(2)を有し、切れ刃(2)の反対側に変形可能な後側部分(3)を有するナイフ本体(4)を備え、切れ刃(2)が後側部分(3)よりも硬いスチールパンチナイフにおいて、
後側部分(3)は、2つの傾斜した側面を有し、その間で所定の傾斜角を規定するV字形の後側突起(3b)を含み、
後側突起(3b)の基底部における最大幅はナイフ本体(4)の幅よりも小さく、
後側突起(3b)の基底部において、後側突起(3b)がナイフ本体(4)と出会う部分に肩(9)が設けられており、
前記後側突起(3b)の側面と前記肩(9)を形成する表面との間の交差部は、シャープでなく、前記後側部分(3a)で支持部が形成されるようにわずかに丸められており、
前記後側突起(3b)の側面と前記肩(9)を形成する表面との間の交差部は、5〜50μmの範囲にある半径(r2)を有することを特徴とするスチールパンチナイフ。
【請求項2】
後側突起(3b)は対称な断面を示し、ナイフ本体(4)の中心面と同一平面にある中心面を有することを特徴とする請求項1に記載のパンチナイフ。
【請求項3】
肩(9)の表面とナイフ本体(4)の側面との間の交差部が丸められていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパンチナイフ。
【請求項4】
肩(9)の表面とナイフ本体(4)の側面(10)との間の交差部は、100〜250μmの範囲にある半径(r3)を示すことを特徴とする請求項に記載のパンチナイフ。
【請求項5】
肩(9)がナイフ本体(4)の側面と出会う領域において、ナイフ本体(4)はその最大幅よりも小さな幅を有し、ナイフ本体(4)の側面は、ナイフ本体(4)の中心面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のパンチナイフ。
【請求項6】
後側突起(3b)の傾斜した二つの側面の間の傾斜角(α)は30゜〜70゜の範囲にあり、後側部分の稜線はシャープであって1〜10μmの範囲にある半径を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のパンチナイフ。
【請求項7】
後側突起(3b)の傾斜した二つの側面の間の傾斜角(α)は40゜以上であることを特徴とする請求項に記載のパンチナイフ。
【請求項8】
後側突起(3b)の傾斜した二つの側面の間の傾斜角(α)は60゜以下であることを特徴とする請求項又はに記載のパンチナイフ。
【請求項9】
後側突起(3b)の稜線の半径(r1)は5μm以下であることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載のパンチナイフ。
【請求項10】
後側突起(3b)は40〜200μmの範囲にある高さ(h)を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のパンチナイフ。
【請求項11】
後側突起(3b)の硬度は切れ刃(2)の硬度の35%〜64%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜1のいずれか一項に記載のパンチナイフ。
【請求項12】
後側突起(3b)の硬度は320HV以下、好ましくは300HV以下であることを特徴とする請求項1〜1のいずれか一項に記載のパンチナイフ。
【請求項13】
後側突起(3b)の硬度は250HV以上であることを特徴とする請求項1〜1のいずれか一項に記載のパンチナイフ。
【請求項14】
切れ刃(2)の硬度は500HV以上、好ましくは640HV以上であることを特徴とする請求項1〜1のいずれか一項に記載のパンチナイフ。
【請求項15】
切れ刃(2)の硬度は740HV以下、好ましくは700HV以下であることを特徴とする請求項1〜1のいずれか一項に記載のパンチナイフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、ボール紙、板紙、段ボール、プラスチックシート、レザーラバーなどから任意の形のパーツを打ち抜くスチールパンチナイフに関する。詳しくは、本発明は、ナイフの一部分のコントロールされた塑性変形によって得られる自動平準化機能を有するパンチナイフに関し、パンチナイフは、切れ刃と、2つの傾斜側面を有し、その間で傾斜角を規定する突起を有するV字形の後側部分と、切れ刃を後側部分から隔てるナイフ本体とを備え、切れ刃は後側部分よりも硬いことを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
紙、ボール紙、板紙、段ボール、プラスチックシート、レザーラバーなどから任意の形状の輪郭を切り出すダイカッティングマシンはよく知られている。普通、ダイカッティングマシンは、いわゆるパンチナイフを形成する細長い金属ルール(rule)を備え、それによって対象材料をパンチして形を与える。パンチナイフは金属バンド、普通は炭素鋼バンドであり、2つの対向する平行側面と、切れ刃と、切れ刃の反対側の後側部分を有する。パンチナイフはまた、鋼ルール又はダイカッティングルールと呼ばれる。それはかなりの長さを有し、例えば1メートルをこえ、10,20,又は30メートルにも達する。パンチナイフは打ち抜く対象の輪郭に対応する形、例えば長方形に曲げられる。普通、ダイカッティングマシンは上方プレートに接触している上方ベッドと、パンチナイフの後側部分を支持しながら接触してパンチング動作に必要な力をパンチナイフに伝達するように位置する後側プレートを備える。ダイカッティングマシンは、更に、後側プレートに隣接して配置されてパンチナイフをしっかりと側方で保持する固定具機能を有するダイボードを備える。ダイボードには、パンチナイフが突出するためのスロットが設けられ、普通は木製である。ダイカッティングマシンは、また、平坦な下方プレート、カッティングプレートを備え、これはパンチされる材料を運ぶものであり、パンチナイフの切れ刃の方へパンチナイフに接触するまで動くように配置される。完全な切り抜きを達成するためには、切れ刃はその長さに沿ってカッティングプレートに連続して接触しなければならない。しかし、これは達成することが難しく、製造での許容誤差やカッティングマシンの通常の摩耗のために局所的に高いスポットや低いスポットが現れる。普通、このような不完全さは0.1mmのオーダーであるが、完全な切り抜きが達成されない部分を生ずる。
【0003】
ダイカッティング技術は常に、ダイボードを平らにして、例えばボール紙を、きれいに切り抜くという時間がかかる手の込んだ技法を用いてきた。この技法は、「パッチアップ」と呼ばれ、何回かのテストパンチと、結果を調べてスチールパンチナイフ(単数又は複数)に沿って切断結果のばらつきを補償するという中間エクササイズから成る。補償はシート材料の薄いストリップ、例えばテープを、後側プレートと上方ベッドの間に位置しているプラスチックシートにおける完全な切り抜きが達成されなかったスチールパンチナイフの部分と関連する箇所に付加することで行われる。このプロセスは、時間がかかるというだけでなく、きわめてスキルが高い訓練されたオペレータが必要である。パッチアップの必要を減らすために、従来技術では後側部分が突出した構造を有するパンチナイフを導入することが提案された。突出した後側構造は、作業中にわずかに変形するように設計されているが、切れ刃は実質的に変形しないままである。これによってスチールパンチナイフは自動平準化することが可能になる。突出した後側構造が圧力の下で変形できるためには、切れ刃が突出した後側構造よりも高い圧力に耐えることができなければならない。従来技術では、これは切れ刃を硬化させ、他方突出した後側構造は熱処理してパンチナイフの他の部分よりも硬度が低くなるようにすることで達成される。さらに、圧力がかかったときに後側部分がつぶれることを助長して、そうでなかったら「パッチアップ」を必要とする交差欠陥を補償するようにデザインされた多数の後側のプロファイルが提案されている。例えば、特許文献1及び2を参照されたい。提案された方法は、パンチナイフの扱い及び/又はダイボードを製造するときに、大幅な変更を必要とする。
【0004】
パンチナイフは、ダイカッティングマシンに取り付けられる前にダイボードに取り付けられる。パンチナイフを収容するダイボードのスロットは、ダイボードの厚さ方向にダイボードを貫通して延びている。パンチナイフをダイボードに取り付けるときには、ダイボードを堅く平らな表面のテーブル、例えばスチールテーブルなど、適当な支持面に置く。パンチナイフ、又はその何らかの部分をダイボードのスロットに、ナイフの後側部分(後側突起)が支持面、すなわちダイボードが置かれているテーブル、と線接触するまで圧し込む。取り付けは高度の職人技能であり、ナイフは少しずつ押し込まれ、局所的に荷重が大きくなった箇所がナイフの後側部分に、それらの箇所が下にあるテーブル表面に強制的に接触させられるにつれて現れるようになる。したがって、かなりの圧力がナイフに加えられ、後側部分の一部が永久変形する危険がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008025606号明細書
【特許文献2】独国特許第3135980号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、パンチング動作を行わせられたときにナイフの自動平準化能力が得られるデザインを有するスチールパンチナイフを提供することである。自動平準化能力はパンチナイフの後側部分のコントロールされた塑性変形から生ずるものでなければならない。さらに、デザインは、ダイボードにパンチナイフを取り付けることに関連してパンチナイフの後側部分の永久変形を生ずる危険を小さくするようなものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、特許請求の範囲の請求項1によって定められるようなパンチナイフによって達成される。
【0008】
本発明に係わるパンチナイフは、一端における切れ刃と、切れ刃とは反対側に位置する変形可能な後側部分とを有するナイフ本体を含む。切れ刃は、後側部分の少なくとも一部より硬い。後側部分は、2つの傾斜した側面を有し、その間で傾斜角を規定するV字形の後側突起を含む。後側突起の、その基底における最大幅はナイフ本体の幅より小さく、後側突起がナイフ本体と出会うところに肩がある。
【0009】
肩は、ダイボードにパンチナイフを取り付けるときに、ダイボードと、パンチナイフの取り付けの際にダイボードが載る支持表面との間に後側突起の高さよりわずかに大きな厚さの変形可能な中間プレートを配置でき、後側突起は中間プレートに切り込むことができるが、肩は中間プレートに支えられ、少なくともある程度まで、後側突起のそれ以上の動きと変形を防ぐという形で、利用することができる。
【0010】
本発明に係わるパンチナイフによって得られるひとつの利益は、それがあらゆる手順の部分で、曲げ操作や取り付け操作を含めて、従来のナイフと同様な仕方で扱うことができるということである。取り付け手順の際に変形可能な中間プレートを導入すること以外に既存の設備に何も変更の必要がない。
【0011】
肩が十分に広く、後側突起の高さが適当に低い限り、肩はまた、オペレータがナイフを扱うときに後側突起で切られることを防ぐ。普通、肩と後側突起の寸法は、肩の存在のおかげで後側突起が人の指の通常は厚い皮膚に切り込むことがないようになっている。
【0012】
ある好ましい実施形態では、後側突起は対称な断面を呈し、ナイフ本体の中心平面と同一平面に成った中心平面を有する。それにより、後側突起の各側にひとつの肩が設けられ、上記肩は好ましくは同一であり、パンチナイフの断面の対称性に寄与する。対称性は、機能という観点からも製造という観点からも有利である。特に、パンチナイフがダイカッティングマシンでとることになる形に形成されるとき、パンチナイフはどちらの方向に曲げられるかと無関係に同様の挙動を示すということが有利である。
【0013】
後側突起の側面と上記肩を形成する面の交わりはシャープでなく、少し丸く面取りされていることが好ましい。それによってこの移行領域はナイフが、普通はパンチナイフの取り付けに関連して、曲げ操作を受けたときにもクラックを生じにくくなる。好ましくは、後側突起の側面と上記肩を形成する面の交わりは、半径が5〜50μmの範囲にある。
【0014】
また、肩の表面とナイフ本体の側面との交差部分が丸みを有していることが好ましい。この特徴は、パンチナイフが組み立てのときにダイボードのスロットに、それを切ったりすることなくスムースに入るようにする。好ましくは、肩の表面とナイフ本体の側面との交差部分が100〜250μmの範囲にある半径を有する。
【0015】
また、肩がナイフ本体の側面と出会う領域で、ナイフ本体はその最大幅より小さい幅を有し、ナイフ本体の側面はナイフ本体の中心面に対して傾いていることが好ましい。それにより、パンチナイフは引っかかってしまうことが少なくなり、ダイボードに容易に取り付けられる。
【0016】
本発明のパンチナイフのある好ましい実施形態では、後側突起の傾斜した側面の間の傾斜角は30゜から70゜までの範囲にあり、後側突起の稜線はシャープで1〜10μmの範囲にある半径を有する。
【0017】
特に、シャープな稜線と後側突起の傾斜した二つの側面との間で規定された角度の組合せによって、安定な、しかし容易に圧縮できる後側部分が得られる。後側部分はナイフ本体の中心面と同一平面になっている中心面を有する単一部分として形成されることが好ましく、製造の観点から有利である。後側部分の後側突起はナイフの長手方向に連続した線に沿って延び、後側突起とそれが支えられるサポートの間で連続な線接触が得られるようになっている。
【0018】
ある実施形態では、二つの傾斜側面の間の傾斜角は40゜以上、好ましくは50゜以上である。それにより、圧力を受けたときにいずれかの側に逸れるという望ましくない事態に対する後側突起の安定性がさらに高められる。
【0019】
好ましくは、二つの傾斜側面の間の傾斜角は60゜以下である。それにより、圧縮性がさらに向上する。
【0020】
ある実施形態では、後側突起の稜線の半径は5μm以下である。もっと小さい半径は後側突起の初期圧縮性をさらに改善する。
【0021】
好ましくは、後側突起の硬度は320HV以下、好ましくは300HV以下、さらに好ましくは280HV程度である。それにより、十分な圧縮性が得られる。後側突起は製造時に受ける熱処理プロセス、好ましくは焼きなましプロセス、の結果としてナイフ本体より軟らかい。
【0022】
ある実施形態では、後側突起の硬度は250HV以上である。この下限はナイフ材料として選ばれる物質、すなわち炭素鋼、好ましくはCK55等級(DIN標準)のもの、及び焼きなましによるその軟化に関係している。
【0023】
好ましくは、切れ刃の硬度は500HV以上、好ましくは600HV以上、又は640HV、である。硬度が低いと切れ刃に変形が生じやすく、その変形は切れ刃の性能にマイナスに影響するので避けなければならない。
【0024】
本発明のある様態では、切れ刃の硬度は740HV以下、好ましくは700HV以下、である。硬度が高すぎると、切れ刃がもろくなり、パンチナイフを最終の形に形成するとき曲げ操作を受けたときにクラックが生じやすい。
【0025】
本発明のその他の特徴と利点配下の詳細な説明及び独立な特許請求項で明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係わるパンチナイフの部分断面図である。
図2】本発明に係わるパンチナイフをダイボードに取り付けたときの部分断面図である。
図3】本発明に係わるパンチナイフをダイボードに取り付けた後のパンチナイフがカッティングマシンにあるときの部分断面図である。
図4】本発明に係わるパンチナイフを備えたダイカッティングマシンを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明に係わるパンチナイフ1を示す断面図である。この断面図は、ナイフの長手方向に直交する断面でのナイフの輪郭を示している。パンチナイフは、紙、ボール紙、板紙、段ボール、プラスチックシート、レザー、ゴムなどの材料を、任意の形、通常は最終の形に切断するために用いられる。スチールパンチナイフは、ボール紙の打ち抜きに使用する目的に特に適している。しかし、設計の小さな変更によって他の材料も打ち抜くことができ、そのような変更は当業者には明らかである。パンチナイフが配置されるダイカッティングマシンは普通はスタンピング形で、パンチナイフ1が打ち抜かれる材料の方へ直線移動する。本発明に係わるスチールパンチナイフは、以下ではそのようなダイカッティングマシンに関して説明される。別に、本発明に係わるスチールパンチナイフは回転タイプのダイカッティングマシンで利用することもでき、その場合、パンチナイフ1はロール(roll)によって運ばれ、打ち抜かれる材料にロールされるように配置される。
【0028】
パンチナイフ1はスチール、好ましくは炭素鋼、特にCK55等級(DIN標準)又は同様の等級のものから作られる。
【0029】
本発明に係わるパンチナイフは、切れ刃2と、後側部分3aと、切れ刃2と後側部分3aの間にある中間のナイフ本体4を含む。ナイフ1はひとつの均一なスチールシートから形成され、切れ刃2と後側部分3aは機械加工によって形成される。ナイフ本体4は2つの平行な側面を示す。ナイフ1は、かなりの長さを有し、その形状はルール(物差し、定規)を思わせる。それは、パンチナイフ1による打ち抜きによって形成される生成物の輪郭に対応する最終的な形に曲げることができる。
【0030】
パンチナイフ1の主要部分を成すナイフ本体4の高さHは20〜40mmの範囲にあり、その厚さtは0.4〜1.5mmの範囲にある。どんな種類の材料を打ち抜くかに基づいて適当な寸法が選ばれる。ナイフ本体の硬度は、どのスチールが選ばれるか、そしてどのような熱処理がそれに加えられるかによって、300〜420HVの範囲にある。
【0031】
パンチング動作でのナイフ1の自動平準化を可能にするように、ナイフの後側部分3aは塑性的に変形するように設計されており、切れ刃はその形を保持する。これは、切れ刃2と後側部分3aのそれぞれの硬度と幾何形状の組合せによって達成される。後側部分3aは、ナイフ本体4の上端から突出するフィン又は畝の形の後方端部3bを含む。それはナイフの長さ方向に連続的に延び、まだ変形しない状態では全長にわたって同じ高さを有する。したがって、後側部分3aの稜線と支持エレメント5の間には、それらが組み立てられたときに連続な線接触がある。
【0032】
後側部分3aは対称な断面を有する(図に対応する、ナイフの長手方向から見たとき)。後側突起3bを含む後側部分3aの中心面はエッジ4の中心面と同一平面になっている。後側突起3bは2つの対向する側面を有し、それらは互いに角αを成して端で出会い、シャープな稜線を形成し、その半径は1〜10μmの範囲にあり、好ましくは5μmより小さい。後側突起3bに十分な安定性を与えるために、後側突起3の2つの側面の間の傾斜角αは、30゜より大きく、好ましくは40゜より大きく、又は50゜より大きい。後側突起3bに十分な変形可能性を与えるために、角αは、70゜より小さく、好ましくは60゜より小さい。後側突起3bの側面は、記述されたように真直であっても、曲率を有し、凹又は凸であっても、又はもっと複雑な形であってもよい。非真直な側面の場合、2つの側面の間の角αは、後側突起の先端と後側突起3bの各側面上で後側突起3bがナイフ本体4の上面と交差する点を通る2つの想像上の線の間の角と理解される。
【0033】
パンチナイフ1の後側突起3bは、ナイフの他の部分よりも容易に変形するためにナイフの他の部分よりも軟らかい。これは、製造工程におけるその局所的な熱処理、好ましくは焼きなまし、によって達成される。後側部分の硬度は、好ましくは250〜320HVの範囲、好ましくは300HVより低い、又はパンチナイフのナイフ本体4の硬度の約66%である。ある実施形態では、硬度は後側突起3bの先から基底部の方へ、ナイフ本体4の硬度のほぼ66%から76%へ増加するように配置される。
【0034】
後側突起3bの最大幅、すなわち基底部における幅は、ナイフ本体4の幅より小さい。したがって、後側突起3bの基底部には後側突起3bがナイフ本体4に出会うところに肩9がある。後側突起3bのそれぞれの側に肩9があり、それらの肩9は対応するサイズと形を有し、それによりパンチナイフの対称な断面に寄与する。したがって、以下では片側の肩だけを記述する。後側突起3bと上記肩を形成する面の交わりは、普通、シャープではなく、わずかに丸く面取りされており、図でr2と記されているその半径は5〜50μmの範囲にある。これには、ナイフが曲げ操作を受けたときにこの移行領域でクラックを生じにくいという技術的な効果がある。肩面とナイフ本体4の側面との交わりも、わずかに丸く面取りされており、その半径r3は100〜250μmの範囲にある。この特徴はまた、パンチナイフ1が、組立時にダイボードを切ることなく、ダイボード7のスロットにスムースに入る能力を高める。肩9は後側部分3aの支持部を形成する。支持部は、曲げ及び/又は取り付け操作において連続な基準になり、それがない場合には後側突起3bにかかり、比較的圧縮性のフィンを損傷したであろう荷重を支えるために利用される。さらに、パンチナイフは扱うのに危険が小さいものになる。肩9がナイフ本体4の側面10と出会う領域で、ナイフ本体4はその最大幅よりも小さな幅を有し、ナイフ本体4の上記側面10はナイフ本体4の中心面に対して角度γで傾いている。傾斜した側面9はほぼ0.4〜2mm延びて、パンチナイフの中心面と平行な真直な側面11に移行する。この傾斜はダイボードへの取り付けと取り外しを容易にする。
【0035】
後側突起3bの高さは40〜200μm、好ましくは100〜150μmの範囲にある。特定の用途に選ばれる高さhは、どんな種類の材料を打ち抜くか、及び後側部分の変形の具体的な必要に大きく依存する。特定用途で要求される自動平準化の効果を達成するために大きな変形が予期される場合、対応する大きな高さを用意しなければならない。
【0036】
切れ刃2は、自動平準化の手順で後側突起3aだけが変形する間、その形の保持を増強する硬度と幾何形状を有する。したがって、切れ刃2は後側突起3aよりもかなり硬い。切れ刃2の硬度は500HVより高く、好ましくは600〜740HVの範囲、好ましくは640〜700HVの範囲にあり、切れ刃3の局所的硬化による。したがって、それはナイフ本体4よりも硬い。しかし、硬すぎる切れ刃はもろくなり、ナイフが曲げ操作されたときにクラックを生ずる。したがって、規定された上限より高い硬度は避けるべきである。切れ刃2と後側突起3aに選ばれた硬度の結果、後側突起3aの硬度は切れ刃2の硬度の35%〜55%の範囲にある。
【0037】
肩9の荷重支持機能が図2に示されている。ダイボード7とパンチナイフ1をダイカッティングマシンに組み立てる前に、パンチナイフ1は固定具としてのダイボード7に取り付けられる。好ましくは、ダイボード7はプレートの形で、後側プレート5に隣接し、それと接触して配置される。それは木製であることが好ましいが、他の材料も使用できるだろう。パンチナイフ1を収容するスロットは、パンチナイフをダイボード7にしっかりと保持できるようにパンチナイフ1の厚さtにほぼ対応する幅を有する。固定具7の厚さは、パンチナイフをしっかりと支持できるために、パンチナイフ1の高さHに対してかなり大きい。本発明によるパンチナイフ1を固定具7に取り付けるとき、後側突起3bの高さよりも少し大きい厚さの中間プレート13が、ダイボードと、パンチナイフの取り付けのときにダイボード7が支持される支持表面12との間に配置される。中間プレートはボール紙やポリマー、例えばナイロンなどの材料で作られる。パンチナイフ1がダイボード7のスロットに打ち込まれると、後側突起3bは中間プレート13に切り込むことができるが、肩9は中間プレートに突き当たって後側突起3bのそれ以上の動きと変形を妨げる。後側突起3bが中間プレート13に切り込むことができ、肩9がしっかりした支持になることが組み合わされて、後側突起3bがこのプロセスで損傷することが防がれる。普通、いくつかのパンチナイフがダイボードに取り付けられて、例えばT字形の交わりとジョイントを形成する。この交わりとジョイントにおいてナイフは互いに良く対応するように機械加工されている。2つの隣接するパンチナイフの切れ刃が正確に同じレベルになることはきわめて重要である。中間プレート13に切り込む後側突起3bとそれに支えられる肩9の組合せによって、ダイボードのすべてのパンチナイフが同じレベルになることが保証される。このことが、変形可能な後側部分を備え、コントロールされた取り付けが容易でない従来技術のパンチナイフと異なる点である、中間プレート13はパンチナイフ1をダイボード7に取り付ける間だけ使用され、ダイボード7をダイカッティングマシンに装着する前に除去される。
【0038】
図3は、パンチナイフ1が取り付けられたダイボード7をダイカッティングマシンに組み立てて、パンチング動作をする前の状態を示したものである。実際のセットアップにはここに図示されるよりも多くのパーツが含まれるが、図には本発明によるパンチナイフの機能を理解するのに必要なパーツだけが含まれているということに留意されたい。支持エレメント5、普通は後側プレートと呼ばれるプレートが、ダイボード7の上に設けられている。組み立ての間にダイボード7におけるパンチナイフ1のわずかな動きが生ずるであろう。上述の取付作業においてナイフは注意深く水平にされ、動きは小さく一様であり、後側突起3bの高さhに対応して、この動きが交わりとジョイントの正確さを損なうことはない。
【0039】
図4は、本発明によるパンチナイフをパンチング動作で示している。ダイカッティングマシンは、また、打ち抜かれる材料を担持し、支持エレメント5とパンチナイフによって構成されるコンポーネントに対して可動的に配置されるカッティングプレート6を備える。カッティングプレート6は、好ましくは平坦な面であり、その上に好ましくはシートの形の打ち抜かれる材料8が担持される。パンチング動作の間、カッティングプレート6はナイフ1の切れ刃2の方へ動かされ、それにより、担持された材料8が切れ刃2によって打ち抜かれると共に、打ち抜かれるまで担持された材料8がカッティングプレート6の表面と連続な線接触をする。可動部分がナイフ1であるか、カッティングプレート6であるか、又はその両方であるかは任意である。固定具7をそこに取り付けられたパンチナイフ1と共にダイカッティングマシンに組み立てた後、1回又は数回の初期パンチング動作が生産のためのパンチングを行う前に必要であり、これは従来のパンチナイフを用いる場合のパッチアップ手順に相当する。初期パンチングの間に、図4に示されたパンチナイフの本発明による設計のおかげで、後側突起3bのコントロールされた塑性変形が行われる。このプロセスは、初期パンチングの間にパンチナイフ1が固定具7の中で落ち着く過程であると記述することもでき、高度の自動平準化が達成される。カッティングマシンの進行した摩耗を補償するための多少のパッチアップはやはり必要であるかもしれない。しかし、この場合も、パッチアップの量は著しく少ない。
図1
図2
図3
図4