【文献】
CHEN, L. et al,Effect of Al content on microstructure and mechanical properties of Ti-Al-Si-N nanocomposite coatings,International Journal of Refractory Metals and Hard Materials,2009年 7月,Vol.27,P.718-721
【文献】
野瀬 正照、外6名,反応スパッタ法により作製したTi‐Al‐Si‐Nナノコンポジット膜の特性,粉体および粉末冶金,2004年11月15日,第51巻第11号,第808頁〜第814頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
チタン、アルミニウム、窒素、酸素、並びに以下の元素:ケイ素、イットリウム、セリウム及びクロムのうちの1つを含む組成を有する第2の層(240)を前記第1の層(230)上に堆積させる工程(140)を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
チタン、アルミニウム、ケイ素、窒素及び酸素からなる組成を有する第3の層(250)を前記熱吸収材(200)の最上層として堆積させる工程(150)を更に含む、請求項4又は5に記載の方法。
前記第1の層(230)、前記第2の層(240)、又は前記第3の層(250)を、マグネトロンスパッタリングプロセス、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングプロセス、原子層堆積プロセス、パルスレーザー堆積プロセス又は物理的強化化学蒸着プロセスによって前記基板(220)上に堆積させる、請求項6又は7に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
プラスチック基板又は金属基板上への真空蒸着技法によって作製される熱吸収材コーティングは、操作温度での熱放出が低いことに加えてその太陽光吸収性が高いことによって、広範な潜在的用途を有する。同時に、このコーティングは、基板上への良好な付着性、高い硬度、及び耐腐食性を有する。
【0003】
熱吸収材コーティングは、文献において広く言及されており、主に太陽熱放射から熱エネルギーを回収する産業用途において使用されており、例えば、このコーティングを、太陽光吸収要素に組み込まれる管状の又は平坦な基板上に堆積させる。
【0004】
太陽光吸収要素の典型的な操作温度は、家庭用途に見出されるような低温収集器における約100℃から、プロセス熱の生成に関する収集要素における200℃〜500℃、電気エネルギー生成のためのソーラータワーにおける最大で1200℃までの範囲である。
【0005】
コーティングは、単純な黒色有機塗料、一体型の(monolithic)金属コーティング、セラミックコーティング若しくは有機コーティング、又は多層型光学積層体であり得る。コーティングの光学性能は、太陽熱放射に関連する波長範囲におけるコーティングの吸光度α、及び操作温度での黒体放射に関連する波長範囲における放射熱放出率(radiative thermal emission)εによって表される。最良の光学性能は、多層型光学積層体によって達成される。多層積層体は、200℃未満の温度で92%を超えるαの値及び10%未満のεの値を有し得る(一体型のコーティングは典型的には、10%を超える放出率の値を示す)。
【0006】
市販されている多層積層体の一例は、チタン及び窒素を有する層(TiN)、チタン、窒素及び酸素を有する層(TiN
xO
y)、並びにケイ素及び酸素を有する層(SiO
x)からなる。前述の層組成を有するこの多層積層体は、最大で200℃の最大操作温度を用いた場合に95%を超えるα及び5%未満のεの値を達成すると言われている。主に太陽光吸収要素の操作温度を拡大させその耐用年数を延長させようと試みる他の解決策は、上で言及されるコーティングにおける金属をクロム、アルミニウム、ニオブ、並びにアルミニウム及びチタンの組成物(AlTi)に置き換えた、非常に類似するコーティング組成を示すが、これらのコーティングの光学性能は改善していない。
【0007】
コーティングは、一般的に3つの基本的なプロセスによって分解する。雰囲気由来の酸素又は他の腐食性元素が、コーティングの最上層を腐食し、又は第2若しくは第3のコーティング層に浸透し、層の脱色を引き起こし、概してαの低減及びεの増大をもたらす。第2に、基板材料由来の元素が、特に銅基板の場合に、コーティング中に拡散し、脱色を更に引き起こす。第3に、熱吸収材コーティングの耐用年数の間に、かかるコーティングが、コーティングを有する製品の完全な故障をもたらすコーティングの付着性の喪失及び破砕を引き起こす可能性がある多数の熱サイクルに曝露される。第3の分解プロセスは、言うまでもなく、上で言及されるプロセスによって加速される。
【0008】
これらの前述の欠点によって、既存の熱吸収材の有用性が顕著に制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、上で言及された欠点を取り除くこと、及び熱吸収材の耐用年数を延ばし、操作温度を拡大させる熱吸収材コーティングの組成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、請求項1に記載の方法、請求項10に記載の熱吸収材、及び請求項11に記載の太陽熱収集器を提供することによって達成される。
【0011】
本発明の1つの実施の形態は、請求項1に記載の方法に関する。
【0012】
加えて、本発明の1つの実施の形態は、請求項10に記載の熱吸収材に関する。
【0013】
さらに、本発明の1つの実施の形態は、請求項11に記載の太陽熱収集器に関する。
【0014】
本発明の更なる実施の形態は、従属請求項に規定される。
【0015】
本発明の1つの実施の形態によれば、熱吸収材を提供する方法は、チタン、アルミニウム、窒素、並びに以下の元素:ケイ素、イットリウム、セリウム及びクロムのうちの少なくとも1つを含む組成を有する第1の層を基板上に堆積させる工程を含む。
【0016】
「熱吸収材(thermal absorber)」という用語は、少なくともコーティングを含む吸収要素を表し、これは、熱放射、特に太陽熱放射を吸収するために使用される。
【0017】
「基板(substrate)」という用語は、熱吸収材コーティングが付与される任意の基板を表す。基板は、金属基板であっても又は非金属基板であってもよく、基板は、例えばアルミニウム、銅、ステンレス鋼又はプラスチックであってもよい。
【0018】
本発明の1つの実施の形態によれば、基板上に堆積した第1の層を含む熱吸収材であって、この第1の層が、チタン、アルミニウム、窒素、並びに以下の元素:ケイ素、イットリウム、セリウム及びクロムのうちの少なくとも1つを含む組成を有する熱吸収材が提供される。
【0019】
本発明の1つの実施の形態によれば、基板上に堆積した第1の層を含む熱吸収材を含む太陽熱収集器であって、この第1の層が、チタン、アルミニウム、窒素、並びに以下の元素:ケイ素、イットリウム、セリウム及びクロムのうちの少なくとも1つを含む組成を有する、太陽熱収集器が提供される。太陽熱収集器は、例えば、平板収集器、真空管収集器、又は放物面状のトラフ(trough)若しくはディッシュであり得る。
【0020】
本発明の実施の形態による熱吸収材コーティングは、多層型光学積層体のコーティング組成を改善させて、大気条件において600℃もの高さの適用温度で20年を上回る耐用年数の延長を確実なものとする。耐用年数の改善及び操作温度範囲の拡大は、基板付近の層、すなわち最初に堆積させる層及び2番目に堆積させる層のナノ構造、並びに最後の層として堆積させる最上層の不活性によって実現される。
【0021】
また、本発明の実施の形態による熱吸収材コーティングは、熱生成プロセスに必要とされる優れた光学性能を有する多層コーティングに対して、熱安定性及び環境安定性を付与する。光学特性は、200℃未満の温度で95%を超えるαの値及び5%未満のεの値に達することができ、コーティングは、その期待される耐用年数の間、付着性を喪失することなく、室温と適用温度(先に言及されたように最大で600℃)との間の20000回を超える熱サイクルに耐える。この10年〜20年の時間枠内の脱色は、吸光度の変動Δα、及び適用温度での光学発光(optical emission)の変動Δεによって、Δα+0.5×Δε<5%と記載することができる。
【0022】
「含む(to comprise)」という動詞は本明細書においては、記載されていない特質の存在を排除することも、またその存在を必要とすることもない開放的な限定として使用される。「含む(to include)」及び「有する(to have/has)」という動詞は、「含む(to comprise)」と同様に定義される。
【0023】
不定冠詞("a"、 "an")及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書で使用される場合、「1つ以上」と定義され、「複数」という用語は、「2つ以上」と定義される。
【0024】
「別の」という用語は、本明細書で使用される場合、「少なくとも第2の又はそれ以上の」と定義される。
【0025】
「又は」という用語は、他の内容が明示されない限り、「及び/又は」を含む意味で包括的に利用される。
【0026】
上で言及される定義される動詞及び用語に関して、特許請求の範囲又は本明細書中のその他の箇所において異なる定義が示されない限り、これらの定義を適用するものとする。
【0027】
最後に、従属請求項に記載される特質は、他の内容が明示されない限り、相互に自由に組み合わせることが可能である。
【0028】
次に、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の実施形態による多層熱吸収材、特にそのコーティングを提供する方法100を説明するフローチャートを例示する。
【0031】
工程110における方法の開始時に、層堆積プロセスに利用される真空蒸着チャンバー及び必要な材料及び設備をセットする。引き続き、工程120において、金属基板又は非金属基板を、機械的に及び/又は化学的に清浄して、熱吸収材コーティングを基板上に堆積させることが可能となる。当然、これらの工程110及び工程120を、反対の順序で行ってもよく、又は一緒に行なってもよい。
【0032】
工程130において、第1の層を基板の表面上に直接堆積させ、堆積時の典型的な基板温度は、例えば90℃〜450℃である。加えて、堆積プロセス時に、基板を、−50V〜−150Vの負の極性化(negative polarisation)に供することができる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される方法であって、コーティングの第1の層を基板の最上部に直接堆積させる方法が提供される。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される熱吸収材であって、コーティングの第1の層を基板の最上部に直接堆積させる熱吸収材が提供される。
【0035】
層厚が10nm〜600nmである堆積させた第1の層は、チタン、アルミニウム、ケイ素及び窒素を含み((Ti
xAl
ySi
z)N
a)、この層を、真空において、例えば堆積させる層の組成と類似の組成を有する基板からのマグネトロンスパッタリングによって、又は窒素を含有する反応性雰囲気における3つの純粋な元素ターゲットからの同時スパッタリングによって堆積させる。代替的には、イットリウム、セリウム又はクロムを、ケイ素の代わりに使用することができる。添字x、y、z及びaは、並びに後出の添字bも、コーティング層の化学量論的組成又は非化学量論的組成を示す。x、y、z及びaの値は、例えばそれぞれ0.4、0.5、0.1及び1.0であり得る。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される方法であって、第1の層の組成が、(Ti
xAl
ySi
z)N
a(式中、xの値は典型的には0.3〜0.5であり、yの値は0.3〜0.6であり、zの値は0.03〜0.2であり、aの値は0.9〜1.1である)を含む方法が提供される。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される熱吸収材であって、第1の層の組成が、(Ti
xAl
ySi
z)N
a(式中、xの値は典型的には0.3〜0.5であり、yの値は0.3〜0.6であり、zの値は0.03〜0.2であり、aの値は0.9〜1.1である)を含む熱吸収材が提供される。
【0038】
この第1の層の機能は、入射光を吸収すること、環境ガスによる基板の腐食を防止すること、及び基板からコーティング中への元素の拡散を防止することである。
【0039】
その定義又は名称に関わらず、「第1の」層は、基板上に最初に堆積させる層である必要はなく、例えば上で記載される組成を有し、基板の表面上に付与される1つ又は複数の他の層の上に堆積させる層であってもよい。
【0040】
第1の層が基板上に存在すると、工程140において、コーティングの第2の層を第1の層の表面上に堆積させる。第2の層は、チタン、アルミニウム、ケイ素、窒素及び酸素を含む。代替的には、イットリウム、セリウム又はクロムをケイ素の代わりに使用することができる。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される方法は、チタン、アルミニウム、窒素、酸素、並びに以下の元素:ケイ素、イットリウム、セリウム及びクロムのうちの1つを含む組成を有するコーティングの第2の層を第1の層上に堆積させる工程を含む。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される熱吸収材は、チタン、アルミニウム、窒素、酸素、並びに以下の元素:ケイ素、イットリウム、セリウム及びクロムのうちの1つを含む組成を有する、第1の層上に堆積したコーティングの第2の層を含む。
【0043】
層厚が10nm〜150nmである第2の層は、チタン、アルミニウム、ケイ素、窒素及び酸素を含む((Ti
xAl
ySi
z)N
aO
b)。堆積プロセス時の典型的な基板温度は、例えば90℃〜450℃である。層は、例えば堆積させる第2の層の組成と類似の組成を有するターゲットからのマグネトロンスパッタリングによって、又は窒素及び酸素を含有する反応性雰囲気における2つ若しくは3つの金属合金ターゲットからの同時スパッタリングによって堆積させる。この第2の層の機能は、入射光を一部吸収すること、及び選択される波長での干渉を強化することである。
【0044】
一実施形態では、x、y、z、a及びbの値は、例えばそれぞれ0.4、0.5、0.1、0.8及び0.3であり得る。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される方法であって、第1の層の最上部に直接堆積させる第2の層の組成が、(Ti
xAl
ySi
z)N
aO
b(式中、xの値は0.3〜0.5であり、yの値は0.3〜0.6であり、zの値は0.03〜0.2であり、aの値は0.2〜0.8であり、bの値は0.2〜0.8である)を含む方法が提供される。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される熱吸収材であって、第1の層の最上部に直接堆積させる第2の層の組成が、(Ti
xAl
ySi
z)N
aO
b(式中、xの値は0.3〜0.5であり、yの値は0.3〜0.6であり、zの値は0.03〜0.2であり、aの値は0.2〜0.8であり、bの値は0.2〜0.8である)を含む熱吸収材が提供される。
【0047】
引き続き、工程150において、コーティングの最上層を、第2の層の表面上に堆積させる。この層の厚みは50nm〜250nmであり、この層は、チタン、アルミニウム、ケイ素、窒素及び酸素を含む。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される方法は、チタン、アルミニウム、ケイ素、窒素及び酸素を含む組成を有するコーティングの第3の層を、熱吸収材コーティングの最上層として堆積させる工程を含む。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される熱吸収材は、チタン、アルミニウム、ケイ素、窒素及び酸素を含む組成を有するコーティングの第3の層を含み、この第3の層を熱吸収材コーティングの最上層として堆積させる。
【0050】
最上層の堆積プロセス時の典型的な基板温度は、例えば室温〜450℃である。最上層は、例えば堆積させる最上層の組成と類似の組成を有する基板からのマグネトロンスパッタリングによって、又は窒素及び酸素を含有する反応性雰囲気における複数の純粋な元素ターゲットからの同時スパッタリングによって堆積させる。第3の層の機能は、光学多層積層体における反射防止層として働くことであり、第3の層は、環境ガスからコーティングを隔離することができる。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される方法であって、第2の層の最上部に直接堆積させる第3の層の組成が、(Ti
xAl
ySi
z)N
aO
b(式中、xの値は0〜0.2であり、yの値は0〜0.2であり、zの値は0〜1であり、aの値は0〜2であり、bの値は0〜2である)を含む方法が提供される。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される熱吸収材であって、第2の層の最上部に直接堆積させる第3の層の組成が、(Ti
xAl
ySi
z)N
aO
b(式中、xの値は0〜0.2であり、yの値は0〜0.2であり、zの値は0〜1であり、aの値は0〜2であり、bの値は0〜2である)を含む熱吸収材が提供される。
【0053】
層は、物理的蒸着プロセスによって、例えば従来のマグネトロンスパッタリング、高出力インパルスマグネトロンスパッタリング、原子層堆積、パルスレーザー堆積又は物理的強化化学蒸着を使用することによって、基板上に堆積させる。各層に対して同じ技法を使用する必要はなく、層の一部をあるプロセスを使用することによって堆積させ、他の層(複数も可)を他のプロセスを用いて堆積させることも可能である。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される方法であって、第1の層、第2の層、又は第3の層を、マグネトロンスパッタリングプロセス、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングプロセス、原子層堆積プロセス、パルスレーザー堆積プロセス又は物理的強化化学蒸着プロセスによって基板上に堆積させる方法が提供される。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される熱吸収材であって、第1の層、第2の層、又は第3の層を、マグネトロンスパッタリングプロセス、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングプロセス、原子層堆積プロセス、パルスレーザー堆積プロセス又は物理的強化化学蒸着プロセスによって基板上に堆積させる熱吸収材が提供される。
【0056】
最後に、堆積プロセスが終了すると、基板及び付与されたコーティングを含む吸収材が堆積チャンバー及び装置から取り出され、方法100は工程160で終了する。
【0057】
図2に、基板220上の熱吸収材コーティング210の断面図を例示する。多層光学コーティング構造200は、光を吸収し、基板220からコーティング210への及び環境から上記基板220への元素の拡散を妨げるために基板の表面に直接堆積させる第1の層230を含む。第2の層240を、入射光を一部吸収し、選択される波長での干渉を強化するために第1の層230上に堆積させる。コーティングの最上層としての第3の層250を、環境ガスからコーティング210を部分的に隔離し、反射防止層として働く第2の層240上に付与する。基板の腐食を防止する第1の層となるように熱吸収材を設計することが可能であり、又は、代替的には、第3の層250が基板の腐食の防止をもたらすように熱吸収材を設計することができる。
【0058】
図3は、金属基板又は非金属基板上に堆積させる第1の層310のナノ構造を示し、層310のこの組成はチタン、アルミニウム、ケイ素及び窒素を含み、層310は拡散障壁として働く。
【0059】
例えばマグネトロンスパッタリングによって真空において堆積させた第1の層310は、Si
3N
4マトリクス330中にTiAlSiN微結晶320が分散している高密度構造を含む。高い硬度を特徴とする第1の層310は、ほとんどの外来元素による非常に低い拡散性及び高い吸光度を示す。層310の機能は、先に言及されたように、入射光を吸収し、基板からコーティングへの又は環境から基板への元素の拡散を妨げることである。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される方法であって、第1の層の組成が無定形マトリクスを形成するSi
3N
4を伴うTiAlN微結晶を含み、第1の層が基板の元素に対する拡散障壁をもたらす方法が提供される。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される熱吸収材であって、第1の層の組成が無定形マトリクスを形成するSi
3N
4を伴うTiAlN微結晶を含み、第1の層が基板の元素に対する拡散障壁をもたらす熱吸収材が提供される。
【0062】
本発明の一実施形態では、使用される基板は、平坦な又は曲がった銅、アルミニウム若しくはステンレス鋼のホイル、又は銅、アルミニウム若しくはステンレス鋼の管である。コーティングプロセスの前に金属基板を機械的に及び/又は化学的に清浄する。第1の層の堆積は、200℃〜350℃の温度での真空における純粋な元素ターゲットからの反応性雰囲気におけるマグネトロンスパッタリングによって行う。得られる第1のTi
xAl
ySi
zN
a層は、10nm〜100nmの層厚、及び組成においてxの値が0.44であり、yの値が0.44であり、zの値が0.12であり、aの値が1.0である組成を有する。第2の層及び第3の層もマグネトロンスパッタリングによって堆積させ、第2の層の厚みは10nm〜150nmであり、第3の層の厚みは80nm〜250nmである。
【0063】
本発明の別の実施形態では、基板は、平坦な又は曲がった銅若しくはステンレス鋼のホイル、又は銅若しくはステンレス鋼の管を含む。コーティングの前に金属基板を同様に機械的に及び/又は化学的に清浄する。コーティング層を、その厚みを200nm〜800nmとする以外は、前述の実施形態と同様に真空において堆積させる。得られるTi
xAl
ySi
zN
a層は、10nm〜100nmの層厚、及び組成においてxの値が0.24であり、yの値が0.64であり、zの値が0.12であり、aの値が1.0である組成を有する。第1のコーティング層を選択された基板上に堆積させた後、コーティングした基板を、750℃〜900℃の温度で5分〜300分の期間、酸素が豊富な制御された雰囲気に曝露する。三次元の基板に適用可能な単純かつ経済的な手順であるこの熱処理時に、2つの更なる層、すなわち第2の層及び第3の層を形成する。第2の層は、第1の層から第3の(最上部)層までの窒素含有量の漸減を示す変換層である。この漸減は、第1の層から第3の層までの酸素含有量の漸増とともに起こる。同時に、第1の層と比較して層の金属含有量が変化する。第3の層は、相対的にAl
2O
3が豊富な非常に高密度の誘電酸化物を含む。
【0064】
熱処理した吸収材コーティング内の元素組成分布の一般的な傾向を、
図4に示す。3つの層を含む完全な積層体が、個々の層の間において連続的に遷移する以外は、
図1及び
図2に例示される多層積層体と類似の組成を有する。横軸は、コーティングの最上部の表面から開始して基板の表面までの吸収材コーティングを記載し、縦軸は、層の内部の組成分布を規定する。
【0065】
さらに、本発明の別の実施形態では、基板は、コーティングプロセスの前に機械的に及び/又は化学的に清浄される、平坦な又は曲がったプラスチックホイル又はプラスチック管である。この実施形態における第1の層の厚みは50nm〜100nmであり、組成におけるzの値は0.05〜0.01である。堆積温度は90℃が選択され、第2の層及び第3の層を、第2の層の厚みが50nm〜150nmとなり、第3の層の厚みが100nm〜200nmとなるようにマグネトロンスパッタリングによって堆積させる。各層の堆積時に、基板を、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングによって達成することができる付加的な又は固有のイオン衝撃に曝露する。
【0066】
一例として、
図5は、太陽熱放射を収集及び吸収するように構成される太陽熱収集器500の断面を示す。太陽熱収集器500は、本発明の一実施形態による吸収材コーティングからなる熱吸収材510を含む。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される太陽熱収集器であって、コーティングの第1の層を基板の最上部に直接堆積させる太陽熱収集器が提供される。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される太陽熱収集器であって、第1の層の組成が、(Ti
xAl
ySi
z)N
a(式中、xの値は0.3〜0.5であり、yの値は0.3〜0.6であり、zの値は0.03〜0.2であり、aの値は0.9〜1.1である)を含む太陽熱収集器が提供される。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される太陽熱収集器であって、第1の層の組成が、無定形マトリクスを形成するSi
3N
4を伴うTiAlN微結晶を含み、第1の層が基板の元素に対する拡散障壁をもたらす太陽熱収集器が提供される。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される太陽熱収集器は、チタン、アルミニウム、窒素、酸素、並びに以下の元素:ケイ素、イットリウム、セリウム及びクロムのうちの1つを含む組成を有する、第1の層上に堆積したコーティングの第2の層を含む。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される太陽熱収集器であって、第1の層の最上部に直接堆積させる第2の層の組成が、(Ti
xAl
ySi
z)N
aO
b(式中、xの値は0.3〜0.5であり、yの値は0.3〜0.6であり、zの値は0.03〜0.2であり、aの値は0.2〜0.8であり、bの値は0.2〜0.8である)を含む太陽熱収集器が提供される。
【0072】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される太陽熱収集器は、チタン、アルミニウム、ケイ素、窒素及び酸素を含む組成を有するコーティングの第3の層を含み、この第3の層を熱吸収材の最上層として堆積させる。
【0073】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される太陽熱収集器であって、第2の層の最上部に直接堆積させる第3の層の組成が、(Ti
xAl
ySi
z)N
aO
b(式中、xの値は0〜0.2であり、yの値は0〜0.2であり、zの値は0〜1であり、aの値は0〜2であり、bの値は0〜2である)を含む太陽熱収集器が提供される。
【0074】
本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれかに開示される太陽熱収集器であって、第1の層、第2の層、又は第3の層を、マグネトロンスパッタリングプロセス、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングプロセス、原子層堆積プロセス、パルスレーザー堆積プロセス又は物理的強化化学蒸着プロセスによって基板上に堆積させる太陽熱収集器が提供される。
【0075】
平板型収集器500は、太陽熱放射を吸収要素510へと通過させ、吸収要素510からの熱損失を低減させるように構成される、例えばガラス又はポリカーボネートから作製される透明カバー520、及び収集器フレーム530を含む。カバー520及びフレーム530は上記吸収要素510及び吸収要素510と連結された管540(その中を、熱輸送流体、例えば空気、水又は不凍剤が、吸収された熱を吸収要素510から取り除くように流れる)を保護する。熱輸送流体は、管540を通って循環し、得られた熱が、水が管540内を流れる場合には水タンクへと直接輸送する。太陽熱収集器500の底部では、更に断熱材550が管540の下に存在する。
【0076】
今回、本発明を上で前述の実施形態を参照して説明し、本発明の複数の利点を実証した。本発明が、これらの実施形態に限定されないのみならず、考えられる本発明の精神及び範囲並びに特許請求の範囲内の全ての考え得る実施形態も含むことは明らかである。