(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書及び本発明の特徴及び実施形態を示す添付図は制限的であると捉えるべきではない。種々の機械的、構成的、構造的、電気的及び動作的変更が、本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく行われることが可能である。一部の実施例においては、知られている回路、構造及び技術は、本発明を分かり難くしないように、詳細には記載及び図示されていない。2つ又はそれ以上の図における同じ参照番号は、同じ又は類似する要素を表している。
【0022】
更に、本明細書の用語は、本発明を制限するように意図されていない。例えば、空間に関連する用語、例えば、“下に”、“下方に”、“より下に”、“より上に”、“上方に”、“近位に”、“遠位に”などは、図に示しているように他の要素又は特徴に対する1つの要素又は特徴の関連性を表すように用いられ得る。それらの空間に関連する用語は、図に示している位置及び方位に加えて、使用中の又は動作中の装置の異なる位置及び方位を含むように意図されている。例えば、図中の装置が入れ替えられる場合、他の要素又は特徴の“下方に”又は“下に”あるとして表される要素又は特徴は、その場合、他の要素又は特徴の“上方に”又は“上に”ある。従って、例示としての用語“下方に”は、“上方に”及び“下方に”の位置及び方位の両方を含み得る。装置はまた、方位付けられる(90°又は他の方位に回転される)ことが可能であり、本明細書で用いられている空間に関連する記述子は、それに応じて解釈される。同様に、種々の軸に沿った又は種々の軸の周囲の運動の記述は、種々の特定の装置の位置及び方位を含む。更に、単数表現は、そのコンテキストが別のように示していない限り、複数形も含むように意図されている。用語“から構成される”、“から成る”、“を有する”などの用語は、記載されている特徴、ステップ、動作、要素及び/又は構成要素を特定するが、1つ又はそれ以上の他の特徴、ステップ、動作、要素及び/又は構成要素の存在又は付加を排除しない。組み合わされて表現されている複数の構成要素は、電気的に又は機械的に直接結合されることが可能であり、又は、それらは、1つ又はそれ以上の中間構成要素を介して間接的に結合されることが可能である。
【0023】
一実施例においては、用語“近位の”又は“近位に”は一般に、システム動作の運動学的連鎖に沿った運動の遠隔中心(又は外科手術部位)から遠く離れた、又はシステム動作の運動学的連鎖に沿ったマニピュレータアームベースに近接するオブジェクト又は要素を表現するように用いられる。同様に、用語“遠位の”又は“遠位に”は一般に、システム動作の運動学的連鎖に沿った運動の遠隔中心(又は外科手術部位)に近接する、又はシステム動作の運動学的連鎖に沿ったマニピュレータアームベースから遠く離れたオブジェクト又は要素を表現するように用いられる。
【0024】
ロボットスレーブ装置を制御し、作業部位で作業を実行するように、マスター装置でオペレータの入力を用いることが知られている。そのようなシステムは、遠隔オペレーションシステム、遠隔操作システム又は遠隔ロボットシステムなど、種々呼称されている。一種類の遠隔操作システムは作業部位に存在する認知をオペレータに与え、そのようなシステムは、例えば、テレプレゼンスシステムと呼ばれている。米国カリフォルニア州サニーベール市のIntuitive Surgical,Inc.により商品化されているda Vinci(登録商標)外科手術システムは、テレプレゼンスを有する遠隔操作システムの例である。そのような外科手術システムのためのテレプレセンスの基本については、米国特許第6,574,355号明細書(2001年5月21日出願)に開示されていて、それは本明細書において参考により援用される。遠隔操作外科手術システム(テレプレゼンスの特徴の有無に拘わらず)は遠隔外科手術システムと称せられる。
【0025】
種々の特徴及び例示としての実施形態について下記の図及び記載を繰り返すことを回避するように、多くの特徴は多くの側面及び実施形態に対して共通であることが理解される必要がある。記載又は図における側面の省略は、その側面が、その側面を組み込む実施形態から欠けていることを意味するものではない。そうではなく、そのような側面は、明確さのために及び冗漫な記載を回避するように、省略され得るものである。従って、1つの図示されている及び/又は記載されている実施形態を参照して記載している側面は、そうすることが実行不可能でない場合には、図示されている及び/又は記載されている他の実施形態と共に存在する並びにそれらに適用されることが可能である。
【0026】
従って、複数の一般的な側面は下記の種々の記載に適用される。種々の外科手術用器具、ガイドチューブ及び器具アセンブリが本明細書において適用可能であり、それらについては、米国特許出願第11/762,165号明細書(2007年6月13日出願、米国特許出願公開第2008/0065105A1号明細書)にさらに記載されていて、それは本明細書において参考により援用される。外科手術用器具のみで、若しくはガイドチューブ、複数の器具及び/又は複数のガイドチューブのアセンブリが、本明細書で適用可能である。従って、種々の外科手術用器具が利用可能であり、各々の外科手術用器具は他の器具から独立して動作し、各々はエンドエフェクタを有する。一部の実施例においては、エンドエフェクタは、患者における単独のエントリポートを介して、直交空間で能動的に制御される少なくとも6自由度(すなわち、サージ、ヒーブ、スウェイ、ロール、ピッチ、ヨー)を有して、動作する。付加的なエンドエフェクタの1又はそれ以上の自由度が、例えば、把持器具又はせん断器具におけるエンドエフェクタの顎運動に適用されることが可能である。
【0027】
例えば、少なくとも1つの外科手術エンドエフェクタが、複数の図に示されている又は表現されている。エンドエフェクタは、特定の外科手術機能(例えば、鉗子/把持器、持針器、はさみ、電気メスフック、ステープラ、クリップアプライヤ/レムーバなど)を実行する最小侵襲性外科手術器具又はアセンブリの部品である。多くのエンドエフェクタ自体は1自由度(例えば、開く及び閉じる把持器)を有する。エンドエフェクタは、例えば、“手首”型機構などの付加的な1又はそれ以上の自由度を提供する機構を有する外科手術器具本体に連結されることが可能である。そのような機構の例は、米国特許第6,371,952号明細書(1999年6月28日出願、Madhani等による)及び米国特許第6,817,974号明細書(2002年6月28日出願、Cooper等による)に示されていて、それらの両方は本明細書において参考により援用され、da Vinci(登録商標)Surgical Systemsのための8mm及び5mmの器具の両方で用いられる種々のIntuitive Surgical、Inc.のEndowrist(登録商標)機構として知られている。本明細書で記載している外科手術器具はエンドエフェクタを有するが、一部の特徴においては、エンドエフェクタは省略され得ることが理解される必要がある。例えば、器具本体シャフトのブラント遠位先端は、組織を収縮するように用いられることが可能である。他の例としては、吸引動作又は灌注動作が、本体シャフト又は手首機構の遠位先端に存在し得る。それらの特徴においては、エンドエフェクタを位置決め及び方向付けするという記載は、エンドエフェクタを有しない外科手術用器具の先端を位置決め及び方向付けすることを含むと、理解される必要がある。例えば、エンドエフェクタの先端のための基準フレームに対応する記載は、エンドエフェクタを有しない外科手術用器具の先端の基準フレームを有するように、読み取られる必要がある。
【0028】
本明細書全体に亘って、エンドエフェクタが図示又は記載されている(その装置は“カメラ器具”とみなされ得る)ところであればどこでも、モノ(mono)又は立体撮像システム/画像取り込み部品/カメラ装置は、器具の遠位端に位置することが可能であり、又は、何れかのガイドチューブ又は他の器具アセンブリ要素の近位に又は遠位端に位置することが可能である。従って、本明細書で用いている用語“撮像システム”などは、記載されている特徴及び実施形態の範囲内で、画像取り込み部品、並びに関連する回路及びハードウェアと画像取り込み部品の組み合わせの両方を含むように広く解釈される必要がある。そのような内視鏡撮像システム(例えば、可視光、赤外線、超音波など)は、身体の外部に対して有線又は無線接続を介して取り込まれた画像データを中継する、遠位に位置付けられた画像検知チップ及び関連回路を有するシステムを有する。そのような内視鏡撮像システムは、身体の外側で取り込まれた画像を中継するシステムも有する(例えば、ロッドレンズ又は光ファイバを用いることにより)。一部の器具又は器具アセンブリにおいては、直視光学系(内視鏡画像が接眼部で直視される)を用いることが可能である。遠位に位置付けられた半導体立体撮像システムの例については、米国特許出願第11/614,661号明細書(“Stereoscopic Endscope”という名称で、Shafer等によるものであり、2006年12月21日に出願された)に開示されていて、それは本明細書において参考により援用される。知られている内視鏡撮像システムの構成要素、例えば、電気的照明接続及び光ファイバ照明接続は、明確化のために、省略する又は象徴的に表される。内視鏡撮像のための照明は典型的には、単独の照明ポートで図中に表される。そのような表現は例示であることが、理解される必要がある。照明ポートの大きさ、位置及び数は変更し得る。照明ポートは典型的には、濃い影を最小化するように、撮像開口の複数の側部に配列される、又は撮像開口を完全に取り囲む。
【0029】
本明細書においては、外科手術用器具又はガイドチューブが患者の組織をこすらないように、カニューレが典型的に用いられる。カニューレは、切開及び自然開口の両方で用いられ得る。器具又はガイドチューブが挿入(長手方向)軸に対して頻繁に平行移動又は回転しない状況下では、カニューレを用いなくてもよい。送気を必要とする状況下では、カニューレは、器具又はガイドチューブを過ぎての過剰な送気ガスのリークを回避するように、シールを有することが可能である。手術部位で送気ガスを必要とする送気及び手順を支援するカニューレアセンブリの例については、米国特許出願第12/705,439号明細書(“Entry Guide for Multiple Instruments in a Single Port System”という名称で、2010年2月12日に出願された)に記載されていて、該出願の全開示は、全ての目的のために、本明細書において参考により援用される。送気を必要としない胸部の外科手術については、カニューレのシールは含まれなくてよく、しかも、器具又はガイドチューブの挿入軸の動きが最小である場合、カニューレ自体、含まれなくてよい。固いガイドチューブが、該ガイドチューブに対して挿入される器具のための一部の構成においては、カニューレとして機能し得る。カニューレ及びガイドチューブは、例えば、スチール又は押し出しプラスチックから成ることが可能である。スチールより安価なプラスチックは、一回使用のために適切である。
【0030】
フレキシブルな外科手術器具及びガイドチューブの種々の例及びアセンブリについては、上記の米国特許出願第11/762,165号明細書に図示され且つ記載されている。この文献に記載されているそのようなフレキシビリティは、種々の方法で達成される。例えば、器具又はガイドチューブのセグメントは、連続的に曲がったフレキシブルな構造、例えば、螺旋巻き状コイル又は種々の除去部分(例えば、引目状切り口)を有するチューブに基づく構造であることが可能である。又は、そのフレキシブルな部分は、へびの様相を呈する連続的に曲げられた構造を提供する、一連の短く、枢動可能に接続されるセグメント(椎骨状のもの)から成ることが可能である。器具及びガイドチューブの構造については、米国特許出願公開第2004/0138700号明細書(Cooper等によるものであり、2003年12月2日に出願された)に記載されていて、それは本明細書において参考により援用される。明確化のために、その文献における図及び関連の記載は一般に、近位(伝達機構に近く、手術部位から遠い)及び遠位(伝達機構から遠く、手術部位に近い)と称せられる、器具及びガイドチューブの2つのセグメントのみを表している。器具及びガイドチューブは3つ又はそれ以上のセグメントに分割され得、各々のセグメントは固い、受動的にフレキシブルである、又は能動的にフレキシブルである。遠位のセグメント、近位のセグメント又は全体的な機構についての上記のフレキシビリティ及び曲げ性は、明確化のために省略されている中間セグメントにも適用可能である。例えば、近位セグメントと遠位セグメントとの間の中間セグメントは、単独曲線状に又は複合曲線状に曲がることが可能である。フレキシブルなセグメントは種々の長さであることが可能である。より小さい外側直径を有するセグメントは、より小さい最小の曲率半径を有することが可能である一方、より大きい外側直径を有するセグメントより曲げ性が大きい。ケーブルが制御されるシステムについては、許容できない高いケーブル摩擦又はケーブル結束が、最小の曲率半径及び曲げるときの全屈曲角度を制約する。ガイドチューブ(又は、何れかのジョイント)の最小の屈曲角度は、そのガイドチューブがねじれない、又は内側の外科手術用器具の機構のスムーズな動きを阻害するようなものである。フレキシブルな構成要素は、例えば、最大で、長さが略4フィートであり得、直径が略0.6インチであり得る。特定の機構のための、他の長さ及び直径(例えば、より短い、より小さい)並びにフレキシビリティの度合いは、その機構が設計された対象の生体組織により決定され得る。 一部の実施例においては、器具又はガイドチューブの遠位セグメントのみがフレキシブルであり、近位セグメントは固い。他の実施例においては、患者の内部にある器具又はガイドチューブの全体的なセグメントがフレキシブルである。更に他の例においては、最遠位セグメントは固いことが可能であり、1つ又はそれ以上の他の近位セグメントはフレキシブルであることが可能である。それらのフレキシブルなセグメントは受動的に制御可能である、又は能動的に制御可能(操縦可能)である。そのような能動的制御は、例えば、複数の対向するケーブルの複数のセット(例えば、1つのセットは“ピッチ”を制御し、直交するセットは“ヨー”を制御し、3本のケーブルが類似する動作をするように用いられる)を用いて、行われ得る。他の制御要素、例えば、小さい電動アクチュエータ又は磁気アクチュエータ、形状記憶合金、電気活性ポリマー(人工筋肉)、空気圧又は油圧ベローズ又はピストンなどが用いられることが可能である。器具又はガイドチューブのセグメントが完全に又は一部が他のガイドチューブの内側にある実施例においては、受動的フレキシビリティ及び能動的フレキシビリティの種々の組み合わせが存在し得る。例えば、受動的フレキシブルガイドチューブの内側の能動的フレキシブル器具は、取り囲んでいるガイドチューブを撓めるのに十分な横方向の力を作用させ得る。同様に、能動的フレキシブルガイドチューブは、その内側の受動的フレキシブル器具を撓め得る。ガイドチューブ及び器具の能動的フレキシブルセグメントは協調して作用し得る。フレキシブルな器具及びガイドチューブ並びに固い器具及びガイドチューブの両方については、長手方向中心軸から離れて位置付けられた制御ケーブルは、種々の設計におけるコンプライアンス考慮に応じて、長手方向中心軸に近接して位置付けられたケーブルに対して機械的アドバンテージを与え得る。
【0031】
フレキシブルなセグメントのコンプライアンス(剛性)は、略完全な弛緩性(わずかな内部摩擦は存在する)から実質的な硬性まで変わり得る。一部の特徴においては、そのコンプライアンスは制御可能である。例えば、器具又はガイドチューブのフレキシブルなセグメントの一部又は全部は実質的に(即ち、効果的にではあるが究極的にではなく)固い(セグメントは“剛体化可能”又は“ロック可能”である)。ロック可能なセグメントは、直線形、単純曲線状又は複合曲線状にロックされることが可能である。ロッキングは、隣接する椎骨形状構造が動かなくなる摩擦をもたらすのに十分である器具又はガイドチューブに沿って長手方向に移動する1つ又はそれ以上のケーブルに張力を加えることにより、達成され得る。1つのケーブル又は複数のケーブルが、各々の椎骨形状構造における大きい、中央の穴を通って移動することが可能であり、又は、椎骨形状構造の外周近傍の小さい穴を通って移動することが可能である。それに代えて、1つ又はそれ以上の制御ケーブルを動かす1つ又はそれ以上のモータの駆動要素が、適切な位置にケーブルを保持し、それにより器具又はガイドチューブが移動しないようにし、故に、適切な位置に椎骨状構造をロックするように、適切な位置に穏やかにロックされることが可能である(例えば、サーボ制御により)。適切な位置へのモータ駆動要素の保持は、適切な位置に他の移動可能な器具及びガイドチューブの構成要素も効果的に保持するように、なされ得る。サーボ制御下での剛性は、効果的であるが、ジョイントに直接位置付けられるブレーキ、例えば、適切な位置に能動的セットアップジョイントを保持するように用いられるブレーキにより得られる剛性より一般に小さいことを、理解する必要がある。ケーブルの剛性は一般に、サーボシステムの又はブレーキが掛けられたジョイントの剛性より小さいために、支配する。
【0032】
一部の状況下では、フレキシブルなセグメントのコンプライアンスは、弛緩性状態と硬性状態との間で連続的に変えられ得る。例えば、ロッキングケーブルの張力は、剛性を高くするように、しかし、硬性状態でフレキシブルなセグメントをロッキングすることなく、大きくされることが可能である。そのような中間的なコンプライアンスは、手術部位からの反応力によりもたらされる動きのために生じ得る組織の外傷を低減しつつ、遠隔手術動作を可能にする。フレキシブルなセグメントに組み込まれる適切な曲げセンサは、遠隔手術システムが器具及び/又はガイドチューブの位置を、それが曲がるときに、決定することを可能にする。米国特許出願公開第2006/0013523号明細書(Childers等によるものであり、2005年7月13日に出願された)には、光ファイバ位置形状検知装置及び方法について開示されていて、それは本明細書において参考により援用される。米国特許出願公開第11/491,384号明細書(Larkin等によるものであり、2006年7月20日に出願された)には、そのようなセグメント及びフレキシブルな装置の制御で用いられる光ファイバ曲げセンサ(例えば、ファイバブラッグ格子)について開示されていて、それは本明細書において参考により援用される。
【0033】
本明細書で記載している最小侵襲性器具アセンブリ、器具、エンドエフェクタ及びマニピュレータアーム構成の特徴を制御する外科医の入力は一般に、直感的なカメラ基準の制御インタフェースを用いて行われる。例えば、da Vinci(登録商標)Surgical Systemは、そのような制御インタフェースを有する外科医用コンソールを有し、その制御インタフェースは、本明細書で記載している特徴を制御するように改善されることが可能である。外科医は、例えば、スレーブ器具アセンブリ及び器具を制御する6自由度を有する1つ又はそれ以上のマスターマニュアル入力機構を操作する。それらの入力機構は、1つ又はそれ以上のエンドエフェクタの自由度(例えば、把持顎部を閉じる)を制御する指操作把持器を有する。直感的な制御は、外科医の入力機構及び画像出力ディスプレイの位置との、エンドエフェクタ及び内視鏡撮像システムの相対的位置を方位付けることにより、与えられる。この方位付けは、実質的に実際にその場にいて手術作業部位を見ているかのように、入力機構及びエンドエフェクタ制御を外科医が操作することを可能にする。このような遠隔操作において実際にその場にいるかのようなことは、外科医が、手術部位を直接見て作業しているオペレータの透視のように現れる透視からの画像を見ることを意味する。米国特許第6,671,581号明細書(Niemeyer等によるものであり、2002年6月5日に出願された)には、最小侵襲性手術装置におけるカメラ基準の制御に関する更なる情報が開示されていて、それは本明細書において参考により援用される。
【0034】
シングルポート外科手術システム
ここで
図1A及び1Bを参照するに、本明細書で記載されている最小侵襲性外科手術用器具、器具アセンブリ、操作システム及び制御システムの特徴を用いるロボット支援(遠隔操作)最小侵襲性外科手術システムの特徴の例示である側面図及び正面図が示されている。主な3つの構成要素は、内視鏡撮像システム102、外科医用コンソール104(マスター)及び患者側サポートシステム100(スレーブ)であり、それらのすべてが、図示されている有線接続(電気的又は光学的)又は無線接続106により相互接続されている。1つ又はそれ以上の電子データプロセッサは、システムの機能を備えるようにそれら主要な構成要素において様々に設置されることが可能である。その例については、上記の米国特許出願第11/762,165号明細書に開示されている。破線で示されている殺菌ドレープ1000は、外科手術手順中に殺菌フィールドを維持する一方、器具とその器具に関連するマニピュレータとの間を正確なインタフェースで連結して効率的で簡単な器具交換を提供するように、患者側サポートシステム100の少なくとも一部を有利に覆う。
【0035】
撮像システム102は、例えば、取り込まれた手術部位の内視鏡撮像データ及び/又は患者の外部の他の撮像システムからの透視又はリアルタイム画像データに関して画像処理機能を実行する。撮像システム102は、処理画像データ(例えば、手術部位の画像並びに関連制御情報及び患者情報)を外科医に対して外科医用コンソール104において出力する。一部の特徴においては、処理画像データは、他の操作室の担当者に可視的なオプションの外部モニタに、又はその操作室から遠く離れた1つ又はそれ以上の場所(例えば、他の場所の外科医が映像をモニタすることが可能であり、ライブ映像がトレーニングなどのために使用可能である)に、出力される。
【0036】
外科医用コンソール104は、例えば、外科医が、本明細書で記載している、外科手術器具、ガイドチューブ及び撮像システム(スレーブ)装置を操作することを可能にする、複数自由度を有する機械入力(マスター)装置を有する。それらの入力装置は、一部の特徴において、器具及び器具アセンブリ構成要素から外科医への触覚フィードバックを提供することが可能である。コンソール104は、表示スクリーンの後/下での外科医の手作業に対応する距離で、ディスプレイ上に画像が一般にフォーカシングされるように、位置付けられた立体映像出力ディスプレイも有する。それらの特徴については、米国特許第6,671,581号明細書に詳しく記載されていて、それは本明細書において参考により援用される。
【0037】
挿入中の制御は、例えば、マスターの一方又は両方を用いて画像を仮想的に移動させる外科医により行われ得、その外科医は、左右に画像を動かし、彼女自身の方にその画像を引き寄せるようにマスターを使用し、従って、出力表示における固定された中心点の方に操縦し、患者の内部に進むように、撮像システム及び関連器具アセンブリに指令するように、それらのマスターを用いる。一特徴においては、カメラコンソールは、マスターハンドルが移動されるのと同じ方向に画像が移動するようにマスターを画像に対して固定する印象を与えるように、設計されている。この設計は、外科医がカメラコンソールから抜け出るときに器具を制御する正確な位置にマスターがあるようにし、従って、器具制御を開始又は再開する前の位置にクラッチ操作する(外す)、動かす及びクラッチ解除する(関与させる)必要性を回避する。一部の特徴においては、マスターの位置は、大きいマスター作業空間を用いることを避けるように、挿入速度に比例するようにされ得る。それに代えて、外科医は、挿入のためにラチェット動作を用いるように、マスターをクラッチ操作する及びクラッチ解除することが可能である。一部の特徴においては、挿入は手動で制御され(例えば、手動式ホイールにより)、更には、自動挿入(例えば、サーボモータ駆動ローラー)が、外科手術用器具アセンブリの遠位端が手術部位の近傍にあるときに行われる。挿入軌跡のために利用可能な患者の解剖学的構造及び空間の手術前画像データ又はリアルタイム画像データ(例えば、MRIデータ、X線データ)が、挿入を支援するように用いられることが可能である。
【0038】
患者側サポートシステム100は、床置き式ベース108、又は破線で示されている天井付けベース110を有する。そのベースは移動可能である又は固定される(例えば、床、天井、壁又は操作テーブル等の他の装置に)ことが可能である。
【0039】
ベース108は、受動的非制御“セットアップ”部分及び能動的制御“マニピュレータ”部分を有するアームアセンブリを支持する。一実施例においては、そのセットアップ部分は、2つの受動的回転 “セットアップ”ジョイント116及び120を有し、それらは、ジョイントのブレーキが開放されるときに、連結セットアップリンク118及び122の手動による位置決めを可能にする。アームアセンブリとリンク114に連結されたベースとの間の受動的角柱状セットアップジョイント(図示せず)は、大きい鉛直方向の調整112を可能にするように用いられ得る。それに代えて、それらのセットアップジョイントの一部は能動的に制御されることが可能であり、多かれ少なかれセットアップジョイントは様々な構成で用いられることが可能である。セットアップジョイント及びリンクは、直交(x,y,z)空間における種々の位置及び方位でアームのロボットマニピュレータ部分を人間が位置付けることを可能にする。運動の遠隔中心は、ヨー軸、ピッチ軸及びロール軸が交差する位置(即ち、運動学的連鎖が効果的に変化しないで保たれる一方、ジョイントはその運動の範囲内で動く位置)である。下で詳細に説明するように、それらの能動的に制御されるジョイントの一部は、個別の外科手術用器具の自由度の制御に関連付けられるロボットマニピュレータであり、それらの能動的に制御されるジョイントの他は、それらのロボットマニピュレータの単独のアセンブリの自由度の制御に関連付けられる。能動的ジョイント及びリンクは、モータ及び他のアクチュエータにより移動可能であり、外科医用コンソール104でマスターアームの運動に関連する運動制御信号を受ける。
【0040】
図1A及び1Bに示しているように、マニピュレータアセンブリヨージョイント124は、セットアップリンク122の遠位端と第1マニピュレータリンク126の近位端との間に連結される。ヨージョイント124は、マニピュレータアセンブリヨー軸123の周囲の“ヨー”として任意に規定され得る動きにおいて、リンク126がリンク122に対して動くことを可能にする。図示しているように、ヨージョイント124の回転軸は運動の遠隔中心146と位置合わせされ、その遠隔中心は一般に、器具(図示せず)が患者の体内に入る位置(例えば、腹部の外科手術についてのへそ)である。一実施形態においては、セットアップリンク122は、水平面又はxy平面に沿って回転可能であり、ヨージョイント124は、第1マニピュレータリンク126がヨー軸123に関して回転することが可能であり、故に、セットアップリンク122、ヨージョイント124及び第1マニピュレータリンク126は、ヨージョイント124から運動の遠隔中心146までの鉛直方向の破線で示されているように、ロボットアームアセンブリについて常に鉛直方向にあるヨー軸123を与える。
【0041】
能動的に制御される回転ジョイント128、132及び136のそれぞれにより、第1マニピュレータリンク126の遠位端は、第2マニピュレータ130の近位端に連結され、第2マニピュレータリンク130の遠位端は、第3マニピュレータ134の近位端に連結され、第3マニピュレータリンク134の遠位端は、第4マニピュレータ138の近位端に連結されている。一実施形態においては、リンク130、134及び138は、連結された運動機構としての役割を果たすように、一緒に連結されている。連結された運動機構は知られている(例えば、そのような機構は、入力リンク運動及び出力リンク運動が互いに対して平行に保たれるときの平行運動連鎖として知られている)。例えば、回転ジョイント128が能動的に回転される場合、ジョイント132及び136はまた、リンク138がリンク130に対して一定の関係を有して動くように、回転する。従って、ジョイント128、132及び136の回転軸は平行であることが理解できる。それらの軸が、ジョイント124の回転軸に対して垂直であるとき、リンク130、134及び138は、マニピュレータアセンブリピッチ軸139の周囲で“ピッチ”として任意に規定され得る運動において、リンク126に関して動く。リンク130、134及び138は、一実施形態においては、単独のアセンブリとして動くため、第1マニピュレータリンク126は能動的近位マニピュレータリンクとみなされ得、第2乃至第4マニピュレータリンク130、134及び138は、集合的に能動的遠位マニピュレータリンクとみなされ得る。 マニピュレータアセンブリプラットフォーム140は、第4マニピュレータリンク138の遠位端に連結している。マニピュレータプラットフォーム140は、下で詳細に説明する、2つ又はそれ以上の外科手術用器具マニピュレータを有するマニピュレータアセンブリ142を支持する回転可能ベースプレートを有する。その回転可能ベースプレートは、マニピュレータアセンブリロール軸141の周囲の“ロール”として任意に規定され得る運動において、プラットフォーム140に関する単独のユニットとして、マニピュレータアセンブリ142が回転することを可能にする。
【0042】
最小侵襲性外科手術のためには、器具は、不必要な組織の損傷を回避するように、切開か自然開口かのどちらかで、その器具が患者の身体に入る位置に関連して、実質的に固定されたまま維持される必要がある。従って、器具シャフトのヨー運動及びピッチ運動は、空間において相対的に固定されたままであるマニピュレータアセンブリロール軸又は器具挿入軸に関して単独の位置に中心合わせされる必要がある。この位置は、運動の遠隔中心と称せられる。すべての器具(カメラ器具を含む)が単独の小さい切開(例えば、へそ)又は自然開口を介して入る必要があるシングルポート最小侵襲性外科手術については、すべての器具が、そのような一般に静止した運動の遠隔中心に関して動く必要がある。従って、マニピュレータアセンブリ142についての運動の遠隔中心は、マニピュレータアセンブリヨー軸123及びマニピュレータアセンブリピッチ軸139の交点により規定される。リンク130、134及び138並びにジョイント128、132及び136の構成は、マニピュレータアセンブリが患者に関して自由に動くことを可能にするのに十分な距離を有して運動の遠隔中心146がマニピュレータアセンブリ142の遠位に位置付けられるようなものである。マニピュレータアセンブリロール軸141はまた、運動の遠隔中心146と交差することが理解できる。
【0043】
下で詳細に説明するように、外科手術用器具は、マニピュレータアセンブリ142の各々の外科手術用器具マニピュレータにより備えられ且つ動作される。それらの器具は、種々の器具が特定の器具マニピュレータに相互交換可能に備えられることが可能であるように、取り外し可能に備えられる。一特徴においては、1つ又はそれ以上の器具マニピュレータは、特定種類の器具、例えば、カメラ器具を支持する及び動作させることが可能である。器具のシャフトは、器具マニピュレータから遠位方向に延在している。シャフトは、エントリポートに位置付けられた共通カニューレを介して患者の体内に延在している(例えば、体壁を通って又は自然開口において)。一特徴においては、エントリガイドはカニューレにおいて位置付けられ、各々の器具シャフトは、器具シャフトのための付加的な支持を与えるように、エントリガイド内のチャネルの中を通って延びている。カニューレは、一実施形態においては、第4マニピュレータリンク138の近位端に連結されるカニューレマウント150に取り外し可能に連結される。一実施形態においては、カニューレマウント150は、運動の遠隔中心146がカニューレに沿って位置付けられるように、正確な位置にカニューレを保持する動作位置とリンク138に隣接する収容位置との間をそのマウントが移動することを可能にする回転ジョイントにより、リンク138に連結される。動作中、カニューレマウントは、一特徴に従って、リンク138に対して適切な位置に固定される。器具は、カニューレマウント150の遠位端に搭載されたカニューレアセンブリ及びエントリガイドを介してスライドすることが可能であり、その実施例については、下で詳述する。種々の受動的セットアップジョイント/リンク及び能動的ジョイント/リンクは、患者が移動可能なテーブル上の種々の位置に位置付けられるときに、器具マニピュレータの位置決めにより、大きい移動範囲を伴って器具及び撮像システムを移動させるようにする。一部の実施形態においては、カニューレマウントは、近位リンク又は第1マニピュレータリンク126に連結されることが可能である。
【0044】
マニピュレータアームにおける特定のセットアップジョイント及びリンク並びに能動的ジョイント及びリンクは、ロボットの大きさ及び形状を減少させるように除かれることが可能であり、又は、ジョイント及びリンクは、自由度を増すように、追加されることが可能である。マニピュレータアームは、外科手術のために必要な姿勢の範囲を得るように、リンク、受動的ジョイント及能動的ジョイント(冗長自由度が備えられることが可能である)の種々の組み合わせを有することが可能であることを理解する必要がある。更に、種々の外科手術用器具のみ、又は、ガイドチューブ、複数の器具及び/又は複数のガイドチューブ、並びに器具マニピュレータに結合された器具(例えば、アクチュエータアセンブリ)を有する器具アセンブリが、種々の構成(例えば、器具伝達手段又は器具マニピュレータの近位面又は遠位面上の)を介して、本発明の特徴に適用可能である。
【0045】
図2A乃至2Cは、遠隔操作外科手術(遠隔手術)システムにおける患者側支持カート200の斜視図、側面図及び平面図のそれぞれを示している。図示しているカート200は、
図1A及び1Bに関連して上で説明している一般的な構成の例示としての実施形態である。外科医用コンソール及び映像システムは示されていないが、
図1A及び1Bに関連して上で説明しているように適用可能であり、遠隔ロボット外科手術システムアーキテクチャ(例えば、da Vinci(登録商標)Surgical Systemアーキテクチャ)として知られている。この実施形態においては、カート200は床置き式ベース208を有する。そのベースは、移動可能である又は(例えば、床、天井、壁又は他の十分に固い構造に)固定されることが可能である。ベース208は支持柱210を支持し、アームアセンブリ201は支持柱210に連結されている。アームアセンブリは、2つの受動的回転セットアップジョイント216及び220を有し、それらは、それらのブレーキが開放されるときに、連結されているセットアップリンク218及び222の手動による位置決めを可能にする。図示している実施形態においては、セットアップリンク218及び222は水平面内を(床に対して平行に)動く。アームアセンブリは、支持柱210と鉛直方向のセットアップリンク214との間の受動的スライディングセットアップジョイント215において支持柱210に連結されている。ジョイント215は、マニピュレータアームが鉛直方向に調整される(床に対して垂直である)ようにする。従って、受動的セットアップジョイント及びリンクは、患者に対する運動の遠隔中心246を適切に位置付けるように用いられ得る。一旦、運動の遠隔中心246が適切に位置付けられると、ジョイント215、216及び220の各々におけるブレーキが、アームの設定部分を動かさないように定められる。
【0046】
更に、アームアセンブリは、マニピュレータアーム構成及び運動、器具操作並びに器具挿入のための能動的ジョイント及びリンクを有する。第1マニピュレータリンク226の近位端は、能動的制御回転マニピュレータアセンブリヨージョイント224を介してセットアップリンク222の遠位端に連結される。図示しているように、ヨージョイント224の回転マニピュレータアセンブリヨー軸223は、ヨージョイント224から運動の遠隔中心246まで、鉛直方向の破線で示しているように、運動の遠隔中心246と位置合わせされる。
【0047】
能動的制御回転ジョイント228、232及び236のそれぞれにより、第1マニピュレータリンク226の遠位端は第2マニピュレータリンク230の近位端に連結され、第2マニピュレータリンク230の遠位端は第3マニピュレータリンク234の近位端に連結され、第3マニピュレータリンク234の遠位端は第4マニピュレータリンク238の近位端に連結されている。上記のように、リンク230、234及び238は連結された運動機構として機能し、故に、第4マニピュレータリンク238は、第2マニピュレータリンク230が作動されるときに、リンク230と協調して自動的に動く。図示している実施形態においては、米国特許第7,594,912号明細書(2004年9月30日に出願された)に開示されている機構と類似する機構が使用するために改善されたものである(米国特許出願第11/611,849号明細書(2006年12月15日出願、米国特許出願公開第2007/0089557A1号明細書)も参照されたい)。従って、第1マニピュレータリンク226は能動的近位リンクとみなされ得、第2乃至第4マニピュレータリンク230、234及び238は集合的に能動的遠位リンクとみなされ得る。一実施形態においては、第1リンク226は、下で更に説明しているように、ジョイント228について遠位リンクの運動からの力と釣り合うように、圧縮バネ釣り合い機構を有することが可能である。
【0048】
マニピュレータアセンブリプラットフォーム240は第4リンク238の遠位端に連結されている。プラットフォーム240は、器具マニピュレータアセンブリ242が搭載されたベースプレート240aを有する。
図2Aに示しているように、プラットフォーム240は“ハロー”リングを有し、そのハローリングの内側では、ディスク形状のベースプレート240aが回転する。ハロー及びディスク以外の形状が、他の実施形態で用いられ得る。ベースプレート240aの回転中心は、マニピュレータプラットフォーム240の中心及び運動の遠隔中心246を通って延びている破線で示されているように、マニピュレータアセンブリロール軸241と一致している。器具260が、一実施形態においては、器具マニピュレータの遠位面におけるマニピュレータアセンブリ242の器具マニピュレータに対して搭載される。
【0049】
図2A及び2Bに示しているように、器具マニピュレータアセンブリ242は4つの器具マニピュレータ242aを有する。各々の器具マニピュレータは関連器具を支持し、且つその関連器具を動作させる。図示している実施形態においては、1つの器具マニピュレータ242aがカメラ器具を動作させ、3つの器具マニピュレータ242aが、手術部位での手術及び/又は診断作業を実行する種々の他の交換可能な外科手術用器具を動作させる。より多い又はより少ない器具マニピュレータが用いられ得る。一部の操作構成においては、1つ又はそれ以上のマニピュレータは、外科手術手順の一部又は全部において、関連手術用器具を有しないことが可能である。器具マニピュレータについては、下でより詳細に説明する。
【0050】
上で説明しているように、外科手術用器具260がそれぞれの器具マニピュレータ242aにより備えられていて、その外科手術用器具は器具マニピュレータにより作動される。本発明の特徴に従って、各々の器具は、その器具の近位端のみにおいて関連マニピュレータに対して備えられる。
図2Aにおいて、この近位端に備えられた特徴により、器具マニピュレータアセンブリ242及びプラットフォーム240は患者からできるだけ遠く離れて保たれ、このことは、所与の器具配置について、マニピュレータアームの能動的に制御される部分が患者に関する最大の運動範囲内で自由に運動する一方、患者とは衝突しないようにする。複数の器具260が、それらのシャフトがマニピュレータアセンブリロール軸241の周囲でクラスター化されるように搭載される。各々のシャフトは、器具の力伝達機構から遠位方向に延在し、すべてのシャフトは、患者の体内にポートに位置付けられた単独のカニューレを介して延在する。カニューレは、カニューレマウント250によりベースプレート240aに関して固定位置に取り外し可能に保持され、そのカニューレマウントは第4マニピュレータリンク238に連結されている。単独のガイドチューブがカニューレに挿入されて、カニューレにおいて自由に回転し、各々の器具シャフトはガイドチューブ内で関連チャネルを介して延在している。カニューレ及びガイドチューブの長手方向軸は一般に、ロール軸241と一致している。従って、ガイドチューブは、ベースプレート240aが回転するときに、カニューレ内で回転する。一部の実施形態においては、カニューレマウントは第1マニピュレータリンク226に動作可能に連結されることが可能である。
【0051】
各々の器具マニピュレータ242aは、ベースプレート240aに動作可能に連結された能動的遠隔挿入機構244(
図2B)に移動可能に連結され、外科手術用器具を挿入する及び引き出すように使用されることが可能である。
図2Aは、遠隔挿入機構244の遠位端の方にある距離だけ延ばされた器具マニピュレータ242aを示し(
図3及び
図4Aも参照されたい)、
図2Bは、遠隔挿入機構244の近位端の方に引っ込められた器具マニピュレータ242を示している(
図4Bも参照されたい)。運動の遠隔中心が受動的セットアップアーム及びジョイントにより定められた後に、外科手術用器具(又はアセンブリ)が、エントリポート、例えば、患者のへそにおいて運動の遠隔中心246の周囲を動くように、能動的ジョイント224、228、232,236及びマニピュレータプラットフォーム240は協働して及び/又は独立して動く。
【0052】
図2Aに示すように、カニューレマウント250は、第4マニピュレータリンクの近位端の近傍で第4リンク238に連結される。他の特徴においては、カニューレマウント250は、その近位リンクの他の部分に連結されることが可能である。上記のように、カニューレマウント250はヒンジで動き、故に、第4リンク238に隣接する収容位置の方に及びカニューレを支持する延長された位置の方に向かってスイングすることが可能である。作動中、カニューレマウント250は、一特徴に従って第4リンク238に関して固定位置に保持される。
【0053】
図示している実施形態においては、第1マニピュレータリンク226は一般に、一実施例では反転した“L字”形状であることが理解できる。“L字”形状の近位レッグはヨージョイント224でリンク226に連結され、そのリンクの遠位レッグは、回転ジョイント228で第2マニピュレータリンク238に連結されている。この例示としての実施形態においては、それらの2つのレッグは一般に直交していて、第1マニピュレータリンクの近位レッグは、マニピュレータアセンブリヨー軸223に対して一般に直交している平面(例えば、ヨー軸が鉛直(z)方向にある場合の水平面(xy))あたりで回転する。従って、遠位レッグは、マニピュレータアセンブリヨー軸223(例えば、ヨー軸が鉛直方向にある場合の鉛直(z)方向)の方に一般に平行に延びている。この形状は、マニピュレータリンク230、234及び238がヨージョイント224の下方で動くことを可能にし、故に、リンク230、234及び238は、運動の遠隔中心246と交差するマニピュレータアセンブリピッチ軸239を与える。第1リンク226の他の構成も可能である。例えば、第1リンク226の近位レッグ及び遠位レッグは互いに対して直交しないことが可能であり、近位レッグは、水平面とは異なる平面内で回転することが可能であり、又は、リンク226は、一般の“L字”形状以外の形状、例えば、弧状形状を有することが可能である。
【0054】
鉛直方向のヨー軸223は、破線249で示しているように(
図2C)、リンク226が実質的に360°回転することを可能にすることが理解できる。一実施例においては、マニピュレータアセンブリヨー回転は連続的であることが可能であり、他の実施例においては、マニピュレータアセンブリヨー回転は約±180°であることが可能である。更に他の実施例においては、マニピュレータアセンブリヨー回転は約660°であることが可能である。ピッチ軸239は、そのようなヨー軸の回転中に、変わらないように維持される又はされないことが可能である。器具は、マニピュレータアセンブリロール軸241と一般に位置合わせされた方向に患者に対して挿入されるために、アームは、マニピュレータアセンブリヨー軸の周囲で任意の所望の方向に器具挿入方向を位置決めする及び再位置決めするように能動的に制御されることが可能である(例えば、患者の頭部の方に器具挿入方向を示している
図25A乃至25C、並びに患者の足部の方に器具挿入方向を示している
図26A乃至26Cを参照されたい)。この能力は、一部の手術中はかなり有利であり得る。器具がへそに位置付けられるシングルポートを介して挿入される特定の腹部の外科手術においては、例えば、器具は、新しいポートが患者の体壁において開けられる必要性なしに、腹部の四半部すべてにアクセスできるように位置付けられることが可能である。マルチ四半部アクセスは、例えば、腹部全体に亘るリンパ節アクセスのために必要である。それとは対照的に、マルチポート遠隔ロボット外科手術システムの使用においては、腹部の他の四半部により十分にアクセスするように患者の体壁において付加的なポートが形成されることが必要であり得る。
【0055】
更に、マニピュレータは、器具を、鉛直下方に方向付け且つ僅かに上方に傾斜した構成であるようにすることが可能である(例えば、上方に傾斜した器具挿入方向を示す
図27A乃至27Cを参照されたい)。従って、単独のエントリポートを介する器具の進入角度(遠隔中心に関するヨー及びピッチ)は容易に操作され且つ変更することが可能である一方、患者の安全性のために及び患者側担当者が操縦するためにエントリポート周囲でより増加した空間を提供することが可能である。
【0056】
更に、能動的ジョイント228、232及び236で連結されたリンク230、234及び238は、単独のエントリポートの中を通る器具の進入のピッチ角度を容易に操作することができる一方、単独のエントリポートの周囲に空間を得るように、用いられることが可能である。例えば、リンク230、234及び238は、患者から“遠ざかるように弧を描く”フォームファクタを有するように位置付けられることが可能である。そのように遠ざかるように弧を描くことは、患者とのマニピュレータアームの衝突が起こらない、ヨー軸223の周囲のマニピュレータアームの回転を可能にする。そのように遠ざかるように弧を描くことはまた、患者側担当者が器具を交換するためにマニピュレータに容易にアクセスすることと、手動器具(例えば、手動の腹腔鏡器具又は退縮装置)の挿入及び操作のためのエントリポートに容易にアクセスすることとを可能にする。更なる他の実施例においては、第4リンク238は、運動の遠隔中心からであって、従って、患者から遠ざかるように弧を描いて、より高い患者の安全性を与えるフォームファクタを有する。換言すれば、複数の器具マニピュレータ242aのクラスターの安全作用範囲は円錐形状であり、その円錐形状の先端は運動の遠隔中心246にあり、その円錐形状の円形端は器具マニピュレータ242aの近位端にある。そのような安全作用範囲は、患者と外科手術用ロボットシステムとの間の干渉を小さくし、手術部位への改善されたアクセスを可能にするシステムのための運動領域を大きくし、手術スタッフによる患者へのアクセスを改善する。
【0057】
従って、大きい運動領域が併せられたマニピュレータアームアセンブリ201の構成及び形状は、シングルポートの中を通るマルチ四半部手術を可能にする。単独の切開を介して、マニピュレータは、器具を一方向に方向付けて、容易に方向を変えることが可能であり、例えば、変わらない鉛直方向のヨー軸の周囲でマニピュレータアームを動かすことにより、患者の骨盤(又は頭部)の方に動かされて(例えば、
図25A乃至25Cを参照されたい)、患者の頭部(又は骨盤)の方に方向を変えることが可能である(例えば、
図26A乃至26Cを参照されたい)。
【0058】
この例示としてのマニピュレータアームアセンブリは、例えば、運動の遠隔中心に関して動くように操作される器具アセンブリのために用いられる。マニピュレータにおける特定のセットアップジョイント及びリンク並びに能動的ジョイント及びリンクは除かれることが可能であり、又は、ジョイント及びリンクが自由度を高めるために追加されることが可能である。マニピュレータアームは、外科手術のための必要な姿勢の範囲を得るように、リンク、受動的ジョイント及び能動的ジョイントの種々の組み合わせを増加させることが可能である(冗長自由度が備えられることが可能である)ことを理解する必要がある。更に、ガイドチューブ、複数の器具及び/又は複数のガイドチューブを有する種々の外科手術用器具単独で、若しくは(ガイドチューブ、複数の器具、及び/又は複数のガイドチューブを有する)器具アセンブリ、並びに、種々の構成(例えば、アクチュエータアセンブリ又は伝達機構の近位面又は遠位面における)を介して器具マニピュレータ(アクチュエータアセンブリ)に連結された器具が、本発明において適用可能である。
【0059】
ここで、
図3、4A及び4B、5A−1乃至5B−1、5C−1乃至5C−4並びに8を参照するに、器具マニピュレータの特徴及び実施形態について、それらの特徴及び実施形態に本発明を限定することを意図せずに、詳述している。
図3は、マニピュレータアセンブリプラットフォームの回転可能ベースプレート340a、器具マニピュレータアセンブリを構成するベースプレート340aに備えられた4つの器具マニピュレータ342のクラスター、及び関連器具マニピュレータ342の遠位面に各々備えられた4つの器具360(近位部分が例示されている)の実施形態の斜視図である。ベースプレート340aは、上で説明しているように、マニピュレータアセンブリロール軸341に関して回転可能である。一実施形態においては、ロール軸341は、それを介して器具360が患者の体内に入る、カニューレ及びエントリガイドアセンブリの長手方向中心を通っている。ロール軸341はまた、各々の器具マニピュレータ342の遠位面の実質的に単一の面に対して実質的に垂直であり、故に、器具マニピュレータの遠位面に備えられた器具の近位面の実質的に単一の面に対して垂直である。
【0060】
各々の器具マニピュレータ342は、ベースプレート340aに連結された挿入機構344を有する。
図8は、器具挿入機構の実施形態について詳細に示す斜視断面図である。
図8に示すように、器具挿入機構844は、遠隔的に互いに関して直線的にスライドする3つのリンクを有する。挿入機構844は、キャリッジ802、キャリッジリンク804及びベースリンク808を有する。米国特許出願第11/613,800号明細書(2006年12月20日出願、米国特許出願公開第2007/0137371A1号明細書)に記載されているように、キャリッジリンク804はベースリンク808に沿ってスライドし、キャリッジ802はキャリッジリンク804に沿ってスライドし、それは本明細書において参考により援用される。キャリッジ802及びリンク804、808は連結ループ806(一実施例においては、1つ又はそれ以上のフレキシブルな金属ベルトを有し、代替として、1つ又はそれ以上のケーブルが用いられる)により相互接続されている。ベースリンク808におけるリードスクリュー808aは、連結ループ808bにおける固定された位置で連結されるスライダ808bを駆動する。キャリッジ802はまた、固定された位置で連結ループ806に連結されていて、故に、スライダ808bがベースリンク808に対して特定距離xだけスライドするとき、キャリッジ802はベースリンク808に対して2xだけスライドする。種々の他の直線運動機構(例えば、リードスクリュー及びキャリッジ)が、挿入機構の代替の実施形態において用いられることが可能である。
【0061】
図3及び8に示しているように、ベースリンク808の近位端は回転可能ベース面340aに連結され、キャリッジ802は、器具マニピュレータ342の外側シェル又は内側フレームに(例えば、
図5C−1乃至5C−3の内側フレーム開口542i’内で)連結されている。サーボモータ(図示せず)はリードスクリュー808aを駆動し、その結果、器具マニピュレータ342は、ロール軸341に対して一般に平行な方向にあるベース面340aに対して近位端の方に又は遠位端の方に移動する。外科手術用器具360はマニピュレータ342に連結されているため、挿入機構344は、カニューレを通って手術部位の方に器具を挿入するように及び手術部位から遠ざかるように引き出すように機能する(器具挿入自由度)。連結ループに隣接して通っている平坦な導電性フレックスケーブル(図示せず)は、器具マニピュレータに対して、電力を供給する、信号を供給する、接地されることが可能である。
【0062】
挿入機構344の伸縮特徴(telescoping feature)の有利点は、器具マニピュレータがその最近位位置から最遠位位置まで移動するときには、より大きい移動範囲を提供し、マニピュレータがその最近位位置にあるときには、単独の静止した挿入ステージのみが用いられる場合に比べて挿入機構をより小さく突き出させることができることが理解できる(例えば、
図4A(最遠位位置)及び
図4B(最近位位置)を参照されたい)。最も小さい突き出しは、例えば、器具交換中に、器具マニピュレータがその近位端位置にあるときに、挿入機構は手術中の患者と及び手術室の担当者との干渉を回避することができる。
【0063】
図3において更に示されているように、複数の伸縮挿入機構(telescopic insertion mechanism)344は、一実施形態においては、回転可能ベースプレート340aに対称的に搭載されている、従って、器具マニピュレータ342及び搭載されている器具360は、ロール軸341に関して対称的にクラスター化されている。一実施形態においては、器具マニピュレータ342及びそれらの関連器具360は、マニピュレータアセンブリロール軸341に近接して位置付けられた器具シャフトにより、一般にパイウェッジ(pie−wedge)レイアウトであるようにロール軸の周囲に配列されている。従って、ベースプレートがロール軸341に関して回転するとき、器具マニピュレータ342のクラスター及び備えられている器具360もロール軸に関して回転する。
【0064】
図4A及び4Bは、回転可能ベースプレート440aに対して備えられた挿入機構444に沿って、伸張された位置及び収縮された位置のそれぞれにおける器具マニピュレータ442を示す図である。上記のように、器具マニピュレータ442は、挿入機構444に隣接して両方向矢印で示している挿入機構のフリーな遠位端444aとベースプレート440aとの間の挿入機構444の長手方向軸に沿って、伸張及び収縮することができる。この例示としての実施形態においては、器具は、器具マニピュレータ442の遠位面442aに対して搭載されている。
【0065】
遠位面442aには、搭載された器具に作動力を伝達する種々の作動出力部がある。
図4A及び4Bに示しているように、そのような作動出力部は、把持出力レバー442b(器具エンドエフェクタの把持運動を制御する)、揺動出力ジンバル442c(遠位端平行連結(“揺動”又は“肘”機構)の左右方向運動及び上下方向運動を制御する)、手首出力ジンバル442d(器具エンドエフェクタのヨー運動及びピッチ運動を制御する)、及び転がり出力ディスク442e(器具の転がり運動を制御する)を有することが可能である。そのような出力部と、そのような出力部を受け入れる器具力伝達機構の関連部品の詳細については、米国特許出願第12/060,104号明細書(2008年3月31日出願、米国特許出願公開第2009/0248040A1号明細書)に開示されていて、それは本明細書において参考により援用される。そのような入力を受け入れることが可能である例示としての外科手術用器具の近位端の実施例については、上記の米国特許出願第11/762,165号明細書に開示されている。簡単には、左右方向の自由度及び上下方向の自由度は遠位端平行連結により与えられ、エンドエフェクタヨー自由度及びエンドエフェクタピッチ自由度は遠位フレキシブル手首機構により与えられ、器具把持自由度は2つの移動可能な対向するエンドエフェクタ顎(jaw)により与えられる。そのような自由度は、より多い又はより少ない自由度の例示である(例えば、一部の実施形態においては、カメラ器具は器具ロールエンド把持自由度を除いている)。
【0066】
器具マニピュレータの遠位面に対して器具を備えることを容易にするように、支持フック442fなどの支持部が器具マニピュレータに位置付けられている。図示している実施形態においては、支持フックは、器具マニピュレータの主ハウジングに対して固定され、器具マニピュレータの遠位面は、器具マニピュレータと器具との間でしっかりした相互接続がなされて、近位方向に及び遠位方向に移動することができる。ラッチ機構442gは、器具の近位面の方に器具マニピュレータの遠位面を移動させるように用いられる。代替の実施形態においては、ラッチ機構は、マニピュレータ入力部及び器具入力部を係合又は開放するように、マニピュレータの遠位面の方に器具の近位面を移動させるように用いられることが可能である。
【0067】
図5A−1及び5B−1は、器具マニピュレータ542の例示としてのアーキテクチャを示す斜視図である。
図5A−2及び5B−2は、切断線I−I及びII−IIに沿った
図5A−1及び5B−1それぞれの断面図である。図示しているように、マニピュレータは、例えば、スライディングジョイント、レールなどにより、外側シェル542hに移動可能に連結された内側フレーム542iを有する。内側フレーム542iは、ラッチ機構542gの動作の結果として、外側シェル542hに対して遠位方向に及び近位方向に移動する。
【0068】
ここで、
図5A−1乃至5B−2を参照するに、器具マニピュレータ542に器具(図示せず)を搭載するための支持フック542f及びラッチ機構542gの動作について示している。図示しているように、器具マニピュレータ542の遠位面542aは実質的に単一面であり、器具力伝達機構の近位面(例えば、
図9A及び9Bにおける器具960の近位面960’)に動作可能に連結されている。ラッチ機構542gは、互いに対して器具マニピュレータの内側フレーム及び外側シェルを移動させて、動作中に器具に対して遠位面542aを保持するように、作動機構、例えば、プーリー及びワイヤを有することが可能である。
【0069】
図示している実施形態においては、器具支持フック542fは、器具マニピュレータの外側シェル542hに堅く設置され、ラッチ機構542gが作動されるときには、器具マニピュレータの内側フレーム542iの遠位面542aは、支持フック542fの遠位面の方の遠位方向に、器具マニピュレータの外側シェルの近位面542jから遠ざかる方に、移動する。従って、器具力伝達機構が支持フック542fに搭載されるとき、器具マニピュレータの遠位面542aは、
図5A−1及び5A−2の矢印で示されているように、器具力伝達入力部と器具マニピュレータ出力部を動作可能に接続するように、支持フック542fにより動かなくされる器具伝達機構の近位面の方に移動する。この実施形態により示されているように、マニピュレータのアクチュエータ出力部は、器具に器具作動信号を伝達するように器具近位面に対して押圧されて、その器具近位面と接続する。ラッチ542gが反対方向に作動されるとき、器具マニピュレータの遠位面542aは、
図5B−1及び5B−2に矢印A2で示すように、器具入力部から器具マニピュレータ出力部を開放するように、器具マニピュレータの近位面542jの方に(即ち、固定支持フック542fの遠位端から遠ざかるように)移動する。図示している実施形態の有利点は、ラッチ機構が作動されるときに、器具マニピュレータのアクチュエータ部分が、支持フック上で間隙を介して固定されている固定器具に対して移動する。器具の方への又は器具から遠ざかる方への器具マニピュレータのアクチュエータの動きは、ラッチング処理又はアンラッチング処理中の不必要な又は意図されていない動作を最小化する。従って、器具は、器具搭載処理中に、患者に対して移動されないために、器具の遠位端は尚も患者の体内に存在し得るが、組織に対する潜在的な損傷は回避される。
【0070】
代わりの実施形態においては、支持フック542fは、
図5A−1及び5A−2に矢印B1で示しているように、器具入力部と器具マニピュレータ出力部を係合するように、固定器具マニピュレータの遠位面542aの方に器具の近位面を移動させるように、近位面542jの方に引っ込められる。ラッチが開状態である又は反対方向に作動されるとき、
図5B−1及び5B−2に矢印B2で示しているように、器具入力部から器具マニピュレータ出力部を開放するように、その処理は反転化されて、支持フック542fは、固定器具マニピュレータの遠位面542aから遠ざかるように移動する。
【0071】
図5C−1乃至5C−4は、器具マニピュレータ出力部を作動させる独立した駆動モジュールを示すための、外側シェル542hのない器具マニピュレータ542の他の図である。駆動モジュールは、器具マニピュレータの外側シェル542h及び支持フック542fに対して駆動モジュールと共に移動する器具マニピュレータの内側フレームにモジュール形式で搭載される。ラッチが閉状態であるとき、器具マニピュレータの内側フレームは、下で更に説明しているように、設定距離だけ器具の方に移動し、ばね付加モジュール出力部は無菌ドレープを介して器具入力部と係合する。ラッチが開状態であるとき、その処理は反転化される。ばね付加アクチュエータ駆動モジュール出力部は、下で詳細に説明するように、ドレープを介して器具力伝達機構入力部とのロバストな接続を提供する。
【0072】
図示している実施形態に例示しているように、器具マニピュレータ542は、把持出力レバー542bを作動させる把持アクチュエータ駆動モジュール542b’と、揺動出力ジンバル542cを作動させる揺動アクチュエータ駆動モジュール542c’と、ロール出力ディスク542eを作動させるロールアクチュエータ駆動モジュール542e’とを有する。出力部542b、542c、542d及び542eは、例えば、
図5C−4に示すように、器具マニピュレータ542の遠位面から遠位方向に突き出ていて、それらは、備えられた器具のX−Y並進、並びにグリップ、ピッチ、ヨー及びロールエンドエフェクタ運動を作動させるように、器具力伝達機構入力部と係合するように設定される。
【0073】
図6A及び6Bは、器具マニピュレータのグリップアクチュエータ駆動モジュール642b’の上方向から及び下方向からの斜視図である。グリップアクチュエータ駆動モジュール642b’は、直線状スライド602、ばね606を有する駆動ばね機構604、及びグリップ駆動出力レバー642bを有する。駆動ばね機構604は、器具マニピュレータの内側フレーム542iに連結されている。ラッチ542gが器具と係合するように作動されるとき、内側フレームが移動し、グリップ駆動モジュール642b’は、出力レバー642bが器具におけるそれが結合する入力部と接するまで、直線状スライド602に沿って移動する。この接触は、ばね606に予め負荷を加え、それにより、器具が適切な位置でラッチされるように、器具入力部に対してグリップ出力部642bをばね負荷する。予め負荷が加えられたばね606はその場合、動作中に、適切なアクチュエータ駆動出力部/入力部の接触が維持されることを保証し、故に、正確な運動制御が困難であることを表すクリアランスは、出力部/入力部の接触においては生じない。
【0074】
図7Aは、器具の揺動機構についてのX−Y並進を制御する揺動出力ジンバルか又は器具エンドエフェクタについてのピッチ及びヨーを制御する手首出力ジンバルを提供するように用いられる器具マニピュレータのジンバル駆動モジュール742c/d’の下方からの斜視図である。この実施形態においては、ジンバル駆動モジュール742c/d’は、直線状スライド702、ばね706を有する駆動ばね機構704、及びジンバルピン710上のアクチュエータ出力ジンバル742c/dを有する。駆動ばね機構704は、器具マニピュレータの内側フレーム542iに連結されている。ラッチ542fは、器具を係合するように作動されるため、内側フレームは遠位方向に移動し、アクチュエータ駆動モジュール742c/d’は、出力ジンバル742c/dが器具におけるそれが結合する入力部と接するまで、直線状スライド702に沿って移動する。この接触はばね706に予め負荷を加え、それにより、器具が適切な位置にラッチされるように、器具入力部に対して出力ジンバル742c/dをばね負荷する。グリップアクチュエータ駆動モジュールと同様に、予め負荷されたばねはその場合、適切なアクチュエータ駆動出力部/入力部の接触が動作中に維持されることを保証し、故に、正確な運動制御が困難であることを表すクリアランスは、出力部/入力部の接触においては生じない。ジンバル駆動モジュール742c/d’は更に、2つの“犬用の骨”リンク712、2つのボールねじ714、2つのモータ716、2つのホール効果センサ718及び2つの回転又は直線運動エンコーダ720を有する。モータ716は、犬用骨リンク712を作動させる関連ボールねじ714を駆動させる。犬用骨リンク712の近接端は、ボールねじ714に対して平行な軸に沿って移動する直線状スライド721に連結されている。犬用骨リンク712の遠位端は、ジンバルピン710を介して長手方向の軸に対して垂直な2つの直交軸の周囲を各々回転する出力ジンバル742c/dに連結されている。一特徴においては、駆動モジュールのジンバルは2自由度を有するが、直交軸を有しない。
【0075】
図7Bは、搭載器具のロール運動を制御するロール出力ディスクを提供するように用いられることが可能である器具マニピュレータのロールアクチュエータ駆動モジュール742e’の下方からの斜視図である。この実施形態においては、ロールアクチュエータ駆動モジュール742e’は、ハーモニックドライブ(登録商標)736を駆動し、順に複数の平歯車700を駆動させるモータ734を有する。平歯車700は、ロール出力ディスク742eを回転させる、従って、器具のロール入力ディスクを駆動させる。エンコーダ732は、位置を検知して、モータ734を整流するように用いられる。アブソリュートエンコーダ738は、ロール出力ディスク742eに連結され、器具のロールの絶対位置を検知する。 一特徴においては、複数のシステム駆動モジュールは、互いから動作可能に独立していて、十分に分離されていて、故に、1つのインタフェース出力部を介して加えられる大きい力は他のインタフェース出力部には伝達されない。換言すれば、1つのインタフェースを介する大きい力は他のインタフェース出力部には伝達されず、故に、他のインタフェース出力部により作動される器具構成要素に影響を与えない。一特徴においては、駆動モジュール及びその対応するアクチュエータ出力部は、他の駆動モジュール及び/又はその対応するアクチュエータ出力部から意図されない力の入力を実質的に有しない。この特徴は、器具の動作を、従って、患者の安全性を改善する。
【0076】
図9A及び9Bは、
図4A−4B及び
図5A−1乃至5C−4の器具マニピュレータを搭載する器具960の近位部分960a及び遠位部分960bのそれぞれの斜視図である。器具960の伝達機構の近位面960’は、グリップ出力レバー542bと接続する器具グリップ入力レバー962bと、揺動出力ジンバル542cと接続する器具揺動入力ジンバル962cと、手首出力ジンバル542dと接続する器具手首入力ジンバル962dと、ロール出力ディスク542eと接続する器具ロール入力ディスク962eとを有する。
図9Bは、手首964と、揺動機構966と、エンドエフェクタ968とを有するフレキシブルな外科手術用器具960の遠位端960bの実施例を示す。一実施形態においては、器具960の伝達機構の近位面960’は、マニピュレータ出力部及び器具入力部が動作可能に係合されるときに、器具マニピュレータの遠位面と動作可能に接続する実質的に単一な平面を有する。Larkin等による“Minimally Invasive Surgical System”と題された米国特許出願第11/762,165号明細書、及びCooper等による“Surgical Instrument With Parallel Motion Mechanism”と題された米国特許出願第11/762,154号明細書に更に、器具960のような適用可能な外科手術用器具の遠位部分及び近位部分に関して詳細に開示されていて、それは本明細書において参考により援用される。
【0077】
図9A及び9Bに示している例示としての特徴においては、器具960は、近位端における伝達部分と、細長い器具本体と、種々の外科手術エンドエフェクタの1つと、揺動機構965及び器具本体にエンドエフェクタ968を連結する2自由度手首機構とを有する。da Vinci(登録商標) Surgical Systemsにおけるように、一部の特徴においては、伝達部分は、器具が容易に交換されることが可能であるように、支持アームに永久的に搭載される電気的アクチュエータ(例えば、サーボモータ)と接続するディスクを有する。整合ジンバルプレート及びレバーなどの他の連結が、機械的インタフェースにおいて作動力を伝達するように用いられることが可能である。伝達部分における機械的機構(例えば、ギア、レバー、ジンバル)は、器具本体における1つ又はそれ以上のチャネル(1つ又はそれ以上の関節セグメント)を介して制御手首964及びエンドエフェクタ970運動に達する、複数のディスクから複数のケーブル、複数のワイヤ、及び/又はケーブル、ワイヤ及びハイポチューブ(hypotube)の組み合わせからの作動力を伝達する。一部の特徴においては、1つ又はそれ以上のディスク及び関連機構は、その長手方向の軸の周囲で器具本体を転がす作動力を伝達する。器具本体の主セグメントは実質的に固い単一のチューブであるが、一部の特徴においては、それは、僅かに弾力性のあるフレキシブルなものであることが可能である。この僅かなフレキシビリティは、ガイドチューブに近接した(即ち、患者外部の)近位本体セグメントが僅かに柔軟性を有するようにし、故に、複数の器具本体は、同じ長さの複数の切り花が狭い首を有する花瓶に挿されているように、個別の伝達セグメントのハウジングがそうではなく可能にするのと比べて、ガイドチューブ内でより近接して、空間を空けることが可能である。この柔軟性は最小であり(例えば、一実施形態においては約5自由度の曲げ角に等しい又はそれより小さい)、器具本体の内側の制御ケーブル及びハイポチューブについての曲げ角は小さいために、重大な摩擦を有しない。換言すれば、一実施形態においては、器具シャフトは、力伝達機構の遠位面又は近位面に対して垂直である代わりに僅かな角度で力伝達機構から遠位方向に出ることが可能である。器具シャフトはその場合、僅かに曲がり、力伝達機構から遠位方向に出る器具シャフトの近位部分において直線状から僅かに弧を描き続ける。従って、器具は、ガイドチューブに近接する近位曲線状部分及び遠位直線状部分を有する器具シャフトを有することが可能である。一実施例においては、器具シャフトは、力伝達機構から遠位方向に出るときに、約0°乃至約5°の範囲内で傾けられることが可能である。
【0078】
図9A及び9Bに示すように、器具960は、近位本体セグメント968(一実施例においてはガイドチューブを通って延在する)と、少なくとも1つの遠位本体セグメント又は揺動機構966(一実施例においてはガイドチューブの遠位端を超えて位置付けられる)とを有する。例えば、器具960は、近位本体セグメント968と、ジョイント967において近位本体セグメント968に連結されている揺動機構966と、他のジョイント965において揺動機構966に連結されている(その連結方法は、他の、短い遠位本体セグメントを有することが可能である)手首機構964と、エンドエフェクタ970とを有する。一部の特徴においては、揺動機構966並びにジョイント965及び967は平行運動機構として機能し、その機構において、その機構の遠位端における基準フレームの位置は、遠位基準フレームの方位を変えることなく、その機構の近位端において基準フレームに対して変えられることが可能である。適用可能な器具の関連ジョイントを有する適用可能な平行運動又は揺動機構の詳細については、米国特許出願第11/762,165号明細書に更に開示されていて、それは本明細書において参考により援用される。
【0079】
図10は、本発明の特徴に従った器具960に動作可能に連結された器具マニピュレータ542の断面図である。
図10に示すように、器具マニピュレータ542の遠位面におけるアクチュエータ出力部542b乃至542eは、外科手術用器具960の近位面におけるアクチュエータ入力部962b乃至962eと接続している。
【0080】
器具エンドエフェクタは、外科手術を容易にするように、7自由度(器具挿入、把持、2自由度手首関節、2自由度揺動(手首並進)及び器具転がり)を備えているため、器具作動精度の要求は高く、器具と器具マニピュレータとの間の高い忠実度、低いバックラッシュの接続が好ましい。器具マニピュレータの独立して動作される駆動システムモジュール(例えば、モジュール542b’、542c’、542d’及び542e’)は、実質的に性能低下なしに、不正確に製造されたドレープを介しても外科手術用器具に対して種々のドライブトレインが連結されることを可能にする。駆動システムモジュールは互いに連結されていず、互いから十分に分離されているため、1つのインタフェース出力を介して加えられる大きい力は他のインタフェース出力部には伝達されない。換言すれば、1つのインタフェース出力部を介する大きい力は、他のインタフェース出力部には出力されず、故に、他のインタフェース出力部により作動される基部構成要素に影響を与えない。一特徴においては、駆動モジュール及びその対応するアクチュエータ出力部は、他の駆動モジュール及び/又はその対応するアクチュエータ出力部からの意図されない力入力を実質的に有しない。この特徴は、器具動作を、故に、患者の安全性を改善する。
【0081】
一特徴においては、嵌め合わせディスクが、da Vinci(登録商標)Surgical Systemにおいて器具インタフェースとして、力伝達特徴及び作動特徴のために用いられることが可能である。他の特徴においては、嵌め合わせ揺動プレート及びレバーが用いられる。伝達機構における種々の機構構成要素(例えば、ギア、レバー、ケーブル、プーリー、ケーブルガイド、ジンバルなど)が、インタフェースから制御される要素に機械的力を伝達するように用いられる。各々のアクチュエータ機構は、関連器具の遠位端における運動を制御する少なくとも1つのアクチュエータ(例えば、サーボモータ(ブラシ付けされた又はブラシレスの))を有する。例えば、アクチュエータは、外科手術用器具のエンドエフェクタグリップの自由度を制御する電気的サーボモータであることが可能である。器具(本明細書で記載しているガイドプローブを有する)又はガイドチューブ(又は、集合的に、器具アセンブリ)は、関連アクチュエータ機構及びスライドから分離されることが可能である。それはその場合に、他の器具又はガイドチューブにより置き換えられることが可能である。機械的インタフェースに加えて、各々の伝達機構とアクチュエータ機構との間の電気的インタフェースが存在する。この電気的インタフェースは、データ(例えば、器具/ガイドチューブの種類)が伝送されることを可能にする。種々の器具、ガイドチューブ及び撮像システムのための、及び無菌フィールドを維持する無菌ドレープについての機械的インタフェース及び電気的インタフェースの例については、米国特許第6,866,671号明細書(2001年8月13日出願、Tierney等による)及び米国特許第6,132,368号明細書(1997年11月21日出願、Cooperによる)に開示されていて、それらは本明細書において参考により援用される。
【0082】
外科手術用器具のみ、若しくは、ガイドチューブ、複数の器具及び/又は複数のガイドチューブ並びに種々の構成を介するアクチュエータアセンブリに(例えば、器具/アクチュエータアセンブリの近位面又は遠位面に)連結された器具を有するアセンブリが、本発明において適用可能である。従って、種々の外科手術用器具が利用されることが可能であり、各々の外科手術用器具は他の外科手術用器具から独立して機能し、各々の外科手術用器具は、患者における単独のエントリポートを介して、直交空間において能動的に制御される少なくとも6自由度(即ち、サージ、うねり、ぶれ、転がり、傾斜、偏揺れ)を有するエンドエフェクタを有する。
【0083】
上記の運動連鎖の終了となる器具シャフトは、更に下で説明しているように、患者への挿入のためのカニューレ及び/又はエントリガイドを介して案内されることが可能である。適用可能な副クランプ及びカニューレなどの付属品の例については、2005年9月30日に出願された係属中の米国特許出願第11/240,087号明細書に開示されていて、該出願の全開示は、全ての目的のために、本明細書において参考により援用される。 無菌ドレープ
無菌ドレープの実施形態について、ここで詳細に説明する。
図1A及び1B並びに
図2A乃至2Cを参照するに、無菌フィールドからマニピュレータアームの非無菌部分を遮断し、また、外科手術手順による物質(体液)からアーム及びそのアームの種々の部品を遮蔽するように、アームアセンブリ101及び201の部分を覆う無菌ドレープ1000及び2000が示されている。一実施形態においては、無菌ドレープは、器具マニピュレータアセンブリの器具マニピュレータを受け入れるドレープポケットを有する。ドレープポケットは、無菌フィールドに隣接する外側表面と、非無菌器具マニピュレータに隣接する内側面とを有する。ドレープは更に、器具マニピュレータの出力部(例えば、関連器具に作動力を伝達するインタフェース)と、外科手術用器具の入力部(例えば、関連器具マニピュレータからの作動力を受けるインタフェース)との間を接続するドレープポケットの遠位端におけるフレキシブルな膜と、ドレープポケットの近位開口に動作可能に連結された回転シールとを有する。
【0084】
他の実施形態においては、無菌ドレープは複数のドレープポケットを有し、各々のドレープポケットは、それぞれの器具マニピュレータの出力部と、外科手術用器具の手首、転がり、把持及び並進運動を制御するそれぞれの手術用器具の入力部との間を接続する遠位端における複数のフレキシブルな膜を有する。ラビリンスシールなどの回転シールは、ドレープのより近位の部分に関して群としてドレープポケットすべてが一緒に回転することを可能にするように、ドレープポケットの近位開口に動作可能に連結されることが可能である。一実施例においては、複数のドレープポケットを有する回転シールの第1部分は、マニピュレータアセンブリプラットフォームの回転可能ベースプレートに連結され、回転シールの第2部分はマニピュレータアセンブリプラットフォームのフレームに連結されている。
【0085】
更に他の実施形態においては、ロボット外科手術システムのマニピュレータアームをドレープで覆う方法は、器具マニピュレータの遠位端において無菌ドレープの遠位端を先ず位置付けることと、器具マニピュレータの遠位端から器具マニピュレータの近位端までドレープポケットで各々の器具を覆うこととを有する。無菌ドレープの回転可能シールはその場合、マニピュレータアセンブリプラットフォームの回転可能ベースプレート及びフレームに連結されている。マニピュレータアームの残りの部分はその場合、要求に応じて、マニピュレータアームの遠位端からマニピュレータアームの近位端まで覆われることが可能である。この実施例においては、マニピュレータアームは、器具マニピュレータからヨージョイントまで覆われている。
【0086】
有利に、無菌ドレープを有するマニピュレータアーム及び器具マニピュレータの構成及び形状は、シングルポートを介してマルチ四半部手術を可能にし、患者及びエントリポートの周囲でより大きい空間が得られ、患者の安全性が高い、大きい運動範囲を提供する一方、また、上記のように、ロバストな器具/マニピュレータインタフェースと、器具交換の容易性と、無菌環境のメンテナンスとを提供することができる。
【0087】
図10を再び参照するに、器具マニピュレータ542のアクチュエータ出力部は、無菌ドレープ1000又は2000を介して器具960のアクチュエータ出力部と係合している。上記のように、一実施形態においては、ラッチ542gが作動されるとき、器具マニピュレータ542の内側フレームは、設定された距離だけ器具960の方に移動し、ばね負荷モジュール出力部542b乃至542eはドレープ1000又は2000を介して器具入力部962b乃至962eに係合している。器具マニピュレータ542における独立したアクチュエータ駆動モジュール542b’、542c’、542d’及び542e’は、上記のように、作動ラッチ機構542gに対して無菌ドレープを介して器具入力部962b、962c、962d及び962eを係合するアクチュエータ出力部542b、542c、542d及び542eのそれぞれを備えている。
【0088】
図10に関連付けてここで
図11A乃至11Dを参照するに、
図11A−11Bは、収縮した状態及び伸張した状態のそれぞれにおける無菌ドレープ1100(
図11D)の第1ドレープ部分1100aの斜視図であり、
図11Cは、本発明の実施形態に従ったマニピュレータプラットフォームの回転可能ベースプレート1140aの遠位端に搭載されたドレープ部分1100aの断面図である。無菌ドレープ1000及び2000についての上記記載は無菌ドレープ1100に対して適用可能である。例えば、無菌ドレープ1100は、無菌フィールドからマニピュレータアームの非無菌部分を遮断するように、マニピュレータアームアセンブリの部分、特に、器具マニピュレータを覆う。更に、ドレープ部分1100aは複数のドレープポケット1105(例えば、4つの楔形状ドレープポケット1105a乃至1105dが図示されている)を有し、それらの各々は、無菌フィールドに隣接する外側表面と、非無菌器具マニピュレータに隣接する内側表面とを有する。ドレープポケット1105の各々は更に、器具マニピュレータの出力部と外科手術用器具の入力部との間を接続するドレープポケット1105の遠位端1101において複数のフレキシブルな膜1102を有する。一実施例においては、フレキシブルな膜1102b、1102c、1102d及び1102eは、外科手術用器具の器具把持、並進、手首及び転がり運動のそれぞれを制御するように、器具マニピュレータ出力部542b、542c、542d及び542eと器具入力部962b、962c、962d及び962eとをそれぞれ接続する。フレキシブルな膜は、各々の器具マニピュレータの伸縮挿入機構(例えば、挿入機構444)のためのポケット伸張部1106を備え、それに沿って器具マニピュレータが並進運動することが可能である。
【0089】
一特徴においては、ポケット伸張部1106が挿入機構により移動し、そして、空間を提供して、手術ポートにアクセスするように患者から離れてコンパクトに維持できるように、ポケット伸張部1106の遠位端は挿入機構に取り付けられている。一実施例においては、ポケット伸張部1106の遠位端は、何れかの適切な取り付け機構、例えば、クリップ、タブ、ベルクロストリップなどにより、挿入機構844(
図8)のキャリッジリンク804に取り付けられることが可能である。
【0090】
回転可能シール1108は、マニピュレータアームアセンブリのマニピュレータプラットフォームにドレープポケット1105の近位開口1103を動作可能に連結する。一実施例においては、回転可能シール1108は、ロールカバー部分1108aを有する回転可能ラビリンスシールと、ロールカバー部分においてロールカバー部分に対して回転可能なベースコム(cobm)部分1108bとを有する。一実施形態においいては、ベースコム部分1108bは、複数の開口を有する複数の楔形状“フレーム”を構成するリブ1104を有するディスクを有し、フレームの各々は、器具マニピュレータを囲むように大きさ決めされている。一実施形態においいては、ベースカム部分1108bは、ディスク内で90°離れて形成される複数のリブ1104を有する。ドレープポケット1105の近位端は、ベースコム部分1108bのフレームの各々に連結される。従って、リブが形成されたベースコム部分1108bは、器具マニピュレータの回転可能ベースプレートにおいて密にクラスター化された個別の器具マニピュレータを覆うのに役立ち、更に、ドレープで覆われた器具マニピュレータが外科手術手順中に移動するときに、ドレープポケット1105の方位及び配置を維持するのに役立つ。
【0091】
ロールカバー部分1108aは、マニピュレータプラットフォームのフレームにフレキシブルに搭載され、ベースコム部分1108bは、回転可能ベースプレート1140aにフレキシブルに搭載され、故に、ベースプレート1140aが回転されるとき、ベースコム部分1108bも、ドレープで覆われている器具マニピュレータと一緒に回転する一方、ロールカバー部分1108aは静止していて、マニピュレータプラットフォームフレームに固定して搭載されている。
【0092】
図11A及び11Bは、器具マニピュレータがそれらのそれぞれの挿入軸に沿って収縮及び伸張するときに、収縮状態及び伸張状態のそれぞれにあるドレープポケット1105を示している。4つのドレープポケット1105は同様に収縮及び伸張されるとして示されているが、器具マニピュレータが独立して及び/又は従属して互いに対して制御されるときに、ドレープポケットは独立して、収縮及び伸張することが可能である。
【0093】
ベースコム部分のフレームの各々を介して器具マニピュレータを適合させるように空間が与えられる限り、ベースコム部分1108bは、90°以外の角度で方向付けられる種々の数のリブを有することが可能であることにまた、留意する必要がある。一実施例においては、ベースコム部分1108bは、円形部分を1つの器具マニピュレータを囲むように各々大きさ決めされた複数の部分に分割する、複数のリブにより構成されることが可能である。
【0094】
無菌ドレープ1100はまた、
図11Dに示すように、個々の器具マニピュレータのドレープからマニピュレータアームアセンブリの残りの部分に引き継がれることも可能である。ドレープ1100は、マニピュレータアームからマニピュレータアセンブリヨージョイント(例えば、ヨージョイント124、224)まで連続的に覆う一実施例においては、所望に応じて、マニピュレータの残りの部分(例えば、ジョイント及びリンク)を覆うように設計されたより大きい第2ドレープ部分1100bになじませるように回転可能シール1108(例えば、ロールカバー部分1108a)から続けることが可能である。従って、回転可能シール1108は、器具マニピュレータのクラスターが、マニピュレータアームアセンブリの残りに対して自由に回転することを可能にする一方、実質的には、全体のアームアセンブリがドレープで覆われたまま維持され、それにより、手術部位の無菌環境を維持することができる。
【0095】
他の実施形態に従って、無菌ドレープ部分1100bは、下で更に詳細に説明するように、収縮可能カニューレ搭載アームをドレープで覆うように設計されたカニューレ搭載アームポケット1110を有する。一実施形態においては、移動可能カニューレマウントは、マニピュレータアームに連結されたベース部分と、ベース部分に移動可能に連結された収縮可能部分とを有する。マニピュレータアームをドレープで覆うときに、患者の周囲でより大きく空間を得るように及び/又はカニューレマウントをドレープでより容易に覆うように、収縮可能部分が上方に回転される又はベース部分の方に折り畳められるように、収縮可能部分は、回転ジョイントを介して収縮部分と展開部分との間を移動されることが可能である。他のジョイントは、ボール及びソケットジョイント又はユニバーサルジョイント、伸縮効果をもたらすスライディングジョイントなどを含むが、それらに限定されずに、収縮可能部分とベース部分とを連結するように用いられることが可能であり、故に、収縮可能部分は、カニューレマウントの全体的なフォームファクタを低減するように、ベース部分に、より近接するように移動されることが可能である。他の実施形態においては、全カニューレマウントが、マニピュレーションアームに対して相対的に内側に収縮することが可能である。従って、移動可能カニューレ搭載アームは、ドレープにおいて相対的に小さい開口を有する、より大きいロボットアームをドレープで覆うことを可能にする。ドレープは、収縮されたカニューレ搭載アームの上に位置付けられ、その場合、ポケット1110内がドレープで覆われた後に、カニューレ搭載アームは、動作位置の方に伸張されることが可能である。一特徴に従って、カニューレ搭載アームは、器具の動作中に動作位置に固定される。
【0096】
一実施例においては、ドレープポケット1110は、カニューレ搭載アームの遠位端においてクランプと適合する(例えば、
図19A−19B及び
図20A−20Bにおけるクランプ1754、並びに
図24A乃至24Dにおけるクランプ2454及びレセプタクル2456)、強化されたドレープ部分1111を有することが可能である。
【0097】
ドレープ1100aは更に、使用中に、器具マニピュレータの周囲の外側に伸張することが可能である個々のラッチ1342g(
図14A、15、16A及び17A乃至17C)を覆う個々のドレープポケット1105の側にラッチカバー1107を有することが可能である。
【0098】
有利に、器具と接続する器具マニピュレータの遠位面、器具マニピュレータのばね負荷された且つ独立した出力部、及び有利な無菌ドレープのために、器具は、手術手順中にロボット無菌環境を維持しながら、器具マニピュレータに対して容易に且つロバストに交換可能である。更に、無菌ドレープは、外科手術ロボットシステムが迅速に且つ容易に準備されることを可能にし、また、小さいフォームファクタを有する改善された運動(回転運動)範囲も備え、それにより手術室における準備時間を短縮し、その費用を低減することができる。
【0099】
無菌アダプタ
ここで、無菌アダプタを有するドレープの他の実施形態について詳述する。
図12は、本発明の他の実施形態に従った無菌ドレープ1250を有する伸張された無菌ドレープのドレープ部分1200aの斜視図である。ドレープ部分1200aは、
図11Dのドレープ部分1100aと置き換えられることが可能であり、回転可能シール1108と実質的に同じである回転可能シール1208としてドレープ部分1100bに動作可能に連結される。ドレープ部分1200aは、回転可能シール1208と無菌アダプタ1250との間に連結された複数のドレープスリーブ1205を有する。ドレープ部分1200aは更に、器具マニピュレータの挿入機構をドレープで覆うための無菌アダプタ1250に連結されたポケット伸張部1206を有する。
【0100】
回転可能シール1208は、マニピュレータアームアセンブリのマニピュレータプラットフォームにドレープスリーブ1205の近位開口1203を動作可能に連結する。一実施例においては、回転可能シール1208は、ロールカバー部分1208aと、ロールカバー部分1208aに対して回転可能なベースコム部分1208bとを有する回転可能ラビリンスシールを有する。一実施形態においては、ベースコム部分1208bは、開口を有する複数の楔型形状の“フレーム”を構成するリブ1204を有するディスクを有し、それらのフレームの各々は、器具マニピュレータを囲むように大きさ決めされている。一実施形態においては、ベースコム部分1208bは、ディスク内で90°離れて構成されているリブ1204を有する。ドレープスリーブ1205の近位端は、ベースコム部分1208bのフレームの各々に連結されている。従って、リブが形成されたベースコム部分1208bは、器具マニピュレータの回転可能ベースプレートにおいて密にクラスター化された個々の器具マニピュレータをドレープで覆うのに役立ち、更に、ドレープで覆われた器具マニピュレータが手術手順中に移動するときにドレープスリーブ1205の方位及び配置を維持するのに役立つ。
【0101】
図12は、例えば、器具マニピュレータがそれぞれの挿入機構に沿って伸張するときに、ドレープスリーブ1205すべてが伸張状態にあることを示しているが、ドレープスリーブは、器具マニピュレータが互いに対して独立して及び/又は従属して制御されるときに、独立して収縮及び伸張することが可能であることに留意する必要がある。
【0102】
また、ベースコム部分1208bは、ベースコム部分のフレームの各々を介して器具マニピュレータを適合させるように空間が与えられる限り、90°以外の角度で方向付けられる種々の数のリブを有することが可能であることに留意する必要がある。一実施例においては、ベースコム部分1208bは、各々が器具マニピュレータを囲むように大きさ決めされた複数の部分に円形領域を分割する複数のリブを有することが可能である。
【0103】
ロールカバー部分1208aは、マニピュレータプラットフォームのフレーム(例えば、マニピュレータハロー)にフレキシブルに搭載され、ベースコム部分1208bは、回転可能ベースプレート1140aにフレキシブルに搭載され、故に、ベースプレート140aが回転されるときに、ベースコム部分1208bはまた、ドレープで覆われた器具マニピュレータと一緒に回転する。一実施例においては、ドレープスリーブ1205の近位端はベースコム部分1208bに連結されているために、ドレープスリーブ1205すべてが、より近位のドレープ部分1100bに関連する群として一緒に回転する。
【0104】
図13A及び13Bは、本発明の実施形態に従った、組み立てられた無菌アダプタ1250の斜視図及び無菌アダプタ1250の分解図を示す。無菌アダプタ1250は、下で更に説明するように、ブート壁1252aと、器具マニピュレータにおけるポストのための通路としての役割を果たす円筒状開口1252bとを有するブート(boot)1252を有する。ドレープスリーブ1205の遠位端は、ブート壁1252aの外側表面に連結され得る。アダプタ1250は、無菌アダプタの上部表面上の器具マニピュレータとの係合のための無菌アダプタの下側で、手術用器具を正確に位置合わせ、位置決め及び保持する役割を果たす一対の支持部1258を更に有する。アダプタ1250は、手術用器具の手首、転がり、把持及び並進運動を制御するためのそれぞれの手術器具の入力部とそれぞれの器具マニピュレータの出力部との間を接続するフレキシブルな膜インタフェース1254を更に有する。一実施形態においては、膜インタフェース1254は、関連器具マニピュレータ出力部と接続するための把持アクチュエータインタフェース1254bと、揺動アクチュエータインタフェース1254cと、手首アクチュエータインタフェース1254dと、転がりアクチュエータインタフェース1254eとを有する。
【0105】
一実施形態においては、転がりアクチュエータインタフェース1254eは、無菌アダプタ1250内で無菌障壁を回転させて保持するように設計されている。
図13Cに示すように、一特徴においては、ロールアクチュエータインタフェース1254eは、平坦な保持プレート1254fを受け入れるディスクの外周の周囲にスロット又は溝1257bを有するロールディスク1257aを有する(
図13B)。保持プレート1254fは、フレキシブルな膜インタフェース1254に取り付けられ、無菌アダプタ及びドレープのための無菌障壁を保持しつつ、ロールディスクが回転することを可能にする。
【0106】
マニピュレータインタフェース1254はブート1252と支持部1258との間に位置付けられ、チューブ1256は、ブート1252と、膜インタフェース1254と、支持部1258を一緒に連結する。チューブ1256は、ブート開口1252bと膜開口1254bとを位置合わせし、チューブ1256のシャフト部分はそれらの開口内に位置付けられる。チューブリップ1256aはブート開口1252b内に保持され、チューブ端部1256は、
図13Aに両方向矢印により示されているように、故に、支持部1258が、チューブシャフトの特定の鉛直方向距離だけ移動可能であるように、チューブ1256が支持部1258に対してフレキシブルに連結される。
【0107】
任意に、把持アクチュエータインタフェースプレート1254b’、揺動アクチュエータインタフェースプレート1254c’及び手首アクチュエータインタフェースプレート1254d’は、関連器具入力部との改善された係合及び連結のために、把持アクチュエータインタフェース1254b、揺動アクチュエータインタフェース1254c及び手首アクチュエータインタフェース1254dのそれぞれの下側に連結されることが可能である。
【0108】
図14A及び14Bは、本発明の実施形態に従った器具マニピュレータ1300の底方向からの斜視図及び平面図である。この例示としての実施形態においては、器具は、器具マニピュレータ1300の遠位面1342aに対して搭載されている。遠位面1342aは、
図3乃至8に関連付けて上で説明している器具マニピュレータに類似していて、搭載されている器具に作動力を伝達する種々の作動出力部を有する。
図14A及び14Bに示すように、そのような作動出力部は、把持出力レバー1342b(器具エンドエフェクタの把持運動を制御する)と、揺動出力レバー1342c(遠位端平行連携(“揺動”又は“エルボー”機構)の左右方向運動及び上下方向運動を制御する)、手首出力ジンバル1342d(器具エンドエフェクタの偏揺れ運動及び傾斜運動を制御する)及び転がり出力ディスク1342e(器具の転がり運動を制御する)を有することが可能である。器具マニピュレータ1300における独立したアクチュエータ駆動モジュール(モジュール542b’、542c’、542d’及び542e’に関して上で説明してものと同様)はアクチュエータ出力部1342b、1342c、1342d及び1342eを備えている。同様に、アクチュエータ出力部1342b乃至1342eはばね負荷されることが可能である。適用可能な出力部、及びそのような出力部を受け入れる器具力伝達機構の関連部品の詳細については、米国特許出願第12/060,104号明細書(2008年3月31日出願、米国特許出願公開第2009/0248040A1号明細書)に開示されていて、それは本明細書において参考により援用される。そのような入力部を受け入れることが可能である例示としての外科手術用器具の近位端の例については、米国特許出願第11/762,165号明細書に開示されていて、それは本明細書において参考により援用される。簡単には、左右方向自由度及び上下方向自由度は遠位連携及び近位連携により与えられ、エンドエフェクタ偏揺れ自由度及びエンドエフェクタ傾き自由度は、遠位フレキシブル手首機構により与えられ、器具転がり自由度は、本質的に一定の位置及び傾き/偏揺れ方向においてエンドエフェクタを保ちつつ、器具シャフトを転がすことにより与えられ、器具把持自由度は、2つの移動可能な対向するエンドエフェクタ顎により与えられる。そのような自由度は多い又は少ない自由度の例示である(例えば、一部の実施形態においては、カメラ器具は器具転がり及び把持自由度を除いている)。
【0109】
器具マニピュレータ1300は、無菌アダプタ1250を介して搭載された器具のアクチュエータ入力部と器具マニピュレータ1300のアクチュエータ出力部を係合するラッチ機構1342gを更に有する。一実施形態においては、上記のラッチ機構に類似して、ラッチ1342gが作動されるとき、器具マニピュレータ1300の内側フレーム1342iは、外側シェル1342hに設定された距離だけ、搭載された器具の方に移動する。ばね負荷モジュール出力部1342b乃至1342eは、無菌アダプタ1250を介して、及び実施例においては膜インタフェース1254を介して、適切な器具入力部と係合する。搭載器具は、故に、無菌アダプタの膜インタフェースを介して支持部1258の上部表面とばね負荷出力部との間にクランプ連結される。
【0110】
上記のように、ドレープ1100aは、使用中に器具マニピュレータの外周の外側に伸張することが可能である個々のラッチ1342gを覆うように個々のドレープポケット1105上のラッチカバー(
図11D)を有することが可能である。ラッチハンドルは各々、ドレープの回転可能シールが器具マニピュレータ上を通ることを可能にするように、対応する器具マニピュレータの外周の内側を折り畳むことが可能である。
【0111】
器具マニピュレータ1300は、下で更に説明するように、無菌アダプタ1250に器具マニピュレータ1300を動作可能に連結するポスト1350を更に有する。
【0112】
ここで
図15及び16A乃至16Eを参照するに、無菌アダプタ1250への器具マニピュレータの連結を例示して示している。
図15は、本発明の実施形態に従った無菌アダプタ1250に動作可能に連結された器具マニピュレータ1300の底方向からの斜視図である。
図16A乃至16Eは、本発明の実施形態に従った無菌アダプタ1250及び器具マニピュレータ1300を連結させる順序を示している。
図16Aに示すように、ポスト1350は、ブート開口1252b内のチューブ1256と位置合わせされている。次いで、
図16Bに示すように、ポスト1350の自由端が、
図16Eに示すように、ポスト1350のその自由端におけるタブが関連支持開口と係合するまで、タブ1256を通って位置付けられる。従って、ポスト1350の一端は支持部1258に固定して取り付けられている。一実施形態においては、支持部1258は、
図16C−1及び16C−2に示すように、キーホール開口1258bを有するスライド1258aを有する。支持部1258は、矢印IIで示しているように、無菌アダプタが最終位置まで上げられるとき、ポストがキーホール開口1258bの端部に移動することを可能にするように、矢印Iの方向にスライドされる。次いで、支持部1258は、キーホール開口1258bがポスト1350において溝1350a内にロックされるように、バイアス手段により矢印IIIの方に戻される。
【0113】
無菌アダプタの支持部1258が、器具マニピュレータハウジングにおいてポストに取り付けられた後、無菌アダプタ1250のブート1252は、器具マニピュレータ1300の遠位面1342aに取り付けられる。一実施形態においては、この取り付けは、器具マニピュレータの内側フレーム1342iの側面における窪みに入れるブートの内側壁における突起によりなされる。そのような取り付けは、内側フレームがラッチ1342gにより上げられる又は下げられるときに、ブートが内側フレームに取り付けられたまま保たれるようにする。
【0114】
図17A乃至17C並びに
図18A及び18Bを参照するに、外科手術用器具1460の無菌アダプタ1250への連結が例示されて表されている。
図17A乃至17Cは、本発明の実施形態に従った、無菌アダプタ1250に外科手術用器具1460を連結するシーケンスを示している。
図17Aに示すように、器具1460は、力伝達機構1460a及びシャフト1460bを有する。シャフト1460bの先端はエントリガイド1500内に位置していて、カニューレ1600内で回転自在である。
図17Bは、一対の支持部1258と係合し且つその支持部の対により位置合わせされた器具1460の力伝達機構1460aにおけるタブ(例えば、
図18Aにおけるタブ1462)を示し、
図17Cは、支持部1258の先端に沿って更に並進される力伝達機構1460aを示している。
【0115】
図18A及び18Bは、支持部1258に沿って力伝達機構1460aの完全並進の前の、器具1460及び無菌アダプタ1250の拡大した斜視図及び側面図のそれぞれを示している。器具1460は、保持機構が支持部に沿って達するまで、支持部1258に沿って並進し、その保持機構は、一実施例においては、支持部1258の上部表面における開口と位置合わせし且つ連結するタブ1462の下面における凸部であることが可能である。ラッチ1342gは次いで、無菌アパーチャ1250を介して器具入力部と器具マニピュレータ出力部を係合するように作動する。一実施形態においては、器具が搭載された後に、支持部1258がポスト1350から取り外されないようにする。一実施形態においては、支持部の凸部は、器具が搭載されている間は、支持部が動かないようにするように、器具力伝達機構ハウジングの側部の凹部と係合することが可能である。
【0116】
エントリガイド
エントリガイド、カニューレ及びカニューレ搭載アームの実施形態について、ここで更に詳細に説明する。上記のように、外科手術用器具は、各々の外科手術用器具マニピュレータに搭載され、且つそれにより作動される。器具は、種々の器具が特定のマニピュレータに交換可能に搭載されることが可能であるように、取り外し可能に搭載されることが可能である。一特徴においては、1つ又はそれ以上のマニピュレータが、特定種類の器具、例えば、カメラ器具を支持し且つ作動させることが可能である。器具のシャフトは、器具マニピュレータから遠位方向に延在している。シャフトは、患者の体内の方にエントリポートに(例えば、体壁を通って、自然開口において)位置している共通カニューレを通って延びる。カニューレは、マニピュレータアームに移動可能に連結されているカニューレ搭載アームに連結されている。一特徴においては、エントリガイドは、カニューレにおいて少なくとも一部が位置付けられ、各々の器具シャフトは、その器具シャフトのための付加的支持を提供するように、エントリガイド中をチャネルを介して延びている。
【0117】
図19A及び19Bは、収縮位置及び展開位置のそれぞれにおいて移動可能な及び/又は取り外し可能なカニューレマウントの実施形態の斜視図を示している。カニューレマウント1750は、マニピュレータアームのリンクに対して、例えば、第4マニピュレータリンク138(
図1A及び1B)の近位端に隣接していて、移動可能に連結された伸張部1752を有する。カニューレマウント1750は更に、伸張部1752の遠位端にクランプ1754を有する。一実施形態においては、運動の遠隔中心がカニューレに沿って位置付けられるように、伸張部1752は、正確な位置にカニューレを保持する動作位置とリンク1738に隣接する収容位置との間を伸張部1752が移動することを可能にする回転ジョイントによりリンク1738に連結されている。一実施形態においては、伸張部1752は、マニピュレータアームをドレープで覆うときに、カニューレマウントをドレープでより容易に覆い、及び/且つ、患者の周囲により広い空間を得るように、矢印Cで示しているように、リンク1738の方の上下に回転されることが可能である。カニューレマウント及びマニピュレータアームの全体のフォームファクタを減少させるために、伸張部がリンクに対して近づくように移動することが可能であるように、ボール及びソケットジョイント又はユニバーサルジョイント、遠隔効果をもたらすスライディングジョイントなどの他のジョイントが、伸張部1752を連結するように用いられることが可能である。他の実施形態においては、伸張部1752は、マニピュレータアームに対して内部的に伸縮することが可能であり、又は、伸張部1752は、リンクから取り外し可能及びリンクに対して動作可能に連結可能であることが可能である。外科手術システムの動作中、伸張部1752は動作位置に維持される。
【0118】
図20A及び20Bは、
図19A−19Bに示すように、カニューレマウント1750のクランプ1754に搭載されたカニューレ1800の斜視図であり、
図21は、自立カニューレ1800の斜視図である。一実施形態においては、カニューレ1800は、クランプ1754に対して取り外し可能に連結される近位部1804と、器具シャフトの通路(
図22に示す)のためのチューブ1802とを有する。一旦、カニューレ1800がクランプ1754に搭載されると、クランプは、カニューレ1800が回転しないようにすることが可能である。一実施例においては、チューブ1802はステンレススチールから成り、チューブ1802の内側表面は潤滑剤又は減摩材がコーティングされる又は裏打ちされることが可能であるが、カニューレは、他の材料から成る若しくはライナーを有する又は有しないことが可能である。近位部1804は、下で
図22及び23A−23Bに示し、詳細に説明するように、チャネルを有するエントリガイドに対して、外側リッジ1806、1808及び内側空間を有することが可能である。カニューレなどの、適用可能なアクセサリの例については、米国特許出願第11/240,087号明細書に開示されていて、該出願の全開示は、全ての目的のために、本明細書において参考により援用される。
【0119】
ここで、本発明の実施形態に従って、
図22及び23A−23Bを参照するに、
図22は、
図21のカニューレ1800の断面図と、搭載エントリガイドチューブ2200の断面図を示している。器具マニピュレータ1942は、挿入機構1942aを伸縮させることにより一実施例においては、マニピュレータプラットフォームの回転可能ベースプレート1940に連結され、器具2160は器具マニピュレータ1942(例えば、器具マニピュレータの遠位面又は近位面)に搭載されている。一実施形態においては、複数の伸縮挿入機構1942aは、回転可能ベースプレート1940に対称的に搭載され、一実施例においては、4つの器具マニピュレータを提供するように互いから90°離れて設定される。他の構成及び数の挿入機構(従って、器具マニピュレータ)も可能である。
【0120】
故に、器具2160は、器具シャフト2160bがマニピュレータアセンブリロール軸1941の周囲でクラスター化されるように、器具マニピュレータ1942に対して搭載される。各々のシャフト2160bは、器具の力伝達機構2160aから遠位方向に延び、すべてのシャフトは、患者の体内にポートで位置付けられるカニューレ1800の中を通って延びている。カニューレ1800は、一実施形態においては、第4マニピュレータリンク138に連結されているカニューレマウント1750によりベースプレート1940に関して固定位置に取り外し可能に保持される。エントリガイドチューブ2200は、カニューレ1800内に挿入され、且つカニューレ内で自在に回転し、各々の器具シャフト2160bは、ガイドチューブ2200内の関連チャネル2204の中を通って延びている。カニューレ及びガイドチューブの長手方向中心軸は一般に、ロール軸1941と一致している。従って、ベースプレート1940が器具マニピュレータ及びそれぞれの器具シャフトを回転させるとき、ガイドチューブ2200は、ベースプレート1940が回転するにつれて、カニューレ内で回転する。一実施例においては、エントリガイドチューブ2200は、ガイドチューブの長手方向中心軸に関してカニューレ内で自在に回転可能であり、そのガイドチューブの長手方向中心軸はまた、カニューレの長手方向中心軸と位置合わせされていて、そのカニューレの長手方向中心軸はまた、マニピュレータプラットフォームのロール軸1941に対して位置合わせされている又は平行になっている。他の実施形態においては、器具シャフトのためのそのような固定された支持が好ましい場合には、エントリガイドチューブ2200は、カニューレに対して固定的に搭載されることが可能である。
【0121】
エントリガイドチューブ2200の断面視は、連結リップ2202、チューブ2206及びチャネル2204a、2204bを有するエントリガイドチューブの側方斜視図及び平面図を示す
図23A及び23Bの線III−IIIに沿って取られている。エントリガイドチューブ2200は、カニューレ1800の近位部1804に対してエントリガイドを回転可能に連結するように、チューブ2206の近位端にリップ2202を有する。一実施例においては、リップ2202は、カニューレの複数のリッジ(
図22におけるリッジ1806及び1808)間を連結する。他の実施形態においては、エントリガイドは、下で更に説明するように、連結リップを必要としない。
【0122】
エントリガイドチューブ2200は更に、器具シャフト(例えば、
図22における基部シャフト2160b)の通路についてのエントリガイドの中を通るチャネル2204a、2204bを有する。一特徴においては、1つのチャネル又は通路は器具シャフト毎に備えられ、チャネルは異なる幾何学的形状及び大きさを有することが可能である。
図23A及び23Bに示すように、チャネル2204aは、チャネル2240bとは異なる形状及び大きさを有し、一実施例においては、チャネル2204aは、より大きい且つより固いシャフトを有するカメラ器具を案内するために用いられ、チャネル2204bは、代表的な器具の器具シャフトを案内するように用いられる。円形、卵形、楕円、三角形、四角形、矩形及び台形などの形状の開口を有するチャネルについて他の形状及び大きさが適用可能である。
【0123】
ベースプレートがロール軸1941に関して回転するとき、器具マニピュレータ1942及び器具2160のクラスターも、ロール軸に関して回転する。器具シャフト2160bがロール軸1941に関して、更にエントリガイドのチャネル2204内で回転するとき、器具シャフトは、エントリガイドチャネルの内側表面に衝突し、少なくとも1つの回転している器具シャフトが、カニューレ1800に関して且つカニューレ内で回転するように、エントリガイドチューブ2200を駆動し、そのカニューレが、カニューレマウントのクランプ、例えば、カニューレマウント1750のクランプ1754によりクランプされて、静止されたまま保たれる。
【0124】
器具シャフトは、それぞれの挿入機構1942aの動きにより、互いから独立して又は互いに一緒に、エントリガイドチャネルの中に挿入され、その中で畳み込まれることが可能である。器具2160は、ロール軸1941に関して時計方向又は反時計方向に回転し、従って、エントリガイドチューブ2200はそれと連携して、ロール軸に関して時計方向又は反時計方向に回転することが可能である。4つのチャネルがエントリガイドにおいて示されていて、複数の器具シャフトがエントリガイド及びカニューレの中を通るように示されているが、エントリガイド及びカニューレアセンブリは、エントリガイド及びカニューレの中を通るチャネル及び器具/器具アセンブリシャフトの他の数を有して外科手術システムにおいて機能することが可能である。例えば、エントリガイド及びカニューレの中を1つ又はそれ以上の器具/器具アセンブリシャフトを通すための1つ又はそれ以上のチャネルを有するエントリガイドチューブは、本発明の範囲内にある。更に、エントリガイドを回転させる器具シャフトにより付与されるトルクは、複数の器具シャフトにより対称的に付与される必要はないが、単独の器具シャフトにより付与される大部分のトルクを有して、非対称に且つ独立して付与されることが可能である。
【0125】
一実施形態においては、エントリガイドチューブ2200及びカニューレ1800は各々、カニューレ及び/又はエントリガイドチューブに関する情報の識別を含み、外科手術システム(例えば、マニピュレータアームにより読み取る)が特定のエントリガイド及び/又はカニューレの識別を認識することを可能にする、電気的インタフェース又は無線インタフェース、例えば、無線周波数識別(RFID)チップ又はタグを有することが可能である。金属リング、機械的ピン及び誘導的検知機構が、識別データを読み取るために用いられることも可能である。電気的インタフェース又は無線インタフェースは、データ(例えば、エントリガイドチューブ/カニューレの種類)が外科手術用システムに伝達されることを可能にする。種々の器具、ガイドチューブ及び撮像システムについての機械的インタフェース及び電気的インタフェースに関する詳細、並びに無菌フィールドを維持するための無菌のためにドレープで覆うことに関する詳細については、米国特許第6,866,671号明細書(Tierney等による)及び米国特許第6,132,368号明細書(Cooperによる)に開示されていて、それらは本明細書において参考により援用され、エントリガイド及びカニューレと共に容易に用いられることが可能である。
【0126】
他の実施形態において、エントリガイドチューブが連結リップを有しないことが可能であることに、更に留意する必要がある。
図24は、カニューレ2400に搭載されたエントリガイドチューブ2300の断面図である。エントリガイドチューブ2300はカニューレ2304を有し、上記のエントリガイドチューブ2200に類似しているが、連結リップを有していない。それに代えて、エントリガイドチューブ2300は、エントリガイドチャネル2304の内部壁に対する器具シャフト2160bの衝突力によりカニューレの近位部に回転可能に連結される。一特徴においては、エントリガイドチューブは、エントリガイドチューブの中を通っている器具シャフトにより駆動される、カニューレの長手方向軸又はロール軸に沿って回転可能に且つ長手方向に移動することが可能であることに更に、留意する必要がある。
【0127】
図24A乃至24Dを参照するに、上記のようなエントリガイドと共に用いられることが可能であるカニューレ搭載アーム、クランプ及びカニューレの他の実施形態が示されている。
図24A及び24Bは、折り畳み位置及び展開手術位置のそれぞれにおいて移動可能な及び/又は取り外し可能なカニューレマウント2450の実施形態の斜視図である。カニューレマウント2450は、例えば、第4マニピュレータリンク138(
図1A及び1B)の近位端に隣接して、器具マニピュレータアセンブリプラットフォーム2440を有するマニピュレータアームのリンク2438に移動可能に連結された伸張部2452を有する。一実施形態においては、伸張部2452は、運動の遠隔中心がカニューレに沿って位置付けられるように、正確な位置にカニューレを保持する動作位置とリンク2438に隣接する収容位置との間を伸張部2452が移動するようにする回転ジョイント2453によりリンク2438に連結されている。一実施形態においては、伸張部2452は、矢印Dで示すように、マニピュレータアームをドレープで覆うときに、カニューレマウントをドレープでより容易に覆うように及び/又は患者の周囲により広い空間を与えるように、リンク2438の方の上下方向に回転されることが可能である。他のジョイントであって、カニューレマウント及びマニピュレータアームの全体的なフォームファクタを減少させるように、伸張部がリンクに対してより近くに移動することを可能にするように、ボール及びソケットジョイント又はユニバーサルジョイント、伸縮効果をもたらすスライドジョイントなどを有するが、それらに限定されない、他のジョイントが、伸張部2452に連結するように用いられることが可能である。他の実施形態においては、伸張部2452は、マニピュレータアームに関して内部的に伸縮することが可能であり、伸張部2452は、リンクから取り外し可能である及びそのリンクに動作可能に連結可能であることが可能である。
【0128】
カニューレマウント2450は更に、伸張部2452の遠位端においてレセプタクル2456の上方にクランプ2454を有する。
図24Cは、
図24Dに示すように、カニューレマウント2450のクランプ2454及びレセプタクル2456に搭載可能なカニューレ2470の斜視図である。一実施形態においては、カニューレ2470は、ボス2476を有する近位部2474を有する。ボス2476は、相手方レセプタクル2456(半球表面2478からレセプタクル2456への矢印で示している)内に位置付けられる底部半球表面2478を有する。ボス2476は、適切な位置にボスをロックするクランプ2454により係合される上部表面2479を更に有し、故に、カニューレマウント伸張部2452に対して固定位置にカニューレ2470を有することが可能である。クランプ2454はレバー2480により作動される。カニューレ2470は更に、器具シャフトの通路(
図22及び24に示す)のためのチューブ2472を有する。一旦、カニューレ2470がクランプ2454及びレセプタクル2456により搭載されると、クランプは、カニューレ2470が回転しないように保つことが可能である。一実施例においては、チューブ2472はステンレススチールから成り、チューブ2472の内側表面は、潤滑剤又は減摩材がコーティングされる又は裏打ちされることが可能であるが、カニューレは、他の材料から成る若しくはライナーを有する又は有しないことが可能である。近位部2474は、
図22、23A−23B及び24に示すように、チャネルを有するエントリガイドを受け入れる内側の空間を有する。カニューレなどの適用可能なアクセサリの例については、2005年9月30日に出願された米国特許出願第11/240,087号明細書に開示されていて、該出願の全開示は、全ての目的のために、本明細書において参考により援用される。
【0129】
一特徴においては、上記のエントリガイド及びカニューレアセンブリは、送気と、手術部位で送気ガスを必要とする手順とを支援する。エントリガイド及びカニューレアセンブリを通る送気については、“Entry Guide for Multiple Instruments in a Single Port System”と題され、2010年2月12日に出願された米国特許出願第12/705,439号明細書に更に開示されていて、それは本明細書において参考により援用される。
【0130】
有利に、エントリガイドが器具シャフトにより従属して駆動されるために、エントリガイドを回転させるモータ又は他の作動機構の必要性は取り除かれる。更に、そのエントリガイドは、患者又は手術部位の近傍において体積の大きいアクチュエータ機構を設けなくて済むことを可能にする。従って、エントリガイド及びカニューレアセンブリは、手術手順中、器具と他の装置との間の衝突を回避して、単独の部品により複数の器具を有利に組織化して、それらを支援する効率的な且つロバストな手段を提供する。
【0131】
単独ポート手術システムアーキテクチャ
図25A乃至25C、
図26A乃至26C及び27A乃至27Cは、患者Pに関して異なる方向に位置付けられた器具挿入軸又は器具マニピュレータアセンブリロール軸を有する外科手術用システム2500の異なるビューを示している。
図25A乃至25Cは、下方に向かい且つ患者Pの頭部Hの方に向かって方向付けられたマニピュレータアセンブリロール軸2541を示している。
図26A乃至26Cは、下方に向かい且つ患者Pの足部Fの方に向かって方向付けられたマニピュレータアセンブリロール軸2541を示している。
図27A乃至27Cは、上方に向かい且つ患者Pの頭部Hの方に向かって方向付けられたマニピュレータアセンブリロール軸2541を示している。
【0132】
外科手術用システム2500は、ロボット手術システムのための運動の遠隔中心を位置付けるためのセットアップリンク2518と、能動的近位リンク2526及び能動的遠位リンク2528を有するマニピュレータアームアセンブリ2501とを有し、そのシステムにおいて、近位リンク2526は、能動的ヨージョイント2524によりセットアップリンク2518に動作可能に連結されている。複数の器具マニピュレータ2542は、遠位リンク2528の遠位端に回転可能に連結された器具マニピュレータアセンブリを構成する。一実施形態においては、その複数の器具マニピュレータは、伸縮挿入機構2544によりマニピュレータアセンブリプラットフォーム2540に連結されている。複数の器具マニピュレータ2542はロール軸2541に関して回転可能である。一実施形態においては、複数の器具マニピュレータの各々は、複数のアクチュエータ出力部が遠位方向に突き出ている遠位面を有し、複数の外科手術用器具2560は、対応する器具マニピュレータの遠位面に連結されている。カニューレマウント2550は遠位リンク2528に移動可能に連結され、カニューレ及びエントリガイドチューブアセンブリ2552はカニューレマウント2550に連結されている。一実施形態においては、カニューレは、ロール軸2541と実質的に一致している長手方向中心軸を有する。各々の外科手術用器具は、エントリガイドチューブとカニューレの中を通るシャフトを有し、故に、少なくとも1つの器具シャフトの回転は、カニューレの長手方向軸に関してエントリガイドチューブを回転させる。
【0133】
ヨージョイント2524における鉛直方向マニピュレータアセンブリヨー軸2523は、外科手術用システム(
図2Cを参照されたい)についての運動の遠隔中心に関して近位リンク2526を実質的に360°回転させるようにする。一実施例においては、マニピュレータアセンブリのヨー回転は連続的であり、他の実施例においては。マニピュレータアセンブリのヨー回転はほぼ±180°である。更に他の実施例においては、マニピュレータアセンブリのヨー回転は約660°である。器具は、マニピュレータアセンブリロール軸2541と一般に位置合わせされた方向に、患者の体内に挿入されるため、マニピュレータアームアセンブリ2501は、マニピュレータアセンブリヨー軸の周囲で何れかの所望の方向に器具挿入方向を位置付ける及び再位置付けるように能動的に制御されることが可能である(例えば、患者の頭部の方の器具挿入方向を示す
図25A乃至25Cと、患者の足部の方の器具挿入方向を示す
図26A乃至26Cとを参照されたい)。この能力は、一部の外科手術中にかなり有利である。器具が、へそに位置付けられた単独のポートを介して挿入される特定の腹部外科手術の場合(
図25A乃至25Cを参照されたい)には、例えば、器具は、新しいポートを患者の体壁に作る必要なく、腹部の四半部すべてにアクセスするように位置付けられることが可能である。マルチ四半部アクセスは、例えば、腹部全体に亘るリンパ節へのアクセスのために必要である。それとは対照的に、マルチポート伸縮外科手術用システムにおいては、他の腹部四半部への完全なアクセスのために、追加のポートが患者の体壁に形成される必要がある。
【0134】
更に、マニピュレータは、構成の鉛直下方で及び僅かに上方に傾けて、器具を方向付けることが可能である(例えば、身体開口部O近傍で上方に傾けられた器具挿入方向を示す
図27A乃至27Cを参照されたい)。従って、単独のエントリポートを通る器具についてのそのような進入角度(遠隔中心に関するヨー及びピッチの両方)により、容易に操作及び変更が可能である一方、患者の安全性及び操作する患者側担当者のためにエントリポートの周囲に増加した空間を得ることができる。
【0135】
更に、マニピュレータアームアセンブリ2501のリンク及び能動的ジョイントが、単独のエントリポートを通る器具の進入についての傾斜角度を容易に操作するように用いられる一方、単独のエントリポートの周囲で空間を得るように、用いられることが可能である。例えば、アームアセンブリ2501のリンクは、患者から“弧を描いて遠ざかる”フォームファクタを有するように位置付けられることが可能である。そのような弧を描いて遠ざかることは、マニピュレータを患者と衝突しないようにする、ヨー軸2523に関するマニピュレータアームの回転を可能にする。そのように弧を描いて遠ざかることはまた、患者側の担当者が器具を交換するためのマニピュレータへのアクセスを容易にし、手動器具(例えば、手動腹腔鏡器具又は折り畳み装置)を挿入して操作するためのエントリポートへのアクセスを容易にする。換言すれば、複数の器具マニピュレータ2542のクラスターの作業空間は略、器具マニピュレータ2542の近位端における円錐の円形端と、運動の遠隔中心における円錐の先端とを有する、略円錐形状であることが可能である。そのような作業空間は、患者と外科手術ロボットシステムとの間の干渉が少なく済み、手術部位への改善されたアクセス及び手術スタッフによる患者への改善されたアクセスを可能にするシステムについてのより大きい範囲の運動をもたらす。
【0136】
従って、大きい運動範囲と関連するマニピュレータアームアセンブリ2501の構成及び形状は、単独のポートを介してのマルチ四半部手術を可能にする。単独の切開を介して、マニピュレータは、一方向に器具を方向付け、容易に方向変換することを可能にし、例えば、変わらない鉛直方向ヨー軸2523に関してマニピュレータアームを移動させることにより、患者の頭部の方への方向で作業し(例えば、
図25A乃至
図25Cを参照されたい)、続いて患者の骨盤の方に方向変換する(例えば、
図26A乃至
図26Cを参照されたい)ことが可能である。
【0137】
ここで、
図28を参照するに、本明細書で記載している手術用器具アセンブリ及び構成要素を組み込んだ最小侵襲性遠隔外科手術用システムのための集中型運動制御及び調整器システムアーキテクチャの特徴を示している。運動調整器システム2802は、マスター入力2804と、センサ入力2806と、最適化入力2808とを受け入れる。
【0138】
マスター入力部2804は、マスター制御機構において外科医の腕、手首、手及び指の動きを含むことが可能である。入力部はまた、他の動作(例えば、ボタン、レバー、スイッチなどを押す又は動かす指、足、膝など)、及び特定の構成要素の位置及び方位を制御する若しくは特定のタスクの動作(例えば、電気的エンドエフェクタ又はレーザ、撮像システム動作などにエネルギー供給する)を制御する命令(例えば、音声)によるものであることも可能である。
【0139】
センサ入力部2806は、例えば、測定されたサーボモータ位置又は検知された曲がり情報からの位置情報を含むことが可能である。“Robotic surgery system including position sensors using fiber Bragg grating”と題された米国特許出願第11/491,384号明細書(Larkin等による)において、位置検知のためのファイバブラッグ格子を用いることが開示されていて、それは本明細書において参考により援用される。そのような曲げセンサは、構成要素(例えば、エンドエフェクタ先端)についての位置及び方位情報を決定するときに用いられる、本明細書で記載している種々の器具及び撮像システムに組み込まれることが可能である。位置及び方位情報はまた、患者の体内にある構成要素の位置及び方位における変化をリアルタイムに検知する、患者の体外に位置付けられている1つ又はそれ以上のセンサ(例えば、蛍光透視、MRI、超音波など)により生成されることが可能である。
【0140】
下で説明するように、ユーザインタフェースは3つの結合された制御モードであって、器具についてのモードと、撮像システムについてのモードと、マニピュレータアーム構成及び/又はロール軸制御についてのモードとを有する。ガイドチューブについてのモードも有効である。それらの組み合わされたモードは、ユーザが1つの部分を直接制御するのではなく、全体としてのシステムにアクセスすることを可能にする。従って、運動調整器は、特定の目的を達成するように、全体的なシステム運動学(即ち、システムの全体的自由度)の有利点をどのようにとるかを決定する必要がある。例えば、1つの目的は、患者の周囲の空間を最適化すること、又はマニピュレータアームのフォームファクタを最小化することであることが可能である。他の目的は、特定の構成についての器具の作業空間を最適化することであることが可能である。他の目的は、撮像システムの視野の中心を2つの器具の間に維持することであることが可能である。従って、最適化入力2808は高レベルのコマンドであることが可能であり、又は、その入力はより詳細なコマンド又は間隔情報を含むことが可能である。高レベルのコマンドの例は、作業空間を最適化するインテリジェント制御器に対するコマンドである。より高いレベルのコマンドの例は、カメラの最適化を開始又は終了する撮像システムについてのものである。センサ入力の例は、作業空間の限界に達したことについての信号である。
【0141】
運動調整器2802は、種々の伸縮外科手術用システムアームのためのマニピュレータに関連する種々のアクチュエータ制御器及びアクチュエータ(例えば、サーボモータ)にコマンド信号を出力する。
図28は、器具アクチュエータ、能動的アームジョイント、マニピュレータプラットフォームの回転機構、及び能動的伸縮挿入機構に制御信号を送ることが可能である、4つの器具制御器2810、撮像システム制御器2812、ロール軸制御器2814及びマニピュレータアーム制御器2816に送信される制御信号の例を示している。他の数の及び組み合わせの制御器を用いることが可能である。制御及びフィードバック機構並びに信号、例えば、検知システムからの位置情報(例えば、1つ又はそれ以上の無線送信器、RFIDチップなど)及び他のデータについては、米国特許出願第11/762,196号明細書に開示されていて、それは本明細書において参考により援用され、そして本明細書において適用可能である。
【0142】
従って、一部の特徴においては、遠隔外科手術システムを操作する外科医は、上で特定された少なくとも3つの制御モードであって、器具を移動させる器具制御モードと、撮像システムを移動させる撮像システム制御モードと、マニピュレータプラットフォームの回転若しくは互いに対して又は特定のフォームファクタに対してマニピュレータアームのリンクを構成するための、またマルチ四半部手術を可能にする外側のヨー軸に関する能動的動作のためのマニピュレータアームロール軸制御モードとに、同時に且つ自動的にアクセスすることができる。
【0143】
図29は、本明細書で記載している外科手術用システムアーキテクチャ及び構成要素を組み込む最小侵襲性遠隔外科手術用システムについての分散型運動制御及び調整システムアーキテクチャの特徴を示す図である。
図29の例示としての特徴においては、制御及び変換プロセッサ2902は、2つのマスターアーム最適化器/制御器2904a、2904bと、3つの外科手術用器具最適化器/制御器2906a、2906b、2906cと、撮像システム最適化器/制御器2908と、ロール軸最適化器/制御器2910と情報を交換する。各々の最適化器/制御器は、遠隔外科手術用システムにおいてマスターアーム又はスレーブアーム(例えば、カメラ(撮像システム)アーム、器具アーム及びマニピュレータアームを含む)に関連する。最適化器/制御器の各々は、特定のアーム用の最適化目標2912a乃至2912gを受信する。
【0144】
制御及び変換プロセッサ2902と種々の最適化器/制御器との間の両方向矢印は、最適化器/制御器のアームに関連する“次のデータ”の交換を表す。即ち、“次のデータ”には、全アーム、ベースフレーム及び遠位先端フレームの全カーテシアン(Cartesian)構成がある。制御及び変換プロセッサ2902は、各々の最適化器/制御器がシステムにおけるアーム全部の現在のカーテシアン構成についてのデータを有するように、各々の最適化器/制御器から最適化器/制御器すべてに受信された“次のデータ”を経路付ける。更に、各々のアームについての最適化器/制御器は、アームについて一意である最適化目標を受信する。各々のアームの最適化器/制御器はその場合、それがその最適化目標を追求するときに、入力及び制約として他のアームの位置を用いる。一特徴においては、各々の最適化制御器は、その最適化目標を追求するために、内蔵された局所的最適化器を用いる。各々のアームの最適化器/制御器のための最適化モジュールは、別個にオン又はオフに切り替えられることが可能である。例えば、撮像システム及び器具アームのみについての最適化モジュールが、オンに切り替えられることが可能である。
【0145】
分散型制御アーキテクチャは、集中型アーキテクチャに比べてより高いフレキシビリティを備えるが、性能が低下する可能性がある。しかしながら、この分散型アーキテクチャにおいては、単独のモジュールが全システムの状態を認識している、集中型アーキテクチャにより実行される全体的最適化に対しては局所的である。
【0146】
リンクカウンターバランス
ここで、近位リンクにおけるカウンターバランス機構の実施形態について
図30A乃至37Cを参照して詳述する。
図30Aは、上記のアームアセンブリと実質的に同様のマニピュレータアームアセンブリ3001を示し、上記のアームアセンブリの特徴はアセンブリ3001に対しても適用することができ、
図30Bは、アームアセンブリ3001のカウンターバランス近位リンクのより拡大されたビューを示している。
図31乃至37Cは、近位リンクハウジングの壁のないカウンターバランスシステムの他のビュー及び特徴を示している。特に、
図31はカウンターバランスシステムの斜視図であり、
図32A乃至36Cは、隣接ピンと、線形ガイドと、線形ガイドに関してエンドプラグを移動させるための隣接ピンの運動範囲のビューを示し、
図37A乃至37Cは、本発明の種々の特徴に従ったロッカーアーム及び止めネジを示すカウンターバランス近位リンクの遠位端の方からの詳細なビューを示している。
【0147】
ここで
図30A及び30Bを参照するに、マニピュレータアームアセンブリ3001は、マニピュレータアセンブリヨー軸3023を構成するヨージョイントによりセットアップリンクに動作可能に連結可能である近位リンク3026を有する。近位リンク3026は、ピボット軸3070に関して遠位リンク3028に対して回転可能に連結される。一実施例においては、モータ3073は、ピボット軸3070に関して遠位リンク3028を回転させるように制御されることが可能である。一実施形態においては、遠位リンク3028は、遠位リンクの遠位端において器具マニピュレータアセンブリプラットフォーム3040を有する。カニューレマウント3050は、遠位リンク3028に移動可能に連結されている。一実施形態においては、プラットフォーム3040は、器具マニピュレータが器具マニピュレータアセンブリロール軸3041に関して搭載され且つ回転されることが可能である回転可能ベースプレートを備えている。ヨー軸3023、ロール軸3041及び器具マニピュレータアセンブリピッチ軸3039は、上記のように、運動の遠隔中心3046を構成する。
【0148】
ここで、
図30B及び31を参照するに、カウンターバランスリンク3026は、ハウジング近位端又は第1端3084aとハウジング遠位端又は第2端3084bとの間にある長手方向中心軸3084cを有するハウジング3084を有する。圧縮ばね3080は、長手方向軸3084cに沿って備えられ、ばね近位端又は第1端3080aとばね遠位端又は第2端3080bを有する。一実施形態においては、圧縮ばねは、シリコン−クロム合金から成るが、他の材料から成ることも可能である。ベース3092はハウジングの第1端に備えられ、アライメントリング3090により圧縮ばね3080の第1端3080aに連結されている。プラグ3074は、ハウジングの第2端に備えられ、圧縮ばね3080の第2端3080bに連結されている。一実施形態においては、アライメントリング3090は、圧縮ばね3080の第1端3080aに固定して連結され、プラグ3074は、そのばねの第2端3080bがねじ留めされる外側のねじ山(例えば、ねじ山3074a)を有する。
【0149】
ケーブルの第1端にカプラ3071を有するケーブル3088は、遠位リンク3028からの荷重に対して結合され、ケーブル3088の第2端はプラグ3074に対して動作可能に結合される。カプラ3071におけるケーブル3088の耐荷重端から、ケーブル3088は、複数のプーリー3076及び3078を通って、ハウジング3084の外部に出て、次いで、プラグ3074への結合の前にベース3092におけるプーリー3094を通る。遠位リンク3028からの荷重は、プーリー3094(
図31)に関する方向E1及びE2にケーブル3088を引っ張り、プラグ3074がE2方向にスプリング3080を圧縮するようにして、それにより、ピボット軸3070に関して遠位リンクからの荷重の少なくとも一部とカウンターバランスを取るようなる。
【0150】
安全性を高めるように、ケーブル3088はケーブル余長を有し得、そのケーブルは、ケーブル余長に対する張力を均一にするケーブル張力イコライザ3082に結合されている。ケーブルツイスタ3095は、プーリー3094とカップラ3071との間で互いに対してケーブル余長に動作可能に結合するように任意に用いられる。複数のキャップスクリュー3075がケーブル張力イコライザ3082とプラグ3074との間に備えられ得、カウンターバランスリンクの力オフセットを調整するように用いられ得る。一実施形態においては、3つのキャップスクリュー3075は、ケーブル張力イコライザ3082とプラグ3074とを連結し、1つのキャップスクリューが張力すべてを実質的に負担し、他の2つのキャップスクリューは余長及び安全性目的で備えられている。
【0151】
一特徴においては、プーリー3094とプラグ3074との間のケーブル3088の部分は、近位リンクハウジングの長手方向中心軸3084cに実質的に沿って動く。他の特徴においては、ばね3080は、近位リンクハウジングの長手方向中心軸3084cに実質的に沿って圧縮される。しかしながら、ばねの圧縮は、ハウジングの長手方向軸に沿ったばねの“湾曲(bowing)”又は非直線性をもたらし得、そのことは、近位リンクハウジングの内側表面に対するばねのこすれ及び接触に繋がる。その湾曲を減少させる又は実質的に排除するように、第1端3080a及び第2端3080bにおけるばね3080の方向は、本発明の種々の特徴に従って、調整され得る。更に、一実施形態においては、ハウジングは、ハウジング3084cの長手方向軸に対して平行に備えられた線形ガイドトラック3096を有する。線形ガイドトラック3096に移動可能に又はスライド可能に結合された線形ガイド3086は、圧縮ばね3080のコイルにフレキシブルに連結されている。また、線形ガイドトラック3096に移動可能に又はスライド可能に結合された線形ガイド3072は、プラグ3074に動作可能に連結されている。線形ガイドトラック3096並びに線形ガイド3086及び3072は、圧縮ばね3080の湾曲を更に減少させる又は実質的に排除する。一部の実施形態においては、カウンターバランスシステムは、線形ガイド及び線形ガイドトラックを用いずに動作されることが可能である。 ここで、圧縮ばねの第1端又は近位端の調整可能な位置合わせに言及するに、一特徴においては、アライメントリング3090は、複数の調整ねじ3091によりベース3092に移動可能に連結され、故に、調整ねじ3091の動作は、アライメントリング3090の方向を、従って、アライメントリング3090にフレキシブルに連結されたねじ3080aの第1端の方向を調整する。一実施例においては、ベース3092は、四角形又は矩形形状に互いから離れて設定された4つの隣接したねじ3091によりアライメントリング3090に連結されている。それらのねじの他の幾何学的形状も可能である。調整ねじ3091は各々、アライメントリングの方向が調整ねじと接する各々の点で調整されることが可能であるように、アライメントリング3090の平面的な上部表面に対して実質的に垂直な方向に移動可能である(例えば、内部にねじ山を有するベース開口を通るねじ込み動作により)。従って、アライメントリング3090及びばね3080のフレキシブルに連結される第1端3080aの方向は、アライメントリング3090に沿った種々の点で調整されることが可能である。より多い又はより少ない数の調整ねじ3091は本発明の範囲内にある。
【0152】
ここで
図32A乃至37Cを参照するに、リンクハウジングの壁のないカウンターバランス近位リンクの遠位端の方からの詳細なビューを示している。特に、それらの図は、本発明の種々の特徴に従って、調整ピン3106と、ロッカーアーム3108と、ばね3080のフレキシブルに連結された第2端3080b及びエンドプラグ3074の方向を調整するロッカーアーム及び調整ピンの移動範囲のビューを示している。
【0153】
図32Aは、カウンターバランスシステムの底方向からの斜視図であり、
図32Bは、
図31、32A及び37Aの線IV−IVに沿った断面の斜視図である。上記のように、複数のキャップスクリュー3075a及び3075bは、ケーブル張力イコライザ3082とプラグ3074との間に備えられ、それらのケーブル張力イコライザ3082及びプラグ3074に連結している。キャップスクリュー3075aは、本実施形態における張力すべてを負担し、他の2つのキャップスクリュー3075bは、余長及び安全性目的で備えられる。更に上記のように、ばね3080の遠位端は、プラグ3074の外部のねじ山3974aにねじ込むことによりプラグ3074に連結される。プラグ3074は、プラグの重さを軽減するように、形成される複数の溝3200を任意に有することが可能である。また、線形ガイド3072は線形ガイドフランジ3072aにより線形ガイドトラック3096にスライド可能に連結されることが可能であることにも留意する必要がある。
【0154】
図32A及び32Bから理解できるように、プラグ3074は、調整ピン3106と、調整ピン3106の内部チャネルを通って移動するソケットスクリュー3104と、互いに対して調整ピン3106及び線形ガイド3072の位置を適切な位置にロックするソケットスクリュー3104の自由端3104aにねじ込まれるナット3102とにより、線形ガイド3072に連結される。自由端3104aに対向するソケットスクリュー3104のヘッド3104bは、ナット3102がソケットスクリューの自由端3104aにおいて完全に係合するとき、故に、互いに対して調整ピン3106及び線形ガイド3072の位置をロックするとき、調整ピン内にソケットスクリューの頭部をロックするように調整ピン3106の係合トレンチ3105内に位置付けられる。
【0155】
図33乃至36Cを参照するに、線形ガイド3072に対する調整ピン3106の調整運動について、より詳細に示している。
図33は、線形ガイド3072に連結された調整ピン3106と、円3114と、調整ピンが線形ガイド3072に対して適切な位置に完全にロックされないときに調整ピン3106が回転され得る円の中心3114aとを示している。
図34は、調整ピン3106の長手方向中心軸3107が線形ガイド3072又はガイドトラック3096の長手方向中心軸3097に対して垂直であるときの、線形ガイドマーキング3072b及び調整ピンマーキング3106bを示している。線形ガイドマーキング3072b及び調整ピンマーキング3106bは、調整ピン及び線形ガイドの相対的位置を決定するように、カウンターバランスシステムの調整器(特に、プラグの方位)により用いられることが可能である。
図35は、ピンシャフト3106a及びピンヘッド3106bを有する調整ピン3106の斜視図である。
図33乃至35から分かるように、ピンヘッド3106bは、線形ガイド3072の曲面化表面と動作可能に一致する曲面化上部表面を有する。
【0156】
図36A乃至36Cは、調整ピン3106及び線形ガイド3072並びにそれらのそれぞれの長手方向中心軸3107及び3097のそれぞれの側面図である。
図36Aは、線形ガイド3072の長手方向中心軸3097に対する調整ピン3106の長手方向中心軸3107の垂直な位置を示し、
図36Bは、調整ピン3106の長手方向中心軸3107が線形ガイド3072の長手方向中心軸3097と鈍角を形成する位置を示し、
図36Cは、調整ピン3106の長手方向中心軸3107が線形ガイド3072の長手方向中心軸3097と鋭角を形成する位置を示している。従って、
図36A乃至36Cは、線形ガイド3072に対する調整ピン3106のピボット運動を、故に、ばね3080のフレキシブルに連結された第2端3080b及びプラグ3074になされ得る方向調整を示している。
【0157】
図37Aは、ロッカーアーム3108及び止めねじ3110を示すカウンターバランスシステムの底方向からの他の斜視図であり、
図37Bは、プラグ3074が取り除かれた
図37Aを示し、
図37Cは、ロッカーアーム3108が取り除かれた
図37Bを示している。ロッカーアーム3108は、ピンシャフト3106aの自由端で調整ピン3106に結合され、止めねじ3110はプラグ3074にロッカーアーム3108を結合させる。クロスディスクピン3112は、ロッカーアーム3108を調整ピン3106に固定する。ロッカーアーム3108及び連結されたプラグ3074は、調整ピン3106の長手方向中心軸に関して回転することが可能であり、長手方向軸3107に対して実質的に垂直な方向にある止めねじ3110の運動により、例えば、内側ねじ山を有するロッカーアーム開口を通るねじ込み動作により、調整されることが可能である。従って、ねじ3080の固定的に連結された第2端3080b及びプラグ3074の方向は、止めねじ3110と接する各々の点で調整されることが可能である。多い又は少ない数の調整ねじ3110は本発明の範囲内にある。従って、プラグの、故に、ねじ3080の第2端又は遠位端は、調整ピン3106を回転させることにより及びロッカーアーム3108を回転させることにより種々の点で調整されることが可能である。一特徴においては、調整ピン3106及びロッカーピン3108は、互いに対して垂直である軸に関して回転する。
【0158】
更に、本発明のカウンターバランスリンクは、圧縮ねじにおいて圧縮可能である能動的コイルの数を変えるように、プラグと圧縮ねじの第2端との間の調整を可能にする。一特徴においては、圧縮ねじの第2端は、圧縮可能である能動的コイルの数を変えるように、プラグの外側ねじ山に多く又は少なくねじ込まれることが可能である。
【0159】
有利に、モータが増加された有利なロボットアーム構成及び器具操作のためのピボット軸3070に関して遠位リンク3028を回転させるとき、カウンターバランス近位リンク3026は、遠位リンクのより容易な運動及び遠位リンクを回転させるモータに必要なより小さいトルクを可能にする一方、何れかのモータの故障に対して改善された安全性を提供することが可能である。一部の実施形態においては、近位リンクのカウンターバランス機構は全体的に失敗するようになるが、遠位リンクを回転させるモータは、適切な位置で遠位リンクを保つようにブレーキをかける。
【0160】
上記の実施形態は例示であって、その開示内容に限定されるものではない。本発明の原理に従って、種々の修正及び変形が可能であることも、理解される必要がある。例えば、多くの特徴においては、本明細書で記載している装置はシングルポート装置として用いられ、即ち、外科手術用手順を完結するのに必要なすべての構成要素が、シングルエントリポートを介して体内に入る。しかしながら、一部の特徴においては、複数の装置及び部品が用いられることが可能である。