【文献】
XU LI,THREAD AS A VERSATILE MATERIAL FOR LOW-COST MICROFLUIDIC DIAGNOSTICS,ACS APPLIED MATERIALS AND INTERFACES,米国,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2010年 1月 1日,V2 N1,P1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
体液及びその他の生物由来のタンパク質、DNA/RNA及び代謝物を含む分析物の検出は、医学検査、毒物検出及び法医学的分析を含む種々の応用にとって本質的である。そのような分析物の改良されたポイントオブケア検査は、世界規模で緊急に要求されている(Yager、P.;Domingo、G.J.;Gerdes、J.、世界的健康管理のためのポイントオブケア診断、Annu Rev Biomed Eng 2008、10、107−44)。そのような応用について設計された現在のシステムは、高価であること、嵩張ること及び結果が遅い、などの欠点を持つ。従って、安価で、持ち運び可能な、簡便な操作であって、かつ高効率検出を可能とするシステムの開発に対する非常に大きい要求が存在する。これらのシステムは、また、生物由来のサンプルからの広い範囲の分析物を迅速に同定することができるべきである。
【0003】
ミクロ流体ラボオンチップ方法は、これらの問題のいくつかを解決するものとして過去十年にわたり高い評価を得てきた。しかし、ミクロ流体ラボオンチップ装置の既存の技術は、研究室から工業規模へ移すことを可能にする成熟した製造プロセスがないという点で不利である。この目的で超小型電子加工技術で用いられる従来技術を採用することは、初期のミクロ流体装置がガラス又はシリコンで製造されることを意味していた。しかし、これら材料は、高価な処理条件と高い資本投資を必要とする材料である。
【0004】
この問題に対応するために、いくつかの異なる材料及び処理方法が、ミクロ流体装置の製造のために開発されてきた(Becker、H.;Locascio、L.E.、Polymer microfluidic devices.Talanta 2002、56(2)、267−287)。これらの材料には、PDMS(ポリジメチルシロキサン)(McDonald、J.C;Whitesides、G.M.、ミクロ流体装置製造のための材料としてポリ(ジメチルシロキサン)、Acc Chem Res 2002、35(7)、491−9)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)(Klank、H.;Kutter、J.P.;Geschke、O.、PMMA系ミクロ流体システムの迅速製造のためのCO
2レーザーマイクロマシン及びバックエンドプロセス、Lab Chip 2002、2(4)、242−6)、及びCOC(環状オレフィンコポリマー)(Pu、Q.;Oyesanya、O.;Thompson、B.;Liu、S.;Alvarez、J.C.、フォトグラフト法を用いる生体分子マイクロアレイの製造のための環状コポリマー(COC)ミクロ流体チャンネルのオンチップマイクロパターン化、Langmuir 2007、23(3)、1577−83)が含まれる。プラスチックは比較的安価であり、それらは、その加工性、透明性及びミクロスケールでの複雑なパターンを形成することができる、などの利点を有する。しかし、それらはまた、いくつかの欠点も持ち、例えばその疎水性により単純なキャピラリー流れを排除し、二酸化炭素排出性であり、及びミクロ流体プラスチックチップを大量生産するために容易に採用し得る成熟した製造方法がない、などである。さらに、前記プラスチック系ミクロ流体装置では、プラスチックチップから流体を方向付けて読み取るには、複雑で高価な読み取り装置がなお必要とされ、これにより、前記装置及び操作を全体として、低コスト及び丈夫なポイントオブケア診断のためには不適切なものにしている。
【0005】
一方で、紙系のラテラルフロー免疫アッセイ(LFI)が、広く利用されている家庭での妊娠診断検査などの種々の迅速検査で市場において大きな成功を納めてきた。サンプルの流れはキャピラリー作用により自動的に生じ、検出のために色変化の形での視覚的読み取りが使用される。さらに、成熟した製造方法が既にそのような装置に利用可能である。しかしLFIは、欠点もまた持つ。これは信頼性がそれほど高くなく、多重検査を行うことができない。この理由の一つに、紙系装置には「流路」を定める機能が欠けているからである(Martinez、A.W.;Phillips、S.T.;Butte、M.J.;Whitesides、G.M.、安価、低容量、持ち運び可能なプラットフォームとしてのパターン化紙、Angew Chem Int Ed Engl302007、46(8)、1318−20)。
【0006】
最近Whitesidesグループは、選択的に疎水性及び親水性部分に紙をパターン化することでその技術を押し進めた。従って、パターン化された流域を定めることができる。しかし、紙系装置はなお、機械的安定性の欠如、及び加熱や高圧暴露することなく複数の試薬を堆積することを可能にする低コスト製造方法の欠如などの問題を有する。ごく最近、綿糸がまたミクロ流体チップ製造の媒体として開発された(Li、X.;Tian、J.;Shen、W.、低コストミクロ流体診断のための有用な材料としての糸、ACS Applied Materials& Interfaces 2009、2(1)、1−6)」。実験は、プラスチック基板上に縫い付けされた単一綿糸又は綿糸で実施され、色変化系読み取りが試薬の存在を検出するために使用された。これらの実験は、綿繊維又は他の適切な材料のいずれかを用いてポイントオブケア診断装置の製造のためのハイスループット及び再現性のある方法を開発するためになされたものでは必ずしもない。従って、なお、診断装置に伴う、製造方法、コスト及び信頼性の全ての問題に対応し得る技術に対する緊急の必要性が存在する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで及び特許請求の範囲で使用される、単数形「一つの」及び「前記」には特に規定されていない限り複数も含む。
【0014】
ここで使用される糸とは、織布又は編まれた材料の単一要素(糸(ヤーン又はスレッド)など)を意味する。
【0015】
ここで使用される分析物とは、分析手順で決定される物質又は化学的構成物を意味する。例えば、免疫アッセイでは、前記分析物は、タンパク質リガンドやバインダーであり、一方血液グルコース検査では前記分析物はグルコースである。一例では、前記分析物はB型肝炎ウイルスのためのマーカーである遺伝子であり得る。他の例では、分析物は、血液分析からのコカインなどの検出されるべき薬物を含む。前記分析手順には、例えば、蛍光、質量スペクトル、熱量計、放射線イメージング、電気化学的検出など及びそれらの組み合わせが含まれる。ある場合では分析物は抗体を意味する。他の場合には分析物は抗原を意味する。
【0016】
ここで使用される抗体とは、特定の抗原を識別するために使用されるタンパク質を意味する。前記特定の抗原とは通常、ある疾患又はあるタイプの疾患のマーカーである。また場合により、抗体がまた免疫グロブリンを意味することもあり得る。抗体は、第1又は第2抗体であり得る。第1抗体は、特定の抗原に対して認識する抗体であり、通常は標識化されていない。第1抗体はまた、キャプチャ抗体として参照され得る。第2の抗体は、第1の抗体又は、前記第1又はキャプチャ抗体内に含まれる断片へ結合する抗体を意味する。第2抗体は、検出のために使用し得る標識を含む。通常標識には、蛍光基、放射活性化合物、酵素標識、磁性活性粒子、ナノ粒子、量子ドット、ラテックス粒子標識など及びそれらの組み合わせが含まれる。前記標識に依存して、検出、識別及び定量に使用される方法は、蛍光スペクトル法、放射線イメージング法、ELISA検査などを含む。
【0017】
ここで使用される抗原は、生物有機体の免疫システムで認識される分子を意味する。抗原はまた、免疫システムで認識され得る分子断片を意味する。所与の抗原は抗体特異性を示し、抗原のこの性質が種々の応用に使用されることが、一般に知られている。
【0018】
ここで説明されるように、1つの側面では、本発明は、
図1の20で示される診断装置の製造方法を提供する。本方法は、
図1の22で示される、
図2に示される少なくとも1つの診断用繊維組成物を提供することを含む。前記診断用繊維組成物は、親水性ポリマーから作られる繊維を含む。ここで使用される親水性ポリマーとは、水で湿潤され得るポリマーを意味する。ポリマーの親水性度は一般には、吸湿速度で測定されるような吸湿の物理的現象により理解される。親水性度はまた、前記ポリマー表面上の水滴により形成される接触角により理解され得る。本発明で使用される前記親水性ポリマーはまた、繊維形成能力を持つことが必要である。前記診断用繊維組成物のための有用な親水性ポリマーは、限定されるものではないが、ポリ(ビニルアルコール)、脱ガム絹、綿、レーヨン、セルロース繊維、それらの誘導体及びこれらの混合物を含む。当業者は、分子量、架橋度、可塑剤及び他の添加物の有無、さらに繊維形成能及び繊維性質に影響を与える他のファクタの効果を理解するであろう。
【0019】
1つの具体的な実施態様では、前記親水性ポリマーは脱ガム絹である。絹は、カイコ、より具体的には、桑カイコの幼虫から得られる繊維である。本発明で最も有用な絹は、カイコBombyx Moriから得られる絹などの織物に織り込まれ得る絹であるが、しかし合成的に作られるか又は他の原料から製造される他の絹の形状もまた本発明で使用され得る。化学的には、絹繊維はアミノ酸の鎖を含み、さらに有用な基を結合するために使用され得る官能基を有する。ここで使用されるように、官能基は、他の反応性種と相互作用して物理的又は化学的結合を形成することができる反応性化学基である。
【0020】
得られた絹繊維は、その後、脱ガム絹の少なくとも1つの糸を形成するためにアルカリ性溶液で処理される。本発明で使用されるアルカリ性溶液は、通常、水溶液混合物中に強塩基を有する化合物を溶解させることで得られる。強塩基性を有する典型的化合物は、限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウムなど及びそれらの混合物を含む。処理方法は、絹繊維をアルカリ性溶液中に浸漬すること、絹繊維にアルカリ性溶液をスプレーすること又は当業者に知られている他のそれらの変法を含み得る。いかなる理論や原理に束縛されることなく、当業者に知られていることは、自然の状態で得られた絹繊維は、セリシンと呼ばれるタンパク質を含むゴム性混合物のコーティングを持つこと、及びアルカリ性溶液はこのコーティングを効果的に除去するために使用することができる、ということである(Altman、G.H.;Diaz、F.;Jakuba、C;Calabro、T.;Horan、R.L.;Chen、J.;Lu、H.;Richmond、J.;Kaplan、D.L.、絹系バイオ材料、Biomaterials 2003、24(3)、401−416)。場合により洗浄ステップが、前記過剰のアルカリ性及びその他の異物を洗い流すために含まれ得る。
【0021】
さらなる使用に適するように処理された前記親水性ポリマーは、さらに、第1の試薬、第2の試薬の少なくとも1つ又は両方を固定化して診断用繊維組成物を形成する。場合により前記第1の試薬が抗原である。本発明で使用される抗原には、例えば、p24、gp120、gp41、HIVII−gp105、gp36、C型肝炎−NS3、NS5、コア抗原、β−Hcg(妊娠)、TSH(甲状腺)、FSH(女性ホルモン)、トロポニン−T(心臓)、CpkMb、BNP、ミオグロビン、Hb1Ac、PSA、AFP、CEA、CA125、CA19.9、プロゲステロン、テストステロン、エストラジオールを含む。なお他の例では前記第1の試薬は第1抗体である。有用な第1抗体は、例えば、抗HBs(IgG)、抗HBc(IgM)、抗hcG、抗−HIV−p24、抗−HIV−gp120、抗−FSH、抗−TSH、抗トロポニン、及び抗熱帯熱マラリア原虫、トキソプラズマIgM、風疹IgM、ヘルペクスシンプレクスウイリス2IgM、サイトメガロウイルスIgM、腸チフスIgM、腸チフスIgG、デング熱IgM、デング熱IgG、レプトスピラ症IgMを含む。第2試薬が存在する場合には、前記第2試薬は他の第1抗体又は第2抗体であり得る。前記第の試薬として第1抗体、及び前記第2の試薬として第2抗体を持つ診断用繊維組成物の場合には、理解されるべきことは、前記最終の診断装置に沿う流体の流れを考慮して、前記第2抗体は前記第1抗体の上流に存在する必要がある、ということである。ここで使用される用語「上流」及び「顆粒」とは、前記診断用繊維組成物上の溶液の流れに関して相対的な位置を意味するために使用される。従って、最初に溶液の流れに接触する前記診断用繊維組成物上のスポットは、後に接触する前記診断用繊維組成物の位置に対して上流とみなされる。
【0022】
固定化は、当業者に知られた全ての技術により達成され得る。これには、例えば、浸漬、共有結合、コーティング、ディッピング、スタンピング又はこれらの組み合わせを含む。前記親水性ポリマーの選択に依存して、前記ポリマーを前記第1及び/又は第2の試薬を受け得るように調製するためのステップが含まれ得る。例えば、既に説明したように、絹は前記試薬を固定化するために脱ガムされ得るが、一方ポリ(ビニルアルコール)から作られる繊維はそのままで試薬を固定化し得る。
【0023】
実施態様において、適切な処理溶液で処理するさらなるステップが、診断用繊維組成物を製造するために必要となり得る。前記処理溶液は、前記第1及び/又は第2の試薬を固定化した後に、前記親水性ポリマー上に存在する未使用かつ露出された官能基をブロックするためのブロック剤を含み得る。ブロック剤の例は、例えばウシ血清アルブミン、粉乳などを含む。
【0024】
前記処理溶液はさらに、前記繊維の表面の湿潤性を改善することで、流体の流れ性を強化するための界面活性剤を含み得る。本発明で使用される適切な界面活性剤は、パーフルオロオクタン酸塩、パーフルオロオクタン硫酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム及び他のアルキル硫酸塩、ラウレス硫酸ナトリウム、アルキルベンゼン硫酸塩、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド、ポリエトキシル化牛脂アミン、ベンジルアルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、(3−[(3−クロルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパン硫酸塩)、ドデシルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ココアンフォグリシネートなどのイオン性界面活性剤;、アルキルポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)に基づくソルビタン誘導体であって、Tween(R)シリーズ(例えばTween(R)20、Tween(R)80)、Span(R)シリーズ30(例えばSpan(R)80)、Brij(R)シリーズ(例えばBrij(R)72)、Triton(R)シリーズ(例えばTritonX−100)が含まれ、アルキルフェノールポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)及びポリ(プロピレンオキシド)のコポリマーであって、Pluronic(R)シリーズ(例えば、Pluronic(R)F−127)を含み、アルキルポリグリコシドであって、オクチルグルコシド、デシルマルトシド、脂肪族アルコールであってセチルアルコール、オレイルアルコール、ドデシルジメチルアミンオキシドを含む、などの非イオン性界面活性剤などを含む。ひとつの例示的実施態様では、前記界面活性剤は、ポリ(エチレングリコール)系のポリソルベートであり、又場合によりソルビタン誘導体を意味する。ひとつの例示的実施態様では、前記界面活性剤はTween(R)20である。さらに、ポリ(エチレングリコール)などの粘度調節剤が、前記診断用繊維組成物を得るための流速を変化させるために適用され得る。
【0025】
前記親水性繊維は、処理溶液で処理されその後少なくとも1つの試薬を固定化し得る。これらの作用が実施される順序は、親水性ポリマーの選択、意図される装置の性質、最終的応用などに依存し、当業者には過度の実験をすることなく想到し得る。
【0026】
前記診断用繊維組成物を製造するために適する繊維材料を選択する1つの重要な基準は、その機械的安定性と、複雑なパターンを作るための十分な精度と、大量の診断用繊維組成物を低コストで製造できるように十分な寸法変更可能な製造方法の存在である。絹は、これらの両方の基準を満たし、さらに天然繊維であり、生分解性であるなどの他の望ましい性質をも持つ。ポリペプチドであることから、絹は多くの官能基を持ち、生体分子を機能化するために使用され得る。さらに、絹織物は、高温度や高シェアプロセスを経ることなくパターン内に特異的な機能性を導入する可能性を提供する。これは、単純に糸を処理し及びそれを織り込むことを用いて特定の点(スポッット)内に導入すること含む。従って、1つの実施態様では、絹は、本発明の診断用繊維組成物を製造するために使用される繊維である。
【0027】
本発明の診断用繊維組成物を製造する方法はさらに、
図1の番号24で示される、疎水性繊維組成物の少なくとも1つの糸を提供することを含む。ここで使用される疎水性とは、一般的には撥水性として特徴付けられている。撥水性は、前記材料の表面の水滴により形成される接触角などの技術により測定され得る。疎水性繊維組成物は、疎水性材料から作られる。有用な疎水性材料は、ナイロン−66、ナイロン−6及び他のナイロン、Kevlar(R)などのポリアミド;ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)などのポリエステル;ポリ(フェニレンオキシド);疎水性コーティング絹など及びそれらの組み合わせを含む。1つの具体的な実施態様では、前記疎水性繊維組成物は疎水性コーティング絹である。本発明で使用される通常の疎水性コーティングは、金コーティング、スズコーティング、ニッケルコーティング、真鍮コーティング、銅コーティングなどを含む。
【0028】
本発明の診断装置は、
図1の符号26で示されるように、前記診断用繊維組成物の少なくとも1つの糸と、前記疎水性繊維組成物の少なくとも1つの糸を相互に織り込むことにより製造される。前記相互に織り込む方法は、織物製造で一般的に知られている(例えば、http://www.britannica.com/EBchecked/topic/638448/weaving参照)。有用な相互に織り込む方法は、二重縦糸二重横糸技術の使用を含む。縦糸及び横糸を導入する他の方法は、本技術分野で知られている。縦糸とは、長手方向糸を意味し、横糸とは前記縦糸を通じて編まれる糸を意味する。前記縦糸及び横糸の間の角度は、前記診断用繊維組成物内の流れ性に影響を与え、従って、本発明診断装置の使用に大きな制御性を与えるものであり、このステップは本発明の方法に含まれる。現在は、他の技術と共に二重縦糸二重横糸を用いて最終織物製品を製造するための織物製造工業で広く使用されている機械が存在する。
【0029】
織機は織り込みのために使用される例示的装置であり、本発明の診断装置の製造のために有利に使用され得る。織機のいくつかのタイプが事実使用のために市販されている。本発明で有用な例示的織機は、限定されるものではないが、ジャガー織機、ドビー織機、足踏み織機、力織機などを含む。
【0030】
本発明の方法は、所定の時間内に大量の診断装置を製造するためにスケールアップを行う上で特に魅力的な方法である。本方法はまた、多重診断装置を導入することにも適している。現在、1つよりも多い試薬を検出するために使用され得る当該技術分野に知られる多重装置は、実験室規模で製造される際に、一般的にその製造の拡張性に直面する。本発明の方法はこの欠点を解消する。本発明の方法はさらに、既に存在する経験及び装置を使用する。本発明では、診断装置製造のために、織物製造における既存の方法の適合性を実証することに成功した。前記適合性は、材料及びその製造の注意深い選択、及び前記要求に合わせるために前記技術の僅かな変更を含む。前記材料及び方法の経済性もまた、この方法の選択を可能とする。
【0031】
他の側面では、本発明は、
図2において符号28で表される診断装置を提供する。前記診断装置は、本発明の診断用繊維組成物を含み、これは
図2で番号32で表され、これは
図2の30で示される本発明の疎水性繊維組成物と相互に織り込まれている。1つの実施態様では、本発明の有用な診断用繊維組成物は、少なくとも1つの第1の試薬で固定され、かつ前記の処理溶液で処理されている。本発明の有用な疎水性繊維組成物は金コーティング絹繊維を含む。相互に織り込む方法は、織物製造の技術分野で知られており、前記の技術で製造され得る。
【0032】
本発明の診断装置での診断用繊維組成物の形状は、本発明を作用するために必要な全ての適切かつ有用な形状であればよい。簡単にするために、
図2は長方形状の疎水性繊維組成物を共に含む前記診断用繊維組成物のための長方形を示す。
図3のa(上)は前記疎水性繊維組成物マトリクス内の診断用繊維組成物についての他の可能な構成を示す。同様に
図3のb(下)は、長方形の疎水性繊維組成物内の多重分析のための診断用繊維組成物のための可能な構成を示す。前記疎水性繊維組成物がいかなる幾何形状を用いることはまた、当業者に明らかであろう。
【0033】
本発明の装置は診断目的で使用され得る。
図4は、本発明の診断装置の構成の一例を示す。診断装置は番号34で表される。診断装置の疎水性繊維組成物は番号36で表される。前記疎水性繊維組成物に相互に織り込まれる診断用繊維組成物は、番号38で示される。前記診断用繊維組成物の一つの端部が、サンプル導入ポートとして設けられ、
図4では番号40で表される。通常は、分析用サンプルは、水溶液又は水懸濁液又は水分散液として前記診断用繊維組成物中に導入される。サンプルは分析される分析物を含む。通常のサンプルは、制限されるものではないが、汗、血液、尿、精液などを含む。ここで使用されるサンプルは、流体全体を含み又は分析される流体の成分を意味し得る。分析の内容は種々である。例えばひとつの実施態様では、分析は、分析物が存在するか存在しないかを決定することである。他の実施態様では、分析は、サンプル中に存在する分析物の濃度及び/又は量を決定を含む。他の実施態様では、それらの組み合わせであり、分析物の有無の決定と、存在する場合には、サンプル中のその分析物の量及び/又は濃度を決定することを含む。サンプルをサンプル導入ポートに導入した後、サンプルは診断用繊維組成物に沿って流れる。いかなる理論にも束縛されるものではなく、前記溶液はキャピラリー作用(これはまた当該技術分野では場合により湿潤作用と参照される)により前記診断用繊維組成物を通過するであろう。本発明の装置は、水性サンプルが前記診断用繊維組成物の外側には流れず、従って、サンプル損失又はそれに伴う他の問題の発生を低減する、という利点を持つ。前記流路は吸収ポート42へ到達する。1つの実施態様では、前記試薬は前記診断用繊維組成物のある位置に存在し、前記吸収ポートはサンプル流が前記診断用繊維組成物上の前記試薬の位置を通過する方向に存在しており、前記サンプル流は前記試薬を通過して前記吸収ポートで終了する。他の実施態様では、前記試薬は当該技術分野で知られる適切な方法で添加され、前記試薬の固定化がインシチュで達成される。従って、前記サンプルは前記診断用繊維組成物に導入される。前記分析物を含むサンプルと前記試薬が相互作用すると、それらは結合して複合体を形成し、前記複合体は流れなくなるが、一方で前記溶液は前記吸収ポート42へ到達するまで流れる。前記サンプルが分析物を含まない場合には、複合体は形成されず、従って、前記流れは前記吸収ポートに到達するまで流れ続ける。
【0034】
第2の試薬が存在する場合には、サンプルは前記第1の試薬からは上流にあることから最初は前記第2の試薬と接触し、前記分析物があれば前記第2の試薬と第1の複合体を形成し。続いて前記第1の複合体を含む溶液の流れは前記第1の試薬に到達して、前記分析物、第1の試薬及び第2の試薬を含む複合体を形成する。第二の複合体はこの点で流れを停止する。サンプルが分析物を含まない場合には、前記第1の複合体及び第2の複合体は形成されず、従ってサンプルは吸収ポートまで流れていく。装置上に流れる領域がなくなると前記溶液の流れは停止する。流れる領域は、自然の親水性を持つ前記診断用繊維組成物を含み、従って溶液を流す。前記診断用繊維の外側、前記疎水性繊維組成物などは流れを通すことなくその領域では流れは生じないこととなる。過剰のサンプル流を、前記第1の試薬を通して洗うことで、非結合の第2の試薬を除去するステップがまた含まれ得る。前記複合体の分析は当該技術分野で知られた方法で達成され得る。かかる方法は、例えば、蛍光、共焦点顕微鏡、光学顕微鏡、比色、電気化学法など又はそれらの方法の組み合わせが含まれる。
【0035】
ある実施態様では、前記サンプルポート40は、前記サンプルの追加を容易にし、及び分離成分などの他の追加の機能に有用な材料を含み得る。ここで有用ないくつかの例示的機能は、流体から血液細胞を分離すること、低分子材料から高分子量成分を分離することなどを含む。これらの機能を達成するために具体的な部品は当該技術分野で知られておりここで適切に適用され得る。
【0036】
いくつかの他の実施態様では、前記吸収ポート42はさらに、綿、ニトロセルロース、ポリ(アクリル酸)などのサンプルの流れを容易にする吸収材料を含み得る。
【0037】
当業者にとってはまた、単一の疎水性繊維組成物は、
図5に示されるように1以上の診断用繊維組成物を含み得る、ということは明らかであろう。
【0038】
図6には符号44で示される本発明のさらなる実施態様として、多重分析のために使用される例示的診断装置を示す。前記装置は、符号36で表される疎水性繊維組成物と符号38で表される診断用繊維組成物を含む。前記診断装置のサンプル導入ポートは符号40で表され、ここにサンプルが導入される。前記診断用繊維組成物は、前記サンプルの流れが、この例示では符号46、48及び50で表される3つの腕に沿って3つの方向に分けられる。符号46で表される腕は第1の試薬を含み、符号48で表される腕は第2の試薬を含み、かつ符号50で表される腕は第3の試薬を含む。従って、3つの異なる分析が、本発明の診断装置のこの例示的構成により同時に実施される。
【0039】
図7は、本発明の他の実施態様としての分析のための他の診断装置を示し、符号52で表される。前記装置は、符号36で表される疎水性繊維組成物及び符号38で表される診断用繊維組成物を含み、前記診断用繊維組成物はここで示される幾何形状を持つ。前記診断用繊維組成物は3つの異なるサンプル導入ポート40を持ち、それぞれのサンプル導入ポートに対応する、符号54、56及び58で表される3つの異なる流れを誘導する。この例示的構成では3つの異なる流れは、前記吸収ポート42へ導く一つの腕へ結合されている。前記診断装置のこの構成は特に、第1の試薬を、腕54に沿って流すことで前記診断装置繊維組成物上にシンシチュで固定化するために有用である。サンプルは同時に腕56に沿って導入され得る。従って、前記サンプル及び第1の試薬が腕54及び56を流れると、それらは吸収ポート42へ到達する前に前記本体部で出会う。サンプルが分析対象物を含む場合には、前記第1の試薬と複合体を形成しその位置で流れを停止させる。さらに、第2の試薬がまた、前記第1の試薬と同時に流すために腕56に添加され、前記サンプルは同時に腕58に導入され得る。従って、3つの全ての腕は3つの異なる成分を持ち、同時に流れて、前記吸収ポート42に到達前に前記本体部で出会う。サンプルが分析対象物を含む場合、これは前記第1及び第2の試薬と、第1及び第2の複合体を形成し、その後流れを停止する。前記複合体の分析は、当該技術分野で用いられる方法により実施され得る。
【0040】
図8は、符号60で表される本発明のさらなる実施態様としての分析にための例示的診断装置を示す。前記装置は疎水性繊維組成物36及び診断用繊維組成物38を含み、前記診断用繊維組成物がここで示される幾何形状を持つ。前記サンプル導入ポート40は、2つの吸収ポート42の間に位置する。当該技術にとって明らかなことは、前記サンプル導入ポートは中心に設けられる必要はなく、正確な位置は実際の最終構造、機能、製造性及びその他の考慮に依存する、ということである。前記サンプル導入ポートに導入されたサンプルは、前記診断用繊維組成物が伸びる限り全ての方向にキャピラリー流れにより決定され流れる。ここで示される例では、サンプルは、前記診断装置の最終機能に依存して2つの異なる試薬又は同じ試薬を含む腕62及び64に沿って、前記サンプル導入ポートのいずれかで吸収ポート42に到達するまで流れる。この方法で、多重分析がサンプルの単一導入で実施され得る。
【0041】
通常、診断装置はまた、使用者にサンプル導入ポートを示すために前記ポイントを示すマークを含む。本発明の診断装置から有用な分析結果を得るために必要なサンプル量は、装置構成に依存し、当該技術にとって過度の実験を行うことなく決定し得る。
【0042】
本発明の診断装置はさらに、前記の記載の物と共に着色剤、柔軟剤、種々の目的の他の添加剤を含むことができる。これらの添加剤は、例えば化粧目的のためのものであり、既存の診断装置に他の構成又はより大きい機能性を与える。さらに本発明の診断装置は、基板上に設けることができる。前記基板の存在は、前記装置に強度と機械的信頼性を与える。前記基板は、当業者に知られる全ての強化材料から選択され、例えば、スチール、鉄、チタン、合金などの金属裏打ち、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチック、カードボード、木など、及びそれらの組み合わせを含む。基板上に設けられた本発明の診断装置の典型的例示実施態様は
図11で示され、前記基板は符号65で示される。
【0043】
本発明の診断装置はさらに、適切な封止体に包まれることを含み、これにより、運搬中の扱い、太陽、湿度などの環境因子から保護される。この場合には、前記封止体は、開いて前記装置にアクセスできるように設計され得る。又は、前記封止体は、前記サンプル導入ポートのためだけの開口部を持ち、装置の残りの部分は操作中でも閉じられている、ようにされ得る。前記装置の適切な封止体は、透明性、強度、耐水性、形成性などの特性を有する。前記装置のための封止体として好ましく作用するいくつかの有用な材料は、限定されるものではないが、ガラス、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチックを含む。
【0044】
ここで記載される本発明は、ここでまた「ファブチップ」として参照される、織物系診断装置の製造のための他の製造技術としての織り込みを提供する。かかる診断装置は再使用可能なタイプ、一回使用タイプ又は使い捨て装置であり得る。絹織物は、世界の多くの地域で非常に高い技術にまで発展してきた技術であり、寸法が個々の糸の厚みのみに限定される複雑なパターンが高い平行手法で織られ得る。この技術は、本発明の診断装置を織物手法で製造するために採用され得るものである。親水性及び試薬でコーティングされた疎水性繊維と共に織り込むことで、一様及び多様な非常に多数の診断装置を製造することを可能とする。さらに、試薬は当該技術で知られる技術を用いて前記疎水性繊維組成物上に非常に特定的なスポットに堆積させ得る。この結果、織機のみを使用して全診断装置を実際に製造することを可能とする。これは、診断装置の種々の部品を異なる製造方法を用いる、従ってプロセスを複雑にする既存の技術に対する大きな利点を提供する。さらに、共役パッド、吸収パッド及びサンプル輸送パッドなどとして機能化するために異なる材料を必要とする現在市販されている診断装置とは異なり、本発明は診断装置を製造するための単一の製造プロセスを提供する。また、材料の選択に依存して、絹などの単一のベース材料が診断装置全体を作るために使用され得る。このことは前記製造を大きく単純化する。また、本発明の診断装置は、絹系材料で作られる場合には、絹が既に縫合糸及び医学用インプラントで使用されているという他の利点を提供し、このことは前記診断装置が法規制認可を得る機会を大きくするものである。
【0045】
本発明の装置は、広い範囲の応用で実施されるあらゆるアッセイに使用され得る。例えば、本発明の装置をサンドイッチ免疫アッセイのために使用する場合、前記サンプル中の抗原の定量的検出のために、サンプルは最終装置の診断用繊維組成物のサンプルポートに導入される。導入後、前記サンプルはキャピラリー作用で、前記診断用繊維組成物に沿って流れ、前記第1の試薬(キャプチャー抗体)から上流に存在する第2の試薬(検出抗体)に最初接触する。分析物(抗原)が存在する場合、第2の試薬と第1の複合体を形成する。この後、前記第1の複合体を含む溶液の流れは前記第1の試薬(キャプチャー抗体)に到達し、前記分析物、第1の試薬及び第2の試薬を含む第2の複合体を形成する。前記第2の複合体はこの点で流れを停止させ、ピンク/赤色のバンドとして目視できる。前記サンプルが前記分析物を含まない場合には、前記第1及び第2の複合体は形成されず、前記サンプル流れは吸収ポートに到達するまで流れる。装置内に流れのための領域がなくなると、前記溶液は流れを停止する。
【0046】
本発明の装置を間接的免疫アッセイのために使用する場合、抗体の定量的検出のためのサンプルは、最終装置に前記診断用繊維組成物のサンプルポートに導入される。導入後、前記サンプルはキャピラリー作用で前記診断用繊維組成物に沿って流れ、前記第1の試薬(キャプチャー抗原)から上流に存在する第2の試薬(検出抗体)と最初に接触する。分析物(抗体)が存在する場合、第2の試薬と第1の複合体を形成する。これに続いて、前記第1の複合体を含む溶液の流れは前記第1の試薬(キャプチャー抗原)と接触し、前記分析物、第1の試薬及び第2の試薬を含む第2の複合体を形成する。前記第2の複合体は、この点で流れを停止させ、これはピンク/赤色バンドとして目視できる。サンプルが分析物を含まない場合には、前記サンプル流れは前記吸収ポートに到達するまで流れる。前記装置に流れるための領域がない場合には前記溶液は流れを停止する。
【0047】
概念の証明
説明のために、脱ガム絹糸をポリ(メチルメタクリレート)からなるプラスチック基板の周りに巻きつけた。次に、これを金コーティング絹糸を前記脱ガム絹の横に配置するように金コーティング絹糸と相互編み込みした。その後、この構造へ、緑色色素を含む水溶液を前記脱ガム絹の端部にスポットした。親水性脱ガム絹の領域に沿った以外のいかなる領域にも色がないことから、緑色色素を含む水溶液は前記疎水性領域へは滲み込まず、前記装置の親水性領域の範囲内に留まっていることが目視で決定された。
【0048】
診断装置
前記の概念の証明に基づき、診断装置が設計され織物にされた。前記設計は、前記診断用繊維組成物の長さに沿って3つのサイン曲線状ループをもたせたものである。前記診断装置は、金色の疎水性の背景上に白色親水性糸を含む。前記診断用繊維組成物は、説明目的で、明確に目視識別できるように多色で着色され、前記パターン中の特定の点で異なる色を相互織り込みすることで作成した。これらはキャプチャー抗体含有試験ラインとして機能し得る。
図9は、本発明の方法で作成された装置である。診断装置上の多数の色は、
図9で3つの環状点により目視識別され得る。診断装置は最初その湿潤性が試験された。緑色色素水溶液を前記サンプル輸送パッド上に負荷され、前記吸収パッドまでずっと流れていったが、前記金色部分への漏れはなかった。
図10は、図中でより暗い色で示されるように前記着色が前記脱ガム絹領域に制限され、その一方で図中でより明るい色で示されるように前記疎水性金コーティング絹は全く着色されていなかった。
【0049】
実施例
親水性繊維組成物
天然絹繊維は、脱ガムと言われるプロセスで除去されるべきワックス状カバーを含む。キャピラリー流を可能にする親水性糸は、絹糸を1MNaOHの溶液中に浸漬すること天然絹を脱ガムすることで作られた。前記糸を、その後0.1%Tween(R)20牛血清アルブミン(BAS)及び1%PEG(MW400)を含む溶液中に浸漬した。この処理糸は、より均一な流れ性を持つことが見出され、又前記絹糸へのタンパク質の非特定的結合を防止する。
【0050】
疎水性繊維組成物
天然絹繊維は疎水性糸として使用され得るが、前記天然繊維は、疎水性糸と比較を与えるに充分な強さの疎水性ではないことを見出した。一方で、絹を真鍮でコーティングすることで作られる金色の、入手容易な模倣「ザリ」糸が非常の疎水性であることが見出された。従って、真鍮コーティング糸が、疎水性対応物として使用された。
【0051】
糸上へコーティングされたキャプチャー抗体/抗原
前記脱ガム絹はタンパク質を非特異的に結合するので、キャプチャー抗体は、前記親水性繊維組成物を、Tris緩衝性生理的食塩水中の1mg/mLタンパク質を含む免疫グロブリンG溶液中に浸漬することで、前記疎水性繊維組成物上、直接コーティングされた。
【0052】
糸上へコーティングされた第2の抗体
40nmサイズの金共役第2抗体は、知られた方法で調整された(.A.D.McFarland、C.L.Haynes、C.A.Mirkin、R.P.Van Duyne及びH.A.Godwin、色、私のナノ世界、J.Chem.Educ.2004、81、544A;Constance Oliver、金への第2抗体共役−タンパク質へコロイド金の共役、Methods in Molecular Biology、Vol.115:L、C.Javois編集、免疫細胞学的方法および手順、Humana Press Inc.、Totowa、NJ.)。前記第2の抗体ラベル化金溶液(透明で暗いピンク色溶液)は、1%スクロース、0.2%Tween20、1%牛血清アルブミン(BAS)及び1%ポリエチレングルコール(分子量400)を含む溶液で前記絹糸の第1の処理に後に、前記絹糸に適用された。前記処理された糸はタンパク質には非特異的には結合せず、前記金共役絹は、絹糸の隙間の空間内に物理的に包埋され、後に滲出することができる。
【0053】
パターン形成:ファブチップ形成の第1ステップは、疎水性背景上に親水性パターンを形成することである。伝統的に、Kanchipuram、Tamil Nadu(インド)から得られる純粋なSalem絹の3本の糸が、お互いに拗られ、二重縦糸二重横糸技術を用いて織られる。織機にジャガード取付具を付けることでまた、パターンの多様性と複雑性を達成することを可能にすする。前記ジャガード取付具用にパターン化パンチカードを、Teckmen Systems(インド)から入手可能なコンピュータープログラムCadvantage Winプログラムを用いて生成した。前記パターンは、サイン状パターン回りの繊維背景が疎水性の擬似金糸から作られるように織り込まれた。前記パターン自体の全体の露出表面は、親水性の、天然脱ガム絹糸(表面性質改善のために処理済み)から織られた。
【0054】
コーティング糸織り込み
前記キャプチャ抗体及びラベル化第2の抗体コーティング糸は、前記親水性縦糸間の特定の点に、個別にラベル化されたスプールを用いて機織りにより手動で挿入した。ジャガード制御システムで、特定の糸は持ち上げられ、前記コーティング糸をそれらの間をシャトルを用いて走らせた。これにより、コーティング糸が前記織物の複数の点で相互に織り込まれた。3つの検査を連続的に実施可能な診断装置がこの技術で作られた。1つの端部は試験サンプルを負荷するための容器であった。下流では、1つの織目がラベル化第2抗体で負荷され、3つの個別の織目が適切なキャプチャ抗体で負荷された。前記装置は吸収パッドで終端する。前記最終装置は、負荷試験流体を特定の速度で前記容器から前記糸からのラベル化第2抗体を流すことを可能にする。
【0055】
本発明のただ一つの具体的な構成がここで説明されたが、当業者は、多くの修正・変更を想到することができるであろう。従って、理解されるべきことは、添付の特許請求の範囲は、そのような全ての修正・変更を本発明の範囲に含むことが意図されている、ということである。