(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775175
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】スパッタリング装置およびシールド
(51)【国際特許分類】
C23C 14/00 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
C23C14/00 B
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-549062(P2013-549062)
(86)(22)【出願日】2012年8月30日
(86)【国際出願番号】JP2012005465
(87)【国際公開番号】WO2013088600
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年5月22日
(31)【優先権主張番号】特願2011-271663(P2011-271663)
(32)【優先日】2011年12月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227294
【氏名又は名称】キヤノンアネルバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】石原 繁紀
【審査官】
浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−069610(JP,A)
【文献】
特開2001−131743(JP,A)
【文献】
特開平06−108241(JP,A)
【文献】
特開2003−226967(JP,A)
【文献】
特開平09−003639(JP,A)
【文献】
特開2002−146524(JP,A)
【文献】
特開2005−314773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00〜14/58
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッキングプレートと、ターゲットを前記バッキングプレートに固定するための固定部と、前記ターゲットの周囲を取り囲むシールドとを有し、処理空間においてスパッタリングによって基板に膜を形成するスパッタリング装置であって、
前記シールドは、開口部を有し、
前記ターゲットは、前記開口部の内側に配置される本体部と、前記本体部を取り囲む鍔部とを有し、
前記固定部は、前記ターゲットの周辺部を前記バッキングプレートに押し付けることによって前記ターゲットを前記バッキングプレートに固定するように構成され、
前記シールドは、前記固定部によって前記バッキングプレートに固定された前記ターゲットの前記鍔部に対して前記固定部を介することなく対面する対面部と、前記対面部の外側の外側部とを有し、前記対面部と前記バッキングプレートとの間隔が、前記外側部と前記バッキングプレートとの間隔より小さく、
前記シールドの前記処理空間に面する内面は、前記内面と前記バッキングプレートとの距離が前記外側部から前記対面部に向かうに従って小さくなるように傾斜した部分を含み、
前記固定部の前記処理空間の側の面は、当該面と前記バッキングプレートとの距離が前記開口部の内側に向かうに従って小さくなるように傾斜した部分を含み、
前記シールドの前記内面と反対側の面は、当該面と前記バッキングプレートとの距離が前記外側部から前記対面部に向かうに従って小さくなるように傾斜した部分を含む、
ことを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記対面部は、前記バッキングプレートに向かって突出した突出部を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記ターゲットは、前記鍔部に環状の凹部を有し、前記突出部は、前記凹部に対面している、
ことを特徴とする請求項2に記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記シールドは、前記開口部から遠ざかるに従って厚さが厚くなる部分を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記シールドの前記処理空間に面する内面は、前記開口部から遠ざかるに従って、前記バッキングプレートの中心軸からの距離が大きくなった後に小さくなる、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
前記ターゲットの前記本体部は、その周辺部に傾斜面を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
バッキングプレートと、ターゲットを前記バッキングプレートに固定するための固定部とを有し、処理空間においてスパッタリングによって基板に膜を形成するスパッタリング装置において前記ターゲットの周囲を取り囲むように配置されるシールドであって、
前記シールドは、開口部を有し、
前記ターゲットは、前記開口部の内側に配置される本体部と、前記本体部を取り囲む鍔部とを有し、
前記固定部は、前記ターゲットの周辺部を前記バッキングプレートに押し付けることによって前記ターゲットを前記バッキングプレートに固定するように構成され、
前記シールドは、前記固定部によって前記バッキングプレートに固定された前記ターゲットの前記鍔部に対して前記固定部を介することなく対面する対面部と、前記対面部の外側の外側部とを有し、前記対面部と前記バッキングプレートとの間隔が、前記外側部と前記バッキングプレートとの間隔より小さく、
前記シールドの前記処理空間に面する内面は、前記内面と前記バッキングプレートとの距離が前記外側部から前記対面部に向かに従って小さくなるように傾斜した部分を含み、
前記固定部の前記処理空間の側の面は、当該面と前記バッキングプレートとの距離が前記開口部の内側に向かうに従って小さくなるように傾斜した部分を含み、
前記シールドの前記内面と反対側の面は、前記内面と前記バッキングプレートとの距離が前記外側部から前記対面部に向かうに従って小さくなるように傾斜した部分を含む、
ことを特徴とする記載のシールド。
【請求項8】
前記対面部は、前記バッキングプレートに向かって突出した突出部を含む、
ことを特徴とする請求項7に記載のシールド。
【請求項9】
前記シールドは、前記開口部から遠ざかるに従って厚さが厚くなる部分を含む、
ことを特徴とする請求項7または8に記載のシールド。
【請求項10】
前記シールドの前記処理空間に面する内面は、前記開口部から遠ざかるに従って、前記バッキングプレートの中心軸からの距離が大きくなった後に小さくなる、
ことを特徴とする請求項7または8に記載のシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置、ならびに、それに組み込まれるターゲットおよびシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路、ディスプレイパネル、ディスクなどの製造において、半導体ウェハ、ガラスパネル、樹脂ディスクなどの基板の上に膜を形成するためにスパッタリングが使用されうる。スパッタリングは、ターゲットの表面にイオンを衝突させ、これによって該表面から放出される粒子を基板の上に堆積させて膜を形成する成膜技術である。ターゲットは、バッキングプレートに固定される。バッキングプレートは、冷却手段によって冷却され、これによってターゲットが冷却される。バッキングプレートはまた、ターゲットに電圧を印加する電極としても機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2003−226967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8は、本願発明の課題を説明するために本願の発明者が作成した図面であり、同図には、スパッタリング装置におけるターゲット5の周辺部が模式的に示されている。スパッタリング装置は、バッキングプレート7と、ターゲット5をバッキングプレート7に固定する固定部13と、ターゲット5の周囲を取り囲むシールド14とを有しうる。固定部13は、ターゲット5をバッキングプレート7に押し付けるように螺子等によってバッキングプレート7に固定されうる。シールド14は、固定部13を覆うようにターゲット5の周囲に配置されうる。基板Sを保持する基板保持部4とバッキングプレート7との間に与えられる電圧によって引き起こされる放電によって発生したイオンがターゲット5に衝突し、これによってターゲット5から粒子が放出される。この粒子は、膜を形成すべき基板Sのほか、シールド14にも堆積し堆積物DPを形成しうる。堆積物DPがシールド14から剥がれ落ちると、基板S、または、スパッタリング装置のチャンバ壁1内の処理空間12を汚染しうる。
【0005】
堆積物DPの形成は、ターゲット5の表面、即ちイオンが衝突し粒子が放出される部分に近い部分ほど顕著になりうる。そこで、シールド14の内側部分(ターゲット5に対向している部分)をターゲット5から離隔することも考えられるが、これではシールド14の代わりに固定部13などに堆積物が形成されることになるので、シールド14が本来の目的を果たせない。
【0006】
本発明は、発明者による上記の課題認識を契機としてなされたものであり、シールドやターゲットを固定するための固定部への堆積物の形成を低減するために有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面は、バッキングプレートと、ターゲットを前記バッキングプレートに固定するための固定部と、前記ターゲットの周囲を取り囲むシールドとを有し、処理空間においてスパッタリングによって基板に膜を形成するスパッタリング装置に係り、前記シールドは、開口部を有し、前記固定部は、前記ターゲットの周辺部を前記バッキングプレートに押し付けることによって前記ターゲットを前記バッキングプレートに固定するように構成され、前記シールドは、前記固定部を介することなく前記バッキングプレートに対面する対面部と、前記対面部の外側の外側部とを有し、前記対面部と前記バッキングプレートとの間隔が、前記外側部と前記バッキングプレートとの間隔より小さく、
前記シールドの前記処理空間に面する内面は、前記内面と前記バッキングプレートとの距離が前記外側部から前記対面部に向かうに従って小さくなるように傾斜した部分を含む。
【0008】
本発明の第2の側面は、バッキングプレートと、ターゲットを前記バッキングプレートに固定するための固定部とを有し、処理空間においてスパッタリングによって基板に膜を形成するスパッタリング装置において前記ターゲットの周囲を取り囲むように配置されるシールドに係り、前記シールドは、開口部を有し、前記固定部は、前記ターゲットの周辺部を前記バッキングプレートに押し付けることによって前記ターゲットを前記バッキングプレートに固定するように構成され、前記シールドは、前記固定部を介することなく前記バッキングプレートに対面する対面部と、前記対面部の外側の外側部とを有し、前記対面部と前記バッキングプレートとの間隔が、前記外側部と前記バッキングプレートとの間隔より小さく、前記シールドの前記処理空間に面する内面は、前記内面と前記バッキングプレートとの距離が前記外側部から前記対面部に向かに従って小さくなるように傾斜した部分を含む。
【0009】
本発明の第3の側面は、スパッタリング装置において使用されるターゲットに係り、本体部と、前記本体部を取り囲む鍔部とを有し、前記鍔部が環状の凹部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シールドやターゲットを固定するための固定部への堆積物の形成を低減するために有利な技術が提供される。
【0011】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施の形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
【
図1】本発明の実施形態のスパッタリング装置の基本構成を示す図。
【
図2】本発明の第1実施形態のスパッタリング装置の部分的な構成を示す図。
【
図3】本発明の第2実施形態のスパッタリング装置の部分的な構成を示す図。
【
図4】本発明の第3実施形態のスパッタリング装置の部分的な構成を示す図。
【
図5】本発明の第4実施形態のスパッタリング装置の構成を示す図。
【
図6】本発明の第5実施形態のスパッタリング装置の部分的な構成を示す図。
【
図7】本発明の第6実施形態のスパッタリング装置の部分的な構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の特定の実施形態を説明するが、これは本発明を限定することを意図したものではない。
【0014】
まず、
図1を参照しながら本発明のスパッタリング装置の1つの実施形態における基本構成を説明する。本発明の1つの実施形態のスパッタリング装置100は、バッキングプレート7と、ターゲット5をバッキングプレート7に固定する固定部13と、ターゲット5の周囲を取り囲むシールド14とを有しうる。固定部13は、ターゲット5をバッキングプレート7に押し付けるように螺子等の締結部品312によってバッキングプレート7に固定されうる。バッキングプレート7は熱伝導性の観点から導電性のシート等を有しうる。ターゲット5は、放電によって発生するプラズマに晒されるので、その温度が上昇し膨張しうる。そこで、固定部13は、ターゲット5が膨張することを許容するようにターゲット5を固定しうる。シールド14は、固定部13を覆うようにターゲット5の周囲に配置されうる。これにより固定部13の温度の上昇が抑えられうる。バッキングプレート7は、絶縁部材10を介してチャンバ壁1に固定されうる。バッキングプレート7は、チャンバ壁1とともに処理容器を構成しうる。
【0015】
スパッタリング装置100は、チャンバ壁1によって外部空間から隔てられた処理空間12においてスパッタリングによって基板Sに膜を形成するように構成されうる。具体的には、基板Sを保持する基板保持部4とバッキングプレート7との間に与えられる電圧によって引き起こされる放電によって発生したイオンがターゲット5に衝突し、これによってターゲット5から粒子が放出される。この粒子が基板Sの上に堆積することによって基板Sの上に膜が形成される。ターゲット5からの粒子は、基板Sのほか、シールド14にも堆積し堆積物を形成しうる。処理空間12は、チャンバ壁1に設けられた排気口3を通してターボ分子ポンプなどの排気装置2によって排気され減圧される。処理空間12には、不図示のガス供給部を通してスパッタガス(例えば、アルゴン)が導入されうる。
【0016】
スパッタリング装置100は、ターゲット5の周囲に磁場を提供するマグネット8を備えることができ、マグネトロンスパッタリング装置として構成されうる。マグネット8は、マグネット8とターゲット5とによってバッキングプレート7が挟まれるように配置されうる。ターゲット5は、その全体がターゲット材で構成されてもよいが、例えば、バッキングプレート7と接触するプレート部材(例えば、無酸素銅で構成されたプレート部材)の上にターゲット材を半田等で接合した構成を有してもよい。
【0017】
以下、
図1のほか
図2を参照しながら本発明の第1実施形態のスパッタリング装置について説明する。シールド14は、開口部OPを有する。ターゲット5は、シールド14の開口部OPの内側に配置される本体部MBと、本体部MBを取り囲む鍔部FLとを有しうる。鍔部FLは、バッキングプレート7の側の面である第1面51と、第1面51の反対側の面である第2面52とを有する。固定部13は、ターゲット5の周辺部である鍔部FLをバッキングプレート7に押し付けることによってターゲット5をバッキングプレート7に固定するように構成されうる。
【0018】
シールド14は、固定部13を介することなくバッキングプレート7に対面する対面部141と、対面部141の外側の外側部142とを有する。ここで、外側部142は、開口部OPを基準として、対面部141の外側に配置されている。固定部13を介することなくバッキングプレート7に対面する対面部141とバッキングプレート7との間隔G1は、外側部142とバッキングプレート7との間隔G2より小さいことが好ましい。これは、例えば、ターゲット5から放出された粒子がシールド14とターゲット5との間隙を通して固定部13に至って固定部13に堆積することを防止するために効果的である。また、これは、シールド14の対面部141をバッキングプレート7の側に近づけるために有利であり、これは、ターゲット5から放出された粒子による対面部141への堆積物の形成を低減するために効果的である。なお、ターゲット5が固定部13によってバッキングプレート7に取り付けられている場合には、ターゲット5を取り去った状態において固定部13を介することなくバッキングプレート7と対面する部位を対面部141とする。
【0019】
更に、シールド14における処理空間12に面する内面S1は、内面S1とバッキングプレート7との距離D1が外側部142から対面部141に向かうに従って小さくなるように傾斜した部分(以下、第1傾斜部)を含むことが好ましい。ここで、第1傾斜部は、
図2に例示されるような断面において、直線状に傾斜した部分であってもよいし、曲線を構成するように傾斜した部分であってもよい。
【0020】
更に、固定部13の処理空間12の側の面FSは、面FSとバッキングプレート7との距離D3がシールド14の開口部OPの内側に向かうに従って小さくなるように傾斜した部分(以下、第2傾斜部)を含み、シールド14の内面S1と反対側の面S2は、面S2とバッキングプレート7との距離D2が外側部142から対面部141に向かうに従って小さくなるように傾斜した部分(以下、第3傾斜部)を含むことが好ましい。このように固定部13に第2傾斜部を設け、それに面するシールド14の面S2に第3傾斜部を設けた構成によれば、シールド14の対面部141をよりバッキングプレート7あるいはターゲット5の鍔部FLに近づけることができ、これによりターゲット5から放出された粒子による対面部141への堆積物の形成を低減することができる。
【0021】
シールド14の処理空間12に面する内面S1とバッキングプレート7との最小距離DMは、ターゲット5の最大厚さTMよりも小さいことが好ましい。これもまた、ターゲット5から放出された粒子による対面部141への堆積物の形成を低減するために効果的である。
【0022】
次に、
図1のほか
図3を参照しながら本発明の第2実施形態のスパッタリング装置について説明する。なお、第2実施形態として特に言及しない事項については、第1実施形態に従いうる。第2実施形態では、シールド14の対面部141は、
図3に例示されるように、バッキングプレート7に向かって突出した突出部145を含む。これは、ターゲット5から放出された粒子がシールド14とターゲット5との間隙を通して固定部13に至って固定部13に堆積することを防止するために効果的である。
【0023】
次に、
図1のほか
図4を参照しながら本発明の第3実施形態のスパッタリング装置について説明する。なお、第3実施形態として特に言及しない事項については、第1、第2実施形態に従いうる。第3実施形態では、シールド14の内面S1に設けた第3傾斜部が第1実施形態よりも大きくされ、例えば、固定部13が配置された領域よりも外側方向(「外側方向」は、シールド14の開口部OPを基準とする外側を意味する)まで拡大されている。このような構造は、シールド14の強度を高めることに寄与する。また、このような構造は、点線で例示するような円筒面CSを有するようなシールドに比べ、シールドの内面の面積を大きくすることができるので、シールドの内面に形成される堆積物の厚さを薄くするために有利である。例えば、円筒面CSの領域A1に形成されうる堆積物の体積とシールド14の領域A2に形成されうる堆積物の体積とが等しいとすれば、領域A1よりも領域A2の方が広いので、領域A1に形成される堆積物の厚さよりも領域A2に形成される堆積物の厚さの方が薄くなる。つまり、第3実施形態は、シールド14の内面S1に形成される堆積物を薄くし、内面S1からの堆積物の剥がれを防止するために効果的である。
【0024】
次に、
図5を参照しながら本発明の第4実施形態のスパッタリング装置について説明する。なお、第4実施形態として特に言及しない事項については、第1〜第3実施形態に従いうる。第4実施形態では、シールド14の処理空間12に面する内面S1は、シールド14の開口部OPから遠ざかるに従って、バッキングプレート7の中心軸AXからの距離Rが大きくなり、その後に小さくなる。これは、ターゲット5から放出された粒子が外側方向に拡散することを防止するために有利である。
【0025】
次に、
図6を参照しながら本発明の第5実施形態のスパッタリング装置について説明する。なお、第5実施形態として特に言及しない事項については、第1〜第4実施形態に従いうる。第5実施形態では、ターゲット5の本体部MBは、その周辺部に傾斜面TPを有する。このようなターゲット5の構造により、本体部MBの側面における鍔部FLに垂直な部分VSの面積が小さくなる。ここで、本体部MBの側面における鍔部FLに垂直な部分VSには、ターゲット5から放出された粒子が付着し堆積物が形成されやすく、これが剥がれると基板Sや処理空間12を汚染しうる。そこで、ターゲット5の本体部MBの周辺部に傾斜面TPを設けて、本体部MBの側面における鍔部FLに垂直な部分VSの面積を小さくすることが好ましい。このようなターゲット5の使用は、第1〜第4実施形態として説明したスパッタリング装置100の使用との相乗効果により基板Sの汚染などの低減において優れた効果を発揮しうる。
【0026】
次に、
図1のほか
図7を参照しながら本発明の第6実施形態のスパッタリング装置について説明する。なお、第6実施形態として特に言及しない事項については、第1〜第5実施形態に従いうる。第6実施形態では、ターゲット5は、鍔部FLに環状の凹部RRを有し、シールド14に設けられた突出部145は、ターゲット5の凹部RRに対面している。これにより、処理空間12から固定部13に至る経路が屈曲し、あるいはラビリンスシール状になるので、ターゲット5から放出された粒子が固定部13に至って固定部13に堆積することを防止するために効果的である。
【0027】
(実施例)
ターゲット5としては、例えば、純金属(例えばチタン)、又は、合金(例えばアルミニウムと銅との合金)、誘電体(例えばSiO
2)などのターゲット材を使用することができる。ターゲット5は、そのコンタクト面がバッキングプレート7のコンタクト面に接触するように固定部13によってバッキングプレート7に固定される。バッキングプレート7は、例えば、無酸素銅などの熱伝導性が良い材料で構成されうる。ターゲット5は、例えば、鍔部FLの外径が180mm、鍔部FLの厚さが3mmであり、本体部(被スパッタ部)MBの外径が160mm、本体部MBの厚さが14mmでありうる。
【0028】
固定部13は、例えば、ステンレス鋼で構成されうる。固定部13の処理空間12の側の面FSにおける第2傾斜面とバッキングプレート7のコンタクト面(これは、典型的には、ターゲット5のコンタクト面、ターゲット5の鍔部FLの第1面51および第2面52に平行である。)に平行な面との間の角度A(
図4参照)は、例えば、20度〜60度の角度であることが好ましく、例えば30度でありうる。
【0029】
シールド14は、例えば、アルミニウム合金で形成されうる。シールド14で構成され、固定部13の処理空間12に面する内面S1における第1傾斜部およびその反対側の面S2における第3傾斜部は、例えば、固定部13の処理空間12の側の面FSにおける第2傾斜部と平行でありうる。固定部13とシールド14との間には、アーク放電を防ぎ、かつ、プラズマの発生を防ぐように、例えば、1mm〜2mmの間隔にされうる。シールド14の対面部141および外側部142の厚さは、例えば、6mm以上であることが好ましい。
【0030】
突出部145を設ける場合、突出部145の鍔部FL側の面と鍔部FLとの間隙は、例えば、1mm〜2mmでありうる。シールド14の対面部141の内側部分とターゲット5の本体部MBの側面との間隙は、例えば、1mm〜2mmでありうる。
【0031】
ターゲット5の傾斜部TPを設ける場合、傾斜部TPは、ターゲット5のコンタクト面に平行な面に対して15〜30度であることが好ましく、例えば、25度でありうる。
【0032】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
【0033】
本願は、2011年12月12日提出の日本国特許出願特願2011−271663を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てを、ここに援用する。