特許第5775191号(P5775191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5775191-分離不可能な単一部品の時計構成部品 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775191
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】分離不可能な単一部品の時計構成部品
(51)【国際特許分類】
   G04B 18/02 20060101AFI20150820BHJP
   G04B 29/04 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   G04B18/02 Z
   G04B29/04 Z
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-54690(P2014-54690)
(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公開番号】特開2014-182147(P2014-182147A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2014年3月18日
(31)【優先権主張番号】13160025.6
(32)【優先日】2013年3月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス−ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】マルク・シュトランツル
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー・へスラー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−リュック・ヘルファー
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−214822(JP,A)
【文献】 実開昭52−063062(JP,U)
【文献】 国際公開第2011/120180(WO,A1)
【文献】 特開2012−027018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 − 49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの弾性ストリップ(83)を用いて位置調整用構成部品(82)を支持する剛性構造(81)を有する位置調整機構(80)を含む、分離不可能な単一部品の時計構成部品(20)であって、
前記位置調整用構成部品(82)は、調整機構(90)が備える相補的インデックス手段(91)と協働するよう配設されたインデックス(84)手段を備え、
前記調整機構(90)は、前記分離不可能な単一部品の構成部品(20)に組み込まれており、
前記相補的インデックス手段(91)は、前記インデックス手段(84)に着脱可能に設置され、少なくとも1つの係合位置と少なくとも1つの分離位置との間で可動であるクランプ留め機構(94)によって、前記インデックス手段(84)と協働する位置にクランプ留めでき、前記クランプ留め機構(94)は前記インデックス手段(84)及び前記相補的インデックス手段(91)とは別個であり、前記構造(81)に弾性的に固定されることを特徴とする、分離不可能な単一部品の構成部品(20)。
【請求項2】
前記クランプ留め機構(94)は、前記調整機構(90)が自由となる前記分離位置において、前記クランプ留め機構を保持するか、又は前記クランプ留め機構(94)が前記調整機構(90)を妨げる前記係合位置において、前記クランプ留め機構をロックする、ロック機構(98)の作用を受けることを特徴とする、請求項1に記載の分離不可能な単一部品の構成部品(20)。
【請求項3】
前記クランプ留め機構(94)は、前記クランプ留め機構(94)が前記調整機構(90)を妨げる前記係合位置において、前記クランプ留め機構をロックするよう配設された前記ロック機構(98)の作用を受けることを特徴とする、請求項1に記載の分離不可能な単一部品の構成部品(20)。
【請求項4】
前記クランプ留め機構(94)は、前記調整機構(90)が自由となる前記分離位置において、前記クランプ留め機構を保持するよう配設された前記ロック機構(98)の作用を受けることを特徴とする、請求項1に記載の分離不可能な単一部品の構成部品(20)。
【請求項5】
前記ロック機構(98)もまた前記構造(81)に弾性的に固定され、前記分離位置と、前記ロック機構が前記クランプ留め機構(94)を保持又はロックする前記係合位置との間で可動であることを特徴とする、請求項2に記載の分離不可能な単一部品の構成部品(20)。
【請求項6】
前記調整機構(90)の前記相補的インデックス手段(91)は、少なくとも1つの弾性可撓性ストリップ(92)によって前記剛性構造(81)に取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載の分離不可能な単一部品の構成部品(20)。
【請求項7】
少なくとも1つの弾性ストリップ(83)を用いて位置調整用構成部品(82)を支持する剛性構造(81)を有する位置調整機構(80)を含む、分離不可能な単一部品の時計構成部品(20)であって、
前記位置調整用構成部品(82)は、調整機構(90)が備える相補的インデックス手段(91)と協働するよう配設されたインデックス(84)手段を備え、
前記調整機構(90)は、前記分離不可能な単一部品の構成部品(20)に組み込まれており、
前記相補的インデックス手段(91)は、前記インデックス手段(84)に着脱可能に設置され、
前記調整機構(90)の前記相補的インデックス手段(91)は、少なくとも1つの弾性可撓性ストリップ(92)によって前記剛性構造(81)に取り付けられ、
前記調整機構(90)の前記相補的インデックス手段(91)は、少なくとも第1の前記弾性可撓性ストリップ(92)と第2の弾性可撓性ストリップ(92A)との間に懸架するようにして前記剛性構造(81)に取り付けられ、
このアセンブリは、2つの安定位置、即ち前記相補的インデックス手段(91)が前記インデックス手段(84)と協働する第1の作動位置(A)、及び前記相補的インデックス手段(91)が前記インデックス手段(84)から外れる第2の解放位置(B)を取ることができる、双安定性要素を形成する
ことを特徴とする、分離不可能な単一部品の構成部品(20)。
【請求項8】
前記第1の弾性可撓性ストリップ(92)及び前記第2の弾性可撓性ストリップ(92A)は実質的に整列されており、共に、バックリングによって動作する前記双安定性要素を形成することを特徴とする、請求項7に記載の分離不可能な単一部品の構成部品(20)。
【請求項9】
前記調整機構(90)の前記相補的インデックス手段(91)は、3つ以上の弾性可撓性ストリップの間に懸架するようにして前記剛性構造(81)に取り付けられ、
このアセンブリは、少なくとも即ち前記相補的インデックス手段(91)が前記インデックス手段(84)と協働する第1の作動位置(A)、及び前記相補的インデックス手段(91)が前記インデックス手段(84)から外れる第2の解放位置(B)を取ることができる、双安定性又は多安定性要素を形成することを特徴とする、請求項7に記載の分離不可能な単一部品の構成部品(20)。
【請求項10】
前記クランプ留め機構(94)は、少なくとも1つの弾性可撓性ストリップ(96)によって前記剛性構造(81)に取り付けられることを特徴とする、請求項2に記載の分離不可能な単一部品の構成部品(20)。
【請求項11】
前記相補的インデックス手段(91)は、前記クランプ留め機構(94)が備えるフォークと協働するよう配設される少なくとも1つのアーム(93)を含むこと、
前記クランプ留め機構(94)は、前記アームのクリアランスが前記少なくとも1つの弾性可撓性ストリップ(96)の復帰作用の下で前記フォークによって制限される第1のクランプ留め位置、及び前記アーム(93)の前記クリアランスが前記フォークによって妨げられず、かつ前記クランプ留め機構(94)が前記少なくとも1つの弾性可撓性ストリップ(96)に対して前記クランプ留め位置から離れる方向に移動する、第2の解放位置を取ることができること
を特徴とする、請求項10に記載の分離不可能な単一部品の構成部品(20)。
【請求項12】
前記相補的インデックス手段(91)は、前記位置調整用構成部品(82)が備える少なくとも1つの歯(84)又は少なくとも1つの歯付き櫛状部と様々なインデックス位置において協働するように配設される、少なくとも1つの歯付き櫛状部又は少なくとも1つの歯を含むことを特徴とする、請求項1に記載の分離不可能な単一部品の構成部品(20)。
【請求項13】
前記相補的インデックス手段(91)は、前記位置調整用構成部品(82)に対して前記相補的インデックス手段(91)を解放するために、前記構造(81)に対して角度的枢動運動によって可動であるか、
前記位置調整用構成部品(82)は、前記相補的インデックス手段(91)に対して前記位置調整用構成部品(82)を解放するために、前記構造(81)に対して角度的枢動運動によって可動であるか、又は
前記相補的インデックス手段(91)及び前記位置調整用構成部品(82)の両方は、係合を互いから解除するために、前記構造(81)に対して角度的枢動運動によって可動である
ことを特徴とする、請求項12に記載の分離不可能な単一部品の構成部品(20)。
【請求項14】
前記相補的インデックス手段(91)は、前記位置調整用構成部品(82)が備えかつ少なくとも1つの可撓性ストリップ(83)の端部に位置する前記少なくとも1つの歯(84)を固定する、前記少なくとも1つの歯付き櫛状部を含み、前記歯付き櫛状部は、前記クランプ留め機構(94)が備えるクランプ留め用板バネ(96)によって、前記少なくとも1つの歯(84)上に押圧されること、
前記ロック機構(98)は、前記少なくとも1つの可撓性ストリップ(96)上に設置されたロック用フィンガ(99)を含むこと、及び
前記クランプ留め用板バネ(96)は、前記クランプ留め用板バネ(96)の拘束表面(97)と協働する前記ロック用フィンガ(99)で固定されること
を特徴とする、請求項2に記載の分離不可能な単一部品の構成部品(20)。
【請求項15】
前記位置調整用構成部品(82)は、ガイドされる構成部品若しくはヒゲゼンマイをガイド又は保持する手段であること、及び
前記ガイドされる構成部品又はヒゲゼンマイは、前記分離不可能な単一部品の構成部品(20)と単一の部品であること
を特徴とする、請求項1に記載の分離不可能な単一部品の構成部品(20)。
【請求項16】
前記機構はシリコン製であること、及び
前記機構が備える前記一体化された弾性復元手段は、酸化シリコン状態でプレストレスを与えられること
を特徴とする、請求項1に記載の分離不可能な単一部品の構成部品(20)。
【請求項17】
少なくとも1つの分離不可能な単一部品の構成部品(20)を含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の機械式時計ムーブメント(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの弾性ストリップを用いて位置調整用構成部品を支持する剛性構造を有する位置調整機構を含む、分離不可能な単一部品の時計構成部品に関し、位置調整用構成部品は、調整機構が備える相補的インデックス手段と協働するよう配設されたインデックス手段を含み、上記調整機構は、上記分離不可能な単一部品の構成部品に組み込まれている。
【0002】
本発明はまた、このタイプの少なくとも1つの分離不可能な単一部品の構成部品を含む、機械式時計ムーブメントを備える。
【0003】
本発明は時計機構の分野に関し、より具体的には調整、特に位置又は中心間距離の調整に関する。
【背景技術】
【0004】
時計の構成部品、特にホイールセットのアーバの取り付け位置の調整は、経験豊富な専門家の手を必要とする作業である。
【0005】
ムーブメントは、位置の適合若しくは中心間距離の設定を容易に行い、伝動装置及びホイールセットの高さを調整し、且つ遊びを配置できるように常に考案されているわけではない。
【0006】
ETA SAによる特許文献1は、アーバの一方の端部の運動を制御することによってマイクロメートル単位の調整を行うために考案されたムーブメントを開示している。このマイクロメートル単位の機構は、偏心ネジ、レバー持ち上げ用部品といった精密に調整された構成部品の組み合わせを必要とし、これらはムーブメント内の空間を占有し、またかなりのコストを伴う。
【0007】
従って、構成部品の数が削減され、製造コストを抑えた構造の機構であって、コンパクトであり、微調整を可能とするだけでなく、隣接する構成部品の幾何学的寸法を妨害することなく達成でき、一度実施した調整を維持できる構造の機構を考案することは有意義である。この機構はまた、機構を故障させないよう、調整段階中に保持手段が弱まらないようにしなければならない。
【0008】
NIVAROXによる特許文献2は、インサートを使用しない慣性調整を有するテンプを開示しており、これは相補的フック手段と協働するよう配設されたフェリと単一の部品であるフック手段を含み、これらは共に、傾斜した歯部を有する歯付きセクタで形成される。
【0009】
NIVAROXによる別の特許文献3は、好ましくはテンプと単一の部品であり、かつテンプに固定された回転子を含む可動双安定性アセンブリ、及び回転子に対して枢動可能であり、回転子のアーバに対して平行かつ回転子のアーバとは別個のアーバの周りで枢動する双安定性レバーを有する、トリップ防止機構を開示しており、この双安定性レバーの軌跡の一部はテンプのピンに干渉する。特定の変形例では、回転子と双安定性レバーとの間の接続は弾性復元手段によって達成される。
【0010】
SKIDATAによる特許文献4は、開放型弾性ループタイプの固定要素を含む腕時計ケースを開示しており、これは、その端部においてケースの単一部品構造が備えるノッチと協働するフックを有する。
【0011】
ROLEXによる特許文献5は、構造体と単一の部品である弾性接続要素を有する、歯付きホイール用のクランプ留めデバイスを開示している。また、GIRARD−PERREGAUXによる特許文献6はまた、双安定性板バネを有する脱進機機構を開示しており、この板バネは、この板バネがバックリングによって設置されている構造と単一の部品となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願第12161058.8号
【特許文献2】スイス特許第703463A2号
【特許文献3】欧州特許第2450757号
【特許文献4】国際公開特許第90/01731A1号
【特許文献5】国際公開特許第2011/120180A1号
【特許文献6】欧州特許出願第2105806A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、構成部品の数を削減した、可能であれば単一の構成部品による、又はより好ましくは、調整される構成部品に一体化されるか若しくは構成部品を受承する構造に一体化される機構による、この問題に対する解決法を提供することを提案する。
【0014】
この解決法は平均的なアセンブリ及び調整の複雑さを許容するものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、本発明は、新規の微小構成部品製造技術、MEMS、「LIGA」、リソグラフィ等を利用して、上述の必要な機能を保証する多機能機構を作製する。
【0016】
従って本発明は、少なくとも1つの弾性ストリップを用いた位置調整用構成部品の剛性キャリア構造を有する位置調整機構を含む、分離不可能な単一部品の時計構成部品に関し、位置調整用構成部品は、調整機構が備える相補的インデックス手段と協働するよう配設されたインデックス手段を含み、上記調整機構は、上記分離不可能な単一部品の構成部品に組み込まれており、上記相補的インデックス手段は、インデックス手段から取り外し可能に設置され、少なくとも1つの係合位置と少なくとも1つの分離位置との間で可動であるクランプ留め機構によって、上記インデックス手段と協働する位置にクランプ留めでき、このクランプ留め機構は上記インデックス手段及び上記相補的インデックス手段とは別個であり、上記構造に弾性的に固定される。
【0017】
本発明の特徴によると、上記クランプ留め機構は、上記クランプ留め機構が上記調整機構を妨げる係合位置において、クランプ留め機構をロックするよう配設されたロック機構の作用を受ける。
【0018】
本発明の特徴によると、上記クランプ留め機構は、上記調整機構が自由となる分離位置において、クランプ留め機構を維持するよう配設されたロック機構の作用を受ける。
【0019】
本発明の特徴によると、上記クランプ留め機構は、上記調整機構が自由となる分離位置において、クランプ留め機構を保持するか、又は上記クランプ留め機構が上記調整機構を妨げる係合位置において、クランプ留め機構をロックする、ロック機構の作用を受ける。
【0020】
本発明はまた、このタイプの少なくとも1つの分離不可能な単一部品の構成部品を含む機械式時計ムーブメントに関する。
【0021】
モノリシックな構成部品の利点は、組み立てに関する問題を回避できることである。本発明の利点は、これらのモノリシックな構成部品を作製する際の精度に起因するものである(典型的には、これらの部品は例えばシリコン製であり、従ってマイクロメートル単位の精度を有する)。
【0022】
モノリシックな機構は、中心間の距離を保証し、即時使用可能な機構を形成するという主な利点を有する。
【0023】
本発明は特に可撓性ガイド部材に関し、この可撓性ガイド部材は以下の利点:
−保証された精度;
−極めて低減された摩擦レベル又はゼロ摩擦レベル;
−摩擦が存在しないか又は少なくとも摩擦レベルが極めて低減されていることによる、移動中のヒステリシスの不在;
−潤滑の不在;
−遊びの不在;及び
−摩耗の不在
を有する。
【0024】
可撓性ガイド部材の使用は、例えば移動距離の制限や、低い復元力の点でいくつかの制限を受ける。しかしながら、これらの制限は特に調速に関する多数の時計学的機能を妨害するものではない。
【0025】
これらの制限は、高い精度の中心間距離、作製する構成部品の数の少なさ、並びにそれらに伴う複雑性及び組付け時間の削減によって十分に補償される。
【0026】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1〜3は、モノリシックなアセンブリの平面図を示し、このアセンブリは、これもまたアセンブリに一体化された構成部品のための位置調整手段を含み、上記調整手段はクランプ留め手段によって所定の位置にロックすることができる。図1は、ヒゲゼンマイを引っ掛けるためのピボットの、櫛状部を含む弾性調整手段を介した調整を示し、櫛状部は調整された位置にクランプ留めされ、ロック機構はこのクランプ留め手段を制御する。
図2図2は、図1と同様の実施例を示し、ここで櫛状部は2つの可撓性ストリップの間に保持され、双安定性構成部品を形成する。
図3図3は、櫛状部が可撓性ストリップの端部に配置された緩急針を固定する、図1と同様の機構を示し、櫛状部は、クランプ留め用板バネによって緩急針に押圧され、この板バネはロック用フィンガによって固定される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は時計機構の分野に関し、より具体的には、調整、特に位置又は中心間距離の調整に関する。
【0029】
本発明は、位置調整機構80を含む、分離不可能な単一部品の時計構成部品20に関する。この機構80は、少なくとも1つの弾性ストリップ83を用いて位置調整用構成部品82を支持する剛性構造81を有し、位置調整用構成部品82はインデックス手段84を含む。
【0030】
このインデックス手段84は、調整機構90が備える相補的インデックス手段91と協働するよう配設される。
【0031】
この調整機構90は、分離不可能な単一部品の構成部品20に組み込まれている。
【0032】
本発明によると、相補的インデックス手段91は、インデックス手段84から取り外し可能に設置され、クランプ留め機構94によって、インデックス手段84と協働する位置にクランプ留めできる。このクランプ留め機構94は、少なくとも1つの係合位置と少なくとも1つの分離位置との間で可動である。このクランプ留め機構94は、インデックス手段84及び相補的インデックス手段91とは別個であり、構造81に弾性的に固定される。
【0033】
有利には、クランプ留め機構94は図示したように、ロック機構98の作用を受ける。
【0034】
このロック機構98は、クランプ留め機構94が調整機構90を妨げる係合位置において、クランプ留め機構94をロックするよう配設される。
【0035】
好ましくは、クランプ留め機構94は、調整機構90が自由となる分離位置において、クランプ留め機構を維持するよう配設されたロック機構98の作用を受ける。
【0036】
図1に示す組み合わせた実施形態では、クランプ留め機構94は、調整機構90が自由となる分離位置において、機構94を保持するか、又はクランプ留め機構94が調整機構90を妨げる係合位置において、機構94をロックする、ロック機構98の作用を受ける。
【0037】
本発明によると、ロック機構98もまた構造81に弾性的に固定され、分離位置と、クランプ留め機構94を保持又はロックする係合位置との間で可動である。
【0038】
好ましくは、調整機構90の相補的インデックス手段91は、少なくとも1つの弾性可撓性ストリップ92によって剛性構造81に取り付けられる。
【0039】
図2の特定の実施形態では、調整機構90の相補的インデックス手段91は、少なくとも第1の弾性可撓性ストリップ92と第2の弾性可撓性ストリップ92Aとの間に懸架するようにして剛性構造81に取り付けられる。このアセンブリは2つの安定位置、即ち相補的インデックス手段91がインデックス手段84と協働する第1の作動位置A、及び相補的インデックス手段91がインデックス手段84から外れる第2の解放位置Bを取ることができる、双安定性要素を形成する。従って、この双安定性の挙動の結果として調整機構90自体がクランプを形成し、ロック手段は不可欠なものではない。
【0040】
図2に示すような特定の実施形態では、第1の弾性可撓性ストリップ92及び第2の弾性可撓性ストリップ92Aは実質的に整列されており、これらは共に、バックリングによって動作する双安定性要素を形成する。
【0041】
図示していない別の実施形態では、相補的インデックス手段91は、3つ以上の弾性可撓性ストリップの間に懸架するようにして剛性構造81に取り付けられ、このアセンブリは、少なくとも2つの安定位置、即ち相補的インデックス手段91がインデックス手段84と協働する第1の作動位置A、及び相補的インデックス手段91がインデックス手段84から外れる第2の解放位置Bを取ることができる、双安定性又は多安定性要素を形成する。特定の変形例では、3つ以上であるこれらストリップは共線でない。
【0042】
一般に、位置調整機構80には、多安定性弾性要素等の可撓性要素、又はバックリングによって動作する双安定性ストリップにプレストレスを与えるための、特に有利な応用例が存在する。
【0043】
好ましくはクランプ留め機構94は、少なくとも1つの弾性可撓性ストリップ96によって剛性構造81に取り付けられる。
【0044】
図1に示す特定の実施形態では、相補的インデックス手段91は少なくとも1つのアーム93を含み、これはクランプ留め機構94が備えるフォークと協働するよう配設される。
【0045】
クランプ留め機構94は、アーム93のクリアランスがこの少なくとも1つの弾性可撓性ストリップ96の復帰作用の下でフォークによって制限される第1のクランプ留め位置、及びアーム93のクリアランスがフォークによって妨げられず、かつクランプ留め機構94が弾性可撓性ストリップ96に対してそのクランプ留め位置から離れる方向に移動する、第2の解放位置を取り得る。
【0046】
限定するものではないが、図示したように、相補的インデックス手段91は有利には、位置調整用構成部品82が備える少なくとも1つの歯84又は少なくとも1つの歯付き櫛状部と様々なインデックス位置において協働するように配設される、少なくとも1つの歯付き櫛状部又は少なくとも1つの歯を含む。
【0047】
好ましくは、構成部品82と相補的インデックス手段との間の相対的な阻害を向上するために、
−相補的インデックス手段91は、位置調整用構成部品82に対して上記手段91を解放するために、構造81に対して角度的枢動運動によって可動であるか、
−位置調整用構成部品82は、相補的インデックス手段91に対して上記構成部品82を解放するために、構造81に対して角度的枢動運動によって可動であるか、又は
−相補的インデックス手段91及び位置調整用構成部品82の両方は、これらの係合を互いから解除するために、構造81に対して角度的枢動運動によって可動である。
【0048】
図3の特定の実施形態では、相補的インデックス手段91は、位置調整用構成部品82が備え、かつ少なくとも1つの可撓性ストリップ83の端部に位置する少なくとも1つの歯84を固定する、少なくとも1つの歯付き櫛状部を含む。歯付き櫛状部は、クランプ留め機構94が備えるロック用板バネ96によって、上記少なくとも1つの歯84上に押圧される。ロック機構98は、少なくとも1つの可撓性ストリップ96上に設置されたロック用フィンガ99を含む。ロック用板バネ96は、ロック用板バネ96の拘束表面97と協働するロック用フィンガ99で固定される。
【0049】
特定の実施形態では、分離不可能な単一部品の構成部品20は、より大きなアセンブリ内での構成部品の組み立てを容易にするために、分割可能な要素を含み、これら分割可能な要素は、構成要素である部品のうちのいくつかに1つ又は複数の自由度を与えるため以外には分解する必要はない。
【0050】
特定の実施形態では、図1、2に示すように、位置調整用構成部品82は、ガイドされる構成部品若しくはヒゲゼンマイをガイド又は保持する手段であり、このガイドされる構成部品又はヒゲゼンマイは、分離不可能な単一部品の構成部品20と単一の部品である。この図1、2の例では、構成部品82は、脱進機機構の調速機アセンブリのヒゲゼンマイの外側コイルのための保持用ヒゲ持ちである。
【0051】
有利には、分離不可能な単一部品の構成部品20は、新規の微小構成部品製造技術、MEMS、「LIGA」、リソグラフィ等のうちの1つによって作製され、これにより、上述の必要な機能を保証する多機能機構を作製する。特定の非限定的実施形態では、構成部品はシリコン製であり、構成部品が備える一体化された弾性復元手段は、酸化シリコン状態でプレストレスを与えられる。
【0052】
本発明はまた、このタイプの少なくとも1つの分離不可能な単一部品の構成部品20を含む機械式時計ムーブメント100にも関する。
【符号の説明】
【0053】
20 分離不可能な単一部品の時計構成部品
80 位置調整機構
81 剛性構造
82 位置調整用構成部品
83 弾性ストリップ、可撓性ストリップ
84 インデックス手段、歯
90 調整機構
91 相補的インデックス手段
92 弾性可撓性ストリップ、第1の弾性可撓性ストリップ
92A 第2の弾性可撓性ストリップ
93 アーム
94 クランプ留め機構
96 弾性可撓性ストリップ、可撓性ストリップ、ロック用板バネ、クランプ留め用板バネ
97 拘束表面
98 ロック機構
99 ロック用フィンガ
100 機械式時計ムーブメント
A 第1の作動位置
B 第2の解放位置
図1
図2
図3