特許第5775209号(P5775209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パイオニア株式会社の特許一覧

特許5775209情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラムが記録された記録媒体及び情報処理プログラム
<>
  • 特許5775209-情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラムが記録された記録媒体及び情報処理プログラム 図000002
  • 特許5775209-情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラムが記録された記録媒体及び情報処理プログラム 図000003
  • 特許5775209-情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラムが記録された記録媒体及び情報処理プログラム 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775209
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラムが記録された記録媒体及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20150820BHJP
   G06F 9/46 20060101ALI20150820BHJP
   G06F 9/48 20060101ALI20150820BHJP
   G06F 9/50 20060101ALI20150820BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   B60R16/02 660Z
   B60R16/02 660T
   G06F9/46 350
   G06F9/46 452H
   G06F9/46 462A
   G01C21/26 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-503392(P2014-503392)
(86)(22)【出願日】2012年3月9日
(86)【国際出願番号】JP2012056094
(87)【国際公開番号】WO2013132647
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2014年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】針谷 真人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 博司
(72)【発明者】
【氏名】青木 岳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲也
(72)【発明者】
【氏名】松本 令司
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−028997(JP,A)
【文献】 特開2010−130670(JP,A)
【文献】 特開2007−065893(JP,A)
【文献】 特開2004−264224(JP,A)
【文献】 特開2006−021692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
G01C 21/26
G06F 9/46
G06F 9/48
G06F 9/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の移動状態を検知する検知手段と、
仮想化環境において稼働する第1のOS上で、前記移動体の移動中に前記移動体の利用者が操作を行うことができないアプリケーションとして設定された操作不能アプリケーションを動作させ、前記仮想化環境において稼働する第2のOS上で、前記利用者が操作を行うことができるアプリケーションとして設定されたアプリケーションを動作させるアプリケーション制御手段と、
前記検知された移動状態が停止中である場合に前記第1のOS及び前記第2のOSを稼働させ、前記検知された移動状態が移動中である場合に前記第1のOSを停止させるOS制御手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記移動状態として、前記移動体が停止している移動状態である第1の移動状態、前記移動体が第1の速度域で移動している移動状態である第2の移動状態、前記移動体が前記第1の速度域より高速の第2の速度域で移動している移動状態である第3の移動状態が定められており、
前記OS制御手段は、前記第1の移動状態から前記第2の移動状態に変わった際に、前記第1のOSで用いられる、前記利用者の入力を受け付ける入力デバイスを無効化し、前記移動状態が前記第2の移動状態から前記第3の移動状態に変わった際に、前記第1のOSで用いられる前記入力デバイス以外の非入力デバイスを無効化し、前記第3の移動状態から前記第2の移動状態に変わった際に、前記非入力デバイスを有効化し、前記第2の移動状態から前記第1の移動状態に変わった際に、前記入力デバイスを有効化することを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記OS制御手段は、前記移動状態が前記第2の移動状態から前記第3の移動状態に変わった際に、前記第1のOSを停止させ、前記移動状態が前記第3の移動状態から前記第2の移動状態に変わった際に、前記第1のOSを稼働させることを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記OS制御手段は、前記第1のOSを停止させる場合に、その停止させる時点における状態と同じ状態で前記操作不能アプリケーションを再作動させるための動作状態情報を記憶手段に記録し、
前記第1のOSは、前記OS制御手段により再作動させられた場合に、前記記憶手段に記録された動作状態情報に基づいて、前記第1のOSが停止する際の状態で前記操作不能アプリケーションを再作動させることを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記検知手段は、前記移動体の速度を示す速度情報、前記移動体の位置を示す位置情報又は前記移動体から撮影された画像を示す画像情報の少なくとも何れかに基づいて、前記移動状態を検知することを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
利用者により指定されたアプリケーションを前記操作不能アプリケーションとして設定する設定手段を更に備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータにより実行される情報処理方法であって、
移動体の移動状態を検知するステップと、
仮想化環境において稼働する第1のOS上で、前記移動体の移動中に前記移動体の利用者が操作を行うことができないアプリケーションとして設定された操作不能アプリケーションを動作させ、前記仮想化環境において稼働する第2のOS上で、前記利用者が操作を行うことができるアプリケーションとして設定されたアプリケーションを動作させるステップと、
前記検知された移動状態が停止中である場合に前記第1のOS及び前記第2のOSを稼働させ、前記検知された移動状態が移動中である場合に前記第1のOSを停止させるステップと、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータを、
移動体の移動状態を検知する検知手段、
仮想化環境において稼働する第1のOS上で、前記移動体の移動中に前記移動体の利用者が操作を行うことができないアプリケーションとして設定された操作不能アプリケーションを動作させ、前記仮想化環境において稼働する第2のOS上で、前記利用者が操作を行うことができるアプリケーションとして設定されたアプリケーションを動作させるアプリケーション制御手段、
前記検知された移動状態が停止中である場合に前記第1のOS及び前記第2のOSを稼働させ、前記検知された移動状態が移動中である場合に前記第1のOSを停止させるOS制御手段、
として機能させる情報処理プログラムが記録された記録媒体。
【請求項9】
コンピュータを、
移動体の移動状態を検知する検知手段、
仮想化環境において稼働する第1のOS上で、前記移動体の移動中に前記移動体の利用者が操作を行うことができないアプリケーションとして設定された操作不能アプリケーションを動作させ、前記仮想化環境において稼働する第2のOS上で、前記利用者が操作を行うことができるアプリケーションとして設定されたアプリケーションを動作させるアプリケーション制御手段、
前記検知された移動状態が停止中である場合に前記第1のOS及び前記第2のOSを稼働させ、前記検知された移動状態が移動中である場合に前記第1のOSを停止させるOS制御手段、
として機能させる情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、移動体の移動状態に応じて操作不能なアプリケーションと操作可能なアプリケーションとを区別して制御する情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の移動体では、GPS(Global Positioning System)により得られた位置情報とハードディスク装置等の記憶装置が記憶する地図情報とに基づいて、現在地から目的地までの経路案内を画像や音声により行うナビゲーション装置が利用されている。
【0003】
ナビゲーション装置の中には、移動体の移動中における安全性を確保するため、運転者が運転操作中に目的地の変更や検索条件の入力などを行う操作を禁止して、移動体が停止している状態のときにだけ入力操作が可能となるように設定されているものがある。
【0004】
また、特許文献1に記載の技術は、運転者の総脇見時間が予め設定された規定時間以下のとき入力操作を許可し、総脇見時間が予め設定された規定時間を超えるときに入力操作を規制している。これにより、例えば、運転者が移動体の運転中であって入力操作を行うために規定時間以上画面を注視しない限り、運転者による入力操作が許可されるので、安全運転と運転中の利便性を確保することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−69756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、近年、移動体で利用される情報処理装置は、上述したようなナビゲーション装置としての機能だけではなく、スピードメーターやタコメーターなどの計器を表示する計器表示機能、テレビとしての機能、音声コンテンツや動画コンテンツを再生するオーディオとしての機能、空調を制御する機能、電子メールを送受信する機能、電話機としての機能、ゲーム機としての機能など様々な機能を、各機能に対応するアプリケーションプログラム(本願では単に「アプリケーション」と表記する。)を実行することで実現している。このように、移動体で利用される情報処理装置の多機能化に伴い、各アプリケーションに対して運転者(情報処理装置の操作者)が神経を集中させてしまい、移動体の安全運行に支障を来すおそれがある。
【0007】
本願の課題の一例は、こうした複数のアプリケーションを実行する情報処理装置であって、移動体の移動状態に応じて操作不能なアプリケーションと操作可能なアプリケーションとを区別して制御することにより、移動体の安全性を向上させることのできる情報処理装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、移動体の移動状態を検知する検知手段と、仮想化環境において稼働する第1のOS上で、前記移動体の移動中に前記移動体の利用者が操作を行うことができないアプリケーションとして設定された操作不能アプリケーションを動作させ、前記仮想化環境において稼働する第2のOS上で、前記利用者が操作を行うことができるアプリケーションとして設定されたアプリケーションを動作させるアプリケーション制御手段と、前記検知された移動状態が停止中である場合に前記第1のOS及び前記第2のOSを稼働させ、前記検知された移動状態が移動中である場合に前記第1のOSを停止させるOS制御手段と、を備えることを特徴とする情報処理装置である。
【0009】
請求項7に記載の発明は、コンピュータにより実行される情報処理方法であって、移動体の移動状態を検知するステップと、仮想化環境において稼働する第1のOS上で、前記移動体の移動中に前記移動体の利用者が操作を行うことができないアプリケーションとして設定された操作不能アプリケーションを動作させ、前記仮想化環境において稼働する第2のOS上で、前記利用者が操作を行うことができるアプリケーションとして設定されたアプリケーションを動作させるステップと、前記検知された移動状態が停止中である場合に前記第1のOS及び前記第2のOSを稼働させ、前記検知された移動状態が移動中である場合に前記第1のOSを停止させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項8に記載の発明は、コンピュータを、移動体の移動状態を検知する検知手段、仮想化環境において稼働する第1のOS上で、前記移動体の移動中に前記移動体の利用者が操作を行うことができないアプリケーションとして設定された操作不能アプリケーションを動作させ、前記仮想化環境において稼働する第2のOS上で、前記利用者が操作を行うことができるアプリケーションとして設定されたアプリケーションを動作させるアプリケーション制御手段、前記検知された移動状態が停止中である場合に前記第1のOS及び前記第2のOSを稼働させ、前記検知された移動状態が移動中である場合に前記第1のOSを停止させるOS制御手段、として機能させる情報処理プログラムが記録された記録媒体である。
【0011】
請求項9に記載の発明は、コンピュータを、移動体の移動状態を検知する検知手段、仮想化環境において稼働する第1のOS上で、前記移動体の移動中に前記移動体の利用者が操作を行うことができないアプリケーションとして設定された操作不能アプリケーションを動作させ、前記仮想化環境において稼働する第2のOS上で、前記利用者が操作を行うことができるアプリケーションとして設定されたアプリケーションを動作させるアプリケーション制御手段、前記検知された移動状態が停止中である場合に前記第1のOS及び前記第2のOSを稼働させ、前記検知された移動状態が移動中である場合に前記第1のOSを停止させるOS制御手段、として機能させる情報処理プログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】情報処理装置1のブロック図である。
図2】仮想化環境において稼働するゲストOS、アプリケーションの概念図である。
図3】情報処理装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1図3を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、自動車(「移動体」の一例。)に搭載される情報処理装置1に対して本発明を適用した場合の実施形態である。本実施形態における情報処理装置1は、計器表示機能、ナビゲーション機能、電子メールを送受信する機能、ゲーム機としての機能の各機能をそれぞれ対応するアプリケーションを実行することで提供する。
【0014】
まず、図1を用いて、情報処理装置1の構成について説明する。情報処理装置1は、制御部11、記憶部12、通信部13、第1の映像出力デバイス14、第2の映像出力デバイス15、第1の操作入力デバイス16、第2の操作入力デバイス17、映像入力デバイス18及び位置検出部19を含んで構成されている。制御部11と、記憶部12、通信部13、第1の映像出力デバイス14、第2の映像出力デバイス15、第1の操作入力デバイス16、第2の操作入力デバイス17、映像入力デバイス18及び位置検出部19はシステムバスBを介して接続されている。
【0015】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)11a、ROM(Read Only Memory)11b、RAM(Random Access Memory)11c等により構成されている。そして、コンピュータとしての制御部11は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、各種処理等を行う。なお、制御部11は、検知手段、アプリケーション制御手段、OS制御手段及び設定手段として機能する。
【0016】
記憶部12(「記憶手段」の一例)は、例えば、ハードディスクドライブや不揮発性の半導体メモリ等により構成されており、各種プログラム及びデータ等を記憶するようになっている。具体的には、情報処理装置1にて、仮想計算機(VM:virtual machine)が動作する仮想化環境を形成するためのプログラム、すなわちVMM(Virtual Machine Monitor)が記憶されている。
【0017】
また、記憶部12には、図2に示すように、VMM31により提供される仮想化環境において稼働する第1のゲストOS41(「第1のOS」の一例。)及び第2のゲストOS42(「第2のOS」の一例。)が記憶されている。更に、記憶部12には、第1のゲストOS41上で動作する電子メールアプリケーション(以下、「電子メールアプリ」と表記する。)51(「操作不能アプリケーション」の一例。)、第1のゲストOS41上で動作するゲームアプリケーション(以下、「ゲームアプリ」と表記する。)52(「操作不能アプリケーション」の一例。)、第2のゲストOS42上で動作する計器表示アプリケーション(以下、「計器表示アプリ」と表記する。)53(「利用者が操作を行うことができるアプリケーションとして設定されたアプリケーション」の一例)、第2のゲストOS42上で動作するナビゲーションアプリケーション(以下、「ナビゲーションアプリ」と表記する。)54(「利用者が操作を行うことができるアプリケーションとして設定されたアプリケーション」の一例)がそれぞれ記憶されている。
【0018】
更に、記憶部12には、第1のゲストOS41が占有するデバイスドライバ(以下、単位「第1のゲストOS占有ドライバ」と表記する。)21、第2のゲストOS42が占有するデバイスドライバ(以下、単位「第2のゲストOS占有ドライバ」と表記する。)22、第1のゲストOS41及び第2のゲストOS42が共有するデバイスドライバ(以下、単位「共有ドライバ」と表記する。)23がそれぞれ記憶されている。
【0019】
VMM31は、CPU11a、RAM11c、記憶部12、通信部13、第1の映像出力デバイス14、第2の映像出力デバイス15、第1の操作入力デバイス16、第2の操作入力デバイス17、映像入力デバイス18及び位置検出部19を構成する各種デバイスなどのハードウェアを認識・制御し、それらを抽象化することで、一つ以上のゲストOS(仮想OS)に対してそれらへのアクセスを可能とさせるプログラムである。ゲストOSが複数存在する場合は時分割でハードウェアへのアクセス権限を適宜振り分ける。なお、一つのゲストOSのみからアクセスさせるデバイスについては、他のゲストOSから見えないように隠蔽することもできる。VMM31には、高速なハードウェアで複数のゲストOSを効率よく動作させることができる点、一のゲストOSのシステムダウンが他のゲストOSに影響を与えない点などの利点がある。
【0020】
第1のゲストOS41は、自動車の移動中に利用者が操作を行うことができないアプリケーションとして設定された操作不能アプリケーションを作動させるためのOSである。本実施形態では、第1のゲストOS41上で動作するアプリケーションとして電子メールアプリ51及びゲームアプリ52が設定されているものとして説明する。電子メールアプリ51は、電子メールの作成や送受信、受信したメールの保存・管理を行う。
【0021】
第2のゲストOS42は、自動車の移動中に利用者が操作を行うことができるアプリケーションとして設定されたアプリケーションを作動させるためのOSである。また、第2のゲストOS42上では、自動車の走行中にも動作が停止しないアプリケーションが動作する。本実施形態では、第2のゲストOS42上で動作するアプリケーションとして計器表示アプリ53及びナビゲーションアプリ54が設定されているものとして説明する。計器表示アプリ53は、スピードメーター、タコメーター、燃料計、水温計、距離計などの計器を第2の映像出力デバイス15(具体的には、計器類を表示するための表示デバイス。)に表示させる。ナビゲーションアプリ54は、出発地から目的地までの経路案内を行い、案内中には情報処理装置1の現在位置(すなわち、情報処理装置1が搭載された自動車の現在位置)が含まれる地図画像を第2の映像出力デバイス15(具体的には、ナビゲーション用画面を表示するための表示デバイス。上述した計器類を表示するための表示デバイスと同一の表示デバイスを用いることとしてもよいし、別個の表示デバイスを用いることとしてもよい。)に表示させる。このとき、地図画像中の現在位置が変移するに従って、地図が表示するエリアも変移するようになっている。
【0022】
第1のゲストOS占有ドライバ21は、第1の映像出力デバイス14、第1の操作入力デバイス16を制御し、第1のゲストOS41上で動作するアプリケーションに対してインターフェースを提供する。第2のゲストOS占有ドライバ22は、第2の映像出力デバイス15、第2の操作入力デバイス17、位置検出部19を制御し、第2のゲストOS42上で動作するアプリケーションに対してインターフェースを提供する。共有ドライバ23は記憶部12、通信部13、映像入力デバイス18を制御し、仮想化環境において動作する各アプリケーションに対してインターフェースを提供する。
【0023】
記憶部12には、上述したプログラムの他にも、様々な機能を実現するためのアプリケーション及びそれらのアプリケーションを動作させるためのゲストOSが記憶されている。なお、情報処理装置1は、例えば、他のサーバ装置等からネットワークを介して各種プログラムを取り込んで記憶部12に記録することとしてもよいし、DVD−ROM等の記録媒体に記録された各種プログラムを光学ドライブで読み込んで記憶部12に記録することとしてもよい。
【0024】
通信部13は、情報処理装置1がネットワークを介して他のサーバ装置、端末装置などとの通信に係る処理を行う。ネットワークは、例えば、インターネット、専用通信回線(例えば、CATV(Community Antenna Television)回線)、移動体通信網(基地局等を含む)、及びゲートウェイ等により構築される。
【0025】
第1の映像出力デバイス14は、第1のゲストOS41上で動作するアプリケーションにより表示される画像を表示する。第2の映像出力デバイス15は、第2のゲストOS42上で動作するアプリケーションにより表示される画像を表示する。
【0026】
第1の操作入力デバイス16は、第1のゲストOS41上で動作するアプリケーションに対する利用者の操作入力を受け付け、その指示内容を指示信号として制御部11に出力する。第2の操作入力デバイス17は、第2のゲストOS42上で動作するアプリケーションに対する利用者の操作入力を受け付け、その指示内容を指示信号として制御部11に出力する。
【0027】
映像入力デバイス18は、外部から映像の入力を受け付け、制御部11に出力する。
【0028】
位置検出部19は、GPS(Global Positioning System)受信部、速度センサ、方位角センサ、ジャイロスコープ等により構成されており、情報処理装置1の現在位置を検出し、現在位置を示す信号を制御部11に出力する。
【0029】
次に、図3を用いて情報処理装置1の動作概要を説明する。図3のフローチャートは、自動車の動力源(例えば、エンジン)が起動し(自動車は停止している状態。)、情報処理装置1に電源供給が開始された時点から始まる。また、図3のフローチャートに示す各処理は、VMM31を実行することにより制御部11が行う。
【0030】
図3に示すように、まず、制御部11は、第1のゲストOS41及び第2のゲストOS42を起動させる(ステップS101)。次いで、制御部11は、全デバイス(記憶部12、通信部13、第1の映像出力デバイス14、第2の映像出力デバイス15、第1の操作入力デバイス16、第2の操作入力デバイス17、映像入力デバイス18及び位置検出部19)を有効化する(ステップS102)。
【0031】
次いで、制御部11は、自動車の移動状態を検知する(ステップS103)。本実施形態では、自動車の移動状態を3つの移動状態に区分する。具体的には、(i)自動車が停止している移動状態(「自動車の速度=0km/h」。「第1の移動状態」の一例。)、(ii)自動車が第1の速度域(例えば、「0km/h<自動車の速度<5km/h」)で移動している移動状態(「第2の移動状態」の一例。)、(iii)自動車が第1の速度域より高速の第2の速度域(例えば、「自動車の速度≧5km/h」」)で移動している移動状態(「第3の移動状態」の一例。)に区分する。すなわち、制御部11は、移動状態が何れの移動状態であるかを自動車の速度に基づいて検知する。なお、制御部11は、自動車の速度を、自動車に搭載されたECU(Engine Control Unit)が算出した車速データ(自動車の車速を割り出すために用いられるパルス信号から算出されるデータ)に基づいて取得する。
【0032】
次いで、制御部11は、自動車の移動状態が「停止」から「第1の速度域」に遷移したか否かを判定する(ステップS104)。このとき、制御部11は、自動車の移動状態が「停止」から「第1の速度域」に遷移したと判定した場合には(ステップS104:YES)、第1の操作入力デバイス16を無効化し(ステップS105)、ステップS103の処理に移行する。第1の操作入力デバイス16を無効化するとは、例えば、第1の操作入力デバイス16から制御部11に指示信号が出力されているが、制御部11がこれを無視するようにしたり、第1の操作入力デバイス16から制御部11に指示信号が出力されないようにしたり、又は、第1の操作入力デバイス16への電源供給を絶ったりすることである。一方、制御部11は、自動車の移動状態が「停止」から「第1の速度域」に遷移していないと判定した場合には(ステップS104:NO)、ステップS106の処理に移行する。
【0033】
次いで、制御部11は、自動車の移動状態が「第1の速度域」から「第2の速度域」に遷移したか否かを判定する(ステップS106)。このとき、制御部11は、自動車の移動状態が「第1の速度域」から「第2の速度域」に遷移したと判定した場合には(ステップS106:YES)、第1のゲストOS41を停止させ(ステップS107)、第1のゲストOS41が占有する第1の操作入力デバイス16以外の全デバイス(本実施形態では第1の映像出力デバイス14)を無効化し(ステップS108)、ステップS103の処理に移行する。第1のゲストOS41を停止させるとは、例えば、第1のゲストOS41をスリープ状態にしたり、休止状態にしたり、又はシャットダウンしたりすることである。また、第1のゲストOS41を停止させることにより、第1のゲストOS41上で動作するアプリケーションも停止する。一方、制御部11は、自動車の移動状態が「第1の速度域」から「第2の速度域」に遷移していないと判定した場合には(ステップS106:NO)、ステップS109の処理に移行する。
【0034】
次いで、制御部11は、自動車の移動状態が「第2の速度域」から「第1の速度域」に遷移したか否かを判定する(ステップS109)。このとき、制御部11は、自動車の移動状態が「第2の速度域」から「第1の速度域」に遷移したと判定した場合には(ステップS109:YES)、第1のゲストOS41が占有する第1の操作入力デバイス16以外の全デバイス(第1の映像出力デバイス14)を有効化し(ステップS110)、第1のゲストOS41を復帰させ(ステップS111)、ステップS103の処理に移行する。第1のゲストOS41を復帰させることにより、第1のゲストOS41上で動作するアプリケーションも復帰する。一方、制御部11は、自動車の移動状態が「第2の速度域」から「第1の速度域」に遷移していないと判定した場合には(ステップS109:NO)、ステップS112の処理に移行する。
【0035】
次いで、制御部11は、自動車の移動状態が「第1の速度域」から「停止」に遷移したか否かを判定する(ステップS112)。このとき、制御部11は、自動車の移動状態が「第1の速度域」から「停止」に遷移したと判定した場合には(ステップS112:YES)、第1の操作入力デバイス16を有効化し(ステップS113)、ステップS103の処理に移行する。一方、制御部11は、自動車の移動状態が「第1の速度域」から「停止」に遷移していないと判定した場合には(ステップS112:NO)、ステップS103の処理に移行する。
【0036】
以上説明したように、本実施形態における情報処理装置1では、制御部11が、自動車(「移動体」の一例。)の移動状態を検知し、仮想化環境において稼働する第1のゲストOS41(「第1のOS」の一例。)上で、自動車の移動中に自動車の利用者が操作を行うことができないアプリケーションとして設定された電子メールアプリ51(「操作不能アプリケーション」の一例。)及びゲームアプリ52(「操作不能アプリケーション」の一例。)を動作させ、仮想化環境において稼働する第2のゲストOS42(「第2のOS」の一例。)上で、利用者が操作を行うことができるアプリケーションとして設定された計器表示アプリ53及びナビゲーションアプリ54を動作させ、検知した移動状態が停止中である場合に第1のゲストOS41及び第2のゲストOS42を稼働させ、検知した移動状態が移動中である場合に第1のゲストOS41を停止させる。
【0037】
したがって、本実施形態における情報処理装置1によれば、移動状態が停止中である場合には第1のゲストOS41上で電子メールアプリ51及びゲームアプリ52が動作するとともに、第2のゲストOS42上で計器表示アプリ53及びナビゲーションアプリ54が動作し、一方、移動状態が停止中である場合には第1のゲストOS41が停止することから、電子メールアプリ51及びゲームアプリ52は動作することなく、計器表示アプリ53及びナビゲーションアプリ54は第2のゲストOS42上で動作する。すなわち、自動車の移動状態に応じて操作不能なアプリケーションと操作可能なアプリケーションとを区別して制御することができ、延いては自動車走行中の安全性を図ることができる。また、自動車の走行中には第1のゲストOS41上で動作する、操作不能なアプリケーションの動作が停止することから、消費電力を低減することができる。
【0038】
また、制御部11は、移動状態が、停止している移動状態から第1の速度域で移動している移動状態に変わった際に、第1の操作入力デバイス16(「第1のOSで用いられる、利用者の入力を受け付ける入力デバイス」の一例。)を無効化し、第1の速度域で移動している移動状態から第2の速度域で移動している移動状態に変わった際に、第1のゲストOS41が占有する全デバイス(「第1のOSで用いられる入力デバイス以外の非入力デバイス」の一例。)を無効化し、第2の速度域で移動している移動状態から第1の速度域で移動している移動状態に変わった際に、第1のゲストOS41が占有する全デバイスを有効化し、第1の速度域で移動している移動状態から停止している移動状態に変わった際に、第1の操作入力デバイス16を有効化する。これにより、自動車が移動している際には、操作不能なアプリケーションとして設定された電子メールアプリ51及びゲームアプリ52について利用者の操作が受け付けられず利用者は運転に集中することができることから、自動車走行中の安全性が向上する。また、第1のゲストOS41に関連するデバイス(第1の映像出力デバイス14及び第1の操作入力デバイス16)を無効化する際、例えば、第1の操作入力デバイス16から制御部11に指示信号が出力されないようにしたり、第1の操作入力デバイス16又は第1の映像出力デバイス14への電源供給を絶ったりすることにより、消費電力を低減することができる。
【0039】
さらに、制御部11は、移動状態が第1の速度域で移動している移動状態から第2の速度域で移動している移動状態に変わった際に、第1のゲストOS41を停止させ、移動状態が第2の速度域で移動している移動状態から第1の速度域で移動している移動状態に変わった際に、第1のゲストOS41を稼働させる。このように、自動車が移動する速度に応じて、第1のゲストOS41を停止させるので、消費電力を低減させることができる。
【0040】
なお、図3のステップS111の処理で、制御部11が第1のゲストOS41を復帰(再作動)させる際には、第1のゲストOS41を停止させる際(ステップS107)の状態で復帰(再作動)させることとしてもよい。そのために、制御部11は、第1のゲストOS41を停止させる際に、その停止させる時点における状態と同じ状態で第1のゲストOS41或いは第1のゲストOS41上で動作する操作不能アプリケーションを復帰(再作動)させるための情報(「動作状態情報」の一例。)を記憶部12に記録することする。また、操作不能アプリケーションは、第1のゲストOS41が復帰(再作動)した際に、記憶部12に記録された当該情報に基づいて、第1のゲストOS41が停止する際の状態で復帰(再作動)する。このとき、操作不能アプリケーションの復帰(再作動)は、制御部11がVMM31又は第1のゲストOS41を実行することにより実現することとする。これにより、第1のゲストOS41上で動作するゲームアプリ52などの操作不能アプリケーションが、第1のゲストOS41が停止する際と同じ状態で復帰(再作動)するので、利用者の利便性が向上する。
【0041】
また、本実施形態では、自動車の移動状態(すなわち、自動車の速度)を検知するにあたり、自動車から入力される車速データに基づいて検知することとしたが、これに代えて又はこれに加えて、自動車の位置を示すGPSデータ(「位置情報」の一例。)又は自動車に取り付けられたカメラにより撮影された画像を示す画像情報に基づいて、移動状態を検知することとしてもよい。画像情報に基づいて自動車の移動状態(すなわち、自動車の速度)を検知する場合には、例えば、連続して撮影された画像(すなわち、動画像)に映し出される物体や景色が単位時間当たりに移動する距離に基づいて検知することができる。
【0042】
さらに、操作不能アプリケーションを利用者が指定できるようにしてもよい。具体的には、インストールされたアプリケーションを操作不能アプリケーションとするか否かを操作者が設定するための設定画面を表示デバイスに表示させ、利用者が設定画面を見ながら操作入力デバイスを用いて設定を行うことができる構成とする。これにより、利用者は、自動車の走行中に操作不能とするアプリケーションを自ら選択することができ、利用者の利便性が向上する。なお、操作不能アプリケーションを利用者が指定できない構成とする場合については、本実施形態にて説明した態様の他に、第1のゲストOS41上では、表示デバイスに表示される画像を利用者が注視しなければ操作できないアプリケーションを動作させ、一方、第2のゲストOS42上では、表示デバイスに表示される画像を利用者が注視せずに操作できるアプリケーションを動作させる態様としてもよい。
【0043】
さらにまた、第1のゲストOS41上で動作させるアプリケーションとして、電子メールアプリ51、ゲームアプリ52の他に、SNS(social networking service)を利用するためのアプリケーション、webを閲覧するためのweb閲覧アプリケーション及びテレビを鑑賞するためのアプリケーションなど挙げられる。一方、第2のゲストOS42上で動作させるアプリケーションとして、計器表示アプリ53、ナビゲーションアプリ54の他に、エアコンを制御するための空調制御アプリケーション及びオーディオを制御するためのオーディオアプリケーションなど挙げられる。なお、他の電話機と通話するための電話アプリケーションについては、ハンズフリーでの利用が可能な場合には、第2のゲストOS42上で動作させ、ハンズフリーでの利用が不可能な場合には、第1のゲストOS41上で動作させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 情報処理装置
11 制御部
11a CPU
11b ROM
11c RAM
12 記憶部
13 通信部
14 第1の映像出力デバイス
15 第2の映像出力デバイス
16 第1の操作入力デバイス
17 第2の操作入力デバイス
18 映像入力デバイス
19 位置検出部
B システムバス
21 第1のゲストOS占有ドライバ
22 第2のゲストOS占有ドライバ
23 共有ドライバ
31 VMM
41 第1のゲストOS
42 第2のゲストOS
51 電子メールアプリ
52 ゲームアプリ
53 計器表示アプリ
54 ナビゲーションアプリ
図1
図2
図3