特許第5775224号(P5775224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5775224赤外線加熱ユニット,赤外線加熱装置及び乾燥装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775224
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】赤外線加熱ユニット,赤外線加熱装置及び乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/10 20060101AFI20150820BHJP
   F26B 23/04 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   H05B3/10 B
   F26B23/04 B
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-536809(P2014-536809)
(86)(22)【出願日】2014年4月25日
(86)【国際出願番号】JP2014061720
(87)【国際公開番号】WO2014192478
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2014年7月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-114177(P2013-114177)
(32)【優先日】2013年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雄樹
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2947459(JP,B2)
【文献】 特開2005−315496(JP,A)
【文献】 特開2005−037042(JP,A)
【文献】 特表2012−509561(JP,A)
【文献】 特開2005−158689(JP,A)
【文献】 特開2006−294337(JP,A)
【文献】 特開2012−132662(JP,A)
【文献】 特開平04−103986(JP,A)
【文献】 特開2001−036276(JP,A)
【文献】 特許第2894258(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/10
F26B 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されると赤外線を含む電磁波を放射し、所定の回転軸を中心に回転可能であり、該回転軸と垂直な所定方向から見た際の前記電磁波の見かけの放射面積が該回転により変化する形状の発熱体、
を備え
前記発熱体は、前記回転軸に垂直な断面で見たときに、前記電磁波の放射面が楕円形状又は長手方向と短手方向とを有する多角形状である、
赤外線加熱ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の赤外線加熱ユニットであって、
前記電磁波のうち、前記発熱体から前記回転軸と垂直且つ前記所定方向以外の方向に放射される赤外線の少なくとも一部を吸収可能な赤外線吸収体、
を備えた赤外線加熱ユニット。
【請求項3】
前記赤外線吸収体は、前記電磁波のうち、前記発熱体から前記回転軸と垂直且つ前記所定方向と垂直な方向に放射される赤外線の少なくとも一部を吸収可能である、
請求項に記載の赤外線加熱ユニット。
【請求項4】
前記赤外線吸収体は、前記発熱体から前記回転軸と垂直且つ前記所定方向と垂直な方向に放射される赤外線の少なくとも一部を吸収する赤外線吸収面を有しており、前記所定方向を下方向とし前記所定方向とは反対方向を上方向としたときに、該赤外線吸収面の上下方向の存在範囲は前記発熱体の上下方向の存在範囲を含んでいる、
請求項に記載の赤外線加熱ユニット。
【請求項5】
前記赤外線吸収体は、前記電磁波のうち、前記発熱体から前記回転軸と垂直且つ前記所定方向と垂直な一方の方向に放射される赤外線の少なくとも一部と他方の方向に放射される赤外線の少なくとも一部とを吸収可能である、
請求項3又は4に記載の赤外線加熱ユニット。
【請求項6】
前記赤外線吸収体は、流体が流通可能な流体流路を内部に有している、
請求項2〜5のいずれか1項に記載の赤外線加熱ユニット。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の赤外線加熱ユニットであって、
前記電磁波のうち、前記発熱体からみて前記所定方向とは反対方向に放射される赤外線の少なくとも一部を反射可能な赤外線反射体、
を備え、
前記発熱体は、前記発熱体を前記所定方向から見た際の前記電磁波の見かけの放射面積と、前記発熱体を該所定方向とは反対方向から見た際の前記電磁波の見かけの放射面積との和が、前記回転により変化する形状である、
赤外線加熱ユニット。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の赤外線加熱ユニットであって、
互いの回転軸が平行となり該回転軸と垂直且つ前記所定方向と垂直な方向に並ぶように配置された複数の前記発熱体を有している、
赤外線加熱ユニット。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の赤外線加熱ユニットであって、
3.5μmを超える波長の赤外線を吸収し前記発熱体を覆う管状部材、
を備えた赤外線加熱ユニット。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の赤外線加熱ユニットと、
前記発熱体を前記回転軸を中心に回転させる回転手段と、
前記発熱体に電力を供給する電力供給手段と、
前記発熱体の放射波長に関する値と、前記発熱体の回転位置に関する値と、前記発熱体からみて前記所定方向に配置された被加熱物に到達する前記発熱体からの放射エネルギーに関する値と、の対応関係を記憶する対応関係記憶手段と、
前記放射波長に関する情報及び前記放射エネルギーに関する情報を入力可能な入力手段と、
前記入力された放射波長に関する情報と、前記入力された放射エネルギーに関する情報と、前記対応関係と、に基づいて、該入力された放射波長及び放射エネルギーに対応する前記発熱体の回転位置に関する値を取得する回転位置取得手段と、
前記回転手段及び前記電力供給手段を制御して、前記取得された値で表される回転位置に前記発熱体が位置するよう前記回転手段により前記発熱体を回転させ、前記入力された放射波長の電磁波を前記発熱体が放射するよう前記電力供給手段により前記発熱体に電力を供給させる制御手段と、
を備えた赤外線加熱装置。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか1項に記載の赤外線加熱ユニットと、請求項10に記載の赤外線加熱装置と、のいずれかを備え、前記発熱体からみて前記所定方向に位置する被加熱物を乾燥させる乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線加熱ユニット,赤外線加熱装置及び乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線を放射して塗膜などの被加熱対象を加熱する赤外線加熱ユニットが知られている。例えば、特許文献1には、加熱すると赤外線を放出するカーボン又は炭化珪素からなるロッド状の発熱体と、この発熱体が気密的に収容された透光性アルミナセラミックス製筒形状の保護管とを備えた赤外線ヒーターが知られている。この保護管は、0.4〜6μmの波長の電磁波の全透過率が80%以上である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−294337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような赤外線加熱ユニットにおいて、被加熱物の種類の違いや、被加熱物の加熱工程中の時間経過などに伴って、被加熱物に放射する電磁波の放射波長と、被加熱物に投入する放射エネルギーと、を別々に調整したいという要望があった。例えば、被加熱物への放射エネルギーを一定にしつつ放射波長を調整したい場合や、被加熱物への放射波長を一定にしつつ放射エネルギーを調整したい場合があった。しかし、例えば発熱体からの電磁波の放射波長を調整するために発熱体の温度を変化させると、発熱体からの放射エネルギーも変化してしまい、両者を別々に調整することは困難であった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、被加熱物への放射波長と放射エネルギーとを別々に調整可能にすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の赤外線加熱ユニットは、
加熱されると赤外線を含む電磁波を放射し、所定の回転軸を中心に回転可能であり、該回転軸と垂直な所定方向から見た際の前記電磁波の見かけの放射面積が該回転により変化する形状の発熱体、
を備えたものである。
【0007】
この本発明の赤外線加熱ユニットでは、発熱体が回転することで、回転軸と垂直な所定方向から発熱体を見た際の前記電磁波の見かけの放射面積が変化する。すなわち、例えば発熱体の温度変化による発熱体からの放射波長の変化とは独立して、発熱体の見かけの放射面積を変化させることができる。そして、見かけの放射面積が変化すると、発熱体から所定方向に放射される電磁波の放射エネルギーが変化する。そのため、例えば、所定方向に配置された被加熱物への放射エネルギーを一定にしつつ放射波長(例えば電磁波のピーク波長や電磁波の波長領域など)を調整したり、被加熱物への放射波長を一定にしつつ放射エネルギーを調整したりするなど、被加熱物への放射波長と放射エネルギーとを別々に調整することができる。本発明の赤外線加熱ユニットは、赤外線の少なくとも一部を透過し前記発熱体を囲む管状部材、を有していてもよい。ここで、「該回転軸と垂直な所定方向」は、「第1方向」と称してもよい。
【0008】
本発明の赤外線加熱ユニットにおいて、前記発熱体は、前記回転軸に垂直な断面で見たときに、前記電磁波の放射面が楕円形状又は長手方向と短手方向とを有する多角形状としてもよい。こうすれば、比較的単純な形状で、発熱体を「回転軸と垂直な所定方向から見た際の電磁波の見かけの放射面積が回転により変化する形状」とすることができる。
【0009】
本発明の赤外線加熱ユニットは、前記電磁波のうち、前記発熱体から前記回転軸と垂直且つ前記所定方向以外の方向に放射される赤外線の少なくとも一部を吸収可能な赤外線吸収体を備えていてもよい。こうすれば、発熱体から所定方向以外の方向へ向かう赤外線が、例えば他の物体に反射して発熱体から所定方向に配置された被加熱物に到達してしまうなど、被加熱物に間接的に放射エネルギーを与えることを赤外線吸収体により抑制できる。なお、発熱体の見かけの放射面積を減少させて被加熱物への放射エネルギーを減少させたい場合に、被加熱物に間接的に与えられる放射エネルギーが存在すると、放射エネルギーの減少が不十分となる場合がある。赤外線吸収体を備えることで、このようなことを抑制し、発熱体の回転による放射エネルギーの調整をより十分なものとすることができる。ここで、「前記発熱体から前記回転軸と垂直且つ前記所定方向以外の方向に放射される赤外線の少なくとも一部を吸収可能」とは、発熱体から回転軸と垂直且つ所定方向以外の全方向に放射される赤外線を吸収可能な場合に限らず、発熱体から回転軸と垂直且つ所定方向以外の方向のうち一部の方向に放射される赤外線を吸収可能な場合も含む。また、「前記発熱体から前記回転軸と垂直且つ前記所定方向以外の方向に放射される赤外線の少なくとも一部を吸収可能」とは、赤外線の全てを吸収可能である場合に限らず、赤外線の波長領域うち一部の領域を吸収可能である場合や、ある波長の赤外線の一部を吸収し一部を透過する場合を含む。
【0010】
赤外線吸収体を備える態様の本発明の赤外線加熱ユニットにおいて、前記赤外線吸収体は、前記電磁波のうち、前記発熱体から前記回転軸と垂直且つ前記所定方向と垂直な方向に放射される赤外線の少なくとも一部を吸収可能としてもよい。発熱体の回転により所定方向からの見かけの放射面積を減少させる場合、回転軸と垂直且つ前記所定方向と垂直な方向からの見かけの放射面積は増大しやすい。そのため、赤外線吸収体がこの方向に放射される赤外線を吸収可能にすることで、所定方向に配置された被加熱物に間接的に放射エネルギーを与えることを抑制する効果が高まる。ここで、「前記回転軸と垂直且つ前記所定方向と垂直な方向」は、「第2方向」と称してもよい。
【0011】
この場合において、前記赤外線吸収体は、前記発熱体から前記回転軸と垂直且つ前記所定方向と垂直な方向に放射される赤外線の少なくとも一部を吸収する赤外線吸収面を有しており、前記所定方向を下方向とし前記所定方向とは反対方向を上方向としたときに、該赤外線吸収面の上下方向の存在範囲は前記発熱体の上下方向の存在範囲を含んでいてもよい。こうすれば、所定方向に配置された被加熱物に間接的に放射エネルギーを与えることを抑制する効果がさらに高まる。ここで、「該赤外線吸収面の上下方向の存在範囲は前記発熱体の上下方向の存在範囲を含んでい」るとは、赤外線吸収面の上下方向の存在範囲と発熱体の上下方向の存在範囲とが等しい場合も含む。なお、ここでいう「上方向」や「下方向」は、方向を区別するための名称である。例えば「上方向」は鉛直上方向に限られず、「下方向」は鉛直下方向に限られない。
【0012】
赤外線吸収体を備える態様の本発明の赤外線加熱ユニットにおいて、前記赤外線吸収体は、前記電磁波のうち、前記発熱体から前記回転軸と垂直且つ前記所定方向と垂直な一方の方向に放射される赤外線の少なくとも一部と他方の方向に放射される赤外線の少なくとも一部とを吸収可能としてもよい。こうすれば、所定方向に配置された被加熱物に間接的に放射エネルギーを与えることを抑制する効果がさらに高まる。この場合において、本発明の赤外線加熱ユニットは、発熱体から回転軸と垂直且つ所定方向と垂直な一方の方向に配置された赤外線吸収体と、発熱体から回転軸と垂直且つ所定方向と垂直な他方の方向に配置された赤外線吸収体と、を別々の部材として有していてもよいし、一体の部材として有していてもよい。
【0013】
赤外線吸収体を備える態様の本発明の赤外線加熱ユニットにおいて、前記赤外線吸収体は、流体が流通可能な流体流路を内部に有していてもよい。こうすれば、流体流路に流体を流通させることによって、赤外線吸収体を冷却することができる。これにより、例えば赤外線吸収体自身が赤外線の輻射源となるのを抑制できる。また、例えば、流体の熱を他の用途(例えば赤外線加熱ユニットを備えた乾燥装置で用いる熱風の予熱など)に利用して、発熱体から被加熱物への加熱に用いられないエネルギーを有効に活用することができる。この場合において、前記赤外線加熱ユニットは、前記赤外線吸収体よりも低温の流体を前記流体流路に供給する流体供給手段を備えていてもよい。
【0014】
本発明の赤外線加熱ユニットにおいて、前記電磁波のうち、前記発熱体からみて前記所定方向とは反対方向に放射される赤外線の少なくとも一部を反射可能な赤外線反射体、を備え、前記発熱体は、前記発熱体を前記所定方向から見た際の前記電磁波の見かけの放射面積と、前記発熱体を該所定方向とは反対方向から見た際の前記電磁波の見かけの放射面積との和が、前記回転により変化する形状としてもよい。こうすれば、赤外線反射体が赤外線を反射することで、発熱体からみて所定方向に配置された被加熱物には、発熱体から所定方向に放射される赤外線と所定方向とは反対方向に放射された赤外線とが共に到達可能になる。そのため、発熱体から放射エネルギーを効率よく被加熱物に到達させることができる。なお、発熱体は、所定方向から見た際の見かけの放射面積と、所定方向とは反対方向から見た際の見かけの放射面積との和が、回転により変化するため、発熱体から所定方向の被加熱物に直接到達する放射エネルギーと、赤外線反射体に反射されて到達する放射エネルギーとの和も回転により変化する。そのため、赤外線反射体が存在しても、発熱体の回転による放射エネルギーの調整を行うことができる。なお、前記発熱体は、前記回転軸を中心に回転すると、前記発熱体を前記所定方向から見た際の前記電磁波の見かけの放射面積と、前記発熱体を該所定方向とは反対方向から見た際の前記電磁波の見かけの放射面積とが、同じ傾向に変化する(回転に伴う放射面積の増減の方向が同じである)形状としてもよい。また、前記発熱体は、前記電磁波の放射面の形状が前記回転軸を中心軸として2回対称な形状としてもよい。あるいは、前記発熱体は、前記電磁波の放射面の形状が前記回転軸を通る平面を対称面として面対称な形状としてもよい。
【0015】
本発明の赤外線加熱ユニットは、互いの回転軸が平行となり該回転軸と垂直且つ前記所定方向と垂直な方向に並ぶように配置された複数の前記発熱体を有していてもよい。この態様においても、複数の発熱体を所定方向から見た際の前記電磁波の見かけの放射面積の和を発熱体の回転により変化させることで、被加熱物への放射波長と放射エネルギーとを別々に調整することができる。しかも、複数の発熱体が回転軸と垂直且つ前記所定方向と垂直な方向に並べて配置されているため、隣り合う発熱体同士が自身からの赤外線で互いを加熱することができる。これにより、例えば発熱体を1つ備えた赤外線加熱ユニットを別々に2つ配置する場合と比べて、発熱体の加熱に要するエネルギーを少なくすることができる。
【0016】
本発明の赤外線加熱ユニットは、3.5μmを超える波長の赤外線を吸収し前記発熱体を覆う管状部材を備えていてもよい。こうすれば、発熱体が放射する電磁波の放射波長を調整しつつ、被加熱物に到達する電磁波のうち波長が3.5μm以下の赤外線の割合を増大させることができる。なお、赤外線加熱ユニットが赤外線吸収体と赤外線反射体とを備える場合、管状部材が発熱体だけでなく赤外線吸収体と赤外線反射体との少なくとも一方も覆っていてもよいし、赤外線吸収体と赤外線反射体とが管状部材の外側に配置されていてもよい(管状部材に覆われていなくてもよい)。なお、前記管状部材は、3.5μm以下の赤外線を透過するものとしてもよい。また、本発明の赤外線加熱ユニットは、同心円状に配置された複数の管状部材を備えていてもよい。例えば、前記管状部材として、前記発熱体を覆う内側管状部材と、該発熱体及び該内側管状部材を覆う外側管状部材と、を備えていてもよい。
【0017】
本発明の赤外線加熱装置は、
上述したいずれかの態様の本発明の赤外線加熱ユニットと、
前記発熱体を前記回転軸を中心に回転させる回転手段と、
前記発熱体に電力を供給する電力供給手段と、
前記発熱体の放射波長に関する値と、前記発熱体の回転位置に関する値と、前記発熱体からみて前記所定方向に配置された被加熱物に到達する前記発熱体からの放射エネルギーに関する値と、の対応関係を記憶する対応関係記憶手段と、
前記放射波長に関する情報及び前記放射エネルギーに関する情報を入力可能な入力手段と、
前記入力された放射波長に関する情報と、前記入力された放射エネルギーに関する情報と、前記対応関係と、に基づいて、該入力された放射波長及び放射エネルギーに対応する前記発熱体の回転位置に関する値を取得する回転位置取得手段と、
前記回転手段及び前記電力供給手段を制御して、前記取得された値で表される回転位置に前記発熱体が位置するよう前記回転手段により前記発熱体を回転させ、前記入力された放射波長の電磁波を前記発熱体が放射するよう前記電力供給手段により前記発熱体に電力を供給させる制御手段と、
を備えたものである。
【0018】
この本発明の赤外線加熱装置は、上述したいずれかの態様の本発明の赤外線加熱ユニットを備えているため、本発明の赤外線加熱ユニットの効果、例えば、被加熱物への放射波長と放射エネルギーとを別々に調整することができる効果が得られる。また、本発明の赤外線加熱装置は、発熱体の放射波長に関する値と、回転位置に関する値と、発熱体からみて所定方向に配置された被加熱物に到達する発熱体からの放射エネルギーに関する値と、の対応関係を記憶している。そして、まず、この対応関係と、入力された放射波長及び放射エネルギーに関する情報と、に基づいて発熱体の回転位置に関する値を取得する。続いて、取得された値で表される回転位置に発熱体が位置し、入力された放射波長の電磁波を発熱体が放射するように、発熱体に供給する電力や発熱体の回転を制御する。そのため、所望の放射波長及び放射エネルギーに関する情報を入力するだけで、所望の放射波長及び放射エネルギーを得るための供給電力や回転位置を適切に調整することができる。ここで、「放射波長に関する値」とは、放射波長自体の値(例えばピーク波長の値や波長領域の範囲など)としてもよいし、これに限らず発熱体の温度,発熱体への供給電力,発熱体の出力(消費電力)など、放射波長を導出可能な値としてもよい。「放射波長に関する情報」についても同様である。「回転位置に関する値」とは、発熱体の回転位置の値自体(例えば回転角など)に限らず、発熱体を所定方向から見た際の電磁波の見かけの放射面積など、回転位置を導出可能な値としてもよい。「放射エネルギーに関する値」とは、放射エネルギーの値自体に限らず、放射エネルギーを導出可能な値としてもよい。「放射エネルギーに関する情報」についても同様である。なお、「放射波長に関する値」と「放射波長に関する情報」とは同じものであっても異なるものであってもよい。例えば、「放射波長に関する値」が発熱体の温度であり、「放射波長に関する情報」が発熱体への供給電力であってもよい。「放射エネルギーに関する値」と「放射エネルギーに関する情報」とについても同様である。また、前記入力手段は、前記放射波長に関する情報及び前記放射エネルギーに関する情報をユーザーから入力可能であってもよい。
【0019】
本発明の乾燥装置は、上述したいずれかの態様の本発明の赤外線加熱ユニットと、上述した赤外線加熱装置と、のいずれかを備え、前記発熱体からみて前記所定方向に位置する被加熱物を乾燥させるものである。
【0020】
この本発明の乾燥装置は、上述したいずれかの態様の本発明の赤外線加熱ユニット又は本発明の赤外線加熱装置を備えているため、これらの効果、例えば、被加熱物への放射波長と放射エネルギーとを別々に調整することができる効果が得られる。なお、本発明の乾燥装置は、被加熱物を搬送しながら乾燥させるものとしてもよいし、被加熱物を停止した状態で乾燥させるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】乾燥装置10の縦断面図である。
図2図1の赤外線加熱ユニット30の断面を示すA−A断面図である。
図3】発熱体32の説明図である。
図4】発熱体32からの電磁波のピーク波長と、発熱体32の回転角と、塗膜82への放射エネルギーと、の関係を示す説明図である。
図5】対応関係データ93の概念図である。
図6】発熱体制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図7】変形例の赤外線加熱ユニット130の断面図である。
図8】変形例の発熱体232の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態である乾燥装置10の縦断面図である。乾燥装置10は、シート80上に塗布された乾燥対象としての塗膜82の乾燥を赤外線を用いて行うものであり、炉体12と、給気装置20と、排気装置25と、赤外線加熱ユニット30と、コントローラー90と、を備えている。また、乾燥装置10は、炉体12の前方(図1の左側)に設けられたロール17と、炉体12の後方(図1の右側)に設けられたロール18と、を備えている。この乾燥装置10は、塗膜82が上面に形成されたシート80を、ロール17,18により連続的に搬送して乾燥を行う、ロールトゥロール方式の乾燥炉として構成されている。
【0023】
炉体12は、塗膜82の乾燥を行うためのものである。炉体12は、略直方体に形成された断熱構造体であり、内部の空間である空間12aと、炉体の前端面13及び後端面14にそれぞれ形成され外部から空間12aへの出入口となる開口15,16を有している。この炉体12は、前端面13から後端面14までの長さが例えば2〜10mである。炉体12は、開口15から開口16に至る通路である搬送通路19を備えている。搬送通路19は、炉体12を水平方向に貫通している。片面に塗膜82が塗布されたシート80は、この搬送通路19を通過していく。
【0024】
給気装置20は、熱風をシート80の表面側に供給(送風)して炉体12内を通過する塗膜82を乾燥させる装置である。給気装置20は、給気ファン21と、パイプ構造体22と、給気口23と、を備えている。給気ファン21は、パイプ構造体22に取り付けられており、例えば空気などの流体を加熱して熱風とし、パイプ構造体22の内部へ供給するものである。なお、本実施形態では、給気ファン21は後述する第2流体をパイプ構造体22の内部へ供給するものとした。給気ファン21は、熱風の流量や温度の調節が可能となっている。熱風の温度は、例えば40℃〜200℃の範囲で調整可能である。パイプ構造体22は、給気ファン21からの熱風の通路となるものである。パイプ構造体22は、給気ファン21から炉体12の天井を貫通して炉体12の内部までの通路を形成している。給気口23は、給気ファン21からの熱風の炉体12への供給口となるものである。この給気口23は、炉体12のうちシート80の搬出側である開口16側の端部に設けられ、搬入側である開口15側に向けて水平に開口している。これにより、給気装置20は、シート80の搬送方向とは反対方向に(図1の左方向に)熱風を供給する。
【0025】
排気装置25は、炉体12内の雰囲気ガスを排出する装置である。排気装置25は、排気ファン26と、パイプ構造体27と、排気口28と、を備えている。排気口28は、炉体12のうちシート80の搬入側である開口15側の端部に設けられ、搬出側である開口16側に向けて水平に開口している。排気口28はパイプ構造体27に取り付けられており、炉体12内の雰囲気ガス(主に塗膜82の表面に沿って流れた後の給気装置20からの熱風)を吸気してパイプ構造体27内に導く。パイプ構造体27は、排気口28から排気ファン26への雰囲気ガスの流路となるものである。パイプ構造体27は、排気口28から炉体12の天井を貫通して排気ファン26までの通路を形成している。排気ファン26は、パイプ構造体27に取り付けられており、パイプ構造体27内部の雰囲気ガスを排気する。
【0026】
赤外線加熱ユニット30は、炉体12内を通過する塗膜82に赤外線を照射する装置であり、炉体12内の空間12aの天井近くに複数取り付けられている。本実施形態では、赤外線加熱ユニット30は前端面13側から後端面14側にわたって略均等に複数個(本実施形態では6個)配置されている。この複数の赤外線加熱ユニット30は、いずれも同様の構成をしており、その長手方向と塗膜82の搬送方向とが直交するように取り付けられている。以下、1つの赤外線加熱ユニット30の構成について説明する。
【0027】
図2図1の赤外線加熱ユニット30の断面を示すA−A断面図である。図1図2に示すように、赤外線加熱ユニット30は、赤外線ヒーター31と、赤外線吸収プレート70,75と、反射板60(図1にのみ図示)と、を備えている。
【0028】
赤外線ヒーター31は、Ni−Cr合金製の発熱体32と、発熱体32の外側に設けられ発熱体32を囲むように形成された内管37と、内管37の外側に設けられ内管37を囲むように形成された外管38と、を備えており、これらの両端にはキャップ40が取り付けられている(図2)。また、赤外線ヒーター31は、外管38の表面温度を検出する温度センサ49を備えている(図2)。なお、内管37,外管38は同心円状に配置されており、その円の中心に発熱体32が位置するようになっている。
【0029】
図3は、発熱体32の説明図である。なお、図3(a)は、発熱体32を後方向(図2の下方向)から見た様子を示す説明図であり、図3(b)は、発熱体32の左端部付近の斜視図である。発熱体32は、加熱されると赤外線を含む電磁波を放射するものであり、図3に示すように、帯状のNi−Cr合金板を螺旋状に巻いたものである。発熱体32は、モーター56(図2)からの駆動力で回転軸Rを中心に回転可能に構成されている。発熱体32は、回転軸Rに垂直な断面で見たときに電磁波の放射面(発熱体32の表面)が楕円形状になるように形成されている(図1,3)。なお、回転軸Rは、左右方向(図2の左右方向)と平行な軸であり、発熱体32の断面の楕円の中心に位置している。そのため、発熱体32の電磁波の放射面の形状は、回転軸Rを中心軸として2回対称となっている。また、発熱体32の電磁波の放射面の形状は、回転軸Rを通る平面(例えば前後方向の平面や上下方向の平面)を対称面として面対称な形状となっている。このような形状とすることで、発熱体32は、回転軸Rと垂直な所定方向(本実施形態では下方向)から見た際の電磁波の見かけの放射面積が回転により変化する形状となっている。
【0030】
図2,3に示すように、発熱体32の回転軸方向の両端には、接続端子33が挿入されている。また、両端の接続端子33は、それぞれ円柱状の軸体34と接続されている。両端の接続端子33は、例えば金属などの導電性材料からなる。両端の軸体34は、例えば絶縁材料からなり、それぞれ軸受35により支持されている。軸受35は、ボールベアリングとして構成され、キャップ40の内部に配置されたホルダー45にそれぞれ支持されており(図2)、軸体34を回転可能に支持している。なお、軸受35は、ボールベアリングに限らず、軸体34を回転可能に支持できるものであればよい。両端の接続端子33は、それぞれ電気配線32aを介して炉体12の外部に配置された電力供給源50と接続されており、この電力供給源50から発熱体32へ電力が供給されて発熱体32が加熱されると、発熱体32は赤外線を含む電磁波を放射する。また、軸体34は、キャップ40を回転軸方向に貫通する駆動軸57を介して、炉体12の内部に配置されステッピングモーターなどのサーボモーターとして構成されたモーター56と接続されている。モーター56と駆動軸57と間や、駆動軸57と軸体34との間は、図示しない円筒状のカップリングにより接続されていてもよい。モーター56から回転駆動力が出力されると、発熱体32,接続端子33,軸体34は一体となって回転軸Rを中心に回転する。なお、電気配線32aは湾曲可能であり、キャップ40内の配線の長さに余裕を持たせてあるため、接続端子33が回転しても電気配線32aと接続端子33とは電気的な導通を維持可能である。そのため、モーター56からの駆動力で発熱体32を回転させつつ電力供給源50から発熱体32に電力を供給することができる。なお、接続端子33に接続された電気配線32aは、キャップ40に設けられた配線引出部47を介して気密に外部へ引き出され、電力供給源50に接続されている。キャップ40は、図2に示すように、円盤状の蓋44と、その蓋44に立設された円筒部42,43とを一体成形したものである。内管37及び外管38の左右両端は、それぞれ円筒部42,43に固定されている。
【0031】
内管37及び外管38は、発熱体32を囲む断面円形の管であり、発熱体32から放射された電磁波のうち少なくとも赤外線を透過する赤外線透過材料で形成されている。内管37,外管38に用いるこのような赤外線透過材料としては、例えば、ゲルマニウム、シリコン、サファイア、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、カルコゲナイドガラス、透過性アルミナセラミックスなどのほか、赤外線を透過可能な石英ガラスなどが挙げられる。本実施形態では、内管37,外管38は、透過性アルミナセラミックスで形成されているものとした。なお、内管37と外管38との間の空間は、例えば空気などの流体である第1流体を流通可能な流体流路39となっている。内管37,外管38は、流体流路39を流れる第1流体によって、所定の上限値(例えば200℃)以下に冷却可能になっている。
【0032】
流体流路39は、内管37と外管38との間の空間であり、キャップ40に設けられた流体出入口48を通じて第1流体が流通可能となっている。流体出入口48は、炉体12の外部に配置された第1流体供給源52と接続されている。この第1流体供給源52から供給された第1流体は、一方の流体出入口48から流体流路39内に流入し、流体流路39内を流通して他方の流体出入口48から流出する。流体流路39を流通する第1流体は、赤外線ヒーター31の外面である外管38の温度や内管37の温度を下げたり、任意の温度に調整したりする冷媒としての役割を果たす。
【0033】
反射板60は、図1に示すように、発熱体32からみて上側に配置された板状の部材である。反射板60は、前後方向(図1の左右方向)の長さが外管38の外径よりも長く、図1に示すように断面視で外管38の真上の領域を覆うように形成されている。換言すると、反射板60の前後方向の存在範囲は、発熱体32や外管38の前後方向の存在範囲を含んでいる。また、図示は省略するが、反射板60の左右方向(図1の紙面手前,奥方向の存在範囲は、発熱体32や外管38の左右方向の存在範囲を含んでいる。この反射板60は、発熱体32から上方向に放射される電磁波のうち、赤外線の少なくとも一部を反射可能な材料で形成されている。反射版60の材料としては、例えばSUS304やアルミニウムなどの金属が挙げられる。
【0034】
赤外線吸収プレート70,75は、赤外線ヒーター31を前後方向から挟むように赤外線ヒーター31の前側及び後側にそれぞれ配置された略直方体の部材である。赤外線吸収プレート70は、後方(図1の右側)の面が赤外線吸収面となり、発熱体32からの電磁波のうち赤外線の少なくとも一部を吸収する。この赤外線吸収面は、上下方向の長さが外管38の外径より長く、図1に示すように断面視で外管38の前方の領域を覆うように形成されている。換言すると、赤外線吸収面の上下方向の存在範囲は、発熱体32や外管38の上下方向の存在範囲を含んでいる。また、図2に示すように、赤外線吸収プレート70の左右方向の存在範囲は、発熱体32や外管38の左右方向の存在範囲を含んでいる。この赤外線吸収プレート70は、発熱体32からの電磁波のうち赤外線の少なくとも一部を吸収可能な赤外線吸収材料で形成されている。赤外線吸収プレート70に用いるこのような赤外線吸収材料としては、例えば、SiCを含む多孔質体に溶融Siを含浸させてなるSi−SiC系複合材料(シリコン含浸SiC)などが挙げられる。本実施形態では、赤外線吸収プレート70は、赤外線領域(波長が0.7μm〜8μmの領域)の電磁波のほとんど(例えば80%以上)を吸収する材料で形成されているものとした。赤外線吸収プレート70は、内部が中空になっており、この内部の空間が流体流路72となっている。この流体流路72は赤外線吸収プレート70に設けられた2箇所の流体出入口71を通じて第2流体が流通可能となっている。第2流体は、例えば空気などの気体としてもよいし、水などの液体としてもよい。本実施形態では、第2流体は空気とした。流体出入口71は、炉体12の外部に配置された第2流体供給源54と接続されている。この第2流体供給源54から供給された第2流体は、一方の流体出入口71から流体流路72内に流入し、流体流路72内を流通して他方の流体出入口71から流出する。流体流路72を流通する第2流体は、赤外線を吸収して加熱される赤外線吸収プレート70の温度を下げる冷媒としての役割を果たす。なお、赤外線吸収プレート70は、流体流路72を流れる第2流体によって、例えば200℃以下に冷却可能になっている。また、他方の流体出入口71は、給気ファン21に接続されている。そのため、給気ファン21は、流体流路72を通過して加熱された第2流体をそのまま用いるか又はさらに加熱して、熱風として炉体12内に供給する。
【0035】
赤外線吸収プレート75は、流体出入口76と、内部に形成された流体流路77と、を備えている。この赤外線吸収プレート75は、赤外線ヒーター31を挟んで赤外線吸収プレート70とは反対側に配置されており、回転軸Rを含む上下方向に平行な仮想平面を対称面として赤外線吸収プレート70と面対称に構成されている。それ以外の点は、赤外線吸収プレート70と同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0036】
シート80は、特に限定するものではないが、例えば、アルミニウムや銅等の金属シートである。シート80は、特に限定するものではないが、例えば厚さ10〜100μm,幅200〜1000mmである。また、シート80上の塗膜82は、例えば乾燥後に電池用の電極として用いられるものであり、特に限定するものではないが、例えばリチウムイオン二次電池用の電極となる塗膜である。塗膜82としては、例えば、電極材(正極活物質又は負極活物質)とバインダーと導電材と溶剤とを共に混練した電極材ペーストを、シート80上に塗布したもの等が挙げられる。塗膜82の厚みは、特に限定するものではないが、例えば20〜1000μmである。
【0037】
コントローラー90は、CPU91を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、各種処理プログラムや各種データなどを記憶したフラッシュメモリー92と、一時的にデータを記憶するRAM94と、操作パネル98などと通信する図示しない内部通信インタフェース(I/F)と、を備えている。フラッシュメモリー92は、対応関係データ93を記憶している。詳しくは後述するが、対応関係データ93は、発熱体32の放射波長に関する値と、発熱体32の回転位置に関する値と、発熱体32からみて下方向に配置された被加熱物である塗膜82に到達する発熱体32からの放射エネルギーに関する値と、の対応関係を表すデータである。
【0038】
このコントローラー90は、給気ファン21や排気ファン26に制御信号を出力して、給気口23から送風される熱風の温度及び風量を制御したり、空間12aの雰囲気の排気口28からの排気量を制御したりする。また、コントローラー90は、熱電対である温度センサ49が検出した外管38の温度を入力したり、第1流体供給源52の図示しない開閉弁や流量調整弁に制御信号を出力したりして、外管38が所定の上限値を超えないように赤外線加熱ユニット30の流体流路39を流れる第1流体の流量を制御する。コントローラー90は、第2流体供給源54の図示しない開閉弁や流量調整弁に制御信号を出力して、赤外線吸収プレート70,75の流体流路72,77を流れる第2流体の流量を個別に制御する。更に、コントローラー90は、電力供給源50から発熱体32へ供給される電力の大きさを調整するための制御信号を電力供給源50へ出力して、赤外線加熱ユニット30の発熱体温度や出力を個別に制御する。コントローラー90は、モーター56に制御信号を出力して、発熱体32の回転位置を制御する。また、コントローラー90は、ロール17,ロール18の回転速度を制御することで、炉体12内のシート80及び塗膜82の通過時間やシート80及び塗膜82にかかる張力を調整する。コントローラー90は、操作パネル98の操作に応じて発生する操作信号を入力したり、操作パネル98に表示指令を出力したりする。
【0039】
また、コントローラー90は、図1に示すように、機能ブロックとして、回転位置取得部95、制御部96などを備えている。回転位置取得部95は、ユーザーから操作パネル98を介して入力された発熱体32の放射波長及び放射エネルギーに関する情報と、対応関係データ93と、に基づいて、入力された放射波長及び放射エネルギーに対応する発熱体32の回転位置に関する値を取得する機能を有する。制御部96は、モーター56及び電力供給源50を制御して、回転位置取得部95により取得された値で表される回転位置に発熱体32が位置するようモーター56により発熱体32を回転させる機能や、操作パネル98を介して入力された放射波長の電磁波を発熱体32が放射するよう電力供給源50により発熱体32に電力を供給させる機能を有する。なお、回転位置取得部95、制御部96は、ハードウエアとして構成してもよいし、CPU91がフラッシュメモリー92に記憶されたプログラムを実行することにより機能を発現するソフトウエアとして構成してもよい。
【0040】
操作パネル28は、表示部と、この表示部を含んで構成された操作部とを備える。表示部は、タッチパネル式の液晶ディスプレイとして構成されており、メニューや項目を選択する選択/設定ボタン、発熱体32の放射波長及び放射エネルギーなどの各種数値を入力するための数字ボタン、乾燥処理を開始するスタートボタンなどを表示してタッチ操作を受け付け、タッチ操作に基づく操作信号をコントローラー90に送信する。また、コントローラー90からの表示指令を受信すると、表示指令に基づく画像や文字,数値などを表示部に表示する。
【0041】
次に、こうして構成された乾燥装置10の動作について説明する。まず、赤外線加熱ユニット30の動作について説明する。図4は、発熱体32からの電磁波の放射波長(ピーク波長)と、発熱体32の回転位置(回転角)と、塗膜82への放射エネルギーと、の関係を示す説明図である。図4(a)は、発熱体32の回転角が0°のときの様子を示す説明図であり、図4(b)は、発熱体32の回転角が90°のときの様子を示す説明図である。なお、本実施形態では、発熱体32の断面(回転軸Rに垂直な断面)の長手方向が水平(上下方向に垂直)となる位置を回転角の基準(回転角=0°)とした。
【0042】
まず、回転角=0°の場合のピーク波長と放射エネルギーとの関係について説明する。発熱体32は、電力供給源50から供給される電力により出力が変化し、発熱体32自身の温度が変化するため、発熱体32が放射する電磁波のピーク波長もそれに伴い変化する。具体的には発熱体32の出力が大きいほど、すなわち発熱体32の温度が高いほど、放射される電磁波のピーク波長は小さい値になる。また、発熱体32の出力が大きいほど、発熱体32から塗膜82に到達する放射エネルギーが大きくなる。例えば、図4(a)に示すように、発熱体32の出力が最大時の25%のときには、ピーク波長が約4μmの電磁波が放射され、発熱体32の出力が最大時(100%)のときには、ピーク波長が約3μmの電磁波が放射される。そして、発熱体32の出力が100%のときには、発熱体32の出力が25%のときと比べて発熱体32から塗膜82への放射エネルギーが大きくなる。このように、発熱体32の回転角を調整せず出力のみを調整する場合、ピーク波長と放射エネルギーとの一方を変化させると他方も変化することになる。
【0043】
しかし、本実施形態の赤外線加熱ユニット30は、発熱体32が回転することで、下方向から発熱体32を見た際の電磁波の見かけの放射面積が変化する。これにより、発熱体32の放射面に対する、発熱体32の下方向に配置された塗膜82の表面(特に、炉体12内の塗膜82の表面)の形態係数(以下、形態係数Fと称する)が変化する。例えば、図4(b)に示すように、発熱体32の回転角が90°のときには、回転角が0°のときと比べて下方向から発熱体32を見た際の見かけの放射面積が小さくなり、形態係数Fも小さくなる。そのため、発熱体32の出力が同じ100%であっても、発熱体32から塗膜82に到達する放射エネルギーは回転角が0°のときと比べて小さくなる(図4(b)下段グラフの実線を参照)。このように、赤外線加熱ユニット30では、発熱体32を回転させて見かけの放射面積を変える(形態係数Fを変える)ことで、例えば発熱体32の出力を変えずに(=発熱体32の温度,ピーク波長などを変えずに)、塗膜82に到達する放射エネルギーを変化させることができる。また、発熱体32の出力を変えたことに伴う放射エネルギーの変化を抑制するように、発熱体32の見かけの放射面積を変化させることができる。例えば本実施形態では、出力25%で回転角が0°のときの発熱体32からの電磁波(図4(b)下段グラフの破線)と、出力100%で回転角が90°のときの発熱体32からの電磁波(図4(b)下段グラフの実線)と、で塗膜82に到達する放射エネルギーがほぼ同じになっており、両者はピーク波長や電磁波の波長領域を1μmだけシフトさせた関係となっている。
【0044】
なお、赤外線加熱ユニット30は、赤外線吸収プレート70,75を備えているため、発熱体32の回転位置に対応する形態係数Fの値には、この赤外線吸収プレート70,75の配置や大きさなども影響する。また、赤外線加熱ユニット30は内管37,外管38,反射板60,赤外線吸収プレート70,75を備えているため、発熱体32から塗膜82に到達する放射エネルギーはこれらの配置,大きさ,反射する波長領域,吸収する波長領域などの影響も受ける。例えば、発熱体32からの電磁波のうち内管37,外管38,赤外線吸収プレート70,75が吸収する成分や反射板60が反射する成分によって、発熱体32から塗膜82に到達する放射エネルギーは変化する。そして、本実施形態では、これらの影響も考慮した上で、発熱体32の放射波長に関する値と、発熱体32の回転位置に関する値と、発熱体32からみて下方向に配置された被加熱物である塗膜82に到達する発熱体32からの放射エネルギーに関する値と、の対応関係を表すデータが、対応関係データ93として予めフラッシュメモリー92に記憶されている。図5は、対応関係データ93の概念図である。図示するように、対応関係データ93では、発熱体32の放射波長に関する値として発熱体32の出力を用い、発熱体32の回転位置に関する値として発熱体32の回転角を用いており、これらと塗膜82に到達する放射エネルギーとの対応関係がマップとして記憶されている。図5からもわかるように、発熱体32の回転角が−90°〜90°の間で変化すると、塗膜82に到達する放射エネルギーは回転角が0°のときに最大となり、回転角が90°,−90°のときに最小となる。また、同じ回転角であっても、発熱体32の出力が大きい(=発熱体32の温度が高い、発熱体32からの電磁波のピーク波長が短い)ほど、塗膜82に到達する放射エネルギーは大きくなる。なお、図5では発熱体32の出力が25%,50%,75%,100%のときの対応関係を示したが、対応関係データ93には発熱体32の出力がこれ以外の場合の対応関係も含まれている。本実施形態では、対応関係データ93には発熱体32の出力が10〜100%の範囲にわたって1%刻みでの対応関係が記憶されているものとした。このような対応関係データ93は、例えば実験により予め求めてもよいし、シミュレーションなどを用いて計算により予め導出してもよい。なお、本実施形態では、発熱体32の放射面の断面形状が楕円であり2回対称であるため、回転角は−90°〜90°の間で変化させるものとしたが、回転角を−180°〜180°までの間で変化させてもよい。
【0045】
なお、塗膜82に到達する放射エネルギー(図5の縦軸)には、発熱体32から直接塗膜82に到達する放射エネルギーと、反射板60での反射を経由して塗膜82に到達する放射エネルギーとが含まれる。ここで、本実施形態では、発熱体32の電磁波の放射面の形状が回転軸Rを中心として2回対称であり、発熱体32を上方向から見た際の見かけの放射面積と、下方向から見た際の見かけの放射面積とが等しく、回転角の値の変化に伴って同じように変化する。そのため、回転角が0°のときに発熱体32から塗膜82に直接到達する放射エネルギーが最大になるのと同様、発熱体32から塗膜82に直接到達する放射エネルギーと反射板60に反射されて到達する放射エネルギーとの和も、回転角が0°のときに最大になる。
【0046】
次に、こうして構成された乾燥装置10を用いて塗膜82を乾燥する様子について説明する。まず、ユーザーが操作パネル98を操作して乾燥条件などの各種設定値の入力を行い、スタートボタンを押下する。なお、操作パネル98がユーザーから入力する各種設定値には、5個の赤外線加熱ユニット30の各々についての、発熱体32からの放射波長及び塗膜82への放射エネルギーに関する情報が含まれる。また、各種設定値には、給気装置20からの熱風の温度及び風量、排気装置25による空間12aの雰囲気の排気量、外管38の表面温度の上限値、流体流路72,77を流れる第2流体の流量、塗膜82の炉体12内の通過時間などの値が含まれる。すると、コントローラー90は操作パネル98からの操作信号によりユーザーからの各種設定値などを入力してRAM94に記憶し、記憶した各種設定値に基づく乾燥処理を開始する。具体的には、まず、コントローラー90が入力された通過時間に基づく速度でロール17,ロール18を回転させ、シート80の搬送を開始する。これにより、乾燥装置10の左端に配置されたロール17からシート80が巻き外されていく。また、シート80は開口15から炉体12内に搬入される直前に図示しないコーターによって上面に塗膜82が塗布される。そして、塗膜82が塗布されたシート80は、炉体12内に搬送される。このとき、コントローラー90は、入力された設定値に基づいて給気ファン21,排気ファン26,第1流体供給源52,第2流体供給源54を制御する。また、コントローラー90は、入力された発熱体32からの放射波長及び塗膜82への放射エネルギーに関する情報に基づいて、電力供給源50,モーター56を制御して発熱体32の出力や回転位置を制御する発熱体制御ルーチン(後述)を実行する。これらにより、シート80が炉体12の空間12a内を通過する間に、シート80の上面に形成された塗膜82は、発熱体32からの赤外線(反射板60に反射された赤外線を含む)が照射されることによって乾燥される。また、発熱体32からの赤外線のうち、一部は赤外線吸収プレート70,75によって吸収され、流体流路72,77を流れる第2流体を加熱する。また、給気装置20からの熱風が塗膜82やシート80を加熱したり、塗膜82から蒸発した溶剤を除去したりする。塗膜82から蒸発した溶剤を含む熱風は、排気装置25により排出される。塗膜82は、炉体12を通過する間に乾燥されて上述した電極となり、開口16から搬出される。そして、この電極(塗膜82)は、炉体12の右端に設置されたロール18にシート80とともに巻き取られる。
【0047】
ここで、発熱体制御ルーチンについて詳細に説明する。図6は、発熱体制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、コントローラー90が、ユーザーから操作パネル98を介して、発熱体32からの放射波長及び塗膜82への放射エネルギーに関する情報と、スタートボタンが押下されたことを表す操作信号と、を入力したときに実行される。また、このルーチンは、CPU91が回転位置取得部95及び制御部96の機能を用いて実行する。なお、図6の発熱体制御ルーチンは、図1の5個の赤外線加熱ユニット30の各々について実行されるが、処理内容はいずれも同様であるため、ここでは1個の赤外線加熱ユニット30についての処理を説明する。
【0048】
この発熱体制御ルーチンが実行されると、CPU91は、まず、入力された発熱体32からの放射波長及び塗膜82への放射エネルギーに関する情報をRAM94に記憶する(ステップS100)。なお、本実施形態では、放射波長に関する情報として、発熱体32からの電磁波のピーク波長を表す値を、操作パネル98を介してユーザーから入力するものとした。また、放射エネルギーに関する情報としては、発熱体32から塗膜82に到達する放射エネルギーの値自体を入力するものとした。続いて、CPU91は、ステップS100で記憶したピーク波長の値に基づいて発熱体32の出力を導出する(ステップS110)。この処理は、発熱体32からの電磁波のピーク波長と発熱体32の出力とを対応づけたテーブルを予めフラッシュメモリー92が記憶しており、このテーブルに基づいて発熱体32の出力を導出するものとした。次に、CPU91は、対応関係データ93に基づいて、ステップS100で記憶した放射エネルギーの値自体と、ステップS110で導出した発熱体32の出力とに対応する回転角を取得する(ステップS120)。図5に示したように、対応関係データ93は、発熱体32の出力と、発熱体32の回転角と、塗膜82に到達する放射エネルギーとの3つのパラメーターの対応関係を表すデータであるため、このうちの2つのパラメータ(ここでは、発熱体32の出力と、塗膜82に到達する放射エネルギー)に基づいて他の1つのパラメータ(ここでは、発熱体32の回転角)の値を取得することができる。そして、CPU91は、電力供給源50及びモーター56に制御信号を出力して発熱体32の出力及び回転角を調整して(ステップS130)、本ルーチンを終了する。このステップS130により、発熱体32の出力がステップS110で導出された出力となるよう電力供給源50から電力が供給される。また、発熱体32の回転角がステップS120で導出された回転角となるようモーター56から駆動力が出力される。そして、この回転角及び出力の状態で発熱体32が発熱することにより、塗膜82の乾燥処理における発熱体32の電磁波のピーク波長や発熱体32から塗膜82へ到達する放射エネルギーが、ユーザーが入力した値すなわち所望の値となる。
【0049】
本実施形態では、この発熱体制御ルーチンを5個の赤外線加熱ユニット30の各々について行うことで、電磁波のピーク波長や発熱体32から塗膜82へ到達する放射エネルギーを個別に調整することができる。例えば、5個の赤外線加熱ユニット30のうち図1の前側の3個については、発熱体32の出力を100%(ピーク波長が3μm),回転角を90°とし、後側の2個については、発熱体32の出力を25%(ピーク波長が4μm),回転角を0°とすることで、炉体12の前側と後側とで塗膜82に放射する電磁波のピーク波長を変えつつ、5個の赤外線加熱ユニット30から塗膜82への放射エネルギーはほぼ等しくしすることができる。これにより、塗膜82の乾燥状況に応じて塗膜82に放射する電磁波のピーク波長を変えつつ、出力の比較的高い前側3個の赤外線加熱ユニット30からの放射エネルギーが大きくなりすぎることを抑制して、炉体12内の塗膜82の温度ムラや過熱などを抑制できる。
【0050】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の赤外線加熱ユニット30が本発明の赤外線加熱ユニットに相当し、発熱体32が発熱体に相当する。また、赤外線吸収プレート70,75が赤外線吸収体に相当し、流体流路72,77が流体流路に相当し、反射板60が赤外線反射体に相当する。モーター56が回転手段に相当し、電力供給源50が電力供給手段に相当し、対応関係データ93を記憶するフラッシュメモリー92が対応関係記憶手段に相当し、操作パネル98が入力手段に相当し、回転位置取得部95が回転位置取得手段に相当し、制御部96が制御手段に相当する。赤外線加熱ユニット30と、モーター56と、電力供給源50と、フラッシュメモリー92及び回転位置取得部95,制御部96を備えたコントローラー90と、操作パネル98と、が本発明の赤外線加熱装置に相当する。乾燥装置10が本発明の乾燥装置に相当する。
【0051】
以上説明した本実施形態の赤外線加熱ユニット30は、加熱されると赤外線を含む電磁波を放射し、回転軸Rを中心に回転可能であり、回転軸Rと垂直な下方向から見た際の電磁波の見かけの放射面積が回転により変化する形状の発熱体32を備えている。そのため、例えば発熱体32の温度変化による発熱体32からの放射波長の変化とは独立して、発熱体32の見かけの放射面積を変化させることができる。そして、見かけの放射面積が変化すると、発熱体32から下方向に放射される電磁波の放射エネルギーが変化する。そのため、例えば、下方向に配置された塗膜82への放射エネルギーを一定にしつつ放射波長(例えば電磁波のピーク波長や電磁波の波長領域など)を調整したり、塗膜82への放射波長を一定にしつつ放射エネルギーを調整したりするなど、塗膜82への放射波長と放射エネルギーとを別々に調整することができる。
【0052】
また、発熱体32は、回転軸Rに垂直な断面で見たときに、電磁波の放射面が楕円形状である。そのため、比較的単純な形状で、発熱体32を「下方向から見た際の電磁波の見かけの放射面積が回転により変化する形状」とすることができる。
【0053】
さらに、赤外線加熱ユニット30は、電磁波のうち、発熱体32から回転軸Rと垂直且つ下方向以外の方向に放射される赤外線の少なくとも一部を吸収可能な赤外線吸プレート70,75を備えている。そのため、発熱体32から下方向以外の方向へ向かう赤外線が、例えば炉体12の壁部などの他の物体に反射して塗膜82に到達してしまうなど、塗膜82に間接的に放射エネルギーを与えることを抑制できる。なお、発熱体32の見かけの放射面積を減少させて塗膜82への放射エネルギーを減少させたい場合に、塗膜82に間接的に与えられる放射エネルギーが存在すると、放射エネルギーの減少が不十分となる場合がある。赤外線吸収プレート70,75を備えることで、このようなことを抑制し、発熱体32の回転による放射エネルギーの調整をより十分なものとすることができる。
【0054】
さらにまた、赤外線吸収プレート70,75は、電磁波のうち、発熱体32から回転軸Rと垂直且つ下方向と垂直な方向(=前後方向)に放射される赤外線の少なくとも一部を吸収可能である。発熱体32の回転により下方向からの見かけの放射面積を減少させる場合、回転軸Rと垂直且つ下方向と垂直な前後方向からの見かけの放射面積は増大しやすい。そのため、赤外線吸収プレート70,75がこの前後方向に放射される赤外線を吸収可能にすることで、下方向に配置された塗膜82に間接的に放射エネルギーを与えることを抑制する効果が高まる。しかも、赤外線吸収プレート70,75は、発熱体32から前後方向に放射される赤外線の少なくとも一部を吸収する赤外線吸収面を有しており、赤外線吸収面の上下方向の存在範囲が発熱体32の上下方向の存在範囲を含んでいる。そのため、塗膜82に間接的に放射エネルギーを与えることを抑制する効果がさらに高まる。
【0055】
そしてまた、赤外線加熱ユニット30は、電磁波のうち、発熱体32から前後方向のうちの前方向に放射される赤外線の少なくとも一部を吸収可能な赤外線吸収プレート70と、前後方向のうちの後方向に放射される赤外線の少なくとも一部を吸収可能な赤外線吸収プレート75とを備える。そのため、塗膜82に間接的に放射エネルギーを与えることを抑制する効果がさらに高まる。
【0056】
そしてまた、赤外線吸収プレート70,75は、第2流体が流通可能な流体流路72,77を内部に有している。そのため、流体流路72,77に第2流体を流通させることによって、赤外線吸収プレート70,75を冷却することができる。これにより、赤外線吸収プレート70,75自身が赤外線の輻射源となるのを抑制できる。また、第2流体の熱を給気装置20が供給する熱風の予熱に利用して、発熱体32から塗膜82への加熱に用いられないエネルギーを有効に活用することができる。
【0057】
そしてまた、赤外線加熱ユニット30において、電磁波のうち、発熱体32からみて上方向に放射される赤外線の少なくとも一部を反射可能な反射板60、を備え、発熱体32は、発熱体32を下方向から見た際の電磁波の見かけの放射面積と、上方向から見た際の電磁波の見かけの放射面積との和が、回転により変化する形状としている。これにより、反射板60が赤外線を反射することで、塗膜82には、発熱体32から下方向に放射される赤外線と上方向に放射された赤外線とが共に到達可能になる。そのため、発熱体32から放射エネルギーを効率よく塗膜82に到達させることができる。なお、発熱体32は、下方向から見た際の見かけの放射面積と、上方向から見た際の見かけの放射面積との和が、回転により変化するため、発熱体32から塗膜82に直接到達する放射エネルギーと、反射板60に反射されて到達する放射エネルギーとの和も回転により変化する。そのため、反射板60が存在しても、発熱体32の回転による放射エネルギーの調整を行うことができる。
【0058】
そしてまた、乾燥装置10では、コントローラー90のフラッシュメモリー92が、発熱体32の放射波長に関する値と、回転位置に関する値と、塗膜82に到達する発熱体32からの放射エネルギーに関する値と、の対応関係を表す対応関係データ93を記憶している。そして、まず、この対応関係と、操作パネル98に入力された放射波長及び放射エネルギーに関する情報と、に基づいて発熱体32の回転位置に関する値を取得する。続いて、取得された値で表される回転位置に発熱体32が位置し、入力された放射波長の電磁波を発熱体32が放射するように、電力供給源50が発熱体32に供給する電力やモーター56による発熱体32の回転を制御する。そのため、ユーザーが所望の放射波長及び放射エネルギーに関する情報を入力するだけで、所望の放射波長及び放射エネルギーを得るための供給電力や回転位置を適切に調整することができる。
【0059】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0060】
例えば、上述した実施形態では、赤外線加熱ユニット30は発熱体32を1つ備えるものとしたが、これに限らず複数の発熱体32を備えるものとしてもよい。例えば、互いの回転軸が平行となりその回転軸と垂直且つ所定方向と垂直な方向に並べて配置された複数の発熱体32を有していてもよい。図7は、この場合の変形例の赤外線加熱ユニット130の断面図である。なお、赤外線加熱ユニット130のうち赤外線加熱ユニット30と同様の構成要素については同じ符号を付してその説明を省略し、赤外線加熱ユニット30との相違点について主に説明する。図7に示すように、赤外線加熱ユニット130は、赤外線加熱ユニット30の構成要素に加えて、さらに赤外線ヒーター131を備えている。この赤外線ヒーター131は、発熱体132と、内管137と、外管138などを備えている。赤外線ヒーター131の構成は、赤外線ヒーター31と同様である。赤外線ヒーター131は、赤外線加熱ユニット30の回転軸Rと平行な回転軸R2を有し、この回転軸R2を中心に発熱体132が回転可能である。また、発熱体32と発熱体132とは、回転軸R,R2と垂直且つ所定方向(下方向)と垂直な前後方向に並ぶように配置されている。なお、赤外線吸収プレート75は、赤外線ヒーター131の後方に配置されており、赤外線吸収プレート70,75が赤外線ヒーター31,131を前後から挟むように位置している。また、反射板160が、赤外線ヒーター31及び赤外線ヒーター131の共通の反射板として1つ設けられている。反射板160の前後方向の存在範囲は、発熱体32,132や外管38,138の前後方向の存在範囲を含んでいる。なお、赤外線ヒーター31と赤外線ヒーター131とのそれぞれに反射板を設けてもよい。この赤外線加熱ユニット130においても、例えば発熱体32と発熱体132とが回転後に同じ回転角になるようにすることで、発熱体32,132を下方向から見た際の電磁波の見かけの放射面積の和を、発熱体32,132の回転により変化させることができる。これにより、発熱体32,132の放射面に対する塗膜82の表面の形態係数を変化させることができ、赤外線加熱ユニット30と同様に塗膜82への放射波長と放射エネルギーとを別々に調整することができる。しかも、複数の発熱体32,132が前後方向に並べて配置されているため、隣り合う発熱体32,132同士が自身からの赤外線で互いを加熱することができる。これにより、例えば発熱体32を1つ備えた赤外線加熱ユニット30を別々に2つ配置する場合と比べて、発熱体32,132の加熱に要するエネルギーを少なくすることができる。なお、赤外線加熱ユニットは、発熱体を3つ以上有するものとしてもよい。また、赤外線加熱ユニット130において内管137,外管138を備えないものとし、発熱体32と発熱体132とが同じ内管37,外管38の中に配置されるように構成してもよい。
【0061】
上述した実施形態では、発熱体32は回転軸Rに垂直な形状が楕円形状であるものとしたが、発熱体が回転することで回転軸と垂直な所定方向から発熱体32を見た際の電磁波の見かけの放射面積が変化する形状であれば、これに限られない。例えば、発熱体32を、回転軸Rに垂直な断面で見たときに、電磁波の放射面が長手方向と短手方向とを有する多角形状としてもよい。例えば、発熱体32の形状を平板状として、回転軸Rに垂直な断面が長方形となるようにしてもよい。また、発熱体32は、電磁波の放射面の形状が回転軸Rを中心軸として2回対称な形状としたが、これに限られない。発熱体32は、電磁波の放射面の形状が回転軸Rを通る平面を対称面として面対称な形状としたが、これに限られない。なお、図7に示した赤外線加熱ユニット130のように複数の発熱体を備えた構成においては、複数の発熱体の形状は同じであってもよいし、異なっていてもよい。図8は、変形例の発熱体232の斜視図である。発熱体232は、例えば炭素製の発熱体(カーボンフィラメント)であり、長手方向が回転軸Rに沿った平板状に形成されている。また、発熱体232には、平板(直方体)の最長辺と最短辺とで囲まれる面の一方の面(図8の上側の面)から他方の面(図8の下側の面)に向かって形成された第1溝236aと、他方の面から一方の面に向かって形成された第2溝236bとが、発熱体232の長手方向に沿って交互に複数形成されている。この第1溝236a,第2溝236bが形成されていることで、発熱体232はジグザグの形状に構成されている。なお、このような形状にする理由は、発熱体232の抵抗値を適切な値まで高めるためである。発熱体232のジグザグの経路の両端(図8における発熱体232の右下端と左下端)には、電気配線32aがそれぞれ接続されている。また、発熱体232の長手方向の両端には、軸体34がそれぞれ接続されている。この発熱体232は、回転軸Rに垂直な断面でみたときの電磁波の放射面(発熱体232の表面)が長方形であり、この長方形の中心に回転軸Rが位置している。また、発熱体232の電磁波の放射面の形状は、回転軸Rを中心軸として2回対称となっている。本実施形態の発熱体32と同様に、この発熱体232も、回転軸Rを中心に回転することで回転軸Rと垂直な方向から発熱体232を見た際の電磁波の見かけの放射面積が変化する。
【0062】
上述した実施形態では、回転軸Rは発熱体32の断面の楕円の中心に位置しているものとしたが、これに限られない。回転軸Rが発熱体32の断面の楕円の中心以外に位置していてもよい。すなわち、回転軸Rが偏心していてもよい。
【0063】
上述した実施形態では、赤外線加熱ユニット30は赤外線吸収プレート70,75を備えるものとしたが、これに限られない。例えば、赤外線吸収プレート70,75のうちいずれか一方を備えるものとしてもよいし、いずれも備えないものとしてもよい。また、赤外線吸収プレート70,75の他にも、発熱体32からみて下方向以外の位置に赤外線吸収プレートを配置してもよい。例えば反射板60を備えない代わりに発熱体32の上方向に赤外線吸収プレートを配置してもよい。あるいは、赤外線吸収プレート70,赤外線吸収プレート75,反射板60を備えない代わりに発熱体32の上方向に赤外線吸収プレートを配置してもよい。また、赤外線吸収プレート70,75は、赤外線吸収面の上下方向の存在範囲が発熱体32の上下方向の存在範囲を含んでいるものとしたが、これに限られない。例えば、赤外線吸収プレート70,75のいずれか1以上が、上下方向の長さが発熱体32の上下方向の長さ未満であるものとしてもよい。
【0064】
上述した実施形態では、赤外線吸収プレート70,75は流体流路72,77を備えるものとしたが、これに限られない。例えば、赤外線吸収プレート70,75のいずれか1以上が、流体流路を備えないものとしてもよい。また、流体流路72,77を流れる第2流体は空気としたが、他の気体としてもよいし、例えば水などの液体としてもよい。
【0065】
上述した実施形態では、給気ファン21は流体流路72,77を流れて予熱された第2流体を、熱風として炉体12内に供給するものとしたが、これに限られない。例えば、流体流路72,77を流れて予熱された第2流体と他の流体との間で熱交換を行い、これにより予熱された他の流体を給気ファン21が熱風として炉体12内に供給するものとしてもよい。あるいは、流体流路72,77を流れた第2流体の熱を他の用途に利用しないものとしてもよい。
【0066】
上述した実施形態では、対応関係データ93は、発熱体32の出力と、発熱体32の回転角と、塗膜82に到達する放射エネルギーとの対応関係を表すデータとしたが、発熱体32の放射波長に関する値と、発熱体32の回転位置に関する値と、発熱体32からみて下方向に配置された被加熱物である塗膜82に到達する発熱体32からの放射エネルギーに関する値と、の対応関係を表すものであればよい。例えば、「放射波長に関する値」は、発熱体32の出力に限らずピーク波長や波長領域の範囲としてもよい。波長領域の範囲の具体例としては、例えば、発熱体32からの電磁波の全放射エネルギーのうち波長3μm〜5μmの範囲の放射エネルギーが90%以上、などとしてもよい。あるいは、発熱体32の温度,発熱体32への供給電力など、放射波長を導出可能な値としてもよい。なお、操作パネル98を介して入力する「放射波長に関する情報」についても同様に、ピーク波長に限らず波長領域の範囲としたり、その他放射波長を導出可能な値としてもよい。「回転位置に関する値」は、発熱体32の回転角に限らず、発熱体32を下方向から見た際の電磁波の見かけの放射面積など、回転位置を導出可能な値としてもよい。「放射エネルギーに関する値」は、放射エネルギーの値自体に限らず、放射エネルギーを導出可能な値であればよい。操作パネル98を介して入力する「放射エネルギーに関する情報」についても同様である。なお、対応関係データ93で用いる「放射波長に関する値」と操作パネル98を介して入力する「放射波長に関する情報」とは同じものであっても異なるものであってもよい。「放射エネルギーに関する値」と「放射エネルギーに関する情報」とについても同様である。
【0067】
上述した実施形態では、モーター56が発熱体32の回転角を調整するものとしたが、これに限られない。発熱体32を回転軸Rを中心に回転させるものであれば、モーター以外の装置や機構を用いてもよい。あるいは、本実施形態のコントローラー90とモーター56のように自動で発熱体32を回転させる場合に限らず、モーター56を備えないものとして、ユーザーが手動で発熱体32の回転角を調整するものとしてもよい。
【0068】
上述した実施形態では、発熱体32の出力が25%〜100%の間で変化すると、ピーク波長が4μm〜3μmの間で変化するものとしたが、発熱体32の出力(温度)変化に伴ってピーク波長が変化するものであれば、これに限られない。例えば、発熱体32の出力変化に伴って、発熱体32からの電磁波のピーク波長が赤外線領域(波長が0.7μm〜8μmの領域)の間で変化するものとしてもよい。
【0069】
上述した実施形態では、発熱体32の材料としてNi−Cr合金を例示したが、加熱すると赤外線を放出するものであれば特に限定されない。例えば、W(タングステン),Mo,Ta,及びFe−Cr−Al合金のいずれかでもよい。また、発熱体32を炭素繊維などの炭素からなる発熱体としてもよい。なお、発熱体32を回転可能に構成するため、発熱体の周囲を窒素雰囲気に保つ必要がないなど、気密を要しない材料が好ましい。
【0070】
上述した実施形態では、内管37,外管38は、発熱体32から放射された電磁波のうち少なくとも赤外線を透過するものとしたが、少なくとも赤外線の一部を透過するものであればよい。例えば、内管37,外管38が、波長4μmを超える赤外線を吸収し且つ4μm以下の赤外線を透過する材料(例えば、石英ガラス)で形成されているものとしてもよい。こうすることで、発熱体32の出力を調整して発熱体32からの電磁波の放射波長を変化させつつ、塗膜82に到達する電磁波のうち波長が4μm以下の赤外線の割合を増大させることができる。内管37,外管38が、波長3.5μmを超える赤外線を吸収し且つ3.5μm以下の赤外線を透過する材料(例えば、石英ガラス)で形成されているものとしてもよい。
【0071】
上述した実施形態では、赤外線ヒーター31のうち、内管37,外管38は回転させずに発熱体32を回転させるものとしたが、これに限らず、少なくとも発熱体32が回転可能であればよい。例えば、内管37,外管38を含めて赤外線ヒーター31全体を回転可能に構成してもよい。
【0072】
上述した実施形態では、被加熱物である塗膜82として、リチウムイオン二次電池用の電極となる塗膜を例示したが、加熱対象はこれに限られない。例えば、シート80がPETフィルムからなるものとし、塗膜82は、乾燥後にMLCC(積層セラミックコンデンサ)用の薄膜として用いられるものとしてもよい。この場合の塗膜82は、例えばセラミック粉末又は金属粉末と、有機バインダーと、有機溶剤とを含むものである。あるいは、塗膜82は、LTCC(低温焼成セラミックス)やその他のグリーンシート用の薄膜として用いられるものとしてもよい。
【0073】
上述した実施形態では、乾燥装置10は、塗膜82を連続的に搬送して乾燥を行うロールトゥロール方式の乾燥炉としたが、これに限られない。例えば、乾燥装置10を、ロールトゥロール方式以外の連続炉として構成してもよいし、塗膜82が炉体12内で停止した状態で乾燥を行うバッチ炉として構成してもよい。
【0074】
上述した実施形態では、発熱体32からの放射波長及び塗膜82への放射エネルギーに関する情報を、操作パネル98がユーザーから入力するものとしたが、これに限られない。例えば、発熱体32からの放射波長及び塗膜82への放射エネルギーに関する情報が予めフラッシュメモリー92に記憶されており、CPU91がフラッシュメモリー92からこの情報を入力し(読み出し)てもよい。この場合、CPU91が本発明の赤外線加熱ユニットにおける入力手段に相当する。
【0075】
本出願は、2013年5月30日に出願された日本国特許出願第2013−114177号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、赤外線を用いた加熱や乾燥が必要な産業、例えばリチウムイオン二次電池の電極塗膜を製造する電池産業や、MLCC又はLTCC等を製造するセラミックス産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
10 乾燥装置、12 炉体、12a 空間、13 前端面、14 後端面、15,16 開口、17,18 ロール、19 搬送通路、20 給気装置、21 給気ファン、22 パイプ構造体、23 給気口、25 排気装置、26 排気ファン、27 パイプ構造体、28 排気口、30,130 赤外線加熱ユニット、31,131 赤外線ヒーター、32,132,232 発熱体、32a 電気配線、33 接続端子、34 軸体、35 軸受、37,137 内管、38,138 外管、39 流体流路、40 キャップ、42〜43 円筒部、44 蓋、45 ホルダー、47 配線引出部、48 流体出入口、49 温度センサ、50 電力供給源、52 第1流体供給源、54 第2流体供給源、56 モーター、57 駆動軸、60,160 反射板、70,75 赤外線吸収プレート、71,76 流体出入口、72,77 流体流路、80 シート、82 塗膜、90 コントローラー、91 CPU、92 フラッシュメモリー、93 対応関係データ、94 RAM、95 回転位置取得部、96 制御部、98 操作パネル、236a 第1溝、236b 第2溝、R,R2 回転軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8