特許第5775232号(P5775232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5775232
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】作業車両及び作業車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/438 20100101AFI20150820BHJP
【FI】
   F16H61/438
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-560977(P2014-560977)
(86)(22)【出願日】2014年10月8日
(86)【国際出願番号】JP2014076920
【審査請求日】2015年2月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】大岩 泰司
(72)【発明者】
【氏名】金子 慎治
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−280635(JP,A)
【文献】 特開平06−058407(JP,A)
【文献】 特開平06−280997(JP,A)
【文献】 特開昭61−041628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/438
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を備えた作業車両であり、
前記作業車両を走行させる駆動輪を駆動する油圧モータと、
前記油圧モータとの間で閉回路を形成し、作動油を吐出して前記油圧モータを駆動するポンプであり、前記ポンプの容量を変更し、かつ前記作動油の吸入側と吐出側とを反転することにより前記油圧モータの回転方向を変更する操作機構を有する走行用油圧ポンプと、
前記作業車両の前進と後進とを切り替えるための進行方向切替装置の状態を検出する進行方向検出装置と、
前記作業車両を走行させるための走行指令を前記操作機構の駆動装置に与えて前記操作機構を作動させることにより前記走行用油圧ポンプから前記作動油を吐出させる制御装置と、を含み、
前記操作機構の作動量は、前記走行指令と、前記閉回路の負荷とで定まり、
前記制御装置は、
前記作業車両の走行中に、前記作業車両の進行方向を反転させるための前記進行方向切替装置の反転操作を前記進行方向検出装置が検出したときにおける前記作業車両の走行状態を表す反転操作検出時情報から判定情報を求め、
前記反転操作の検出時から、前記反転操作の検出時における前記作業車両の進行方向に前記作業車両を走行させるための第1走行指令を減少させ、かつ前記反転操作の検出時における前記作業車両の進行方向とは反対方向に前記作業車両を走行させるための第2走行指令を増加させ、
前記作業車両の走行状態を表す車速情報が、前記判定情報になった場合に、前記第1走行指令を0にする、作業車両。
【請求項2】
前記判定情報は、前記反転操作検出時情報が大きくなるにしたがって大きくなる、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記反転操作検出時情報、前記判定情報及び前記車速情報は、速度である、請求項1又は請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記作業機は、荷物を積載するフォークを含み、前記作業車両はフォークリフトである、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項5】
荷物を積載するフォークを備えた作業車両であり、
前記作業車両を走行させる駆動輪を駆動する油圧モータと、
前記油圧モータとの間で閉回路を形成し、作動油を吐出して前記油圧モータを駆動するポンプであり、前記ポンプの容量を変更し、かつ前記作動油の吸入側と吐出側とを反転することにより前記油圧モータの回転方向を変更する操作機構を有する走行用油圧ポンプと、
作動油によって前記操作機構を作動させる駆動装置と、
前記作業車両の前進と後進とを切り替えるための進行方向切替装置の状態を検出する進行方向検出装置と、
前記作業車両を走行させるための走行指令を前記駆動装置に与えて前記操作機構を作動させることにより前記走行用油圧ポンプから前記作動油を吐出させる制御装置と、を含み、
前記操作機構の作動量は、前記走行指令と、前記閉回路の負荷とで定まり、
前記制御装置は、
前記作業車両の走行中に、前記作業車両の進行方向を反転させるための前記進行方向切替装置の反転操作を前記進行方向検出装置が検出したときにおける前記作業車両の反転操作検出時車速から判定車速を求め、
前記反転操作の検出時から、前記反転操作の検出時における前記作業車両の進行方向に前記作業車両を走行させるための第1走行指令を減少させ、かつ前記反転操作の検出時における前記作業車両の進行方向とは反対方向に前記作業車両を走行させるための第2走行指令を増加させ、
前記作業車両の車速が、前記判定車速になった場合に、前記第1走行指令を0とし、
前記車速を検出する装置の異常発生時に、前記反転操作が検出されると、前記作業車両の車速が予め定められた値以下、かつ前記走行用油圧ポンプの吸入側の圧力が予め定められた値以下、かつ前記走行用油圧ポンプの吐出側の圧力が予め定められた値以下、かつ前記駆動装置が発生する作動油の圧力が予め定められた値以下である場合に、前記第1走行指令を0とする、作業車両。
【請求項6】
作業機と、前記作業車両を走行させる駆動輪を駆動する油圧モータと、前記油圧モータとの間で閉回路を形成し、作動油を吐出して前記油圧モータを駆動するポンプであり、前記ポンプの容量を変更し、かつ前記作動油の吸入側と吐出側とを反転することにより前記油圧モータの回転方向を変更する操作機構を有する走行用油圧ポンプと、前記作業車両の前進と後進とを切り替えるための進行方向切替装置の状態を検出する進行方向検出装置と、前記作業車両を走行させるための走行指令を前記操作機構の駆動装置に与えて前記操作機構を作動させることにより前記走行用油圧ポンプから前記作動油を吐出させる制御装置と、を含み、前記操作機構の作動量は、前記走行指令と、前記閉回路の負荷とで定まる作業車両を制御するにあたり、
前記作業車両の走行中に、前記作業車両の進行方向を反転させるための前記進行方向切替装置の反転操作を前記進行方向検出装置が検出したときにおける前記作業車両の走行状態を表す反転操作検出時情報から判定情報を求めることと、
前記反転操作の検出時から、前記反転操作の検出時における前記作業車両の進行方向に前記作業車両を走行させるための第1走行指令を減少させ、かつ前記反転操作の検出時における前記作業車両の進行方向とは反対方向に前記作業車両を走行させるための第2走行指令を増加させることと、
前記作業車両の走行状態を表す車速情報が前記判定情報になった場合に、前記第1走行指令を0にすることと、
を含む、作業車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンによって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプとの間で閉回路を形成し、前記油圧ポンプから吐出された作動油によって駆動される油圧モータと、を有する作業車両及び作業車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源であるエンジンと、駆動輪との間にHST(Hydro Static Transmission:静油圧式動力伝達装置)と称される油圧駆動装置が設けられているフォークリフトがある(例えば、特許文献1)。HSTは、閉回路である主油圧回路に、エンジンによって駆動される可変容量型の走行用油圧ポンプと、走行用油圧ポンプから吐出された作動油によって駆動される可変容量型の油圧モータとを備えており、油圧モータの駆動力を駆動輪に伝達することによって車両を走行させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−57502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フォークリフトのような作業車両は、後進走行中に前後進レバーを後進側から前進側へ操作したり、前進走行中に前後進レバーを前進側から後進側へ操作したりすることにより、後進走行又は前進走行を減速させ停止した直後に、前進走行又は後進走行を増速させるスイッチバック動作が行われる。作業車両が比較的高い速度からスイッチバック動作を行う場合、進行方向の指令が切り替わってから実際に進行方向が切り替わるまでにタイムラグが発生すると、作業車両の作業効率が低下する。また、作業車両が比較的低い速度からスイッチバック動作を行う場合は、作業車両のオペレータの細かい操作に対して正確に動作する精密な動きを要求されている場合が多い。このような場合、スイッチバック動作中に作業車両にショックが発生すると、精密な作業を実行しにくくなる可能性がある。
【0005】
本発明は、HSTを備えた作業車両がスイッチバック動作をする場合のタイムラグを抑制し、かつショックを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、作業機を備えた作業車両であり、前記作業車両を走行させる駆動輪を駆動する油圧モータと、前記油圧モータとの間で閉回路を形成し、作動油を吐出して前記油圧モータを駆動するポンプであり、前記ポンプの容量を変更し、かつ前記作動油の吸入側と吐出側とを反転することにより前記油圧モータの回転方向を変更する操作機構を有する走行用油圧ポンプと、前記作業車両の前進と後進とを切り替えるための進行方向切替装置の状態を検出する進行方向検出装置と、前記作業車両を走行させるための走行指令を前記操作機構の駆動装置に与えて前記操作機構を作動させることにより前記走行用油圧ポンプから前記作動油を吐出させる制御装置と、を含み、前記操作機構の作動量は、前記走行指令と、前記閉回路の負荷とで定まり、前記制御装置は、前記作業車両の走行中に、前記作業車両の進行方向を反転させるための前記進行方向切替装置の反転操作を前記進行方向検出装置が検出したときにおける前記作業車両の走行状態を表す反転操作検出時情報から判定情報を求め、前記反転操作の検出時から、前記反転操作の検出時における前記作業車両の進行方向に前記作業車両を走行させるための第1走行指令を減少させ、かつ前記反転操作の検出時における前記作業車両の進行方向とは反対方向に前記作業車両を走行させるための第2走行指令を増加させ、前記作業車両の走行状態を表す車速情報が、前記判定情報になった場合に、前記第1走行指令を0にする、作業車両である。
【0007】
前記判定情報は、前記反転操作検出時情報が大きくなるにしたがって大きくなることが好ましい。
【0008】
前記反転操作検出時情報、前記判定情報及び前記車速情報は、速度であることが好ましい。
【0009】
前記作業機は、荷物を積載するフォークを含み、前記作業車両はフォークリフトであることが好ましい。
【0010】
本発明は、荷物を積載するフォークを備えた作業車両であり、前記作業車両を走行させる駆動輪を駆動する油圧モータと、前記油圧モータとの間で閉回路を形成し、作動油を吐出して前記油圧モータを駆動するポンプであり、前記ポンプの容量を変更し、かつ前記作動油の吸入側と吐出側とを反転することにより前記油圧モータの回転方向を変更する操作機構を有する走行用油圧ポンプと、作動油によって前記操作機構を作動させる駆動装置と、前記作業車両の前進と後進とを切り替えるための進行方向切替装置の状態を検出する進行方向検出装置と、前記作業車両を走行させるための走行指令を前記駆動装置に与えて前記操作機構を作動させることにより前記走行用油圧ポンプから前記作動油を吐出させる制御装置と、を含み、前記操作機構の作動量は、前記走行指令と、前記閉回路の負荷とで定まり、前記制御装置は、前記作業車両の走行中に、前記作業車両の進行方向を反転させるための前記進行方向切替装置の反転操作を前記進行方向検出装置が検出したときにおける前記作業車両の反転操作検出時車速から判定車速を求め、前記反転操作の検出時から、前記反転操作の検出時における前記作業車両の進行方向に前記作業車両を走行させるための第1走行指令を減少させ、かつ前記反転操作の検出時における前記作業車両の進行方向とは反対方向に前記作業車両を走行させるための第2走行指令を増加させ、前記作業車両の車速が、前記判定車速になった場合に、前記第1走行指令を0とし、前記車速を検出する装置の異常発生時に、前記反転操作が検出されると、前記作業車両の車速が予め定められた値以下、かつ前記走行用油圧ポンプの吸入側の圧力が予め定められた値以下、かつ前記走行用油圧ポンプの吐出側の圧力が予め定められた値以下、かつ前記駆動装置が発生する作動油の圧力が予め定められた値以下である場合に、前記第1走行指令を0とする、作業車両である。
【0011】
本発明は、作業機と、前記作業車両を走行させる駆動輪を駆動する油圧モータと、前記油圧モータとの間で閉回路を形成し、作動油を吐出して前記油圧モータを駆動するポンプであり、前記ポンプの容量を変更し、かつ前記作動油の吸入側と吐出側とを反転することにより前記油圧モータの回転方向を変更する操作機構を有する走行用油圧ポンプと、前記作業車両の前進と後進とを切り替えるための進行方向切替装置の状態を検出する進行方向検出装置と、前記作業車両を走行させるための走行指令を前記操作機構の駆動装置に与えて前記操作機構を作動させることにより前記走行用油圧ポンプから前記作動油を吐出させる制御装置と、を含み、前記操作機構の作動量は、前記走行指令と、前記閉回路の負荷とで定まる作業車両を制御するにあたり、前記作業車両の走行中に、前記作業車両の進行方向を反転させるための前記進行方向切替装置の反転操作を前記進行方向検出装置が検出したときにおける前記作業車両の走行状態を表す反転操作検出時情報から判定情報を求めることと、前記反転操作の検出時から、前記反転操作の検出時における前記作業車両の進行方向に前記作業車両を走行させるための第1走行指令を減少させ、かつ前記反転操作の検出時における前記作業車両の進行方向とは反対方向に前記作業車両を走行させるための第2走行指令を増加させることと、前記作業車両の走行状態を表す車速情報が前記判定情報になった場合に、前記第1走行指令を0にすることと、を含む、作業車両の制御方法である。
【0012】
本発明は、HSTを備えた作業車両がスイッチバック動作をする場合のタイムラグを抑制し、かつショックを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係るフォークリフトの全体構成を示す図である。
図2図2は、図1に示されたフォークリフトの制御系統を示すブロック図である。
図3図3は、スイッチバック動作の一例を示す図である。
図4図4は、制御装置の制御ブロック図である。
図5図5は、反転操作検出時情報である反転操作検出時車と判定情報である判定車速との関係が記述されたテーブルの一例である。
図6図6は、本実施形態に係る作業車両の制御方法の処理例を示すフローチャートである。
図7図7は、本実施形態に係る作業車両の制御方法のタイミングチャートである。
図8図8は、本実施形態に係る作業車両の制御方法のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照してこの発明を実施するための形態について説明する。
【0015】
<フォークリフト>
図1は、本実施形態に係るフォークリフト1の全体構成を示す図である。図2は、図1に示されたフォークリフト1の制御系統を示すブロック図である。フォークリフト1は、駆動輪2a及び操向輪2bを有した車体3と、作業機5と、駆動輪2a及び操向輪2bを制動する機械式ブレーキ9と、を有する。フォークリフト1は、運転席STから操舵部材HLへ向かう側が前であり、操舵部材HLから運転席STへ向かう側が後である。作業機5は、車体3の前方に設けられる。
【0016】
車体3には、内燃機関の一例であるエンジン4、エンジン4を駆動源として駆動する可変容量型の走行用油圧ポンプ10及び作業機油圧ポンプ16が設けられる。エンジン4は、例えばディーゼルエンジンであるが、これには限定されない。走行用油圧ポンプ10及び作業機油圧ポンプ16には、エンジン4の出力軸4Sが連結されている。走行用油圧ポンプ10及び作業機油圧ポンプ16は、出力軸4Sを介してエンジン4に駆動される。駆動輪2aは、油圧モータ20の動力で駆動される。可変容量型の走行用油圧ポンプ10と可変容量型の油圧モータ20とは閉じた油圧回路で連通されて、HSTを形成している。このように、フォークリフト1は、HSTによって走行する。本実施形態において、走行用油圧ポンプ10と作業機油圧ポンプ16とは、いずれも斜板10Sと斜板16Sとを有し、斜板10Sと斜板16Sとの斜板傾転角が変更されることにより、容量が変化する。
【0017】
作業機5は、積荷を載置するフォーク6と、フォーク6を昇降させるリフト機構とを有する。リフト機構は、リフトシリンダ7及びフォーク6をチルトさせるチルトシリンダ8を有する。車体3の運転席には、前後進レバー42a、ブレーキ操作部としてのインチングペダル(ブレーキペダル)40a、アクセル操作部としてのアクセルペダル41a並びに作業機5を操作するためのリフトレバー及びチルトレバーを含む図示しない作業機操作レバーが設けられる。インチングペダル40aは、インチング率を操作する。アクセルペダル41aは、エンジン4への燃料供給量を変更する。インチングペダル40a及びアクセルペダル41aは、フォークリフト1のオペレータが、運転席から足踏み操作できる位置に設けられている。図1では、インチングペダル40aとアクセルペダル41aとが重なった状態で描かれている。
【0018】
図2に示されるように、フォークリフト1は、エンジン4と、出力軸20aと、トランスファ20bと、駆動輪2a、2aと、作業機5を駆動するリフトシリンダ7と、チルトシリンダ8と、制御装置30と、主油圧回路100を備えている。主油圧回路100は、走行用油圧ポンプ10と、油圧モータ20と、両者を接続する油圧供給管路10a及び油圧供給管路10bとを含んだ閉回路である。
【0019】
走行用油圧ポンプ10は、油圧モータ20との間で閉回路を形成し、エンジン4によって駆動されて作動油を吐出することにより、油圧モータ20を駆動するポンプである。本実施形態において、走行用油圧ポンプ10は、例えば、斜板10Sを有し、斜板傾転角を変更することによって容量を変更することのできる可変容量型のポンプである。斜板10Sは、走行用油圧ポンプ10の容量を変更し、かつ作動油の吸入側と吐出側とを反転することにより油圧モータ20の回転方向を変更する操作機構である。
【0020】
走行用油圧ポンプ10は、油圧供給管路10aに接続されている部分がAポート10A、油圧供給管路10bに接続されている部分がBポート10Bである。フォークリフト1の前進時には、Aポート10Aが作動油の吐出側となり、Bポート10Bが作動油の流入側となる。フォークリフト1の後進時には、Aポート10Aが作動油の流入側となり、Bポート10Bが作動油の吐出側となる。
【0021】
油圧モータ20は、走行用油圧ポンプ10から吐出された作動油によって回転駆動される。油圧モータ20は、例えば、斜板20Sを有し、斜板傾転角を変更することによって容量を変更することのできる可変容量型の油圧モータである。油圧モータ20は、固定容量型の油圧モータであってもよい。油圧モータ20は、その出力軸20aがトランスファ20bを介して駆動輪2aに接続されている。油圧モータ20は、トランスファ20bを介して駆動輪2aを回転駆動することで、フォークリフト1を走行させることができる。
【0022】
油圧モータ20は、走行用油圧ポンプ10からの作動油の供給方向に応じて回転方向を切り替えることができる。油圧モータ20の回転方向が切り替えられることにより、フォークリフト1は前進又は後進することができる。以下の説明においては、便宜上、油圧供給管路10aから油圧モータ20に作動油が供給された場合にフォークリフト1が前進し、油圧供給管路10bから油圧モータ20に作動油が供給された場合にフォークリフト1が後進するものとする。
【0023】
フォークリフト1は、ポンプ容量設定ユニット11、モータ容量設定ユニット21及びチャージポンプ15を有する。ポンプ容量設定ユニット11は、走行用油圧ポンプ10に設けられる。ポンプ容量設定ユニット11は、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12、後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13及びポンプ容量制御シリンダ14を備える。ポンプ容量設定ユニット11は、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12及び後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に、後述する制御装置30から指令信号が与えられる。ポンプ容量設定ユニット11は、制御装置30から与えられた指令信号に応じてポンプ容量制御シリンダ14が作動し、走行用油圧ポンプ10の斜板傾転角が変化することによって、走行用油圧ポンプ10の容量が変更される。このように、ポンプ容量設定ユニット11は、作動油によって操作機構、すなわち走行用油圧ポンプ10の斜板10Sを作動させる駆動装置である。
【0024】
ポンプ容量制御シリンダ14は、シリンダケース14C内にピストン14Aが収納されている。ピストン14Aは、シリンダケース14Cとピストン14Aとの間の空間に作動油が供給されることによって、シリンダケース14C内を往復する。ピストン14Aによって、シリンダケース14Cは、第1作動油室14Cfと第2作動油室14Crとに区画される。第1作動油室14Cfには前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12が接続され、第2作動油室14Crには後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13が接続される。第1作動油室14Cfは、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12から作動油が供給され、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12に作動油を排出する。第2作動油室14Crは、後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13から作動油が供給され、後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に作動油を排出する。
【0025】
第1作動油室14Cfに前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12から作動油が供給されると、ピストン14Aは第2作動油室14Cr側に移動して、走行用油圧ポンプ10の斜板10Sを開く。また、第2作動油室14Crに後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13から作動油が供給されると、ピストン14Aは第1作動油室14Cf側に移動して、走行用油圧ポンプ10の斜板10Sを開く。ポンプ容量制御シリンダ14は、斜板傾転角が0の状態において、ピストン14Aが中立位置に保持されている。このため、エンジン4が回転しても、走行用油圧ポンプ10から主油圧回路100の油圧供給管路10a又は油圧供給管路10bへ吐出される作動油の量は0である。
【0026】
走行用油圧ポンプ10の斜板傾転角が0の状態から、例えば、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12に対して制御装置30から走行用油圧ポンプ10の容量を増大する旨の指令信号が与えられるとする。すると、この指令信号に応じて前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12からポンプ容量制御シリンダ14にポンプ制御圧力が与えられる。その結果、ピストン14Aは、図2において左側に移動する。ポンプ容量制御シリンダ14のピストン14Aが図2において左側に移動すると、この動きに連動して走行用油圧ポンプ10の斜板10Sは、油圧供給管路10aに作動油を吐出する方向へ向けて傾く。
【0027】
前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12からのポンプ制御圧力、すなわち作動油の圧力が増大するにしたがって、ピストン14Aの移動量が大きくなる。このため、走行用油圧ポンプ10での斜板10Sの傾転角は、その変化量も大きなものとなる。つまり、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12に対して制御装置30から指令信号(走行指令)Ipfが与えられると、この指令信号Ipfに応じたポンプ制御圧力が前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12からポンプ容量制御シリンダ14に与えられる。前述したポンプ制御圧力によって、ポンプ容量制御シリンダ14が作動することにより、走行用油圧ポンプ10の斜板10Sが油圧供給管路10aに対して所定量の作動油を吐出できるように傾く。この結果、エンジン4が回転すれば、走行用油圧ポンプ10から油圧供給管路10aに作動油が吐出されて、油圧モータ20は前進方向に回転する。
【0028】
前述した状態において、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12に制御装置30から走行用油圧ポンプ10の容量を減少する旨の指令信号Ipfが与えられると、この指令信号Ipfに応じて前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12からポンプ容量制御シリンダ14に供給されるポンプ制御圧力が減少する。このため、ポンプ容量制御シリンダ14のピストン14Aは、中立位置に向かって移動する。この結果、走行用油圧ポンプ10の斜板傾転角が減少し、走行用油圧ポンプ10から油圧供給管路10aへの作動油の吐出量が減少する。
【0029】
制御装置30が、後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に対して走行用油圧ポンプ10の容量を増大する旨の指令信号Iprを与えると、この指令信号Iprに応じて後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13からポンプ容量制御シリンダ14に対してポンプ制御圧力、すなわち作動油の圧力が与えられる。すると、ピストン14Aは、図2において右側に移動する。ポンプ容量制御シリンダ14のピストン14Aが、図2において右側に移動すると、これに連動して走行用油圧ポンプ10の斜板10Sが油圧供給管路10bに対して作動油を吐出する方向へ向かって傾転する。
【0030】
後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13から供給されるポンプ制御圧力が増大するにしたがってピストン14Aの移動量が大きくなるため、走行用油圧ポンプ10の斜板傾転角の変化量は大きくなる。つまり、後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に対して制御装置30から指令信号Iprが与えられると、この指令信号Iprに応じたポンプ制御圧力が後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13からポンプ容量制御シリンダ14に与えられる。そして、ポンプ容量制御シリンダ14の作動により走行用油圧ポンプ10の斜板10Sが油圧供給管路10bに対して所望量の作動油を吐出できるように傾く。この結果、エンジン4が回転すると、走行用油圧ポンプ10から油圧供給管路10bに作動油が吐出されて、油圧モータ20は、後進方向に回転する。
【0031】
後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に対して制御装置30から走行用油圧ポンプ10の容量を減少する旨の指令信号Iprが与えられると、この指令信号Iprに応じて後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13からポンプ容量制御シリンダ14に供給するポンプ制御圧力が減少し、ピストン14Aが中立位置に向けて移動する。この結果、走行用油圧ポンプ10の斜板傾転角が減少するので、走行用油圧ポンプ10から油圧供給管路10bへ吐出される作動油の量が減少する。
【0032】
前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12からのポンプ制御圧力は、例えば、第1作動油室14Cf内の作動油の圧力とすることができる。後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13からのポンプ制御圧力すなわち作動油の圧力は、第2作動油室14Cr内の作動油の圧力とすることができる。第1作動油室14Cf内の作動油の圧力Pefは、圧力検出装置である第1圧力センサ12sにより検出され、第2作動油室14Cr内の作動油の圧力Perは、圧力検出装置である第2圧力センサ13sにより検出される。第1圧力センサ12s及び第2圧力センサ13sの検出値は、制御装置30に入力される。
【0033】
モータ容量設定ユニット21は、油圧モータ20に設けられる。モータ容量設定ユニット21は、モータ電磁比例制御バルブ22、モータ用シリンダ制御バルブ23及びモータ容量制御シリンダ24を備えている。モータ容量設定ユニット21では、モータ電磁比例制御バルブ22に制御装置30から指令信号が与えられると、モータ電磁比例制御バルブ22からモータ用シリンダ制御バルブ23にモータ制御圧力が供給されて、モータ容量制御シリンダ24が作動する。モータ容量制御シリンダ24が作動すると、モータ容量制御シリンダ24の動きに連動して油圧モータ20の斜板傾転角が変化することになる。このため、制御装置30からの指令信号に応じて油圧モータ20の容量が変更されることになる。具体的には、モータ容量設定ユニット21は、モータ電磁比例制御バルブ22から供給されるモータ制御圧力が増加するにしたがって、油圧モータ20の斜板傾転角が減少するようになっている。
【0034】
チャージポンプ15は、エンジン4によって駆動される。チャージポンプ15は、前述した前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12及び後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13を介してポンプ容量制御シリンダ14にポンプ制御圧力を供給する。チャージポンプ15は、モータ電磁比例制御バルブ22を介してモータ用シリンダ制御バルブ23にモータ制御圧力を供給する機能を有している。
【0035】
本実施形態において、エンジン4は、走行用油圧ポンプ10の他に、作業機油圧ポンプ16を駆動する。この作業機油圧ポンプ16は、作業機5を駆動するための作業用アクチュエータであるリフトシリンダ7及びチルトシリンダ8に、バルブを介して作動油を供給する。
【0036】
フォークリフト1は、インチングポテンショメータ(ブレーキポテンショメータ)40、アクセルポテンショメータ41、前後進レバースイッチ42、エンジン回転センサ43、車速センサ46、圧力センサ47A、47B、圧力センサ48及び温度センサ49を備えている。
【0037】
インチングポテンショメータ40は、インチングペダル(ブレーキペダル)40aが操作された場合に、その操作量を検出して出力する。インチングペダル40aの操作量は、インチング操作量Isである。インチングポテンショメータ40が出力するインチング操作量Isは、制御装置30に入力される。以下において、インチング操作量IsをインチングストロークIsと称することもある。
【0038】
アクセルポテンショメータ41は、アクセルペダル41aが操作された場合に、アクセルペダル41aの操作量Aopを出力するものである。アクセルペダル41aの操作量Aopは、アクセル開度Aopともいう。アクセルポテンショメータ41が出力するアクセル開度Aopは、制御装置30に入力される。
【0039】
前後進レバースイッチ42は、フォークリフト1の進行方向を前進又は後進に切り替えるための進行方向検出装置である。本実施形態では、運転席から選択操作できる位置に設けた前後進レバー42aの操作により、前進と、中立と、後進との3つの進行方向を選択して、フォークリフト1の前進と後進とを切り替えることができる前後進レバースイッチ42を適用している。前後進レバー42aは、フォークリフト1の進行方向を前進又は後進に切り替えるための進行方向切替装置である。前後進レバースイッチ42によって選択されたフォークリフト1の進行方向を示す情報は、進行方向指令値DRとして前後進レバースイッチ42から制御装置30に与えられる。進行方向指令値DRは、Fが前進、Nが中立、Rが後進を示す。前後進レバースイッチ42が選択するフォークリフト1の進行方向は、これからフォークリフト1が進行する方向と、フォークリフト1が実際に進行している方向との両方を含む。
【0040】
エンジン回転センサ43は、エンジン4の実際の回転速度を検出するものである。エンジン回転センサ43によって検出されたエンジン4の回転速度は、実際のエンジン4の回転速度Nrである。エンジン4の回転速度Nrを示す情報は、制御装置30に入力される。エンジン4の回転速度は、単位時間あたりにおけるエンジン4の出力軸4Sの回転数である。車速センサ46は、フォークリフト1が走行するときの速度、すなわち車速Vcを検出する装置である。
【0041】
圧力センサ47Aは、油圧供給管路10aに設けられて、油圧供給管路10a内の作動油の圧力を検出する。圧力センサ47Bは、油圧供給管路10bに設けられて、油圧供給管路10b内の作動油の圧力を検出する。圧力センサ47Aが検出する圧力は、走行用油圧ポンプ10のAポート10A内における作動油の圧力に相当する。圧力センサ47Bが検出する圧力は、走行用油圧ポンプ10のBポート10B内における作動油の圧力に相当する。制御装置30は、圧力センサ47A及び圧力センサ47Bの検出値を取得し、本実施形態に係る作業車両の制御方法に用いる。圧力センサ48は、リフトシリンダ7内のリフト圧力、すなわちリフトシリンダ7内の作動油の圧力を検出するリフト圧力検出装置である。温度センサ49は、HST内の作動油の温度を検出する温度検出装置である。
【0042】
制御装置30は、処理部30Cと記憶部30Mとを含む。制御装置30は、例えば、コンピュータを備え、フォークリフト1の制御に関する各種の処理を実行する装置である。処理部30Cは、例えば、CPU(Central Processing Unit)とメモリとを組合せた装置である。処理部30Cは、記憶部30Mに記憶されている、主油圧回路100を制御するためのコンピュータプログラムを読み込んでこれに記述されている命令を実行することにより、主油圧回路100の動作を制御する。記憶部30Mは、前述したコンピュータプログラム及び主油圧回路100の制御に必要なデータ等を記憶している。記憶部30Mは、例えば、ROM(Read Only Memory)、ストレージデバイス又はこれらを組合せた装置である。
【0043】
制御装置30には、インチングポテンショメータ40、アクセルポテンショメータ41、前後進レバースイッチ42、エンジン回転センサ43、車速センサ46及び圧力センサ47A、47Bといった各種センサ類が電気的に接続されている。制御装置30は、これらの各種センサ類からの入力信号に基づいて、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12、後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13の指令信号を生成し、かつ生成した指令信号をそれぞれの電磁比例制御バルブ12、13、22に与える。
【0044】
<スイッチバック動作>
図2に示される制御装置30は、フォークリフト1がスイッチバック動作を実行するときに本実施形態に係る作業車両の制御方法を実行する。スイッチバック動作とは、フォークリフト1の実際の進行方向と、進行方向指令値DRが規定する進行方向とが相違する場合におけるフォークリフト1の動作である。例えば、オペレータが図1に示すアクセルペダル41aを踏み、かつ前後進レバー42aを前進Fとしてフォークリフト1を前進させている状態で、前後進レバー42aを後進Rに切り替えたとき等の動作がスイッチバック動作である。
【0045】
図3は、スイッチバック動作の一例を示す図である。例えば、フォークリフト1が荷物PKを積載して後進(進行方向指令値DR=B)しているときの、あるタイミングで、オペレータが前後進レバー42aを後進から前進(進行方向指令値DR=F)に切り替える。すると、フォークリフト1は前進を開始する。このような動作がスイッチバック動作の一例である。
【0046】
<制御装置30の制御ブロック>
図4は、制御装置30の制御ブロック図である。図5は、反転操作検出時情報である反転操作検出時車速と判定情報である判定車速との関係が記述されたテーブル50の一例である。制御装置30、より具体的には処理部30Cは、フォークリフト1のスイッチバック動作時に、本実施形態に係る作業車両の制御方法を実行する。制御装置30の処理部30Cは、判定情報演算部31Aと、走行指令演算部31Bとを含む。
【0047】
制御装置30は、フォークリフト1の走行中に、スイッチバック動作を検出したら、スイッチバック動作が検出されたときの走行状態を表す反転操作検出時情報から判定情報を求める。例えば、フォークリフト1の進行方向を反転させるための前後進レバー42aの反転操作が前後進レバースイッチ42に検出されたときを、スイッチバック動作が検出されたタイミングとすることができる。判定情報は、判定情報演算部31Aによって求められる。
【0048】
次に、制御装置30、より具体的には走行指令演算部31Bは、スイッチバック動作の検出時から、スイッチバック動作の検出時におけるフォークリフト1の進行方向にフォークリフト1を走行させるための指令信号である第1走行指令を減少させ、かつスイッチバック動作の検出時におけるフォークリフト1の進行方向とは反対方向にフォークリフト1を走行させるための指令信号である第2走行指令を増加させる。その後、制御装置30は、フォークリフト1の走行状態を表す車速情報が判定情報になったときに、第1走行指令を0にする。
【0049】
前述したように、判定情報演算部31Aは、判定情報を求める。判定情報は、走行指令演算部31Bが、第1走行指令を0にするタイミングを判定するための情報であり、反転操作検出時情報から求められる。本実施形態において、反転操作検出時情報は、フォークリフト1のスイッチバック動作が検出されたときの車速Vcaである。以下において、反転操作検出時情報を、適宜反転操作検出時車速Vcaと称する。本実施形態において、判定情報は、反転操作検出時車速Vcaに対応して予め定められた速度Vchである。以下において、速度Vchを、適宜判定車速Vchと称する。
【0050】
本実施形態において、反転操作検出時車速Vcaと判定車速Vchとの関係は、テーブル50に記述されている。テーブル50は、図2に示す制御装置30の記憶部30Mに記憶されている。判定情報演算部31Aは、本実施形態に係る作業車両の制御方法を実行する場合、例えば、記憶部30Mからテーブル50を読み出し、これを参照して、車速センサ46から取得した反転操作検出時車速Vcaに対応する判定車速Vchを求める。
【0051】
図5に示されるように、テーブル50は、反転操作検出時情報、すなわち反転操作検出時車速Vcaが0からVca1、Vca2、Vca3の順に大きくなっている。判定情報、すなわち判定車速Vchは、反転操作検出時車速Vcaに対応してVch0からVch1、Vch2、Vch3の順に大きくなっている。このようにすることで、フォークリフト1の反転操作検出時車速Vcaの変化に応じて判定車速Vchを適切に変化させることができる。その結果、制御装置30は、スイッチバック動作開始時におけるフォークリフト1の車速Vcが異なっても、オペレータに与える違和感が少ないタイミングで、フォークリフト1の進行方向を反転させることができる。本実施形態において、判定車速Vchは、反転操作検出時車速Vca=0よりも大きく、かつ反転操作検出時車速Vca1よりも小さい。判定車速Vchは、テーブル50以外の計算式等によって規定されてもよい。
【0052】
本実施形態において、前述したように、反転操作検出時情報及び判定情報は速度であるが、これに限定されるものではない。例えば、図2に示す走行用油圧ポンプ10の吸収トルクを反転操作検出時情報及び判定情報としてもよい。この場合、反転操作検出時情報は、制御装置30が生成する吸収トルクの指令値を用いる。判定情報は、反転操作検出時情報に対応して定められたトルクであり、実験又はコンピュータシミュレーション等によって定められる。反転操作検出時情報が大きくなるにしたがって判定情報が大きくなる点は、反転操作検出時情報及び判定情報に速度が用いられる場合と同様である。次に、走行指令演算部31Bについて説明する。
【0053】
走行指令演算部31Bは、図2に示されるポンプ容量設定ユニット11が備える前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12及び後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13を制御する。この制御により、走行指令演算部31Bは、走行用油圧ポンプ10の斜板10Sの斜板傾転角を変更して、走行用油圧ポンプ10の容量の変更及び作動油の吐出側と吸入側との切替を実行する。走行用油圧ポンプ10の斜板10Sの斜板傾転角、すなわち走行用油圧ポンプ10の操作機構の作動量は、走行指令と、閉回路である主油圧回路100の負荷とで定まる。これは、走行用油圧ポンプ10の斜板10Sがサーボ機構を用いないで制御されること、すなわち走行用油圧ポンプ10はサーボレスポンプであることを意味する。
【0054】
フォークリフト1がスイッチバック動作を開始した場合、走行指令演算部31Bは、まず第1走行指令を減少させ、かつ第2走行指令を増加させる。次に、走行指令演算部31Bは、フォークリフト1の車速Vcが判定車速Vchになったタイミングで、第1走行指令を0にする。反転操作検出時情報及び判定情報を速度以外、例えば、走行用油圧ポンプ10の吸収トルクとした場合、走行指令演算部31Bは、フォークリフト1が備える走行用油圧ポンプ10の吸収トルクが、反転操作検出時の吸収トルクから求められる判定吸収トルクになったタイミングで、第1走行指令を0にする。この場合、反転操作検出時の吸収トルクが大きくなるにしたがって、判定吸収トルクも大きくなるように設定されている。
【0055】
第1走行指令は、フォークリフト1を第1の進行方向に走行させるための走行指令である。第1の進行方向は、制御装置30の走行指令演算部31Bがフォークリフト1のスイッチバック動作を検出したときにおけるフォークリフト1の進行方向である。例えば、フォークリフト1が前進しているときに前後進レバー42aが前進から後進に切り替えられた場合、第1の進行方向はフォークリフト1が前進する方向である。この場合、第1走行指令は、フォークリフト1を前進させるための走行指令になる。フォークリフト1が後進しているときに前後進レバー42aが後進から前進に切り替えられた場合、第1の進行方向はフォークリフト1が後進する方向である。この場合、第1走行指令は、フォークリフト1を後進させるための走行指令になる。このように、第1走行指令は、フォークリフト1がスイッチバック動作を開始するときにおけるフォークリフト1の進行方向によって異なる。
【0056】
第2走行指令は、フォークリフト1を第2の進行方向に走行させるための指令である。第2の進行方向は、第1の進行方向とは反対方向である。例えば、フォークリフト1が前進しているときに前後進レバー42aが前進から後進に切り替えられた場合、スイッチバック動作検出時の進行方向とは反対方向は、フォークリフト1が後進する方向である。この場合、第2走行指令は、フォークリフト1を後進させるための走行指令になる。フォークリフト1が後進しているときに前後進レバー42aが後進から前進に切り替えられた場合、スイッチバック動作検出時の進行方向とは反対方向は、フォークリフト1が前進する方向である。この場合、第2走行指令は、フォークリフト1を前進させるための走行指令になる。このように、第2走行指令は、フォークリフト1がスイッチバック動作を開始するときにおけるフォークリフト1の進行方向によって異なる。
【0057】
走行指令演算部31Bが本実施形態に係る作業車両の制御方法を実行することにより、フォークリフト1が高速走行しているときのスイッチバック動作においては、前後進レバー42aの反転操作時からフォークリフト1の進行方向が反転するまでのタイムラグを低減できる。また、フォークリフト1が低速走行しているときのスイッチバック動作においては、フォークリフト1の進行方向が反転する際のショックが低減されて滑らかに進行方向が切り替わる。次に、走行指令演算部31Bをより詳細に説明する。
【0058】
図4に示されるように、走行指令演算部31Bは、前進走行指令演算部32と、後進走行指令演算部33とを含む。前進走行指令演算部32は、ポンプ容量設定ユニット11の前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12を制御する。後進走行指令演算部33は、ポンプ容量設定ユニット11の後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13を制御する。
【0059】
制御装置30は、図2に示すアクセルペダル41aの操作量等から、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12に与える走行指令ipf及び後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に与える走行指令iprの少なくとも一方を生成する。走行指令ipf及び走行指令iprは、本実施形態においてはいずれも電流であるが、電流に限定されず、例えば、電圧等であってもよい。
【0060】
前進走行指令演算部32は、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12に、フォークリフト1を前進させるための走行指令(以下、適宜前進走行指令と称する)Ipfを出力する。後進走行指令演算部33は、後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に、フォークリフト1を後進させるための走行指令(以下、適宜後進走行指令と称する)Iprを出力する。走行指令演算部31Bがフォークリフト1のスイッチバック動作中に第1走行指令を0にしたときを除いて、前進走行指令Ipfは制御装置30が生成した走行指令ipfと同一であり、後進走行指令Iprは制御装置30が生成した走行指令iprと同一である。
【0061】
フォークリフト1が前進しているとき、制御装置30は、アクセルペダル41aの操作量等から、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12に与える走行指令ipfを生成し、後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に与える走行指令iprを0とする。このため、前進走行指令演算部32は、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12に走行指令ipfを前進走行指令Ipfとして出力し、後進走行指令演算部33は、後進走行指令Ipr=0を後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に出力する。
【0062】
フォークリフト1が後進しているとき、制御装置30は、アクセルペダル41aの操作量等から、後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に与える走行指令iprを生成し、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12に与える走行指令ipfを0とする。このため、前進走行指令演算部32は、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12に前進走行指令Ipf=0を出力し、後進走行指令演算部33は、走行指令iprを後進走行指令Iprとして後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に出力する。
【0063】
前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12は、前進走行指令Ipfの電流の大きさに応じた作動油の油圧、すなわちポンプ制御圧力を発生させてポンプ容量制御シリンダ14を動作させる。後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13は、後進走行指令Iprの電流の大きさに応じた作動油の油圧、すなわちポンプ制御圧力を発生させてポンプ容量制御シリンダ14を動作させる。ポンプ容量制御シリンダ14が動作することで、走行用油圧ポンプ10の斜板10Sの斜板傾転角が変更されるので、走行用油圧ポンプ10は、前進走行指令Ipf及び後進走行指令Iprの少なくとも一方に応じた流量で、作動油を油圧モータ20に吐出する。
【0064】
フォークリフト1が前進している状態でスイッチバック動作を開始すると、制御装置30は、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12に与える走行指令ipfを時間の経過とともに減少させ、後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に与える走行指令iprを時間の経過とともに増加させる。フォークリフト1が後進している状態でスイッチバック動作を開始すると、制御装置30は、後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に与える走行指令iprを時間の経過とともに減少させ、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12に与える走行指令ipfを時間の経過とともに増加させる。
【0065】
前進走行指令演算部32は、切替判定部32aと、スイッチバック判定部32bと、車速判定部32cと、Aポート圧力判定部32dと、Bポート圧力判定部32eと、ポンプ制御圧力判定部32fと、第1論理積演算部32gと、第2論理積演算部32hと、論理和演算部32iと、第3論理積演算部32jと、出力選択部32kとを処理要素として備える。後進走行指令演算部33は、切替判定部33aと、スイッチバック判定部33bと、車速判定部33cと、Aポート圧力判定部33dと、Bポート圧力判定部33eと、ポンプ制御圧力判定部33fと、第1論理積演算部33gと、第2論理積演算部33hと、論理和演算部33iと、第3論理和演算部33jと、出力選択部33kとを処理要素として備える。前進走行指令演算部32及び後進走行指令演算部33が備える処理要素は、ソフトウェアで実現されてもよいし、ハードウェアで実現されてもよい。前進走行指令演算部32及び後進走行指令演算部33が備える処理要素は、前進走行指令演算部32と後進走行指令演算部33との間で共通の機能を有するものがあるので、共通の機能を有する処理要素についてはまとめて説明する。
【0066】
切替判定部32a、33aは、スイッチバック動作が検出された後におけるフォークリフト1の車速Vcが、判定車速Vch以下になったか否かを判定する。フォークリフト1の車速Vcが判定車速Vchよりも大きい場合、切替判定部32a、33aはOFF信号を出力し、フォークリフト1の車速Vcが判定車速Vch以下になった場合、切替判定部32a、33aはON信号を出力する。OFF信号は、例えば電圧が0ボルトの信号であり、ON信号は、例えば電圧が5ボルトの信号である。
【0067】
スイッチバック判定部32b、33bは、フォークリフト1のスイッチバック動作を検出していないときにOFF信号を出力し、フォークリフト1のスイッチバック動作を検出たときにON信号を出力する。前述したように、フォークリフト1の走行中、かつ前後進レバー42aの反転操作が前後進レバースイッチ42に検出されたときに、フォークリフト1のスイッチバック動作が検出されたとすることができる。
【0068】
スイッチバック判定部32b、33bには、図2に示す前後進レバースイッチ42からの進行方向指令値DRが入力される。前進走行指令演算部32のスイッチバック判定部32bは、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12に与えられる走行指令ipfが制御装置30で生成されている場合に、前後進レバースイッチ42からの進行方向指令値DRがFからRに切り替わると、フォークリフト1のスイッチバック動作を検出したとしてON信号を出力する。この場合以外、前進走行指令演算部32のスイッチバック判定部32bはOFF信号を出力する。
【0069】
後進走行指令演算部33のスイッチバック判定部33bは、後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に与えられる走行指令iprが制御装置30で生成されている場合に、前後進レバースイッチ42からの進行方向指令値DRがRからFに切り替わると、フォークリフト1のスイッチバック動作を検出したとしてON信号を出力する。この場合以外、後進走行指令演算部33のスイッチバック判定部33bはOFF信号を出力する。
【0070】
車速判定部32c、33c、Aポート圧力判定部32d、33d、Bポート圧力判定部32e、33e及びポンプ制御圧力判定部32f、33fは、いずれも図2に示される車速センサ46に何らかの異常が発生したときに、フォークリフト1のスイッチバック時の動作を制御するために用いられる。車速判定部32c、33cは、車速センサ46によって検出されたフォークリフト1の車速Vcが予め定められた閾値以下であるか否かを判定する。車速Vcが予め定められた閾値よりも大きい場合、車速判定部32c、33cはOFF信号を出力する。車速Vcが予め定められた閾値以下である場合、車速判定部32c、33cはON信号を出力する。
【0071】
車速センサ46に何らかの異常が発生すると、車速センサ46は、車速Vc=0を出力するので、前述した閾値は、車速センサ46の異常を検出できる値とする。例えば、予め定められた閾値は、例えば、0.1km/hとすることができるが、これに限定されるものではない。
【0072】
Aポート圧力判定部32d、33dは、図2に示す走行用油圧ポンプ10のAポート10A内における作動油の圧力(以下、適宜Aポート圧力と称する)Paが予め定められた閾値以下であるか否かを判定する。Aポート圧力Paは、圧力センサ47Aによって検出される。Aポート圧力Paが予め定められた閾値よりも大きい場合、Aポート圧力判定部32d、33dはOFF信号を出力する。Aポート圧力Paが予め定められた閾値以下である場合、Aポート圧力判定部32d、33dはON信号を出力する。
【0073】
Bポート圧力判定部32e、33eは、図2に示す走行用油圧ポンプ10のBポート10B内における作動油の圧力(以下、適宜Bポート圧力と称する)Pbが予め定められた閾値以下であるか否かを判定する。Bポート圧力Pbは、圧力センサ47Bによって検出される。Bポート圧力Pbが予め定められた閾値よりも大きい場合、Bポート圧力判定部32e、33eはOFF信号を出力する。Bポート圧力Pbが予め定められた閾値以下である場合、Bポート圧力判定部32e、33eはON信号を出力する。
【0074】
フォークリフト1がスイッチバック動作中において、Aポート圧力Pa及びBポート圧力Pbがともに小さくなると、第1走行指令が0にならない状態が継続する結果、フォークリフト1の進行方向が切り替わらない状態が継続する可能性がある。このため、Aポート圧力Pa及びBポート圧力Pbが予め定められた閾値以下になった場合には、Aポート圧力判定部32d、33d及びBポート圧力判定部32e、33eからON信号を出力させて、フォークリフト1の進行方向が速やかに切り替わるようにする。
【0075】
前進走行指令演算部32のポンプ制御圧力判定部32fは、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12からのポンプ制御圧力(以下、適宜前進側制御圧力と称する)Pefが予め定められた閾値以下であるか否かを判定する。前進側制御圧力Pefは、図2に示される第1圧力センサ12sによって検出される。前進側制御圧力Pefが予め定められた閾値よりも大きい場合、ポンプ制御圧力判定部32fはOFF信号を出力する。前進側制御圧力Pefが予め定められた閾値以下である場合、ポンプ制御圧力判定部32fはON信号を出力する。
【0076】
後進走行指令演算部33のポンプ制御圧力判定部33fは、後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13からのポンプ制御圧力(以下、適宜後進側制御圧力と称する)Perが予め定められた閾値以下であるか否かを判定する。後進側制御圧力Perは、図2に示される第2圧力センサ13sによって検出される。後進側制御圧力Perが予め定められた閾値よりも大きい場合、ポンプ制御圧力判定部32fはOFF信号を出力する。後進側制御圧力Perが予め定められた閾値以下である場合、ポンプ制御圧力判定部33fはON信号を出力する。
【0077】
フォークリフト1のスイッチバック動作が検出されたタイミングにおいて、車速Vcが高い場合にAポート圧力Pa及びBポート圧力Pbがともに小さくなることがある。このため、車速センサ46に異常が発生している場合において、Aポート圧力判定部32d、33d及びBポート圧力判定部32e、33eの判定結果を用いて第1走行指令を0にすると、ショックが発生する可能性がある。このため、フォークリフト1の車速Vcが十分に小さくなってから第1走行指令を0にするために、ポンプ制御圧力判定部32f、33fの判定を加えている。予め定められた閾値は、例えば、フォークリフト1が無負荷かつ停止に近い速度(本実施形態では0.6km/hであるがこれには限定されない)で走行しているときにおける前進側制御圧力Pef又は後進側制御圧力Perとすることができる。ポンプ制御圧力判定部32f、33fの判定により、車速センサ46に異常が発生している場合のスイッチバック動作において、フォークリフト1に発生するショックを低減できる。
【0078】
第1論理積演算部32g、33gは、車速監視フラグSvcと、切替判定部32a、32bの出力とが入力される。車速監視フラグSvcは、車速センサ46が正常である場合にはON信号であり、車速センサ46に異常が発生するとOFF信号になる。このため、第1論理積演算部32g、33gは、車速センサ46が正常であり、かつ車速Vcが判定車速Vch以下になった場合のみに、ON信号を出力する。車速センサ46が正常であっても車速Vcが判定車速Vchよりも大きい場合、車速センサ46が異常である場合、第1論理積演算部32g、33gはOFF信号を出力する。第1論理積演算部32g、33gにより、車速センサ46が正常である場合に、第1走行指令を0にする条件が成立したか否かを検出することができる。
【0079】
第2論理積演算部32h、33hは、車速判定部32cの出力と、Aポート圧力判定部32dの出力と、Bポート圧力判定部32eの出力と、ポンプ制御圧力判定部32fの出力とが入力される。第2論理積演算部32h、33hは、これらの出力がすべてON信号である場合のみにON信号を出力し、これらの出力のうち少なくとも一つがOFF信号である場合にOFF信号を出力する。第2論理積演算部32h、33hにより、車速センサ46に異常が発生したときに、第1走行指令を0にする条件が成立したか否かを検出することができる。
【0080】
論理和演算部32i、33iは、第1論理積演算部32g、33gの出力と、第2論理積演算部32h、33hの出力とが入力される。論理和演算部32i、33iは、第1論理積演算部32g、33gの出力と、第2論理積演算部32h、33hの出力とのうち少なくとも一方がON信号である場合にON信号を出力し、両方がOFF信号である場合にOFF信号を出力する。論理和演算部32i、33iにより、車速センサ46が正常であるときであっても車速センサ46に異常が発生したときであっても、第1走行指令を0にする条件が成立したことを判定することができる。
【0081】
第3論理積演算部32j、33jは、論理和演算部32i、33iの出力と、スイッチバック判定部32bの出力とが入力される。第3論理積演算部32j、33jは、スイッチバック判定部32bの出力がON信号、かつ論理和演算部32i、33iの出力がON信号である場合のみ、ON信号を出力し、この場合以外はOFF信号を出力する。つまり、論理和演算部32iは、スイッチバック判定部32bの出力がON信号である場合、すなわちスイッチバック動作が検出された場合であって、論理和演算部32i、33iの出力がON信号になった場合にのみ、ON信号を出力する。このような処理により、第3論理積演算部32j、33jは、スイッチバック動作時に第1走行指令を0にする条件が成立した場合を判定することができる。
【0082】
前進走行指令演算部32の出力選択部32kは、0又は制御装置30が生成した走行指令ipfのいずれか一方を選択して、前進走行指令Ipfとして前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12に出力する。具体的には、前進走行指令演算部32の第3論理積演算部32jの出力がOFF信号である場合、出力選択部32kは、制御装置30が生成した走行指令ipfを選択して前進走行指令Ipfとして出力する。第3論理積演算部32jの出力がON信号である場合、すなわち、スイッチバック動作中に第1走行指令を0にする条件が成立した場合に、出力選択部32kは、0を選択して前進走行指令Ipfとして出力する。
【0083】
後進走行指令演算部33の出力選択部33kは、0又は制御装置30が生成した走行指令iprのいずれか一方を選択して、後進走行指令Iprとして後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に出力する。具体的には、後進走行指令演算部33の第3論理積演算部33jの出力がOFF信号である場合、出力選択部33kは、制御装置30が生成した走行指令iprを選択して後進走行指令Iprとして出力する。第3論理積演算部33jの出力がON信号である場合、すなわち、スイッチバック動作中に第1走行指令を0にする条件が成立した場合に、出力選択部33kは、0を選択して後進走行指令Iprとして出力する。
【0084】
<処理例>
図6は、本実施形態に係る作業車両の制御方法の処理例を示すフローチャートである。本実施形態に係る作業車両の制御方法を実行するにあたり、ステップS101において、制御装置30のスイッチバック判定部32b、33bは、スイッチバック動作中か否かを判定する。スイッチバック判定部32b、33bは、進行方向指令値DRによるフォークリフト1の進行方向と、走行指令ipf又は走行指令iprによって決定される進行方向とが異なる場合にスイッチバック動作中であると判定する。また、スイッチバック判定部32b、33bは、進行方向指令値DRによるフォークリフト1の進行方向と、走行指令ipf又は走行指令iprによって決定される進行方向とが同一である場合にスイッチバック動作中ではないと判定する。
【0085】
フォークリフト1がスイッチバック動作中でない場合(ステップS101、No)、本実施形態に係る作業車両の制御方法は終了する。フォークリフト1がスイッチバック動作中である場合(ステップS101、Yes)、制御装置30は、第1走行指令を減少させ、第2走行指令を増加させる。そして、ステップS102において、制御装置30の判定情報演算部31Aは、スイッチバック動作中であると判定されたタイミングのフォークリフト1の車速Vcを車速センサ46から取得する。この車速Vcは、反転操作検出時車速Vcaである。判定情報演算部31Aは、図5に示されるテーブル50を参照して、反転操作検出時車速Vcaに対応する判定車速Vchを求める。
【0086】
次に、ステップS103に進み、スイッチバック判定部32b、33bは、スイッチバック動作中か否かを判定する。フォークリフト1がスイッチバック動作中でない場合(ステップS103、No)、本実施形態に係る作業車両の制御方法は終了する。この場合、制御装置30は、現時点におけるアクセルペダル41aの操作量等から、走行指令ipf又は走行指令iprを生成して、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12又は後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13を制御する。
【0087】
フォークリフト1がスイッチバック動作中である場合(ステップS103、Yes)、制御装置30は、処理をステップS104に進める。ステップS104において、前進走行指令演算部32の切替判定部32a又は後進走行指令演算部33の切替判定部33aは、フォークリフト1の走行状態を表す車速情報、本実施形態では車速センサ46から取得した車速Vcが判定車速Vch以下であるか否かを判定する。
【0088】
車速Vcが判定車速Vchよりも大きい場合(ステップS104、No)、制御装置30は、ステップS103に戻る。車速Vcが判定車速Vch以下である場合(ステップS104、Yes)、制御装置30は、ステップS105において、第1走行指令を0にする。例えば、フォークリフト1が前進中である場合のスイッチバック動作において、前進走行指令演算部32は前進走行指令Ipfを0にする。また、フォークリフト1が後進中である場合のスイッチバック動作において、後進走行指令演算部33は前進走行指令Iprを0にする。
【0089】
図7及び図8は、本実施形態に係る作業車両の制御方法のタイミングチャートである。図7は、フォークリフト1が高速走行しているときにスイッチバック動作に入った場合であり、図8は、フォークリフト1が低速走行しているときにスイッチバック動作に入った場合である。図7及び図8は、フォークリフト1が前進で走行しているときにスイッチバック動作に入った例を示している。
【0090】
図7及び図8の時間t=t1において、フォークリフト1のスイッチバック動作が検出されている。前述したように、第1走行指令である前進走行指令Ipfは減少し、第2走行指令である後進走行指令Iprは増加する。時間t=t1のときのフォークリフト1の車速が反転操作検出時車速Vcaである。判定車速Vchは、反転操作検出時車速Vcaよりも小さい。Qmは、図2に示す油圧モータ20の容量である。
【0091】
油圧モータ20の容量Qmを変更する指令(以下、適宜油圧モータ制御指令と称する)は、主油圧回路100内の作動油の圧力と、走行用油圧ポンプ10に対する指令信号、具体的には前進走行指令Ipf又は後進走行指令Iprとによって、積分制御で決定される。油圧モータ制御指令は、走行用油圧ポンプ10に対する指令信号が大きい、すなわち高速でフォークリフト1を走行させる場合には油圧モータ20の容量Qmを小さくして車速Vcを大きくできるように決定される。また、油圧モータ制御指令は、走行用油圧ポンプ10に対する指令信号が大きい、すなわち低速でフォークリフト1を走行させる場合には油圧モータ20の容量Qmを大きくしてトルクを大きくできるように決定される。
【0092】
時間t=t2において、フォークリフト1の車速Vcが判定車速Vch以下になっている。すると、制御装置30の前進走行指令演算部32は、この場合の第1走行指令である前進走行指令Ipfを0とし、この場合の第2走行指令である後進走行指令Iprを引き続き増加させる。図7の上段に示されるように、フォークリフト1が高速からスイッチバック動作をする場合、図7の中段に示されるように、加速度、すなわち車速Vcの時間tに対する傾きが大きくなるので、比較的早いタイミングで第1走行指令である前進走行指令Ipfを0とすることができる。その結果、前後進レバー42aを操作してからフォークリフト1が反転するまでのタイムラグを抑制して、機敏な走行を実現できる。
【0093】
図8の上段に示されるように、フォークリフト1が低速からスイッチバック動作をする場合、図8の中段に示されるように、加速度が小さくなるので、比較的遅いタイミングで第1走行指令である前進走行指令Ipfを0とすることができる。その結果、前後進レバー42aを操作してからフォークリフト1が反転する間のショックを抑制できる。フォークリフト1が低速からスイッチバック動作をする場合、車速Vcが低いために走行用油圧ポンプ10の容量は小さいので、図8の下段に示されるように油圧モータ20の容量Qmは大きくなる。この例において、スイッチバック動作中、油圧モータ20の容量Qmは最大となっている。
【0094】
このように、フォークリフト1の車速Vcが判定車速Vch以下になったタイミングで第1走行指令を0にすることにより、高速でのスイッチバック動作においては走行方向が反転するまでのタイムラグを抑制でき、低速でのスイッチバック動作においてはショックを低減できる。フォークリフト1が低速でスイッチバック動作を行う場合は、精密な動きを要求されることが多い。制御装置30は、フォークリフト1の車速Vcが判定車速Vch以下になったタイミングで第1走行指令を0とするが、低速の場合は加速度が比較的小さいので、第1走行指令が0となるタイミングは比較的遅くすることができる。その結果、制御装置30は、低速でのスイッチバック動作においてショックを効果的に抑制できるので、オペレータは、フォークリフト1に精密な動きをさせやすくなるという利点が得られる。
【0095】
本実施形態において、走行用油圧ポンプ10はサーボレスポンプであるが、サーボレスポンプは、主油圧回路100内の負荷によって斜板10Sが駆動指令と異なる、意図しない動きをすることがある。このため、サーボレスポンプは、ポンプの容量が意図しないタイミングで変化する可能性がある。スイッチバック動作においては、フォークリフト1の進行方向を反転させるために、走行用油圧ポンプ10は主油圧回路100内の作動油の圧力に逆らうように動作する必要がある。走行用油圧ポンプ10にサーボレスポンプが用いられる場合、スイッチバック動作でフォークリフト1が停止する際に走行用油圧ポンプ10の吐出側と吸入側とを素早く、かつ大きく切り替えないと、タイムラグが大きくなる。本実施形態の制御装置30は、前述したように、フォークリフト1の車速Vcが判定車速Vch以下になったタイミングで第1走行指令を0にするので、サーボレスポンプを走行用油圧ポンプ10に用いた場合であっても、タイムラグを低減できる。
【0096】
本実施形態において、反転操作検出時情報及び判定情報は速度である。フォークリフト1の速度、すなわち車速は、走行用油圧ポンプ10の斜板10Sの斜板傾転角との相関が高いため、フォークリフト1の車速によって、走行用油圧ポンプ10の斜板10Sの斜板傾転角を精度よく推測できる。このため、反転操作検出時情報及び判定情報をフォークリフト1の速度とすることにより、制御対象である走行用油圧ポンプ10の斜板10Sを精度よく制御して、適切なタイミングで第1走行指令を0にすることができる。
【0097】
以上、本実施形態を説明したが、前述した内容により本実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組合せることが可能である。さらに、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。作業車両は、ホイールを備えた作業車両であれば、例えばホイールローダーであってもよく、フォークリフト1には限定されない。
【符号の説明】
【0098】
1 フォークリフト
2a 駆動輪
3 車体
4 エンジン
6 フォーク
10 走行用油圧ポンプ
10A Aポート
10B Bポート
10S 斜板
10a、10b 油圧供給管路
11 ポンプ容量設定ユニット
12 前進用ポンプ電磁比例制御バルブ
13 後進用ポンプ電磁比例制御バルブ
14 ポンプ容量制御シリンダ
14A ピストン
20 油圧モータ
20S 斜板
21 モータ容量設定ユニット
30 制御装置
30C 処理部
30M 記憶部
31A 判定情報演算部
31B 走行指令演算部
32 前進走行指令演算部
33 後進走行指令演算部
32a、33a 切替判定部
32b、33b スイッチバック判定部
32c、33c 車速判定部
32d、33d Aポート圧力判定部
32e、33e Bポート圧力判定部
32f、33f ポンプ制御圧力判定部
32g、33g 第1論理積演算部
32h、33h 第2論理積演算部
32i、33i 論理和演算部
32j、33j 第3論理積演算部
32k、33k 出力選択部
42 前後進レバースイッチ
42a 前後進レバー
46 車速センサ
47A、47B、48 圧力センサ
49 温度センサ
50 テーブル
100 主油圧回路
DR 進行方向指令値
Ipf 前進走行指令
Ipr 後進走行指令
ipf、ipr 走行指令
Pa Aポート圧力
Pb Bポート圧力
Pef 前進側制御圧力
Per 後進側制御圧力
Vca 反転操作検出時車速
Vch 判定車速
【要約】
作業車両の走行中に、前記作業車両の進行方向を反転させるための進行方向切替装置の反転操作を進行方向検出装置が検出したときにおける前記作業車両の走行状態を表す反転操作検出時情報から判定情報を求め、前記反転操作の検出時から、前記反転操作の検出時における前記作業車両の進行方向に前記作業車両を走行させるための第1走行指令を減少させ、かつ前記反転操作の検出時における前記作業車両の進行方向とは反対方向に前記作業車両を走行させるための第2走行指令を増加させ、前記作業車両の走行状態を表す車速情報が、前記判定情報になったときに、前記第1走行指令を0にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8