【文献】
Antimicrob.Agents Chemother.,Vol.50,No.4(2006.Apr.)p.1480-1488
【文献】
Antimicrob.Agents Chemother.,Vol.50,No.11(Epub:2006.Aug.28)p.3833-3838
【文献】
Antimicrob.Agents Chemother.,Vol.50,No.11(2006.Nov.)p.3651-3657
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抗菌性ペプチドおよび/または検出可能な作用物質に連結させた、S. ミュータンス(S. mutans)に結合する標的化ペプチドを含む組成物であって、該標的化ペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列TFFRLFNR (SEQ ID NO:5)を含みかつ最大16アミノ酸配列TFFRLFNRSFTQALGK (SEQ ID NO:2)の長さである能力刺激ペプチド(CSP)の断片からなり、かつ、前記検出可能な作用物質が、放射性同位体、蛍光剤、および酵素-基質剤からなる群より選択される、前記組成物。
標的化ペプチドがリンカーペプチドの一端に連結され、かつリンカーペプチドのもう一端が前記抗菌性ペプチドに連結される、請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物。
S. ミュータンスを選択的に殺処理するための薬剤の製造における、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物の使用。
前記薬剤がバイオフィルムにおいてS. ミュータンスを選択的に殺処理するためのものである、請求項8記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好ましい態様の詳細な説明
本発明の一つの局面は、選択的に/特異的に標的化された抗菌性ペプチド(STAMP)およびその使用に関する。
【0020】
「選択的に/特異的に標的化された抗菌性ペプチド」または「STAMP」という用語は、標的化ペプチドが標的化ペプチドのC末端またはN末端のいずれかの位置で抗菌性ペプチドに共有結合的に(例えば、ペプチド結合を介して)連結または結合されている、標的化ペプチドと抗菌性ペプチドとを含むキメラポリペプチドをいう。例えば、一つのSTAMPは以下の二つの構造のうちの一つを含むことができる:(1)C末端が抗菌性ペプチドのN末端に共有結合的に連結されている標的化ペプチド[アミノ末端-標的化ペプチド-ペプチド結合-抗菌性ペプチドカルボキシル末端]、および(2)C末端が標的化ペプチドのN末端に共有結合的に連結されている抗菌性ペプチド[アミノ末端-抗菌性ペプチド-ペプチド結合-標的化ペプチド-カルボキシル末端]。
【0021】
本発明の一つの態様において、STAMPは、標的化ペプチドが抗菌性ペプチドに共有結合的に連結または結合されているペプチドリンカーをさらに含む。この場合、STAMPは以下の二つの構造のうちの一つを含むことができる:(1)C末端がリンカーペプチドのN末端に共有結合的に連結されている標的化ペプチドおよびN末端がリンカーペプチドのC末端に共有結合的に連結されている抗菌性ペプチド(アミノ末端-標的化ペプチド-ペプチド結合-リンカーペプチド-抗菌性ペプチド-ペプチド結合-カルボキシル末端)、ならびに(2)N末端がリンカーペプチドのC末端に共有結合的に連結されている標的化ペプチドおよびC末端がリンカーペプチドのN末端に共有結合的に連結されている抗菌性ペプチド(アミノ末端-抗菌性ペプチド-ペプチド結合-リンカーペプチド-ペプチド結合-標的化ペプチド-カルボキシル末端)。
【0022】
本発明によれば、標的化ペプチドは、標的(例えば、標的細胞、標的組織、標的微生物)を認識するまたはその標的に結合する任意の適当なペプチドであってよい。詳しくは、標的化ペプチドは、例えば、鞭毛および線毛のような細胞表面付加物、ならびに標的の表面に露出したタンパク質、脂質および多糖を通じて、標的と特異的に相互作用するか、または標的を特異的に認識する。一つの態様において、標的化ペプチドは、ごくわずかにしか標的以外を認識しないまたは標的以外と相互作用しない一方、一つまたはいくつかの標的だけを特異的に認識するか、またはその標的だけと特異的に相互作用する。別の態様において、標的化ペプチドは、微生物、例えば、標的の微生物に特異的に結合できるペプチドであってよい。
【0023】
一つの態様において、本発明によって提供される標的化ペプチドは、ペプチドライブラリをスクリーニングすることによって同定することができる。例えば、ファージディスプレイペプチドライブラリを標的微生物またはその所望の抗原もしくはエピトープに対してスクリーニングすることができる。具体的には、>10
9のユニークなランダムペプチド配列含有のファージクローンを含んだファージディスプレイペプチドライブラリ(例えば、New England BiolabsのPh.D 7、Ph.D.12、Ph.D C7Cライブラリ)である。Ph.D.-C7Cライブラリは、ジスルフィド結合を有する7-merのペプチドを提示し、その一方でPh.D.-7およびPh.D.-12ライブラリは、それぞれ、完全にランダム化された7-merおよび12-merの残基を含む。この手順に使われるM13線状ファージは、ランダムインサートを、微量の外被タンパク質pIIIとのN末端融合体として保持した。標的または標的微生物を特異的に認識する標的化ペプチドをスクリーニングする際に、標的化ペプチドを求める10
9個の微生物(例えば、細菌細胞)とともに10
10 pfu/mlのファージライブラリをインキュベートした。遠心分離の後、未結合のファージを吸引によって除去した。結合したファージとともに標的微生物を含むペレットを、穏やかな界面活性剤を含有する緩衝液を用いて数回洗浄し、緩く結合したファージ粒子を除去し、強固に結合したファージ粒子を溶出させた。この工程はパニングと呼ばれる。溶出したファージを、大腸菌(E. coli)F
+株に感染させることによって増幅させた。3〜4ラウンドのパニングおよび増幅の後、ファージのプールを得た。このプールには、パニングされた細菌に対して高い結合親和性を有するクローンが含まれた。DNA配列決定のため、このプールから10〜20個のファージクローンをランダムに選び出し、そこからペプチドインサートのアミノ酸配列を決定した。同じファージプール由来の複数クローンのアミノ酸配列を一列に並べることによって、結合/標的化ペプチドのコンセンサス配列を構築した。このコンセンサス配列は特定の微生物に特異的な結合/標的化ペプチドの一つに相当する。コンセンサスペプチドの結合特異性を確認するために、ペプチドを化学的に合成し、色素(例えば、FITC、緑色蛍光色素)に結合させた。標識したペプチドを微生物とともにインキュベートし、標的の微生物種に特異的な結合について蛍光顕微鏡検査により分析した。この方法論により、ファージディスプレイから選択されたペプチドが、M13ファージ粒子と無関係な遊離ペプチドと同じ結合特異性を示すことが確実になった。
【0024】
本発明の標的化ペプチドは、合理的設計に基づいて得られたペプチドであってもよい。例えば、アミノ酸の生化学的および生物物理学的特徴ならびに微生物の表面に基づいて、標的化ペプチドを設計することができる。一般に、正に帯電したペプチドは細胞表面上の負に帯電した成分に結合する可能性が高く、逆の場合も同じである。同様に、疎水性ペプチドは疎水性相互作用に基づいて細胞表面上の疎水性ポケットに結合することができ、その一方でペプチドの二次または三次構造が、微生物の表面上のある種の構造にぴったり収まることができる。
【0025】
スクリーニングまたは設計方法を通じて同定されたペプチドを、標的微生物を特異的に認識するための標的化ペプチドとして使用することができる。そのような標的化ペプチドの例は、米国特許出願第10/706,391号(米国特許出願公開第20040137482号)に開示されており、これには、例えば、(1)シュードモナス菌(Pseudomonas)、とりわけ緑膿菌に特異的に結合できるまたはその菌を特異的に認識できる標的化ペプチド(例えば、標的化ペプチド12:1、12:2、12:3、12:4、12:5、12:6、12:7、12:8、12:9および12:10);(2)ブドウ球菌(Staphylococcus)、とりわけ黄色ブドウ球菌(S. aureus)に特異的に結合できる標的化ペプチド(例えば、標的化ペプチドSA5:1、SA5:3、SA5:4、SA5:5、SA5:6、SA5:7、SA5:8、SA5:9、SA5:10、SA2:2、SA2:4、SA2:5、SA2:6、SA2:7、SA2:8、SA2:9、SA2:10およびSA2:11); ならびに(3)大腸菌に特異的に結合できる標的化ペプチド(例えば、標的化ペプチドDH5.1、DH5.2、DH5.3、DH5.4、DH5.5、DH5.6、DH5.7、DH5.8およびDH5.9)が含まれる。
【0026】
本発明の一つの態様において、シュードモナス菌、とりわけ緑膿菌に特異的に結合するまたはその菌を特異的に認識する標的化ペプチドは、例えば、cat-1(またはKH)ドメイン
を含む。連鎖球菌に特異的に結合するまたはその菌を特異的に認識する標的化ペプチドは、例えば、
のような細菌フェロモンならびにその断片を含む。さらに、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)に特異的に結合するまたはその菌を特異的に認識する標的化ペプチドは、例えば、CSP1およびCSP2を含む。S.ミュータンスに特異的に結合するまたはその菌を特異的に認識する標的化ペプチドは、例えばCSP、C16またはCSP
C16
、M8またはCSP
M8(TFFRLFNR、SEQ ID NO:5)およびペプチド1903(NIFEYFLE、SEQ ID NO:10)を含む。
【0027】
本発明によって提供される標的化ペプチドは、天然または非天然のペプチドであってよい。例えば、本発明によって提供される標的化ペプチドは、組換えにより作出されても、化学的に合成されても、または天然に存在してもよい。一つの態様において、標的化ペプチドは、天然に存在するアミノ酸配列(例えば、CSP、CSP1およびCSP2)を含む。別の態様において、標的化ペプチドは、天然のポリペプチドの内部部分を構成するアミノ酸配列(例えば、本発明のC16およびM8)を含む。別の態様において、標的化ペプチドはゲノム中に天然に存在する配列によってコードされるアミノ酸配列を含み、このようなアミノ酸配列は、これに天然に隣接する任意のアミノ酸配列に隣接しておらず、例えば、このようなアミノ酸配列は、標的化ペプチド中の異種配列に隣接する。
【0028】
本発明によって提供される標的化ペプチドは、本発明において具体的に例証されている標的化アミノ酸配列から誘導または改変されたアミノ酸配列を有するペプチドを含んでもよく、ただし誘導または改変された配列が、それでもなおその標的微生物に対して増強された特異性を維持または有するものとする。例えば、標的化アミノ酸配列はアミノ酸もしくは他の構造的実体の欠失、突然変異、付加、またはその他任意の構造的変化によって構造的に改変されてもよく、ただしこれらの変化が標的化アミノ酸配列のその標的微生物との結合能を変えないか、またはその結合能に悪影響を及ぼさない場合に限る。
【0029】
本発明による標的化ペプチドはイオン相互作用、ファン・デル・ワールス力、リガンド-受容体の相互作用または疎水性相互作用のような異なる分子間相互作用によって標的生物と特異的に相互作用するか、または標的生物に特異的に結合する(例えば、生物の外部表面を通じて)。例えば、本発明の標的化ペプチドは、標的微生物を特異的に認識するペプチドリガンド、受容体、またはその断片であってもよい。一例を挙げれば、本発明の標的化ペプチドは、S.ミュータンスの表面上の不溶性グルカンに特異的に結合できるミュータンス連鎖球菌のグルカン結合タンパク質であってよい。他の例では、標的化ペプチドは細菌フェロモンまたはその断片であってよい。
【0030】
本発明による標的化ペプチドは約4〜約40アミノ酸、約5〜約30アミノ酸、または約6〜約20アミノ酸を含む。一つの好ましい態様において、標的化ペプチドは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30アミノ酸長を有する。
【0031】
標的化ペプチドは、標的細胞または組織(例えば、植物細胞、動物細胞もしくは真菌生物)に特異的に結合するペプチドを含むことが企図される。これらの標的化ペプチドの例としては、キチナーゼ、レクチンおよびその標的化断片が挙げられる。
【0032】
本発明による標的化ペプチドは、当業者に公知の任意の適当な方法により、それ単独でまたはリンカーペプチドおよび抗菌性ペプチドとの組み合わせで作出してもよい。例えば、標的化ペプチドは合成機によって化学的に合成してもよく、または発現系、例えば、細菌、酵母もしくは真核細胞の発現系を用いて組換えにより作出してもよい。化学的合成では、標的化ペプチドはL-アミノ酸鏡像異性体またはD-アミノ酸鏡像異性体で作られてもよい。D-鏡像異性体からなる標的化ペプチドは、標的化ペプチドの活性を損なうことなく安定性を高めることが認められている。
【0033】
本発明によるリンカーペプチドは、標的化ペプチドまたは抗菌性ペプチドの活性を妨げることなくまたは減らすことなく、標的化ペプチドを抗菌性ペプチドに連結するために使用できるペプチドである。ペプチドリンカーは約2〜20アミノ酸、2〜12アミノ酸、または3〜12アミノ酸である。ペプチドリンカーの例としては、例えば、
、または上記のペプチドリンカーのいずれか2つ(二量体)、3つ(三量体)、4つ(四量体)、5つ(五量体)、もしくは6つ以上の組み合わせ(多量体)が挙げられる。一つの態様において、リンカーペプチドはGGG(SEQ ID NO:17)である。別の態様において、リンカーペプチドはGGS(SEQ ID NO:24)の二量体であり、これはGGSGGS(SEQ ID NO:28)である。
【0034】
本発明によるリンカーペプチドは、当業者に公知の任意の適当な方法により、それ単独でまたは標的化ペプチドおよび抗菌性ペプチドとの組み合わせで作出してもよい。例えば、リンカーペプチドは合成機によって化学的に合成してもよく、または発現系、例えば、細菌、酵母もしくは真核細胞の発現系を用いて組換えにより作出してもよい。化学的合成では、リンカーペプチドはL-アミノ酸鏡像異性体またはD-アミノ酸鏡像異性体で作られてもよい。D-鏡像異性体からなるペプチドは、ペプチドの活性を損なうことなく安定性を高めることが認められている。
【0035】
本発明による抗菌性ペプチドは、微生物を殺処理できるまたはその増殖を阻害できるペプチドである。本発明の抗菌性ペプチドの抗菌活性は、非限定的に、抗細菌活性、抗ウイルス活性または抗真菌活性を含む。抗菌性ペプチドは、さまざまなクラスのペプチド、例えば、植物および動物からもともと単離されたペプチドを含む。動物では、抗菌性ペプチドは、通常、好中球および上皮細胞を含むさまざまな細胞によって発現される。ヒトを含む哺乳類では、抗菌性ペプチドは、舌、気管、および腸上部の表面上に見られる。天然の抗菌性ペプチドは一般に、100未満のアミノ酸を含む両親媒性分子である。これらのペプチドの多くは一般に、正味の正電荷を有し(すなわち、陽イオン性であり)、大部分がらせん構造を形成する。
【0036】
一つの態様において、本発明による抗菌性ペプチドは約2〜約100アミノ酸、約5〜約50アミノ酸、または約7〜約20アミノ酸を含む。一つの好ましい態様において、標的化ペプチドは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30アミノ酸長を有する。
【0037】
別の態様において、抗菌性ペプチドは、わずか約40 μM、わずか約30 μM、わずか20 μM、またはわずか10 μMの最小阻害濃度(MIC)で、抗菌活性を有する。
【0038】
別の態様において、抗菌性ペプチドは、表7に記載のもの(SEQ ID NO:34〜35および54〜97)を含む。別の態様において、抗菌性ペプチドは、非限定的に、アレキソマイシン(alexomycin)、アンドロピン(andropin)、アピダエシン(apidaecin)、バクテリオシン、β-プリーツシートバクテリオシン、バクテネシン、ブフォリン(buforin)、カテリシジン(cathelicidin)、α-らせん状クラバニン(clavanin)、セクロピン(cecropin)、ドデカペプチド、デフェンシン、β-デフェンシン、α-デフェンシン、ゲグリン(gaegurin)、ヒスタチン、インドリシジン(indolicidin)、マガイニン、メリチン、ニシン、ノビスピリンG10、プロテグリン(protegrin)、ラナレキシン(ranalexin)、タキプレシン(tachyplesin)、およびそれらの誘導体を含む、一つまたは複数の抗菌性ペプチドを含む。
【0039】
これらの公知の抗菌性ペプチドのなかで、タキプレシンは、抗真菌活性および抗細菌活性を有することが知られている。アンドロピン、アピデシン(apidaecin)、バクテンシン(bactencin)、クラバニン、ドデカペプチド、デフェンシン、およびインドリシジンは、抗細菌活性を有する抗菌性ペプチドである。ブフォリン、ニシン、およびセクロピンペプチドは、大腸菌(Escherichia. coli)、志賀赤痢菌(Shigella disenteriae)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、黄色ブドウ球菌、および緑膿菌(Pseudomonas aeroginosa)に抗微生物作用を及ぼすことが実証されている。マガイニンおよびラナレキシン(ranalexin)ペプチドは、同じ生物に抗微生物作用を及ぼし、さらにはカンジダ・アルビカンス、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、およびヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)にも、そのような作用を及ぼすことが実証されている。マガイニンは、単純ヘルペスウイルスに抗微生物作用を及ぼすことも実証されている。アレクソマイシンペプチドは、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、およびインフルエンザ菌(Haemophilus inflluenzae)に抗微生物作用を及ぼすことが実証されており、その一方でデフェンシンおよびβ-プリーツシートデフェンシンペプチドは、肺炎連鎖球菌に抗微生物作用を及ぼすことが明らかにされている。ヒスタチンペプチドおよびそれらの誘導体は、ミュータンス連鎖球菌を含むさまざまな生物に対して抗真菌活性および抗細菌活性を有するもう一つのクラスの抗菌性ペプチドである(MacKay, B. J. et al., Infect. Immun. 44:695-701(1984); Xu, et al., J. Dent. Res. 69:239(1990))。
【0040】
一つの態様において、本発明の抗菌性ペプチドは、ヒスタチンペプチドおよびそれらの誘導体のクラスに由来する一つまたは複数の抗菌性ペプチドを含む。例えば、本発明の抗菌性ペプチドは、非限定的に、
のアミノ酸配列を有するヒスタチン5、または
のアミノ酸配列を有するdhvar-1を含む、一つまたは複数のヒスタチン誘導体を含む。
【0041】
別の態様において、本発明の抗菌性ペプチドは、プロテグリン(protegrin)およびそれらの誘導体のクラスに由来する一つまたは複数の抗菌性ペプチドを含む。例えば、本発明の抗菌性ペプチドは、
のアミノ酸配列を有するプロテグリンPG-1を含む。プロテグリンペプチドは、ミュータンス連鎖球菌、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、およびインフルエンザ菌(Haempohilus influenzae)に抗微生物作用を及ぼすことが明らかにされている。プロテグリンペプチドは、米国特許第5,693,486号、同第5,708,145号、同第5,804,558号、同第5,994,306号、および同第6,159,936号に記載されており、これらの全てが参照により本明細書に組み入れられる。
【0042】
別の態様において、本発明の抗菌性ペプチドは、う蝕原性生物、例えば、ミュータンス連鎖球菌または緑膿菌を処置するための、ノビスピリンおよびその誘導体のクラスに由来する一つまたは複数の抗菌性ペプチドを含む。例えば、本発明の抗菌性ペプチドは、アミノ酸配列
を有するノビスピリンG10と、KNLRIIRKGIHIIKKY
*(SEQ ID NO:3)(
*はC末端のアミド化を示す)のアミノ酸配列を持った、G10からの一つのC末端アミノ酸欠失、一つの内部欠損、およびアミド化C末端を有するG2(ノビスピリンG10の誘導体)とを含む。
【0043】
別の態様において、本発明の抗菌性ペプチドは、微生物(例えば、ミュータンス連鎖球菌)に対する抗菌活性を保持するよう合理的に設計され試験されたペプチドを含む。これらのペプチドの例としては、何ら限定するものではないが、FKKFWKWFRRF(SEQ ID NO:7)のアミノ酸配列を有するS6L3-33およびKLFKFLRKHLL(SEQ ID NO:11)のアミノ酸配列を有するBD2.21が挙げられる。
【0044】
本発明による抗菌性ペプチドは、当業者に公知の任意の適当な方法により、それ単独でまたは標的化ペプチドおよびリンカーペプチドとの組み合わせで作出してもよい。例えば、抗菌性ペプチドは、合成機によって化学的に合成してもよく、または発現系、例えば、細菌、酵母もしくは真核細胞の発現系を用いて組換えにより作出してもよい。化学的合成では、抗菌性ペプチドはL-アミノ酸鏡像異性体またはD-アミノ酸鏡像異性体で作られてもよい。
【0045】
別の態様において、STAMPは標的化ペプチドおよび抗菌性ペプチドを含み、標的化ペプチドはペプチド結合を介して抗菌性ペプチドに共有結合的に連結され、標的化ペプチドはC16(SEQ ID NO:2)、M8(SEQ ID NO:5)および1903(SEQ ID NO:10)からなる群より選択され、抗菌性ペプチドはG2(SEQ ID NO:3)、S6L3-33(SEQ ID NO:7)およびBD2.21(SEQ ID NO:11)からなる群より選択される。
【0046】
別の態様において、STAMPは、ペプチド結合を介してリンカーペプチドに共有結合的に連結されている標的化ペプチドと、ペプチド結合を介してリンカーペプチドに共有結合的に連結されている抗菌性ペプチドとを含み、標的化ペプチドはC16(SEQ ID NO:2)、M8(SEQ ID NO:5)および1903(SEQ ID NO:10)からなる群より選択され、抗菌性ペプチドはG2(SEQ ID NO:3)、S6L3-33(SEQ ID NO:7)およびBD2.21(SEQ ID NO:11)からなる群より選択される。別の態様において、ペプチドリンカーは
からなる群より選択される。そのようなSTAMPの例としては表1に記載のSTAMPS:
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本発明の別の局面は、複数のSTAMPSを含む組成物に関し、本組成物は第一のSTAMPおよび第二のSTAMPを含み、第一のSTAMPは第二のSTAMPと異なる。一つの態様において、第一のSTAMPは、ペプチド結合を介して第一の抗菌性ペプチドに共有結合的に連結されている第一の標的化ペプチドを含む。第二のSTAMPは、ペプチド結合を介して第二の抗菌性ペプチドに共有結合的に連結されている第二の標的化ペプチドを含む。第一のSTAMPと第二のSTAMPとの間の相違は、この二つのSTAMPの少なくとも一つの対応部分が相互に異なるようなものである。例えば、一つの態様において、第一の標的化ペプチドが第二の標的化ペプチドと異なるか、または第一の抗菌性ペプチドが第二の抗菌性ペプチドと異なる。別の態様において、第一の標的化ペプチドが第二の標的化ペプチドと異なり、かつ第一の抗菌性ペプチドが第二の抗菌性ペプチドと異なる。
【0048】
別の態様において、第一のSTAMPは、ペプチド結合を介して第一のリンカーペプチドに共有結合的に連結されている第一の標的化ペプチドと、ペプチド結合を介して該第一のリンカーペプチドに共有結合的に連結されている第一の抗菌性ペプチドとを含む。第二のSTAMPは、ペプチド結合を介して第二のリンカーペプチドに共有結合的に連結されている第二の標的化ペプチドと、ペプチド結合を介して該第二のリンカーペプチドに共有結合的に連結されている第二の抗菌性ペプチドとを含む。第一のSTAMPと第二のSTAMPとの間の相違は、この二つのSTAMPの少なくとも一つの対応部分が相互に異なるようなものである。例えば、一つの態様において、第一の標的化ペプチドが第二の標的化ペプチドと異なり(第一のリンカーペプチドが第二のリンカーペプチドと同じであり、かつ第一の抗菌性ペプチドが第二の抗菌性ペプチドと同じであり); または第一のリンカーペプチドが第二のペプチドリンカーと異なり; または第一の抗菌性ペプチドが第二の抗菌性ペプチドと異なる。別の態様において、第一の標的化ペプチドが第二の標的化ペプチドと同じであり(第一のリンカーペプチドが第二のリンカーペプチドと異なり、かつ第一の抗菌性ペプチドが第二の抗菌性ペプチドと異なり); または第一のペプチドリンカーが第二のペプチドリンカーと同じであり; または第一の抗菌性ペプチドが第二の抗菌性ペプチドと同じである。別の態様において、第一の標的化ペプチドが第二の標的化ペプチドと異なり、第一のリンカーペプチドが第二のペプチドリンカーと異なり; かつ第一の抗菌性ペプチドが第二の抗菌性ペプチドと異なる。
【0049】
本発明のSTAMPは、当業者に公知の任意の適当な手段により作出してもよい。一つの態様において、STAMPをコードするヌクレオチド配列を、DNA合成機を通じて化学的に合成してもよく、または標的化ペプチドをコードするヌクレオチド配列が、直接的にもしくはペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列により、抗菌性ペプチド部分をコードするヌクレオチド配列に連結されてもよい。このヌクレオチドを適切な発現系、例えば、市販の細菌、酵母または真核細胞の発現系で発現させることができる。化学的合成では、STAMPはL-アミノ酸鏡像異性体またはD-アミノ酸鏡像異性体で作られてもよい。D-鏡像異性体からなるSTAMPは、STAMPの活性を損なうことなく安定性を高めることが認められている。
【0050】
本発明の別の局面は、STAMPと抗生物質とを含むSTAMP組成物に関する。標的微生物を殺処理またはその増殖を低減するうえでSTAMPを抗生物質と同時投与すると、相乗的な抗微生物作用が思いのほか認められた。STAMPとの同時投与に適した抗生物質は、微生物の増殖を阻害できるまたは微生物を殺処理できる、合成的または天然に作出された物質を含む。そのような抗生物質は、何ら限定するものではないが、β-ラクタム抗生物質(例えば、アンピシリン、アジオシリン、アズトレオナム、カルベニシリン、セフォペラゾン、セフトリアキソン、セファロリジン、セファロチン、クロキサシリン、モキサラクタム、ペニシリン、ピペラシリンおよびチカルシリン)、アモキシシリン、バシトラシン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、カプレオマイシン、コリスチメタート、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、フシジン酸、ホスホマイシン、フシジン酸ナトリウム、グラミシジン、ゲンタマイシン、リンコマイシン、ミノサイクリン、マクロライド、モノバクタム、ナリジクス酸、ノボビオシン、オフロキシン、リファマイシン、テトラサイクリン、バンコマイシン、トブラマイシン、およびトリメトプリムを含む。一例を挙げれば、STAMP組成物は、G1OKHc STAMP(SEQ ID NO:36)およびトブラマイシンを含み、バイオフィルムおよび浮遊性培養物の両方で、緑膿菌に対する抗菌活性の相乗的増強を示す。
【0051】
本発明の別の局面は、STAMPと、STAMPの機能または活性を、増強、維持、または促進できる作用物質とを含むSTAMP組成物に関する。一つの態様において、その化学物質はプロテアーゼ阻害剤である。STAMP組成物は、プロテアーゼが存在することで、例えば、酵素分解を介してSTAMPの抗菌活性が低下されうるプロテアーゼの存在する環境に曝露される。プロテアーゼ阻害剤およびSTAMPの組み合わせによりプロテアーゼ分解からSTAMPが安定化され、したがってSTAMPの活性が増強される。プロテアーゼの存在する環境は、例えば、体液(例えば、尿、血液、血清、唾液(salvia)、喀痰、粘液)を含む。プロテアーゼは、例えば、好中球エラスターゼ、プロテイナーゼ-3、システイン(cycteine)プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、または細菌および/もしくは宿主に由来する他のプロテアーゼを含む。プロテアーゼ阻害剤は、例えば、BMF、EDTA、PMFS、ベンズアミジン、および/または組換えα-1アンチトリプシン(rAAT)を含む。
【0052】
別の態様において、作用物質はヒトDNaseである。STAMP組成物の一例は、STAMP(G1OKHc(SEQ ID NO:36)およびDNaseの組み合わせである。この組成物は喀痰中の緑膿菌を減らすために使用したところ、DNaseが喀痰粘度を減らし、STAMPの拡散を強めたので、G1OKHcの抗菌活性の増強を示した。
【0053】
本発明の別の局面は、STAMPと適当な薬学的担体とを含む薬学的組成物に関する。本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」という用語は、STAMPを身体の一つの位置、体液、組織、臓器、または部分から、身体のもう一つの位置、体液、組織、臓器または部分へ、運搬または輸送することに関与する、液体もしくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料など薬学的に許容される材料、組成物、または媒体を意味する。それぞれの担体は、処方物の他の成分、例えば、STAMPと適合性であり、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、または他の問題もしくは合併症なしに、妥当なリスク対効果比に応じて、ヒトおよび動物の組織または臓器と接触させて用いるのに適当であるという意味で「薬学的に許容され」なければならない。薬学的に許容される担体として機能できる材料のいくつかの例としては、(1)ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖;(2)トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオ脂および坐剤ワックスなどの賦形剤;(9)落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液; ならびに(21)薬学的処方物に利用される他の非毒性の適合物質が挙げられる。
【0054】
本発明の別の局面は、標的化ペプチドと検出可能な作用物質とを含む診断薬である。本発明の診断薬は、診断アッセイ法において、例えば、標的生物が存在しやすい場所(例えば、組織、臓器、体液、喀痰、身体もしくは臓器の表面、粘膜表面、インプラント、バイオフィルム、または血清、装置、空気、流体、細胞培養液、工業品もしくは装置の表面)における標的または標的微生物の存在または量を検出するのに、あるいは標的微生物に関連する状態(例えば、感染症または疾患)の発症、発生、または寛解を検出するのに有用でありうる。
【0055】
一つの態様において、標的化ペプチドは、典型的には、検出可能な作用物質で標識されるか、または検出可能な作用物質に結合されるだろう。検出可能な多数の作用物質が利用可能であり、これらは以下の種類に一般的に分類することができる。
【0056】
(a)
35S、
14C、
13C、
15N、
125I、
3Hおよび
131Iなどの放射性同位体。当技術分野において公知の技術を用いてペプチドを放射性同位体で標識することができ、シンチレーション計測を用いて放射能を測定することができる; さらに、炭素および窒素標識の電子常磁性共鳴のために、ペプチドをスピン標識することもできる。
【0057】
(b)BODIPY、BODIPY類似体、希土類キレート(ユーロピウムキレート)、フルオレセインおよびその誘導体、FITC、5,6カルボキシフルオレセイン、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、リサミン(Lissamine)、フィコエリトリン、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ならびにテキサスレッド(Texas Red)などの蛍光剤。蛍光は蛍光光度計を用いて定量化することができる。
【0058】
(c)ルシフェラーゼ(例えば、蛍ルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸脱水素酵素、ウレアーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、ヘテロサイクリックオキシダーゼ(ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどのような、種々の酵素-基質剤。酵素-基質の組み合わせの例としては、例えば、(i)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)と、基質としての水素ペルオキシダーゼとの組み合わせ。この場合、水素ペルオキシダーゼは、色素前駆体(例えば、オルトフェニレンジアミン(OPD)または3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;(ii)アルカリホスファターゼ(AP)と、発色基質としてのパラ-ニトロフェニルリン酸との組み合わせ; および(iii)β-D-ラガクトシダーゼ(β-D-Gal)と、発色基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)または蛍光基質4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼとの組み合わせが挙げられる。
【0059】
別の態様において、検出可能な作用物質は、必ずしも標的化ペプチドに結合されるわけではないが、しかし標的化ペプチドの存在を認識することができ、作用物質を検出することができる。例えば、検出可能な作用物質は、標的化ペプチドに特異的に結合する抗体である。次いで当技術分野において公知の種々の方法によって、抗体を検出または定量化することができる(Harlow & Lane, Antibodies- A Laboratory Manual(1988)を参照のこと)。
【0060】
別の態様において、本発明の診断薬はキット、すなわち、所定量の試薬と診断アッセイ法を実施するための使用説明書との組み合わせ包装で提供することができる。標的化ペプチドが酵素で標識される場合、キットは、酵素が必要とする基質および補因子(例えば、検出可能な発色団またはフルオロフォアを供与する基質前駆物質)を含むであろう。さらに、安定剤、緩衝液(例えば、ブロック用緩衝液または溶解用緩衝液)などのような、他の添加物が含まれてもよい。各種試薬の相対量を幅広く変化させて、アッセイ法の感度を実質的に最適化する溶液中試薬濃度を提供してもよい。特に、試薬は、溶解時に適切な濃度を有する試薬溶液とするように賦形剤を含む、通常は凍結乾燥された、乾燥粉末として提供してもよい。
【0061】
本発明の別の局面によれば、本発明の組成物(例えば、STAMPまたはSTAMP組成物)を用いて、標的化ペプチドが特異的に結合する標的微生物を殺処理する、標的微生物の増殖を阻害または低減することができる。
【0062】
一つの態様において、本発明の組成物は標的微生物に抗微生物作用をもたらし、標的微生物に関連する疾患または感染症を処置するために使用することができる。抗微生物作用は、標的微生物の増殖の阻害もしくは標的微生物の殺処理、または標的微生物の任意の生物学的機能の阻止を含む。一般に、本発明の組成物を用いて、宿主における任意の場所での、例えば、任意の組織またはインプラントの表面を含め任意の組織での疾患または感染症を処置することができる。一つの態様において、本組成物を用いて、体液(例えば、血液、喀痰)中の浮遊性の標的微生物を特異的に殺処理するかまたは阻害する。一つの態様において、本発明の組成物を用いて、粘膜表面またはバイオフィルムを含有する表面上の疾患または感染症を処置する。
【0063】
「バイオフィルム」という用語は、天然接着剤として作用し、生体を固定化するまたは包埋する細胞外多糖類およびタンパク性材料を生ずる微生物の蓄積をいう。バイオフィルムは固体の生物学的または非生物学的表面上に生じうる。無害・非病原性の共生微生物から本質的になるバイオフィルムは、健常かつ正常な微生物叢を維持して、他の病原性微生物の侵入および確立、例えば、酵母菌感染を阻止するのに不可欠である。しかしながら、バイオフィルム中の微生物群が病原性微生物(例えば、ミュータンス連鎖球菌のような、う蝕原性生物)の過剰増加によって妨害される場合、結果的に生じるバイオフィルムは、バイオフィルムに関連する微生物感染を引き起こすことがある。バイオフィルムに関連する微生物感染症の例としては、口腔軟組織、歯牙および歯科用インプラント; 中耳; 胃腸管; 尿生殖路; 気道/肺組織; 眼; 尿路人工装具; 腹膜透析カテーテル、血液透析用の留置カテーテルおよび化学療法薬の長期投与用の留置カテーテル(Hickmanカテーテル); ペースメーカー、人工心臓弁、心室補助装置、ならびに合成血管の移植片およびステントなどの心臓インプラント; 人工装具、内部固定装置および経皮縫合糸; ならびに気管および人工呼吸器のチューブの感染が挙げられる。留置および皮下医用インプラントまたは装置はいずれも、微生物またはバイオフィルム(boilfilm)に基づく感染症の可能性がある部位であるので、感染症、炎症および免疫反応の制御に重要な標的に相当する。血液酸素付加装置、気管洗浄、歯科用水供給装置(dental water units)および透析器などの医用システムも細菌汚染およびバイオフィルム形成の影響を受けやすい。
【0064】
別の態様において、本発明の組成物を用いて、望ましくない病原性微生物(標的微生物)は選択的に殺処理され、阻害されまたは低減され、かつ望ましい非病原性微生物群(非標的微生物)はあまり影響を受けないように、病原菌を含有するバイオフィルム(例えば、病原性微生物が過剰増加したバイオフィルム)のバランスをかく乱することができる。本組成物は、多種微生物のバイオフィルムが定着した粘膜表面を有する、動物または人体内の多くの場所において使用することができる。これらの場所の例としては、口腔、膣、胃腸(GI)管、食道管、呼吸管、インプラントが挙げられる。例えば、ヒト口腔内には、酵母および細菌を含む、多くの異なる微生物が通常存在している。細菌の大部分は、無害の共生細菌である。本発明の組成物の投与は、例えば、う蝕原性生物(例えば、ミュータンス連鎖球菌)を特異的に標的とするので、非標的微生物に及ぼす影響は最小限であり、したがって非標的微生物に好ましくない影響を及ぼすことがないであろう。
【0065】
本発明の組成物を用いて、標的微生物を阻害する、または人体外の種々のバイオフィルム表面、例えば、工業品もしくは工業用途に適用することもできる。例えば、食品加工業においては、本発明の組成物を食品加工装置または食品それ自体に加えて、食品消費に関連する感染症、例えば、家禽処理施設におけるサルモネラ菌(Salmonella)を阻止することができる。
【0066】
本発明の標的微生物は、任意の細菌、リケッチア、真菌、酵母、原生動物または寄生生物でありうる。一つの態様において、標的微生物はう蝕原性生物、例えばミュータンス連鎖球菌である。別の態様において、本発明の標的微生物は、非限定的に、大腸菌、カンジダ菌、サルモネラ菌、ブドウ球菌およびシュードモナス菌、特にカンピロバクター・ジェジュニ、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・クルセイ、クラミジア・トラコマチス、クロストリジウム・ディフィシレ、クリプトコックス・ネオフォルマンス、インフルエンザ菌、ヘリコバクター・ピロリ、モラクセラ・カタラーリス、淋菌、緑膿菌、ネズミチフス菌、志賀赤痢菌、黄色ブドウ球菌および肺炎連鎖球菌を含む。
【0067】
例えば、S.ミュータンス感染症は口腔内に見られることが多く、う蝕を引き起こす。ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、種々のアクチノミセス属細菌(Actinomyces)種、スピロヘータ(spirochetes)および黒色色素バクテロイデス(bacteroides)は一般に、歯周病を引き起こす、歯肉および周辺結合組織の感染症に関連している。肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌またはモラクセラ・カタラーリス感染症は、小児の上部呼吸器感染症の合併症としての急性中耳炎(AOM)および中耳炎滲出液(OME)に見られることが多い。
【0068】
ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)細菌は、胃粘膜層に見られ、または胃上皮層に付着しており、十二指腸潰瘍の90%以上および胃潰瘍の80%までの原因になっている。他のGI管感染は、非限定的に、カンピロバクター細菌感染、主として、下痢に関連したカンピロバクター・ジェジュニ、コレラ菌(Vibrio cholerae)血清群により引き起こされるコレラ、ネズミチフス菌(S. typhimurium)および腸炎菌(S. enteritidis)などのサルモネラ菌により引き起こされるサルモネラ症、赤痢菌、例えば志賀赤痢菌により引き起こされる細菌性赤痢、ならびに毒素原性大腸菌(ETEC)により引き起こされる旅行者下痢症を含む。クロストリジウム・ディフィシレ感染も胃腸管または食道管に見られることが多い。
【0069】
シュードモナス生物は共通感染源による院内発生と関連している; さらに、それらは麻薬中毒者における菌血症、心内膜炎および骨髄炎の原因とみなされている。多くの場合には抗生物質によって主要な病原菌が根絶された後に、シュードモナス生物による感染が患者の耳、肺、皮膚または尿路に起こることもある。重篤な感染症は、ほとんどと言っていいほど、局部組織に対する損傷と関連しており、または宿主抵抗力の低下と関連している。嚢胞性線維症によって障害が起きた患者および好中球減少症を有する患者は、緑膿菌による重篤な感染症に対する特別なリスクがあるように見える。早産児、先天異常を有する小児および白血病を有する患者、熱傷を有する患者、ならびに消耗性疾患を有する高齢患者は、シュードモナス感染症を起こす可能性が高い。この生物は採尿容器中におよびカテーテル上に、ならびに病院職員の手に広く認められる。
【0070】
ブドウ球菌は、ほとんどのヒトの皮膚に定着している屈強なグラム陽性細菌であり、その中でも黄色ブドウ球菌は最も重要なヒト病原菌である。皮膚または粘膜が外科手術または外傷によって分断されると、ブドウ球菌は下層組織に接近し、その中で増殖して、典型的には限局性の、表在膿瘍を引き起こしうる。これらの皮膚感染は、通常、無害であるものの、増殖生物がリンパ管および血液に侵入し、ブドウ球菌菌血症の潜在的に重篤な合併症を引き起こすことがある。
【0071】
これらの合併症は心内膜炎、関節炎、骨髄炎、肺炎、および実質的に任意の臓器における膿瘍を含めて、敗血性ショックおよび重篤な転移性感染を含む。黄色ブドウ球菌のある種の菌株は、毒素性ショック症候群と同様に、皮膚発疹を引き起こす毒素または多臓器機能不全を媒介する毒素を産生する。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、特に表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)は重要な院内病原菌であり、血管カテーテルおよび人工装具の感染で特に好発する。腐性ブドウ球菌(S. saprophyticus)は尿路感染症の一般的な原因である。
【0072】
酵母またはカンジダ感染症(カンジダ症)は、典型的には、経口的に(口咽頭カンジダもしくはOPC)または経膣的に(外陰膣カンジダもしくはVVC)に生じる。カンジダ症は、皮膚上ならびに口および膣などの粘膜表面上に既に存在するカンジダ菌株(最も一般的にはカンジダ・アルビカンス)を無制限に増殖させる局所環境の変化によって引き起こされる。淋病、クラミジア、梅毒およびトリコモナス症は、性行為感染症、例えば骨盤炎症性疾患を引き起こす生殖管内の感染症である。
【0073】
本発明による組成物の投与。STAMPまたはSTAMP組成物は、非限定的に、経口投与、腸内投与、口腔投与、経鼻投与、局所投与、直腸投与、経膣投与、エアロゾル投与、経粘膜投与、表皮投与、経皮投与、眼投与、肺内投与および/または非経口投与を含む、当技術分野において公知の任意の投与経路によって被験体に投与することができる。「非経口投与」とは、静脈内の、筋肉内の、動脈内の、くも膜下腔内の、嚢内の、眼窩内の、心臓内の、皮内の、腹腔内の、経気管の、皮下の、表皮下の、関節内の、被膜下の、くも膜下の、脊髄内のおよび/または胸骨内の注射および/または注入を含むがこれらに限定されない、典型的には、注射に関連する投与経路をいう。
【0074】
STAMPまたはSTAMP組成物は、各投与経路に適した処方物または調製物の形態で被験体に投与することができる。本発明の方法において有用な処方物は、一つまたは複数のSTAMP、そのための薬学的に許容される一つまたは複数の担体、および任意で他の治療成分を含む。処方物は単位剤形として好都合に提供してもよく、薬学の技術分野において周知の任意の方法により調製してもよい。担体材料と組み合わせて単一の剤形をもたらす有効成分の量は、処置される被験体および特定の投与方法に応じて変化するであろう。担体材料と組み合わせて薬学上有効量をもたらすSTAMPの量は、一般に、治療効果をもたらすSTAMPのその量であろう。一般に、100パーセント以外では、この量はSTAMPの、約1パーセント〜約99パーセント、好ましくは約5パーセント〜約70パーセントに及ぶであろう。
【0075】
これらの処方物または組成物を調製する方法は、STAMPを薬学的に許容される一つまたは複数の担体および、任意で、一つまたは複数の副成分と結び付ける段階を含む。一般に、処方物は、STAMPを液体担体もしくは微粉化した固体担体、またはその両方と均一かつ密接に結び付け、その後、必要に応じて、生成物を成形することにより調製される。
【0076】
経口投与に適した処方物は、それぞれが活性成分としてSTAMPを所定量含んだ、カプセル、カシェ、ピル、錠剤、ロゼンジ(フレーバーベース、通常はスクロースおよびアカシアもしくはトラガカントを用い)、粉末、顆粒の形態であっても、あるいは水性液体もしくは非水性液体の溶液もしくは懸濁液として、または水中油型もしくは油中水型の乳濁液として、またはエリキシルもしくはシロップとして、または芳香錠(ゼラチンおよびグリセリン、もしくはスクロースおよびアカシアのような、不活性基剤を用い)として、および/またはうがい薬などとしてであってもよい。化合物は、ボーラス、舐剤、またはペーストとして投与されてもよい。例えば、一つの態様において、本発明の組成物は、う蝕原性生物の感染、例えば、う蝕に関連したS.ミュータンスの感染症を処置または予防するために使用され、食品または口腔環境、特にう蝕を起こしやすい口腔環境との直接的な接触の有る任意の生成物への添加物として調製される。う蝕を処置または予防するために、本発明の一つまたは複数の組成物を、乳児用調合乳、洗口剤、ロゼンジ、ゲル、バニッシュ、練り歯磨き、爪楊枝、歯ブラシ、または他の歯洗浄装置、徐放性重合体もしくはマイクロカプセルなどの局所送達装置、機械的にもしくは含嗽液として送達されるかを問わず任意の種類の口腔洗浄液、おしゃぶり、ならびに非限定的に、チューインガム、キャンディー、飲料、パン、クッキー、およびミルクを含む任意の食品の中に配合してもよい。
【0077】
経口投与のための固体剤形(カプセル、錠剤、ピル、糖衣錠、粉末、顆粒など)の場合、STAMPをクエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウムなど、一つもしくは複数の薬学的に許容される担体および/または以下のいずれかと混合する:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸などの充填剤または増量剤;(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアなどの結合剤;(3)グリセロールなどの湿潤剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはクズデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶液緩染剤;(6)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(7)例えば、アセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびその混合物などの滑沢剤; ならびに(10)着色剤。カプセル、錠剤およびピルの場合、薬学的組成物は緩衝剤を含んでもよい。同種の固体組成物を賦形剤、例えばラクトースまたは乳糖、および高分子量のポリエチレングリコールなどにより、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル内の充填剤として利用することもできる。
【0078】
錠剤は圧縮または成形により、任意で一つまたは複数の副成分とともに作出することができる。圧縮錠は結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムもしくは架橋されたナトリウムカルボキシメチルセルロース)、界面活性剤または分散剤を用いて調製することができる。成形錠は、不活性の液体希釈剤で湿らせた粉末ペプチドまたはペプチド模倣体の混合物を適当な機械中で成形することにより作出することができる。錠剤、ならびに他の固体剤形、例えば糖衣丸、カプセル、ピルおよび顆粒は、任意で刻み目を入れても、または腸溶コーティングおよび薬学的製剤化の技術分野において周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルとともに調製してもよい。それらは、その内部のSTAMPの持続放出または制御放出を提供するため、例えば、所望の放出プロファイルを与えるように種々の割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他の重合体マトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフィアを用いて処方することもできる。それらは、例えば、細菌保持フィルタを通じたろ過により、または使用直前に、滅菌水もしくは他の無菌の注射可能な媒体に溶解できる無菌の固体組成物の形態に滅菌剤を組み込むことにより、滅菌してもよい。これらの組成物は任意で乳白剤を含有してもよく、それらが胃腸管のある部分に、STAMPを唯一、または選択的に、任意で、遅延的に放出する組成物のものであってもよい。使用できる包埋用組成物の例は、高分子物質およびワックスを含む。STAMPは、適切な場合、一つまたは複数の上記の賦形剤とともに、マイクロカプセル化された形態であってもよい。
【0079】
経口投与用の液体剤形は、薬学的に許容される乳濁液、ミクロ乳濁液、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルを含む。液体剤形は、STAMPに加えて、例えば、水または他の溶媒のような、当技術分野において通常使用される不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにその混合物のような、可溶化剤および乳化剤を含有してもよい。経口組成物は不活性希釈剤の他に、補助剤、例えば湿潤剤、乳化剤、および懸濁化剤、甘味剤、香料添加剤、着色剤、芳香剤、ならびに防腐剤を含むこともできる。
【0080】
懸濁液はSTAMPに加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにその混合物などの懸濁化剤を含有してもよい。
【0081】
直腸または経膣投与用の処方物を、坐薬として提供してもよく、これは一つまたは複数のSTAMPを、例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコール、坐剤ワックス、またはサリチル酸塩を含む一つまたは複数の適当な刺激性のない賦形剤または担体と混合することによって調製することが可能であり、これは室温では固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸または膣腔で溶解して活性物質を放出するであろう。経膣投与に適した処方物は同様に、当技術分野において適切であることが公知の担体を含有する腟坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡、またはスプレイ処方物を含む。
【0082】
STAMP組成物の局所または経皮もしくは表皮投与用の処方物は、粉末、スプレイ、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、および吸入薬を含む。活性成分を無菌の条件下で、薬学的に許容される担体と、および必要とされうる任意の防腐剤、緩衝液、または高圧ガスと混合することができる。軟膏、ペースト、クリーム、およびゲルはSTAMP組成物に加えて、動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、および亜鉛酸化物、またはその混合物のような賦形剤を含有してもよい。粉末およびスプレイは、STAMP組成物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物のような賦形剤を含有することができる。スプレイは、クロロフルオロハイドロカーボンおよび揮発性の非置換炭化水素、例えばブタンおよびプロパンなどの慣習的な高圧ガスをさらに含有してもよい。
【0083】
あるいは、STAMP組成物をエアロゾルによって投与してもよい。これは、STAMPを含有する水性エアロゾル、リポソーム調製物または固体粒子を調製することによって達成される。非水性(例えば、フルオロカーボン高圧ガス)の懸濁液を使用することもできるだろう。音波噴霧器を使用することもできる。水性エアロゾルは、作用物質の水性溶液または懸濁液を従来の薬学的に許容される担体および安定剤とともに処方することによって作出される。担体および安定剤は、特定の化合物の要件に応じて変わるが、典型的には、非イオン性界面活性剤(Tweens、Pluronicsもしくはポリエチレングリコール)、血清アルブミンのような無毒タンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、緩衝液、塩、糖または糖アルコールを含む。エアロゾルは一般に、等張液から調製される。
【0084】
STAMP組成物を感染部位に送達するために、経皮パッチを使用することもできる。そのような処方物は、作用物質を適当な培地に溶解するかまたは分散させることによって、作出することができる。皮膚を通じたペプチド模倣体の流入を増大させるために、吸収促進薬を使用することもできる。そのような流入の速度は、速度制御膜を提供することにより、またはペプチド模倣体を重合体マトリックスもしくはゲルに分散させることにより、制御することができる。
【0085】
眼科用処方物、眼軟膏、粉末、溶液なども本発明の範囲内であると企図される。
【0086】
非経口投与に適した処方物は、一つまたは複数の薬学的に許容される無菌等張性の水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液、もしくは乳濁液、または使用直前に、無菌の注射可能な溶液もしくは分散液に再構成できる無菌の粉末との組み合わせでSTAMPを含み、これらは、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、対象とするレシピエントの血液と処方物を等張にする溶質または懸濁化剤もしくは増粘剤を含有してもよい。
【0087】
非経口投与に適した処方物において利用できる適当な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのような)、およびその適当な混合物、オリーブ油のような植物油、ならびにオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルが挙げられる。適当な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材料の使用により、分散液の場合には必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0088】
非経口投与に適した処方物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤のような補助剤を含有してもよい。微生物の作用の阻止は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることで確実にすることができる。等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを組成物に含めることが望ましい場合もある。さらに、注射可能な薬学的形態の持続的吸収を、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような、吸収を遅延させる作用物質を含めることによってもたらすこともできる。
【0089】
注射可能な徐放性剤形は、STAMPのマイクロカプセルマトリックスを形成させることにより作出される、またはポリ乳酸-ポリグリコリドのような生分解性重合体中で作出される。STAMPと重合体との比率、および利用される特定の重合体の性質に応じて、薬剤放出の速度を制御することができる。他の生分解性重合体の例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。注射可能な徐放性処方物は同様に、生体組織に適合するリポソームまたはミクロ乳濁液の中にSTAMPを封入することによって調製される。
【0090】
本発明の好ましい態様において、STAMP組成物を治療上有効量で疾患または感染部位に送達する。薬理学の技術分野において公知であるように、所与の患者における処置の有効性という点で最も効果的な結果をもたらす薬学上有効量のSTAMPの的確な量は、例えば、数例を挙げれば、特定のSTAMPの活性、特定の性質、薬物動態学、薬力学および生物学的利用能、被験体の生理学的状態(人種、年齢、性別、体重、食事、疾患の種類および段階、全身的な身体状態、所与の投与量に対する反応性、ならびに医薬の種類を含む)、処方物中の薬学的に許容される担体の性質、使用される投与の経路および頻度、ならびに病原性標的微生物によって引き起こされる疾患の重症度または性向に依るであろう。しかしながら、上記のガイドラインは、処置の微調整、例えば最適な投与量の判定の基礎として使用されてもよく、これによって被験体のモニタリングおよび投与量の調整からなる日常の実験しか必要とされないであろう。Remington: The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro ed. 20
th edition, Williams & Wilkins PA, USA)(2000)。
【0091】
実施例
実施例1. 抗菌性ペプチドのリストによるミュータンス連鎖球菌の標的殺処理
1.1 実施例において用いたSTAMPおよびSTAMP成分(例えば、選択的標的化ドメイン/ペプチド、抗菌性ペプチドおよびリンカーペプチド)の設計および構築
実施例において設計および合成したSTAMPおよびその成分を表1に記載する。C末端またはN末端のいずれかに抗菌性ペプチドG2(SEQ ID NO:3)(広範な抗菌性ペプチド・ノビスピリンG10(SEQ ID NO:35)(Eckert et al, 2006)に由来する、16アミノ酸)を有する、完全長のS.ミュータンスに特異的な能力刺激ペプチド(CSP、21アミノ酸、SEQ ID NO:1、S.ミュータンスによって産生されるフェロモン)を合成することにより、初期のSTAMPを構築した。これらのSTAMPの生物学的試験によっては、抗菌活性が全く示されなかった。過去の研究においてフェロモン活性を依然として有することが示されている(Qi et al., 2005)、CSP
C16(SEQ ID NO:2)と呼ばれる、CSPのC末端の16アミノ酸をCSPの代わりとして用いた。次いで、G2のN末端またはC末端のいずれかにCSP
C16を含み、その間に可動性アミノ酸の異なるリンカー領域を有するペプチドを合成し、その抗菌活性についてスクリーニングした(データ記載せず)。潜在的なSTAMPの中から、(N末端からC末端に向かって)CSP
C16、短いリンカーペプチド(GGG
;SEQ ID NO:17)、およびG2からなるC16G2(SEQ ID NO:4)(表1)を、その最小阻害濃度(MIC)の向上に起因して、さらなる研究のために選択したところ、以下に詳細に開示するように、S.ミュータンスに対する殺処理反応速度および選択性を(G2単独と比べて)大いに増強した。
【0092】
(表1)選択したSTAMPおよびSTAMP成分のペプチド配列(一文字アミノ酸表記)
*ペプチドC末端のアミド化を示す
標的化ペプチドと殺処理ペプチドとの間のリンカー領域に下線を引いてある
【0093】
S.ミュータンスに特異的な結合に関わるCSP
C16配列内の領域があったかどうかを判定するため、本発明者らは、一連の蛍光標識CSP
C16断片を合成し、S.ミュータンスに結合するその能力を分析した。CSP
C16配列を精査するうえで以下の戦略を利用した(表2); 初めに、3または4アミノ酸の欠失を、N末端からC末端までCSP
C16配列の全体にわたって作出することにより、一連の断片を構築した(C16-1〜C16-5)。CSP
C16のC末端またはN末端のもっと大きな部分を欠いたペプチドも合成した(C16-6〜C16-12)。さらに、ArgからAsnへの置換(正から負への荷電変化)を有するペプチド(C16-4)または(疎水性の全体的な減少のため)PheからGlyへの置換を有するペプチド(C16-3)、およびC16配列の4残基のAlaスキャンに対するペプチド(C16-15〜C16-18)を構築した。結合アッセイ法を既報(15)のように実施し、その結果を表2にまとめた。CSP
C16およびCSPのThr6〜Arg13(TFFRLFNR, SEQ ID NO:5)を含むどのペプチドも、S.ミュータンスUA159またはcomD細胞に結合するとして検出されたが、欠失、置換、またはAlaスキャンによるこの領域に対するどの妨害も、CSP
C16に比べて検出される蛍光結合の低下をもたらした。Thr6-Phe11およびPhe7-Phe11しか含んでいない、C16-3、-11、-16、および-17などの、いくつかのペプチドは結合を示したが、CSP
C16または完全なThr6-Arg13領域を有する他のどのペプチドよりも弱い強度であった。さらに、本発明者らは、ArgからAsnまたはPheからGlyへの置換が細胞結合にとって有害であることを見出し、TFFRLFNR(SEQ ID NO:5、M8またはCSP
M8と呼ぶ)内のこれらの残基がS.ミュータンスとの結合に必要であることを示した。CSP
M8は表3に記載した他の口腔内連鎖球菌との結合をほとんどまたは全く示さなかったことから、CSP
M8がまた、S.ミュータンス表面に特異的に結合できることが示唆された。概して、S.ミュータンスとの陽性の結合を示した
表2に記載のペプチドを、S.ミュータンスに対する標的化ペプチドとして使用することができる。これらのペプチドは
を含む。
【0094】
(表2)S.ミュータンスとのCSP断片ペプチドの結合
報告された相対結合はUA159およびcomDの両方からの結果を表す。
【0095】
S.ミュータンスに特異的な標的化ペプチド1903(SEQ ID NO:10)ならびに抗菌性ペプチドS6L3-33(SEQ ID NO:7)およびBD2.21(SEQ IN NO:13)は、本発明者らの研究室で開発された(実施例4参照)。標的化ペプチドを、リンカーGGG(SEQ ID NO:17)を介して抗菌性ペプチドに結合させて、STAMPS C16-33(SEQ ID NO:8)、M8-33(SEQ ID NO:9)、1903-BD2.21(SEQ ID NO:13)およびC16-BD2.21(SEQ ID NO:14)を得た。これらの全てをC16G2およびM8G2と同じ方法で試験した。
【0096】
表1および
2に記載した全てのペプチドは、既報(Eckert et al., 2006)のように標準的な9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)固相合成法(431Aペプチド合成機, Applied BiosciencesまたはApex396, Advanced Chemtech)により二重カップリングサイクルを用いて合成した。完成したペプチドを適切なスカベンジャーとともに95%トリフルオロ酢酸(TFA)によって樹脂から切り出し、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)(ACTA Purifier, Amersham)によって90〜95%に精製した。ペプチドの分子量をマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析により測定した。Fmoc-Tyr(tBu)-RinkアミドMBHA樹脂(Anaspec)を用いて、アミド化C末端でペプチドC16G2、G2、およびM8G2を合成した。その他全てのペプチドは、適切に置換されたWang樹脂で合成した。
【0097】
1.2 ペプチドの蛍光標識および蛍光顕微鏡検査法
CSP
C16(SEQ ID NO:2)、CSP断片ペプチド(表2)およびC16G2(SEQ ID NO:4)のアリコートを既報(Eckert et al., 2006)のようにカルボキシフルオレセイン(Sigma)で標識した。ペプチド切断の後、但し細菌標識アッセイ法の前に、ペプチド1 μM当たりの蛍光強度を蛍光定量的にチェックしたところ(λ
ex=488 nm、λ
em=520 nm VersaFluor, BioRad)、比較的類似していることが分かった(データ記載せず)。細菌とのペプチド結合のレベルを評価するために、一晩培養した物(OD
600 0.7〜1.0)に由来する連鎖球菌をリン酸緩衝生理食塩水(1×PBS)で洗浄し、1×PBSに1:2で倍希釈し、25℃で5分間ペプチド(16 μM)に曝露した。ペプチドとのインキュベーションの後、遠心分離(5分, 16,000×g)および1×PBSに再懸濁のサイクル3回により、未結合の作用物質を細菌から除去した。口腔内連鎖球菌の標識は、明視野・蛍光顕微鏡検査法(Nikon E400)により倍率40×で評価した。半定量的な結合評価に利用したデジタル画像は、製造所から供給されたソフトウェア(SPOT, Diagnostics)で得た。
【0098】
1.3 抗菌活性の測定
浮遊性細菌に対するペプチドの全般的な抗菌活性をTHブロス中でのMICアッセイ法により測定した(全ての口腔内連鎖球菌)(Qi et al., 2005)。
【0099】
S.ミュータンス、S.ゴルドニイ・チャリス(S. gordonii Challis)(DL1)およびS.サングイニスNY101菌株を嫌気条件(80% N
2、10% CO
2および10% H
2)下、37℃にてTodd Hewitt(TH, Fisher)ブロス培地中で増殖させた。S.ミュータンス菌株UA159(Ajdic et al.,2002)、ATCC 25175およびT8(Rogers, 1975)は野生型の臨床分離株であるのに対し、comDは、野生型UA140のバックグラウンドから以前に構築されたノックアウト変異株である(Qi et al., 2005)。ルシフェラーゼを発現するS.ミュータンス菌株JM11を報告(Merritt et al., 2005)のようにUA140から構築した。対数増殖中の細菌細胞をTH中でおよそ1×10
5 cfu/mLに希釈し、96ウェルプレート(Fisher)に入れた。次いでペプチドを連続的に希釈し、細菌に添加した。およそ24時間のインキュベーション後に細菌増殖を完全に阻害したペプチドの濃度を特定することによって、MICを測定した。
【0100】
1.4 殺菌反応速度の測定
C16G2およびG2の短時間の殺処理速度および選択性を測定するため、本発明者らは、本質的には既報(Eckert et al.,2006)のように時間-殺処理実験を実施した。S.ミュータンスUA159、S.ゴルドニイまたはS.サングイニスを対数期まで増殖させ、増殖培地中でおよそ1×10
5 cfu/mLに希釈した。好気条件下で、25 μM G2またはC16G2を細胞懸濁液に添加し、25℃でインキュベートした。1分の時点で、細胞懸濁液10 μLを採取し、増殖培地への希釈(1:50)によって救出し、氷上に保持した。プレーティングのため、救出した細胞20〜500 μLを増殖培地の寒天プレート上にスプレッドし、嫌気条件下、37℃での一晩のインキュベーションの後、コロニーをカウントした。本発明者らは、60 cfu/mLをこのアッセイ法の検出限界と見なした。生存菌数の値cfu/mLを、C16G2処理培養物由来の生存菌とG2に曝露したサンプル由来のcfu/mLとの比率として表した。
【0101】
1.5 唯一種バイオフィルムに対する抗菌活性の試験
バイオフィルム形成を惹起するため、1ウェル当たりおよそ1×10
7個の細菌(一晩培養した物由来)をTH培地(100 μL)中で、96ウェル平底プレートに播種した。S.ミュータンスを除く全ての連鎖球菌の場合、培地に0.5%(w/v)マンノースおよびグルコースを補充した。S.ミュータンスUA159のバイオフィルムは0.5%(w/v)スクロースで増殖させた。その後、プレートを手短に遠心分離して細胞をペレットにし、バイオフィルム形成のため37℃で3〜4時間細菌をインキュベートした。インキュベーション後、上清を注意深く除去し、バイオフィルムを1分間1×PBS中25 μMのペプチドまたは1×PBSのみで処理した。次いでペプチド溶液を除去し、100 μL THを添加して、残存する任意のペプチドをさらに希釈した。バイオフィルムの喪失を最小限に抑えるため、TH添加後に細胞を手短に遠心分離し、その後、上清を除去し、新鮮な培地に加えて適切な糖にもどした。次に細胞を37℃で嫌気的にインキュベートし、マイクロプレート分光光度計(Benchmark Plus, BioRad)を用いてOD
600の吸光度を測定することにより経時的にバイオフィルムの増殖をモニターした。
【0102】
1.6 唾液中の細菌バイオフィルムに対する抗菌活性の評価
これらの実験のため、本発明者らは既報(Bleher et al., 2003)のものに類似の方法を利用した。アッセイの前日に、研究室の成人ボランティア5人から唾液を採取し、プールし、THブロス中で1:4で希釈し、10分間2,000×gで遠心分離した。次いで上清をろ過滅菌し(0.2 μmフィルタ, Nunc)、4℃で貯蔵した。また、プールした唾液の一部を1×PBS中で1:2で希釈し、先のように処理した。アッセイ当日に、JM11および他の口腔内連鎖球菌を一晩培養した物をOD
600 1.0に規準化し、各種およそ3×10
6 cfu/mLを、TH希釈した唾液10 mLに添加した。次いでスクロース、マンノースおよびグルコース(各1% w/v)を添加し、溶液を混合した。次いで唾液および細菌混合液のアリコート(500 μL)を1.5 mLのエッペンドルフ(Eppendorf)試験管(Fisher)に入れた。手短な遠心分離(4,000×g, 2分)の後、試験管を37℃で3〜4時間インキュベートして多種バイオフィルムを形成させた。次いで、上清を除去し、使用済みの培地を100 μLの、PBS希釈した唾液(1:2)に加えて25 μMの(新たに添加した)ペプチドと交換した。バイオフィルムを作用物質に5分間曝露した後に、PBS-唾液を除去し、細胞を手短に遠心分離し、糖の入った新鮮なTH-唾液500 μLにもどした。各時点で、OD
600の吸光度を読み取ることによってバイオフィルム全体の増殖を測定し、既報(Merritt et al., 2005)のように、相対的なルシフェラーゼ発現(相対発光量、(RLU)生成)によって群内でのS.ミュータンスの繁栄(health)を調べた。手短に言えば、バイオフィルムをボルテックスおよび吸引によって再懸濁し、各サンプル100 μLを、0.1 Mクエン酸緩衝液, pH 6.0に懸濁された1 mM D-ルシフェリン(Sigma)溶液25 μLとともに新しいエッペンドルフ試験管に移した。2時間の時点までに、再懸濁後1%スクロースの添加によってバイオフィルムを刺激し、その30分後にルシフェラーゼ活性を記録した。TD 20/20ルミノメータ(Turner Biosystems)を用いてRLUの生成を測定した。報告値は独立の3サンプルの平均値から得た。データを経時的にRLU/OD
600としてプロットした。
【0103】
1.7 浮遊性のS.ミュータンス細胞に対する抗菌活性および特異性を増強したC16G2
C16G2の抗菌活性および一般的特異性を評価するため、S.ミュータンスの各種菌株および密接に関連する口腔内連鎖球菌を含む細菌種のパネル(Gilmore et al., 1987)に対して最小阻害濃度(MIC)試験を実施した。表3に示すように、C16G2のMIC値は、試験した全てのS.ミュータンス菌株に対して3〜5
μMの範囲となり、親の抗菌性ペプチドG2(12〜20
μM)と比べて抗菌活性が4〜5倍増加した。それに比べて、本発明者らは、S.ゴルドニイおよびS.サングイニスに対してG2とC16G2との間の感受性の相違をほとんど観察しなかった(2倍以下)。
【0104】
G10KHc(SEQ ID NO:36)は24時間のインキュベーション後にMICの大きな改善を示さなかったが、しかし(標的化されていない親の抗菌性ペプチドと比べて(Eckert et al., 2006))短時間の曝露の間に標的細菌に対する殺処理反応速度および特異性の大いなる増強を示した。それゆえ、比較実験を実施して、短時間の曝露後のその標的および非標的細菌に対するC16G2およびG2の殺処理能を調べた。
図1に示すように、1分の曝露で、C16G2はG2と比べて、その標的細菌S.ミュータンスに対して20倍を超える高い活性を示したが、試験した他の口腔内連鎖球菌に対してはG2と類似の活性レベルを示した。これらの所見は、G2にCSP
C16標的化ドメインを付加することで、S.ミュータンスに対する抗菌活性が選択的活性とともに得られるが、他の密接に関連する口腔内連鎖球菌に対してはそうでないという最初の兆候となった。
【0105】
(表3)細菌に対するG2含有STAMPおよびSTAMP成分のMIC
MICは標準偏差を伴う少なくとも3回の独立した実験の平均値を表す。
【0106】
1.8 バイオフィルム細胞に対しても活性であるC16G2
S.ミュータンスはインビボでバイオフィルム増殖状態で主に存在する。バイオフィルムに関連する細胞は、抗生物質に100〜1000倍高い耐性を示すことが当技術分野において公知である(Donlan et al., 2002)。C16G2がインビトロのS.ミュータンス・バイオフィルムに対する活性を依然として有するかどうかを試験するため、バイオフィルムに関連するS.ミュータンス、S.ゴルドニイ、またはS.サングイニスを1分間、25
μMのC16G2、G2、CSP、CSP
C16、または1×PBSで処理し、洗浄し、その再増殖を経時的にモニターした。
図2に示すように、試験したペプチドのいずれかに曝露されたS.ゴルドニイまたはS.サングイニス・バイオフィルムは、ペプチドの添加および除去後、未処理のバイオフィルムと同じように増殖した(
図2A〜B)。対照的に、S.ミュータンス菌株UA159(
図2C)ならびにT8および25175(データ記載せず)は、C16G2での処理によって大幅に阻害されたが、その他のペプチドでの処理によって影響を受けなかった。これらの結果は、C16G2がほんの短い曝露時間(1分)で、つまり、口腔における臨床的処置に関連性のある時間枠でバイオフィルム環境において抗S.ミュータンスSTAMPとして機能できることを示唆している(Axelsson & Lindhe, 1987)。
【0107】
1.9 混合種バイオフィルムからS.ミュータンスを選択的に排除することができるC16G2
S.ミュータンスは、インビボでバイオフィルムとして増殖することに加え、歯の表面に付着しているので唾液に絶えず浸かってもいる。これらの条件下でC16G2がS.ミュータンスを選択的に殺処理することが可能であったかどうかを調べるため、ルシフェラーゼ(luc)と構成的に活性な遺伝子・乳酸脱水素酵素(ldh)のプロモーターとの間の転写融合を持った菌株であって、C16G2に対する感受性が野生型のUA159と同じ、S.ミュータンスJM11と、2種の非う蝕性口腔内連鎖球菌(S.ゴルドニイおよびS.サングイニス)を混合した。S.ミュータンス群の適応度を測定するためにJM11が以前利用されたところ、相対発光量(RLU)生成の減少は細胞生存性の低下と強い相関関係のあることが示された(Merritt et al., 2005)。混合種バイオフィルムを唾液によって形成し、その後、唾液に懸濁したペプチド(25 μM)を5分間添加し、除去し、バイオフィルムの処理後増殖をさらにモニターした。バイオフィルム内のS.ミュータンス生細胞の数をルシフェラーゼ発現によって同時に定量化した。C16G2はCSP
C16およびG2と比べて、5分の曝露後に(低いルシフェラーゼ活性に反映されて)混合種内のS.ミュータンス群を劇的に低減できることが分かった(
図3)。興味深いことに、処理後120分たっても、混合種内のS.ミュータンスの総数は低いままであった(
図3)。総合すると、これらの結果は、短時間のC16G2曝露がバイスタンダ細菌に悪影響を与えることなくまたはバイオフィルムの全体的な繁栄(health)に影響を与えることなく最低2時間、多種バイオフィルム内でのおよび唾液存在下でのS.ミュータンスの増殖を選択的に阻害できるということを示唆する。
【0108】
1.10 S.ミュータンスとのCSP
C16のComD非依存的な標的化結合に関係しているC16G2の抗菌活性の増強
S.ミュータンスに対するC16G2の活性増強の機構をさらに詳しく調べるため、CSP
C16およびC16G2を蛍光的に標識し、S.ミュータンスおよび他の連鎖球菌に結合するその能力を試験した。認められた殺処理活性と一致して、CSP
C16およびC16G2は非常に短時間(1〜2分)の曝露でS.ミュータンスに選択的に結合できるが、他の口腔内連鎖球菌にはそうでないことが分かった(データ記載せず)。以前の遺伝学的研究により、CSPはComDと相互作用して、S.ミュータンスにおけるDNA応答能を活性化できることが示唆されている(Li et al, 2001)。予想外にも類似のMICをUA159およびcomD菌株で認めたことが分かった(表3)。この観察結果と一致して、蛍光標識したCSP
C16およびC16G2が同じようにUA159およびcomD変異株に結合することも分かり、S.ミュータンスとのCSPの特異的結合能がComDとは無関係であることが示唆された。
【0109】
1.11 C16G2と類似の抗S.ミュータンス活性を有するM8G2
上述のデータに基づき、CSP
M8は抗S.ミュータンスSTAMPのための他の標的化ドメインとして機能するのに十分であろうという仮説を立てた。この仮説を検証するため、CSP
M8およびG2を一緒に合成して、STAMP M8G2を形成させた(表1)。表3に示すように、M8G2はC16G2と比べて、S.ミュータンスおよび他の口腔内連鎖球菌に対して類似のMICを示した。さらに、単一種バイオフィルム阻害アッセイ法によって、M8G2はC16G2と同じく、1分の曝露後に、S.ミュータンス・バイオフィルムの回復を阻害できる(
図4A)が、しかしS.サングイニスの回復を阻害できない(
図4B)ことが示された。CSP
M8ドメインはCSP
C16よりもずっと小さく、その結果、化学的に合成することがもっと容易であるので、これらの結果は、CSP
M8に基づくさらに短い抗S.ミュータンスSTAMPの今後の設計の基礎となる。
【0110】
1.12 他の殺処理ドメインでも機能するCSP
C16/CSP
M8誘導のSTAMP
STAMPの標的化成分および抗菌性成分は、一つのペプチドとして合成されているにもかかわらず、機能的に独立しているので(Eckert et al, 2006)、CSP
C16またはCSP
M8と種々の一般的な抗菌性ペプチドとの組み合わせでも、標的化されていない殺処理ペプチドのみと比べて、S.ミュータンスに対する殺処理活性および選択性の増大をもたらすことができるものと推論された。それゆえ、両方の標的化ペプチドをC16G2およびM8G2と同じ配列で、モデルとなる広範な抗菌性ペプチドS6L3-33に結合させて、STAMP C16-33およびM8-33を得た(表1)。表4に示すように、S6L3-33とその派生STAMPとの間のMICの2〜3倍の相違が、試験したS.ミュータンスおよび他の口腔内連鎖球菌に対して認められた。とはいえ、単一種バイオフィルム試験を行った場合(
図5に示した)には、S.ミュータンスに選択的なSTAMP活性が容易に見て取れた: C16-33もM8-33もともに短時間の曝露後にS.ミュータンス・バイオフィルムの増殖を遅延させることができた(
図5A)のに対し、S.サングイニスの培養物はSTAMP投与によって影響を受けなかった(
図5B)。これらの結果は、S.ミュータンス・バイオフィルムに選択的なSTAMP活性の明らかな増強を示唆している。
【0111】
(表4)S6L3-33抗菌性領域で構築したSTAMPのMIC
MICは標準偏差を伴う少なくとも3回の独立した実験の平均値を表す。
【0112】
概して、S.ミュータンスに特異性を示した、かつ他の口腔内連鎖球菌にはそうでなかった一連のSTAMPを合成し、評価した。これらのう蝕原性細菌により産生される天然フェロモンの部分(CSP)を直線状STAMPペプチド内の標的化ペプチドとして組み入れることにより、S.ミュータンスに選択的な活性に向けてSTAMPを設計した。標的化領域および抗菌性領域に短い(<3 kD)直線状ペプチドをもっぱら利用することにより、本発明者らは、報告されている大きな(>70 kD)タンパク質に基づく抗菌性剤(Qiu et al. 2005)を構築するのに必要な組換え発現および困難な精製経路に比べて明白な利点である、固相化学的方法によって完全なSTAMP分子を一体的に容易に合成かつ単離することができた。さらに、合成経路がもたらす融通性によって、本発明者らは、S.ミュータンスに対するSTAMPを構築する際に標的化ドメイン(CSP
M8およびCSP
C16)と殺処理ドメイン(G2およびS6L3-33)との異なる組み合わせの切り替えによりSTAMPの多様性を容易に高めるという、さもなければ、単調で退屈なクローニング手順を要するであろう作業課題が可能になった。
【0113】
図5に示すように、CSP
C16およびCSP
M8をS.ミュータンス選択的な殺処理能の喪失なしに、他の抗菌性ペプチド(S6L3-33)に結合させることができた。この所見はさらに、STAMPの標的化ドメインおよび抗菌性ドメインが独立して機能し、活性の喪失なしに異なる組み合わせで連結されうるという考えを立証している。このことから、今後のSTAMPの構築は、最も特異的な活性を有するSTAMPを選択するために抗菌性ドメイン、リンカードメインおよび標的化ドメインの無数の組み合わせを合成できる無制限の「調整可能な」過程になることが示唆される。さらに、細菌によるSTAMP耐性(当然発生する)(Perron et al, 2006)は、本研究においてG2およびS6L3-33で行ったように、他の機能的に類似するSTAMP成分への切り替えによって容易に克服することができよう。さらに、ペプチドフェロモンは病原性細菌、特にグラム陽性生物によって広く活用されており、それゆえ、STAMPの構築に向けて今後、標的化ペプチドを選択できるであろう、多数の増加しつつあるプールに相当する。
【0114】
C16G2、M8G2、C16-33およびM8-33は浮遊性培養物においておよび単一種と多種の両方を有するバイオフィルムにおいて標的のS.ミュータンス細菌に対して強い特異的活性を示し、本発明者らは、S.ミュータンスと他の非う蝕性口腔内連鎖球菌を識別できる機能的なSTAMPのセットを構築できたことが示唆された。この選択的活性は、これらのペプチドの低い細胞毒性(Eckert, et al, 未発表データ)と合わせて、それらが抗う性治療法の開発に有用であることを示唆している。現在のところ、S.ミュータンス感染症の処置には食用砂糖の節制、歯垢の機械的除去および一般的な殺生物性うがい薬が含まれる。どれもみな程度の差こそあれ一時的には有効であるが、機械的除去または一般的な抗生物質による処置で起こる正常細菌叢の喪失が避けられず、S.ミュータンスは難なく口腔中でニッチを再建することが可能になる(Caufield et al., 2000)。それゆえ、病原菌選択的な(例えば、S.ミュータンス選択的な)殺処理能を有するSTAMPは、細菌叢内の病原菌(例えば、S.ミュータンス)を選択的に殺処理または低減し、かつ影響を受けたS.ミュータンス群を正常細菌叢が成長させることを可能にする理想的な解決手段である。そのような「抗生物質-生菌の」治療法は、虫歯の進行およびこの疾患に関連する高額医療費を抑制するのに役立つであろう(Anderson & Shi, 2006)。
【0115】
実施例2. G10KHcおよびトブラマイシンの同時投与による緑膿菌に対する抗菌活性の増強
2.1致死的な急性感染症および嚢胞性線維症の間の慢性的な気道への定着に関連する一般的な日和見性ヒト病原菌である 緑膿菌
米国特許出願公開第20040137482号において、広域抗菌スペクトルを持つ抗菌性ペプチド・ノビスピリンG10が、選択的に標的化された抗菌性ペプチド(STAMP)のG10KHcに変換されている。ノビスピリンG10と比べて、G10KHc STAMPはシュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)に対する殺処理能の増強を有していた。本実験において、本発明者らは、緑膿菌に対するG10KHcの抗菌活性およびG10KHc STAMPをトブラマイシンと同時投与したときの殺処理活性の相乗的増強を詳しく調べた。
【0116】
2.2 G10KHc STAMPおよびその成分
G10Hc STAMPは以下の配列および成分を有する:
G10KHc [標的化ペプチド-
リンカーペプチド-抗菌性ペプチド、リンカーに下線を引いてある]:
G10(ノビスピリン)抗菌性ペプチド:
Cat-1(KHとも呼ばれる)標的化ペプチド:
リンカーペプチド: GGSGGS(SEQ ID NO:28)。
【0117】
G10
およびG10KHc
の固相ペプチド合成は、431Aペプチド合成機(Applied Biosciences)におけるFast-Fmoc(9-フルオレニルメトキシカルボニル)法を用いて行った。完成したペプチドを適切なスカベンジャーとともに95% TFAによって樹脂から切り出した。マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析(Voyager System 4291, Applied Biosystems)によってペプチド質量を確認し、逆相高圧液体クロマトグラフィー(HPLC, ACTA Purifier, Amersham)によってUV 215をモニターしながら粗ペプチドを精製した。HPLC間の移動相は流速0.5 mL/分(Source 15 RPCカラム, Amersham)の水/アセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸を含む)からなった。精製されたG10KHcのHPLCおよびMALDIプロファイルを
図6に示す。具体的には、精製後、G10KHcに対する単一のピークを保持容量10.06 mLの位置に認め(
図6A)、これは
図6Bに示すようにG10KHcに対して予想された質量(予測値4267.08、実測値4267.44)を有することが分かった。
【0118】
2.3 抗菌活性
緑膿菌の臨床分離株に対するG10KHc、G10およびトブラマイシンの一般的な抗菌活性を既報(Eckert et al., 2006)のように最小阻害濃度(MIC)アッセイ法によって評価し、表5に示した。MICはμMで報告されているが、分かりやすくするために、1 μMのトブラマイシン= 0.468 μg/mLである。緑膿菌を対数期まで増殖させ、Mueller-Hinton(MH)ブロス中でおよそ1×10
5 cfu/mLに調整し、96ウェルプレートに添加した。次いでペプチドの2倍連続希釈液を細菌に添加し、プレートを37℃で18〜24時間インキュベートした。最も後の清澄なウェル(増殖なし)に存在するペプチドの濃度としてMICを測定した。予想通り、G10KHcはG10のみと比べて緑膿菌の臨床分離株に対して有意に高い活性を示した(スチューデントのt検定, p = 0.001): 10〜60 μM(平均23.4 μM)に及んだG10に対するMICと比べて、G10KHcに対するMICは0.5〜29 μM(平均6.22 μM)に及んだ。KHドメイン(またはCat-1ペプチド)それ自体には抗菌活性がないので、G10KHcの抗緑膿菌活性の増大は既報(Eckert et al., 2006)のように、シュードモナス菌種とのKHの標的化結合能による可能性が高い。トブラマイシンと対照的に、G10KHcは、CF患者から分離されたアミノグリコシドおよび多抗生物質耐性の緑膿菌(AGR10、MR15)に対しても有効であった。さらに、ムコイド緑膿菌は抗菌性剤に対する感受性の低下と関連していることが多いので、本発明者らは、G10KHcがそのような菌株の一つPDO300に対して活性を示すことを見出すよう勧められた。全体として、G10KHcは、調べた感受性分離株に対してトブラマイシンほど活性を示さなかった(典型的には1〜2回の希釈段階ぶん有効性が低かった)。
【0119】
(表5)緑膿菌の実験分離株および臨床分離株に対するトブラマイシン、G10およびG10KHcのMIC
少なくとも3回の独立した実験の平均MICを示す。KH標的化ドメインのみには抗菌活性がない(データ記載せず)。参考までに、1 μM トブラマイシン = 0.468 μg/mL。
*ムコイド表現型, nt: 試験せず
【0120】
時間-殺処理(殺処理反応速度)実験を本質的には既報(Eckert et al., 2006)のように実施した。手短に言えば、緑膿菌を対数期まで増殖させ、30%マウス血清(MP Biomedicals)を含むLB中でおよそ1×10
5 cfu/mL(中間密度の浮遊性培養物)に希釈し、その後、この細胞懸濁液に10 μMのトブラマイシン、G10またはG10KHcを加えた。各時点で、培養物10 μLを取り出し、緑膿菌細胞をLB 500 μL中での希釈によって救出し、プレーティングまで氷上に保持した。LB寒天上にプレーティングし、好気条件下、37℃で一晩インキュベートした後に、生存菌cfu/mLを定量化した。
【0121】
図7に示すように、殺処理反応速度アッセイ法によって、G10KHcはG10と比べて緑膿菌に対する殺処理を明らかに改善したことが分かった: 10 μM G10KHcによる培養物の処理は生存緑膿菌の減少(30分で100 cfu/mL未満まで)に関連していたが、G10は、調べた時間的経過にわたり無効であった。G10KHcの抗菌活性の速度はトブラマイシン(4.68 μg/mL)の等モル投与量と同様であった。これらの結果は、G10KHcおよびトブラマイシンが臨床分離株および実験分離株に対して類似の効力を有すること、ならびにG10KHcが薬物耐性緑膿菌の増殖を阻害できることを示唆している。さらに、データによれば緑膿菌細胞の有効な殺処理には、シュードモナス菌種を標的化するドメインKHを、G10KHcが必要とするようであることも示唆される: G10のみでは、18〜24時間インキュベートされない限り、不十分な活性を示した(表5)。
【0122】
2.4 G10KHcおよびトブラマイシンの相乗的な殺処理作用
高密度の浮遊性培養物に対するG10KHcとトブラマイシンとの間の活性増強の評価のために、一晩増殖されたATCC 15692をddH
2O(pH 7.4)中でおよそ1×10
8 cfu/mLに調整し、5 μMトブラマイシン、5 μM G10KHcまたは両作用物質の組み合わせ(5 μMトブラマイシン(2.34 μg/mL)および5 μM G10KHcもしくはG10の組み合わせ)に曝露した。24時間後、処理培養物10 μLを希釈によって救出し、生存菌cfu/mLをLB上にプレーティングし、LB寒天上での増殖後にカウントした。
【0123】
図8に示すように、本発明者らは、トブラマイシンおよびSTAMP(但しG10ではない)を同時投与した場合に殺処理活性の明らかな増強を認めた。同時処理した培養物由来の生存菌cfu/mL(およそ1×10
3 cfu/mL)は、未処理培養物から回復されたレベル(およそ1×10
8 cfu/mL)またはトブラマイシンもしくはG10KHcのいずれかに曝露したもの(それぞれ1×10
7 cfu/mLおよびおよそ1×10
8 cfu/mL)よりも5log
10低かった。これらの結果は、これらの作用物質が一緒に適用される場合、浮遊性の緑膿菌に対していずれかの成分一つ一つよりも顕著に効果的であり、G10KHcを試験菌株のMIC未満の濃度で投与した場合でさえも、高細胞密度培養物のほぼ全てを24時間までに排除できることを示唆している。
【0124】
2.5 バイオフィルムに及ぼすG10KHcおよびトブラマイシンの相乗的な殺処理作用
トブラマイシンとG10KHcとの間の相乗的な殺処理作用をバイオフィルム関連の緑膿菌に対しても認めた。本実験において、トブラマイシン、G10およびG10KHcに感受性を示すバイオフィルムに関する定量的データを得るために、回転盤バイオフィルム反応容器系を使用した。この系は、希釈したトリプチカーゼ・ソイブロス(TSB)(1:100)培地250 mLを含有する反応容器からなった。反応器に一晩培養物(1%, v/v)を植菌した。TSB中で静的に一晩増殖させた後、新鮮培地を流し始めた(希釈速度、0.7 h
-1)。培地流中24時間の後、バイオフィルム細菌の付着したポリカーボネートチップを回転盤から無菌的に取り出し、ddH
2O(pH 7.4)中で3回洗浄し、ddH
2O 1 mL中でインキュベートした。G10(100 μg/mL)、G10KHc(100 μg/mL)、トブラマイシン(100 μg/mL)またはその二つの組み合わせを図のように添加した。次にチップを24ウェル組織培養プレート(Falcon番号353047; Becton Dickinson Labware, Franklin Lakes, NJ)中で4時間または24時間インキュベートした。残存する生存緑膿菌の数を推定するため、ディスクをPBS 1 mLの中に入れ、組織ホモジナイザ(Brinkmann Instruments, Westbury, NY)を用いて細胞を拡散させ、連続希釈およびLB寒天上にプレーティングすることによって、チップ当たりの総cfuを測定した。
【0125】
図9に示すように、100 μg/mL G10KHcまたは100 μg/mLトブラマイシンのみでは、4時間後または24時間後でさえ、緑膿菌バイオフィルムに対する殺処理作用が非常に限られていた。しかしながら、100 μg/mL G10KHcおよび100 μg/mLトブラマイシンの組み合わせでは、4時間後の生存菌cfu/mLのレベルが劇的に低減し、いずれかの作用物質のみと比べて殺処理能を4 log
10改善した。さらに著しくは、組み合わせた作用物質を24時間緑膿菌と共インキュベートした場合、cfu/mLの回復が全くなかった(個々の適用よりほぼ5 log
10減少した)。これらのデータは、G10KHcおよびトブラマイシンをインビトロの緑膿菌バイオフィルムに対して用いた場合に殺処置活性が強く増強されることを示唆している。さらに、これらの結果は
図8と一致しており、相乗活性を十分に立証するにはさらなる実験が必要であるものの、G10KHcおよびトブラマイシンは浮遊またはバイオフィルム増殖様の緑膿菌に対して相乗的でありうることが示唆された。
【0126】
2.6 膜透過性を媒介したG10KHc
図8および9の結果は、トブラマイシンによる細胞殺処理の速度がG10KHcとの同時処理によって増大される可能性があることを示唆している。ペプチドが存在しない場合、頑強な細菌によるトブラマイシンの取り込みは、好気的呼吸の間に最大化されるインタクトなΔΨ勾配(プロトン駆動力の電位)を要する能動的過程である。この過程は無酸素環境(バイオフィルムの内部のような)において減速または除外される可能性があり、緑膿菌膜を越えたトブラマイシンの拡散(またはその欠如)が、これらの細菌におけるアミノグリコシド耐性の少なくとも一つの機構に不可欠であることを示唆している(14, 33, 40)。それゆえ、G10KHc中の膜破壊AMPドメインおよびその既報の抗外膜活性(11)により、G10KHcは緑膿菌の外膜および内膜を透過化し、トブラマイシンの取り込みの増大を可能にし、認められた相乗作用を引き起こしているものと考えられた。
【0127】
G10KHcによる膜破壊が小分子の細胞内蓄積を媒介する可能性があることを確認するため、緑膿菌を一晩培養した物をLB中で1:50で希釈し、対数期まで増殖させ(3〜4時間、およそ1×10
5 cfu/mL)、その後、モック処理または2 μM G10KHcで処理した。5分後、膜が損なわれた細胞を、製造元のプロトコルにしたがい致死下のG10KHc濃度(2μM)の存在下または非存在下においてヨウ化プロピジウム(PI)(LIVE/DEAD Baclight Viable Stain, Invitrogen)で染色した。PIは、二本鎖DNAに結合し、かつ励起によって赤色の蛍光を発する小分子色素である。アミノグリコシドの内部移行を簡単にはアッセイできないので、トブラマイシンの代わりにPIを用いた。この色素は無傷の細胞膜を横断することができないため、細胞の生存分析によく使われる。DNAへの色素のインターカレーション(赤色染色)を蛍光顕微鏡検査法(Nikon E400)により倍率40×で検出した。明視野・赤色蛍光像を工場出荷時の設定(SPOT, Diagnostics)によって収集した。ペプチド処理およびPI染色後の殺菌活性を測定するため、培養物の可視化と並行して調製したサンプルを1:5で連続希釈後にLB寒天上にプレーティングした。QuantityOneソフトウェアを用い生存菌cfu/mLをGelDoc(BioRad)で撮像した。
【0128】
G10KHc誘導性の膜破壊によりPIのみと比べて核酸染色が増大するものと予想された。
図10に示すように、PIのみで処理した細菌は未染色のままであった。それに対し、細胞内PI染色は、PIおよびG10KHcに曝露した培養物において明らかに目に見えた。さらに、認められた赤色蛍光の量はG10KHc処理の量および長さに比例していた(データ記載せず)。本発明者らはG10KHcによって殺処理された緑膿菌を単に染色したものではないことを確実にするため、可視化した培養物から生存菌cfu/mLを評価した。
図10中の画像の下に示した連続希釈から、回復された生存緑膿菌の数はPIのみまたはPI/G10KHcで処理した培養物との間で同様であることが明らかであった。全体として、これらのデータは、G10KHcの致死下の投与量が膜損傷を引き起こし、代謝的に活性な緑膿菌細胞へのトブラマイシンまたはPIなどの、小分子の取り込みを促進しうることを示唆している。
【0129】
2.7 結論
概して、本研究において、本発明者らは緑膿菌に対するG10KHcの抗菌活性を詳しく調べた。G10KHcは緑膿菌の臨床分離株に対して極めて活性(トブラマイシンと同等)であることが分かった。最も興味深いことには、本発明者らは、緑膿菌のバイオフィルムおよび浮遊性培養物をG10KHcおよびトブラマイシンで同時処理した場合に殺処理活性の相乗作用様の増強を認めた。このデータにより、活性増強の機構には、G10KHcを介した細胞膜破壊によるトブラマイシンの取り込みの増大が必要となりうることが示唆される。これらの結果により、G10KHcは、特にトブラマイシンと同時投与される場合、急性および慢性感染状態の間の緑膿菌に対して有用でありうることが示唆される。
【0130】
緑膿菌は、CFの間の致死的な反復性感染に関与する持続性かつ再発性の日和見病原菌である。抗生物質耐性の緑膿菌が頻繁に分離されることは、現在処方されている処置選択肢が有効ではなくなってしまう前に新しい治療法を開発して、気道粘膜表面の緑膿菌定着を阻害および処置することが極めて重要であることを示唆している。
【0131】
本実験は、G10KHcが、広域抗菌スペクトルを持つその親ペプチドG10と比較して著しく改善されており、トブラマイシンのものと同様であることを示している。さらに、G10KHcは高密度の浮遊性培養物およびインビトロの緑膿菌バイオフィルムに対して有効である(
図3〜4)。トブラマイシンと比べて、G10KHcはバイオフィルム生存性の低減で1 μM当たりほぼ10倍効果的であった(100 μg/mLトブラマイシン = 213 μM、100 μg/mL G10KHc = 23.5 μM)。しかしながら、高密度の浮遊性細胞に対し、5 μM(2.34 μg/mL)のトブラマイシンのみで24時間後、5 μMのG10またはG10KHcのいずれかよりも顕著な殺菌性(1〜2 log
10の改善)が示された。トブラマイシン活性の相違は、細胞によるアミノグリコシドの確固たる取り込みを阻害する、緑膿菌バイオフィルムの内部に見られる嫌気性環境に関連している可能性がある。
【0132】
浮遊性またはバイオフィルム培養物において認められた抗緑膿菌活性の最大レベルは、両作用物質を一緒に適用した場合に生じた。同時投与したトブラマイシンおよびG10KHcは、殺処理活性の著しい増強をもたらした: 浮遊性およびバイオフィルム培養物においていずれかの作用物質のみによるよりも同時処理によってほぼ10,000倍以上の細菌が除去された。相加的および相乗的な抗緑膿菌活性が抗菌性ペプチドとトブラマイシンとの間で(Saiman et al., 2001)、およびトブラマイシンに加えて多数の他の慣用的な小分子抗生物質で(Bonacorsi et al., 1999)記載されているが、本実験は、バイオフィルム関連の緑膿菌がアミノグリコシド/ペプチドの組み合わせによって相乗的にまたは相加的に除去されるという最初の報告例に相当する。
【0133】
エアロゾル化されたトブラマイシンがCF患者における緑膿菌感染の制御に適応されており、ある程度予期できたことだが、緑膿菌および他の生物のトブラマイシンおよびアミノグリコシド耐性株がCF患者の喀痰から分離されている。この事実は、処置後の不快な呼吸困難、気管支けいれん、および咳の増加の割合が比較的高いことと合わせて、トブラマイシンを別の作用物質と組み合わせて最少投与量のサイズで最良に利用できることを示唆している。G10KHcは、人工的に作り出したそのシュードモナス菌選択性、ならびに緑膿菌バイオフィルムならびに多剤かつアミノグリコシド耐性株に対する強力な抗微生物作用から同時投与の候補になりうると結論付けられる。
【0134】
実施例3. STAMPおよび/または化学的アンタゴニスト(例えば、rhDNase)を合成するためにD-アミノ酸鏡像異性体を用いることでのG10KHc STAMPの安定性および活性の増強
3.1 材料調製および方法
[標的化ドメイン-リンカー-抗菌性ドメイン])、およびD-鏡像異性体G10KHc-Dを既報(Eckert et al., 2006)のように、G10KHc-D用にAnaspec(San Jose, CA)から購入したD-アミノ酸を用い、431Aペプチド合成機(Applied Biosciences)にてFast-Fmoc(9-フルオレニルメトキシカルボニル)法により合成した。
【0135】
異なる患者由来の喀痰8サンプルをロサンゼルス小児病院(Los Angeles, CA, USA)で日常の診療の間にCFの患者から採取し、収集から1時間以内に-80℃で貯蔵した。本研究のための喀痰サンプルの収集はロサンゼルス小児病院の施設内倫理委員会によって承認された(CCI #05-00040)。年齢、性別および予後を含め、全ての個人識別情報は本発明者らの研究室には知らされなかった。
【0136】
3.2 喀痰中でのG10KHcおよびG10KHc-Dの活性および安定性
喀痰中のペプチドによる抗微生物作用または活性の測定を過去の報告(Sajjan et al., 2001)と同じような方法で詳しく行った。喀痰中の外因性緑膿菌に対するG10KHcおよびG10KHc-Dの活性をアッセイするため、収集した喀痰サンプルを10 mM PBS(PBS)中で1:10で希釈し、プールした(プール喀痰という)。プール喀痰100 μLの中に、ATCC 15692を終濃度およそ5×10
6 cfu/mLまで添加し、その後、25 μMペプチドの添加を行った。
【0137】
ペプチド活性に及ぼすプロテアーゼ阻害剤の影響を調べるサンプルにおいては、プール喀痰サンプルを1 mMプロテアーゼ阻害剤と、フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、β-メルカプトエタノール(BME)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)(全てSigma-Aldrichから入手した)のいずれかで30分間前処理し、引き続き25 μM G10KHcおよびATCC 15692(およそ5×10
6 cfu/mL)の添加を行った。
【0138】
ペプチド処理を生き延びた細菌を4時間の時点で増殖培地中での希釈(1:50)によって救出し、氷上に保持し、その後、適切な希釈およびアンピシリン(25 μg/mL)を補充したLB寒天上でのプレーティングを行った。37℃での一晩インキュベーションの後、コロニーをカウントし、生存菌cfu/mLを定量化した。100 cfu/mLを全てのプレーティング手順に対してカウント可能な限度とみなした。プール喀痰中に既存の内因性生物を認めたが、外因的に添加された細胞と比べて小数の集団であった(1%未満、データ記載せず)。結果として、内因菌および外因菌cfu/mLはこれらの培養物に対して差別化されなかった。
【0139】
CF患者由来の喀痰サンプル中のG10KHcの一般的な抗微生物作用を殺処理反応速度アッセイによって評価した。
図11Aに示すように、ペプチド添加後4時間の時点で、G10KHcはプール喀痰サンプルと混合された場合、外因的に添加された緑膿菌に対して活性ではなかった。G10KHc STAMPは30分の曝露後に回復菌cfu/mLを90%以上低減し、2時間の処理によって全緑膿菌cfu/mLを排除することが分かっていたので、この所見は増殖培地中でのG10KHc活性とは対照的であった(実験2参照)。
【0140】
G10KHc活性の喪失が分解によるものであった可能性が高いことを考慮して、喀痰中でのG10KHc STAMPの安定性を経時的に調べた。喀痰中のペプチドの安定性をHPLCによりモニターした。手短に言えば、プール喀痰サンプルをPBS中で1:10で希釈し、繰り返し遠心分離して、不溶性材料を除去した。G10KHcまたはG10KHc-D(100 μM)を次いで、希釈したプール喀痰(1時間1 mM PMSFでの前処理有りまたは無しの)100 μLに添加し、室温で混合した。表示した時点で、10% HCl 20 μLを添加してペプチド分解を停止し、サンプルを2回ろ過(0.2 μmナイロン, Nunc)した後に、カラム(Source 15 RPC, Amersham)に注入した。移動相として0.1%トリフルオロ酢酸を含む水/アセトニトリルを使用し、流速0.25 mL/分、運転1回当たり移動相11.5 mLで、アセトニトリル組成を増加させる直線勾配(10%から約35%)によりサンプルを溶出させた。インタクトなG10KHcおよび分解産物をUV(215 nm)によってモニターし、表示した場所で画分を収集した。連続的な運転から収集した画分をプールし、一晩凍結乾燥した後に、前述のMICアッセイ法により抗菌活性の評価を行った。HPLCプロファイルを、製造元のプロトコル(Unicorn, Amersham)によって取得し、
図11Bの作図のためにPhotoshop 7.0(Adobe)を用いて示差的に着色し、重ね合わせた。
【0141】
図11Bに示すように、G10KHcに対する典型的なピーク(保持容量10.29)は喀痰に30分曝露した後にほぼ完全に分解された。得られた画分のいくつかを収集し、質量分析によってできる限りの分解産物を同定した。それらのどれもいくつかの緑膿菌臨床分離株に対して100 μM未満のMICを示さなかった(表6)。
【0142】
(表6)G10KHc、G10KHc-D、および喀痰により消化された産物のMIC(μM)
a3回の独立した実験のMIC範囲
b既報のデータを比較のために含めた(6)
c図1Bに示した画分
【0143】
増大したレベルのセリンプロテアーゼがCF患者の喀痰中に存在することは当技術分野において公知である。したがって、本発明者らは、認められた急速なG10KHcの分解に、このクラスのプロテアーゼが関与していると仮定し、プロテアーゼ阻害剤が喀痰中でG10KHcを安定化させて、抗菌性機能を復元できるのではないかと仮定しようと考えた。この可能性を検証するため、緑膿菌およびG10KHcを種々のプロテアーゼ阻害剤で前処理したプール喀痰サンプルに添加し、生存菌を定量化した。BME(システインプロテアーゼ阻害剤)またはEDTA(メタロプロテアーゼ阻害剤)で処理したサンプルは、G10KHc活性または安定性の救出に効果がなかった(データ記載せず)。しかしながら、
図11Aに示すように、一般的なセリンプロテアーゼ阻害剤PMSFで前処理したサンプル中ではG10KHc STAMPによって緑膿菌が効果的に殺処理された(3 log
10を超える生存菌cfu/mLの低減)。この阻害剤のみでは緑膿菌の生存能に及ぼす影響がごくわずかにしかなかった。したがって、PMSFにより処理した喀痰由来のG10KHcのシグナルは、HPLCによって調べた場合、4時間までずっと高いままであった(
図11B)。全体として、これらのデータは、G10KHcがセリンプロテアーゼ分解から保護される場合、喀痰中で緑膿菌に対して活性であることを示唆している。
【0144】
3.3 D鏡像異性体のG10KHc STAMPおよびその活性
ほとんどのセリンプロテアーゼのキラル要求性(Milton et al., 1992)により、阻害剤を使わずにプロテアーゼ活性を回避するための別の手段として、全てD-アミノ酸鏡像異性体のG10KHcであるG10KHc-Dを合成した。G10KHc-Dを記載の標準的な固相法によって合成し、質量分析によって確認した。
【0145】
図11Aに示すように、G10KHc-Dは4時間のペプチド曝露後に回復緑膿菌のレベルを3〜4 log
10低減し(未処理サンプルと比べて)、G10KHc-Dは安定化時にL-G10KHcのものと同様の喀痰中活性レベルを有することが示唆された。しかしながら、この鏡像異性体は24時間後、増殖培地中の緑膿菌に対する影響が低く(MICによって評価した場合、表6)、G10KHc-DおよびL-G10KHcが完全に同じ活性を持ってはいないことが示唆された。
【0146】
3.4 喀痰中でのSTAMP活性に及ぼすrhDNaseの作用
喀痰の粘性を低減し、気道浄化を促進するためにCFの処置の間によく使われる組換えヒトDNase(Fuchs et al., 1994)を、プールした、濃縮喀痰サンプルに添加して、G10KHc/PMSFおよびG10KHc-D活性がこれらの条件下の同時処理の間に改善されうるかどうかを判定した。STAMP殺処理能に及ぼすrhDNase(Genentech, San Francisco, CA)の作用を判定するため、個々の喀痰サンプルを100 μg/mL rhDNase中で1:2で希釈し、手短にボルテックスし、室温で10分間インキュベートした。次いで、処理サンプルをプールした後に、必要に応じて、1 mM PMSFの添加、および1時間のインキュベーションを行った。次に25 μMのG10KHcまたはG10KHc-Dを約5×10
6 cfu/mLのATCC 15692とともに添加し、4時間インキュベートした。その後、生存菌を前述のように救出し、プレーティングにより定量化した。
【0147】
図12に示すように、本発明者らは、rhDNaseをG10KHc/PMSFまたはG10KHc-Dと併せて利用した場合、rhDNaseで処理しなかったサンプル(回復された未処理菌cfu/mLのおよそ30%)と比べて、抗菌活性の明らかな増強(残存した未処理菌cfu/mLの5%未満)を認めた。緑膿菌はrhDNase処理のみによっては影響を受けなかった。これらの結果は、喀痰中でのG10KHc/PMSFまたはG10KHc-Dの殺処理作用が、喀痰の粘性を低減し、ペプチドの拡散を増強しうる喀痰粘液溶解薬との同時処理によってさらに増強される可能性があることを示唆している。
【0148】
3.5 結論
概して、G10KHcの活性はD型ペプチドを構築することによって、ならびに/あるいはプロテアーゼ阻害剤をおよび/またはrhDNaseと併せて同時投与することによってタンパク質分解的切断から保護された場合、喀痰中で長くなりうる。具体的には、この体液に関連するセリンプロテアーゼ依存的な消化が化学的アンタゴニストによって、またはD-アミノ酸鏡像異性体のG10KHcの構築によって阻害されれば、強固なG10KHc STAMP活性が喀痰中で維持されうることが分かった。さらに、喀痰中でのSTAMP活性は、サンプルをペプチドおよびrhDNaseの組み合わせで処理した場合にさらに増強されうることが明らかになった。これらの結果は、G10KHcなどの、プロテアーゼ感受性のペプチドに基づく作用物質が従来の小分子抗生物質の代わりとして、またはその抗生物質と組み合わせて使用される場合には特に、CFを処置するのに併用療法を模索することの重要性を例証している。
【0149】
実験4. ペプチド1903およびBD2.21ならびにそのSTAMPの同定
S.ミュータンスUA 140のゲノム配列をスキャンすることにより、標的化ペプチド1903を得た。公表されているゲノムのうちで予測されるオープンリーディングフレーム(ORF)を調べ、50アミノ酸未満のタンパク質をコードしていたORFに注を付し、ゲノム全体をスキャンした後でもう一度調べた。これらのORFによってコードされることが予測されるいくつかのペプチドを選択し、蛍光標識とともに合成し、S.ミュータンス・バイオフィルムとの結合に対する試験を行った。ペプチド1903はS.ミュータンスとの結合活性を示したので、これを、1903に基づくSTAMPの合成に使用した。
【0150】
BD2.21は「β-欠失2(Beta-deletion 2)」抗菌性ペプチドライブラリの一部として合理的に設計された。表示した位置にほぼ陽性(C)および疎水性(H)の残基を用いて、共通のαヘリックス残基配置HHCCHHCHHH(n)に交換した。本発明者らが用いた残基のパターンにはバラツキがあり、それで、いくつかの非疎水性および非荷電性残基を組み入れた。交換は1ペプチド当たり、3〜5個の陽イオン性アミノ酸、および4〜7個の疎水性残基(合計9〜12個)に限定した。修飾ペプチドの抗微生物作用を試験し、BD2.21が浮遊性のS.ミュータンスに対して5.5 μMのMICを示した。その後、BD2.21を用いて、SEQ ID NO:13に示したように
のアミノ酸配列を有する1903-BD2.21およびSEQ ID NO:14に示したように
のアミノ酸配列を有するC16-BD2.21などの、BD2.21に基づくSTAMPを合成した。
【0151】
単一種ミュータンス連鎖球菌成熟バイオフィルムの殺処理
48ウェルプレートの中にS.ミュータンス・バイオフィルムを、細胞10
5個/ウェルで播種し、1%スクロース(TH培地)で一晩増殖させた(終容量400 μL)。インキュベーション後、上清をバイオフィルムから除去し、50 μM STAMPを含むPBS 200 μLと交換した。PBSのみを陰性対照(100%生存)に用い、エタノールを完全なバイオフィルム殺処理の対照(0%生存)として用いた。バイオフィルムを20分間ペプチドで処理し、その後PBSで1回洗浄した。バイオフィルムの生存を測定するため、1ウェル当たり、TH培地160 μLに希釈したCellTiterBlue 20 μLを添加した。3〜5分後、上清を96ウェルプレートに取り出し、570 nmで吸光度を測定した。570 nmの吸光度が高いことは、バイオフィルム中の残存生細胞によるいっそう多くの基質還元を示唆するものであった。
図13に示したように、この結果は、C16-BD2.21および1903-BD2.21がわずか20分の処理時間後に、バイオフィルム内のS.ミュータンス生細胞の、それぞれ、66%および85%を殺処理できることを示唆している。
【0152】
口腔内連鎖球菌の多種バイオフィルムに対するSTAMPの選択性
STAMPの選択性を測定するため、混合種バイオフィルムを48ウェルプレートに播種した。ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)、S.ソブリニス(S. sobrinus)、S.ゴルドニイ、およびS.サングイニスをS.ミュータンス株JM11(スペクチノマイシン耐性株)と1:1:1:1:10の比で、細胞
105個/ウェルの総数で混合した。バイオフィルムを18〜24時間、1%スクロース、1%デキストロース、および1%マンノースを含むTH培地中で一晩増殖させた。成熟バイオフィルムを、単一種バイオフィルムアッセイについて記載したように同じ対照を含め、PBSに加えSTAMPで処理した。処理後、バイオフィルムをPBS中で2回洗浄し、1ウェル当たりPBS 100 μL中で無菌のピペットチップにより物理的に破壊した。次いで細胞懸濁液を10倍〜
10-6倍まで連続的に希釈した。次いで希釈した懸濁液をTH培地およびスペクチノマイシン800 μg/mLを補充したTH上にプレーティングした。THのみのプレート由来のコロニーをカウントすることにより、バイオフィルム殺処理の総量(全連鎖球菌)を測定した。対照: 未処理の100%は未処理バイオフィルムから記録されたcfu/mL数に相当し、0%の生存はエタノール無菌サンプルから得た。S.ミュータンス殺処理を、TH-スペクチノマイシンプレート上のコロニーの定量化から判定し、合わせた総cfu/mLを利用してS.ミュータンス:総菌群の比率を計算した。比率1:1は選択性なしを示す。
【0153】
図14に示すように、C16-BD2.21は総菌群cfu/mLに影響を与えず、S.ミュータンス以外の連鎖球菌はこのSTAMPによってあまり影響を受けていないことが示唆された(
図14(A)参照)。これは、認められた、S.ミュータンス生存菌と全連鎖球菌との比率.075によって確認される(
図14(B)参照)。1903-BD2.21も選択的な比率を有していた(1下のウェル、
図14(B)参照)、が他の口腔内連鎖球菌にも何らかの影響を与えていた(
図14(A)参照)。
【0155】
本開示における参考文献は以下に記載されており、それらの全体が組み入れられる。