特許第5775263号(P5775263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775263
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】車両用ミラー装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/072 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   B60R1/072
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-25593(P2010-25593)
(22)【出願日】2010年2月8日
(65)【公開番号】特開2011-162011(P2011-162011A)
(43)【公開日】2011年8月25日
【審査請求日】2012年7月25日
【審判番号】不服2014-10818(P2014-10818/J1)
【審判請求日】2014年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】工藤 信寛
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 功
【合議体】
【審判長】 島田 信一
【審判官】 出口 昌哉
【審判官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0063465(US,A1)
【文献】 国際公開第2006/040799(WO,A1)
【文献】 特開平8−108798(JP,A)
【文献】 特表2005−513376(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0105181(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられるミラーと、
前記ミラーが保持され、回動されて前記ミラーの鏡面角度が調整される回動部材と、
前記回動部材に設けられた摺動部と、
前記回動部材が回動可能に保持され保持部材と、
前記保持部材に設けられると共に、前記回動部材の回動中心を中心として球面状に湾曲され、前記回動部材が回動される際に前記回動部材側の端部全体と前記回動部材との間に前記回動部材の回動径方向において隙間が設けられた状態で前記摺動部が摺動可能にされて、前記回動部材側の端部より前記回動部材とは反対側の部分に前記摺動部が摺動可能にされる回動面と、
を備えた車両用ミラー装置。
【請求項2】
車両に設けられるミラーと、
前記ミラーが保持され、回動されて前記ミラーの鏡面角度が調整される回動部材と、
前記回動部材に設けられた摺動部と、
前記回動部材が回動可能に保持され保持部材と、
前記保持部材に設けられると共に、前記回動部材の回動中心を中心として球面状に湾曲され、前記回動部材が回動される際に前記摺動部が摺動されると共に、前記摺動部が摺動する面積が前記摺動部の摺動部位の面積に比し大きくされて、前記回動部材側の端部より前記回動部材とは反対側の部分に前記摺動部が摺動可能にされる回動面と、
を備えた車両用ミラー装置。
【請求項3】
車両に設けられるミラーと、
前記ミラーが保持され、回動されて前記ミラーの鏡面角度が調整される回動部材と、
前記回動部材に設けられた摺動部と、
前記回動部材が回動可能に保持され保持部材と、
前記保持部材に設けられると共に、前記回動部材の回動中心を中心として球面状に湾曲され、前記回動部材が回動される際に前記摺動部が摺動されると共に、曲率が前記摺動部の摺動部位に比し小さくされて、前記回動部材側の端部より前記回動部材とは反対側の部分に前記摺動部が摺動可能にされる回動面と、
を備えた車両用ミラー装置。
【請求項4】
前記回動部材に連結されると共に、前記回動面の内周側に配置され、前記回動部材を駆動して回動させる駆動部材を備えた請求項1〜請求項3の何れか1項記載の車両用ミラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラーが保持される回動部材が回動されてミラーの鏡面角度が調整される車両用ミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された鏡面角度調整装置では、ミラーがピボットプレートに取り付けられており、ピボットプレートがハウジングに回動可能に保持されている。このため、ピボットプレートが駆動されて回動されることで、ミラーの鏡面角度が調整される。
【0003】
さらに、ピボットプレートに摺動部が設けられると共に、ハウジングに受部が形成されており、ピボットプレートが回動される際には、摺動部が受部に摺動される。
【0004】
しかしながら、この鏡面角度調整装置では、摺動部がピボットプレートの回動中心を中心として湾曲されており、ピボットプレートが回動される際には、摺動部が受部のピボットプレート側の端部に摺動される。
【0005】
このため、摺動部と受部との摺動部分に外部環境の砂塵等が侵入し易く、外部環境に対する耐性が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/040799号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事実を考慮し、外部環境に対する耐性を高くできる車両用ミラー装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の車両用ミラー装置は、車両に設けられるミラーと、前記ミラーが保持され、回動されて前記ミラーの鏡面角度が調整される回動部材と、前記回動部材に設けられた摺動部と、前記回動部材が回動可能に保持され保持部材と、前記保持部材に設けられると共に、前記回動部材の回動中心を中心として球面状に湾曲され、前記回動部材が回動される際に前記回動部材側の端部全体と前記回動部材との間に前記回動部材の回動径方向において隙間が設けられた状態で前記摺動部が摺動可能にされて、前記回動部材側の端部より前記回動部材とは反対側の部分に前記摺動部が摺動可能にされる回動面と、を備えている。
【0009】
請求項2に記載の車両用ミラー装置は、車両に設けられるミラーと、前記ミラーが保持され、回動されて前記ミラーの鏡面角度が調整される回動部材と、前記回動部材に設けられた摺動部と、前記回動部材が回動可能に保持され保持部材と、前記保持部材に設けられると共に、前記回動部材の回動中心を中心として球面状に湾曲され、前記回動部材が回動される際に前記摺動部が摺動されると共に、前記摺動部が摺動する面積が前記摺動部の摺動部位の面積に比し大きくされて、前記回動部材側の端部より前記回動部材とは反対側の部分に前記摺動部が摺動可能にされる回動面と、を備えている。
【0010】
請求項3に記載の車両用ミラー装置は、車両に設けられるミラーと、前記ミラーが保持され、回動されて前記ミラーの鏡面角度が調整される回動部材と、前記回動部材に設けられた摺動部と、前記回動部材が回動可能に保持され保持部材と、前記保持部材に設けられると共に、前記回動部材の回動中心を中心として球面状に湾曲され、前記回動部材が回動される際に前記摺動部が摺動されると共に、曲率が前記摺動部の摺動部位に比し小さくされて、前記回動部材側の端部より前記回動部材とは反対側の部分に前記摺動部が摺動可能にされる回動面と、を備えている。
【0012】
請求項4に記載の車両用ミラー装置は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用ミラー装置において、前記回動部材に連結されると共に、前記回動面の内周側に配置され、前記回動部材を駆動して回動させる駆動部材を備えている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の車両用ミラー装置では、車両に設けられるミラーが回動部材に保持されると共に、回動部材が保持部材に回動可能に保持されており、回動部材が回動されて、ミラーの鏡面角度が調整される。
【0014】
さらに、回動部材に摺動部が設けられると共に、保持部材に回動面が設けられている。
【0015】
ここで、回動部材が回動される際に、回動面の回動部材側の端部全体と回動部材との間に回動部材の回動径方向において隙間が設けられた状態で、摺動部が回動面に摺動可能にされている。このため、摺動部が回動面の回動部材側の端部より回動部材とは反対側の部分に摺動可能にされている。これにより、摺動部と回動面との摺動部分に外部環境の砂塵等が侵入することを抑制でき、外部環境に対する耐性を高くできる。
【0016】
請求項2に記載の車両用ミラー装置では、車両に設けられるミラーが回動部材に保持されると共に、回動部材が保持部材に回動可能に保持されており、回動部材が回動されて、ミラーの鏡面角度が調整される。
【0017】
さらに、回動部材に摺動部が設けられると共に、保持部材に回動面が設けられており、回動部材が回動される際に、摺動部が回動面に摺動される。
【0018】
ここで、摺動部が摺動する回動面の面積が、摺動部の回動面との摺動部位の面積に比し、大きくされている。このため、摺動部が回動面の回動部材側の端部より回動部材とは反対側の部分に摺動可能にされている。これにより、摺動部と回動面との摺動部分に外部環境の砂塵等が侵入することを抑制でき、外部環境に対する耐性を高くできる。
【0019】
請求項3に記載の車両用ミラー装置では、車両に設けられるミラーが回動部材に保持されると共に、回動部材が保持部材に回動可能に保持されており、回動部材が回動されて、ミラーの鏡面角度が調整される。
【0020】
さらに、回動部材に摺動部が設けられると共に、保持部材に回動面が設けられており、回動部材が回動される際に、摺動部が回動面に摺動される。
【0021】
ここで、回動面の曲率が、摺動部の摺動部位の曲率に比し、小さくされている。このため、摺動部が回動面の回動部材側の端部より回動部材とは反対側の部分に摺動可能にされている。これにより、摺動部と回動面との摺動部分に外部環境の砂塵等が侵入することを抑制でき、外部環境に対する耐性を高くできる。
【0022】
請求項1〜請求項3に記載の車両用ミラー装置では、回動面が回動部材の回動中心を中心として球面状に湾曲されている。
【0023】
このため、摺動部が回動面の回動部材側の端部より回動部材とは反対側の部分に摺動される場合には、摺動部と回動面との間に回動部材の回動径方向における寸法バラツキが発生しても、回動部材が回動される際に、回動部材の回動中心の回動面中心軸方向への変位量を小さくできる。これにより、回動部材の回動を安定させることができる。
【0024】
請求項4に記載の車両用ミラー装置では、回動部材に駆動部材が連結されており、駆動部材は、回動部材を駆動して回動させる。
【0025】
ここで、回動面の内周側に、駆動部材が配置されている。このため、回動面を大きくでき、回動部材の回動を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置の鏡面調整装置を示す下方から見た断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置の鏡面調整装置を示す車両後方から見た正面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置の鏡面調整装置を示す車両後斜め下方から見た分解斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置の鏡面調整装置の主要部を示す下方から見た断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置の鏡面調整装置のミラーホルダの回動中心部分を示す下方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1には、本発明の車両用ミラー装置が適用された実施の形態に係る車両用ドアミラー装置10の主要部が下方から見た断面図にて示されており、図2には、車両用ドアミラー装置10の主要部が車両後方から見た正面図にて示されている。さらに、図3には、車両用ドアミラー装置10の主要部が車両後斜め下方から見た分解斜視図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車幅方向一方を矢印WOで示し、上方を矢印UPで示している。
【0028】
本実施の形態に係る車両用ドアミラー装置10は、車両のドアに設置されており、車両用ドアミラー装置10の内部には、鏡面角度調整装置12が設けられている。
【0029】
図1図3に示す如く、鏡面角度調整装置12は、保持部材を構成する本体部としての略半球形容器状のケース14を備えており、ケース14は、車両用ドアミラー装置10の内部に固定されている。ケース14の車両後側面は、開口されており、ケース14の内周側の車両前側面は、円状の底面16にされている。ケース14の内周側の車両後側面は、環状の回動面18にされており、回動面18は、下記ミラーホルダ40の回動中心Oを中心とした球面状に湾曲されている。
【0030】
ケース14の底面16には、保持部材を構成する固定部としての容器状のケースインナ20が固定されており、ケースインナ20の車両前側面は、開口されている。ケースインナ20の車両後側面には、保持部としての略半球面状の保持面22が形成されており、保持面22は、車両後側面が開口されると共に、下記ミラーホルダ40の回動中心Oを中心とした球面状に湾曲されている。保持面22の底部(車両前側端部)には、係止部としての円筒状の固定筒24が一体に形成されており、固定筒24の中心軸は、回動面18及び保持面22の中心軸に一致されている。
【0031】
ケース14の底面16には、駆動手段としてのモータ26が一対設けられており、一対のモータ26は、ケースインナ20内に固定されている。モータ26の出力軸は、ケースインナ20外に延出されており、モータ26の出力軸には、ウォーム28が固定されている。
【0032】
ケース14の底面16には、連絡部材としての略円筒状のホイルドライブ30が一対回転自在に支持されている。ホイルドライブ30には、ウォームホイル32が形成されており、ウォームホイル32は、モータ26のウォーム28に噛合(係合)されている。このため、モータ26が駆動されて、ウォーム28が回転されることで、ウォームホイル32が回転されて、ホイルドライブ30が回転される。
【0033】
ホイルドライブ30には、係合部としての噛合爪34が所定数(本実施の形態では3個)一体に形成されており、所定数の噛合爪34は、ホイルドライブ30の周方向に等間隔に配置されている。噛合爪34は、ホイルドライブ30から車両後側へ延出されて、弾性を有しており、噛合爪34の先端(車両後側端)は、ホイルドライブ30の径方向内側に突出されている。
【0034】
ホイルドライブ30内には、駆動部材としての略円軸状のロッドドライブ36が挿入されており、ロッドドライブ36の中心軸周りの回転は、規制されている。一対のロッドドライブ36は、ケース14の回動面18の内周側に配置されており、一方のホイルドライブ30は、回動面18の中心軸の下方又は上方に配置されると共に、他方のホイルドライブ30は、回動面18の中心軸の車幅方向他方又は車幅方向一方に配置されている。
【0035】
ロッドドライブ36の先端部(車両後側端部)以外の部分は、ネジ38にされており、ネジ38には、ホイルドライブ30の噛合爪34先端が噛合(係合)されている。このため、上述の如く、モータ26が駆動されて、ホイルドライブ30(噛合爪34を含む)が回転されることで、噛合爪34先端のネジ38への噛合位置が変位されて、ロッドドライブ36が車両前後方向へ移動される。
【0036】
ケース14の車両後側には、回動部材としてのミラーホルダ40が設けられており、ミラーホルダ40には、平板状のホルダ部42が形成されている。
【0037】
図5に詳細に示す如く、ホルダ部42の中央には、略半球壁状の保持壁44が一体に形成されており、保持壁44は、車両後側面が開口されると共に、下記ミラーホルダ40の回動中心Oを中心とした球状に湾曲されている。保持壁44の底部(車両前側部)には、円状の貫通孔46が形成されており、貫通孔46には、ケースインナ20の固定筒24が貫通されている。これにより、保持壁44がケースインナ20の保持面22に嵌合されている。
【0038】
保持壁44内には、付勢部材としての略円筒状のサポートピボット48が設けられており、サポートピボット48内には、ケースインナ20の固定筒24が貫通されている。サポートピボット48の車両前側端の内径は、サポートピボット48の車両前側端以外の部分の内径に比し、小さくされており、サポートピボット48の車両前側端内には、固定筒24が嵌合されている。
【0039】
サポートピボット48の外周には、略半球壁状の付勢壁50が一体に形成されており、付勢壁50は、車両後側面が開口されると共に、下記ミラーホルダ40の回動中心Oを中心とした球状に湾曲されている。付勢壁50は、ミラーホルダ40の保持壁44に嵌合されており、サポートピボット48の車両前側端とケースインナ20の保持面22との間には、車両前後方向において、最小幅Wの隙間が形成されている。
【0040】
サポートピボット48内には、ケースインナ20の固定筒24の外周側において、付勢手段としてのコイルスプリング52が設けられており、コイルスプリング52の車両前側端は、サポートピボット48の車両前側端に係止されている。
【0041】
ケースインナ20の固定筒24内には、固定部材を構成するスクリュウ54が螺合されており、スクリュウ54は、固定部材を構成する円環板状のワッシャ56内に貫通されている。ワッシャ56は、コイルスプリング52の車両前側端が係止されて、スクリュウ54の頭部54Aに係止されており、コイルスプリング52は、圧縮されて、サポートピボット48の車両前側端を車両前方へ付勢している。
【0042】
これにより、コイルスプリング52の付勢力によってサポートピボット48の付勢壁50とケースインナ20の保持面22との間にミラーホルダ40の保持壁44が挟持されて、ミラーホルダ40がケースインナ20に回動中心Oを中心として回動可能に保持されている。
【0043】
図1図3に示す如く、ロッドドライブ36の先端部(車両後側端部)は、ミラーホルダ40のホルダ部42を回動可能に保持しており、上述の如く、モータ26が駆動されて、ロッドドライブ36が車両前後方向へ移動されることで、ミラーホルダ40が駆動されて回動される。
【0044】
ホルダ部42の車両前側面には、略半球壁状の回動壁58が一体に形成されており、回動壁58の車両前側面は、開口されている。回動壁58は、ケース14の回動面18の内周側に配置されており、回動壁58の外周面及び内周面は、ミラーホルダ40の回動中心Oを中心とした球面状に湾曲されている。
【0045】
図4に詳細に示す如く、回動壁58の車両前側端全周には、断面矩形状の摺動部60が一体に形成されており、摺動部60は、回動壁58から車両前側かつ径方向外側に突出している。摺動部60の外周面及び内周面は、回動壁58の中心軸を中心とした円周面にされており、摺動部60の車両前側面は、摺動部60の径方向内側へ向かうに従い車両前側へ向かう方向へ傾斜されている。
【0046】
摺動部60の外周面と車両前側面との間の角部は、摺動部位60Aにされており、摺動部位60Aは、曲率(ケース14の回動面18の中心軸が通過する平面における断面の曲率)が回動面18に比し大きくされて、回動面18に接触(線接触、圧接)されている。このため、ミラーホルダ40が回動されることで、摺動部位60Aが回動面18に摺動する。なお、摺動部位60Aは、摺動部60の内周面と車両前側面との間の角部や摺動部60の車両前側面の一部又は全体であってもよい。
【0047】
回動壁58と回動面18との間には、摺動部位60Aより車両後側(ミラーホルダ40のホルダ部42側)の全体において、隙間62が形成されており、隙間62の径方向幅は、摺動部60の外周面と回動面18との間を除き、一定にされている。また、摺動部位60Aが摺動する回動面18の面積は、摺動部位60Aの面積に比し大きくされている。
【0048】
図1に示す如く、ミラーホルダ40のホルダ部42には、車両後側において、ミラー64が保持されており、ミラー64は、ミラーホルダ40と一体に回動可能にされている。ミラー64の車両後側面は、鏡面64Aにされており、ミラー64によって車両の乗員が車両後側を視認可能にされている。
【0049】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0050】
以上の構成の車両用ドアミラー装置10では、鏡面角度調整装置12において、モータ26が駆動されて、ウォーム28が回転されることで、ホイルドライブ30(ウォームホイル32及び所定数の噛合爪34を含む)が回転されて、ロッドドライブ36が車両前後方向へ移動される。このため、ロッドドライブ36によってミラーホルダ40及びミラー64が駆動されて、ミラーホルダ40及びミラー64が回動中心Oを中心として上下方向及び車幅方向の少なくとも一方において回動されることで、ミラー64の鏡面64Aの角度が上下方向及び車幅方向の少なくとも一方において調整される。
【0051】
また、手動によりミラー64からミラーホルダ40に回動力が作用されて、ホイルドライブ30の噛合爪34が一時的に弾性変形されることで、ロッドドライブ36のネジ38の凸部が噛合爪34の先端を乗り越えて、噛合爪34先端のネジ38への噛合位置がネジ38軸方向(車両前後方向)へ変位される。このため、手動により、ロッドドライブ36が車両前後方向へ移動されて、ミラーホルダ40及びミラー64が回動中心Oを中心として上下方向及び車幅方向の少なくとも一方において回動されることで、ミラー64の鏡面64Aの角度が上下方向及び車幅方向の少なくとも一方において調整される。
【0052】
ミラーホルダ40が回動される際には、ミラーホルダ40の保持壁44がケースインナ20の保持面22及びサポートピボット48の付勢壁50に摺動されると共に、ミラーホルダ40の摺動部60(摺動部位60A)がケース14の回動面18に摺動される。
【0053】
特に、ケース14の回動面18及びミラーホルダ40の摺動部60(摺動部位60A)の少なくとも一方に寸法バラツキがある場合には、ミラーホルダ40が駆動されて回動される際に、サポートピボット48が、コイルスプリング52の付勢力に抗して車両前側へ移動され、又は、特に付勢壁50を弾性変形されて車両後側へ移動されることで、ミラーホルダ40の回動中心Oが車両前後方向へ変位されて、当該寸法バラツキが吸収される。
【0054】
また、上述の如くミラーホルダ40が駆動されて回動される際にサポートピボット48が特に付勢壁50を弾性変形されて車両後側へ移動されることを許容するために、サポートピボット48の車両前側端とケースインナ20の保持面22との間には、車両前後方向において、最小幅Wの隙間が形成されている。
【0055】
さらに、上述の如く手動によりミラー64の鏡面64Aの角度が調整される際には、サポートピボット48の車両前側端と保持面22との間の隙間の最小幅Wだけ、ミラー64及びミラーホルダ40がサポートピボット48(特に付勢壁50)の弾性変形により車両前側へ移動された状態(サポートピボット48の車両前側端が保持面22に当接された状態)で、ホイルドライブ30の噛合爪34先端のロッドドライブ36(ネジ38)への噛合位置がネジ38軸方向へ変位されて、ミラー64及びミラーホルダ40の回動角度が調整される。その後、ミラー64及びミラーホルダ40がサポートピボット48(特に付勢壁50)の弾性復元により車両後側へ移動される。
【0056】
ここで、ミラーホルダ40の摺動部60の摺動部位60Aは、ケース14の回動面18に比し、曲率が大きくされており、摺動部位60Aが摺動する回動面18の面積は、摺動部位60Aの面積に比し大きくされている。さらに、ミラーホルダ40の回動壁58と回動面18との間には、摺動部位60Aより車両後側の全体において、隙間62が形成されている。
【0057】
このため、ミラーホルダ40が回動される際には、摺動部位60Aが回動面18の車両後側(ミラーホルダ40のホルダ部42側)の端部より車両前側(ミラーホルダ40のホルダ部42とは反対側)の部分に摺動可能にされている。これにより、摺動部位60Aと回動面18との摺動部分に外部環境の砂塵等が侵入することを抑制でき、外部環境に対する耐性を高くできる。
【0058】
また、図1及び図4に示す如く、摺動部位60Aと回動面18との間にミラーホルダ40の回動径方向における寸法バラツキLが発生した場合には、回動面18の車両後側開口面(車両前後方向に垂直な垂直面)とミラーホルダ40の回動中心O及び摺動部位60Aを通過する直線との角度をθとすると、摺動部位60Aの車両前後方向への変位量H(ミラーホルダ40の回動中心Oの車両前後方向への変位量Hに等しい)は、
H=L/sinθ
となる。
【0059】
このため、摺動部位60Aが回動面18の車両後側の端部より車両前側の部分に摺動される場合には、摺動部位60Aと回動面18との間に寸法バラツキLが発生しても、角度θが大きいため、ミラーホルダ40が回動される際に、ミラーホルダ40の回動中心Oの車両前後方向(回動面18中心軸方向)への変位量Hを小さくできる。
【0060】
これにより、ミラーホルダ40が駆動されて回動される際において、ミラーホルダ40の回動中心Oの車両前後方向への変位を許容するためにサポートピボット48が車両前後方向へ移動されることによるコイルスプリング52の付勢力の変動、及び、摺動部位60Aの回動面18への圧接力の変動を小さくできる。したがって、保持壁44の保持面22及び付勢壁50に対する摺動抵抗の変動、及び、摺動部位60Aの回動面18に対する摺動抵抗の変動を小さくでき、ミラーホルダ40及びミラー64の駆動による回動を安定させることができる。
【0061】
さらに、ミラーホルダ40の回動中心Oの車両前方への変位量Hを小さくできるため、サポートピボット48の車両前側端と保持面22との間の隙間の最小幅Wを小さくできる。
【0062】
このため、手動によりミラー64の鏡面64Aの角度を調整する際に、サポートピボット48(特に付勢壁50)の弾性変形によるミラー64及びミラーホルダ40の車両前側への移動量が小さい状態で、ミラー64及びミラーホルダ40の回動角度(ホイルドライブ30の噛合爪34先端のロッドドライブ36(ネジ38)への噛合位置)を調整できる。これにより、その後に、サポートピボット48(特に付勢壁50)の弾性復元によりミラー64及びミラーホルダ40が車両後側へ移動されても、当該ミラー64及びミラーホルダ40の車両後側への移動量も小さいため、上記調整したミラー64及びミラーホルダ40の回動角度が変動されることを抑制できる。したがって、手動によるミラー64の鏡面64A角度の調整精度を高くできる。
【0063】
また、ケース14の回動面18及びミラーホルダ40の摺動部60の内周側に、一対のロッドドライブ36が配置されている。このため、回動面18及び摺動部60を大きくでき、ミラーホルダ40の駆動による回動を一層安定させることができる。
【0064】
なお、本実施の形態では、ミラーホルダ40が回動される際に、ミラーホルダ40の摺動部位60Aがケース14の回動面18の車両後側の端部より車両前側の部分のみならず回動面18の車両後側の端部に摺動する構成としたが、ミラーホルダ40が回動される際に、ミラーホルダ40の摺動部位60Aがケース14の回動面18の車両後側の端部より車両前側の部分のみに摺動して回動面18の車両後側の端部には摺動しない構成としてもよい。
【0065】
さらに、本実施の形態において、ケース14の回動面18及びミラーホルダ40の摺動部60(摺動部位60A)の少なくとも一方が、スリット、孔及び凹部の少なくとも1つを形成された構成や例えば中心軸周りに複数に分割された構成としてもよい。
【0066】
また、本実施の形態では、回動面18をケース14に設定した構成としたが、回動面18をケースインナ20に設定した構成としてもよい。
【0067】
さらに、本実施の形態では、ミラーホルダ40の回動壁58を略半球壁状にして回動壁58の外周面及び内周面を球面状にした構成としたが、回動壁58は摺動部60を設定できる形状であればよく、例えば回動壁58を円筒状等にして回動壁58の外周面及び内周面の少なくとも一方を円周面状にした構成としてもよい。
【0068】
また、本実施の形態では、本発明を車両用ドアミラー装置10に適用した構成としたが、本発明を他の車外や車内のミラー装置に適用した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 車両用ドアミラー装置(車両用ミラー装置)
14 ケース(保持部材)
18 回動面
20 ケースインナ(保持部材)
36 ロッドドライブ(駆動部材)
40 ミラーホルダ(回動部材)
60 摺動部
60A 摺動部位
64 ミラー
図1
図2
図3
図4
図5