特許第5775283号(P5775283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775283
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】作業機械のモニタ装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   E02F9/26 C
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-228985(P2010-228985)
(22)【出願日】2010年10月8日
(65)【公開番号】特開2012-82608(P2012-82608A)
(43)【公開日】2012年4月26日
【審査請求日】2013年2月18日
【審判番号】不服2014-15867(P2014-15867/J1)
【審判請求日】2014年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】泉川 岳哉
【合議体】
【審判長】 小野 忠悦
【審判官】 赤木 啓二
【審判官】 住田 秀弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−59653(JP,A)
【文献】 特開2002−369186(JP,A)
【文献】 特開2010−121270(JP,A)
【文献】 特開2003−125397(JP,A)
【文献】 特開2008−240362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/24-26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の周辺を撮影可能な複数のカメラと、該複数のカメラの画像を表示可能なモニタを備えると共に、下部走行体に対し上部旋回体が旋回可能であって、該下部走行体が走行可能な作業機械のモニタ装置において、
前記複数のカメラによって得られた画像を合成して単一の合成画像を生成可能な画像処理手段を有し、
前記画像処理手段によって合成された単一の合成画像は作業機械の上方より俯瞰視した俯瞰画像であり、
前記モニタは、前記画像処理手段によって合成された単一の合成画像の内、特定の範囲のみを表示可能であり、且つ、
前記作業機械の走行操作がなされるとき、該走行操作に依存して、又は該走行操作に先立って、前記複数のカメラによって得られた画像を合成して得られた単一の合成画像内の前記特定の範囲を該単一の合成画像上で前記走行操作に応じた方向へずらし、ずらした後の前記モニタ上に表示される前記特定の範囲のうちの前記走行操作に応じた方向の領域の表示面積が、ずらす前の該特定の範囲のうちの前記走行操作に応じた方向の領域の表示面積よりも大きくなるように表示可能とされている
ことを特徴とする作業機械のモニタ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記特定の範囲が前記作業機械の走行方向にずれて表示される
ことを特徴とする作業機械のモニタ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記カメラは、前記作業機械の前記上部旋回体の後方及び側方に配置されている
ことを特徴とする作業機械のモニタ装置。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかにおいて、
更に、前記特定の範囲の移動を指示可能な移動指示手段を備え、
オペレータが該移動指示手段を操作したときに、前記モニタによって表示される前記特定の範囲を、手動で、ずらして変更・移動可能とした
ことを特徴とする作業機械のモニタ装置。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかにおいて、
更に、前記作業機械の前記下部走行体に対し旋回する前記上部旋回体の相対角度を検出する旋回角度検出用センサを備えており、
前記作業機械の直進走行時の走行方向が、該旋回角度検出用センサにより検出された相対角度によって決定される
ことを特徴とする作業機械のモニタ装置。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかにおいて、
前記作業機械の走行方向は、前記複数のカメラのそれぞれから得られた画像を合成した合成画像により算出される
ことを特徴とする作業機械のモニタ装置。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかにおいて、
前記作業機械の走行する方向が、前記画像処理手段によって合成される合成画像とともに前記モニタに表示されている
ことを特徴とする作業機械のモニタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械のモニタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械、特に、下部走行体に対して上部旋回体が旋回可能であって、下部走行体が走行可能な作業機械の場合、周囲にいる人や物との接触を回避するのは、重要な課題である。このため、作業機械の死角となり易い、上部旋回体の側方あるいは後方にカメラを備えるように構成した作業機械のモニタ装置が多く開発されている。
【0003】
特許文献1においては、周囲の状況をできるだけ広範囲に把握するために2つのカメラによって2つの画像を得、撮影された各画像を並べてモニタに表示する建設機械のモニタ装置が開示されている。
【0004】
カメラを複数備えるようにした装置は、1つのカメラで広角あるいは魚眼レンズを用いて撮影する装置と比較して歪みの少ない画像を広範囲にわたって確保することができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−7860号公報(図3図6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数のカメラで得た複数の画像を1つのモニタに表示しようとした場合、ある程度の視認性を確保するためにはモニタの大型化が避けられない。しかしながら、油圧ショベル等の作業機械の場合、モニタを大型化すると、単にコストが増大するだけでなく、前方の視認性が低下して作業機械本来の操作性が著しく低下してしまう。このため、単純なモニタの大型化には限界がある。
【0007】
この問題は、例えば、カメラを3個以上用いてマルチ撮影するような場合に特に顕著となる。
【0008】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであって、小さなモニタを使用しながら、必要時に必要な部分をより詳細に視認することができるようなモニタ装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、作業機械の周辺を撮影可能な複数のカメラと、該複数のカメラの画像を表示可能なモニタを備えると共に、下部走行体に対し上部旋回体が旋回可能であって、該下部走行体が走行可能な作業機械のモニタ装置において、前記複数のカメラによって得られた画像を合成して単一の合成画像を生成可能な画像処理手段を有し、前記画像処理手段によって合成された単一の合成画像は作業機械の上方より俯瞰視した俯瞰画像であり、前記モニタは、前記画像処理手段によって合成された単一の合成画像の内、特定の範囲のみを表示可能であり、且つ、前記作業機械の走行操作がなされるとき、該走行操作に依存して、又は該走行操作に先立って、前記複数のカメラによって得られた画像を合成して得られた単一の合成画像内の前記特定の範囲を該単一の合成画像上で前記走行操作に応じた方向へずらし、ずらした後の前記モニタ上に表示される前記特定の範囲のうちの前記走行操作に応じた方向の領域の表示面積が、ずらす前の該特定の範囲のうちの前記走行操作に応じた方向の領域の表示面積よりも大きくなるように表示可能とされている構成とすることにより、前記課題を解決したものである。
【0010】
複数のカメラを有するモニタ装置において、被写体のより詳細な視認性を確保するための第1の改良案としては、各カメラでとらえた画像の全てを表示するのではなく、例えば各カメラごとにその主要部のみを拡大して表示する手法が考えられる。しかし、同一の大きさのモニタで、単純に全カメラの画像の一部のみを集めて表示するのは、必然的に各カメラごとにカットされた部分の確認ができなくなってしまうため、その分安全性が低下する。
【0011】
そこで考えられる第2の改良案として、特に走行時の安全性を確保するために、走行操作がなされるときには、モニタによって表示される各カメラの画像を走行方向を大きく表示した画像に切り換えるという手法が考えられる。しかしながら、この手法では、表示対象カメラが切り換わるときの画像の連続性が問題となる。特に被写体が動いているようなときに、各カメラの境界付近に存在する被写体の把握が困難となり易い。
【0012】
本発明では、先ず、複数のカメラによって各々得られた複数の画像を合成処理して単一の合成画像を得る。即ち、この単一の合成画像には、基本的に全てのカメラによって得られた全ての撮影情報が一覧で含まれている。一方、モニタは、この単一の合成画像のうち、特定の範囲のみを表示可能とされており、且つ、実際にモニタによって表示すべき当該特定の範囲が、走行操作に依存して(あるいは走行操作に先立って)この単一の合成画像内においてずらされて表示される。これにより、各カメラの画像の非連続性を気にすることなく、走行操作に応じて真に確認したい方向の作業機械の周辺を、連続的に且つ詳細に観察することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記特定の範囲が前記作業機械の走行方向にずれて表示されていることである。これにより、作業機械の走行方向を中心として遠方までモニタによって確認することが可能となり、安全性が更に向上する。
【0014】
また、好ましくは、前記カメラは、前記作業機械の前記上部旋回体の後方及び側方に配置されていることである。これにより、オペレータにより直視が困難な、いわゆるオペレータの死角部分であっても、モニタによって確認できるようになるため、安全性が向上する。
【0015】
また、好ましくは、前記画像処理手段により合成される合成画像が、前記複数のカメラのそれぞれから得られた画像を合成して作業機械の上方より俯瞰視した俯瞰画像であることである。これにより、作業機械に対する被写体(障害物)の絶対位置等を、より直感的に把握することができるようになり、安全性が更に向上する。
【0016】
また、好ましくは、前記画像処理手段により合成される合成画像が、前記複数のカメラのそれぞれから得られた画像を合成して作業機械から水平にパノラマ視したパノラマ画像であることである。これにより、より「実視」に近い態様で作業機械の周囲を連続してより遠方まで確認することが可能となり、安全性が更に向上する。
【0017】
また、好ましくは、更に、前記特定の範囲の移動を指示可能な移動指示手段を備え、オペレータが該移動指示手段を操作したときに、前記モニタによって表示される前記特定の範囲を、手動で、ずらして変更・移動可能とした構成とすることである。これにより、実際の状況に応じてオペレータがより詳細に確認したい範囲をより的確に表示することが可能となる。また、走行操作に先立って予め先行方向の様子を確認することもできる。
【0018】
また、好ましくは、更に、前記作業機械の前記下部走行体に対し旋回する前記上部旋回体の相対角度を検出する旋回角度検出用センサを備えており、前記作業機械の直進走行時の走行方向が、該旋回角度検出用センサにより検出された相対角度によって決定される構成とすることである。本明細書では、作業機械の下部走行体がクローラの向きに直ぐ前後進する走行のことを「直進走行」と称することとする。下部走行体が直進走行する場合、走行方向は、下部走行体に対する上部旋回体の相対角度として把握できる。これにより、作業機械のオペレータの座っている上部旋回体に対する下部走行体の(直進)走行方向を確実に決定することができ、安全性が更に向上する。
【0019】
また、好ましくは、前記作業機械の走行方向が、前記複数のカメラのそれぞれから得られた画像を合成した合成画像により算出される構成とすることである。これにより、作業機械は、旋回角度検出用センサ等のセンサが不要になり、作業機械の走行方向を低コストで確認することができる。
【0020】
また、好ましくは、前記作業機械の走行する方向が、前記画像処理手段によって合成される合成画像とともに前記モニタに表示される構成とすることである。これにより、作業者は、作業機械の走行方向を簡単且つ確実に認識することができ、安全性が更に向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、小さなモニタを使用しながら、必要時に必要な部分をより詳細に視認することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(A)本発明の実施形態の一例に係るモニタ装置が適用された作業機械の概略平面図、及び(B)その運転室内の概略平面図
図2】本発明の実施形態に係る作業機械のモニタ装置の一例において、各カメラによって撮影される範囲を示す平面図
図3】各カメラによって現に映し出されている被写体を示す撮影図
図4】(A)各カメラの撮影画像を合成した俯瞰合成図、及び(B)その特定の範囲のみを取り出してモニタによって表示される表示図
図5】合成画像が俯瞰画像であるときに、作業機械の上部旋回体が左旋回した状態で後方に直進走行したときのモニタの表示図
図6】合成画像が俯瞰画像であるときに、作業機械の上部旋回体が右旋回した状態で後方に直進走行したときのモニタの表示図
図7】合成画像がパノラマ画像であるときに、作業機械の上部旋回体が左右に旋回した状態で後方に直進走行したときのモニタの表示図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。
【0024】
図1(A)は、本発明の実施形態の一例に係るモニタ装置が適用された油圧ショベル(作業機械)の概略平面図、(B)は、その運転室内の概略平面図である。
【0025】
図1(A)を参照して、この油圧ショベル10は、クローラ12、13を備える下部走行体14と、この下部走行体14上に旋回可能に装着された上部旋回体16とを備える。上部旋回体16の左側前部には運転室(キャブ)18が配置されている。また、上部旋回体16の中央前部にはブーム19、アーム20、アタッチメント22からなる作業機24が突出配置されている。この基本的な構成は従来と同様である。
【0026】
図1(B)に示されるように、運転室18内には、運転席(シート)26が装着されている。運転席26の両側には、左右のコンソールボックス28、30が装備され、それぞれのコンソールボックス28、30に作業機24の駆動操作及び上部旋回体16の旋回操作を行うための操作レバー32、34が前後左右方向に揺動可能に搭載してある。運転席26の前方フロアには、左右のクローラ12、13を駆動制御するための走行用のペダル36、38が前後方向に踏み込み可能に設けられ、それぞれのペダル36、38には走行用の操作レバー40、42が取り付けられている。
【0027】
図2に示されるように、上部旋回体16には、油圧ショベル10の周辺を撮影可能なカメラとして、後方に後方カメラ50、側方の後部両側に右カメラ52、左カメラ54がそれぞれ備えられている。図3は、各カメラ50、52、54によって映し出されている個別映像を示している。図3(A)には、右カメラ52によって映し出されている作業機械の右側画像Iaが示されている。ここでは、油圧ショベル10から見て前部81Aを左方向に向けて停車している自動車81が映し出されている。図3(B)には、後方カメラ50によって映し出されている後方画像Ibが示されている。ここでは、作業員82、83が映し出されている。図3(C)には、左カメラ54によって映し出されている左側画像Icが示されている。ここでは、立木84、85が映し出されている。
【0028】
本実施形態に係るモニタ装置MS1は、運転室26の右コンソールボックス28内に、コントローラ(画像処理手段)56を備えている(図1(B)参照)。コントローラ56は、この3つのカメラ50、52、54によって得られた画像Ia〜Icを合成して単一の俯瞰画像(合成画像)B0を生成可能である(後述)。運転席26の右前部には、この俯瞰画像B0のうち、特定の範囲を表示可能な液晶モニタ55が配置されている。
【0029】
上部旋回体16には、旋回角度検出用センサ59が設けられている。旋回角度検出用センサ59は、油圧ショベル10の下部走行体14に対し上部旋回体16が現時点でどの程度旋回操作が行われているか(下部走行体14に対する上部旋回体16の相対角度)を検出する。具体的には、旋回操作がなされるときに上部旋回体16と下部走行体14との相対位置が変化する部分において、当該相対位置の変化を何らかの方法で検知できるような構成とされている。旋回角度検出用センサ59は、上部旋回体16の向きに、下部走行体14に対する上部旋回体16の相対角度を加えることにより、下部走行体14の直進走行時の走行方向を確実に決定することができる。即ち、油圧ショベル10の直進走行時の走行方向は、旋回角度検出用センサ59により検出された下部走行体14に対する上部旋回体16の相対角度によって、決定される。なお、一般に、油圧ショベル等の作業機械における上部旋回体の旋回は、下部走行体側に固定された大きな内歯歯車に、上部旋回体側に組み込まれた旋回ピニオンが内接噛合する構成で実現しているため、例えば、該旋回ピニオンを電動モータによって駆動している場合には、(上述したような旋回角度検出用センサに代えて)この旋回ピニオンの回転を制御する電動モータへの指示情報を利用するようにしてもよい。
【0030】
なお、この実施形態においては、更に、走行用のペダル36、38を踏み込んだ情報がコントローラ56に入力されるようになっている。これにより、走行用のペダル36、38を操作した直後に(未だ油圧ショベル10が実際に走行を開始していない段階で)、液晶モニタ55に表示される特定の範囲をこれから走行される方向にずらすことができる。
【0031】
以下、上記モニタ装置MS1での描写処理を、より詳細に説明する。
【0032】
前述したように、右カメラ52により油圧ショベル10の右側画像Iaが、後方カメラ50により後方画像Ibが、左カメラ54により左側画像Icが、それぞれ映し出される。コントローラ56は、図4(A)に示されるように、各カメラ50、52、54によって得られた画像Ia〜Icを合成して油圧ショベル10の上方より俯瞰視した俯瞰画像B0を生成する。この俯瞰画像B0の生成には、公知の手法(例えば特開2009−7860号公報や同2009−113561号公報等で開示されている手法、即ち、映し出された画像を90度、あるいは180度回転させる手法)等が採用できる。
【0033】
図4(A)の描写から明らかなように、この俯瞰画像B0は、一般的な意味で用いられる俯瞰画像とは異なり、必ずしもその被写体そのものが上方から観察されたような映像(例えば帽子を被っている人であるならば、帽子および肩部のみが映し出されているような映像)を意味しているものではない。即ち(本発明における俯瞰画像は)、作業機械を上方から見たときに、各カメラが映し出している被写体が、該作業機械を中心として実際に存在する方向及び位置に映し出されるように、各カメラで得られた映像Ia〜Icが配置・処理されていれば足りる。
【0034】
この実施形態では、具体的には図4(A)に示されるように、右カメラ52が得た画像Iaを右に90度回転し、後方カメラ50が得た画像Ibを180度回転し、左カメラ54が得た画像Icを左に90度それぞれ回転させている。各画像Ia〜Icが重なる部分には、各画像Ia〜Icの下側(合成画像で内側)を圧縮、上側(同外側)を伸長する補正を施した上で合成している。ただし、この補正の仕方は特にこの方法に限定されない。また、この画像補正は必ずしも必須ではない。例えば、各カメラでの映像エリアがうまく重なるならば、重なる部分に関しては一方のカメラの映像のみを活かし、他方のカメラの映像が無視される(他方のカメラの映像が一方のカメラの映像に上書きされる)ような手法で合成するようにしてもよい。
【0035】
得られた俯瞰画像B0は、3つのカメラ50、52、54で映し出される画像Ia〜Icを一覧で(同時に)確認できるという点で優れているが、極めて大きなモニタを必要とし、油圧ショベル10での本来の作業をする際の前方の視認性が阻害される。そこで、この実施形態では、この俯瞰画像B0のうちの「特定の範囲」のみを、図4(B)に示されるような表示画像B1として切り出して、液晶モニタ55に表示するようにしている。この表示画像B1は、走行操作がなされていないときに液晶モニタ55によって表示される画像に相当している。なお、この実施形態では、たとえ旋回操作がなされたとしても、走行操作がなされない限り、表示画像はB1のままである。
【0036】
ここで、液晶モニタ55による周囲の安全の確認が特に必要なのは、上部旋回体16が旋回した状態で後方に走行操作がなされるときである。それは、上部旋回体16が旋回した状態では、オペレータは下部走行体14が走行する方向を把握し難いことが多々あるからである。このため、この表示画像(特定の範囲の画像)B1を、走行操作に依存して図5の表示画像B2に示されるようにずらして表示する。
【0037】
即ち、図5(A)に示されるように、上部旋回体16が左方向に旋回されている状態で、油圧ショベル10が、下部走行体14の後方に直進走行するときには、上部旋回体16の後部左側での障害物(この場合は立木84)との衝突が最も問題となる。このため、図5(B)に示されるように、油圧ショベル10が下部走行体14の後方に直進走行するときには、この走行操作に依存して、上部旋回体16の後部左側部分L1が大きく表示されている表示画像B2にずれるようになっている。本実施形態では、前述したように、走行用のペダル36、38を踏み込んだ情報をも入手している。このため、走行用のペダル36、38を踏み込んで、走行操作した直後から(未だ油圧ショベル10が実際に走行を開始していない段階のうちから)、特定の範囲の表示を走行される方向にずらすことができる。ずらし方(画面の移動の仕方)は、油圧ショベル10の走行の程度に依存して行われる。即ち、走行ペダル36、38の踏込量、または踏込み速度が大きいときほど、より速く走行方向にずらすように、ずらす速度を変える。この結果、油圧ショベル10が速く走行されるときは、速く走行方向の周辺を良好に観察することができる。
【0038】
同様に、上部旋回体16が右方向に旋回されている状態で、油圧ショベル10が下部走行体14の右側後方に直進走行するときには、図6(A)に示されるように、上部旋回体16の後方右側での障害物(この場合は自動車81)との衝突が最も問題となる。このため、図6(B)に示されるように、油圧ショベル10が下部走行体14の後方に直進走行するときには、上部旋回体16の後部右側部分R1が大きく表示されている表示画面B3にずれるようになっている。
【0039】
なお、上部旋回体16が旋回されていない状態で単に後方に直進走行されるときは、表示画像は図4(A)の表示画像B1を、より下方向にずらして表示する。
【0040】
本実施形態における表示画像B1〜B3は、俯瞰画像B0のうちの一部分でしかないが、3つのカメラ50、52、54の画像Ia〜Icのうちの「その時点での要部」が同時に映し出されているため、各カメラ50、52、54の画像Ia〜Icの非連続性が問題となることはほとんどない。この点が、例えば各カメラ50、52、54で撮影された画像を、走行に依存して単純に切り替える描写手法と大きく異なる点である。合成画像としてこのような俯瞰画像B0を得る方法は、特に、油圧ショベル10と被写体との絶対位置関係を直感的に把握することができるという利点がある。
【0041】
また、本実施形態において、油圧ショベル10の走行方向が、合成画像(本実施形態において、表示画像B2、B3)とともに液晶モニタ55に表示されている。本実施形態において、図5(B)、図6(B)に示されるように、油圧ショベル10の走行する方向を示す矢印Q1、Q2が、それぞれの図の液晶モニタ55の油圧ショベル10の機体表示部分11に表示されている。作業者は、矢印Q1、Q2の向きを確認することにより、(たとえ上部旋回体16が下部走行体14に対して旋回しているようなときであっても)油圧ショベル10の走行方向を簡単且つ確実に認識することができる。これにより、作業者は、走行方向を確実に認識することができ、油圧ショベル10が周辺にいる人や物と接触することを防止できる。なお、旋回操作がなされていない状態で、後方に直進走行するときは、図4(B)の表示画像B1に走行方向を示す矢印Q3が表示される(表示画像B1の想像線参照)。
【0042】
上記実施形態においては、合成画像として、各カメラによって得られた画像を左右及び上下方向に合成して油圧ショベル10の上方より俯瞰視した俯瞰画像を生成するようにしていたが、本発明においては、合成画像として、例えばパノラマ画像を生成するようにしても、同様の作用効果が得られる。図7にこの例を示す。
【0043】
この実施形態では、図7(A)に示されるように、各カメラ50、52、54によって得られた画像Ia〜Icを左右方向に合成して水平にパノラマ視したパノラマ画像P0を得ている。各画像Ia〜Icの境界は、補正して円滑な連続性を得るのが好ましいが、各カメラ50、52、54での映像エリアがうまく重なるならば、必ずしも補正は必要ない。走行操作がなされていない状態(非走行時)では、当該パノラマ画像P0のうち、図7(B)で示されるような特定の範囲の表示画像P1が液晶モニタ55で表示される。なお、この実施形態においても、走行操作がなされない限り(たとえ旋回操作が行われていても)表示画像はP1のままである。この状態から、例えば上部旋回体16の右旋回がなされた状態で、下部走行体14が後方に直進走行すると、図7(C)で示されるような表示画像P2にずらされる。即ち、液晶モニタ55には、上部旋回体16の後部左側の部分L2を中心とした映像が映し出される。逆に、上部旋回体16の左旋回がなされた状態で、下部走行体14が後方に直進走行すると、図7(D)で示されるような表示画像P3にずらされる。この結果、液晶モニタ55には、上部旋回体16の後部右側の部分R2を中心とした映像が映し出される。
【0044】
このような構成によっても、各カメラ50、52、54同士の撮影画像の非連続性を気にすることなく、真に見たい方向に障害物がある否かを確実に確認することができる。合成画像として、パノラマ画像P0を得る手法は、基本的な描写態様が「実視」と一致しているため、特に、被写体の形状あるいは複数の被写体同士の間隔や相対位置関係を直感的に捉えやすいという利点がある。
【0045】
また、図7(C)、図7(D)に示されるように、本実施形態においても、油圧ショベル10の走行方向(矢印:N1、N2)が、それぞれの表示画像P2、P3とともに液晶モニタ55に表示されている。図7(B)では表示されていないが、旋回操作が行われていない状態で直進走行がなされたときは、図7(B)にも同様に走行表示をしてもよい。
【0046】
なお、上記実施形態を、更に改良することも可能である。例えば、図1(B)に図示されているように、コントローラ56に操作レバー(移動指示手段)70を付設して、この
操作レバー70を例えば前後左右に傾けることで液晶モニタ55によって表示される特定の範囲を変更あるいは移動できるようにしてもよい。これにより、オペレータが該操作レバー70を操作したときに、旋回操作に依存して液晶モニタ55によって表示される表示画像を、手動で変更(調整)することが可能となり、実際の状況に応じてオペレータの意思によって、より見たい方向に当該表示画像を意図的にずらしたり、表示縮尺を変えたりすることができるようになる。なお、この移動指示手段は、(レバーではなく)例えば4つの方向キーのようなものであってもよい。また、例えば液晶モニタがタッチセンサ機能を有している場合には、該液晶モニタの一部を手で触れることによって触れた位置に依存して表示画像がずれるような構成とされていてもよい。
【0047】
更には、この手動での移動機能を発展させ、走行操作に先立って(走行操作が行われていなくても)手動操作のみで合成画像の一部である特定の範囲をずらせるような構成としておくことも可能である。
【0048】
また、走行操作がなされない状態のときに、旋回操作に依存して、表示画像が、旋回方向を拡大するように構成してもよい(それぞれ図5図7のような態様になる)。この場合、前述したモニタによる作業機械周囲の安全の確認が特に必要な『上部旋回体16が旋回した状態で後方への直行走行』がなされる状況に対して、この図5図7のような態様は、「当該走行操作に先立って」表示画像を予め変化させた状態にそっくり一致していることになる。即ち、旋回操作のみがなされた時点で、表示画像は、『上部旋回体16が旋回した状態で後方へ直進走行の操作』がなされたときに得るべき画像そのものに既に変化している。これにより、作業者は、旋回操作がなされた時点でこれから直進走行する方向を「走行操作に先立って」ずらして確認できるため、安全性が更に向上する。
【0049】
なお、このような「旋回操作に依存した表示画像のずらし」は、走行操作がなされていないときにのみ行われる。旋回操作がなされているときに走行操作がなされると、走行操作に基づく「ずらし」が優先される。
【0050】
なお、本実施形態において、作業機械が直進走行方向されるときは、旋回角度検出用センサにより検出された相対角度によって決定されているが、必ずしも旋回角度検出用センサ等のセンサは必要ではない。また、上記いずれの実施形態においても、作業機械の走行する方向が、画像処理手段によって合成される合成画像とともにモニタに表示されているが、必ずしも表示される必要があるというわけではない。
【0051】
作業機械の走行方向は、前記複数のカメラのそれぞれから得られた画像を合成した合成画像により算出されるようにしてもよい。この場合、例えば、作業機械が走行することによりずれていく合成画像の変化によって、作業機械の走行方向を算出する。これにより、作業機械は、旋回角度検出用センサ等のセンサが不要になり、且つ作業機械が直線走行以外の走行を行うときでも、合成画像の変化から走行方向を確認することができる。
【0052】
即ち、作業機械は、必ずしも常に直進走行するわけではなく、曲線的に走行する場合もあるが、この場合でも、作業機械の走行方向は、モニタに表示される合成画像の変化(ずれ)から判別することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
例えば、油圧ショベル等の作業機械のモニタ装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
10…油圧ショベル(作業機械)
14…下部走行体
16…上部旋回体
50、52、54…カメラ
55…液晶モニタ
56…コントローラ(画像処理手段)
B0…合成画像
Ia〜Ic…複数のカメラの画像
MS1…モニタ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7