特許第5775287号(P5775287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775287
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】移動目標対応型スキャン相関方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/292 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   G01S7/292 204
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-253809(P2010-253809)
(22)【出願日】2010年11月12日
(65)【公開番号】特開2012-103197(P2012-103197A)
(43)【公開日】2012年5月31日
【審査請求日】2013年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高山 卓也
(72)【発明者】
【氏名】時枝 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】菅原 博樹
【審査官】 三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−094931(JP,A)
【文献】 特開2009−075093(JP,A)
【文献】 特開2005−114666(JP,A)
【文献】 特開2009−058433(JP,A)
【文献】 特開昭54−132191(JP,A)
【文献】 特開平11−044753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/42
G01S 13/00−13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査範囲におけるレーダ信号により得られるスキャン画像を小区画領域に分割し、小区画領域に対応するレーダ信号であるスキャン画像信号毎にスキャン相関を施すスキャン相関装置であって、
前記小区画領域毎に、複数スキャン分のスキャン画像信号を三次元フーリエ変換することによって空間スペクトラムを求め、前記空間スペクトラム上の平面を抽出し、逆フーリエ変換によって前記平面を変換した直線から前記小区画領域内のターゲットの移動ベクトルを算出する移動ベクトル算出部と、
移動ベクトル算出部によって求めた小区画領域内におけるターゲットの移動履歴の規則性より、ターゲットが存在する可能性を表す指標を算出する指標算出部と、
前記小区画領域毎に、前記指標と所定のしきい値とを比較し、比較結果に基づいてスキャン相関処理における最新のスキャン画像信号の重み係数を決定する重み係数決定部と
を備えたことを特徴とするスキャン相関装置。
【請求項2】
走査範囲におけるレーダ信号により得られるスキャン画像を小区画領域に分割し、小区画領域に対応するレーダ信号であるスキャン画像信号毎にスキャン相関を施すスキャン相関装置であって、
前記小区画領域毎に、複数スキャン分のスキャン画像信号を三次元フーリエ変換することによって空間スペクトラムを求め、前記空間スペクトラム上の平面を抽出し、逆フーリエ変換によって前記平面を変換した直線から前記小区画領域内のターゲットの移動ベクトルを算出する移動ベクトル算出部と、
前記小区画領域毎に、前記移動ベクトル算出手段によって算出した移動ベクトルに基づいてスキャン相関処理におけるスキャン画像内のターゲットの位置を補正する位置補正処理部と
を備えたことを特徴とするスキャン相関装置。
【請求項3】
請求項1に記載のスキャン相関装置において、
前記小区画領域毎に、クラッタレベルを算出するレベル算出手段を備え、
前記重み係数決定部は、
前記小区画領域毎に、前記指標と前記クラッタレベルをそれぞれ所定のしきい値と比較し、比較結果に基づいて前回のスキャン相関画像信号の重み係数を決定する
ことを特徴とするスキャン相関装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャン相関装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばレーダ装置においてシークラッタ内のターゲットを強調する処理として、スキャン相関処理がある。一般的なスキャン相関方法は非特許文献1に示されている。一般的なスキャン相関処理では高速移動ターゲット信号もクラッタ信号同様に抑圧されてしまう問題があり、このような問題を解決した文献として、非特許文献1、特許文献1、2、3がある。
【0003】
図2に非特許文献1に示される、レーダにおける一般的なスキャン相関処理の概略を示す。ここで信号受信部1から逐次出力されるスキャン画像信号は最新スキャン画像メモリ2aに保存される。クラッタレベル算出部5は最新スキャン画像の各ピクセルにおけるクラッタレベルを算出する。最新スキャン画像信号および各ピクセルにおけるクラッタレベル、及び前回までのスキャン相関画像メモリ7に記憶された信号はスキャン相関処理部6に出力され、ここでスキャン相関処理が行われる。
【0004】
スキャン相関処理は最新のスキャン画像信号と、前回までのスキャン相関画像メモリ信号との同一ピクセル毎の重み加算により次式のように行われる。
【0005】
【数1】
【0006】
ここで、数1(1)の重み係数aは重み係数乗算部6cによって次式のように定める。
【0007】
【数2】
【0008】
一方、数1(1)の重み係数bについては適応重み係数乗算部6dによって以下のように定める。
【0009】
【数3】
【0010】
クラッタなどランダムに出現する信号については信号強度が小さくなった場合に数3(2)の条件となるため、前回のスキャン相関画像メモリ信号の重み係数が0となり、出力されるスキャン相関画像信号が抑圧される。一方、静止したターゲットの場合、常に数3(1)となるため、出力スキャン相関画像メモリ信号の大きさは最新スキャン画像信号と変わらず、結果的にクラッタに対してターゲットが強調される。
【0011】
しかしターゲットが高速移動している場合、最新のスキャン画像内でのターゲット位置と、前回までのスキャン相関画像メモリ内での位置が異なるため数3(2)の条件となり、高速移動ターゲットの信号もクラッタ同様に抑圧されてしまう。
【0012】
従来スキャン相関処理において移動ターゲット信号が抑圧される問題を解決するための方法が、非特許文献1、特許文献1から3で述べられている。
【0013】
非特許文献1では、最新スキャン画像内の検出信号近辺のピクセルにおいて、前のスキャン画像にも信号が検出される場合には、それを移動ターゲットであると仮定して、スキャン相関メモリ信号(数1のBn−1)の代わりに最新のスキャン画像信号を用いる選択肢を備えた方法が述べられている。これによって、移動ターゲットであると推測される点についてはスキャン相関処理が行われないのと同等となるため、移動ターゲットの信号の抑圧を防ぐことができる。
【0014】
特許文献1では、想定されるターゲットの速度に応じたレンジ幅だけ受信信号を拡大するストレッチする手段と、海面の移動量に相当するレンジ幅だけ受信信号のレンジを補正する手段を用いることにより、スキャン間でターゲットが同ピクセルに位置するようにし、スキャン相関処理時の移動ターゲット信号の抑圧を防ぐ。
【0015】
特許文献2では、高速移動目標を検出したとき、ターゲットを含むエリアをスキャン相関処理の対象外とすることによって、スキャン相関処理後の高速移動ターゲット信号の減衰を防ぐ。
【0016】
特許文献3では、観測したいターゲットを指定する物標指定部を設け、指定したターゲットを追尾し、スキャン相関画像メモリ内のターゲット位置を次のスキャン時の位置に補正した画像と最新スキャン画像との相関処理を行うことによって、スキャン相関処理後の高速移動ターゲット信号の減衰を防ぐ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平6−242219号公報
【0018】
【特許文献2】特開平11−044753号公報
【0019】
【特許文献3】特開平11−94931号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】F.X.Hofele,「Scan−to−Scan Integration−Correlation for the Detection of Small Fast Targets」Radar,2001 CIE International Conference on,Proceedings,p380〜p384
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかるに前記のような従来の手法では次のような問題が生じる。つまり、非特許文献1に示された従来のスキャン相関処理では、ターゲットが高速移動している場合、最新のスキャン画像内でのターゲット位置と、前回までのスキャン相関画像メモリ内での位置が異なるため数3(2)の条件となり、高速移動ターゲットの信号もクラッタ同様に抑圧されてしまう問題がある。クラッタは数2(1)αの値が小さいほど抑圧されるが、高速移動ターゲットも同様に抑圧されるため、従来の方法ではαを小さくできない問題があった。
【0022】
一方、移動ターゲットに対応したスキャン相関処理である、非特許文献1、特許文献1から3の方法にも以下の問題が存在する。
【0023】
非特許文献1に示された方法では、移動ターゲットであると推測される点についてはスキャン相関処理が行われないのと同等となるため、移動ターゲットの信号の抑圧を防ぐことができるが、クラッタが非常に多く存在する場合、クラッタを移動ターゲットであると認識してしまい誤認率が増大する問題がある。
【0024】
特許文献1の方法では海面の移動量のみを補正し、ターゲット自体の移動は受信信号のレンジ方向のストレッチングを行うことによって、スキャン間でのターゲット位置ずれを抑えているが、本手法はレンジと直交するアジマス方向へのターゲットの移動に対応できない。また、ストレッチングによってクラッタ信号も同様に引き伸ばされるため、クラッタを強調してしまう可能性もある。
【0025】
特許文献2および3ではあらかじめターゲットを認識し、追尾できていることが前提となっており、既に追尾中のターゲットが大きなクラッタの中に入ったような場合には効果的であるが、初期捕捉の段階で既にターゲットの認識が困難な場合にターゲット信号を強調することはできない。
【0026】
本発明の目的は、従来のスキャン相関処理の欠点である移動ターゲット信号もクラッタ同様に抑圧してしまう問題を解決するとともに、上記の移動ターゲットに対応したスキャン相関処理方法のような、移動ターゲットに対する先見情報を必要とせず、ターゲットとクラッタを識別しクラッタのみを積極的に抑圧し、ターゲットの識別能力を向上させるスキャン相関装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
請求項1に記載のスキャン相関装置は、走査範囲におけるレーダ信号により得られるスキャン画像を小区画領域に分割し、小区画領域に対応するレーダ信号であるスキャン画像信号毎にスキャン相関を施すスキャン相関装置である。指標算出部は、前記小区画領域毎に、複数スキャン分のスキャン画像信号を三次元フーリエ変換することによって空間スペクトラムを求め、前記空間スペクトラム上の平面を抽出し、逆フーリエ変換によって前記平面を変換した直線から前記小区画領域内のターゲットの移動ベクトルを算出する移動ベクトル算出部と、移動ベクトル算出部によって求めた小区画領域内におけるターゲットの移動履歴の規則性より、ターゲットが存在する可能性を表す指標を算出する。重み係数決定部は、前記小区画領域毎に、前記指標と所定のしきい値とを比較し、比較結果に基づいてスキャン相関処理における最新のスキャン画像信号の重み係数を決定する。
【0028】
請求項2に記載のスキャン相関装置は、走査範囲におけるレーダ信号により得られるスキャン画像を小区画領域に分割し、小区画領域に対応するレーダ信号であるスキャン画像信号毎にスキャン相関を施すスキャン相関装置である。移動ベクトル算出部は、前記小区画領域毎に、複数スキャン分のスキャン画像信号を三次元フーリエ変換することによって空間スペクトラムを求め、前記空間スペクトラム上の平面を抽出し、逆フーリエ変換によって前記平面を変換した直線から前記小区画領域内のターゲットの移動ベクトルを算出する。位置補正処理部は、前記小区画領域毎に、前記移動ベクトル算出手段によって算出した移動ベクトルに基づいてスキャン相関処理におけるスキャン画像内のターゲットの位置を補正する。
【0029】
請求項3に記載のスキャン相関装置では、請求項1に記載のスキャン相関装置において、レベル算出手段は、前記小区画領域毎に、クラッタレベルを算出する。前記重み係数決定部は、前記小区画領域毎に、前記指標と前記クラッタレベルをそれぞれ所定のしきい値と比較し、比較結果に基づいて前回のスキャン相関画像信号の重み係数を決定する。
【発明の効果】
【0031】
前記の手段により、本発明はメモリ内の複数スキャン画像信号を小区画領域に分割し、その領域内のターゲットの移動ベクトルおよび領域内でのターゲット指標を算出する。
【0032】
前記の移動ベクトル算出は空間スペクトラム上の平面を抽出する方法をとることによって、クラッタ信号の影響を抑えたターゲットの速度推定を行うことができる特長を有する。
【0033】
また、後のスキャン相関処理では、前回までのスキャン相関画像メモリを、推定した移動ベクトル情報を用いて位置補正したものと、最新スキャン画像とのスキャン相関処理を行うことによって、移動ターゲットであっても信号が減衰してしまう従来の問題を回避している。よって従来では数1(1)αを小さくできない問題があったが、本手法ではαを小さくでき、より大きなクラッタの抑圧が可能である。
【0034】
さらに、前記ターゲット指標によってクラッタであると判断したピクセルにおいてはスキャン相関処理の重み係数を適応的に変化させることによって、より積極的にクラッタを抑圧することが可能である。
【0035】
これらによってターゲットの移動速度にかかわらず、従来よりもターゲット対クラッタ電力比を改善する効果がある。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0036】
以下に本発明の好適な実施の形態について図を参照して説明する。本発明は対象が高速移動または静止する物体であり、該物体を含むレーダ、超音波、光学カメラ受信信号から、該物体を抽出する技術に関するものである。そしてその手段として、走査範囲を幾つかの小さな領域に分割し、各分割エリア内での前記物体の移動ベクトル、ターゲットの存在指標といったパラメータから、最適なスキャン相関処理パラメータを決定し処理を行う方法をとっている。
【0037】
本発明の一実施例を図1に示す。レーダ、超音波、光学カメラの信号受信部1から逐次送られてくるビデオ信号はスキャン毎、複数スキャン画像メモリ2に記憶される。続いて、スキャン毎の画像を小区画領域に分け、領域毎に内部に存在すると思われるターゲットの移動ベクトルを移動ベクトル算出部3によって算出する。移動ベクトル算出部3で得られるターゲットの移動履歴より、ターゲットが存在する可能性を示す指標をターゲット指標算出部4によって算出し、また領域内のクラッタレベルをクラッタレベル算出部5によって求める。その後領域毎にスキャン相関処理部6によってスキャン相関画像を作成し、結果をスキャン相関画像メモリ7に記憶する。最後に表示部8によってスキャン相関画像を表示する。
【0038】
次にスキャン相関処理の入力パラメータである、移動ベクトル、ターゲット指標、クラッタレベルの各算出部について説明する。図3に移動ベクトル算出部3の内部構成を示す。移動ベクトル算出部3への入力信号は、複数スキャン画像メモリ2に蓄えられた信号のうちの小区画領域内信号であり、インデックスx、y、tを用いてAxytと表す。ここでAは信号受信部から送られてくる信号を示し、x、yはそれぞれ小区画領域内画像のx座標、y座標の番号、tはスキャン番号を示すものとする。この三次元データAxyt内に移動ターゲットがあるとすれば、それぞれのスキャン毎のターゲットの位置をつなぎ合わせると三次元空間上で直線となる。この直線を検出できればターゲットの移動を検出することができる。
【0039】
三次元空間上の直線を検出するために、三次元フーリエ変換処理部3aによって周波数空間上に変換を行う。つまりAxytをA’ijkに変換する。ここでi、j、kはそれぞれx、y、tに対応する周波数空間上のインデックスである。元の空間で直線であるものは周波数空間上で原点を通る平面に変換される。一方、クラッタのようなランダムな信号は空間周波数上でもランダムに広がって存在するため、空間周波数上ではターゲットとクラッタの識別がしやすくなる。
【0040】
続いて二乗検出部3bによって複素数信号を二乗振幅に変換し、平面検出部3cによって周波数空間上の平面を検出する。ここで平面検出方法の一例としてはそれぞれのi、jにおいてA’ijkの二乗振幅が最大となるk以外の点を0でマスクする。これによってクラッタ信号の影響を取り除き、ターゲット信号が含まれる平面のみを抽出する。
【0041】
平面検出後、逆フーリエ変換処理部3dによってもとの空間上に信号を変換する。周波数空間上における平面は元の空間では直線となる。また周波数空間上で二乗検出を行ったため、原点を通る直線となる。この直線は最新スキャン時刻を基準としたターゲットの移動履歴を示す。よってそれぞれの直線がt平面と交わる位置を求めることによって、ターゲットの移動履歴がわかる。よって二乗検出部3eにより二乗検出を行った後、それぞれのtにおける最大値をとるx,y(それぞれx、yと表す)を最大値検出部3fによって求める。
【0042】
ここでx,yは最新スキャン時刻を基準にした最新スキャン時刻におけるターゲットの位置であり、必ず0となる。続いてx,yは最新スキャン時刻からみた一つ前のスキャン時のターゲットの移動量となる。x,y以降も同様となる。移動ベクトル算出部は考慮したスキャン数Nだけの移動ベクトルx、x、、、xN-1、y、y、、、yN-1を出力する。
【0043】
次にターゲット指標算出部4について説明する。移動ベクトル算出部3によって求めた小区画領域内のターゲットの移動履歴であるが、実際はこの中にターゲットが存在するとは限らない、もし仮に小区画領域内にノイズやクラッタなどのランダムな信号しか存在しなかったとすると、最終的に出力される過去の移動履歴は規則的に変化せずにランダムな値をとる。よって移動履歴の直線性を算出することによって小区画領域内にターゲットが存在するかを示す指標を得ることができる。ターゲット指標を算出する一例として以下のように指標を計算する。
【0044】
【数4】
【0045】
この指標は0から1の間の値をとり、値が大きいほどターゲットが存在する可能性が高くなる。
【0046】
最後にクラッタレベル算出部5では小区画領域内におけるクラッタレベルを算出する。算出例としてはセルアベレジングや順序統計量によって求める。
【0047】
以上より求めた、移動ベクトル、ターゲット指標、クラッタレベルから、どのようにスキャン相関処理パラメータを決定するかを以下で説明する。スキャン相関処理部6内にある適応重み係数重み乗算部6aの構成図を図4に示す。これはスキャン相関処理において最新スキャン画像の重み係数を算出する機能を持つ。重み係数はしきい値制御部6aaがターゲット指標TPとあるしきい値を比較し、その結果を受けて重み係数決定部6abが以下のように決定する。
【0048】
【数5】
【0049】
最終的に乗算回路6acによって、小区画領域内の最新スキャン画像内のピクセルに重み係数を乗算したものが出力される。
【0050】
次にスキャン相関処理部6内の適応重み係数乗算・位置補正処理部6bの構成図を図5に示す。これはスキャン相関処理においてスキャン相関画像メモリの重み係数を算出する機能を持つ。小区画領域内の各ピクセルの重み係数は以下のように決定される。しきい値制御器6baが最新スキャン画像信号Aおよびスキャン相関画像メモリ信号の振幅Bt−1をクラッタレベルCL、CLとそれぞれ比較し、ターゲット指標TPをあるしきい値と比較する。この結果を受けて重み係数決定部6bbが以下のように重み係数を決定する。
【0051】
【数6】
【0052】
また位置補正処理部6bcはしきい値制御6baの結果および移動ベクトル算出部3の出力値によって、スキャン相関画像メモリの各ピクセルの位置を補正する。ピクセルx方向、y方向の位置補正量(それぞれd、dとする)は以下のように決められる。
【0053】
【数7】
【0054】
最終的にスキャン相関処理部6は上記二つの重み係数を乗算した結果を足し合わせ出力する。従来のスキャン相関方法の重み係数算出方法、数2、数3と異なるのはターゲット指標による条件式である数5(2)および数6(1)を加えたことである。これによってクラッタであると判断されたピクセルにおいては従来以上に信号が抑圧される効果を生んでいる。もう一つ従来と異なる点として、数7においてターゲットであると判断されたピクセルにおいては、ターゲットの移動量分の位置補正を行うことによって、移動ターゲットにおいても信号を抑圧することなくスキャン相関処理が可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明のスキャン相関処理機能を有したレーダ、または超音波、または光学カメラ装置の構成図である。
図2】従来のスキャン相関処理機能を有したレーダ装置の構成図である。
図3】本発明のスキャン相関処理における、ターゲットの移動ベクトル算出部の内部構成図である。
図4】本発明のスキャン相関処理における、最新スキャン画像信号の重み係数乗算部の内部構成図である。
図5】本発明のスキャン相関処理における、スキャン相関画像メモリ信号の重み係数乗算・位置補正処理部の内部構成図である。
【符号の説明】
【0056】
1 信号受信部、 2 複数スキャン画像メモリ、 2a 最新スキャンメモリ、 2b 過去の複数スキャン画像メモリ、 3 移動ベクトル算出部、 3a 三次元フーリエ変換処理部、 3b 二乗検出部、 3c 平面検出部 3d 三次元フーリエ変換処理部、 3e 二乗検出部、 3f 最大値検出部、4 ターゲット指標算出部、5 クラッタレベル算出部、 6 スキャン相関処理部、 6a 適応重み係数乗算部、 6aa しきい値制御部、 6ab 重み係数決定部、 6ac 乗算回路、 6b 適応重み係数乗算・位置補正処理部、 6ba しきい値制御部、6bb 重み係数決定部、 6bc 位置補正処理部、 6bd 乗算回路、 6c 重み係数乗算部、 6d 適応重み係数乗算部、7 スキャン相関画像メモリ、 8表示部

図1
図2
図3
図4
図5