特許第5775309号(P5775309)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775309
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】低い白金/パラジウム比を有するCSF
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/94 20060101AFI20150820BHJP
   B01D 39/14 20060101ALI20150820BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20150820BHJP
   B01J 29/74 20060101ALI20150820BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20150820BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20150820BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   B01D53/94 241
   B01D53/94 223
   B01D39/14 B
   B01D39/20 D
   B01J29/74 AZAB
   B01J35/04 301E
   B01J37/02 301C
   B01J37/02 301D
   B01J37/04 102
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-546856(P2010-546856)
(86)(22)【出願日】2009年2月10日
(65)【公表番号】特表2011-512249(P2011-512249A)
(43)【公表日】2011年4月21日
(86)【国際出願番号】US2009033627
(87)【国際公開番号】WO2009102683
(87)【国際公開日】20090820
【審査請求日】2012年2月9日
(31)【優先権主張番号】12/031,063
(32)【優先日】2008年2月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユエチン
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−083224(JP,A)
【文献】 特表2004−508186(JP,A)
【文献】 特開昭64−016751(JP,A)
【文献】 特開2005−248787(JP,A)
【文献】 特開2003−205245(JP,A)
【文献】 国際公開第06/021337(WO,A1)
【文献】 国際公開第08/047170(WO,A1)
【文献】 特開2008−057337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34
B01J 21/00 − 38/00
F01N 3/00
B01D 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路と隣接し且つこれを画定する縦方向に伸びる壁によって形成され、開放された入口端および閉じられた出口端を有する流入路、ならびに閉じた入口端および開放された出口端を有する流出路を含む複数の縦方向に伸びる当該通路を有する壁流モノリスと、
壁流モノリスの壁上に配置され、第1担持体粒子および第2担持体粒子、第1担持体粒子上の白金とパラジウムとの混合物を含む貴金属成分、ならびに第2担持体粒子上の、10重量%未満の白金を含む実質的にパラジウムからなる貴金属成分を含むウォッシュコートとを含む、触媒付きすすフィルタ。
【請求項2】
第2担持体粒子上の貴金属成分が、5重量%未満の白金を含む、請求項1に記載の触媒付きすすフィルタ。
【請求項3】
第1担持体における白金成分のパラジウム成分に対する比が2:1(重量)である、請求項1または2に記載の触媒付きすすフィルタ。
【請求項4】
第1および第2担持体粒子を含むウォッシュコートが、1:4〜4:1(重量)のPt:Pd比を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒付きすすフィルタ。
【請求項5】
第1および第2担持体粒子を含むウォッシュコートが、1:2〜2:1(重量)のPt:Pd比を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒付きすすフィルタ。
【請求項6】
第1および第2担持体粒子を含むウォッシュコートが、1:1(重量)のPt:Pd比を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒付きすすフィルタ。
【請求項7】
第1担持体粒子および第2担持体粒子が異なる物質で構成される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の触媒付きすすフィルタ。
【請求項8】
少なくとも白金成分およびパラジウム成分を第1担持体粒子に塗布し、
10重量%未満の白金を含む実質的にパラジウムからなる貴金属成分を第2担持体粒子に塗布し、
前記第1担持体粒子および前記第2担持体粒子を含むスラリーを調製し、そして
複数の軸方向に伸びるチャンネルを形成する気体透過性壁を有する壁流基板を用意し(各チャンネルは、反対端が塞がれた対の隣接するチャンネルで塞がれた一端を有する)、そして前記壁流基板を前記スラリーでウォッシュコーティングすることを含む、触媒付きすすフィルタを作製する方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法によって作成される触媒付きすすフィルタ。
【請求項10】
スラリーが、酒石酸、クエン酸、n−アセチルグルタミン酸、アジピン酸、アルファ−ケトグルタル酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、樟脳酸、カルボキシグルタミン酸、ジクロタル酸、ジメルカプトコハク酸、フマル酸、グルタコン酸,グルタミン酸、グルタル酸、イソフタル酸、イタコン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、メサコン酸、メソキサル酸、3−メチルグルタコン酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、フタル酸、フタル酸類、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、コハク酸、タルトロン酸、テレフタル酸、トラウマチン酸、トリメシン酸、カルボキシグルタミン酸、これらの誘導体およびこれらの混合物からなる群より選択される有機酸をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
チタン酸アルミニウム、菫青石、炭化ケイ素または基板とウォッシュコートとの間に、不動態化層のない壁流基板に直接塗布された炭化水素およびCOの転化に適合された触媒物質のウォッシュコートを有する複合材料から作製された壁流基板を含む触媒付きすすフィルタであって、該ウォッシュコートが2:1のPt:Pd(重量)混合物でコーティングされた第1担持体粒子と、10重量%未満の白金を含む実質的にパラジウムからなる貴金属成分でコーティングされた第2担持体粒子との混合物を含み、この混合物が1:1(重量)のPt:Pd比をもたらし、前記壁流基板は、複数の軸方向に伸びるチャンネルを形成する気体透過性壁を有し、各チャンネルは反対端が塞がれた対の隣接するチャンネルで塞がれた一端を有し、ウォッシュコートを含む壁流基板の熱水エージングと、それに続く800℃で4時間のさらなるエージングにより、触媒付きすすフィルタが、同じ条件下で測定する場合、100℃〜170℃の範囲の温度で、本質的にPtのみおよび基板とウォッシュコートとの間の不動態化層を用いて作製されるすすフィルタの炭化水素およびCOの転化率よりも高い炭化水素およびCOの転化率を示す、触媒付きすすフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明の実施形態は、汚染物質を排気流から除去するための排気処理システムの構成要素に関する。より具体的には、本発明は、排気処理システム用の触媒付きすすフィルタおよびその製造方法に関する。
【0002】
ディーゼルエンジンの排気は、一酸化炭素(「CO」)、未燃炭化水素(「HC」)および窒素酸化物(「NO」)等の排気物だけでなく、いわゆる微粒子つまり粒子状物質を構成する凝縮相物質(液体および固体)も含む不均一混合物である。しばしば、触媒組成物およびその組成物が配置される基板はディーゼルエンジン排気処理システム内に設けられ、特定の、または全部のこれらの排気成分を無害な成分に転化する。例えば、ディーゼル排気処理システムは、ディーゼル酸化触媒、すすフィルタ、およびNOの還元のための触媒のうちの1つもしくは複数を含み得る。
【0003】
白金族金属、卑金属およびこれらの混合物を含む酸化触媒は、HCとCO両方の気体状汚染物質および粒子状物質の一部をこれら汚染物質の酸化により二酸化炭素および水へと転化させることを促進することによって、ディーゼルエンジンの排気処理を容易にすることが知られている。このような触媒は一般的に、ディーゼル酸化触媒(DOC)と呼ばれるユニットの中に含まれており、これはディーゼルエンジンの排気物中に入れられ、排気物が大気中に発散する前にその排気物を処理する。気体状HC、COおよび粒子状物質の転化に加え、白金族金属を含む酸化触媒(典型的には耐火性酸化物担持体上に分散される)は、一酸化窒素(NO)のNOへの酸化も促進する。ディーゼル排気物の全体の粒子状物質の排出物は、3種の主成分から成る。1種の成分は、固体の、乾性の、固体炭素質の画分つまりすす画分である。この乾性炭素質物質が、一般的にはディーゼル排気に関連する可視のすす排出の一因である。当該粒子状物質の第2の成分は、溶性の有機画分(「SOF」)である。当該溶性の有機画分は時々揮発性有機画分(「VOF」)と呼ばれ、この用語が本明細書で用いられる。当該VOFは、そのディーゼル排気の温度に応じて、蒸気またはエアゾル(液状凝縮物の微細液滴)のいずれか一方としてディーゼル排気中に存在し得る。それは一般的に、米国大型車両用過渡的連邦試験方法等の標準的測定試験によって規定されているように、希釈排気物中で52℃の標準微粒子採取温度にて凝縮液体として存在する。これらの液体は、2種の源から生じる:(1)ピストンが上下する度にエンジンの円筒壁から押し出される潤滑油、および(2)未燃または一部燃焼したディーゼル燃料。
【0004】
当該粒子状物質の第3の成分は、いわゆる硫酸画分である。当該硫酸画分は、ディーゼル燃料中に存在する少量の硫黄成分から形成される。少ない割合のSOは当該ディーゼルの燃焼中に形成され、これはその排気物中の水と迅速に次々と混合し、硫酸を形成する。その硫酸はエアゾルとしての微粒子とともに凝縮相としてまとまるか、あるいはその他の微粒子成分上に吸着され、それによってTPMの質量を増加させる。
【0005】
高度な粒子状物質の削減のために使用する一種の重要な後処理技術は、ディーゼル微粒子フィルタである。ハニカム壁流フィルタ、糸巻き状または圧縮状の繊維フィルタ、開放セル発泡体、焼結金属フィルタ、およびその他等の、ディーゼル排気から粒子状物質を除去するのに効果的な多くの既知のフィルタ構造がある。しかしながら、下記に記載されているセラミック壁流フィルタが、最も多くの注目を集めている。これらのフィルタは、ディーゼル排気から90%を超える粒子状物質を除去する能力を有する。当該フィルタは排気物から粒子を除去するための物理的構造であり、その累積粒子はエンジン上のフィルタからの背圧を増加させる。従って、当該累積粒子は、許容可能な背圧を維持するために、連続的または周期的にそのフィルタから焼け出される必要がある。残念ながら、当該炭素すす粒子は、酸素の豊富な(乏しい)排気物条件下で燃焼するために、500℃を超過する温度を必要とする。この温度は、ディーゼル排気中に一般的に存在するものよりも高い。
【0006】
フィルタの受動的再生を提供するために、すす燃焼温度を下げるための規定が一般的に導入される。触媒の存在はすすの燃焼を促進し、それによって実際の負荷サイクル下において、ディーゼルエンジンの排気物内で利用可能な温度にてフィルタを再生する。このようにして、触媒付きすすフィルタ(CSF)または触媒付ディーゼル微粒子フィルタ(CDPF)は、累積すすの受動的燃焼とともに、微粒子物質を80%超過低減し、それによってフィルタの再生を促進するのに効果的である。
【0007】
世界中で採用される将来の排出基準は、ディーゼル排気物からのNO削減にも対処する。希薄排気状態の固定汚染源に適用される実績のあるNO削減技術は、選択的接触還元(SCR)である。このプロセスにおいて、NOは、アンモニア(NH)を用いて一般的に卑金属からなる触媒上で窒素(N)に還元される。当該技術は90%を超えるNO還元が可能であり、ひいては、当該技術は積極的なNO削減目標を達成するための最良の方法の一つである。SCRは、移動用途のために開発中であり、アンモニア源として尿素(一般的に水溶液中に存在する)を伴う。SCRは、排気温度が当該触媒の活性温度範囲内にある限り、NOの効果的な転化を提供する。
【0008】
排気物の別個の成分に対処する触媒をそれぞれ含む別個の基板を排気処理システム中に提供することができるが、システムの全体のサイズを縮小するため、システムの組み立てを容易にするため、そしてシステムの全体的なコストを低減するためには、より少ない基板を使用することが望ましい。この目標を達成するための一つの方法は、NOを無害な成分に転化するために効果的な触媒組成物ですすフィルタをコーティングすることである。この方法を用いて、触媒付きすすフィルタは2つの触媒機能、すなわち、排気流の微粒子成分の除去および排気流のNO成分のNへの転化を担う。
【0009】
NO削減目標を達成し得るコーティングされたすすフィルタは、SCR触媒組成物のすすフィルタ上への十分なローディングを必要とする。排気流のある有害成分に暴露されることで、時間とともに組成物の触媒有効性が徐々に失われるために、SCR触媒組成物のより多量の触媒ローディングの必要性が増す。しかしながら、さらに高い触媒ローディングを用いてコーティングされたすすフィルタを調製することは、排気処理システム内で許容できないほど高い背圧をもたらし得る。壁流フィルタ上のさらに高い触媒ローディングを可能にするコーティング技術は、依然としてコーティングが許容可能な背圧を達成する流動特性を維持することを可能にし、従って望ましい。
【0010】
壁流フィルタのコーティングにおける検討事項のさらなる態様は、適切なSCR触媒組成物の選択である。まず、触媒組成物は、フィルタの再生に典型的な高い温度に長期間さらされた後でもそのSCR触媒活性を維持できるように耐久性でなければならない。例えば、粒子状物質のすす画分の燃焼は、しばしば700℃を超える温度をもたらす。このような温度は、多くの一般的に使用されるSCR触媒組成物、たとえばバナジウムおよびチタンの混合酸化物の触媒有効性を低下させる。第2に、SCR触媒組成物は、好ましくは車両が動作する可変温度範囲に適合できるように十分広い動作温度範囲を有する。低負荷条件、または始動時には、300℃より低い温度が一般的に起こる。当該SCR触媒組成物は、さらに低い排気温度でも、好ましくは、NO削減の目標を達成するために排気物のNO成分の還元を触媒することができる。
【0011】
ディーゼル排出技術の開発の重要な推進力は、触媒物質が比較的まれであり、製造するのが困難なことである。ほとんどの触媒すすフィルタはPt/Pd系(一般的に4:1〜2:1の比)である。触媒組成物中の白金の割合を減少させることによって、触媒のコストが低減される。しかしながら、白金は、パラジウムまたはPt/Pd配合物よりもCOおよびHCの転化に関して触媒活性が高い。従って、現在利用可能な白金およびPt/Pd配合物の活性と類似しているか、またはその活性よりも高い活性を有する触媒組成物が依然として当該技術分野では必要とされている。
【0012】
本発明の実施形態は、壁流モノリスを含む触媒付きすすフィルタに関する。当該壁流モノリスは、複数の縦方向に伸びる通路であって、当該通路と隣接し、当該通路を画定する、縦方向に伸びる壁によって形成される通路を有し得る。当該通路は、開放された入口端および閉じられた出口端を有する流入路、および閉じられた入口端および開放された出口端を有する流出路を含む。ウォッシュコートを、壁流モノリスの壁上に配置することができる。当該ウォッシュコートは、第1担持体粒子および第2担持体粒子を含む。白金とパラジウムとの混合物を含む貴金属成分は第1担持体粒子上にあってよく、実質的にパラジウムのみから選択される貴金属成分は、第2担持体粒子上にあってよい。具体的な実施形態において、実質的にパラジウムのみから選択される貴金属成分は、10重量%未満の白金を含む。他の具体的な実施形態において、該貴金属成分は、約5重量%未満の白金または約1重量%未満の白金を含む。
【0013】
本発明の詳細な実施形態は、約2:1(重量比)の白金成分対パラジウム成分の混合物を含む第1担持体粒子を有する。他の詳細な実施形態のウォッシュコートは、全体的なPt:Pd比が約1:4〜約4:1、または約1:2〜約2:1、または約1:2〜約3:2、または約0.8:1〜約1.2:1、または約1:1(これらの比はそれぞれ重量比である)である第1および第2担持体粒子を有する。
【0014】
他の実施形態の触媒すすフィルタは、1つもしくは複数の、アルミナ上ケイ素、ジルコニア含有物質およびゼオライトである、第1担持体粒子および第2担持体粒子を有する。いくつかの詳細な実施形態において、第1担持体粒子および第2担持体粒子は、異なる物質から構成される。他の詳細な実施形態は、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウムおよび菫青石の1つもしくは複数で作製される壁流基板を有する。
【0015】
詳細な実施形態において、700℃で、10%蒸気中、4時間のエージング(熱水エージング)後の当該触媒付きすすフィルタは、同じ条件下で測定する場合、約100℃〜約190℃の間の温度で測定すると、従来法によって調製されるほぼ等しいPt:Pd比を有する触媒付きすすフィルタよりも、高いCOおよび炭化水素の転化率を示す。
【0016】
別の詳細な実施形態において、熱水エージングと、それに続く800℃で4時間のさらなるエージング後の当該すすフィルタは、同じ条件下で測定する場合、約100℃〜約170℃の間の温度で測定すると、従来法によって調製される約2:1のPt:Pd比を有する触媒付きすすフィルタよりも高いCO転化率を示す。
【0017】
さらなる詳細な実施形態において、熱水エージングと、それに続く800℃で4時間のさらなるエージング後の当該触媒すすフィルタは、同じ条件下で測定する場合、約100℃〜約170℃の間の温度で測定すると、従来法に従って調製される本質的にPtのみを有する触媒付きすすフィルタよりも高いCO転化率を示す。
【0018】
本発明のさらなる実施形態は、触媒すすフィルタを作製する方法に関する。当該方法は、少なくとも白金成分およびパラジウム成分を第1担持体粒子に塗布することを含む。パラジウム成分のみから選択される貴金属成分を第2担持体粒子に塗布する。該第1担持体粒子および該第2担持体粒子を含むスラリーを調製する。複数の軸方向に伸びるチャンネルを形成する気体透過性壁を有する壁流基板を提供する。各チャンネルは、反対端が塞がれた隣接する任意の対のチャンネルで塞がれた一端を有する。該壁流基板をスラリーでウォッシュコーティングする。
【0019】
いくつかの実施形態は、スラリー中に少なくとも2個の酸基を有する有機酸を含む。2個以上のカルボン酸基を有する有機酸は、酒石酸、クエン酸、n−アセチルグルタミン酸、アジピン酸、アルファ−ケトグルタミン酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、樟脳酸、カルボキシグルタミン酸、クエン酸、ジクロタル酸、ジメルカプトコハク酸、フマル酸、グルタコン酸,グルタミン酸、グルタル酸、イソフタル酸、イタコン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、メサコン酸、メソキサル酸、3−メチルグルタコン酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、フタル酸、フタル酸類、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、コハク酸、タルトロン酸、テレフタル酸、トラウマチン酸、トリメシン酸、カルボキシグルタミン酸、これらの誘導体およびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0020】
他の実施形態の触媒付きすすフィルタは、チタン酸アルミニウム、菫青石、炭化ケイ素またはこれらの複合材料から作製される壁流基板を含む。当該触媒付きすすフィルタは、基板とウォッシュコートとの間の保護層がなく、壁流基板に直接塗布される炭化水素およびCOを転化するために適応される触媒物質のウォッシュコートを有する。該ウォッシュコートは、2:1のPt:Pd混合物でコーティングされた第1担持体粒子と、本質的にPdのみでコーティングされた第2担持体粒子との混合物を含む。第1および第2担持体粒子の混合物は、約1:1のPt:Pd比をもたらす。該壁流基板は、複数の軸方向に伸びるチャンネルを形成する気体透過性壁を有する。各チャンネルは、その反対端が塞がれた任意の対の隣接するチャンネルで塞がれた一端を有する。ウォッシュコートを含む壁流基板の熱水エージングと、それに続く800℃で4時間のさらなるエージングを行うと、触媒付きすすフィルタは、同じ条件下で測定する場合、約100℃〜約170℃の範囲の温度で、本質的にPtのみおよび基板とウォッシュコートとの間の保護層を用いて作製される触媒付きすすフィルタの炭化水素およびCOの転化率よりも高い炭化水素およびCOの転化率を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の排気処理システムの一実施形態の概略図を示す。
図2】壁流フィルタの基板の斜視図を示す。
図3】壁流フィルタの基板の断面の切断図を示す。
図4】700℃で4時間のエージング後の試料Aから試料E間での転化率の比較を示す。
図5】700℃で4時間のエージング後の試料Aから試料E間での全部の炭化水素転化率の比較を示す。
図6】700℃で4時間のエージングとそれに続く800℃で4時間のエージング後の試料Aから試料E間でのCO転化率の比較を示す。
図7】700℃で4時間のエージングとそれに続く800℃で4時間のエージング後の試料Aから試料E間での全部の炭化水素転化の比較率を示す。
【0022】
本発明のいくつかの例示的実施形態を説明する前に、本発明は、下記の記述で説明される構成、つまり方法の段階の詳細に制限されないということを理解されたい。本発明はその他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または実行可能である。
【0023】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる、単数形「一つの(または不記載)(「a」、「an」)」、および「その/該/当該/前記(「the」)」は、本文が他に明示しない限り、複数形の指示対象を含む。従って、例えば、「(一種の)酸(「an acid」)」への言及は、2種以上の酸の混合物などを含む。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、「熱水エージング」という用語は、700℃、10%蒸気中、4時間のエージングを意味する。
【0025】
本発明の実施形態は、排気処理システムの一部としての使用のための触媒付きすすフィルタを製造するためのプロセスに関する。排気処理システムの目的は、ディーゼルエンジンの排気物の粒子状物質、NOおよび他の気体状成分の同時処理を提供することである。当該排気処理システムは、排気システムに必要な重量および容積を有意に最小限にするために、統合すすフィルタおよび選択的接触還元(SCR)触媒を使用する。さらに、当該システムに取り込まれる触媒組成物の選択により、効果的な汚染物質の減少が様々な温度の排気流のために提供される。この特徴は、様々な積載量および車速においてディーゼル車を運転するのに都合がよく、これらの条件は、このような車のエンジンから排出される排気温度に著しく影響する。
【0026】
従来のコーティングプロセスによって製造される触媒付きすすフィルタは、いくつかの欠点を有する。これらの欠点としては、高価な貴金属を必要とすること、気体活性が不十分であること、およびウォッシュコーティング前に多くの基板を不動態化する必要があることが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
1つもしくは複数の実施形態によれば、すすフィルタが従来のフィルタよりも優れた物理的特性を有するように、製造中に重合体不動態化段階を必要としないすすフィルタを製造するための方法を含む触媒組成物をすすフィルタに塗布する方法が提供される。
【0028】
排気処理システムの一実施形態は、図1に概略的に示されている。図1に見られるように、気体状汚染物質を含む排気(未燃の炭化水素、一酸化炭素、およびNOを含む)、ならびに粒子状物質は、エンジン15から酸化触媒11へと運搬される。酸化触媒11において、未燃の気体状炭化水素および不揮発性炭化水素(すなわち、VOF)、ならびに一酸化炭素はほとんど燃焼され、二酸化炭素および水を形成する。当該酸化触媒を用いた相当な割合のVOFの除去は、特に、当該システムにおいて下流に配置されるすすフィルタ12上の粒子状物質の甚大すぎる堆積(すなわち、目詰まり)の防止を助ける。加えて、NO成分の相当な割合のNOは、当該酸化触媒においてNOに酸化される。
【0029】
当該排気流は、触媒組成物でコーティングされるすすフィルタ12に運搬される。1つもしくは複数実施形態によれば、すす画分およびVOFを含む粒子状物質も、当該すすフィルタによってほとんど除去される(80%より多い)。当該すすフィルタ上に堆積した粒子状物質は、当該フィルタの再生を通じて燃焼される。当該粒子状物質のすす画分が燃焼する温度は、当該すすフィルタ上に配置された触媒組成物の存在によって低下する。触媒付きすすフィルタ12は、排気流中のNoxを窒素に転化するためのSCR触媒を随意に含んでよい。
【0030】
当該触媒組成物を担持するのに有用な壁流基板は、当該基板の縦軸に沿って伸びる、複数の微細で実質的に平行な気体流路を有する。一般的に、各通路は、別の通路が反対端面で塞がれている状態で、その基板本体の一端で塞がれる。このようなモノリス担体は、1平方インチあたり約300個より多いセル、および断面の1平方インチ当たり最大約700本以上の流路(または「セル」)を含み得るが、遙かに少ない数のものが用いられてよい。例えば、当該担体は約7〜600個、さらに一般的には約100〜400個の、1平方インチ当たりのセル(「cpsi」)を有し得る。当該セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、またはその他多角形である断面を有し得る。壁流基板は、一般的に、0.002〜0.1インチの壁厚を有する。好適な壁流基板は、0.002〜0.015インチの間の壁厚を有する。
【0031】
図2および3は、複数の通路52を有する壁流フィルタ基板30を説明する。当該通路は、当該フィルタ基板の内壁53によって管状に封入される。当該基板は入口端54および出口端56を有する。別の通路は、その入口端を入口栓58で、その出口端を出口栓60で塞がれ、入口端54および出口端56で向かい合う市松模様を形成する。気体流62は塞がれていないチャンネル入口64を通じて入り込み、出口栓60によって止められ、チャンネル壁53(多孔性である)を通じて出口側66に拡散する。当該気体は、入口栓58のために壁の入口側に戻ることができない。
【0032】
壁流フィルタ基板は、菫青石、α−アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、リシア輝石、アルミナ−シリカ−マグネシア、もしくはケイ酸ジルコニウムを含むが、これらに限定されないセラミック様物質、または多孔性、難燃性金属から成る。壁流基板は、セラミック繊維複合材料からも形成され得る。他の実施形態の壁流モノリスは、チタン酸アルミニウム、菫青石、金属酸化物およびセラミックのうちの1つもしくは複数である。
【0033】
従って、本発明の1つもしくは複数実施形態は、壁面流モノリスを含む触媒付きすすフィルタに関する。壁面流モノリスは、通路に隣接し、この通路を画定する、縦方向に伸びる壁面によって形成される、複数の縦方向に伸びる通路を有し得る。当該通路は、開放された入口端および閉じられた出口端を有する流入路、ならびに閉じられた入口端及び開放された出口端を有する流出路を含む。ウォッシュコートは、壁面流モノリスの壁面上に配置され得る。当該ウォッシュコートは、第1担持体粒子および第2担持体粒子を含む。白金とパラジウムとの混合物を含む貴金属成分は第1担持体粒子上にあってよく、実質的にパラジウムのみから選択される貴金属成分は第2担持体粒子上にあってよい。実質的にパラジウムのみとは、約10%未満の白金を含む貴金属ローディングを意味する。具体的な実施形態において、実質的にパラジウムのみとは、約5%未満の白金、または約1%未満の白金ローディングを含む貴金属ローディングを意味する。
【0034】
本発明の詳細な実施形態は、約2:1の白金成分対パラジウム成分の混合物を含む第1担持体粒子を有する。他の詳細な実施形態のウォッシュコートは、全体的なPt:Pd比が約1:4〜約4:1の間、または約1:2〜約2:1の間、または約1:2〜約3:2の間、約0.8:1〜約1.2:1の間、または約1:1で第1および第2担持体粒子を有する。
【0035】
他の実施形態の触媒付きすすフィルタは、アルミナ上ケイ素、ジルコニア含有物質およびゼオライトのうちの1つもしくは複数である第1担持体粒子および第2担持体粒子を有する。いくつかの詳細な実施形態において、第1担持体粒子および第2担持体粒子は、異なる物質から成る。他の実施形態は、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウムおよび菫青石のうちの1つもしくは複数で製造される壁流基板を有する。
【0036】
詳細な実施形態において、熱水エージング後の触媒付きすすフィルタは、同じ条件下で測定する場合、約100℃〜約190℃の間の温度で測定すると、従来法で調製された、ほぼ等しいPt:Pd比を有する触媒付きすすフィルタよりも高いCOおよび炭化水素の転化率を示す。
【0037】
別の詳細な実施形態において、熱水エージングと、それに続く800℃で4時間のさらなるエージング後のすすフィルタは、同じ条件下で測定する場合、約100℃〜約170℃の間の温度で測定すると、従来法によって調製される約2:1のPt:Pd比を有する触媒付きすすフィルタよりも高いCO転化率を示す。
【0038】
さらなる詳細な実施形態において、熱水エージングと、それに続く800℃で4時間のさらなるエージング後の触媒付きすすフィルタは、同じ条件下で測定する場合、約100℃〜約170℃の間の温度で測定すると、本質的に、従来法に従って調製される白金化合物のみを有する触媒付きすすフィルタよりも高いCO転化率を示す。
【0039】
本発明のさらなる実施形態は、触媒付きすすフィルタを製造する方法に関する。当該方法は、少なくとも白金成分およびパラジウム成分を第1担持体粒子に塗布することを含む。パラジウム成分のみから選択される貴金属成分を第2担持体粒子に塗布する。第1担持体粒子および第2担持体粒子を含むスラリーを調製する。複数の軸方向に伸びるチャンネルを形成する気体透過性壁を有する壁流基板を提供する。各チャンネルは、反対端で塞がれた任意の対の隣接するチャンネルで塞がれた一端を有する。当該壁流基板を該スラリーでウォッシュコーティングする。
【0040】
いくつかの実施形態は、該スラリー中で少なくとも2種類の酸基を有する有機酸を含む。好適な酸としては、n−アセチルグルタミン酸((2S)−2−アセトアミドペンタン二酸)、アジピン酸(ヘキサン二酸)、アルダル酸、アルファ−ケトグルタミン酸(2−オキソペンタン二酸)、アスパラギン酸((2S)−2−アミノブタン二酸)、アゼライン酸(ノナン二酸)、樟脳酸((1R,3S)−1,2,2−トリメチルシクロペンタン−1,3−ジカルボン酸)、カルボキシグルタミン酸(3−アミノプロパン−1,1,3−トリカルボン酸)、クエン酸(2−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸)、クレアチン−アルファケトグルタル酸塩、ジクロタル酸(3−ヒドロキシ−3−メチルペンタン二酸)、ジメルカプトコハク酸(2,3−ビス−スルファニルブタン二酸)、フマル酸(トランス−ブタン二酸)、グルタコン酸(ペント−2−エン二酸)、グルタミン酸((2S)−2−アミノペンタン二酸)、グルタル酸(ペンタン二酸)、イソフタル酸(ベンゼン−1,3−ジカルボン酸m−フタル酸)、イタコン酸(2−メチリデンブタン二酸)、マレイン酸(シス−ブタン二酸)、リンゴ酸(ヒドロキシブタン二酸)、マロン酸(プロパン二酸)、メサコン酸((2E)−2−メチル−2−ブタン二酸)、メソキサル酸(2−オキソプロパン二酸)、3−メチルグルタコン酸((2E)−3−メチルペント−2−エン二酸)、シュウ酸(エタン二酸)、オキサロ酢酸(3−カルボキシ−3−オキソプロパン酸)、フタル酸(ベンゼン−1,2−ジカルボン酸o−フタル酸)、フタル酸類(オルト、メタおよびパラベンゼンジカルボキシルフタル酸の混合物)、ピメリン酸(ヘプタン二酸)、セバシン酸(デカン二酸)、スベリン酸(オクタン二酸)、コハク酸(ブタン二酸)、酒石酸(2,3−ジヒドロキシブタン二酸)、タルトロン酸(2−ヒドロキシプロパン二酸)、テレフタル酸(ベンゼン−1,4−ジカルボン酸p−フタル酸)、トラウマチン酸(ドデス−2−エン二酸)、トリメシン酸(ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸)、これらの誘導体およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。詳細な実施形態において、当該酸は酒石酸である。
【0041】
他の実施形態の触媒付きすすフィルタは、チタン酸アルミニウム、菫青石、炭化ケイ素または複合材料から作られた壁流基板を含む。当該触媒付きすすフィルタは、基板とウォッシュコートとの間の保護層なしで、壁流基板に直接塗布される炭化水素およびCOを変換するために適応される触媒物質のウォッシュコートを有する。当該ウォッシュコートは、2:1のPt:Pd混合物でコーティングされた第1担持体粒子と、本質的にPdのみでコーティングされた第2担持体粒子との混合物を含む。第1および第2担持体粒子の混合物は、約1:1のPt:Pd比をもたらす。当該壁流基板は、複数の軸方向に伸びるチャンネルを形成する気体透過性壁を有する。各チャンネルは、その反対端で塞がれた任意の対の隣接するチャンネルで塞がれた一端を有する。ウォッシュコートを含む壁流基板の熱水エージングと、それに続く800℃で4時間のさらなるエージングによって、触媒付きすすフィルタは、同じ条件下で測定する場合、約100℃から約170℃の範囲の温度で、本質的にPdのみおよび基板とウォッシュコートとの間の保護層を用いて作製された触媒付きすすフィルタの炭化水素およびCOの転化率よりも高い炭化水素およびCOの転化率を示す。同じ条件下とは、試料を同じ種類の基板上で、同じローディング、同じ供給気体条件および同じ空間速度で調製したことを意味する。
【実施例】
【0042】
【表1】
【0043】
試料A
当該基板は、51%の空隙率、22μmの平均孔径(MPS)、300/inのセル密度および12ミルの壁厚を有するSiC壁流基板であった。当該フィルタ基板は、34mm×34mm×150mmの寸法を有する正方形の切片である。
【0044】
試料Aは、70g/ftのPt、0.6g/inのSi/Al(1.5%のSiO)、および0.1g/inのH−ベータゼオライトの組成を有する。合計のウォッシュコートローディングは0.74g/inであった。
【0045】
モノエタノールアミン水酸化白金溶液を、遊星混合器で初期湿潤技術を用いてSi−Al粉末上に浸透させた。浸透後、酢酸(7重量%の固体)を撹拌しながら粉末中に添加した。
【0046】
Pt含有粉末を次いで連続ミル中で粉砕して、粒子サイズをD90<5ミクロンに減じた(90%の粒子が5ミクロン未満)。H−ベータを次いで該ミルに添加し、混合物をさらに粉砕して、D90<4ミクロンの粒子サイズに達した。当該スラリーを、コーティングする前に、24%の固形分に希釈した。
【0047】
その基板の入口側を下に向け、その出口側をスラリー面のほんの上(約1/4インチ)に保持した状態で、その基板をスラリー中に含浸させることによって、得られたスラリーをウォッシュコーティングした。その基板をスラリーから取り出し、ウォッシュコートスラリーが基板から出なくなるまで、出口側から空気流を流した。その後、コーティングされた試料を110℃で2時間乾燥させ、450℃で1時間空気中にて焼成した。
【0048】
試料B
本触媒は、次の組成:46.67g/ftのPt、23.33g/ftのPd、0.6g/inのSi−アルミナ(1.5%のAl上SiO)、0.1g/inベータゼオライトを有していた。合計のウォッシュコートローディングは0.74g/inであった。
【0049】
当該触媒コーティングスラリーを調製するために、テトラモノエタノールアミン水酸化Pt溶液を、遊星混合器中で初期湿潤技術によってSi/アルミナ粉末上に浸透させた。次いで、同一の浸透法を用いて、硝酸PdをPt/Si−アルミナ粉末に塗布した。その後、貴金属が浸透した粉末を水中に分散させてスラリーを作製した。連続ミルを用いてこのスラリーを粉砕し、その粒子サイズを90%5マイクロメートル未満(D90<5μm)に減少させた。H−ベータを次に該ミルに添加し、混合物をさらに粉砕して、D90<4ミクロンの粒子サイズに達した。このスラリーを希釈して、コーティングする前に23%の固形分にした。
【0050】
その基板の入口側を下に向け、その出口側をそのスラリー面のほんの上(約1/4インチ)に保持した状態でその基板をスラリー中に含浸させた。その基板をそのスラリーから取り出し、ウォッシュコートスラリーが出てこなくなるまで、その出口側から空気流を流した。その後、コーティングされた試料を110℃で2時間乾燥し、450℃で1時間空気中にて焼成した。
【0051】
試料C
本触媒は、次の組成:35g/ftのPt、35/ftのPd、0.6g/inのSi−アルミナ(1.5%のAl上SiO)、0.1g/inのベータゼオライトを有していた。合計のウォッシュコートローディングは0.74g/inであった。
【0052】
テトラモノエタノールアミン水酸化Pt溶液を、遊星混合器中で初期湿潤技術によってSi−アルミナ粉末上に浸透させた。その後、同一の浸透技術を用いて、硝酸パラジウムをPt/Si−アルミナ粉末上に塗布した。その後、その貴金属が浸透した粉末を水中に分散させてスラリーを作製した。連続粉砕機を用いてこのスラリーを粉砕し、その粒径を90%5マイクロメートル未満(D90<5μm)に減少させた。H−ベータを次に該ミルに添加し、混合物をさらに粉砕して、U90<4ミクロンの粒子サイズに達した。当該スラリーをコーティングする前に23%の固形分まで希釈した。
【0053】
その基板の入口側を下に向け、その出口側をそのスラリー面のほんの上(約1/4インチ)に保持した状態でその基板をそのスラリー中に含浸させることによって、そのスラリーをウォッシュコーティングした。その基板をそのスラリーから取り出し、ウォッシュコートスラリーが出てこなくなるまで、その出口側から空気流を流した。その後、コーティングされた試料を110℃で2時間乾燥し、450℃で1時間空気中にて焼成した。
【0054】
試料D
この触媒は、次の組成:35g/ftのPt、35/ftのPd、0.6g/inのSi−アルミナ(1.5%のAl上SiO)、0.1g/inのベータゼオライトを有していた。合計のウォッシュコートローディングは0.74g/inであった。
【0055】
テトラモノエタノールアミン水酸化Pt溶液を、遊星混合器中で初期湿潤法によって全Si−アルミナ粉末の半分(0.3g/inに等しい)上に浸透させた。次に、硝酸Pdの半分(17.5g/ftに等しい)を、同じ含浸技術を用いてPt/Si−アルミナ粉末上に塗布した。
【0056】
Pdの残り半分の量(17.5g/ft)を、Si−アルミナの残り半分(0.3g/in)上に初期湿潤技術を用いて塗布した。
【0057】
当該2つの粉末を混合し、連続ミル中に入れて、粒子サイズを90%5マイクロメートル未満(D90<5μm)に減じた。H−ベータを次に該ミルに添加し、混合物をさらに粉砕して、D90<4ミクロンの粒子サイズに達した。当該スラリーをコーティングする前に21%の固形分まで希釈した。
【0058】
試料E
本触媒は次の組成:35g/ftのPt、35/ftのPd、0.6g/inのSi−アルミナ(1.5%のAl上SiO)、0.1g/inのベータゼオライトを有していた。合計のウォッシュコートローディングは0.74g/inであった。
【0059】
テトラモノエタノールアミン水酸化Pt溶液を、遊星混合器中で初期湿潤技術によって全Si−アルミナ粉末の半分(0.3g/inに等しい)上に浸透させた。その後、同一の浸透技術を用いて、硝酸Pdの半分(17.5g/ftに等しい)を該Pt/Si−アルミナ粉末に塗布した。このPt/Pd/Si−アルミナ粉末を450℃で2時間焼成した。
【0060】
Pdの残り半分の量(17.5g/ft)を、該Si−アルミナの残り半分(0.3g/in)に初期湿潤技術を用いて塗布した。このPd/Si−アルミナ粉末を450℃で2時間焼成した。
【0061】
当該2つの焼成した粉末を混合し、連続ミル中に入れて、粒子サイズを90%5マイクロメートル未満(D90<5μm)に減じた。粉砕中、酒石酸を該ミルに添加して、pH=4〜5にした。H−ベータを次に該ミルに添加し、混合物をさらに粉砕して、D90<4ミクロンの粒子サイズに達した。当該スラリーをコーティングする前に21%の固形分まで希釈した。
【0062】
触媒試験条件
これらの触媒付きすすフィルタ試料を、Clに基づいて1000ppmのCOと450ppmの炭化水素、100ppmのNO、10%のO、7%の水、5%のCOと残りNを含むフィードを有する流通リアクターシステムにおいて試験した。当該炭化水素の構成は、全てClに基づいて、等しい割合のプロペン、トルエンおよびデカンであった。当該試験の空間速度は35,000/時であった。当該システムは、CO分析器、HC分析器、CO分析器、ならびにFTIR分光器および質量分光器を備えており、これらを用いて触媒の転化効率を決定した。最初に触媒を当該供給物で90℃にて飽和させた。90℃での90秒の安定化処理の後、その温度を20℃/分で300まで徐々に増加させた。反応物及び生成物の濃度を連続的に監視および記録した。COおよび合計炭化水素(THC)の転化率を、供給物における濃度(当該触媒を通さない)と、当該触媒を通過した後に得られた濃度との間の相対的差異として何度も計算した。試験前に、空気および10%蒸気を流しながら、当該試料を装置内にて700℃で4時間エージングした。試料を次に800℃の装置中でさらに4時間エージングした。
【0063】
図4は、熱水エージング後の試料Aから試料EのCO転化率を示す。試料は全て、単なる1:1のPt:Pd均質混合物である試料Cよりも高い転化効率および低い着火温度を有する。スラリー中酒石酸を用いて調製された、等しい量の白金およびパラジウムを有する試料Eは、均質な2:1のPt:Pd試料Bに匹敵する活性を示す。酒石酸プロセスによって調製された試料Eは、酒石酸を用いないで調製された試料D(T50≒150℃)よりも低い温度(T50≒140℃)でCOを燃焼した。[T50は、燃焼温度または50%転化率での温度である。]
【0064】
図5は、分離された担持体試料Dおよび試料Eの両方が、熱水によりエージングされた場合に、均等な担持体試料Cよりもはるかに低いHC転化率を有することを示す。さらに、酒石酸を用いて調製された試料Eは、2:1のPt:Pd比を有する均質な担持体試料と等しい燃焼温度を有する。
【0065】
図6は、熱水エージングと、それに続く800℃で4時間のさらなるエージング後の試料Aから試料EのCO転化率を示す。酒石酸を用いて調製された試料Eは、Ptのみの試料Aよりも低い燃焼温度を示す。
【0066】
図7は、試料Aから試料Eの炭化水素(THC)転化率を示す。試料は全て、均質な1:1のPt:Pd試料Cよりも低い燃焼温度を有する。
【0067】
従って、本発明はその様々な実施形態に関連して開示されているが、下記の特許請求の範囲によって定義されているように、その他の実施形態が本発明の主旨および範囲の中に含まれる可能性があるということを理解されたい。
【0068】
本明細書全体における「1つの実施形態」、「特定の実施形態」、「1つもしくは複数の実施形態」、または「一実施形態」への言及は、当該実施形態に関連して記載されている特定の特長、構造、物質、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれるということを意味する。従って、本明細書全体における様々な場所での「1つもしくは複数の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「1つの実施形態では」、または「一実施形態では」等の語句の体裁は、必ずしも本発明の同一の実施形態を指していない。さらに、当該特定の特長、構造、物質、または特性は、1つもしくは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わされてよい。
【0069】
本明細書の発明が特定の実施形態を参照して記載されているが、これらの実施形態は本発明の原理および用途をただ説明しているだけであるということを理解されたい。様々な変更および変形が、本発明の主旨および範囲を逸脱することなく、本発明の方法および装置に対して行うことができるということが当業者にとって明白になる。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内にある変更および変形を含むということが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7