(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
いくつかの実施態様において、本発明の開示は、非晶質樹脂、結晶質樹脂、およびシアニン色素を含むトナーと、そのようなトナーを製造するための方法と、そのようなトナーを用いて画像を形成する方法とを提供する。シアニン色素は、他の望ましい性質に悪影響をほとんど与えることなく、ヒートコヒージョン性を改良する。たとえば、そのようにして得られたトナーは、受容可能な帯電性能およびブロッキング性を有している。
【0009】
本明細書および後に続く特許請求項において、たとえば「a」、「an」および「the」のような単数形には複数形もまた含まれる(内容的に明らかに別な状況を示している場合は除く)。さらに、以下のような、定義されるべきいくつかの用語について言及しておく。
【0010】
「官能基」という用語は、たとえば、その基およびそれが結合されている分子の化学的な性質を決定するように配列された原子の基を指している。官能基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボン酸基などが挙げられる。
【0011】
「任意成分の(optional)」または「場合によって(optionally)」という用語は、たとえば、それに続く状況が起きるかもしれないし、あるいは起きないかもしれないという場合を指していて、そのような状況が起きる場合と、そのような状況が起きない場合とが含まれている。
【0012】
<ポリマ(樹脂)>
そのトナー粒子には、少なくとも1種の樹脂かまたは2種以上の樹脂の混合物を含み、たとえば、そのトナー粒子には、スチレン樹脂、UV硬化性樹脂、および/またはポリエステル樹脂を含んでいてよい。
【0013】
スチレン樹脂およびポリマは、当業者には公知である。いくつかの実施態様において、具体的なスチレン樹脂は、たとえば、スチレンアクリレートベースのポリマも含めて、スチレンベースのポリマであってよい。そのような樹脂を説明する例は、たとえば、米国特許第5,853,943号明細書、米国特許第5,922,501号明細書、および米国特許第5,928,829号明細書に見出すことができる。
【0014】
UV硬化性樹脂は、当業者には公知である。いくつかの実施態様において、UV硬化性樹脂は、たとえば紫外光線のような活性化照射線および適切な光重合開始剤の存在下に架橋させることが可能な不飽和ポリマであってよい。そのような樹脂を説明する例は、たとえば米国特許出願公開第2008−0199797号明細書に見出すことができる。
【0015】
ポリエステル樹脂もまた当業者には公知である。本発明の開示に選択される具体的な1種または複数のポリエステル樹脂としては、たとえば、不飽和ポリエステルおよび/またはその誘導体、ポリイミド樹脂、分岐状のポリイミド樹脂、各種のポリエステル、たとえば結晶質ポリエステル、非晶質ポリエステル、またはそれらの混合物が挙げられる。そのような樹脂を説明する例は、たとえば、米国特許第6,593,049号明細書、米国特許第6,756,176号明細書、および米国特許第6,830,860号明細書に見出すことができる。
【0016】
結晶質樹脂の例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレート、エチレン−プロピレンコポリマ、エチレン−酢酸ビニルコポリマ、ポリプロピレン、それらの混合物などが挙げられる。具体的な結晶質樹脂としては、以下のようなポリエステルベースのものが挙げられる:ポリ(エチレン−アジペート)、ポリ(プロピレン−アジペート)、ポリ(ブチレン−アジペート)、ポリ(ペンチレン−アジペート)、ポリ(ヘキシレン−アジペート)、ポリ(オクチレン−アジペート)、ポリ(エチレン−スクシネート)、ポリ(プロピレン−スクシネート)、ポリ(ブチレン−スクシネート)、ポリ(ペンチレン−スクシネート)、ポリ(ヘキシレン−スクシネート)、ポリ(オクチレン−スクシネート)、ポリ(エチレン−セバケート)、ポリ(プロピレン−セバケート)、ポリ(ブチレン−セバケート)、ポリ(ペンチレン−セバケート)、ポリ(ヘキシレン−セバケート)、ポリ(オクチレン−セバケート)、アルカリコポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(エチレン−アジペート)、ポリ(デシレン−セバケート)、ポリ(デシレン−デカノエート)、ポリ(エチレン−デカノエート)、ポリ(エチレン−ドデカノエート)、ポリ(ノニレン−セバケート)、ポリ(ノニレン−デカノエート)、コポリ(エチレン−フマレート)−コポリ(エチレン−セバケート)、コポリ(エチレン−フマレート)−コポリ(エチレン−デカノエート)、およびコポリ(エチレン−フマレート)−コポリ(エチレン−ドデカノエート)、ならびにそれらの組合せなどである。
【0017】
結晶質樹脂はたとえば、トナー成分の約5〜約50重量%、たとえばトナー成分の約10〜約35重量%の量で存在させるのがよい。その結晶質樹脂は、各種の融点たとえば約30℃〜約120℃、たとえば約50℃〜約90℃の融点を有することができる。
【0018】
適切な非晶質樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレート、エチレン−プロピレンコポリマ、エチレン−酢酸ビニルコポリマ、ポリプロピレン、それらの組合せなどが挙げられる。非晶質樹脂の例としては以下のものが挙げられる:ポリ(スチレン−アクリレート)樹脂、たとえば約10%〜約70%架橋されたポリ(スチレン−アクリレート)樹脂、ポリ(スチレン−メタクリレート)樹脂、架橋されたポリ(スチレン−メタクリレート)樹脂、ポリ(スチレン−ブタジエン)樹脂、架橋されたポリ(スチレン−ブタジエン)樹脂、アルカリスルホン化−ポリエステル樹脂、分岐状アルカリスルホン化−ポリエステル樹脂、アルカリスルホン化−ポリイミド樹脂、分岐状のアルカリスルホン化−ポリイミド樹脂、アルカリスルホン化ポリ(スチレン−アクリレート)樹脂、架橋されたアルカリスルホン化ポリ(スチレン−アクリレート)樹脂、ポリ(スチレン−メタクリレート)樹脂、架橋されたアルカリスルホン化−ポリ(スチレン−メタクリレート)樹脂、アルカリスルホン化−ポリ(スチレン−ブタジエン)樹脂、および架橋されたアルカリスルホン化ポリ(スチレン−ブタジエン)樹脂などである。アルカリスルホン化ポリエステル樹脂は、コポリ(エチレン−テレフタレート)−コポリ(エチレン−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(プロピレン−テレフタレート)−コポリ(プロピレン−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(ジエチレン−テレフタレート)−コポリ(ジエチレン−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(プロピレン−ジエチレン−テレフタレート)−コポリ(プロピレン−ジエチレン−5−スルホイソフタレート)、コポリ(プロピレン−ブチレン−テレフタレート)−コポリ(プロピレン−ブチレン−5−スルホ−イソフタレート)、およびコポリ(プロポキシル化ビスフェノール−A−フマレート)−コポリ(プロポキシル化ビスフェノールA−5−スルホ−イソフタレート)の金属塩もしくはアルカリ塩として使用してもよい。
【0019】
その他の適切なラテックス樹脂またはポリマの例としては、以下のものが挙げられる:ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(メチルスチレン−ブタジエン)、ポリ(メタクリル酸メチル−ブタジエン)、ポリ(メタクリル酸エチル−ブタジエン)、ポリ(メタクリル酸プロピル−ブタジエン)、ポリ(メタクリル酸ブチル−ブタジエン)、ポリ(アクリル酸メチル−ブタジエン)、ポリ(アクリル酸エチル−ブタジエン)、ポリ(アクリル酸プロピル−ブタジエン)、ポリ(アクリル酸ブチル−ブタジエン)、ポリ(スチレン−イソプレン)、ポリ(メチルスチレン−イソプレン)、ポリ(メタクリル酸メチル−イソプレン)、ポリ(メタクリル酸エチル−イソプレン)、ポリ(メタクリル酸プロピル−イソプレン)、ポリ(メタクリル酸ブチル−イソプレン)、ポリ(アクリル酸メチル−イソプレン)、ポリ(アクリル酸エチル−イソプレン)、ポリ(アクリル酸プロピル−イソプレン)、ポリ(アクリル酸ブチル−イソプレン);ポリ(スチレン−アクリル酸プロピル)、ポリ(スチレン−アクリル酸ブチル)、ポリ(スチレン−ブタジエン−アクリル酸)、ポリ(スチレン−ブタジエン−メタクリル酸)、ポリ(スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル−アクリル酸)、ポリ(スチレン−アクリル酸ブチル−アクリル酸)、ポリ(スチレン−アクリル酸ブチル−メタクリル酸)、ポリ(スチレン−アクリル酸ブチル−アクリロニトリル)、およびポリ(スチレン−アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−アクリル酸)、ならびにそれらの組合せなどである。それらのポリマは、ブロックコポリマ、ランダムコポリマ、交互コポリマなどであってよい。
【0020】
不飽和ポリエステル樹脂を、ラテックス樹脂として使用してもよい。不飽和ポリエステル樹脂の例としては以下のものが挙げられる:ポリ(プロポキシル化ビスフェノール−コ−フマレート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノール−コ−フマレート)、ポリ(ブチロキシル化ビスフェノール−コ−フマレート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノール−コ−エトキシル化ビスフェノール−コ−フマレート)、ポリ(1,2−プロピレンフマレート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール−コ−マレエート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノール−コ−マレエート)、ポリ(ブチロキシル化ビスフェノール−コ−マレエート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノール−コ−エトキシル化ビスフェノール−コ−マレエート)、ポリ(1,2−プロピレンマレエート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール−コ−イタコネート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノール−コ−イタコネート)、ポリ(ブチロキシル化ビスフェノール−コ−イタコネート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノール−コ−エトキシル化ビスフェノール−コ−イタコネート)、ポリ(1,2−プロピレンイタコネート)、およびそれらの組合せなどである。
【0021】
適切な非晶質ポリエステル樹脂は、次式(I)を有するポリ(プロポキシル化ビスフェノールA−コ−フマレート)樹脂であってよい。
【0022】
【化1】
(I)
[式中、mは約5〜約1000であってよい。]
【0023】
ラテックス樹脂として使用可能な直鎖状のプロポキシル化ビスフェノールAフマレート樹脂の例は、ブラジル・サンパウロ(Sao Paulo, Brazil)のレザナ・S/A・インダストリアス・キミカス(Resana S/A Industrias Quimicas)からスパーII(SPARII)の商品名で入手可能である。その他の市販されているプロポキシル化ビスフェノールAフマレート樹脂としては、日本の花王株式会社(Kao Corporation)からのGTUFおよびFPESL−2、ならびにノースカロライナ州(North Carolina)リサーチ・トライアングル・パーク(Research Triangle Park)のライヒホールド(Reichhold)からのEM181635が挙げられる。
【0024】
適切な結晶質樹脂としては、米国特許第7,329,476号明細書および米国特許第7,510,811号明細書に開示されているものが挙げられる。結晶質樹脂は、次式を有するエチレングリコールならびにドデカン二酸およびフマル酸−コ−モノマの混合物を含んでなっているものがよい。
【0025】
【化2】
(II)
[式中、bは約5〜約2000であり、dは約5〜約2000である。]
【0026】
1種、2種またはそれ以上のトナー樹脂/ポリマを使用してもよい。2種またはそれ以上のトナー樹脂を使用する実施態様においては、そのトナー樹脂は、たとえば第一の樹脂が約10%で第二の樹脂が90%から、第一の樹脂が約90%で第二の樹脂が10%まで、各種適切な比率(たとえば、重量比)で存在していてよい。コアにおいて使用される非晶質樹脂は、直鎖状であってもよい。非晶質樹脂は、第一の非晶質樹脂と、第一の非晶質樹脂とは異なる第二の非晶質樹脂とを含んでもよい。
【0027】
その樹脂は、乳化重合法で形成させてもよいし、あるいは予備的に作製された樹脂であってもよい。
【0028】
<シアニン色素(cyanine dye)>
それらのトナーには、少なくとも1種のシアニン色素または2種以上のシアニン色素の混合物が含まれていてよい。そのシアニン色素は、トナー粒子全体にできるだけ均質に分散されているのがよい。シアニン色素は、ヒートコヒージョン性を改良するのに役立つとともに、場合によってはIR吸収剤としても役立つ。
【0029】
各種適切なシアニン色素を使用してよい。シアニン色素としては以下のものが挙げられる:式R
2N
+=CH[CH=CH]
n−NR
2を有するストレプトシアニン(streptocyanine)、式アリール=N
+=CH[CH=CH]
n−NR
2を有するヘミシアニン(hemicyanine)、および式アリール=N
+=CH[CH=CH]
n−N=Arylを有するクローズドシアニン(closed cyanine)[式中、nは約1〜約6の整数であり、R
2は約1〜約20個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアルキル基であり、そしてArylは置換もしくは非置換のアリール基である。]。
【0030】
Cy3色素およびCy5色素を使用してもよい。Cy3色素は、約550nmに極大励起、約570nmに極大発光がある。Cy5色素は、約649nmに極大励起、約670nmに極大発光がある。これらの色素は、次の一般式(III)および(IV)で表される。
【0031】
【化3】
(III)
【化4】
(IV)
[式中、それぞれのR基は独立して、脂肪族短鎖であり、それらの一方または両方が、反応性の基(moieties)、たとえばN−ヒドロキシスクシンイミドまたはマレイミドであってもよい。]
【0032】
他のシアニン色素の例としては次式(V)を有するものが挙げられる。
【0033】
【化5】
(V)
[式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、およびR
8はそれぞれ独立して、水素、C
1〜C
6アルキル基、スルホネート、カルボキシレート、ヒドロキシル、置換アミンおよび四級アミンからなる群より選択される親水性置換基を有するC
0〜C
4アルキル基からなる群より選択され、そのためにR
1〜R
8、R
11およびR
12の少なくとも一つは、親水性置換基を有するC
0〜C
4アルキル基であり;
Y
1およびY
2はそれぞれ独立して、炭素原子、酸素原子、窒素、硫黄、および−S−C−、−N=C−、−O−C−、−C−C−などの基からなる群より選択されるが、ここでそれらの原子または基は、C
1〜C
6アルキルまたはヘテロ原子置換のC
1〜C
6アルキル(そのヘテロ原子はO、NまたはSである)でさらに置換されていてよく;
R
11およびR
12はそれぞれ独立して、R
14H、R
14SHおよびR
14OHからなる群より選択されるが、ここでR
14は、C
3〜C
30アルキル、およびフェニル、ヒドロキシル、スルホニル、もしくはハロゲン原子を有するC
3〜C
30アルキル、またはヘテロ原子置換フェニルからなる群より選択され;そして
Lは、メチン、置換基C
1〜C
30アルキル基を有するメチン基、ならびにフェニル、ヒドロキシル、スルホニル、ハロゲン原子、ヘテロ原子置換のフェニルまたはC
1〜C
4アルコキシルを有する置換されたC
1〜C
30アルキル基を有するメチン基からなる群より選択されるが、ここで、色素またはハプテン(hapten)としてそれらを使用するための使用説明書に従った活性成分として、nは、1、2、3またはそれより大きい。]
【0034】
具体的には、シアニン色素の例としては、次式(VI)を有するものが挙げられる。
【0035】
【化6】
(VI)
[式中、
nは、0、1、または2であり;
R
1およびR
3は独立して、約1〜約20個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアルキル基、たとえばメチル、エチル、プロピル、ブチルなどであり;
R
2は、ハロゲン、1〜約18個の炭素原子を含む炭化水素基、ヘテロ原子含有基たとえばチエニル基およびアミノ基からなる群より選択され;
X
−は、各種適切な対イオン、たとえばBF
4−、Cl
−、ClO
4−、Br
−、I
−などであってよく;そして
両端の環状基(置換もしくは非置換)には約4〜約28個の炭素原子を含む。]
【0036】
シアニン色素の例としては次式のものが挙げられる。
【0037】
【化7】
1−ブチル−2−(2−[3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドル−2−イリデン)−エチリデン]−2−フェニル−シクロペンテ−1−エニル]−ビニル)−ベンゾ[cd]インドリウムテトラフルオロボレート、独国のFEW・ケミカルズ・GmbH(FEW Chemicals GmbH)からS−0813として市販されているもの;
【化8】
日本国の(株)林原生物化学研究所(Hayashibara Biochemical laboratories,Inc.)からNK2911として市販されているもの;および
【化9】
日本国の(株)林原生物化学研究所(Hayashibara Biochemical laboratories,Inc.)からNK4680として市販されているものなどである。
【0038】
シアニン色素は、トナーの中に各種有効な量、たとえばトナーの約0.01〜約5重量%、たとえば約0.02〜約3重量%、または約0.05〜約2重量%、または約0.1〜約1重量%の量で存在させてよい。
【0039】
<界面活性剤(surfactant)>
いくつかの実施態様においては、1種、2種またはそれ以上の界面活性剤を使用して、樹脂、シアニン色素、および/またはその他の成分を1種または複数の界面活性剤と接触させることによって、エマルションを形成させてもよい。それらの界面活性剤は、イオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤から選択すればよい。「イオン性界面活性剤」という用語には、アニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤とが含まれる。界面活性剤は、トナー組成物の約0.01〜約5重量%、たとえば約0.75〜約4重量%、または約1〜約3重量%の量で存在させればよい。
【0040】
ノニオン性界面活性剤の例としては、たとえばローヌ−プーラン(Rhone−Poulenc)から、イゲパール(IGEPAL)CA−210(商標)、イゲパール(IGEPAL)CA−520(商標)、イゲパール(IGEPAL)CA−720(商標)、イゲパール(IGEPAL)CO−890(商標)、イゲパール(IGEPAL)CO−720(商標)、イゲパール(IGEPAL)CO−290(商標)、イゲパール(IGEPAL)CA−210(商標)、アンタロックス(ANTAROX)890(商標)、およびアンタロックス(ANTAROX)897(商標)として市販されているものが挙げられる。その他の例としては、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロックコポリマが挙げられるが、それにはシンペロニック(SYNPERONIC)PE/Fとして市販されているもの、たとえばシンペロニック(SYNPERONIC)PE/F108が含まれる。
【0041】
適切なアニオン性界面活性剤としては、第一工業製薬(Daiichi Kogyo Seiyaku)から入手されるネオゲンR(NEOGEN R)(商標)、ネオゲンSC(NEOGEN SC)(商標)、それらの組合せなどが挙げられる。その他の適切なアニオン性界面活性剤としては、いくつかの実施態様においては、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー(The Dow Chemical Company)からのアルキルジフェニルオキシドジスルホネートである、ダウファックス(DOWFAX)(商標)2A1、および/またはテイカ株式会社(Tayca Corporation)(日本)からの、分岐状のナトリウムドデシルベンゼンスルホネートである、テイカ・パワー(TAYCA POWER)BN2060が挙げられる。これらの界面活性剤および前述の各種のアニオン性界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
通常は正に荷電している、適切なカチオン性界面活性剤の例としては、たとえばアルカリル・ケミカル・カンパニー(Alkaril Chemical Company)から入手可能なミラポール(MIRAPOL)(商標)およびアルカクアット(ALKAQUAT)(商標)、花王ケミカルズ(Kao Chemicals)から入手可能なサニゾール(SANIZOL)(商標)(ベンザルコニウムクロリド)など、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0043】
<ワックス(離型剤)>
そのトナー粒子には、1種または複数のワックスが含まれていてよい。これらの実施態様においては、そのエマルションには樹脂とワックス粒子とが所望の担持レベルで含まれていて、それによって、別々になった樹脂エマルションとワックスエマルションではなく、単一の樹脂とワックスエマルションが得られるようになるであろう。しかしながら、そのワックスをたとえば樹脂と共に別途に乳化させて、別途に最終製品の中に組み入れてもよい。
【0044】
ポリマバインダ樹脂に加えて、トナーがさらに、単一のタイプのワックスか、または2種以上の好ましくは異なったワックスの混合物かのいずれかの、ワックスを含んでいてもよい。たとえば、単一のワックスをトナー配合に添加して、トナーの特定の性質、たとえば、トナーの粒子形状、トナー粒子表面上へのワックスの存在と量、荷電および/または定着性能、光沢、剥離性(stripping)、オフセット性能などを改良することができる。別な方法として、ワックスを組み合わせて添加することによって、トナー組成物に種々な性質を与えることもできる。
【0045】
ワックスの適切な例としては、天然の植物性ワックス、天然の動物性ワックス、鉱物質ワックス、合成ワックス、および官能化ワックスから選択されるワックスが挙げられる。天然の植物性ワックスの例としては、たとえば、カルナウバワックス、カンデリラワックス、ライスワックス、ウルシワックス、ホホバ油、木蝋、およびバーベリーワックスが挙げられる。天然の動物性ワックスの例としては、たとえば、蜜蝋、ピューニックワックス(punic wax)、ラノリン、ラックワックス(lac wax)、シェラックワックス、および鯨蝋が挙げられる。鉱物質ベースのワックスとしては、たとえば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、オゾケライトワックス、セレシンワックス、ワセリンワックス、および石油ワックスが挙げられる。合成ワックスとしては、たとえば、フィッシャー・トロプシュワックス;アクリレートワックス;脂肪酸アミドワックス;シリコーンワックス;ポリテトラフルオロエチレンワックス;ポリエチレンワックス;高級脂肪酸と高級アルコールとから得られるエステルワックス、たとえばステアリン酸ステアリルおよびベヘン酸ベヘニル;高級脂肪酸と一価または多価の低級アルコールとから得られるエステルワックス、たとえばステアリル酸ブチル、オレイン酸プロピル、グリセリドモノステアレート、グリセリドジステアレート、およびペンタエリスリトールテトラベヘネート;高級脂肪酸と多価アルコール多量体とから得られるエステルワックス、たとえばジエチレングリコールモノステアレート、ジプロピレングリコールジステアレート、ジグリセリルジステアレート、およびトリグリセリルテトラステアレート;ソルビタン高級脂肪酸エステルワックス、たとえばソルビタンモノステアレート;ならびにコレステロール高級脂肪酸エステルワックス、たとえばステアリン酸コレステリル;ポリプロピレンワックス;ならびにそれらの混合物などである。
【0046】
いくつかの実施態様においては、そのワックスは、以下のものから選択してよい:アライド・ケミカル・アンド・ベーカー・ペトロライト(Allied Chemcial and Baker Petrolite)から市販されているポリプロピレンおよびポリエチレン(たとえば、ベーカー・ペトロライト(Baker Petrolite)からのポリワックス(POLYWAX)(商標)ポリエチレンワックス)、マイケルマン・インコーポレーテッド(Michelman Inc.)およびダニエルス・プロダクツ・カンパニー(Daniels Products Company)から市販されているワックスエマルション、イーストマン・ケミカル・プロダクツ・インコーポレーテッド(Eastman Chemical Products,Inc.)から市販されているエポレン(EPOLENE)N−15、三洋化成工業(株)(Sanyo Kasei K.K.)から市販されているビスコール(VISCOL)550Pの低重量平均分子量ポリプロピレン、および類似の物質などである。市販されているポリエチレンは通常、約500〜約2,000、たとえば約1,000〜約1,500の重量平均分子量Mwを有しているが、それに対して市販されているポリプロピレンは約1,000〜約10,000の分子量を有している。官能化ワックスの例としては、アミン、アミド、イミド、エステル、四級アミン、カルボン酸、またはアクリルポリマエマルション、たとえばジョンクリル(JONCRYL)74、89、130、537、および538(すべて、ジョンソン・ダイバーシー・インコーポレーテッド(Johnson Diversey, Inc.)から入手可能)、アライド・ケミカル・アンド・ペトロライト・コーポレーション(Allied Chemical and Petrolite Corporation)およびジョンソン・ダイバーシー・インコーポレーテッド(Johnson Diversey, Inc.)から市販されている、塩素化ポリプロピレンおよびポリエチレンが挙げられる。
【0047】
トナーにはワックスを、乾燥量基準で、トナーのたとえば約1〜約25重量%、たとえばトナーの約3〜約15重量%、またはトナーの約5〜約20重量%、たとえばトナーの約5〜約11重量%の量で含んでいてよい。
【0048】
<着色剤(colorant)>
そのトナー粒子にさらに、少なくとも1種の着色剤を含んでいてもよい。たとえば、本明細書で使用する着色剤または顔料としては、顔料、色素、顔料と色素との混合物、顔料の混合物、色素の混合物、などが挙げられる。簡単にするために、本明細書で使用するとき「着色剤」という用語は、そのような着色剤、色素、顔料、および混合物を包含しているものとするが、特定の顔料またはその他の着色剤を指定している場合は別である。着色剤は、組成物の全重量を基準にして約0.1〜約35重量%、たとえば約1〜約25重量%の量で含まれていてよい。
【0049】
<コアギュラント(coagulant:凝集剤)>
本発明に開示のトナーを製造するためのエマルションアグリゲーションプロセスでは、少なくとも1種のコアギュラント、たとえば一価金属コアギュラント、二価金属コアギュラント、ポリイオンコアギュラントなどを使用する。本明細書で使用するとき、「ポリイオンコアギュラント」という用語は、塩または酸化物、たとえば少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5の原子価を有する金属種から形成された金属塩または金属酸化物である、コアギュラントを意味している。適切なコアギュラントとしては、たとえば以下のものが挙げられる:アルミニウムをベースとするコアギュラント、たとえば、ポリハロゲン化アルミニウムたとえば、ポリフッ化アルミニウムおよびポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリケイ酸アルミニウムたとえばポリスルホケイ酸アルミニウム(PASS)、ポリ水酸化アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどである。その他の適切なコアギュラントとしては、以下のものが挙げられる(これらに限定される訳ではない):テトラアルキルチタネート、ジアルキルスズオキシド、テトラアルキルスズオキシドヒドロキシド、ジアルキルスズオキシドヒドロキシド、アルミニウムアルコキシド、アルキル亜鉛、ジアルキル亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドヒドロキシド、テトラアルキルスズなどである。コアギュラントがポリイオンコアギュラントである場合には、そのコアギュラントには、各種所望の数で存在するポリイオン原子を有していてよい。たとえば、いくつかの実施態様においては、適切なポリアルミニウム化合物には、化合物中に存在する約2〜約13個、たとえば約3〜約8個のアルミニウムイオンを有する。
【0050】
そのようなコアギュラントは、粒子アグリゲーションの際にトナー粒子の中に組み入れることができる。そのようにすることで、コアギュラントを、トナー粒子の中に、外部添加剤を除外し且つ乾燥重量ベースで、トナー粒子の0〜約5重量%の量、たとえば、トナー粒子の約0よりは多く約3重量%までの量で存在させることができる。
【0051】
<エマルションアグリゲーションプロセス(emulsion aggregation process)>
トナー粒子を形成させるためには、好適なエマルションアグリゲーションプロセスであれば、どのようなプロセスを使用したり改良したりしてもよく、特に制限はない。エマルションアグリゲーションプロセスには一般的には、乳化、アグリゲート化(aggregating)、コアレセンス化(coalescencing)、洗浄、および乾燥の工程が含まれる。エマルションアグリゲーショントナーについての記載がある米国特許文献としては、たとえば、米国特許第5,278,020号明細書および米国特許第7,029,817号明細書、ならびに米国特許出願公開第2008/0107989号明細書が挙げられる。これらの手順を改良して、シアニン色素が容易に包含されるようにし、ヒートコヒージョン性を改良してもよい。
【0052】
したがって、いくつかの実施態様においては、エマルションアグリゲーションプロセスには、以下の基本プロセス工程が含まれていてよい:ポリマバインダ、シアニン色素、任意成分のワックス、任意成分の着色剤、界面活性剤、および任意成分のコアギュラントを含むエマルションをアグリゲート化させてアグリゲート化粒子を形成させる工程;アグリゲート化粒子の成長を凍結させる工程;アグリゲート化粒子をコアレス化させて、コアレス化粒子を形成させる工程;次いでトナー粒子の、単離工程、場合によっては洗浄工程、場合によっては乾燥工程などである。
【0053】
[エマルションの形成]
樹脂とシアニン色素とが類似の溶解性パラメータを有しているような場合には、樹脂とシアニン色素を溶解させるのに同一の溶媒を使用して、できるだけ均質な溶液を作ることができる。樹脂とシアニン色素とを、相互に乳化させてもよい。しかしながら、樹脂エマルションとシアニン色素エマルションとを同時に調製しない場合には、樹脂を調製済みのシアニン色素エマルションに添加してもよいし、シアニン色素を調製済みの樹脂エマルションに添加してもよいし、あるいは調製済みのシアニン色素エマルションを調製済みの樹脂エマルションに添加してもよい。エマルションの乳化は、機械的に実施しても、化学的に実施してもよい。
【0054】
たとえば、転相乳化(PIE:phase inversion emulsification)を使用してもよいが、その場合は、シアニン色素および樹脂の両方を適切な溶媒の中に溶解させる。混合下で溶媒と水との分離が起きるまで、その溶媒に水を添加してもよい。真空蒸留によって溶媒を除去してもよく、その結果、ポリマとシアニン色素マイクロスフェア(micro−sphere)の水中エマルションが生成する。
【0055】
樹脂および/またはシアニン色素を溶媒の中に溶解させることによってエマルションを調製してもよい。適切な溶媒としては、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、塩素化溶媒、窒素含有溶媒、およびそれらの混合物が挙げられる。適切な溶媒の具体例を挙げれば、イソプロピルアルコール、アセトン、酢酸メチル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、フタル酸ジオクチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、ジメチルスルホキシド、およびそれらの混合物である。樹脂/シアニン色素は、溶媒の中に、約40℃〜約80℃、たとえば約50℃〜約70℃、または約60℃〜約65℃の昇温下で溶解させてよい。樹脂/シアニン色素は、溶媒の沸点より低い温度、たとえば溶媒の沸点よりも約2℃〜約15℃、または約5℃〜約10℃低い温度で、かつ樹脂/シアニン色素のガラス転移温度よりも低い温度で溶解させてよい。
【0056】
溶媒に溶解させた後、その溶解させた樹脂/シアニン色素を、任意成分の安定剤および任意成分の界面活性剤を含むエマルション媒体、たとえば水、たとえば脱イオン水の中に混ぜ込んでもよい。
【0057】
次いで、その混合物を加熱して溶媒を蒸発させ、次いで冷却して室温としてもよい。溶媒のフラッシングは、溶媒をフラッシュ除去する、水中の溶媒の沸点を超える各種適切な温度、たとえば約60℃〜約100℃、約70℃〜約90℃、または約80℃で実施すればよいが、その温度は調節可能である。
【0058】
溶媒フラッシュ工程の後、その樹脂/シアニン色素エマルションは、ハネウェル(Honeywell)のマイクロトラック(MICROTRAC)UPA150粒径分析計を使用した測定で、約50nm〜約600nm、たとえば約100nm〜約300nmの範囲の平均粒径を有しているのがよい。
【0059】
任意成分のノニオン性界面活性剤たとえばポリエチレングリコールもしくはポリオキシエチレングリコールノニルフェニルエーテル、任意成分のアニオン性界面活性剤たとえばドデシルスルホン酸ナトリウムもしくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、樹脂、および/またはシアニン色素の1種または複数の混合物を水中で撹拌することにより、エマルションを調製してもよい。
【0060】
そのようにして得られたエマルションで粒径を決められた樹脂/シアニン色素粒子は、約20nm〜約1200nmの体積平均直径を有していてよいが、特にすべてのサブレンジを含み、個々の値が約20nm〜約1200nmの範囲に入るのがよい。典型的には約20%〜約60%の固形分を含む、そのようにして得られたエマルションを、水を用いて約15%固形分にまで希釈してもよい。シアニン色素または樹脂のような成分が前もって添加されていない場合、または上述の形成されたエマルションプロセスには含まれていなかったさらなる樹脂またはシアニン色素が望ましい場合には、そのエマルションにこの時点でシアニン色素または樹脂を添加してもよい。
【0061】
追加の任意成分の添加剤、たとえば追加の界面活性剤、着色剤、ワックス、およびコアギュラントをそのエマルションに添加してもよい。
【0062】
[アグリゲーション(aggregetion:凝集)]
次いでその樹脂−シアニン色素−任意成分の添加剤の混合物を、たとえば約2000〜約6000rpmで均質化させて、静的に結合された(statically bound)予備アグリゲート化粒子(pre−aggregated particle)を形成させる。次いでその静的に結合された予備アグリゲート化粒子をその樹脂のガラス転移温度よりは低いアグリゲーション温度にまで加熱して、アグリゲート化粒子(aggregated particle)を形成させる。たとえば、予備アグリゲート化粒子を、約40℃〜約60℃、たとえば約30℃〜約50℃または約35℃〜約45℃のアグリゲーション温度にまで加熱するのがよい。その粒子を、そのアグリゲーション温度に、たとえば約30分間〜約600分間、たとえば約60分間〜約400分間、または約200分間〜約300分間の間保持するのがよい。
【0063】
この時点で、pHを調節することによってその粒径と分布を「凍結(frozen)」してもよく、場合によっては、コアレス化させて、狭いサイズ分布を有する、粒径が調節されたポリマ性トナー粒子を形成させてもよい。
【0064】
場合によっては、コアレセンスの前に、従来からの方法によってシェルをそのコアに加えてもよい。シェルは、シアニン色素を含むようにも、あるいは含まないようにも構成することができる。シアニン色素は、コアおよびシェルに含まれてもよいし、シェルに含まれてもよい。
【0065】
[コアレセンス(coalescence:融合(合一))]
アグリゲート化粒子の成長を所望のサイズに凍結させた後で、場合によってはそのアグリゲート化粒子を再び、樹脂のガラス転移温度以上のコアレセンス温度にまで加熱して、アグリゲート化粒子をコアレス化させてコアレス化粒子としてもよい。たとえば、アグリゲート化粒子を、約60℃〜約100℃、たとえば約70℃〜約90℃、または約75℃〜約85℃のコアレセンス温度に加熱すればよい。その粒子を、そのコアレセンス温度に、たとえば約30分間〜約600分間、たとえば約60分間〜約400分間、または約200分間〜約300分間の間保持するのがよい。
【0066】
トナー粒子が形成されたら、各種適切な手段により、反応混合物からそれらを単離するのがよい。適切な単離方法としては、濾過、粒子分級などが挙げられる。
【0067】
場合によっては、その形成されたトナー粒子を、従来から公知の各種の手段によって、洗浄、乾燥、および/または分級をしてよい。たとえば、水、脱イオン水、またはその他適切な物質を使用して、その形成されたトナー粒子を洗浄することができる。その形成されたトナー粒子は同様にして、たとえば加熱乾燥オーブン、スプレー乾燥機、フラッシュ乾燥機、パン乾燥機、凍結乾燥機などを使用して乾燥させてもよい。
【0068】
トナーエマルションアグリゲーション粒子は、小さな粒径(VolD50)、たとえば約3μm〜約10μm、約3.55μm〜約9μm、約5.2μm〜約6μm、または約5.6μmを有するように製造することができる。
【0069】
エマルションアグリゲーションプロセスによって、そのトナー粒子は、特に摩砕法(粉砕法)によって調製されたポリマ性粒子が典型的に示す拡がった分布に比較すると、優れた粒径分布を有している。そのトナー粒子は、約1.15〜約1.30、たとえば約1.18〜約1.23の範囲の上側体積幾何学的標準偏差(GSD
V)と、約1.20〜約1.40、たとえば約1.20〜約1.30の範囲の下側数幾何学的標準偏差(GSD
N)とを有していてもよい。それらのGSD値は、その粒子が極めて狭い粒径分布を有していることを示している。上側GSDは、測定値より細かい累積体積パーセントから計算し、体積で84%より細かいもの(D84
V)の、体積で50%より細かいもの(D50
V)に対する比率であり、D84/50
Vと呼ばれることも多い。下側GSDは、測定値より細かい数パーセントから計算し、数で50%より細かいもの(D50
n)の、数で16%より細かいもの(D16
n)に対する比率であり、D50/16
nと呼ばれることも多い。
【0070】
さらに、粒子は、プロセス条件に依存して特定の形状を有することも可能であり、これは、各種の最終製品用途における重要なパラメータとなりうる。したがって、その粒子形状もまた調節するのがよい。粒子は、約105〜約170、たとえば約110〜約160の形状係数、SF1
*aを有しているのがよい。走査型電子顕微鏡法(SEM)を使用して、SEMによる粒子の形状係数解析を行い、画像解析(IA)試験をする。平均の粒子形状は、次の形状係数(SF1
*a)の式を用いることによって定量化することができる:SF1
*a=100πd
2/(4A)、ここでAは粒子の面積、dはその主軸である。完全に円状または球状の粒子の形状係数は、ちょうど100となる。その形状が、不規則あるいは細長くなったり、表面積が大きくなったりするほど、この形状係数SF1
*aの数値が大きくなる。
【0071】
形状係数の測定に加えて、粒子円形度を測定するためのまた別な計量法では、シスメックス(Sysmex)製のFPIA−2100またはFPIA3000を使用する。この方法では、より迅速に粒子形状を定量化する。完全に丸い球は、1.000の円形度を有する。いくつかの実施態様においては、それらの粒子は、約0.920〜0.990、たとえば約0.950〜約0.985、または約0.950〜約0.980の円形度を有する。
【0072】
<他の添加剤>
所望により、または必要により、トナー粒子を他の任意成分の添加剤とブレンドしてもよい。たとえば、トナー粒子を流動助剤用添加剤とブレンドし、それによって、トナー粒子の表面上にそのような添加剤を存在させてもよい。それらの添加剤の例としては、以下のものが挙げられる:金属酸化物たとえば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化スズ、それらの混合物など;コロイダルシリカおよびアモルファスシリカたとえば、アエロジル(AEROSIL)(登録商標);脂肪酸の1種または複数の金属塩たとえば、ステアリン酸亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、およびそれらの混合物などである。それらの外部添加剤はそれぞれ、トナーの約0.1〜約5重量%、たとえば約0.25〜約3重量%の量で存在させてよい。適切な添加剤としては、米国特許第3,590,000号明細書、米国特許第3,800,588号明細書、および米国特許第6,214,507号明細書に開示されているものが挙げられる。
【0073】
そのトナーは、たとえば約0.5〜約10、たとえば約0.5〜約5の相対湿度感度を有していてもよい。相対湿度(RH)感度とは、高湿度条件でのトナーの帯電の、低湿度条件での帯電に対する比率である。すなわち、RH感度は、相対湿度15%および温度約12℃(本明細書においてはC−ゾーンと呼ぶ)におけるトナー帯電量の、相対湿度85%および温度約28℃(本明細書においてはA−ゾーンと呼ぶ)におけるトナー帯電量に対する比率と定義され、従って、RH感度は、(C−ゾーン帯電量)/(A−ゾーン帯電量)として求められる。トナーのRH感度が、可能な限り1に近いのが理想的であるが、そのことは、そのトナーの帯電性能が低湿度条件と高湿度条件で同じである、すなわち、そのトナーの帯電性能が相対湿度の影響をほとんど受けないということを示している。
【0074】
本発明の開示に従って調製されたトナーは、優れたヒートコヒージョン性/ブロッキング性ならびに改良された帯電性能を有しており、A−ゾーンおよびC−ゾーンにおけるQ/m(トナー帯電量/質量の比)が約−3〜約−60マイクロクーロン/グラム、たとえば約−4〜約−50マイクロクーロン/グラムである。そのようなトナーは、約50℃より高い、たとえば約52℃より高いヒートコヒージョン開始点を有している可能性がある。そのようなトナーは、対応するトナーよりも顕著に高いヒートコヒージョンを有している。対応するトナーとは、シアニン色素成分を含まないという点を除けば、同一または類似の成分を有しているトナーである。ヒートコヒージョンが高いということによって、トナーのブロッキング性能が改良される。たとえば、本発明の開示のシアニン色素成分を含むトナーは、シアニン色素を含まない対応するトナーと比較すると、約3℃〜約8℃、たとえば約4℃〜約7℃、または約5℃〜約6℃改良されたブロッキング性能を有している。
【0075】
本発明の開示に従えば、トナー粒子の帯電性が向上し、そのために必要とされる表面添加剤がより少なくなり、それによって最終的なトナーの帯電性がより高くなって、装置の帯電性能要求に適合するようになる可能性がある。
【0076】
<現像剤>
トナー粒子をキャリヤ粒子と混合することによって、トナー粒子を現像剤組成物に配合して、二成分現像剤組成物を得てもよい。その現像剤の中のトナー濃度は、現像剤の全重量の約1〜約25重量%、たとえば約2〜約15重量%とするのがよい。
【0077】
[キャリヤ]
トナー粒子と混合するために使用してもよいキャリヤ粒子の例としては、トナー粒子の電荷とは反対の極性の電荷を摩擦電気的に得ることが可能である粒子が挙げられる。好適なキャリヤ粒子の例を示せば、粒状のジルコン、粒状のケイ素、ガラス、スチール、ニッケル、フェライト、鉄フェライト、二酸化ケイ素などが挙げられる。その他のキャリヤとしては、米国特許第3,847,604号明細書、米国特許第4,937,166号明細書、および米国特許第4,935,326号明細書に開示されているものが挙げられる。
【0078】
選択されたキャリヤ粒子を、コーティングの存在下または非存在下で使用してもよい。そのキャリヤ粒子にはコアが含まれていてよく、そのコアの上には、摩擦電気系列においてそれに対してあまり近くないポリマの混合物から形成されているのがよい、コーティングを有している。コーティングとしては、フルオロポリマたとえば、ポリフッ化ビニリデン樹脂、スチレン、メタクリル酸メチルのターポリマ、および/またはシランたとえば、トリエトキシシラン、テトラフルオロエチレン、その他公知のコーティングなどが挙げられる。たとえば、ポリフッ化ビニリデン(たとえば、カイナー(KYNAR)301F(商標)として市販されているもの)、および/または約300,000〜約350,000の重量平均分子量を有するポリメタクリル酸メチル(PMMA)(ソーケン(Soken)から市販)を含むコーティングを使用してもよい。ポリフッ化ビニリデンおよびPMMAは、(約30〜約70重量%)対(約70〜約30重量%)、たとえば(約40〜約60重量%)対(約60〜約40重量%)の比率で混合するのがよい。そのコーティングは、たとえばキャリヤの約0.1〜約5重量%、たとえば約0.5〜約2重量%のコーティング重量を有しているのがよい。
【0079】
ポリマをキャリヤコア粒子の上に適用するために使用してもよい各種の有効、適切な手段があるが、たとえば、カスケードロール混合法、タンブリング法、ミリング法、振盪法、静電パウダークラウドスプレー法、流動床法、静電ディスク加工法、静電カーテン法、それらの組合せなどの使用などがある。キャリヤのコア粒子およびポリマの混合物を次いで加熱して、そのポリマがキャリヤのコア粒子に対して溶融融解するようにしてよい。次いでそのコーティングされたキャリヤ粒子を冷却し、次いで分級して所望の粒径とするのがよい。
【0080】
適切なキャリヤとしては、米国特許第5,236,629号明細書および米国特許第5,330,874号明細書に記載されているようなプロセスを使用した、約0.5〜約10重量%、たとえば約0.7〜約5重量%のたとえばアクリル酸メチルおよびカーボンブラックを含む導電性ポリマ混合物を用いてコーティングしたたとえば、サイズが約25μm〜約100μm、たとえば約50μm〜約75μmの鋼製コアが挙げられる。
【0081】
キャリヤ粒子は、トナー粒子とは、各種適当な組合せで混合してもよい。その濃度は、トナー組成物の約1〜約20重量%とするのがよい。しかしながら、異なったトナーおよびキャリヤのパーセントを使用して、所望の特性を有する現像剤組成物を得てもよい。
【実施例】
【0082】
<比較例1:IR吸収剤を含まない対照トナー>
183.25gの非晶質樹脂(XP777、ポリエステル樹脂(プロポキシル化ビスフェノールAフマレート樹脂)、ライヒホールド(Reichhold)から入手可能)エマルション(45.84重量%)および56.00gの不飽和CPE(塩素化ポリエチレン樹脂(Chlorinated Polyethylene))樹脂エマルション(UCPE、30重量%)を、オーバーヘッドスターラおよび加熱マントルを備えた2Lのガラス製反応器の中に加えた。均質化させながら41.82gのAl
2(SO
4)
3溶液(1重量%)を凝集剤として添加した。次いでその混合物を、アグリゲーションのために300rpmで47.2℃に加熱した。そのコア粒子の体積平均粒径が5.20μmでGSDが1.23に達するまで、コールターカウンタ(Coulter Counter)を用いて粒径をモニタした。次いで、85.52gの上述のXP777樹脂エマルションをシェルとして添加すると、平均粒径が6.75μmでGSDが1.22のコア−シェル構造の粒子が得られた。次いで、1.615gのEDTA(エチレンジアミン四酢酸)(39重量%)およびNaOH(4重量%)を使用して、その反応スラリーのpHを6.9にまで上昇させることによりその粒子の成長を凍結させた。粒子の成長を凍結させてから、その反応混合物を加熱して69.9℃とし、そのpHを5.9にまで下げて、コアレセンスさせた。コアレセンスをさせてから、そのトナーを急冷し、冷却して室温とし、篩別(25μm)濾過により分離し、洗浄し、凍結乾燥させた。最終的なトナー粒子は、6.28μmの最終粒径、1.23のGSD、および0.982の円形度を有していた。
【0083】
<実施例1:0.2重量%のNK−2911を含むトナー>
[a.樹脂およびNK−2911を含むエマルションの調製]
120gの非晶質樹脂(XP777)および0.24gのNK−2911のIR吸収剤を、約900gの酢酸エチルを含む2Lのビーカの中に秤込んだ。その混合物を、室温、約300rpmで撹拌して、樹脂およびIR吸収剤を酢酸エチルの中に溶解させた。2.56gの重炭酸ナトリウムを、約700gの脱イオン水を含む3Lのパイレックス(Pyrex)ガラスフラスコ反応器の中に秤込んだ。アイカ(IKA)のウルトラ・ツラックス(Ultra Turrax)T50ホモジナイザを用い4,000rpmで、前記3リットルのガラスフラスコ反応器中の前記水溶液の均質化を開始した。次いで、その混合物の均質化を継続しながら、樹脂溶液を水溶液の中に徐々に注入し、ホモジナイザの速度を8,000rpmにまで上げ、その条件で均質化を約30分間実施した。均質化が完了したら、そのガラスフラスコ反応器およびその内容物を加熱マントルの中に入れ、蒸留装置に接続した。混合物を約275rpmで撹拌しながら、混合物の温度を約1℃/分の速度で80℃にまで上げて、その混合物から酢酸エチルを留去した。その混合物の撹拌を80℃で約180分間続けてから、約2℃/分の速度で冷却して室温とした。25μmの篩を通過させて、その反応生成物を篩別した。そのようにして得られた樹脂エマルションは、水中の固形分が約19.61重量パーセントであり、135nmに平均粒径を有していた。
【0084】
[b.0.2重量%のNK−2911を含むトナーの調製]
367.16gの実施例1aの非晶質樹脂とIR吸収剤とのエマルションおよび48gの不飽和CPE樹脂エマルション(UCPE、30重量%)を、オーバーヘッドスターラおよび加熱マントルを備えた2Lのガラス製反応器の中に加えた。均質化させながら35.84gのAl
2(SO
4)
3溶液(1重量%)を凝集剤として添加した。次いでその混合物を、アグリゲーションのために260rpmで40.8℃に加熱した。そのコア粒子の体積平均粒径が4.54μmでGSDが1.21に達するまで、コールターカウンタ(Coulter Counter)を用いて粒径をモニタした。次いで、171.34gの上述の樹脂とIR吸収剤とのエマルションをシェルとして添加すると、平均粒径が5.77μmでGSDが1.22のコア−シェル構造の粒子が得られた。次いで、1.39gのEDTA(39重量%)およびNaOH(4重量%)を使用して、その反応スラリーのpHを7.25にまで上昇させることにより、その粒子の成長を凍結させた。粒子の成長を凍結させてから、その反応混合物を加熱して69℃とし、そのpHを5.9にまで下げて、コアレセンスさせた。コアレセンスをさせてから、そのトナーを急冷し、冷却して室温とし、篩別(25μm)により分離し、洗浄し、凍結乾燥させた。最終的なトナー粒子は、5.77μmの最終粒径、1.24のGSD、および0.983の円形度を有していた。
【0085】
<実施例2:0.2重量%のNK−4680を含むトナー>
[a.樹脂およびNK−4680を含むエマルションの調製]
このエマルションは、実施例1aに略述したのと同じ手順に従って調製したが、ただし、IR吸収剤としてNK2911に代えてNK4680を使用した。
【0086】
[b.0.2重量%のNK−4680を含むトナーの調製]
363.09gの実施例2aの非晶質樹脂とIR吸収剤とのエマルションおよび48gの不飽和CPE樹脂エマルション(UCPE、30重量%)を、オーバーヘッドスターラおよび加熱マントルを備えた2Lのガラス製反応器の中に加えた。均質化させながら35.84gのAl
2(SO
4)
3溶液(1重量%)を凝集剤として添加した。次いでその混合物を、アグリゲーションのために250rpmで40.3℃に加熱した。そのコア粒子の体積平均粒径が4.63μmでGSDが1.23に達するまで、コールターカウンタ(Coulter Counter)を用いて粒径をモニタした。次いで、169.44gの上述の樹脂とIR吸収剤とのエマルションをシェルとして添加すると、平均粒径が5.60μmでGSDが1.23のコア−シェル構造の粒子が得られた。次いで、1.39gのEDTA(39重量%)およびNaOH(4重量%)を使用して、その反応スラリーのpHを7.6にまで上昇させることにより、その粒子の成長を凍結させた。粒子の成長を凍結させてから、その反応混合物を加熱して69.3℃とし、そのpHを5.9にまで下げて、コアレセンスさせた。コアレセンスをさせてから、そのトナーを急冷し、冷却して室温とし、篩別(25μm)により分離し、洗浄し、凍結乾燥させた。最終的なトナー粒子は、5.60μmの最終粒径、1.23のGSD、および0.970の円形度を有していた。
【0087】
<実施例3:0.2重量%のS−0813を含むトナー>
[a.樹脂およびS−0813を含むエマルションの調製]
このエマルションは、実施例1aおよび2aに略述したのと同じ手順に従って調製したが、ただし、IR吸収剤としてNK2911またはNK−4680に代えてS−0813を使用した。
【0088】
[b.0.2重量%のS−0813を含むトナーの調製]
311.02gの実施例3aの非晶質樹脂とIR吸収剤とのエマルションおよび48gの不飽和CPE樹脂エマルション(UCPE、30重量%)を、オーバーヘッドスターラおよび加熱マントルを備えた2Lのガラス製反応器の中に加えた。均質化させながら35.84gのAl
2(SO
4)
3溶液(1重量%)を凝集剤として添加した。次いでその混合物を、アグリゲーションのために300rpmで43.1℃に加熱した。そのコア粒子の体積平均粒径が4.68μmでGSDが1.23に達するまで、コールターカウンタ(Coulter Counter)を用いて粒径をモニタした。次いで、145.14gの上述の樹脂とIR吸収剤とのエマルションをシェルとして添加すると、平均粒径が5.96μmでGSDが1.25のコア−シェル構造の粒子が得られた。次いで、1.39gのEDTA(39重量%)およびNaOH(4重量%)を使用して、その反応スラリーのpHを6.89にまで上昇させることにより、その粒子の成長を凍結させた。粒子の成長を凍結させてから、その反応混合物を加熱して74.2℃とし、そのpHを5.9にまで下げて、コアレセンスさせた。コアレセンスをさせてから、そのトナーを急冷し、冷却して室温とし、篩別(25μm)により分離し、洗浄し、凍結乾燥させた。最終的なトナー粒子は、6.41μmの最終粒径、1.27のGSD、および0.981の円形度を有していた。
【0089】
比較例1および実施例1〜3のトナー粒子について以下の表1にまとめる。
【0090】
【表1】
【0091】
驚くべきことには、シアニン色素を組み入れることによって、トナーのヒートコヒージョン性が48℃から56℃の高さにまで改良され、帯電性およびコヒージョン性(cohesion)には悪影響が認められなかった。それらの結果を以下の表2にまとめる。
【0092】
【表2】
【0093】
すべてのトナーサンプルは、ヘラエルス(Heraerus)IR発光器を用いた、非接触式加熱試験装置(non−contact heating test fixture)を用いて溶融させた。溶融させたトナーの光沢の結果を、以下の表3にまとめる。実施例1〜3は、比較例1に比較して、望ましい高い光沢を有している。
【0094】
【表3】
【0095】
最低溶融温度(MFT)が測定されなかったが、その理由は、0.2重量%という少量のシアニン色素しかトナーの中に組み入れていないので、トナーのMFTに影響が出ないと考えられるからである。