特許第5775332号(P5775332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775332
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/518 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   H01R13/518
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-48332(P2011-48332)
(22)【出願日】2011年3月4日
(65)【公開番号】特開2012-186018(P2012-186018A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2014年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】福島 宏高
【審査官】 岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06371768(US,B1)
【文献】 特開2008−198554(JP,A)
【文献】 特開2008−171748(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0268725(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40−13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側コネクタのハウジングと嵌合する円筒状のコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの軸方向の後半部分を収容して該コネクタハウジングを固定すケースと、から成り、前記ケースが、それぞれの内側に前記コネクタハウジングを固定するハウジング固定部が形成された左右の割型ケースを結合して構成されるコネクタであって、
前記ハウジング固定部は、
前記ケースの前記コネクタハウジング側の端縁に近い内周面に360度に亘って形成された肉厚リブと、
前記肉厚リブの内周面の前記軸方向の中間位置で該内周面を一周するように形成された、360度に亘って延びる内周溝と、
前記内周溝を形成す両側壁の少なくとも一方の側壁の複数個所に設けられた、前記軸方向に対して垂直な方向に延びる垂直方向突起と、
前記肉厚リブの内周面の複数個所に設けられた、前記軸方向に延びる軸方向突起と、
を有し、
前記コネクタハウジングは、前記軸方向の略中央の外周面に360度に亘っ形成された周方向リブを備え、
前記周方向リブは、前記ハウジング固定部の内周溝に挿入され、
前記垂直方向突起は、前記軸方向に対して垂直であって、前記周方向リブが前記内周溝に挿入される方向に延びており、
前記周方向リブは、前記垂直方向突起の頂部を潰して前記内周溝内に挿入され、
前記垂直方向突起と前記軸方向突起とが共働して前記コネクタハウジングと前記ケースとのガタを防止することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジング固定部の前記肉厚リブの内周面に前記軸方向に延びる軸方向溝が形成され、前記コネクタハウジングの外周に、前記軸方向溝に係合する前記軸方向に延びる軸方向リブが形成されたことを特徴とする請求項記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコネクタに関するもので、特にコネクタハウジングをガタツキなくケースに収容・固定する電気自動車の充電用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
〈従来の充電用コネクタ〉
車輌側コネクタのハウジングと嵌合する充電用コネクタハウジングとこの充電用コネクタハウジングをガタツキなく収容・固定するケース本体を有するケースとから成る充電用コネクタ自体は公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−161884号公報
【0004】
〈特許文献1記載の充電用コネクタ〉
図5は特許文献1記載の充電用コネクタの断面図である。図5において、合成樹脂絶縁体から成る充電用コネクタハウジング51は円筒状をしており、円筒状の内部に端子収容部51Tが設けられ、この端子収容部51Tは相手側コネクタである車輌側コネクタの端子収容部に嵌挿される。
ケース52は一対の割型ケース52a、52bから構成され、各々の突き合わせ縁部にねじ挿通孔52Nを設けてビスで締付け固定している。ケース52には後部にグリップ52Gが形成され、後部下端にケーブルプロテクタ52Pを介してケーブルWが接続されている。
充電用コネクタハウジング51の後半部はケース52に固定される。充電用コネクタハウジング51をケース52内にガタツキなく固定するために、充電用コネクタハウジング51とこれを固定するケース52との間には、図6に示すような突起を設けている。
【0005】
〈従来の充電用コネクタのガタツキ防止〉
図6図5の充電用コネクタハウジングをケース本体で挟み込んだ部位の縦断面概念図である。図6において、充電用コネクタ50は、車輌側コネクタハウジングと嵌合するための充電用コネクタハウジング51と、ケース52とから構成されている。この充電用コネクタ50の組み立てとして、半円筒状をした左右の割型ケース52a、52bで円筒状の充電用コネクタハウジング51を挟み込むことで充電用コネクタハウジング51を固定している。このとき、左右の割型ケース52a、52bの内周面には、それぞれ三角形突起52Tが複数個、等間隔に形成されており、充電用コネクタハウジング51を左右の割型ケース52a、52bで挟み込んだとき、三角突起52Tが充電用コネクタハウジング51の外周に当接してその動き(ガタ)を防止している。
【0006】
〈従来の充電用コネクタの問題点〉
従来の充電用コネクタはこのように充電用コネクタハウジング51とケース52のガタを防止するために三角突起52Tを設けていたが、ガタを完全になくそうとした場合は、三角突起52Tの高さを上げて、ラップ量を増やすことになるが、三角突起52Tが円周方向にあるため、増やし過ぎた場合は、左右の割型ケース52a、52bが完全に閉まらず、ケース間に隙間が生じてしまう。隙間が生じた場合は、品質上および意匠上に問題が発生した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、充電用コネクタハウジングとケースのガタを防止することができて、しかも左右の割型ケースが完全に閉まったとき割型ケース間に隙間が生じることのない充電用コネクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願第1発明はコネクタに係り、相手側コネクタのハウジングと嵌合する円筒状のコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの軸方向の後半部分を収容して該コネクタハウジングを固定すケースと、から成り、前記ケースが、それぞれの内側に前記コネクタハウジングを固定するハウジング固定部が形成された左右の割型ケースを結合して構成されるコネクタであって、前記ハウジング固定部は、前記ケースの前記コネクタハウジング側の端縁に近い内周面に360度に亘って形成された肉厚リブと、前記肉厚リブの内周面の前記軸方向の中間位置で該内周面を一周するように形成された、360度に亘って延びる内周溝と、前記内周溝を形成す両側壁の少なくとも一方の側壁の複数個所に設けられた、前記軸方向に対して垂直な方向に延びる垂直方向突起と、前記肉厚リブの内周面の複数個所に設けられた、前記軸方向に延びる軸方向突起と、を有し、前記コネクタハウジングは、前記軸方向の略中央の外周面に360度に亘っ形成された周方向リブを備え、前記周方向リブは、前記ハウジング固定部の内周溝に挿入され、前記垂直方向突起は、前記軸方向に対して垂直であって、前記周方向リブが前記内周溝に挿入される方向に延びており、前記周方向リブは、前記垂直方向突起の頂部を潰して前記内周溝内に挿入され、前記垂直方向突起と前記軸方向突起とが共働して前記コネクタハウジングと前記ケースとのガタを防止することを特徴としている。
本願第発明は、第発明のコネクタにおいて、前記ハウジング固定部の前記肉厚リブの内周面に前記軸方向に延びる軸方向溝が形成され、前記コネクタハウジングの外周に、前記軸方向溝に係合する前記軸方向に延びる軸方向リブが形成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、周方向リブが垂直方向突起の頂部を潰して内周溝内に係合するようになることで、充電用コネクタハウジングとケースのガタを防止することができる。
そのため、コネクタハウジングとのガタを防止するための軸方向突起ラップ量を増やし過ぎにする必要がないので、左右の割型ケースが完全に閉まったときケース本体間に隙間が生じなくなる。
発明によれば、軸方向リブが軸方向溝に係合するためコネクタハウジングとケースとの周方向のガタ防止となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1はハウジング固定部を備えた割型ケースと、このハウジング固定部に固定する充電用コネクタハウジングを分離した状態で示す斜視図である。
図2図2は割型ケースのハウジング固定部の拡大斜視図である。
図3図3は割型ケースのハウジング固定部に充電用コネクタハウジングを固定した状態で示す斜視図である。
図4図4(A)は充電用コネクタハウジングをハウジング固定部へ固定する前のハウジング固定部の内周溝の一部平面図、図4(B)は充電用コネクタハウジングをハウジング固定部へ固定した後のハウジング固定部の内周溝の一部平面図である。
図5図5は特許文献1記載の充電用コネクタの断面図である。
図6図6図5の充電用コネクタハウジングをケースで挟み込んだ部位の縦断面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〈本発明の充電用コネクタ〉
コネクタハウジングとケースのガタを防止することができて、しかも左右の割型ケースが完全に閉まったとき割型ケース間に隙間が生じることのない本発明に係る充電用コネクタについて、図面を用いて説明する。
本発明に係る充電用コネクタ10は、図1に示すように、ケース20と、充電用コネクタハウジング30と、から構成されている。
ケース20は充電用コネクタハウジングを収容・固定する円筒状をしたハウジング固定部21と充電作業時に作業員が把持するハンドル部22とを含んでいる。ケース20は全体が長さ方向に左右の割型ケース20a、20b(図1では片方の20aのみ図示している。)で2分割されており、割型ケース20a、20bの組み立て時に双方にあるハウジング固定部21で円筒状の充電用コネクタハウジング30を挟み込み、双方に形成されたネジ孔20Nにネジをねじ込むことで充電用コネクタハウジング30をハウジング固定部21に固定している。
以下に、ケース20と充電用コネクタハウジング30について説明する。
【0012】
〈ケース20〉
《軸方向突起21T》
図2はケース20のハウジング固定部21の部位の拡大斜視図である。ハウジング固定部21の外縁側に厚肉が形成された外縁肉厚リブ21Cが360度に亘って形成され、その肉厚リブ21Cの内周面に、図6と同じように、充電用コネクタハウジング30とハウジング固定部21とのガタを防止するために軸方向に延びる三角突起の軸方向突起21Tを複数個所に形成している。
【0013】
《内周溝21M》
さらに、外縁肉厚リブ21Cの内周面の軸方向の中間部近傍に内周面の360度に亘って延びる内周溝21Mを形成している。内周溝21Mは垂直な両側壁とこれらの両側壁を繋ぐ底部とから成り、その垂直な両側壁の高さ(すなわち、溝の深さ)は充電用コネクタハウジング30の外面に形成された周方向リブ30M(図3)の高さより若干高く、またその底部の軸方向長さJは、その周方向リブ30M(図3)の軸方向厚さDより若干大きく(J>D)なっている。
【0014】
《垂直方向突起21V》
そして、この内周溝21Mを形成する垂直な両側壁の少なくとも一方の側壁に充電用コネクタハウジング30の挿入方向に延びる垂直方向突起21Vを複数個所に形成している。垂直方向突起21Vの形状は円柱、半円柱、角柱など側面から溝方向に突出しているものであればよい。その側壁から突出する高さHは、溝の底部の軸方向長さJから高さHを差し引いた差が周方向リブ30Mの軸方向厚さDより若干小さくなっている。
すなわち、J>D>J−H、としている。
【0015】
《軸方向溝21L》
また、割型ケース20a、20bのそれぞれについて、外縁肉厚リブ21Cの内周面の中央に1箇所、外縁肉厚リブ21Cの外側から内周溝21Mに通じる軸方向溝21Lを形成している。軸方向溝21Lの軸方向長さは充電用コネクタハウジング30の外面に形成された周方向リブ30M(図3)の軸方向長さ(厚み)と等しく、また軸方向溝21Lの横幅は軸方向リブ30L(図3)の周方向長(横幅)と等しくなっている。
【0016】
〈充電用コネクタハウジング30〉
図3は割型ケース20aのハウジング固定部21に充電用コネクタハウジング30を固定した状態を示す斜視図である。図3において、充電用コネクタハウジング30は円筒状をしており、その外周には、前述のハウジング固定部21に形成した軸方向突起21T、内周溝21M、垂直方向突起21V、軸方向溝21Lに対応してそれぞれ周方向リブ30Mと軸方向リブ30Lが次のように形状されている。
【0017】
《周方向リブ30M》
円筒状の充電用コネクタハウジング30は軸方向の略中央に全周360度に亘って延設される周方向リブ30Mが形成されている。周方向リブ30Mの高さはハウジング固定部21(図2)の内周溝21Mの深さより若干低く、また周方向リブ30Mの軸方向厚さDは内周溝21Mの底部の軸方向長さJより若干小さく、しかし、ハウジング固定部21の垂直方向突起21Vの側壁から突出する高さをHとしたとき、軸方向長さJとの差J−Hよりも若干大きく形成されている。すなわち、J>D>J−H、としている。
【0018】
《軸方向リブ30L》
また、周方向リブ30Mの中心を通る直径の両端のそれぞれ1箇所に、周方向リブ30Mと繋がる軸方向リブ30Lが、形成されている。軸方向リブ30Lの軸方向長さは、ハウジング固定部21に形成された軸方向溝21Lの軸方向長さと等しく、また軸方向リブ30Lの周方向長さ(横幅)は軸方向溝21Lの横幅と等しくなっている。
【0019】
〈ハウジング固定部21への充電用コネクタハウジング30の収容・固定〉
充電用コネクタハウジング30をハウジング固定部21へ収容・固定するには、割型ケース20aのハウジング固定部21の内周溝21Mに充電用コネクタハウジング30の周方向リブ30Mを収容すると共に、割型ケース20aのハウジング固定部21の軸方向溝21Lに充電用コネクタハウジング30の軸方向リブ30Lを収容する。その際、ハウジング固定部21の内周溝21Mに形成された垂直方向突起21Vの突出高さHと、溝の底部の軸方向長さJから高さHを差し引いた差が周方向リブ30Mの軸方向厚さDより若干小さくなっている(すなわち、J>D>J−H)ため、周方向リブ30Mをハウジング固定部21の内周溝21Mに収容するとき、垂直方向突起21Vの突出高さHを若干潰(つぶ)して収容・固定されるようになる。本発明では充電用コネクタハウジング30の周方向リブ30Mでハウジング固定部21の垂直方向突起21Vをある程度潰すことで軸方向および径方向のガタツキを抑えることができる。
【0020】
〈軸方向および径方向のガタ防止〉
図4(A)は充電用コネクタハウジング30をハウジング固定部21へ収容・固定する前のハウジング固定部21の内周溝21Mの一部平面図、図4(B)は充電用コネクタハウジング30をハウジング固定部21へ収容・固定した後のハウジング固定部21の内周溝21Mの一部平面図である。
図4(A)の収容前においては、ハウジング固定部21の内周溝21Mの側壁に形成された垂直方向突起21Vがまだ変形していない。しかし、図4(B)の収容・固定後は垂直方向突起21Vは、充電用コネクタハウジング30の周方向リブ30Mの係合に頂部近傍をある程度潰すことで潰れた垂直方向突起21V’のように変形し、したがって、確実に軸方向および径方向のガタツキを抑えるようになる。
【0021】
〈径方向のガタ防止〉
また、本発明では従来の充電用コネクタと同じく、ハウジング固定部21に軸方向突起21Tを複数箇所に形成しているので、割型ケース20aと20bを組み付けたとき軸方向突起21Tが充電用コネクタハウジング30の外周に図6のように当接してその動き(ガタ)を防止している。ガタを完全になくそうとした場合は、従来は三角突起52Tの高さを上げてラップ量を増やしたが、本発明では垂直方向突起21を設けてそれをある程度潰すことで軸方向および径方向のガタツキを抑えるようにしているので、三角突起52Tの高さを上げなくても充分に径方向のガタツキが抑えられるから、三角突起52Tの高さを増やし過ぎることがなく、したがって、左右の割型ケース20a、20bが完全に閉まらないといった不測の事態は発生しない。
【0022】
〈まとめ〉
以上のように、本発明によれば、周方向リブが垂直方向突起の頂部を潰して内周溝内に係合するようになることで、充電用コネクタハウジングとケースのガタを防止することができる。
また、コネクタハウジングとのガタを防止するための軸方向突起が、第1発明の効果によりラップ量を増やし過ぎにする必要がないので、左右の割型ケースが完全に閉まったときケース本体間に隙間が生じなくなる。
軸方向リブが軸方向溝に係合するためコネクタハウジングとケースとの周方向のガタ防止となる。
以上の実施例では充電用コネクタハウジングについて説明したが、本発明は充電用コネクタハウジングに限定されるものではなく、他のコネクタハウジングについても当てはまる。
【符号の説明】
【0023】
10 本発明に係る充電用コネクタ
20 ケース
20a、20b 左右の割型ケース
20N ネジ孔
21 ハウジング固定部
21C 外縁肉厚リブ
21L 軸方向溝
21T 軸方向突起
21M 内周溝
21V 垂直方向突起
21V’ 潰れた垂直方向突起
22 ハンドル部
30 充電用コネクタハウジング
30L 軸方向リブ
30M 周方向リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6