(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シャーレ収容庫の底部が前記シャーレ受けに向け下方向に傾斜し、複数のシャーレが傾斜した状態で前記シャーレ収容部に積層されて収容されるとともに、前記シャーレ収容庫の下部にシャーレ放出口を有し、
積層された最も下に位置するシャーレを斜め下方向に押し出し、前記放出口からシャーレが放出される、
ことを特徴とする請求項1に記載の検体作製装置。
【背景技術】
【0002】
飲料水、河川水、工場排水や食品等では、大腸菌・一般細菌検査が行われている。大腸菌・一般細菌の検査は、JIS K0102.72.3等の公定法に従って分析しており、水質汚濁に関わる環境基準として、1,000MPN/100mL(大腸菌群数(河川・A類型))以下等と法的に定められている。
【0003】
上記の大腸菌・一般細菌の検査は、分析業者が以下のように行っている。まず、検体を分取して適切な培地上に希釈・分散させる等して培養する。そして、細菌が増殖することにより生ずるコロニーの計数を無菌的に行う。
【0004】
上記の検査作業では、無菌操作に熟練した技術者が、滅菌したピペット等を用いて手作業で菌を含有するサンプル液や培地をシャーレ等の培養容器に分収して分析検体を作製している。
【0005】
通常、昼間に各クライアントから回収した検査対象の検体が、夕方以降に分析業者へ持ち込まれることが多い。検査対象の性質上、時間が経過すると、検体中の細菌類が増殖してしまい、分析結果が実際の細菌数よりも高くなるおそれがある。このため、できる限り早急に処理することが必要であり、作業を行う熟練者に負担がかかるとともに、人件費等コストも高くなっているのが実情である。
【0006】
また、特許文献1には、検体検査サンプル自動作成装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の検体検査サンプル自動作成装置は、抗生物質の有効性・効力を測定するための検体検査サンプルを作成するものであり、大腸菌或いは一般細菌の検査にそのまま用い得るものではない。
【0009】
本発明は上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的は、大腸菌或いは一般細菌等を含有するサンプル液から、菌検査用の検体を自動で作製できる検体作製装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る検体作製装置は、
複数のシャーレが積層されて収容されるシャーレ収容庫と、
頂点が切除された逆円錐形状で底面に開口部を有し、シャーレが載置されるシャーレ受けと、
前記シャーレ収容庫からシャーレを前記シャーレ受けに押し出すシャーレ押し出し機構と、
前記シャーレ受けの開口部を通過してシャーレの底面を突き上げ、シャーレを前記シャーレ受けの所定位置に位置決めする位置決め機構と、
シャーレの上部材の取り外し及び取り付けを行うシャーレ開閉機構と、
菌を含有するサンプル液が充填された複数の容器が設置されるサンプル液設置部と、
所定量の前記サンプル液をシャーレに分取するサンプル液分取機構と、
シャーレに所定量の培地を添加する培地添加機構と、
シャーレを偏心運動させて前記培地中に前記サンプル液を分散させるサンプル液分散機構と、
シャーレをシャーレ格納庫に格納するシャーレ格納機構と、を備える、
ことを特徴とする。
【0011】
また、前記シャーレ収容庫の底部が前記シャーレ受けに向け下方向に傾斜し、複数のシャーレが傾斜した状態で前記シャーレ収容部に積層されて収容されるとともに、前記シャーレ収容庫の下部にシャーレ放出口を有し、
積層された最も下に位置するシャーレを斜め下方向に押し出し、前記放出口からシャーレが放出されるよう構成されていてもよい。
【0013】
また、前記シャーレ格納庫は、シャーレの上昇を許容するとともに下降を規制する係止部を有し、
前記シャーレ格納庫の下方に配置されたシャーレ押し上げ装置が前記シャーレ受けの開口部を通過してシャーレの底面を押し上げ、前記シャーレの底部を前記係止部に係止させて前記シャーレ格納庫に格納してもよい。
【0014】
また、前記サンプル液分散機構は、
回転軸を有する回転駆動装置と、前記回転軸に対して平行に配置された偏心軸と、前記偏心軸に設置されたシャーレの底面に吸着する吸盤を備え、
前記吸盤が前記シャーレ受けの開口部を通過してシャーレに吸着するとともに上昇し、シャーレを上昇させた状態でシャーレの自転を抑制して偏心運動させて前記培地中に前記サンプル液を分散させてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る検体作製装置は、大腸菌或いは一般細菌等を含有するサンプル液から、菌検査用の検体を自動で作製できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図を参照しつつ、本実施の形態に係る検体作製装置について説明する。
【0018】
検体作製装置100は、
図1、
図2、
図3に示すように、菌を含有するサンプル液が充填された容器が設置される容器設置部10と、ガイドレール2に沿って移動可能なサンプラー支持盤20に設置されたサンプラー21及び吸盤23と、チップ収容部30と、チップ回収容器31と、ガイドレール3に沿って移動可能なシャーレ受けSWと、空状態のシャーレが収容されるシャーレ収容庫50と、シャーレ押し出し装置40と、培地添加装置70と、サンプル液及び培地が添加されたシャーレを格納するシャーレ格納庫60と、サンプル液を培地に分散させる分散装置80と、これらの装置を駆動する制御装置4とを備える。
【0019】
容器設置部10は、大腸菌や一般細菌等の菌を含有するサンプル液が充填された容器Bが複数載置される容器載置台13と、容器Bを所定位置に配置する容器支持板12と、一部に開口部11aを有する蓋11と、容器載置台13を回転駆動するモータ14とから構成される。
【0020】
容器支持板12は、同心円上に複数の開口部を有しており、この開口部にキャップが取り外された容器Bがそれぞれ挿入されて配置される。容器載置台13及び容器支持板12は一体となっており、モータ14の回転駆動によって、いっしょに回転する。なお、蓋11は取り外し可能であり、ベース1に直接或いは間接的に設置され、モータ14の回転駆動に追従しない構成である。モータ14の回転駆動によって、容器Bが蓋11の開口部11aの位置に順々に現れる仕組みである。
【0021】
サンプラー支持盤20には、サンプラー21と吸盤23がそれぞれY軸方向に昇降可能に設置されている。また、サンプラー支持盤20は、ガイドレール2に沿って、不図示の駆動装置により、X軸方向への移動が可能である。
【0022】
サンプラー21は、容器Bに充填されている一定量のサンプル液の吸い取り及び放出を行い得る分取装置である。また、サンプラー21の先端には滅菌されたチップTが取り付けられる。チップTは、1つの容器Bからサンプル液を分取する度に付け替えが行われる。チップTはチップ収容部30に複数設置されており、チップ収容部30は不図示の駆動装置により、Z軸方向へ移動可能である。そして、新たなチップTの上方にサンプラー21が位置するよう、サンプラー支持盤20がX軸方向へ移動し、サンプラー21が下降することでサンプラー21にチップTがセットされる。また、使用後のチップTは、サンプラー21から取り外されてチップ回収容器31に回収される。なお、本実施の形態ではピペットタイプのサンプラー21について説明しているが、シリンジポンプ等、他の分取装置を組み込む場合、一定量のサンプル液を分取できるよう適宜設計変更すればよい。
【0023】
また、吸盤23は不図示の吸引装置と接続しており、吸引装置による吸引でシャーレSの上部材Suの上面に吸着する。
【0024】
シャーレ押し出し装置40は、シャーレ収容庫50からシャーレSをシャーレ受けSWに押し出す装置であり、伸縮可能な押し出し部41を備える。
【0025】
シャーレ収容庫50は、滅菌されたシャーレSが積層されて収容される。シャーレ格納庫60の底部は、シャーレ受けSWに向けて傾斜しているので、シャーレは傾いた状態で積層されている。
【0026】
シャーレ格納庫60の下部にはシャーレSが一つ通過可能な放出口50aが形成されている。また、放出口50aの反対側にはシャーレ押し出し装置40の押し出し部41が通過可能な開口部が形成されている。
【0027】
シャーレ受けSWは、
図4に示すように、頂点が切除された逆円錐形状であり、底面には、後述するように、突き上げ部材51a等が通過可能な開口部SWaが形成されている。また、シャーレ受けSWは、不図示の駆動装置により、ガイドレール3に沿ってZ軸方向に移動可能である。
【0028】
位置決め装置51は、シャーレSをシャーレ受けSWの所定位置に配置する装置である。位置決め装置51は、駆動装置によって昇降可能な突き上げ部材51aを有する。
【0029】
シャーレ格納庫60には、サンプル液及び培地が添加され分散されたシャーレSが積層して格納される。シャーレ格納庫60には、後述するように、係止部材60aを有する。
【0030】
培地添加装置70は、シャーレSに培地を添加する装置である。培地添加装置70は、内部に培地が充填されたタンクと、タンクから培地を排出する不図示のポンプ等と、培地導出路71を備える。
【0031】
分散装置80は、シャーレSを偏心運動させて、添加されたサンプル液と培地とを混合し、培地にサンプル液を分散させる。分散装置80は、モータ81、回転軸82、回転軸82に平行した偏心軸84、回転軸82と偏心軸84とを接続する継手83、シャーレSの底面に吸着する吸盤85を備える。また、分散装置80は不図示の昇降装置により昇降可能に構成されている。なお、吸盤85の吸着機構は上述の吸盤23と同様である。
【0032】
続いて、検体作製装置100の動作について説明する。なお、以下の各動作については全て制御装置4の制御に基づいて、各駆動装置等を駆動させて行うものとする。
【0033】
モータ14の回転駆動により容器載置台13が回転し、蓋11の開口部11aの位置に分取されるサンプル液が充填された容器Bを配置する。
【0034】
また、サンプラー支持盤20のX軸方向への移動、及び、チップ収容部30のZ軸方向の移動により、サンプラー21がチップTの上方に移動する。そして、サンプラー21が下降し、サンプラー21にチップTが設置される。サンプラー支持盤20が元の位置に戻った後、サンプラー21が下降して容器B内のサンプル液を吸い取る。
【0035】
続いて、シャーレ押し出し装置40では、
図5(A)、(B)、(C)に示すように、シャーレ押し出し部41がシャーレSをシャーレ受けSWに向けて斜め下方向に押し出す。これにより、シャーレ収容庫50の最下位に位置するシャーレSは、シャーレ受けSWに載置される。
【0036】
シャーレ格納庫60の底部がシャーレ受けSWに向けて傾斜しているのは、以下の理由に基づく。一般的なシャーレは、
図6(A)の断面図に示すように、上部材Suと下部材Slから構成されている。シャーレは、
図6(B)のように、略水平面に積層されて保管等されるため、上部材Suの環状の凸部に下部材Slの環状の凸部が嵌り込むよう形成されており、上部材Suと下部材Slがずれない構成である。このため、シャーレ収容庫50の底部が略水平であった場合、最下位に位置するシャーレSを押し出そうとしても、シャーレSの上部材Suの凸部が、その上方に位置するシャーレの下部材Slの凸部に引っ掛かるため、最下位に位置するシャーレを押し出すことができない。
【0037】
本実施の形態では、シャーレ収容庫50の底部が傾斜しているので、シャーレの上部材Suの凸部の上に、その上のシャーレの下部材Slが載置された状態で積層される。これにより、シャーレを押し出す際に、押し出すシャーレSの上部材Suの凸部がその上方に位置するシャーレの下部材Slの凸部に引っ掛かることなく、シャーレ収容庫50から押し出すことができる。
【0038】
シャーレ受けSWに押し出されたシャーレSは、必ずしもシャーレ受けの一定位置に載置されるとは限らず、たとえば、
図7(A)に示すように、傾いた状態で載置される可能性がある。
このため、位置決め装置51によって、シャーレSをシャーレ受けSWの一定位置に載置する。位置決め装置51は、昇降可能な突き上げ部材51aを有している。位置決め装置51を駆動させると、
図7(B)に示すように、突き上げ部材51aがシャーレ受けSWの開口部SWaを通過して、シャーレSの底面を突き上げる。この突き上げは複数回行うよう制御されてもよい。突き上げ部材51aによる突き上げで、シャーレSはシャーレ受けSWの略中央に配置される。
【0039】
その後、
図8に矢印にて示すように、シャーレ受けSWが分散装置80の上方までZ軸方向に移動する。また、
図9に矢印にて示すように、吸盤23がシャーレSの上方に位置するよう、サンプラー支持盤20がX軸方向に移動する。
【0040】
そして、
図10(A)、(B)に示すように、吸盤23が下降し、シャーレSの上部材Suの上面に吸着する。吸着した後、
図10(C)に示すように、吸盤23が上昇し、上部材Suも一緒に上昇する。これにより、シャーレSWにはシャーレSの下部材Slのみが残った状態となる。
【0041】
続いて、
図11に矢印にて示すように、サンプラー21がシャーレSの下部材Slの上方に到達するよう、サンプラー支持盤20がX軸方向に移動する。そして、サンプラー21は、吸い取った一定量のサンプル液を下部材S1に添加する。
【0042】
その後、シャーレ受けSWは、
図12に示すように、培地添加装置70の下方へとZ軸方向に移動する。ここで、シャーレSの下部材Slに、培地導出路71から一定量の培地が添加される。
【0043】
培地が添加された後、
図13に示すように、シャーレ受けSWが再度分散装置80の上方へとZ軸方向に移動する。また、吸盤23がシャーレ受けSWの上方に位置するまで、サンプラー支持盤20が移動する。
【0044】
そして、
図14(A)に示すように、吸盤23が下降する。吸盤23には上部材Suが吸着したままなので、上部材Suもいっしょに下降し、シャーレSの下部材Slに上部材Suが取り付けられる。
【0045】
上部材Suが取り付けられた後、吸着が解除され、
図15(B)に示すように、上部材Suを残したまま吸盤23が再度上昇する。また、分散装置80の吸盤85が上昇する。吸盤85がシャーレ受けSWを通過して、シャーレSの下部材Slの底面に吸着する。
【0046】
そして、
図15に示すように、モータ81が所定時間回転駆動する。偏心軸84は継手83によって回転軸82から離間して平行に配置されているので、吸盤85に吸着されたシャーレSは回転軸82上を旋回することになる。
【0047】
そして、偏心軸84は、継手83に対し摺動可能、すなわち自転可能に設置されている。また、偏心軸84には、不図示の吸引装置に接続する吸引ホース等の吸引路86が接続されている。このため、偏心軸84は、吸引路86の張力によって自転が抑制され、その向きをほぼ維持した状態で回転軸82上を旋回、即ち公転する。偏心軸84の上方に位置するシャーレSも自転を伴わずに、その向きを維持した状態で回転軸82上を旋回、即ち公転する。
図15に示すように、実線で示すシャーレSと破線で示すシャーレSは回転軸82が180°回転した際の位置関係を示しているが、それぞれのシャーレSの×印の位置は変わっていない。これにより、シャーレSに添加されたサンプル液と培地とが効率的に混合され、サンプル液が培地に分散する。モータ81は所定時間経過後に駆動を停止し、そして、吸盤85が下降する。また、吸盤85の下部材Slへの吸着が解除される。これにより、シャーレSはシャーレ受けSWに載置された状態となる。
【0048】
その後、
図16に示すように、シャーレ受けSWはシャーレ格納庫60の下方までZ軸方向に移動する。なお、大腸菌の検査では、サンプル液を培地に分散した後、更に培地を添加し、培養を行う。この場合、再度、上部材Suの取り外し、シャーレ受けSWの移動、培地の添加、シャーレ受けSWの移動、上部材Suの取り付けを行うよう制御すればよい。
【0049】
図17(A)に示すように、シャーレ格納庫60の下方、且つ、シャーレ受けSWの上方に、昇降可能な押し上げ部材61aを備えるシャーレ押し上げ装置61が配置されている。また、シャーレ格納庫60には、係止部材60aが設置されている。係止部材60aは、シャーレSの上昇方向への移動を許容する一方、下降方向への移動を規制する。
【0050】
図17(B)に示すように、押し上げ部材61aがシャーレ受けSWの開口部SWaを通過してシャーレSの底面を押し上げていく。すると、係止部材60aは、シャーレSの上部材Suに押し上げられて回転し、係止部材60aに係止されていた積層されているシャーレSを押し上げていく。
【0051】
そして、
図17(C)、(D)に示すように、更に、押し上げ部材61aがシャーレSを押し上げ、シャーレSが係止部材60aを通過してゆき、シャーレSの上部材Suが、従前に積層されていた最下位に位置するシャーレSの下部材Slに当接する。また、係止部材60aは、元の状態に戻る。
【0052】
その後、押し上げ部材61aが下降すると、押し上げられたシャーレSの底部が係止部材60aに係止されてシャーレ格納庫60への格納が完了する。
【0053】
上記の動作が順次行われ、自動で連続的に検体が作製されて、シャーレ格納庫60に格納されていく。
【0054】
なお、シャーレ格納庫60は、気密構造で内部温度を所定温度に維持可能な形態であってよい。通常、検体作製後、恒温槽内で所定温度に維持し、所定時間サンプル液に含有する菌を培養した後、菌数を計測する。シャーレ格納庫60が恒温槽としても利用できる形態であれば、シャーレ格納庫60に所定時間そのまま保持し培養することができる。
【0055】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。