(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775350
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】力率改善用電流制御回路を有する電源供給装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/06 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
H02M7/06 P
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-93293(P2011-93293)
(22)【出願日】2011年4月19日
(65)【公開番号】特開2011-229391(P2011-229391A)
(43)【公開日】2011年11月10日
【審査請求日】2011年4月19日
【審判番号】不服2015-1817(P2015-1817/J1)
【審判請求日】2015年1月29日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0037183
(32)【優先日】2010年4月22日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513211700
【氏名又は名称】ルミグリーン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ス リョル キム
【合議体】
【審判長】
堀川 一郎
【審判官】
矢島 伸一
【審判官】
中川 真一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−111104(JP,A)
【文献】
特開2010−21332(JP,A)
【文献】
特開昭61−46179(JP,A)
【文献】
特開平6−141534(JP,A)
【文献】
特開2003−289620(JP,A)
【文献】
特開2002−173028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
力率改善用電源供給装置において、
入力される交流電圧を整流する整流回路(1);
負荷と直列に連結される第1の定電流回路(3);
上記直列に連結された第1の定電流回路(3)と負荷に対して並列回路を構成するコンデンサー(C);
上記整流回路(1)の出力と上記並列回路の入力間に直列に連結される第2の定電流回路(2)を含み、
上記第2の定電流回路(2)と第1の定電流回路(3)とが一定の電流を出力して上記コンデンサー(C)の充電時間と放電時間とを増やし、入力電流が入力電圧の位相と略一致するようにして力率を改善することを特徴とする力率改善用電源供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の力率改善用電源供給装置において、
上記負荷はLED素子であることを特徴とする力率改善用電源供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLEDランプやコンパクト蛍光灯、小型アダプター用の小型電源供給装置において力率を改善する回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LEDランプやコンパクト蛍光灯、小型アダプターは大きさが小さいから、内部に小型電源供給装置が使用され、従来の電源供給装置は、
図1に示すような構成を有することによって、交流(AC)がブリッジダイオード回路に供給されて脈流を形成して、これをまた電解コンデンサーを用いて直流(DC)に近接するようにして負荷などに供給するようになる。
【0003】
ところが、このような従来の技術においては、単に電解コンデンサーを使用するから、
図3の2番目グラフの如く入力電圧のピーク値の近くで迅速に充電が始めて迅速に放電するので、入力電流の流れる期間が短くて入力電圧の波形の中で一部期間のみに入力電流が流れて力率が低下して電力を供給する伝送線路に損失が発生する。
【0004】
これを改善するためには、力率改善回路(Power Factor Correction Circuit:PFC)を有する電源供給装置を適用しなければならないのに、このようなLEDランプやコンパクト蛍光灯、小型アダプターにおいては、回路を収容することができる内部空間の大きさが小さくて、力率改善回路の追加に伴う費用の増加が発生するので、力率改善回路を適用した電源供給装置を低価で小型化するのが難しくて多くの場合にこのような力率改善回路を適用しなくてエネルギーの浪費がもたらされる。
【0005】
一方、力率改善回路には受動(Passive)方式と能動(Active)方式があるのに、受動方式の代表的な方法は
図2に示すように電解コンデンサー(C)に対応するインダクター(L)を使用するLC共振回路方式であり、この方式では
図3の3番目グラフの如く2番目グラフに比べてインダクターがコンデンサーの位相差を補償してくれて力率が改善して(すなわち、コンデンサーによる進相(Lead)をインダクターの遅相(Lag)にして補償してくれる)、この受動方式では普通0.8ほどまで力率を改善することができる。
【0006】
しかし、交流電流が50Hzないし60Hzの低周波数であるので低周波インダクターを作るためにはインダクターが大きくて重くて、小型電源供給装置に使用することができない。
【0007】
また、能動方式はスイッチング方式を利用して高力率が具現可能であるが、回路が複雑で価格が高くてスイッチングに伴う高調波の発生によってEMIなどの対策を立てなければならない問題があって、内部空間が狭小で低価の製造が必要な小型電源供給装置においてはこのような能動方式の力率改善回路を使用しにくい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような従来の能動方式及び受動方式の力率改善装置の問題点を勘案して、小型で低価の高力率の達成が可能な力率改善回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明は、力率改善用電源供給装置において、入力される交流電圧を整流する整流回路(1);負荷と直列に連結される第1の定電流回路(3);上記直列に連結された第1の定電流回路(3)と負荷が並列に連結されるコンデンサー(C);上記整流回路(1)の出力と上記コンデンサー(C)との間に存在する第2の定電流回路(2)を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のような本発明の力率改善回路を利用すれば、LEDランプやコンパクト蛍光灯、小型アダプターに使用することに相応しい、小型で低価の高力率の力率改善回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】従来の技術において、電解コンデンサー(C)に対応するインダクター(L)を使用するLC共振回路方式の力率改善回路を示す。
【
図3】従来の技術と本発明に伴う入力電流の波形を示す。
【
図4】本発明の第1の実施例に伴う電源供給装置を示す。
【
図5】本発明の第2の実施例に伴う電源供給装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
【0013】
本発明は
図4に示すように、交流電源がブリッジダイオード回路(1)によって脈流形態で整流されて、既存の体積が大きくて重いインダクターの代りに定電流回路(2)を使用する。
【0014】
それでは、この定電流回路(2)ではいつも一定電流が出力されるので、この定電流回路(2)のない場合に急激な充放電電流が流れて入力電流が急激に変化(
図3の2番目グラフ)する従来の技術と異なり、
図3の4番目グラフ(本発明の第1の実施例のグラフ)の如くコンデンサー(C)に電荷が徐々に充電するようになってほぼ入力電圧の位相と一致する入力電流が流れるようになって力率が0.9以上に向上するようになる。
【0015】
すなわち、この定電流回路(2)はコンデンサー(C)の電荷充電時間を増加させることによって、交流入力端の電流及び電圧の位相をマッチングして無効電力分を減少させて力率を改善するようになる。
【0016】
この際、定電流回路(2)の出力が一定であるので、この一定電流値が負荷(LED)とコンデンサー(C)とに分割して流れるようになる。
【0017】
特に、定電流回路(2)のような電流制御回路はワンチップに製作されるので低価で体積が小さくて、アダプターやLEDランプ、コンパクト蛍光灯のような小型で低価の電源装置に適用して高力率が達成されるので、エネルギー節減の效果が大きくなる。
【0018】
次に、
図4に示すよりも力率を改善した本発明のその他の実施例を、
図5を参照にして説明する。
【0019】
図5が
図4と相違している点は負荷の直前にまた定電流回路(3)を追加したものである。
【0020】
図4では定電流回路(2)を使用して全体の電流が一定であり、コンデンサー(C)へ急激に電流が流れるようになることを防止するものであって、なだらかにコンデンサー(C)に充電するようになるので、入力電流は
図3の4番目グラフの如くなる。
【0021】
しかし、
図5ではコンデンサー(C)へ急激な電流が流れることを防止する次元を越えて、コンデンサー(C)の充電時間だけでなく放電時間までも一層増やしてくれて、
図3の5番目グラフ(本発明の第2の実施例のグラフ)の如く入力電流が流れるようにしてほぼ完璧に入力電圧と同一位相になるように力率を0.9以上にするものである。
【0022】
すなわち、定電流回路(2)と定電流回路(3)との出力電流が一定であるので、例えば、定電流回路(2)の出力電流が25mAであり、定電流回路(3)の出力電流が20mAであれば、コンデンサー(C)にはいつも一定電流(25−20=5mA)が流れることによって、一層なだらかに充放電が進行されて
図3の5番目グラフの如く、よりなだらかに入力電流が流れてほぼ入力電圧と入力電流が同一位相になってより力率が改善するようになる。
【0023】
一方、以上では、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるのではなく、本発明の精神を脱しない範囲内において多様な変形が可能である点に留意しなければならない。
【0024】
すなわち、以上では、急速な充放電電流を制限するために定電流回路を使用することと記載したが、本発明の原理がコンデンサーに電荷が徐々に充放電するようにすることなので、定電流回路ではなくてもこのような原理を達成することができる多様な電流制御回路が使用されることができる。
【0025】
例えば、
図5において、定電流回路(2)の代りに電流制限用として抵抗(R)を使用する場合にも、抵抗(R)によって充電電流が制限されて充電時間を増やしてくれて、定電流回路(3)によって放電時間を増やしてくれるようになって、
図5と似ている力率改善の效果を達成することができるようになる。