(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来は、魚体のターゲットストレングス(TS)を計測し、下記式によって、魚体長Lを算出している。
【0008】
L[cm]=10
((TS-TScm)/20)
この式におけるTScmは、魚種に関係なく、予め定めたターゲットストレングスの共通標準化値である。TSは、ターゲットストレングスの計測値である。ターゲットストレングスの共通標準化値TScmは、魚体長が1cmである魚体からのターゲットストレングスTSである。
【0009】
上述のターゲットストレングスの共通標準化値TScmは、実際には、魚種によって異なるが、従来は有鰾魚の平均値(−66dB)等に固定し、上述の式で魚体長を算出していた。したがって、魚種によっては、魚体長Lが精度よく算出できていなかった。
【0010】
この発明の目的は、目的物標の種類を判別することにより、この目的物標の体長の算出精度を向上させたターゲット長計測装置、ターゲット長計測方法、およびターゲット長計測プログラムを提供することにある。
【0011】
特に、魚体長の算出精度を向上させたターゲット長計測装置、ターゲット長計測方法、およびターゲット長計測プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明にかかるターゲット長計測装置は、上記課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
【0013】
送受信部が、
異なる周波数の超音波信号を送信し、そのエコー信号を受信する。種類判別部が、この受信したエコー信号に基づき、目的物標を探知するとともに、
異なる周波数のエコー信号の差分値のヒストグラムを算出し、ここで算出した差分値のヒストグラムと、目的物標の種類毎に設定されたリファレンスヒストグラムとの相関処理結果によって、目的物標の種類を判別する。また、計測部が、送受信部で受信したエコー信号に基づき、この目的物標のターゲットストレングスを計測する。目的物標は、例えば、魚群や魚体である。
【0014】
また、記憶部が、目的物標の種類毎に、ターゲットストレングスの標準化値を記憶している。例えば、記憶部は、魚種毎に、その魚種のターゲットストレングスの標準化値を記憶している。
【0015】
そして、算出部が、種類判別部が判別した目的物標の種別について、記憶部に記憶しているターゲットストレングスの標準化値、および計測部が計測した目的物標のターゲットストレングスを用いて、この目的物標のターゲット長を算出する。
【0016】
このように、目的物標の種類を判別し、ここで判別した種類について記憶しているターゲットストレングスの標準化値を用いて、この目的物標のターゲット長を算出する。したがって、目的物標の種類の違い、例えば魚種の違い、に影響されることなく、その目的物標のターゲット長(例えば、魚体長)を精度よく算出できる。
【0017】
また、ターゲットストレングスの共通標準化値を記憶部に記憶させておき、種類判別部が判別した目的物標の種別についてターゲットストレングスの標準化値を記憶していなければ、算出部は、この共通標準化値を用いて目的物標のターゲット長を算出する。したがって、ターゲットストレングスの標準化値が、略同じである種類の目的物標については、個別にターゲットストレングスの標準化値を記憶させなくてもよい。これにより、記憶部の記憶容量が抑えられる。
【0020】
また、探知した目的物標について、判別した種類や、算出したターゲット長については、表示器等に表示して、漁労者等の利用者に提示すればよい。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、目的物標のターゲット長の算出精度を向上させることができる。特に、魚種に影響されることなく、その魚体長を精度よく算出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明のターゲット長計測装置の実施形態にかかる魚群探知装置について説明する。
【0024】
図1は、この魚群探知装置の主要部の構成を示すブロック図である。この魚群探知装置1は、送受波器10、送信部20、受信部30、魚種判別情報算出部40、魚体長算出部50、表示制御部60、および表示器70を備える。
【0025】
送信部20は、超音波送信信号を生成して、送受波器10へ出力する。送信部20は、周波数が異なる超音波送信信号を生成することができる。ここでは、送信部20は、第1周波数f1として60kHzの超音波送信信号、および第2周波数f2として200kHzの超音波送信信号の2種類の超音波送信信号を生成する構成として説明する。
【0026】
なお、送信部20は、3種類以上の異なる周波数の超音波送信信号を生成することができる構成であってもよい。また、生成する超音波送信信号の周波数は、上述した60kHzや200kHzに限定されるものでもない。
【0027】
送信部20は、第1周波数f1の超音波送信信号Txf1と第2周波数f2の超音波送信信号Txf2とを所定のタイミング間隔(PING毎)に、送受波器10へ出力する。すなわち、送信部20は、PING毎に、送受波器10へ出力する超音波送信信号の周波数を切り替える。
【0028】
なお、送信部20は、ここでは、PING毎に、第1周波数f1の超音波送信信号Txf1と第2周波数f2の超音波送信信号Txf2を交互に送信するとしているが、第1周波数f1の超音波送信信号Txf1と第2周波数f2の超音波送信信号Txf2を同時に送信する構成としてもよい。
【0029】
送受波器10は上述の超音波送信信号の各周波数に対応する構造の超音波振動子を備える。送受波器10は、送信部20で生成された各周波数の超音波送信信号Txf1,Txf2に基づいて、海中へ超音波SWf1,SWf2を送波する。送受波器10は、送波された各周波数の超音波SWf1,SWf2が魚群等の物標に反射することで生じる反射波SEf1,SEf2を超音波振動子で受波し、周波数毎のエコー信号REf1,REf2を生成して、受信部30へ出力する。
【0030】
受信部30は、送受波器10から入力されたPING毎の各周波数のエコー信号REf1,REf2を所定のサンプリングタイミング間隔でサンプリングし、周波数毎に受信データRxf1,Rxf2を生成する。このサンプリングタイミング間隔は、深度方向の距離分解能に基づいて設定されている。受信部30は、PING毎の受信データRxf1,Rxf2を、魚種判別情報算出部40へ出力する。
【0031】
送受波器10、送信部20、および受信部30が、この発明で言う送受信部を構成する。
【0032】
魚種判別情報算出部40は、
図1に示すように、体積散乱差算出部41(以下、ΔSV算出部41と言う。)、体積散乱差ヒストグラム算出部42(以下、ΔSVヒストグラム算出部42と言う。)、類似度算出部43、およびリファレンスデータベース400(以下、リファレンスDB400と言う。)を備える。
【0033】
魚種判別情報算出部40は、探知した魚群、または魚体について魚種の判別を行う。
図2は、この魚種の判別にかかる処理を示すフローチャートである。
【0034】
魚種判別情報算出部40のΔSV算出部41は、受信部30から入力される周波数毎の受信データから体積散乱差ΔSVを算出する(
図2:S101)。
【0035】
この体積散乱差ΔSVを算出する処理について説明する。ΔSV算出部41は、第1周波数f1の受信データRxf1と第2周波数f2の受信データRxf2を取得し、この取得した受信データRxf1から体積散乱SV1を算出し、受信データRxf2から体積散乱SV2を算出する。
【0036】
ΔSV算出部41は、算出した体積散乱SV1,SV2がそれぞれに予め設定した閾値Th1,Th2より大きいかどうかを判別する。閾値Th1,Th2は、予めノイズと有意なエコーとを区分するために設定した閾値である。ΔSV算出部41は、組を構成する体積散乱SV1が閾値Th1より大きいこと(SV1>Th1)と、体積散乱SV2が閾値Th2より大きいこと(SV2>Th2)の両方を満たすと、体積散乱差ΔSVの算出を行う。体積散乱差ΔSVは、体積散乱SV1と体積散乱SV2との差分である。
【0037】
なお、ΔSV算出部41は、体積散乱SV1が閾値Th1以下、あるいは体積散乱SV2が閾値Th2以下であれば、体積散乱差ΔSVの算出を省略することでリソースの負荷を軽減している。
【0038】
体積散乱差ΔSVは、
図3に示すように、魚種によって異なる特性を示す。
図3は、魚種別の体積散乱差ΔSVの分布(エコーグラム)を示す図であり、
図3(A)がMackerel(サバ)を示し、
図3(B)がHerring(ニシン)を示す。また、
図3において、横軸はPING番号すなわち送信時刻(探知時刻)の遷移を示し、縦軸は深度(距離方向位置)を示す。そして、
図3ではコントラストにより体積散乱差ΔSVの大きさを階調で表している。
【0039】
図3に示すように、MackerelとHerringとでは、体積散乱差ΔSVの分布が異なり、上述の体積散乱差ΔSVの算出演算を用いれば、Mackerelの体積散乱差ΔSV(M)の方が、Herringの体積散乱差ΔSV(H)よりも低いレベルで分布する。このように体積散乱差ΔSVを算出することで、一つの魚種判別情報を得ることができる。ΔSV算出部41は、PINGおよび距離方向位置毎の体積散乱差ΔSVを算出すると、当該体積散乱差ΔSVをΔSVヒストグラム算出部42へ出力する。
【0040】
ΔSVヒストグラム算出部42は、所定PINGに亘り全距離方向位置に対応する体積散乱差ΔSVに基づいて実測ヒストグラムHisΔSVを算出する(
図2:S102)。
【0041】
図4は、魚種毎の実測ヒストグラムHisΔSVを示した図である。実線がMackerelの実測ヒストグラムHisΔSVであり、破線がHerringの実測ヒストグラムHisΔSVである。
図4は、Mackerel、およびHerringのそれぞれについて、異なる3つの魚群から算出した実測ヒストグラムHisΔSVを示している。
【0042】
図4に示すように、体積散乱差ΔSVの実測ヒストグラムHisΔSVは、魚種が同じであれば略同じ特性となり、魚種が異なると全く異なる特性となる。例えば、上述のような体積散乱差ΔSVの算出方法であれば、Mackerelでは、体積散乱差ΔSVが−5〜0のあたりにヒストグラムのピークが現れ、ΔSV軸に対して狭い範囲に集中する特性を示すが、Herringでは、体積散乱差ΔSVが+10あたりにヒストグラムのピークが現れ、ΔSV軸(
図4の横軸)に対して比較的広い範囲に分布する特性を示す。したがって、このような体積散乱差ΔSVの実測ヒストグラムHisΔSVを利用することでも、魚種判別情報が得られる。
【0043】
ΔSVヒストグラム算出部42は、S102で算出した実測ヒストグラムHisΔSVを、類似度算出部43へ出力する。類似度算出部43は、実測ヒストグラムHisΔSVを用いて類似度を算出する(
図2:S103)。
【0044】
類似度算出部43は、ΔSVヒストグラム算出部42から実測ヒストグラムHisΔSVを取得する。また、類似度算出部43は、リファレンスDB(データベース)400から、類似度データを構成するための魚種XのリファレンスヒストグラムRefHisΔSVxを読み出す。リファレンスDB400は、予め魚種X毎にリファレンスヒストグラムRefHisΔSVxを記憶している。
【0045】
類似度算出部43は、実測ヒストグラムHisΔSVと、魚種XのリファレンスヒストグラムRefHisΔSVxとから、相関処理演算を行い、相関処理結果rSXを算出する。類似度算出部43は、相関処理結果rSXを算出した魚種Xに対する尤度Lxを算出する。
【0046】
図5は、尤度Lxの概念を説明する為の図である。
図5(A)は、実測ヒストグラムHisΔSVがMackerelである。
図5(B)は、実測ヒストグラムHisΔSVがHerringである。
【0047】
図5(A)に示すように、実測ヒストグラムHisΔSVがMackerelであれば、実測ヒストグラムHisΔSVとMackerelのリファレンスヒストグラムRefHisΔSVxMとは、非常に類似する特性となり、相関処理結果rSXは当然に「1」に近づく。一方、実測ヒストグラムHisΔSVとHerringのリファレンスヒストグラムRefHisΔSVxHとは、比較的特徴が一致せず、相関処理結果rSXは「1」よりも所定レベルで低くなる。このため、Mackerelに対する尤度LxMは「100」に近づき、Herringに対する尤度LxHは「100」よりも十分に低いレベルになる。
【0048】
また、
図5(B)に示すように、実測ヒストグラムHisΔSVがHerringであれば、実測ヒストグラムHisΔSVとMackerelのリファレンスヒストグラムRefHisΔSVxMとは、比較的特徴が一致せず、相関処理結果rSXは「1」よりも所定レベルで低くなる。一方、実測ヒストグラムHisΔSVとHerringのリファレンスヒストグラムRefHisΔSVxHとは、非常に類似する特性となり、相関処理結果rSXは当然に「1」に近づく。このため、Mackerelに対する尤度LxMは「100」よりも十分に低いレベルになり、Herringに対する尤度LxHは「100」に近づく。
【0049】
類似度算出部43は、このような魚種X毎の尤度Lxの算出を、設定した全ての魚種に対して行う。
【0050】
このように魚種X毎に尤度Lxを用いることで、魚種に対する確からしさ、すなわち、魚種が例えばMackerelである確からしさやHerringである確からしさを数値化することができる。
【0051】
類似度算出部43は、設定した全ての魚種に対して尤度Lxを算出すると、これら尤度Lxの組を類似度データとして、魚体長算出部50、および表示制御部60へ出力する。この際、類似度算出部43は、実測ヒストグラムHisΔSVと、尤度Lxの算出を行った各魚種のリファレンスヒストグラムRefHisΔSVxも、表示制御部60へ出力する(魚体長算出部50には出力しない。)。
【0052】
次に、魚体長算出部50について詳細に説明する。魚体長算出部50は、
図1に示すように、ターゲットストレングス計測部51(以下、TS計測部51と言う。)、算出部52、およびターゲットストレングス標準化値記憶部53(以下、TS標準化値記憶部53と言う。)を備える。この魚体長算出部50は、上述の魚種判別情報算出部40が魚種の判別を行った魚群、または魚体について、魚体長を算出する処理を行う。
図6は、この魚体長の算出にかかる処理を示すフローチャートである。
【0053】
TS計測部51は、上述した第1周波数f1の受信データRxf1と、第2周波数f2の受信データRxf2と、を用いターゲットストレングスTS0を算出する(
図6:S401)。このターゲットストレングスTS0の算出は、デュアルビーム法等で行う。ここでは、周波数がより低い第1周波数f1の受信データRxf1を広域のエコー信号にかかる受信データとし、周波数がより高い第2周波数f2の受信データRxf2を狭域のエコー信号にかかる受信データとして用いる。
【0054】
TS計測部51は、上述の魚種判別情報算出部40が魚種の判別を行った魚群、または魚体毎に、ターゲットストレングスTS0を算出する。TS計測部51は、魚群、または魚体毎に算出したターゲットストレングスTS0を算出部52に入力する。
【0055】
ターゲットストレングスTS0は、後方散乱波の強さであり、
TS0=10log(ts)
ts=Ir/Ii
と定義される。Irは、魚体から単位距離だけ超音波源方向に戻った点における後方散乱波の強さである。Iiは、魚体への入射波の強さである。
【0056】
TS標準化値記憶部53は、
図7に示す、ターゲットストレングスの標準化値テーブルを記憶している。
図7に示すように、このターゲットストレングスの標準化値テーブルは、魚種と、標準化TSと、を対応づけて登録したテーブルである。また、このターゲットストレングスの標準化値テーブルには、共通標準化値が登録されている。この共通標準化値は、このTS標準化値テーブルに登録されていない魚種について用いる標準化TSである。また、この共通標準化値は、有鰾魚、および無鰾魚のそれぞれについて登録している。
【0057】
なお、後述するように、ターゲットストレングスの標準化値テーブルは、標準化TSと、共通標準化値とが略同じである魚種については、特に登録していなくてもよい。このようにすれば、TS標準化値記憶部53の記憶容量が抑えられる。
【0058】
算出部52は、TS計測部51からターゲットストレングスTS0が入力された魚群、または魚体の魚種を判断する(
図6:S402)。S402では、魚種判別情報算出部40から入力された類似度データに基づき、尤度Lxが最大である魚種を、この魚群、または魚体の魚種と判断する。
【0059】
算出部52は、該当する魚種の標準化TSがターゲットストレングスの標準化値テーブルに登録されているかどうかを判断する(
図6:S403)。算出部52は、該当する魚種の標準化TSがターゲットストレングスの標準化値テーブルに登録されていれば、その魚種について登録されている標準化TSを読み出す(
図6:S403Yes→S404)。
【0060】
一方、算出部52は、該当する魚種の標準化TSがターゲットストレングスの標準化値テーブルに登録されていなければ、その魚種が有鰾魚、または無鰾魚のいずれであるかを判断する(
図6:S403No→S405)。算出部52は、魚種が有鰾魚であれば、有鰾魚について登録している共通標準化値をターゲットストレングスの標準化値テーブルから読み出す(
図6:S405Yes→S406)。反対に、算出部52は、魚種が無鰾魚であれば、無鰾魚について登録している共通標準化値をターゲットストレングスの標準化値テーブルから読み出す(
図6:S405No→S407)。
【0061】
算出部52は、S404、S406、またはS407のいずれかで、ターゲットストレングスの標準化値テーブルから読み出した標準化TS、または共通標準化値と、TS計測部51から入力されたターゲットストレングスTS0を用いて、魚体長Lを算出する(
図6:S408)。魚体長Lは、
L[cm]=10
((TS0-TScm)/20)
により、算出される。TScmは、S404、S406、またはS407のいずれかで、ターゲットストレングスの標準化値テーブルから読み出した標準化TS、または共通標準化値である。
【0062】
算出部52は、魚種判別情報算出部40が魚種の判別を行った魚群、または魚体の中に、上述した魚体長の算出を行っていないものがあれば、その魚群、または魚体に対して、魚体長を算出する処理を繰り返す(
図6:S409No→S401)。
【0063】
このように、魚種毎に、その魚種に応じた標準化TSを用いて魚体長Lを算出するので、魚種に影響されることなく、精度よく算出することができる。
【0064】
算出部52は、魚種判別情報算出部40が魚種の判別を行った全ての魚群、または魚体について魚体長Lの算出を行うと、魚群、または魚体毎に算出した魚体長Lを通知する魚体長データを表示制御部60へ出力する(
図6:S409Yes→S410)。
【0065】
表示器70は液晶ディスプレイ等により実現され、表示制御部60からの表示制御に基づいて画像を表示する。表示制御部60は、類似度算出部43から入力された、魚種毎の尤度Lxからなる類似度データ、および各ヒストグラムと、算出部52から入力された魚群、または魚体毎の魚体長データと、を用いて、表示器70に
図8に示す画像を表示する表示制御を行う(S104)。
【0066】
表示画面700は、ヒストグラム表示ウィンドウ701、尤度表示ウィンドウ702A、702B、703を備える。より具体的には、表示画面700の中央にヒストグラム表示ウィンドウ701が配置される。また、当該ヒストグラム表示ウィンドウ701の両側面(正面視した左右端)にそれぞれ、Mackerelに対する尤度LxMの尤度表示ウィンドウ702Aと、Herringに対する尤度LxHの尤度表示ウィンドウ702Bとが配置される。さらに、当該ヒストグラム表示ウィンドウ701の下側面(正面視した下側端)にCodに対する尤度LxCの尤度表示ウィンドウ703が配置される。
【0067】
ヒストグラム表示ウィンドウ701には、上述した実測ヒストグラムHisΔSVと、尤度Lxを算出した各魚種のリファレンスヒストグラムRefHisΔSVxとが、描画されている。
【0068】
尤度表示ウィンドウ702Aには、実測ヒストグラムHisΔSVのMackerelに対する尤度が、百分率の数値とともに、バー720Aで描画されている。この際、バー720Aは、画面の高さが尤度100%となるように、算出された尤度に応じた高さで描画される。さらに、バー720Aの色も尤度に応じて段階的に設定されており、尤度に応じた色で描画されている。
【0069】
尤度表示ウィンドウ702Bには、実測ヒストグラムHisΔSVのHerringに対する尤度が、百分率の数値とともに、バー720Bで描画されている。この際、バー720Bも、バー720Aと同様に、算出された尤度に応じた高さおよび色で描画される。
【0070】
尤度表示ウィンドウ703には、実測ヒストグラムHisΔSVのCodに対する尤度が、百分率の数値とともに、バー703Aで描画されている。この際、バー703Aは、算出された尤度に応じた幅および色で描画される。
【0071】
なお、
図8では、Mackerel、およびHerringについては、リファレンスヒストグラムRefHisΔSVxを示しているが、Codについては、リファレンスヒストグラムRefHisΔSVxを省略している。
【0072】
また、魚種(Herring)と、魚体長Lとを対応づけて描画する魚体長表示ウィンドウを設けてもよい。また、魚体長Lは、代表値を表示してもよいし、その分布をヒストグラムで表示してもよい。
【0073】
したがって、漁労者は、この表示器70の画面表示を見るだけで、探知した魚群または魚体の魚種を判別することができる。例えば、
図8に示した画面の表示例であれば、実測ヒストグラムHisΔSVがHerringのリファレンスヒストグラムRefHisΔSVxHと略一致し、Herringに対する尤度が非常に高いことを容易に把握できる。一方で、実測ヒストグラムHisΔSVがMackerelのリファレンスヒストグラムRefHisΔSVxMと相違し、Mackerelに対する尤度が低いことを容易に把握できる。また、Codに対する尤度が低いことも容易に把握できる。これにより、漁労者は、探知した魚群がHerringであることを容易に判断できる。
【0074】
なお、ここで説明した魚群探知装置1は、魚種判別情報算出部40が体積散乱SVを用いて魚種を判別するとしたが、この魚種を判別する手法については他の手法で行ってもよい。例えば、ターゲットストレングスを用いて魚種を判別してもよい。また、スペクトル情報や、時間波形情報などを用いて、魚種を判別してもよい。
【0075】
また、上述の説明では、類似度データの算出に、相関処理を用いた例を示したが、実測ヒストグラムHisΔSVとリファレンスヒストグラムRefHisΔSVxとの類似性が反映されるものであれば、他の方法で尤度Lxを算出しても良い。例えば、それぞれのヒストグラムのピークとなるΔSV値や、当該ピーク値等を用いてもよい。
【0076】
また、上述の説明では、所定のPINGにおける全ての距離方向位置の体積散乱差ΔSVを対象にして、ヒストグラムを算出する例を示したが、局所的な範囲の体積散乱差ΔSVのみを用いてヒストグラムを算出してもよい。この場合、例えば、
図3に示すようなエコーグラムを表示器70に表示し、漁労者が操作部から範囲指定をする構成とすればよい。魚種判別情報算出部40は、この範囲指定に基づいて、対応する範囲内の体積散乱差ΔSVのみを用いてヒストグラムを算出する。そして、このようにして得られるヒストグラムを用いて上述のように尤度を算出するとともに、魚体長Lを算出する。このような範囲指定を行えば、例えば、複数種類の魚群が近接して存在する場合に、特定の魚群のみを指定して、魚種や魚体長の確認が行える。
【0077】
また、上述の説明では、類似度について、相関処理から得られる尤度について示したが、ヒストグラムから抽出される特徴量に基づいて、類似度を算出してもよい。例えば、ヒストグラムの高さ、ヒストグラムの幅、ヒストグラムの標準偏差、ヒストグラムの分散、ヒストグラムの平均値、ヒストグラムの中央値、ヒストグラムが最頻値となるΔSV等の少なくとも1項目、もしくは複数の項目を適宜組み合わせて類似度を算出してもよい。なお、ここで、ヒストグラムの高さとは、ヒストグラムを構成する全ての体積散乱差ΔSVの度数(もしくは比率)の内の最も高い度数(もしくは比率)を示す。ヒストグラムの幅とは、所定の度数(もしくは比率)以上となる体積散乱差ΔSVの幅を示す。
【0078】
また、上述の説明では、魚群または魚体の種類を判別し、その魚体長Lを算出する例を示したが、海底判別、すなわち海底が砂地か岩か等を判別する海底判別装置に、当該発明の構成および処理を適用し、岩の長さ等を算出するのに利用することもできる。また、探知波信号は、上述の超音波信号に限らず、船や島等の大きさを計測する場合、ミリ波信号(電波)を用いてもよい。