【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明は上述した事情、問題点に鑑み、これを改善すべく開発されたものである。つまり本発明は、濾過器を使用する際にこれをカップ容器にセットするため袋体の前後の面に設ける支持体を前後方向(離反方向)へ引き出す操作を利用して袋体の上部に形成する開口部の封止を破り、これを開封することができるようにした簡易型濾過器を提案しようとするものである。
更に言えば、支持体の引き伸ばし作業によるカップ容器に対するセット作業を利用して袋体上部に設けられる開口部の開封作業を同時に行えるようにし、これによって従来別々にしていた2つの作業を単一化し、これにより使用の迅速化と、安全な取り扱いが行えるようにしたコーヒー等の簡易型濾過器を提供せんとするものである。
【0015】
前述した様に、袋体に直接支持体を止着し、使用時にこの支持体を引き出すことによってカップに対するセットを行うようにした特許文献1,2に記載の濾過器は、使用する際には支持体を引き出すことになっているが、この引き出しによって袋体の開口部を開放する構造にはなっていない。
つまり、従来の濾過器は、袋体の開口部の開放は、支持体を引き出すのとは別に予め開封作業をすることによって行っており、実際の支持体の引き出しは、開口部を開封した後に行うものにしている。従って、袋体の胴部を拡張すること、開封された開口部を拡張することは、上記支持体の引き出しの時点で可能になっているが、開口部の封止状態を破ってこれを開放し、広げることはできないのである。
【0016】
従来のこの種の濾過器は、前記特許文献にも説明されるように、指で袋体の一部を千切り取る等して開封する方法で行われており、支持体を引き出すことによって開封することにはなっていないのである。
つまり、これらについて前記特許文献1に記載の濾過器では、掛止部材3の掛止片12を引き出したとき、袋本体2の矩形面2a,2bの下部に貼り付く貼着部11を基点にしてアーム部5の上端を外に開いて上記掛止片12との間で逆V字状を作ることによって係止片12をカップの縁に掛け止められる構造になっているが、しかし、袋本体2に直接止着する上記アーム部5は、引き出される上端が袋本体から離れてしまうことから上記掛止片12をカップに掛け止めることはできても袋本体の上記矩形面2a,2bを引っ張ることはできず、従って、この構造では袋本体2の開口部8を強制的に開封することができないのである。
【0017】
また、特許文献2においてもこのことは同様である。これでは支持シート3の先端部12を引き出したとき、これに続く中間部8は袋本体(バッグ本体)に止着する逆T字形部分7の下端の下部境界線10,11を基点にして上端を外に開き、先端部12を引き出す構造になっている。従って、前記特許文献1の場合と同様に、先端部12の引き出しが開口部に直接的に作用することはなく、開口部を強制的に開封することはできないものとなっているのである。
【0018】
本発明は、この様な実情に鑑み、袋体の前後の面に一体に止着され、備え付けられる支持体を濾過器の使用に当ってカップ容器に対するセットに備えて前後に引き出すとき、この支持体の引き出しを利用して袋体の開口部を前後開封方向に引っ張り、これによって封止された開口部を強制的に、且つ自動的に開封することができるようにしたことにある。
つまり、本発明は、濾過器の使用に当たって支持体を前後方向へ引き出す操作に連動させて、袋体の前後の面を引き離し方向に引き出すことができるようにして、これによって支持体のセット作業に併せて袋体の開口部の開封作業が行えるようにした簡易型濾過器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記の目的を達成するため、フィルタ製の袋体の前後の面部に止着される支持体について、下端部を袋体に止着して上向きに設けられる吊設片と、この吊設片の上端部から下向きに延設される係止片から構成して、濾過器の使用に当って上記支持体を引き出すとき、この操作に伴って引き出される吊設片、若しくはこの吊設片の引き出しによって引き出される上記係止片のいずれか、若しくは双方の上端部を、前記袋体の前後の面に剥離可能な状態に接合し、これによって使用に際して上記係止片を引き出したとき、この引き出しによって前記袋体の前後の面を直接的に引き剥がし方向に引っ張り、これによって袋体の上部に形成する開口部を封止する接合部分を破って開封し、更にはこの開封と共に、更なる上記係止片の引っ張りを利用して前記吊設片若しくは係止片の上端部と袋体の前後の面との前記接合を剥離し、これによって上記吊設片の引き起こしを可能にし、上記係止片の引き伸ばしを自由にしてカップ容器に対する当該係止片の掛け止めを行えるようにした簡易型濾過器を提供するものである。
【0020】
更に詳述すれば、本発明は被抽出物を封入するフィルタ製の袋体と、該袋体の前後の面に止着される支持体からなり、前記支持体は下端部を前記袋体の前後の面に止着して上端部を引き起こせるようにした吊設片と、該吊設片の上端部から折り返し下向きに延設される係止片を備え、未使用時には上記両片を前記袋体の前後の面に添わせて偏平にたたみ、使用時には前記係止片の引き出しによって前記吊設片を引き起こし立体的に展開しながら伸長させて該係止片をカップ容器の縁に掛け止め前記袋体をカップ容器の開口部内に吊設状に支持するようにした簡易型濾過器において、
前記支持体は、前記吊設片の上端部及び或は係止片の上端部を前記袋体の上端部に近い前後の面に剥離可能に接合し、前記使用時における前記係止片の引き出しによる第1次的な引き出しによって前記袋体の前後の面を前後に引き離してその上端部に形成する開口部の封止状態を破りこれを開封せしめる一方、更なる引き出しによる第2次的な伸長操作によって前記吊設片及び或は係止片の上端部と前記袋体の前後の面との前記接合を剥離して前記吊設片の引き起こしにより前記係止片を前記カップ容器の縁に掛け止めるようにした簡易型濾過器を提供することにある(請求項1に記載の発明)。
【0021】
この発明は、濾過器の使用に当って袋体を支える支持体を引き出す作業を利用して予め封止される袋体の開口部を開封するものであり、支持体を使用のため引き伸ばすと言う一つの作業によって、つまり支持体によるカップ容器に対するセット作業を通して予め封止されている袋体の開口部の開放を同時に行うようにしたものである。
【0022】
更に言えば、本発明は支持体の引き起こされる吊設片の上端部、若しくはこの吊設片の上端部に連設される係止片の上端部を、袋体の上端部に近い前後の面に剥離可能な状態に接合して、これにより係止片が引き出されたとき、この引き出しに伴わせて袋体の前後の面を前後方向に引っ張り、この引っ張りの力を袋体の前後の面を貼り合わせる等して封止した袋体の開口部に作用させ、その引き剥がしに働くようにして開口部の上記封止状態を破って開封し、開口させるようにしたのである(第1次的引き出し)。
【0023】
そして本発明では、上記袋体の開口部の開封のため作用した係止片の引き出しが更に続けられることによって、その力がこの係止片若しくは吊設片の上端部と袋体の前後の面とを接合する接合部に作用するようにして、この力が接合部の接合力を超えた時点で接合を剥がし、上記両片の上端部を自由にして吊設片の上端部の引き起こしと共に、係止片の引き出しを自由にして支持体を所定の長さに伸長させ、この係止片をカップ容器の縁に係合できるようにして掛け止めセットができるようにしたのである(第2次的引き出し)。
【0024】
前記袋体については、前後の2面を向き合わせた偏平な袋状に形成し、前後の面が寄り合う上縁部を接合して予め封止した開口部を形成し、内部に濾過する所定量の被抽出物、例えばコーヒー粉末等を封入することになる。
上記開口部の封止については、封入されるコーヒー粉末等の軽量な被抽出物の零れ出しを防止できる程度の封止状態であれば足りること、また同時に、この封止は使用時の引き裂きを容易にする上から、小さな引張りによって開封できる脆弱な封止状態であれば足りる。従って、例えば接着剤や加熱接着乃至高周波溶着によって前後の面を接合し封止する場合は、前後の面を引き剥がし方向に引っ張ったとき、簡単に或は容易に剥離する程度の接合であればよい。
【0025】
尚、この袋体の開口部の封止については、後述する様に、袋体と支持体の吊設片乃至係止片の上端部との接合状態と密接な関係があるもので、この両者の間では上記開口部の封止はこれら支持体の片と袋体の前後の面との接合より小さな接合力で封止されることが前提となる。
【0026】
一方、上記袋体の前後の面に止着される支持体は、袋体の前後の面に対称状に止着される。この支持体は、厚紙(尚、本発明では「厚紙」と記すが、これについては紙質のものに限らず、広く所要の剛性を有した厚紙状のシート状物を含むものとする。)を素材にして偏平な状態に形成することになる。実際にはシーとを打ち抜き等の方法によって切り出し形成することになり、前記吊設片と係止片は一枚の厚紙等のシートから連続した状態で切り出し形成されることになる。
【0027】
尚、上記係止片については、吊設片の上端部の左右から折り返すように2片を並行させて下向きに延設し、更にこの2片の下端同士を前記吊設片の下側で連続させて全体をU字型に形成して係止片の強度を高め、併せて上記連続部分を摘み片として支持体の引き出し操作時に利用する。
【0028】
この支持体は、吊設片の下端部を袋体の前後の面の中間部に接着して止め付け、この吊設片の上端部が袋体の開口部に近い位置に臨むように上向きに取り付け、またこの片の上端部から折り返すように下向きに延設される係止片の上端部が袋体の上端部に揃って臨むようにされる。
上記係止片は、支持体をカップ容器の縁に掛け止めるためのものであり、吊設片はこの係止片と袋体との間を繋いで袋体をカップ容器の開口部の内側に吊り下げ状に支持するものである。この両片は使用されるまでは厚紙から切り抜いたままの偏平な状態にして袋体の前後の面に寄り添わせることになる。
【0029】
この様にしてなる上記支持体は、前記吊設片の下端部を袋体に止着する際、併せて上記吊設片の上端部、若しくはこれに接続する上記係止片の上端部のいずれかを、若しくは双方をこの袋体の前後の面に剥離可能な状態に止着し結合させ、この接合によって上記吊設片が係止片の引き出しによって引き出されるとき、その上端部が直ちに袋体の前後の面から離れないようにしてあり、これにより吊設片は一時的に引き起こしが阻止されるものにしてある。
【0030】
上記袋体と支持体との接合は、使用時における係止片の引き出しに際して、最終的には引き剥がされ、係止片の上端部が袋体の表面から離れて所定の長さに伸長することになるが、前記袋体の開口部の封止が破られて開封されるまでは、この接合状態は維持されることになる。
そのため、係止片は最初の引き出し時には、前記接合によって袋体に止め付けられる上端部を基点にして、下端部を引き起こし、片の長さ分だけ袋体の表面から延び出すことになる。そして、この状態において当該係止片が更に引き出され、これによって開口部の封止が破られたとき、例えば前後の面同士の接合が剥がれたとき、開封され開口部を開放することになる(第1次的な引き出し)。
【0031】
次に、この開口部の開放後、更に係止片が引き出されると、この開口部の開口幅が最大となり限界に達して前後の面が緊張したとき、この引き出しの力が前記袋体との接合部に集中することになることからこれを契機にして接合部が剥離し、これに伴って支持体は上記接合の拘束から解かれて所定の長さに伸長することになる(第2次的な引き出し)。 従って、この伸長によって吊設片に接続する係止片は、カップ容器の縁まで引き出され、掛け止められることになる。
【0032】
従って、本発明によれば、濾過器の使用に当ってコーヒーカップ等の容器に対してセットする場合に、被抽出物を封入した袋体の前後の面に折り畳んだ支持体の上記係止片の先端部分を、つまり下端部分を摘んで引き出すと、係止片は袋体の前後の面に接合した上端部を基点にして起き上がり、続けて引き出されると、袋体の前後の面を前後に引き離し、更にこの引き離しが行われると、袋体は前記開口部の封止が破られ開封することになる。
【0033】
そして更に、上記開封に続けて係止片が引き出されると、前記した様に例えば開口部の開口幅が最大になることを限界にして、開口部が緊張し、これを契機に引き出しの力が袋体の前後の面との接合部分に集中することになる結果、剥離が誘導されて支持体の折り畳み状態の拘束から解放され、これにより、係止片の引き出しと共に吊設片の上端部が起き上がって支持体の全体が伸長して、係止片のカップ容器への掛け止めによるセットができることになるのである。
【0034】
この様なことから、本発明においては、袋体の封止された開口部を予め開封して置かなくとも、セットのため袋体の前後の支持体を前後方向に引き出す操作によって、上記開口部を開口させることができ、これに併せて、同時に支持体を引き伸ばしてカップ容器に対する装着をそのまま行うことができることから、単独の支持体の引き出し作業によって袋体の開口作業とカップ容器に対するセット作業が同時に行うことができるのである。
【0035】
上記の如く構成される発明において、更に本発明は、前記袋体は前後の面の上縁部同士を接合して開口部を封止し、その一方前記支持体は、前記吊設片の上端部を上記前後の面の上縁部に臨ませ、該上端部若しくは前記係止片の上端部と前記袋体の前後の面とを前記開口部を封止する接合部の近傍において剥離可能に接合することを特徴とした簡易型濾過器を提供することにある(請求項2に記載の発明)。
【0036】
この発明は、袋体の上端部に形成される開口部を封止するにおいて、袋体を形成する前後の面の上縁部同士の接合によって行う一方、この接合部に近接したところで支持体の吊設片乃至係止片の上端部を接合することによりこの両接合部分を接近させるものであり、これによって係止片の引き出しによる引張り力を袋体の開口部の封止部分に直接的に作用させられるようにして、この封止を効果的に破ることができるものとなる。
【0037】
また本発明は、上記記載の簡易型濾過器において、前記支持体は前記吊設片の上端部を前記袋体の前後の面の上縁部に臨ませると共に、該吊設片の上端部若しくは該上端部から延設する係止片の上端部と前記袋体の前後の面とを剥離可能に接合する一方、前記袋体はその前後の面を上記支持体の接合位置に対応した位置で剥離可能に接合して袋体の開口部を封止することを特徴とした簡易型濾過器を提供することにある(請求項3に記載の発明)。
【0038】
この発明は、支持体の吊設片乃至係止片の上端部を袋体の前後の面の上縁部に臨ませ、且つこれらをこの上縁部において接合すると共に、袋体の開口部の封止をこの接合部に合せて接合することによって、支持体の係止片の引き出しによる力を効果的に開口部の封止部分に導入し、これの引き裂きを容易にし、支持体の接合部の剥離に先立ってより確実に開封できるようにしたものである。これにより、引き出し時における支持体の負担を軽減することができる。
【0039】
また本発明は、上記記載の簡易型濾過器において、前記袋体は上端部に形成する開口部を前後の面の上縁部に沿って線状に接合することにより封止することを特徴とした簡易型濾過器を提供することにある(請求項4に記載の発明)。
【0040】
この発明は、袋体の前後の面を脆弱な状態に接合して開口部の封止を簡略な状態で実現したものである。これによれば、係止片の引っ張りを受けて容易に封止状態を解放することができる。
尚、この場合の上記線状の接合は、前後の面の上縁部に沿って連続したものであっても、また破線状に不連続なものにしてもよい。つまり、ここにおける封止は袋体に封入する被抽出物の零れ出しを防止できる程度の阻止力があれば充分であり、特に強固な封止状態は望まれない。
【0041】
また、本発明は上記記載の簡易型濾過器において、前記袋体の開口部を封止する前後の面の接合面積に対して該袋体の前後の面に接合される前記支持体の吊設片若しくは係止片の上端部との接合面積を大にして両接合部の接合強度に差を設け、第1次的な引き出しにより前記開口部を開封し、第2次的な伸長操作によって前記前後の面に対する吊設片の上端部若しくは係止片の上端部との接合が剥離するようにしたことを特徴とする簡易型濾過器を提供することにある(請求項5に記載の発明)。
【0042】
この発明は、袋体の封止部分と袋体の前後の面に接合する支持体の吊設片乃至係止片の上端部の接合部分との接合の強さをそれぞれの接合範囲に差を設けることによって確実に順番を守って剥離し、開口部の開封の後に支持体の引き伸ばしが実行されるようにしたものである。尚、この場合、接合部は1点における接合に限るものではなく、複数点に分散して接合する場合を含むものであり、それぞれは集合した面積全体同士の比較の中で決められることになる。
【0043】
また、本発明は上記記載の簡易型濾過器において、前記袋体は前後の面の上縁部を接合して封止すると共に、該封止した上縁部に沿って前後の面を上下に切断する切り分け部を形成し、前記係止片の第1次的な引き出し操作によって前記切り分け部を破り袋体の開口部を開放することを特徴とした簡易型濾過器を提供することにある(請求項6に記載の発明)。
【0044】
この発明は、袋体の開口部の封止状態を切り分け部の切断によって開封するようにしたものである。袋体の開口部を前後の面の接合によって封止する一方、この封止部分を避けて前後の面の上部に面を上下に切り分ける切り分け部、例えばミシン線等の切り目線を形成して、支持体の引き出し操作によってこの切り目線を引き破り、袋体の上部を開放して開口部を開口するようにしたものである。
上記切り分け部は、ミシン線として形成することができるが、この場合において、開封を容易にするために切れ目の接続部分を狭くして係止片の引っ張り力が作用したとき容易に破断し、簡単に開口できるようにするとよい。
【0045】
また、本発明は、上記記載の簡易型濾過器において、前記袋体は、フィルタ素材の表面側を強接着性に、裏面側を弱接着性とする少なくとも2層構造のフィルタ素材によって形成し、該袋体の開口部を上記弱接着性の裏面側同士による接合とし、また前後の面に対する前記支持体の吊設片若しくは係止片の上端部との接合は前記表面側の強接着性による接合にして両接合部における接合強度に差を設けたことを特徴とする簡易型濾過器を提供することにある(請求項7に記載の発明)。
【0046】
この発明は、袋体の素材として例えば合成樹脂製の二層構造のフィルタを使用するもので、袋体の裏面側(内面側)に弱接着性のフィルタ層を置いてその開口部において弱接着性の層同士の接合とし、表面側においては強接着性の層と支持体の吊設片乃至係止片の上端部との接合にして、この両者間の接合の強度に差を設けるようにしたものであり、ここでは、このフィルタの素材の選択によって両接合部の接着強度の設定を図り、引っ張りによる剥離の順番を確実に、しかも容易に設定することができるものとなっている。