(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
連続する鉄筋材料を折曲または湾曲して構成された鉄筋コンクリート用補強鉄筋であって、構築される鉄筋コンクリート構造体の内部に配筋されるべき複数の鉄筋で構成される空間を横断面方向に包囲可能な環状部と、この環状部を形成する前記鉄筋材料の一部が該環状部から延出するとともに、該環状部が包囲する前記鉄筋によって構築される前記鉄筋コンクリート構造体とは異なる構造体の内部に配筋される延出部とを備え、前記環状部は、前記鉄筋材料の先端付近が該鉄筋材料の一部と重なるように設けられ、前記延出部は、前記環状部において重なった部分を経由して該環状部から外方に延出してなることを特徴とする鉄筋コンクリート用補強鉄筋。
連続する鉄筋材料を折曲または湾曲して構成された鉄筋コンクリート用補強鉄筋であって、構築される鉄筋コンクリート構造体の内部に配筋されるべき複数の鉄筋で構成される空間の横断面に沿って最も外部に位置する少なくとも4本の鉄筋の外縁に当接しつつ該横断面方向に包囲可能な略四角形の環状部と、この環状部を形成する前記鉄筋材料の一部が該環状部から延出するとともに、該環状部が包囲する前記鉄筋によって構築される前記鉄筋コンクリート構造体とは異なる構造体の内部に配筋される延出部とを備え、前記環状部は、前記鉄筋材料の先端付近が前記略四角形の一つの角部で折曲または湾曲され、該角部から該鉄筋材料先端までの範囲において該鉄筋材料の一部が重なるように設けられ、前記延出部は、前記環状部において重なった部分を経由して該環状部から外方に延出してなることを特徴とする鉄筋コンクリート用補強鉄筋。
前記環状部は、長方形の四辺に沿って形成される略長方形の環状に形成された環状部であり、前記延出部は、前記環状部が形成する略長方形の長辺方向に延出してなる延出部である請求項1または2に記載の鉄筋コンクリート用補強鉄筋。
前記延出部は、所定の延出長さを有する直線部と、前記鉄筋材料の他端近傍を湾曲させた湾曲部とを備えた延出部である請求項1ないし3のいずれかに記載の鉄筋コンクリート用補強鉄筋。
前記延出部は、所定の延出長さを有する直線部と、該所定延出長さの終端で湾曲された湾曲部と、この湾曲部に連続しつつ先端を前記環状部に到達させてなる折返し部とを備えた延出部である請求項1ないし3のいずれかに記載の鉄筋コンクリート用補強鉄筋。
請求項1ないし5のいずれかに記載の鉄筋コンクリート用補強鉄筋を使用する鉄筋構築方法であって、基礎梁または構造壁を構築するコンクリート内に配筋されるべき複数の横筋を前記環状部に予め挿通し、前記横筋を所定の位置に設置するとき、複数の該横筋により構成される空間を包囲するように前記環状部を配置するとともに、前記延出部が環状部の上方に位置する構造体の内部に配筋されるように調整してなることを特徴とする鉄筋構築方法。
請求項6に記載の環状鉄筋を使用する鉄筋構築方法であって、基礎梁または構造壁を構築するコンクリート内に配筋されるべき複数の横筋を前記環状部に予め挿通し、前記横筋を所定の位置に設置するとき、複数の該横筋により構成される空間を包囲するように前記環状部を配置するとともに、前記延出部を構成する前記直線部が環状部の上方に位置するスラブまたは構造壁の内部に配筋されるように調整してなることを特徴とする鉄筋構築方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術は、上下層に連続する構造壁の接合部に位置する梁を貫通するようにシングル筋を配筋し、下層の構造壁と上層の構造壁とが梁を介しつつシングル筋によって定着される構造であった。
【0006】
しかしながら、上記構成の構築方法は、下層の構造壁について、コンクリートを打設する前に定着鉄筋を設けなければならず、定着鉄筋をダブル配筋による場合に比較して、配筋作業を簡便および容易にするものではなかった。また、配筋された鉄筋が集中する柱や梁に定着鉄筋を刺し通すことは、当該柱や梁の鉄筋を集中させることになり、コンクリートの充填性に問題が残るものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、構造壁または基礎に使用される鉄筋を利用して構造壁の定着を可能にし、配筋作業を簡便化するとともに、コンクリートの充填性を良好にし得る鉄筋コンクリート用補強鉄筋および鉄筋構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、鉄筋コンクリート用補強鉄筋にかかる第一の発明は、連続する鉄筋材料を折曲または湾曲して構成された鉄筋コンクリート用補強鉄筋であって、構築される鉄筋コンクリート構造体の内部に配筋されるべき複数の鉄筋で構成される空間を横断面方向に包囲可能な環状部と、この環状部から所定方向に延出する延出部とを備え、前記環状部は、前記鉄筋材料の先端付近が該鉄筋材料の一部と重なるように設けられ、前記延出部は、前記環状部において重なった部分を経由して該環状部から外方に延出してなることを特徴とするものである。
【0009】
上記構成によれば、環状部と延出部とが連続する鉄筋材料で構成されていることから、環状部をフープ筋またはスターラップとして機能させることができると同時に、延出部を上層の他の構造体に挿入させることにより、当該延出部を定着鉄筋として機能させることが可能となる。
【0010】
また、鉄筋コンクリート用補強鉄筋にかかる第二の発明は、連続する鉄筋材料を折曲または湾曲して構成された鉄筋コンクリート用補強鉄筋であって、構築される鉄筋コンクリート構造体の内部に配筋されるべき複数の鉄筋で構成される空間の横断面に沿って最も外部に位置する少なくとも4本の鉄筋の外縁に当接しつつ該横断面方向に包囲可能な略四角形の環状部と、この環状部から所定方向に延出する延出部とを備え、前記環状部は、前記鉄筋材料の先端付近が前記略四角形の一つの角部で折曲または湾曲され、該角部から該鉄筋材料先端までの範囲において該鉄筋材料の一部が重なるように設けられ、前記延出部は、前記環状部において重なった部分を経由して該環状部から外方に延出してなることを特徴とするものである。
【0011】
上記構成によれば、連続する鉄筋材料により略四角形の環状部を形成し、しかも、当該略四角形の全周を鉄筋材料で形成することができる。そして、延出部は、略四角形の一辺を形成しつつ、当該辺の延長線上に延出させることができることから、当該略四角形を形成する環状部を通常のフープ筋またはスターラップとして使用することにより、延出部が適宜位置に配筋されるべき定着鉄筋として機能することとなる。
【0012】
前記各発明において、前記環状部が、長方形の四辺に沿って形成される略長方形の環状に形成された環状部であり、前記延出部が、前記環状部が形成する略長方形の長辺方向に延出してなる延出部である構成としてもよい。
【0013】
上記構成によれば、例えば、鉛直方向に長い寸法で構築される基礎において、そのための鉄筋を設置する場合、前記環状部をスターラップ(あばら筋)として使用することにより、基礎と上層の構造壁との定着鉄筋が基礎表面から立設された状態で配設されることとなる。
【0014】
また、上記各発明において、前記延出部が、所定の延出長さを有する直線部と、前記鉄筋材料の他端近傍を湾曲させた湾曲部とを備えた構成とすることができる。
【0015】
上記構成によれば、直線部は所定の長さを有することにより定着鉄筋として十分に機能させることができ、その先端の湾曲部は、基礎等の表面から立設する直線部の上端の向きを鉛直方向とならないようにすることができる。つまり、環状部を含む部分についてコンクリートを打設した後には、直線部が定着鉄筋として基礎等の表面から突出することとなるため、その先端を湾曲させて定着力を強化させるとともに、鋭利な切断面を有する鉄筋材料先端が上向きに露出することを防止することができるのである。
【0016】
また、上記構成に代えて、前記延出部が、所定の延出長さを有する直線部と、該所定延出長さの終端で湾曲された湾曲部と、この湾曲部に連続しつつ先端を前記環状部に到達させてなる折返し部とを備えた構成としてもよい。
【0017】
上記構成によれば、延出部が直線部と折返し部の二本の鉄筋によって形成されることとなるから、環状部を内部に備える構造体と、これに連続する構造体との間の定着状態は、二本の定着鉄筋によるいわゆるダブル配筋と同様の状態を形成させることができる。特に、直線部と折返し部とは平行に設けられる場合には、まさにダブル配筋と同様である。なお、このような構成においても、延出部を基礎等の表面から立設するように設けた場合、その上端には湾曲部が位置することとなるから、鋭利な切断面を有する鉄筋材料先端が上向きに露出することを防止し得るものである。
【0018】
さらに、上記各発明において、前記延出部が、前記環状部の外方において、任意の方向に角度調整された構成とすることができる。上記構成によれば、延出部の延出方向を調整することにより、上層に構築される構造壁の内部のうち、適宜位置に挿入させることができるとともに、構造壁に限定されず、上層のスラブとの間で定着させることも可能となる。
【0019】
他方、鉄筋構築方法にかかる第一の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の環状鉄筋を使用する鉄筋構築方法であって、基礎梁または構造壁を構築するコンクリート内に配筋されるべき複数の横筋を前記環状部に予め挿通し、前記横筋を所定の位置に設置するとき、複数の該横筋により構成される空間を包囲するように前記環状部を配置するとともに、前記延出部が環状部の上方に位置する構造体の内部に配筋されるように調整してなることを特徴とするものである。
【0020】
上記構成によれば、予め横筋が挿通された環状部は、当該横筋が所定位置に設置されることにより、必然的に横筋により構成される空間を包囲する状態で配置されることとなり、横筋を設置する作業によって、同時に環状部をスターラップとして配筋することが可能となる。さらに、延出部の位置を調整することによって、同時に定着鉄筋の設置も行うことができる。
【0021】
また、鉄筋構築方法にかかる第二の発明は、請求項6に記載の環状鉄筋を使用する鉄筋構築方法であって、基礎梁または構造壁を構築するコンクリート内に配筋されるべき複数の横筋を前記環状部に予め挿通し、前記横筋を所定の位置に設置するとき、複数の該横筋により構成される空間を包囲するように前記環状部を配置するとともに、前記延出部を構成する前記直線部が環状部の上方に位置するスラブまたは構造壁の内部に配筋されるように調整してなることを特徴とするものである。
【0022】
上記構成によれば、この場合においても、横筋を設置することにより、当該横筋が構成する空間を包囲する状態で環状部を設置することとなり、環状部をスターラップとして配筋することができる。そして、延出部を構成する直線部が環状部の外方で折曲されて横方向に延出する場合には、上層のスラブ内において定着させることができる。
【発明の効果】
【0023】
鉄筋コンクリート用補強鉄筋にかかる第一の発明によれば、環状部をフープ筋またはスターラップとして使用することができ、これと同時に、延出部を他の構造体に挿入させることが可能となることから、個別に定着鉄筋を配設する必要がなくなる。これにより、建物全体についての配筋作業の量を削減することができ、当該配筋作業を簡便化することができる。さらに、個別の定着鉄筋を配設しないことから、鉄筋が集中する部分における鉄筋数を削減できることとなり、当該部分のコンクリート充填性を向上させることとなる。
【0024】
また、鉄筋コンクリート用補強鉄筋にかかる第二の発明によれば、前記第一の発明における効果に加えて、環状部をフープ筋またはスターラップとして使用する際の、定着鉄筋として機能する延出部の配置状態を明確にすることができ、配筋作業を一層簡便化することができる。また、環状部の先端付近は略四角形の一つの角部で折曲または湾曲されているので、所定空間を構成する少なくとも4本の鉄筋のうちの1本が当該一つの角部に係止されることとなり、環状部の開放を抑制することができる。
【0025】
鉄筋構築方法にかかる第一の発明によれば、環状部に横筋を予め挿通させることにより、構築すべきコンクリート構造体に必要な数のスターラップを横筋の設置前に準備することができる。さらに、このスターラップは、個別の配筋作業を要することなく設置でき、同時に定着鉄筋をも設置できることから、極めて簡便な配筋作業を実現することができる。
【0026】
また、鉄筋構築方法にかかる第二の発明によれば、前記第一の発明における効果に加えて、上層に構築されるべき構造壁に限らずスラブにおいて定着させることも可能となる。そして、上層の構造壁において定着させることができる構成の鉄筋コンクリート用補強鉄筋と、上層のスラブにおいて定着させることのできる構成の鉄筋コンクリート用補強鉄筋とを混合して使用することにより、両者との間で定着させることも可能となり、これまた配筋作業を簡便化することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の鉄筋コンクリート用補強鉄筋にかかる実施形態を示す斜視図である。
【
図2】鉄筋コンクリート用補強鉄筋の変形例を示す説明図である。
【
図3】鉄筋コンクリート用補強鉄筋の使用形態を示す図である。
【
図4】鉄筋コンクリート用補強鉄筋の使用形態を示す図である。
【
図5】鉄筋コンクリート用補強鉄筋の他の実施形態の使用状態を示す説明図である。
【
図6】鉄筋コンクリート用補強鉄筋の使用形態を示す図である。
【
図7】鉄筋コンクリート用補強鉄筋の使用形態を示す図である。
【
図8】鉄筋コンクリート用補強鉄筋の使用形態を示す図である。
【
図9】本発明の鉄筋構築方法にかかる実施形態を示す説明図である。
【
図10】鉄筋コンクリート用補強鉄筋の他の実施形態を示す説明図である。
【
図11】
図10(a)に示す鉄筋コンクリート用補強鉄筋の使用状態を示す説明図である。
【
図12】
図10(b)に示す鉄筋コンクリート用補強鉄筋の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、鉄筋コンクリート用補強鉄筋にかかる第二の発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の概略を示す図である。この図に示すように、本実施形態の鉄筋コンクリート用補強鉄筋Tは、環状部1と延出部2とを備えた構成となっている。
【0029】
ここで、環状部1は、先端付近11を部分的に残した状態で折曲し、さらに適宜個所で折曲することにより、上部短辺部12、片方長辺部13、下部短辺部14および他方長辺部15が形成され、全体として略長方形状の環状を構成している。上記のうち、他方長辺部15は、連続して環状部1から突出するように延出させており、これが延出部2を構成している。この延出部2と他方長辺部15との境界付近において、先端付近11と他方長辺部15が部分的に重なった状態となっている。
【0030】
このような構成の環状部1は、複数の鉄筋により構成される空間を横断面方向に包囲するように形成されるものである。すなわち、図示のように、長手方向を横向きにして配置される鉄筋(以下、横筋という)4,5が上下に2本ずつ配置されるような場合には、上端筋41,42および下端筋51,52によって、略四角柱形状の空間が形成される。そして、この略四角柱形状の空間の横断面方向の周囲を環状部1によって包囲させるのである。そのため、環状部1の各辺部12,13,14,15によって形成される上記略四角形は、横筋4,5によって形成される略四角柱形状の空間の横断面形状に合わせているのである。
【0031】
このような環状部1による横筋4,5の包囲は、横筋が配置されるべき位置を予め採寸(設計図面上で確認)し、横筋を設置するとき、環状部1が当該横筋4,5を包囲できるように適宜折曲(または湾曲)させるための加工が施されるものである。
【0032】
なお、横筋には、上端筋4および下端筋5のほかにも中間筋6が配設される場合もある。このような中間筋6も適宜間隔を有する2本の横筋61,62として設けられるが、この2本の横筋61,62の最外縁の間隔は、前記上端筋4または下端筋5の最外縁と同じ間隔となるため、環状部1の構成に影響を与えないことが一般的である。ただし、この中間筋61,62の間隔が上下の端筋4,5と異なる寸法で配設される場合には、環状部1の形状は図示の略四角形から略六角形に近似することもあり得る。このように、環状部1が略四角形以外の形状になる場合は第一の発明に係る鉄筋コンクリート用補強鉄筋の実施形態の一例となるものであるが、ここでは、第二の発明の実施形態についてのみ説明する。
【0033】
ところで、本実施形態の延出部2は、環状部1の他方長辺部15に連続した部分で構成されていることから、当該他方長辺部15の軸線方向に一致している。従って、図示のように、上部短辺部12を上位に、下部短辺部14を下位にすることによって、延出部2は、上向きに突出させることができるのである。
【0034】
このような場合、延出部2については種々の形態があり得る。
図2にその一例を示す。すなわち、例えば、
図2(a)に示すように、延出部2の先端21を湾曲させて湾曲部22を構成する形態がある。このような形態の延出部2は、所定の延出長さを保持するため、所定長さの直線部23を有するように構成されるものである。そして、湾曲部22を設けることにより、上向きに突出する先端部分21を下方に向けることができ、鋭利な切断端面を上向きに露出させないことが可能となる。
【0035】
また、
図2(b)に示すように、延出部2を環状部1の外方で折曲してもよい。折曲位置24は、環状部1の外方であることから、環状部1の先端付近11と他方長辺部15が重なる部分3が存在するため、環状部1の構成は前記と同様である。なお、延出部2の延出方向は、環状部1で構成される四辺形と同一平面上であり、かつ、長辺部13,15の軸線方向に対して直交方向としている。これにより、環状部1が設置されて構築される鉄筋コンクリート構造体の上部から水平方向に設けられる構造体に定着させることができる。
【0036】
次に、本実施形態の使用態様について説明する。
図3は、その一例を示す図である。この図に示すように、基礎梁を構成するために軸線を水平方向とする横筋41,42,51,52が配筋される場合において、前記の実施形態にかかる複数の鉄筋Ta,Tb,Tc,Td・・・の環状部1a,1b,1c,1d・・・が各横筋41,42,51,52を包囲するように設けられる。このとき、上端筋41,42と下端筋51,52によって断面略四辺形が形成され、各環状部1a,1b,1c,1d・・・が、それぞれの位置において前記断面略四辺形を包囲する状態とするのである。
【0037】
このように、複数の鉄筋Ta,Tb,Tc,Td・・・を設置することにより、延出2a,2b,2c,2d・・・は、上端筋41,42よりも上方に延出する状態となり、当該基礎部分の上層に構造壁を構築する場合には、その構造壁の内部に侵入することとなるのである。ここで、壁式構造の建物においては、当該構造壁においても配筋およびコンクリート打設によって、鉄筋コンクリート構造体が形成されることから、当該構造壁内部において、延出部2a,2b,2c,2d・・・が定着されることとなる。
【0038】
つまり、より詳細に説明すれば、
図4に示すように、基礎部分Vの上部において、床スラブFと、ベランダ用スラブBと、構造壁Wを構築する場合、基礎部分Vを構成するための配筋のうち、上端筋41,42は、床スラブFおよびベランダ用スラブBの厚さ寸法のほぼ中間に位置することとなり、延出部2は、この両スラブF,Bの厚さ寸法を超えて構造壁Wの内部に到達することができる。このとき、延出部2は環状部1の他方長辺部15と同じ位置で延出される実施形態を使用する場合、基礎部分Vにおける長辺部15のかぶり寸法H1と同じかぶり寸法H2により構造壁Wにおける配筋がなされることとなる。このような配筋状態は、構造壁Wの外側表面の位置を基礎部分Vの外側表面に合わせることによって可能としている。従って、例えば、構造壁Wの中心位置を基礎部分Vの中心位置に合わせる場合には、延出部2の延出位置を調整することが必要となる。
【0039】
さらに、延出部2の延出長さDは、構築される基礎部分Vもしくは構造壁Wの寸法、または、使用される鉄筋群の径の大きさ等により異なる。これは、延出部2を定着鉄筋として機能させるため、その定着力を確保するために必要となる寸法に延出長さDを構成するのである。
【0040】
ここで、延出部2の先端を湾曲させてなる実施形態(
図2(a)参照)の鉄筋コンクリート用補強鉄筋を使用してもよい。このときの使用形態としては、基本的には、
図3に示す状態と同様に、環状部1a〜1dが各横筋41,42,51,52を包囲するように複数の鉄筋Ta〜Tdを設けることによって、延出部2a〜2dを立設した状態で配置させることができる。
【0041】
この場合、
図5に示すように、延出部2は立設され、その先端部分は延出部2の上端付近に位置することとなるが、その上端には湾曲部22が存在し、鉄筋の先端21は、下向きに配置されることとなる。これにより、例えば、基礎部分Vを打設した後で、かつ、構造壁Wを構築する前の状態では、延出部2が基礎部分Vから上向きに突出することとなるが、比較的な鋭利な鉄筋先端21が上向きに露出させないことができるのである。
【0042】
なお、湾曲部22から先端21までの間には僅かながら直線部分が形成される場合があり、その場合、当該直線部分と構造壁端面とのかぶり寸法H3は、延出部2の直線部23についてのかぶり寸法H2と同じ寸法となるように、湾曲部22の曲率を調整することにより、当該直線部分が構造壁Wの鉄筋群の一部を形成させることができる。
【0043】
また、前掲の実施形態の使用態様には、
図6に示すようなものがある。ここで使用する実施形態は、延出部2が環状部1の外方で折曲してなるものである(
図2(b)参照)。この折曲方向は、環状部1による略四辺形と同一平面上で、かつ、他方長辺部15に直角方向としたものである。このような実施形態の使用形態により、複数の鉄筋Ta,Tb,Tc,Td・・・を、前記と同様に、上端筋41,42と下端筋51,52とを包囲するように配筋することにより、延出部2a,2b,2c,2d・・・は、同じ高さで水平方向に突出することとなる。
【0044】
上記使用形態により、
図7に示すように、延出部2は、構造壁Wではなく床スラブFの内部に配筋されることとなる。これにより、延出部2が床スラブFによって定着されることとなることから、構造壁Wとの定着が不要である場合等に使用することができる。また、延出部2をベランダ用スラブBに向かって延出させる場合もあり得る。この場合は、ベランダ用スラブBの傾斜(上面の勾配)に合わせて延出部2の折曲角度を調整することとなるが、それを除けば、床スラブFに向かって延出させる場合と同様である。
【0045】
なお、上記各使用形態を混合させることも可能である。すなわち、
図8に示すように、複数の鉄筋コンクリート用補強鉄筋Ta,Tb,Tc,Td・・・のうち、延出部2a,2cが鉛直方向に延出する形態の鉄筋Ta,Tcと、延出部2b,2dが水平方向に延出する形態の鉄筋Tb,Tdとが、混合して配置される使用形態である。さらに、延出部2b,2dのうち、一方の延出部2bは床スラブ側に延出し、他方の延出部2dはベランダ用スラブBに向かって延出する形態の鉄筋Tb,Tdを配置するのである。これにより、環状部1a,1b,1c,1d・・・を配筋した構造体から三方向に延出部2a,2b,2c,2d・・・が延出することとなり、当該構造体に接合される各建築要素との間で適宜定着を可能にすることができる。
【0046】
次に、鉄筋構築方法の実施形態について説明する。
図9は、本実施例の概略を示す図である。この図に示すように、基礎または構造壁の内部に構築される鉄筋群は、主として、複数の横筋4,5,6a,6b,6c,6dと、これらの周囲を包囲するように配置される環状部1a,・・・,1gとで構成されるところ、これら横筋4,5,6a〜6dを、予め環状部1a〜1gに挿通させるのである(
図9(a))。
【0047】
次に、前記横筋4,5,6a〜6dのうち、下端筋5は所定のスラブ等の表面上に設置し、上端筋4は下端筋5から所定高さに維持しつつ設置することにより、これら上下端筋4,5によって所定空間が形成され、その横断面方向に環状部1a〜1gを包囲させる状態とするのである(
図9(b))。このように、下端筋5を配置した後、上端筋4を上昇させることによって、上端筋4が環状部1a〜1gの上部短辺部を持ち上げ、鉄筋Ta,・・・,Tgは、すべて立設されることとなる。このとき、各鉄筋Ta〜Tgは、立設されるが位置が固定されていないため、横筋4,5,6a〜6dの軸線方向に移動可能な状態となっている。そこで、各鉄筋Ta〜Tgを所定の位置まで移動させ、その位置において横筋との間で結束等により固定するのである。なお、鉄筋Ta〜Tgを立設させる際には、延出部2a,・・・,2gの延出方向が所望の方向(図では鉛直方向)となるように、上端筋4の位置を上昇させる際に調整するのである。
【0048】
このように、延出部2a〜2gの延出方向を所望の方向(鉛直方向)に一致させつつ鉄筋Ta〜Tgを立設させることによって、
図3および
図4に示されているように、下層の構造体(基礎部分V)のための配筋と、上方に延出する定着鉄筋の配設とを同時に行うことができる。
【0049】
上記のように延出部2a〜2gが直線状である鉄筋コンクリート用補強鉄筋を使用する場合は、鉄筋構築方法にかかる第一の発明の実施形態である。これに対し、延出部2a〜2gを所定方向に角度調整した鉄筋コンクリート用補強鉄筋を使用する場合には、鉄筋構築方法にかかる第二の発明の実施形態となるものである。この場合に使用される鉄筋コンクリート用補強鉄筋としては、
図2(b)に示すような形態のものがあり、この場合においても上記と同様に、複数の横筋4,5,6a〜6dの周囲を包囲できるように、予め環状部1a〜1gに横筋4,5,6a〜6dを挿通させ、下端筋5を所定位置に設置し、上端筋4を下端筋5から所定高さに設置するのである。これにより、これら上下端筋4,5によって所定空間が形成され、その横断面方向に環状部1a〜1gを包囲させる状態とすることによって、延出部2a〜2gは、予め調整された角度に向かって突出することとなり、例えば、延出部2a〜2gを床スラブFの内部に配筋させる(
図6参照)ことも可能である。
【0050】
なお、下層の構造体(基礎部分V)を構成する環状部2a〜2gは、スターラップ(あばら筋)として機能することから、当該構造体の長手方向に必要なスターラップの数と同数の鉄筋Ta〜Tgが使用されることとなる。従って、前記のように、予め横筋4,5,6a〜6dが挿通される環状部1a〜1gを有する鉄筋Ta〜Tgは、上記と同数を同時に挿通させておくこととなる。しかし、これらの鉄筋Ta〜Tgの増減は、その環状部1a〜1gに横筋4,5,6a〜6dを挿通するか、抜き取るかによるため、作業直前にその数を調整することができるものである。
【0051】
本発明の実施形態は上記のとおりであるから、鉄筋コンクリート用補強鉄筋にかかる上記実施形態を使用すれば、下層における構築物(鉄筋コンクリート構造体)のための配筋と同時に定着鉄筋をも配筋することができる。しかも、延出部の延出方向を所望の方向とすれば、環状部を横筋で支えることによって前記各状態を形成することができる。
【0052】
そして、鉄筋構築方法にかかる実施形態によれば、環状部に横筋を挿通する工程および横筋を所定の位置に設置する工程によって、環状部および延出部を所定の状態に配置することができるので、配筋作業を簡便にすることができる。
【0053】
本発明の実施形態については、上記に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態とすることができる。例えば、鉄筋コンクリート用補強鉄筋にかかる実施形態として、
図10(a)に示すように、延出部102を二本の鉄筋により形成させた構成とするものであってもよい。
【0054】
上記形態の延出部102は、直線部123と、湾曲部122を介して直線部123に平行な折返し部125とを備えるように構成されており、この場合の折返し部125の先端は環状部101の中央付近に達するように設けられている。このような形態では、延出部102を構成する直線部123が、他方の長辺部115の軸線上に延長して構成されている。すなわち、当該長辺部115と直線部123は一直線上に連続する状態となっている。
【0055】
また、上記形態の鉄筋コンクリート用補強鉄筋の延出部102を円環部101の外方で折曲または湾曲することにより、その突出方向を調整する場合には、例えば、
図10(b)に示すように、円環部201の外方の任意の位置224において直線部223を略直角に折曲してなる構成がある。このような形態の場合には、折曲部分224から先の直線部223は、円環部201の他方の長辺部215に対し略直交方向に延出することとなる。しかも、折返し部225は、上記直線部223に平行な状態となるため、折曲部分224から湾曲部222までの間は、直線部223と折返し部225の二本が平行に延出する状態となるものである。なお、折返し部225は相当程度に長尺であることから、その先端部221は、折曲部分224から反対方向に突出した位置に到達することとなる。
【0056】
上記のような形態の鉄筋コンクリート用補強鉄筋を使用する場合には、円環部101,201が内部に配置される構造体(例えば基礎部分)に連続する構造体(例えば構造壁や床スラブ)に対して、二本の鉄筋で定着させる(いわゆるダブル配筋)構造とすることができる。つまり、
図10(a)に図示する形態については、
図11に示すように、円環部101により基礎部分Vのスターラップを構成することにより、延出部102は構造壁Wの内部鉄筋を構成することとなる。このときの延出部102は直線部123と折返し部125の二本が平行していることから、この両者123,125によってダブル配筋構造となるのである。このとき、折返し部125の先端部121は、円環部101の中央付近に到達しているので、基礎部分Vと構造壁Wとの定着を強化することができる。
【0057】
さらに、
図10(b)に図示する形態については、
図12に示すように、延出部202を床スラブFの内部鉄筋として使用することができる。この場合、床スラブFの内部には、二本の鉄筋を配設することができるとともに、折返し部225が基礎部分Vの上端付近を貫通してベランダ用スラブに到達させることができる。このような構成により、基礎部分Vの上端部と、床スラブFと、ベランダ用スラブBの三構造体を連続した延出部202によって連続させることができる。
【0058】
また、鉄筋構築方法にかかる実施形態の説明では、延出部が鉛直方向に一致して配設される場合についてのみ示したが、延出部が環状部の外方で折曲してなる鉄筋を使用する場合には、当該折曲部から延出する延出部の方向を所望方向に向けて調整することとなる。そして、その向きを同一方向にすることによって
図6および
図7に示すように、延出部を床スラブFなどの水平構造体の内部に配筋することができるものである。また、延出部の延出方向は、鉛直および水平のいずれか一方に限定されるものではなく、鉛直方向、床スラブ方向およびベランダ用スラブ方向のそれぞれに向かうように調整することもできる。このような場合には、
図8に示すような配筋状態が実現できるものである。
【0059】
なお、
図1に示したように、本実施形態の鉄筋材料は、異形鉄筋を代表例として図示しているが、鉄筋材料としては、異形鉄筋に限定されるものではなくその他の種類の鉄筋材料を使用することができる。