(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775388
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】液冷ヒートシンク
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-157253(P2011-157253)
(22)【出願日】2011年7月16日
(65)【公開番号】特開2013-26294(P2013-26294A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】500356371
【氏名又は名称】エルエスアイクーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077883
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 勝郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 信博
(72)【発明者】
【氏名】吉川 隆一
【審査官】
小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−181397(JP,A)
【文献】
特開2010−114115(JP,A)
【文献】
特開2007−121286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34−473
H05K 7/20
F16L 3/00−26
F28D 1/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押し出し材で形成されたベース板の上面に、押し出し方向と直交する方向に間隔をおいて複数の凹条部を形成し、水平部の両端に下方に向かって凸条部をそれぞれ形成した断面コ字形の脚部を、金属管の底部に一体に形成した冷却液通水部の前記凸条部を、ベース板の任意の凹条部に一体に嵌合したことを特徴とする液冷ヒートシンク。
【請求項2】
冷却液通水部の下方に向かって形成した凸条部と、これが嵌合するベース板の凹条部を湾曲して形成したことを特徴とする請求項1記載の液冷ヒートシンク。
【請求項3】
冷却液通水部が、押し出し材で一体に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の液冷ヒートシンク。
【請求項4】
冷却液通水部が、水平部の両端に下方に向かって凸条部をそれぞれ形成した断面コ字形の脚部を、金属管の底部にロウ付で一体に接合して形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の液冷ヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱量を調整できる液冷ヒートシンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にダイオードやサイリスタなどの素子の放熱に用いられている空冷式のヒートシンクは、アルミニウムの押し出し形材でフィンを形成し、素子から発生する熱によりヒートシンク自身の温度が上昇し、その熱をフィンにより放熱するものである。しかしながらフィンから大気への放熱は、熱伝達率が低く発熱量の大きな素子を冷却する場合には、熱伝達率の高い液冷ヒートシンクが用いられている。
【0003】
この液冷ヒートシンクは、冷却液を通水する冷却液通水部として銅管を用い、この銅管をアルミニウム押し出し材で形成したベース板と接合し、ベース板に素子を取付け、冷却液通水部に冷却液となる水を通水する構造である。この銅管とアルミニウムのベース板とを接合する方法としてカシメ接合がある。しかしながら、このカシメ接合では銅管とベース板との接触不良による熱抵抗が高くなる問題がある。
【0004】
このため半円形状の溝を押し出し形成した2枚のアルミニウムのベース板の間に銅管をサンドイッチ状に挟み込んで一体にした液冷ヒートシンクも開発されている(特許文献1)。しかしながらこのサンドイッチ構造では放熱量に応じてベース板を製造しなければならない。このため小さなベース板を複数枚つなぎ合わせた第1プレート群と第2プレート群と形成し、この間で冷却液通水部となる銅管を挟み込み、放熱量に応じてベース板を増やしていく構造も開発されている(特許文献2)。
【0005】
しかしながらこれらサンドイッチ構造では2枚のベース板が必要となり、また蛇行した銅管の曲げ加工が面倒で加工コストが高い問題がある。加えてベース板の溝と銅管の外周との間の密着性が悪いと熱抵抗が高くなる上、放熱能力に応じて銅管の位置や本数を変更することができない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−271863号公報
【特許文献2】特開2008−244275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題を改善し、規格化したベース板を用いて放熱能力に応じて冷却液通水部の位置や本数の変更が可能で、冷却液通水部を銅管だけではなくアルミニウムの押し出し材で形成できると共に、ベース板と冷却液通水部との密着性が良く放熱性に優れた液冷ヒートシンクを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1記載の液冷ヒートシンクは、押し出し材で形成されたベース板の上面に、押し出し方向と直交する方向に間隔をおいて複数の凹条部を形成し、水平部の両端に下方に向かって凸条部をそれぞれ形成した断面コ字形の脚部を、金属管の底部に一体に形成した冷却液通水部の前記凸条部を、ベース板の任意の凹条部に一体に嵌合したことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項2記載の液冷ヒートシンクは、請求項1において、冷却液通水部の下方に向かって形成した凸条部と、これが嵌合するベース板の凹条部を湾曲して形成したことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項3記載の液冷ヒートシンクは、請求項1または2において、冷却液通水部が、押し出し材で一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項4記載の液冷ヒートシンクは、請求項1または2において、冷却液通水部が、水平部の両端に下方に向かって凸条部をそれぞれ形成した断面コ字形の脚部を、金属管の底部にロウ付で一体に接合して形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る請求項1記載の液冷ヒートシンクによれば、冷却液通水部の脚部を構成する凸条部を、上面に凹条部を複数本平行に形成した規格化したベース板の任意の凹条部に嵌合させるので、必要とする冷却能力に応じて冷却液通水部3の本数や位置を調整することができる。更に凸条部が凹条部に嵌合しているので密着して効率よく熱伝達することができると共に、冷却液通水部に衝撃が加わってもベース板からの剥離を防止することができる。
【0013】
また請求項2記載の液冷ヒートシンクによれば、ベース板の凹条部が湾曲して形成されているので、圧入する時に凸条部が、湾曲した凹条部に沿って曲げられながら塑性変形して嵌合して密着性が向上し、更に効率よく熱伝達することができると共に、冷却液通水部に衝撃が加わってもベース板からの剥離を確実に防止することができる。
【0014】
また請求項3記載の液冷ヒートシンクによれば、冷却液通水部が、押し出し材で一体に形成されているので安価に製造することができる。
【0015】
また請求項4記載の液冷ヒートシンクによれば、冷却液通水部が、水平部の両端に下方に向かって凸条部をそれぞれ形成した断面コ字形の脚部を、金属管の底部にロウ付で一体に接合しているので、金属管として銅管を用い、脚部として銅板をプレス成形したものを用いれば、冷却液として安価な水を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明の実施の一形態を
図1ないし
図4を参照して詳細に説明する。図において1は液冷ヒートシンクを示すもので、それぞれアルミニウムの押し出し材で形成されたベース板2と、冷却液通水部3とが一体に嵌合して形成されている。ベース板2は上面に、押し出し方向と直交する方向に間隔をおいて複数の凹条部4…が一定の間隔で複数個形成され、隣接する凹条部4a、4bは、その断面形状が互いに逆向きに湾曲して形成されている。
【0017】
また冷却液通水部3は、水平部6の両端に下方に向かって凸条部7、7をそれぞれ形成した断面コ字形の脚部8がアルミニウム管9の底部に一体に押し出し成形されている。脚部8の凸条部7、7の間隔は、ベース板2の凹条部4a、4bの間隔に等しく形成されている。また凸条部7の幅はベース板2の凹条部4a、4bの幅よりやや大きく形成されている。
【0018】
ベース板2と冷却液通水部3の組立て方法は、
図3に仮想線で示すように押し出し成形した冷却液通水部3の凸条部7、7を、ベース板2の上面に複数本平行に形成した凹条部4a、4b…の隣接する任意の凹条部4a、4bに合わせて押し込むと、凸条部7、7が、湾曲した凹条部4a、4bに沿って曲げられながら塑性変形して嵌合する。この結果、凸条部7、7と凹条部4a、4bが密着して一体となり、効率よく熱伝達することができると共に、冷却液通水部3に衝撃が加わってもベース板2からの剥離を防止することができる。
【0019】
このように規格化したベース板2の上面に、間隔をおいて4本の冷却液通水部3を嵌合させたら、
図4に示すように冷却液通水部3のアルミニウム管9の両端部にジョイント10を取付け、ここに蛇行した流路を形成するようにゴムホース11を接続する。このように形成した液冷ヒートシンク1は背面側に図示しないねじ孔を形成して、ここにダイオードやサイリスタなど発熱素子を取付ける。またゴムホース11の流入側と流出側を図示しないポンプを介して冷却装置に接続し、冷却液として例えばエチレングリコールを用いて連続的に液冷する。
【0020】
このように上面に凹条部4を10本平行に形成した規格化したベース板2の任意の凹条部4に、冷却液通水部3の凸条部7を嵌合させたので、必要とする冷却能力に応じて冷却液通水部3の本数や位置を調整することができる。
【0021】
なお上記説明では
図2に示すように20本の凹条部4を形成し、ここに4本の冷却液通水部3を取付けた場合について説明したが、必要とする冷却能力に応じて、2本の冷却液通水部3を任意の凹条部4に取付けても良く、また最大で10本の冷却液通水部3を取付けることも可能である。また冷却液通水部3の凸条部7やベース板2の凹条部4の本数はこれに限らず、互いに嵌合できる構造であれば、その本数や形状は任意に選定することができる。また冷却液通水部3はアルミニウムの押し出し材に限らず銅の押し出し材で成形したものでも良い。
【0022】
図5は本発明の他の実施の形態を示すもので、冷却液通水部3のアルミニウム管9を角管で形成したものである。
【0023】
図6は本発明の異なる他の実施の形態を示すもので、冷却液通水部3を銅管13の底部に、銅板を断面コ字形に折曲した脚部8をロウ付で一体に接合したものである。これは冷却液を通水する部分が銅管13で形成されているので冷却液として安価な水を使用することができる。
【0024】
なお上記説明では冷却液通水部3を熱伝導性に優れたアルミニウムや銅で形成したものについて示したが、これらの合金でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0025】
なお上記説明ではダイオードやサイリスタなど発熱素子の冷却を行なう場合について説明したが、他の発熱体を冷却する場合にも適用できると共に、温水を通水して加熱する場合にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施の一形態によるベース板と冷却液通水部を嵌合する前の状態を示す液冷ヒートシンクの断面図である。
【
図3】
図2の要部を拡大して示す液冷ヒートシンクの断面図である。
【
図5】本発明の他の実施の形態による冷却液通水部の斜視図である。
【
図6】本発明の異なる他の実施の形態による冷却液通水部の断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 液冷ヒートシンク
2 ベース板
3 冷却液通水部
4 凹条部
6 水平部
7 凸条部
8 脚部
9 アルミニウム管
10 ジョイント
11 ゴムホース
13 銅管
14 ロウ付部