(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、排気の空燃比が燃料リーンや理論空燃比近傍である場合には、銅等の卑金属は、ロジウム等の貴金属に比べて、排気中のNO
xに対する還元能力が低い。すなわち、銅等の卑金属は、排気の空燃比が燃料リーン又は理論空燃比近傍であると、排気中に含まれるNO
xを充分に還元浄化することができない。したがって、銅等の卑金属をNO
x浄化触媒の触媒金属として使用する場合には、排気の空燃比を燃料リッチに制御することが一般に好ましい。
【0007】
しかしながら、銅等の卑金属は、貴金属等に比べて熱的な安定性が低く、したがって燃料リッチ雰囲気で用いられている場合であっても、加速走行時や高速走行時等の排気が高温になる条件において長期間にわたって用いられると、卑金属粒子の粒成長が生じ、排気との接触面積が減少し、それによってNO
x浄化性能が低下する傾向がある。
【0008】
そこで、本発明は、卑金属担持NO
x浄化触媒を用いる排気浄化装置であって、卑金属粒子の粒成長に起因するNO
x浄化性能の低下を効率的に抑制できる排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は下記のようなものである。
(1)排気流路に配置されており、かつ卑金属粒子が金属酸化物担体上に担持されてなる、卑金属担持NO
x浄化触媒、
上記NO
x浄化触媒の下流側で排気流路に配置されている、酸素センサー、及び
上記NO
x浄化触媒に流入する排気の空燃比を制御するための、空燃比制御部
を備えており、かつ
上記NO
x浄化触媒に流入する排気の空燃比を、上記空燃比制御部によって、燃料リッチと燃料リーンとの間で切り換え、そして上記NO
x浄化触媒から流出する排気の酸素濃度を上記酸素センサーで測定することによって、上記NO
x浄化触媒の酸素吸蔵量を測定し、上記酸素吸蔵量が、所定の値よりも大きい場合には、上記NO
x浄化触媒に流入する排気の空燃比を、上記空燃比制御部によって燃料リッチに制御して、上記排気中のNO
xを還元浄化し、かつ上記酸素吸蔵量が、所定の値以下である場合には、上記NO
x浄化触媒に流入する排気の空燃比を、上記空燃比制御部によって燃料リーンに制御して、上記NO
x浄化触媒の再生処理を行う、
排気浄化装置。
(2)上記酸素吸蔵量の測定を、1分以上の間隔を空けて行う、上記(1)に記載の排気浄化装置。
(3)上記卑金属が遷移金属である、上記(1)又は(2)に記載の排気浄化装置。
(4)上記卑金属が銅である、上記(3)に記載の排気浄化装置。
(5)上記金属酸化物担体が、アルミナ、ジルコニア、セリア、セリア−ジルコニア、シリカ、及びチタニアからなる群より選択される、上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の排気浄化装置。
(6)再生処理を行う際に、上記排気が500℃以上の温度を有するようにする、上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の排気浄化装置。
(7)再生処理を行う際に、上記排気が3mol%以上の酸素濃度を有するようにする、上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の排気浄化装置。
(8)上記排気浄化装置が、少なくとも2つの上記NO
x浄化触媒を有し、
上記少なくとも2つのNO
x浄化触媒が、上記排気流路において並列に配置されており、かつ
少なくとも1つの上記NO
x浄化触媒の再生処理を行っている間に、他の少なくとも1つの上記NO
x浄化触媒においてNO
xを還元浄化する、
上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の排気浄化装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の排気浄化装置によれば、卑金属担持NO
x浄化触媒の酸素吸蔵量を、この触媒の劣化の程度の指標として用い、この酸素吸蔵量が所定の値以下になったときに、卑金属担持NO
x浄化触媒の再生処理を行うことによって、卑金属粒子の粒成長に起因するNO
x浄化性能の低下を効率的に抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の排気浄化装置は、排気流路に配置されており、かつ卑金属粒子が金属酸化物担体上に担持されてなる卑金属担持NO
x浄化触媒と、NO
x浄化触媒の下流側で排気流路に配置されている酸素(O
2)センサーと、NO
x浄化触媒に流入する排気の空燃比(A/F)を制御するための空燃比制御部とを備えている。ここで、この排気浄化装置では、NO
x浄化触媒に流入する排気の空燃比を、空燃比制御部によって、燃料リッチと燃料リーンとの間で切り換え、そしてNO
x浄化触媒から流出する排気の酸素濃度を酸素センサーで測定することによって、NO
x浄化触媒の酸素吸蔵量を測定し、酸素吸蔵量が、所定の値よりも大きい場合には、NO
x浄化触媒に流入する排気の空燃比を、空燃比制御部によって燃料リッチに制御して、排気中のNO
xを還元浄化し、かつ酸素吸蔵量が、所定の値以下である場合には、NO
x浄化触媒に流入する排気の空燃比を、空燃比制御部によって燃料リーンに制御して、NO
x浄化触媒の再生処理を行う。
【0013】
なお、本発明に関して、排気が「理論空燃比」であることは、排気組成が、理論空燃比(「ストイキ」ともいう)の混合気の燃焼によって得られる排気組成に対応していることを意味している。また、排気が「燃料リッチ」であることは、排気組成が、理論空燃比よりも小さい空燃比の混合気の燃焼によって得られる排気組成に対応していることを意味している。また更に、排気が「燃料リーン」であることは、排気組成が、理論空燃比よりも大きい空燃比の混合気の燃焼によって得られる排気組成に対応していることを意味している。なお、燃料がガソリンである場合、理論空燃比(A/F)は14.6であり、燃料リッチ空燃比は例えば、14.5以下、14.4以下、14.3以下であることが、NO
xの浄化に関して好ましく、また13.4以上、13.6以上、又は13.8以上であることが、燃費に関して好ましい。
【0014】
(酸素吸蔵量)
本発明の排気浄化装置では、卑金属担持NO
x浄化触媒の酸素吸蔵量を、この触媒の劣化の程度の指標として用いている。すなわち、本発明の排気浄化装置では、卑金属担持NO
x浄化触媒の酸素吸蔵量が、所定の値以下である場合に、卑金属担持NO
x浄化触媒のNO
x浄化性能が劣化していると判断して、再生処理を行っている。したがって、本発明の排気浄化装置によれば、一般的に用いられており、かつ高い信頼性が実証されている酸素センサーを用いて、卑金属担持NO
x浄化触媒の劣化の程度を判断することができる。
【0015】
ここで、理論に限定されるものではないが、卑金属担持NO
x浄化触媒の酸素吸蔵量が、この触媒の劣化の程度に相関している理由としては、下記のような理由が考えられる。すなわち、卑金属担持NO
x浄化触媒に流入する排気の空燃比を、燃料リッチと燃料リーンとの間で切り替えると、卑金属粒子が微細な状態で担持されている卑金属担持NO
x浄化触媒では、微細な卑金属粒子が還元及び酸化され、この還元及び酸化が、触媒の酸素吸蔵作用として現れると考えられる。これに対して、卑金属粒子が焼結して粗大粒子になっている卑金属担持NO
x浄化触媒では、同様に空燃比を燃料リッチと燃料リーンとの間で切り替えた場合にも、卑金属粒子の還元及び酸化が起こりにくく、あるいは還元及び酸化される体積が減少しこれが、触媒の酸素吸蔵量の減少として現れると考えられる。
【0016】
なお、再生処理を行うか否かの基準としての酸素吸蔵量の「所定の値」は、例えば500℃の排気温度及び14.0の空燃比において、80%以下、90%以下、又は95%以下のNO
x浄化率に相当する酸素吸蔵量として、設定することができる。また、本願発明の排気浄化装置において、卑金属担持NO
x浄化触媒の酸素吸蔵量の測定及びそれによる劣化の評価は、周期的に行うこと、例えば1分以上、3分以上、又は5分以上の間隔を空けて行うことができる。また、この間隔は例えば、24時間以下、10時間以下、5時間以下、1時間以下、又は30分以下にすることができる。
【0017】
(再生処理)
本発明の排気浄化装置では、卑金属担持NO
x浄化触媒の酸素吸蔵量が、所定の値よりも大きい場合には、NO
x浄化触媒が劣化していないと判断し、このNO
x浄化触媒に流入する排気の空燃比を、空燃比制御部によって燃料リッチに制御して、排気中のNO
xを還元浄化する。また、本発明の排気浄化装置では、卑金属担持NO
x浄化触媒の酸素吸蔵量が、所定の値以下である場合には、NO
x浄化触媒が劣化していると判断し、このNO
x浄化触媒に流入する排気の空燃比を、空燃比制御部によって燃料リーンに制御して、このNO
x浄化触媒の再生処理を行う。
【0018】
本発明の装置において、卑金属担持NO
x浄化触媒の卑金属粒子の粒成長、及びこのように粒成長した卑金属粒子を有する卑金属担持NO
x浄化触媒の再生は、
図1の模式図で示すようにして起こると考えられる。
【0019】
すなわち、
図1に示すように、微細卑金属粒子1を担体2に担持してなる卑金属担持NO
x浄化触媒6を、燃料リッチ雰囲気においてNO
xの還元浄化のために用いていると、担体2上の微細卑金属粒子1が粒成長し、それによって粗大卑金属粒子3を有する卑金属担持NO
x浄化触媒7となり、それによってNO
x浄化率が低下する。しかしながら、このような粗大卑金属粒子3は、燃料リーン雰囲気に露出させると、酸化して再分散し、再び燃料リッチ雰囲気に露出させたときに微細な微細卑金属粒子1になり、それによってNO
x浄化触媒が再生される。このように再生されたNO
x浄化触媒6は、燃料リッチ雰囲気においてNO
xの還元浄化のために再び好ましく用いることができる。
【0020】
なお、この再生処理は、所定の温度、例えば約500℃以上、約600℃以上、又は約700℃以上の温度において行うことが、再生処理を促進するために好ましいことがある。また、この再生処理は例えば、900℃以下、又は800℃以下の温度で行うことができる。このような再生処理時の温度を達成するためには、内燃機関等の運転条件を調節して、排気の温度を高めること、電気ヒータのような加熱部によってNO
x浄化触媒を加熱すること等ができる。
【0021】
また、この再生処理は、NO
x浄化触媒を少なくとも部分的に再生することができる任意の時間にわたって行うことができ、例えば1秒以上、3秒以上、5秒以上、10秒以上、1分以上であって、60分以下、30分以下、10分以下、又は5分以下の時間にわたって実施することができる。
【0022】
また更に、この再生処理は、排気の酸素濃度が3mol%以上、5mol%以上、10mol%以上になるようにして、行うことができる。また、再生処理の際の酸素濃度は、例えば50mol%以下、30%以下、又は25%以下であってよい。このような酸素濃度は、空燃比制御部による制御によって達成できる。具体的には例えば、このような酸素濃度は、空燃比制御部によって、内燃機関等の燃焼装置に供給される酸素及び/又は燃料の量を調節して達成できる。
【0023】
(用途)
本発明の排気浄化装置は、内燃機関のような燃焼装置からの排気中におけるNO
xの還元浄化のために用いることができる。このような内燃機関としては特に、自動車用エンジン、例えば自動車用ガソリン及びディーゼルエンジンを挙げることができる。
【0024】
(卑金属担持NO
x浄化触媒)
本発明に関して、卑金属担持NO
x浄化触媒は、卑金属粒子が金属酸化物担体に担持されているNO
x浄化触媒である。
【0025】
ここで、卑金属としては、遷移金属、特にチタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、及び銀、より特に銅を用いることができる。また、担体としては、金属酸化物担体として一般に用いられる任意の金属酸化物、例えばアルミナ(Al
2O
3)、ジルコニア(ZrO
2)、セリア(CeO
2)、セリア−ジルコニア(CeO
2−ZrO
2)、シリカ(SiO
2)、チタニア(TiO
2)を用いることができる。
【0026】
(酸素センサー)
本発明に関して、酸素センサーは、排気中の酸素濃度を測定可能な任意のセンサーであってよい。このような酸素センサーとしては、自動車からの排気中の酸素濃度を測定するために用いられている酸素センサー、特にジルコニアを酸素イオン伝導体として用いる酸素センサーを挙げることができる。
【0027】
(空燃比制御部)
本発明に関して、空燃比制御部は、電子制御ユニット(ECU)、例えば内燃機関に供給される混合気の空燃比を調節することによって排気の空燃比を調節する電子制御ユニットであってよい。ここで、このような混合気の空燃比の調節は、燃料噴射弁から噴射される燃料の量を調節すること、混合気に含有される空気の量を調節すること等によって達成できる。
【0028】
(実施態様)
以下、図面を参照して、本発明の排気浄化装置の好ましい実施態様についてより詳しく説明するが、以下の説明は、本発明の好ましい実施態様の単なる例示を意図するものであって、本発明をこのような特定の実施態様に限定することを意図するものではない。
【0029】
(第1の実施態様)
図2は、内燃機関からの排気の浄化に関する本発明の排気浄化装置の第1の実施態様を模式的に示した図である。
【0030】
図2において、内燃機関10の排気側は、排気流路11を介して卑金属担持NO
x浄化触媒12に連結され、さらにこのNO
x浄化触媒12の出口部は、排気流路13に連結されている。なお、矢印10
in及び10
outはそれぞれ、内燃機関10に供給される混合気及び内燃機関10から出る排気の流れ方向を示している。
【0031】
この実施態様では、NO
x浄化触媒12から流出する排気中の酸素濃度を検出するための酸素(O
2)センサー14が、排気流路13に取り付けられている。また、排気の空燃比は、空燃比制御部としての電子制御ユニット(ECU)15により制御されている。
【0032】
(第1の実施態様−操作)
この実施態様では、卑金属担持NO
x浄化触媒12の酸素吸蔵量を、酸素センサー14によって測定する。このように測定された酸素吸蔵量が、所定の値よりも大きい場合には、NO
x浄化触媒が劣化していないと判断して、電子制御ユニット15によって排気の空燃比を燃料リッチに制御して、NO
x浄化触媒12によって排気中のNO
xを還元浄化する。また、このように測定された酸素吸蔵量が、所定の値以下である場合には、NO
x浄化触媒12が劣化していると判断して、電子制御ユニット15によって排気の空燃比を燃料リーンに制御して、NO
x浄化触媒12の再生処理を行う。
【0033】
(第2の実施態様)
図3は、内燃機関からの排気の浄化に関する本発明の排気浄化装置の第2の実施態様を模式的に示した図である。
【0034】
図3において、内燃機関20は、第1〜第4気筒21〜24を有しており、これら各気筒21〜24にはそれぞれ、燃料噴射弁21a〜24aが設けられている。第1及び第4気筒21及び24は、排気流路25を介して、第1の卑金属担持NO
x浄化触媒27に連結されており、また第2及び第3気筒22及び23は、排気流路26を介して、第2の卑金属担持NO
x浄化触媒28に連結されている。また、第1及び第2のNO
x浄化触媒27及び28の出口部はそれぞれ、排気流路29及び30に連結され、これらの排気流路29及び30は、さらに下流側において共通の1つの排気流路31に合流している。なお、矢印20
in及び20
outはそれぞれ、内燃機関20に供給される混合気及び内燃機関20から出る排気の流れ方向を示している。
【0035】
この実施態様では、第1及び第2のNO
x浄化触媒27及び28から流出する排気中の酸素濃度を検出するための酸素センサー32及び33が、排気流路29及び30にそれぞれ取り付けられている。
【0036】
(第2の実施態様−操作)
図4は、本発明の排気浄化装置の第2の実施態様についての、操作のフローチャートである。
【0037】
図4で示されているように、まず初めにステップ101では、酸素センサー32によって、第1の卑金属担持NO
x浄化触媒27の酸素吸蔵量C
1を測定する。その後、ステップ201において、第1のNO
x浄化触媒27の測定された酸素吸蔵量C
1が、所定の値C
p以下であるか否かを判定し、測定された値C
1が、所定の値C
p以下である(C
1≦C
p)場合、すなわち第1のNO
x浄化触媒27が、劣化していると判断される場合には、ステップ301に進む。
【0038】
一方で、ステップ201において、第1のNO
x浄化触媒27の測定された酸素吸蔵量C
1が、所定の値C
pよりも大きい(C
1>C
p)場合、すなわち第1のNO
x浄化触媒27が充分な触媒活性を有すると判断される場合には、ステップ102に進んで、第2の卑金属担持NO
x浄化触媒28についての操作を開始する。
【0039】
次に、ステップ301では、第1及び第4気筒21及び24の燃料噴射弁21a及び24aを閉じること、これらの燃料噴射弁21a及び24aから噴出される燃料の量を減らすこと等によって、第1のNO
x浄化触媒27に流入する排気の空燃比を、燃料リーンに制御して、再生処理を開始する。その後、ステップ401では、再生処理が完了したか否かを判定し、再生処理が完了した場合にはステップ501に進む。なお、再生処理完了の判定については、例えば、この再生処理を開始した時点からの経過時間をタイマーによって計測し、このタイマーによって計測される経過時間が所定の時間を超えた時に再生処理が完了したと判断することができる。
【0040】
そして、再生処理が完了した後、ステップ501において燃料噴射弁21a及び24aを開くこと、これらの燃料噴射弁21a及び24aから噴出される燃料の量を増やすこと等によって、第1のNO
x浄化触媒27に流入する排気の空燃比を、燃料リッチに制御して、再生処理を修了する。
【0041】
一方、先に記載したとおり、ステップ201において第1のNO
x浄化触媒27が充分な触媒活性を示していると判断した場合には、ステップ102に進んで第2のNO
x浄化触媒28についての操作を、第1のNO
x浄化触媒27の場合と同様にして行う。
【0042】
上記のとおり、この実施態様によれば、常時、第1及び第2のNO
x浄化触媒27及び28の両方において排気中のNO
xを還元浄化することができる。そして、第1及び第2のNO
x浄化触媒27及び28のうちいずれか一方のNO
x浄化触媒が所定の程度まで劣化した場合には、このNO
x浄化触媒に流入する排気の雰囲気のみを燃料リーン雰囲気に切り換えてこのNO
x浄化触媒の再生処理を実施しつつ、もう一方のNO
x浄化触媒において排気中のNO
xを還元浄化することができる。
【実施例】
【0043】
〈実施例1〉
この実施例では、燃料リッチ及び燃料リーン雰囲気における熱処理が、銅担持アルミナ触媒の銅粒子の粒子径に与える影響について評価した。
【0044】
含浸法によって5質量%の銅(Cu)をアルミナ(Al
2O
3)担体に担持し、120℃で乾燥し、そして600℃で5時間にわたって焼成して、銅担持アルミナ触媒(Cu/Al
2O
3触媒)を得た。
【0045】
この銅担持アルミナ触媒を、1mol%の水素(H
2)及び残部の窒素(N
2)を含有する雰囲気、すなわち燃料リッチ雰囲気において、700℃で10分間にわたって加熱処理した。このようにして加熱処理した銅担持アルミナ触媒の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を
図5(a)に示す。
図5(a)では、数nm程度の粒子径を有する銅粒子が観察された。
【0046】
また、このようにして燃料リッチ雰囲気で加熱処理した銅担持アルミナ触媒を、空気雰囲気、すなわち燃料リーン雰囲気において、500℃で10分間にわたって加熱処理した。このようにして加熱処理した銅担持アルミナ触媒の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を
図5(b)に示す。
図5(b)では、
図5(a)において確認されていた銅粒子が消失していることが観察された。これは、燃料リーン雰囲気での加熱処理によって、銅粒子が原子レベルの非常に微細な粒子に分散化していることを示している。
【0047】
また、このようにして空気中で加熱した銅担持アルミナ触媒を、1mol%の水素及び残部の窒素を含有する雰囲気、すなわち燃料リッチ雰囲気において、700℃でそれぞれ10分間及び50時間にわたって加熱処理した。このようにして加熱処理した銅担持アルミナ触媒の透過型電子顕微鏡(TEM)写真をそれぞれ
図5(c)及び(d)に示す。
図5(c)では、
図5(a)の場合と同様に、数nm程度の粒子径を有する銅粒子が観察された。また、
図5(d)(反転像で示したTEM写真)では、から明らかなように、数十nm、特には約50nmを超える大きな銅粒子(
図5(d)中の白い塊)が多数観察された。
【0048】
〈実施例2〉
この実施例では、燃料リーン雰囲気における再生処理条件が、銅担持アルミナ触媒の銅粒子の粒子径に与える影響について評価した。
【0049】
実施例1と同様に、銅担持アルミナ触媒(Cu/Al
2O
3触媒)を得た。また、評価のために、この銅担持アルミナ触媒をペレット状に成形した。
【0050】
このようにして得たペレット状の銅担持アルミナ触媒を、1mol%の水素(H
2)及び残部の窒素(N
2)を含有する雰囲気、すなわち燃料リッチ雰囲気において、700℃で30分間にわたって加熱処理して、劣化させた。その後、このようにして劣化させた銅担持アルミナ触媒を、空気雰囲気、すなわち燃料リーン雰囲気において、300℃、400℃、500℃、及び600℃で10分間にわたって加熱処理して、再生した。
【0051】
このように燃料リーン雰囲気において劣化させた銅担持アルミナ触媒、及び燃料リーン雰囲気において再生した銅担持アルミナ触媒について、NO
x浄化率を評価した。具体的には、このNO
x浄化率の評価は、このように加熱処理した銅担持アルミナ触媒3.0gに、下記の表1に示す組成の評価用モデルガスを、500℃の温度及び15L/分の流量で流通させ、定常状態に達した際のNO
x浄化率を測定した。なお、下記の表1に示す評価用モデルガスは、空燃比(A/F)が約14.0の排気に相当するよう調製したものである。
【0052】
【表1】
【0053】
NO
x浄化率の評価結果を
図6に示す。
図6の結果から明らかなように、燃料リーン雰囲気において500℃以上の温度で再生処理を行うことで、約1〜5分程度、特には約3〜5分程度で、銅担持アルミナ触媒を有意に再生することができた。
【0054】
〈実施例3〉
この実施例では、銅担持アルミナ触媒を使用する雰囲気が、銅担持アルミナ触媒によるNO
x浄化性能に与える影響について評価した。
【0055】
実施例1と同様に、銅担持アルミナ触媒(Cu/Al
2O
3触媒)を得た。また、評価のために、この銅担持アルミナ触媒をペレット状に成形した。
【0056】
このようにして得たペレット状の銅担持アルミナ触媒に、内燃機関からの排気を600℃及び500℃で供給して、NO
x浄化率を評価した。この評価の結果を、下記の表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
この表2で示されているように、触媒金属として使用される銅を用いる場合、排気の空燃比を、リッチ雰囲気にすることによって、NO
x浄化を促進することができる。
【0059】
〈実施例4〉
この実施例では、NO
x浄化触媒の酸素吸蔵量とNO
x浄化性能との相関について検討した。
【0060】
実施例1と同様に、銅担持アルミナ触媒(Cu/Al
2O
3触媒)を得た。また、評価のために、この銅担持アルミナ触媒を、1.3リットルのハニカム基材(直径103mm、長さ155mm、400セル、4mil)にコートした。銅担持アルミナ触媒のコート重量は150g/基材−リットルであり、したがって銅重量は7.5g/基材−リットルであった。
【0061】
このようにして得た銅担持アルミナ触媒に対して、内燃機関からの排気を500℃で供給して、銅担持アルミナ触媒によるNO
x浄化率を評価した。また、内燃機関において、間欠的に5秒間の燃料カットを行うことによって排気を燃料リーン雰囲気にし、それによって銅担持アルミナ触媒の再生処理を行った。
【0062】
NO
x浄化率を評価を評価するのと併せて、銅担持アルミナ触媒の酸素吸蔵量を評価した。具体的には、銅担持アルミナ触媒に供給する排ガスの組成を、燃料リッチ雰囲気と燃料リーン雰囲気との間で切り替えて、入りガス及び出ガスの酸素濃度を評価し、そして入りガス及び出ガスの酸素濃度及びモデルガス流量から、銅担持アルミナ触媒の酸素吸蔵量を求めた。
【0063】
銅担持アルミナ触媒の酸素吸蔵量とNO
x浄化率との関係を、
図7に示している。
図7からは、NO
x浄化触媒の酸素吸蔵量とNO
x浄化性能とが相関しており、酸素吸蔵量の低下が、NO
x浄化率の低下に対応していることが理解される。