特許第5775393号(P5775393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775393
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】除染システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/18 20060101AFI20150820BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20150820BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20150820BHJP
   A61G 10/00 20060101ALI20150820BHJP
   G21F 9/28 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   A61L2/18
   C02F1/44 K
   C02F1/28 D
   A61G10/00 Z
   G21F9/28 501Z
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-172423(P2011-172423)
(22)【出願日】2011年8月5日
(65)【公開番号】特開2013-34628(P2013-34628A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2013年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIシバウラ
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】釜瀬 幸広
(72)【発明者】
【氏名】早矢仕 文男
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−069400(JP,A)
【文献】 特開2010−264076(JP,A)
【文献】 特開2008−026023(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0085934(US,A1)
【文献】 特開2011−080745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00−2/26
A61L 11/00
G21F 7/00−9/36
A47K 4/00
A62D 3/00
A62D 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質で汚染された人体を、除染部を構成するテント内でオゾン水により除染する除染システムであって、
前記除染部を構成するテント内に、前記オゾン水を複数箇所から吐出可能なシャワー配管と、水受と、すのことを備え、
該シャワー配管に付設したシャワーにより、該オゾン水を掛けることにより、前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成し、
前記除染部を構成するテントには、人体の背丈よりも高い天井部分に空気を給気する給気孔を形成するとともに、該テントの側面下部の、人体の足元部に排気孔を形成し、
該排気孔にはそれぞれ排気ファンを設け、該テント内において下方向の気流を発生させ、
通常は気散しないオゾン水からのオゾンガスが、仮にテント内において気散した場合においても、前記人体が鼻や口から吸引することのないように、該テント内で下方向の気流を発生させるともに、テント内のオゾンガスをテント外に排気すべく構成し、
該排気孔と排気ファンの経路には、それぞれオゾン分解触媒を配置し、前記排気孔から排気されるオゾンガスを酸素に戻し、
該シャワーから吐出されて除染に用いられたオゾン水は水受に集められ、該水受に開口した排水孔からオゾン水再生経路へ排水するように構成した
ことを特徴とする除染システム。
【請求項2】
請求項1に記載の除染システムにおいて、前記水受は、該テント内の下部に配置し、該水受上にすのこを載置し、該テント内において、前記すのこ上に汚染物質で汚染された人が立った状態で人体の除染を行い、除染に用いたオゾン水は、該すのこを通って下方の水受側に流れ、前記除染に用いられ、前記水受で集められ排水孔から排出されたオゾン水を、再度除染システムに使用するオゾン水再生経路に、再生部を備えたことを特徴とする除染システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の除染システムにおいて、前記除染システムに使用されるオゾン水に促進酸化処理をおこなう、促進酸化処理部を備えたことを特徴とする除染システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムに関する技術は公知となっている。前記種々の汚染物質には、例えば、NBC(nuclear、biological、chemical)物質がある。N(nuclear)物質による汚染には、核兵器や原発事故等による放射能汚染がある。B(biological)物質による汚染には、生物兵器による天然痘ウイルスや炭素菌等の汚染がある。C(chemical)物質による汚染には、化学兵器によるサリンやマスタードガス等の汚染がある。このような除染システムでは、テント内に配置されたシャワーから吐出される水を掛けることによって汚染物質で汚染された人体を除染する(特許文献1参照)。つまり、このような除染システムでは、水の水流によって汚染物質を人体から剥離するように洗い流して除染する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−250793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような除染システムでは、汚染物質で汚染された人体を確実に除染するためには、長時間に亙って水を人体に掛け続けることを要し、また、強い水流の水をシャワーから吐出させる必要があった。また、このような除染システムでは、除染に用いた水の排水を処理するにあたって、当該排水に含まれる汚染物質を、目の細かいフィルタでろ過し、消毒剤で殺菌し、また、分解液で分解する等のことがおこなわれていた。
【0005】
本発明は、以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、水によって除染するものに比べて、汚染物質で汚染された人体を容易に除染することができるとともに、排水の処理を容易におこなうことができる、除染システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
請求項1においては、汚染物質で汚染された人体を、除染部を構成するテント内でオゾン水により除染する除染システムであって、前記除染部を構成するテント内に、前記オゾン水を複数箇所から吐出可能なシャワー配管と、水受と、すのことを備え、該シャワー配管に付設したシャワーにより、該オゾン水を掛けることにより、前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成し、前記除染部を構成するテントには、人体の背丈よりも高い天井部分に空気を給気する給気孔を形成するとともに、該テントの側面下部の、人体の足元部に排気孔を形成し、該排気孔にはそれぞれ排気ファンを設け、該テント内において下方向の気流を発生させ、通常は気散しないオゾン水からのオゾンガスが、仮にテント内において気散した場合においても、前記人体が鼻や口から吸引することのないように、該テント内で下方向の気流を発生させるともに、テント内のオゾンガスをテント外に排気すべく構成し、該排気孔と排気ファンの経路には、それぞれオゾン分解触媒を配置し、前記排気孔から排気されるオゾンガスを酸素に戻し、該シャワーから吐出されて除染に用いられたオゾン水は水受に集められ、該水受に開口した排水孔からオゾン水再生経路へ排水するように構成したものである。
【0008】
請求項2においては、請求項1に記載の除染システムにおいて、前記水受は、該テント内の下部に配置し、該水受上にすのこを載置し、該テント内において、前記すのこ上に汚染物質で汚染された人が立った状態で人体の除染を行い、除染に用いたオゾン水は、該すのこを通って下方の水受側に流れ、前記除染に用いられ、前記水受で集められ排水孔から排出されたオゾン水を、再度除染システムに使用するオゾン水再生経路に、再生部を備えたものである。
【0009】
請求項3においては、請求項1または請求項2に記載の除染システムにおいて、前記除染システムに使用されるオゾン水に促進酸化処理をおこなう、促進酸化処理部を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
即ち、本発明によれば、水によって除染するものに比べて、汚染物質(B物質またC物質で汚染された人体)で汚染された人体を容易に除染することができるとともに、排水の処理を容易におこなうことができる。
【0012】
また、すのこと水受は、テント内の下部に配置され、該水受上にすのこを載置し、該テント内において、前記すのこ上に汚染物質で汚染された人が立った状態で人体の除染を行い、除染に用いたオゾン水は、すのこを通って下方の水受側に流れ、該水受は、シャワーから吐出されて除染に用いられたオゾン水を集めて、水受に設けた排水孔からオゾン水再生経路に排水するように構成したので、除染に用いたオゾン水が除染される人の足元に溜まって、当該除染される人の足元が除染されないような状態を回避することができる。
【0013】
また、前記除染部を構成するテントには、人体の背丈よりも高い天井部分に空気を給気する給気孔を形成するとともに、該テントの側面下部の、人体の足元部に排気孔を形成し、該排気孔にはそれぞれ排気ファンを設け、該テント内において下方向の気流を発生させ、通常は気散しないオゾン水からのオゾンガスが、仮にテント内において気散した場合においても、前記人体が鼻や口から吸引することの無いように、該テント内で下方向の気流を発生させるともに、テント内のオゾンガスをテント外に排気すべく構成したので、除染システムでは、排気ファンを動作させることによって、テントの給気孔から空気を給気するとともに、前記テント内の気体を排気孔からテント外に排気する。
このようにして、除染システムでは、排気ファンを動作させることによって、前記テント内の気体をテント外に排気する。
このため、除染システムでは、通常はオゾン水からはオゾンガスが気散しないが、仮に除染部のテント内においてオゾン水からオゾンガスが気散した場合においても、テント内の人が当該オゾンガスを吸引する等して影響を受けないうように、テント内で下方向の気流を発生させるともに、テント内のオゾンガスをテント外に排気することができる。
【0014】
また、除染部のテント内の気体をテント外に排気可能に構成される。除染システムは、除染部のテント内において下方向の気流が発生するように構成され、オゾン分解触媒を配置したので、除染システムでは、前記テント内のオゾンガスをテント外に排気する際に、当該オゾンガスが酸素に戻されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る除染システムの全体的な構成を示したブロック図。
図2】本発明の実施形態に係る除染システムの除染部を示した斜視図。
図3】同じく斜視図。
図4】同じく斜視図。
図5】同じく斜視図。
図6】本発明の実施形態に係る除染システムの再生部を示したブロック図。
図7】本発明の実施形態に係る除染システムの全体的な構成を示したブロック図。
図8】本発明の実施形態に係る除染システムの除染部を示した斜視図。
図9】除染される人を示した斜視図。
図10】同じく斜視図。
図11】本発明の実施形態に係る除染システムの除染部の一部を示した模式図。
図12】同じく模式図。
図13】同じく模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、発明の実施形態に係る除染システム1を、図1から図13を用いて説明する。除染システム1は、種々の汚染物質で汚染された人体を除染するものである。前記種々の汚染物質には、NBC(nuclear、biological、chemical)物質がある。除染システム1は、図1に示すように、タンク2と、オゾン水生成装置3と、除染部4と、を備える。
【0017】
除染システム1のタンク2は、原料水(水)が溜められるものである。タンク2に溜められた原料水は、オゾン水生成装置3に供給される。除染システム1のオゾン水生成装置3は、配管を介してタンク2に接続される。オゾン水生成装置3は、タンク2から配管を介して供給される原料水からオゾン水を生成するものである。ここで、オゾン水とは、水にオゾン(O3)を溶解されてなるものである。オゾン水生成装置3によって生成されたオゾン水は、温度調節装置によって、当該オゾン水を掛けられた人(除染される人)が冷た過ぎるまたは熱すぎる等と感じないような所定の温度に温度調節(例えば、26度〜40度に昇温また降温)されて、除染部4に供給される。
【0018】
除染システム1の除染部4では、汚染物質で汚染された人体の除染がおこなわれる。除染部4は、図1または図2に示すように、テント41と、シャワー42と、水受43と、すのこ44と、を有する。
【0019】
除染システム1では、汚染物質で汚染された人体の除染は、除染部4のテント41内でおこなわれる。除染システム1における除染部4のテント41は、当該テント41内で立った状態で、汚染物質で汚染された人体の除染をおこなうことができるように構成される。除染部4のテント41は、短時間で設営可能に構成される。除染部4のテント41は、例えば、エアーを吹込むことにより数分間内にドーム状の立体構造とすることができ、また、エアーを抜くことにより折畳むことができるようなエアーテントで構成される。
【0020】
除染システム1における除染部4のシャワー42は、配管を介してオゾン水生成装置3に接続されて、温度調節装置によって温度が調節されたオゾン水を吐出可能に構成される。除染部4のシャワー42は、そのテント41内に配置される。除染部4のシャワー42は、そのオゾン水の吐出口がテント41の天井近傍に配置されて、除染対象である汚染物質で汚染された人体に向かって上方からオゾン水を吐出するように構成される。除染システム1における除染部4の水受43は、テント41内に配置される。除染部4の水受43は、シャワー42から吐出されたオゾン水を受けて、当該オゾン水(除染に用いたオゾン水)を水受43の排水孔43aから排水するように構成される。除染システム1における除染部4のすのこ44は、水受43の上に配置される。このようにして、除染システム1は、除染部4のテント41内においてすのこ44の上に汚染物質で汚染された人が立った状態でシャワー42から吐出されるオゾン水が掛けられて汚染物質で汚染された人体の除染がおこなわれるように構成される。以上のようにして、除染システム1は、オゾン水を掛けることによって汚染物質で汚染された人体を除染するように構成される。
【0021】
そして、除染システム1では、人体を汚染する汚染物質がB(biological)物質の場合には、B物質は、前記掛けられたオゾン水によって殺菌されることとなる。人体を汚染する汚染物質がC(chemical)物質の場合には、C物質は、前記掛けられたオゾン水によって分解されることとなる。このように、B物質が殺菌され、また、C物質が分解されるので、除染システム1によれば、水によって除染するものに比べて、B物質またはC物質で汚染された人体を短時間で除染することができ、且つ、強い水流を要さずにB物質またはC物質で汚染された人体を除染することができる。したがって、除染システム1によれば、水によって除染するものに比べて、汚染物質(B物質またC物質)で汚染された人体を容易に除染することができる。
【0022】
また、除染システム1では、人体を汚染する汚染物質がN(nuclear)物質の場合には、N物質は、オゾン水におけるコロイドを凝集する作用によって人体から剥離した後に凝集されることとなる。このため、除染システム1では、除染に用いたオゾン水の排水をろ過する際に、目の細かいフィルタを用いることなく、当該凝集されたN物質を容易に捕集することができ、当該排水からN物質を取除く処理をより容易におこなうことができる。除染システム1では、人体を汚染する汚染物質が抵抗性の弱いB物質の場合には、B物質は消毒されて無害化されるので、前記排水に含まれるB物質の消毒処理が不要となる。人体を汚染する汚染物質が抵抗性の強いB物質の場合には、オゾン水が掛けられてから排水されていく過程においてB物質の消毒が進行するので、前記排水に含まれるB物質のその後の消毒処理を容易におこなうことができる。除染システム1では、人体を汚染する汚染物質が易分解性のC物質の場合は、C物質は分解されて無害化されるので、前記排水に含まれるC物質の分解処理が不要となる。人体を汚染する汚染物質が難分解性のC物質の場合には、オゾン水が掛けられてから排水される過程においてC物質の分解が進行するので、前記排水に含まれるC物質のその後の分解処理を容易におこなうことができる。したがって、除染システム1によれば、N物質が凝集され、B物質が消毒され、また、C物質が分解されるので、水によって除染するものに比べて、前記排水の処理を容易におこなうことができる。なお、オゾンは短時間で酸素に戻るため、除染システム1では、前記排水に対するオゾンの中和処理は不要である。
【0023】
また、除染システム1では、除染部4のテント41内においてすのこ44の上に汚染物質で汚染された人が立った状態で汚染物質で汚染された人体の除染がおこなわれるため、除染に用いたオゾン水は、すのこ44を通って下方(水受43側)に流れることとなる。したがって、除染システム1によれば、除染に用いたオゾン水が除染される人の足元に溜まって、当該除染される人の足元が除染されないような状態を回避することができる。
【0024】
除染システム1の除染部4は、図3に示すように、門型のシャワー配管45をテント41内に配置して備え、門型のシャワー配管45の上部および側部にそれぞれ単数または複数のシャワー42・42・・・を設け、門型のシャワー配管45の上部および側部の複数箇所からオゾン水を吐出可能に構成してもよい。また、除染部4は、図4に示すように、門型のシャワー配管45をテント41内に配置して備え、門型のシャワー配管45の側部に複数のシャワー42・42・・・を設け、門型のシャワー配管45の側部の複数箇所からオゾン水を吐出可能に構成してもよい。このように除染部4を構成することにより、上方および側方から人体の複数箇所に一度にオゾン水を掛けることができ、汚染物質で汚染された人体の除染をより確実におこなうことができる。除染部4のシャワー配管45の側部に複数のシャワー42・42・・・を配置する構成では、頭部にオゾン水が掛からないようにして、当該頭部の汚染物質の除染を拭取りによっておこなってもよい。
【0025】
除染システム1における除染部4は、図5に示すように、オゾン水を吐出可能なハンドシャワー46を備える構成であってもよい。このように構成して、除染部4のハンドシャワー46からオゾン水を吐出させて、汚染物質で汚染された人体に当該オゾン水を掛けることにより、汚染物質(B物質またC物質)で汚染された人体を、より確実に容易に除染することができる。除染部4は、まず、シャワー42からエアーまたは水を吐出させて汚染物質で汚染された人にこれを掛けて予備除染をおこない、次いで、シャワー42からオゾン水による除染をおこなうように構成してもよい。除染部4のテント41は、柱で天幕を支持する構成であってもよい。除染システム1は、オゾン水生成装置3によって生成されたオゾン水の温度を温度調節装置によって温度調節するのではなく、原料水の温度を温度調節装置によって温度調節する構成としてもよい。除染システム1は、車両に組込まれて移動可能に構成してもよい。
【0026】
除染システム1は、除染部4のテント41内の気体をテント41外に排気可能に構成される。除染システム1は、除染部4のテント41内において下方向の気流が発生するように構成される。除染部4のテント41は、図1または図2に示すように、その天井部に給気孔41a・41aが形成されるとともに、その側面の下部に排気孔41b・41bが形成されて構成される。除染部4のテント41の排気孔41b・41bには、それぞれ排気ファン47・47が設けられる。そして、除染システム1では、排気ファン47・47を動作させることによって、テント41の給気孔41a・41aから空気を給気するとともに、前記テント41内の気体を排気孔41b・41bからテント41外に排気する。このようにして、除染システム1では、排気ファン47・47を動作させることによって、テント41内において下方向の気流を発生させて、前記テント41内の気体をテント41外に排気する。このため、除染システム1では、通常はオゾン水からはオゾンガスが気散しないが、仮に除染部4のテント41内においてオゾン水からオゾンガスが気散した場合においても、テント41内の人が当該オゾンガスを吸引する等して影響を受けないうように、テント41内で下方向の気流を発生させるともに、テント41内のオゾンガスをテント41外に排気することができる。
【0027】
除染システム1における除染部4のテント41の排気孔41b・41b(排気ファン47・47)には、それぞれオゾン分解触媒48・48が設けられる。除染部4のオゾン分解触媒48は、前記除染部4のテント41の排気孔41bから排気されるオゾンガスを酸素に戻すことができるように構成される。このように構成されることにより、除染システム1では、前記テント41内のオゾンガスをテント41外に排気する際に、当該オゾンガスが酸素に戻されることとなる。また、除染システム1における除染部4のテント41の給気口と排気口とに、それぞれヘパフィルターを配置してもよい。
【0028】
除染システム1は、図1に示すように、再生部5を備える。除染システム1の再生部5では、前記排水(除染に用いたオゾン水の排水)が原料水に再生される。再生部5は、図6に示すように、粗フィルタ51と、活性炭吸着フィルタ52と、逆浸透膜浄化装置53と、汚れセンサ54と、を有する。
【0029】
除染システム1における再生部5の粗フィルタ51は、前記排水から粒径の大きい不純物(ゴミ、および、前記凝集されたN物質等)を取除くものである。再生部5の活性炭吸着フィルタ52は、粗フィルタ51の下流側に配置される。再生部5の活性炭吸着フィルタ52は、前記粗フィルタ51で取除けなかった粒径の小さい不純物を前記排水から取除くものである。再生部5の逆浸透膜浄化装置53は、活性炭吸着フィルタ52の下流側に配置される。再生部5の逆浸透膜浄化装置53は、前記活性炭吸着フィルタ52で不純物が取除かれた排水を、原料水として再利用できるような水質に浄化する。再生部5の汚れセンサ54は、前記逆浸透膜浄化装置53によって浄化された排水の浄化度合(汚れ度合)を検知するものである。
【0030】
このようにして、除染システム1の再生部5では、再生部5の粗フィルタ51および活性炭吸着フィルタ52によって、前記排水から不純物が取除かれ、再生部5の逆浸透膜浄化装置53によって前記不純物が取除かれた排水が浄化され、再生部5の汚れセンサ54によって前記浄化された排水の浄化度合(汚れ度合)が検知される。そして、再生部5の汚れセンサ54によって検知された排水の浄化度合が所定の基準値を満たしている場合には、当該排水は、タンク2に供給されて原料水として再利用される。
【0031】
以上のようにして、除染システム1では、前記排水が、再生部5において原料水に再生されて、タンク2に供給されて再利用される。このため、除染システム1では、多量の原料水を確保することを要さずに、汚染物質で汚染された人体の除染を多量におこなうことができる。したがって、除染システム1によれば、原料水を確保(補給)することが困難な状態でも、汚染物質で汚染された多量の人体の除染をおこなうことができる。
【0032】
また、除染システム1では、N物質が凝集され、B物質が消毒され、また、C物質が分解されるので、水によって除染するものに比べて、再生部5における前記排水の原料水への再生を容易におこなうことができる。
【0033】
なお、除染システム1における再生部5の汚れセンサ54によって検知された排水の浄化度合が所定の基準値を満たしていない場合には、当該排水は、廃水として廃水槽6に供給される。そして、前記廃水槽6に供給された廃水は、その下流側の廃水処理装置7で廃水処理(凝集されたN物質を取除く処理、B物質の消毒処理、または、C物質の分解処理)がおこなわれて、廃棄されることとなる。
【0034】
また、除染システム1は、図7に示すように、オゾン水に促進酸化処理をおこなう促進酸化処理部8を備えて構成してもよい。促進酸化処理部8では、オゾン水生成装置3によって生成されたオゾン水が除染部4のシャワー42から吐出される前に、オゾン水に促進酸化処理がおこなわれる。
【0035】
このようにオゾン水に促進酸化処理をおこなう促進酸化処理部8を備える構成とすることにより、除染システム1では、オゾン水による汚染物質の除染効果が高まるため、水によって除染するものに比べて、汚染物質(B物質またC物質)で汚染された人体をさらに容易に除染することができる。また、このようにオゾン水に促進酸化処理をおこなう促進酸化処理部8を備える構成とすることにより、除染システム1では、オゾン水内においてOHラジカル等の活性種が生成され、オゾン水によるコロイドを凝集する作用等が向上する。このため、除染システム1では、人体を汚染する汚染物質がN物質の場合には、より確実にN物質が凝集されることとなり、前記排水をろ過する際に、より容易にN物質を捕集することができ、当該排水からN物質を取除く処理をより容易におこなうことができる。
【0036】
除染システム1の促進酸化処理部8においてオゾン水に促進酸化処理をおこなう方法として、オゾン水に添加剤(例えば、過酸化水素、また、界面活性剤等)を加えるものがある。このように促進酸化処理部8においてオゾン水に促進酸化処理をおこなう場合には、例えば、除染部4のシャワー42から吐出される直前にオゾン水に当該添加剤を加えるようにする。また、促進酸化処理部8においてオゾン水に促進酸化処理をおこなう方法として、オゾン水に紫外線を照射するものがある。このように促進酸化処理部8においてオゾン水に促進酸化処理をおこなう場合には、例えば、除染部4のシャワー42から吐出される直前の配管に紫外線を透過可能な石英ガラスを用いる。そして、紫外線ランプから前記配管内に向かって紫外線を照射することによって、当該配管内を流れるオゾン水に紫外線を照射するようにする。
【0037】
除染システム1における除染部4は、汚染物質で汚染された複数の人体の除染を同時におこなうことが可能に構成してもよい。このような構成の場合、例えば図8に示すように、除染部4のテント41は、複数の人が並んで同時に中に入ることができるような横長状に構成される。除染部4のテント41は、長手方向の一端部を入口とし、他端部を出口として構成される。除染部4の水受43およびすのこ44は、テント41の長手方向に沿ってテント41の入口近傍から出口近傍に亘るようにそれぞれ配置される。除染部4のシャワー42は、テント41の長手方向に沿ってテント41の入口近傍から出口近傍に亘って複数台のシャワー42・42・・・が配置される。このように構成される除染システム1では、汚染物質で汚染された人は、除染部4のテント41の入口からテント41内に入ってからテント41の出口に至る間に、複数台配置されたシャワー42・42・・・のうち入口側に配置されるシャワー42から順次オゾン水が掛けられて除染される。そして、このように構成される除染システム1では、汚染物質で汚染された複数の人が並んで除染部4のテント41の入口からテント41内に順次入っていき、テント41の出口から順次出ていくことによって、汚染物質で汚染された複数の人体の除染を同時におこなうことができる。なお、この際、除染部4における複数台配置されたシャワー42・42・・・のうちテント41の入口側のシャワー42でエアーまたは水による予備除染をおこない、テント41の出口側のシャワー42でオゾン水による除染をおこなうように構成してもよい。
【0038】
汚染物質で汚染された人に、ゴーグル9と口マスク10とをそれぞれ装着させた状態で、除染システム1の除染部4で汚染物質の除染をおこなうようにしてもよい(図9参照)。また、汚染物質で汚染された人に、顔面を覆うようなガスマスク11を装着させた状態で、除染システム1の除染部4で汚染物質の除染をおこなうようにしてもよい(図10参照)。このようにすることにより、通常はオゾン水からはオゾンガスが気散しないが、仮に除染部4のテント41内においてオゾン水からオゾンガスが気散した場合においても、汚染物質で汚染された人がオゾンガスを吸引する等によって影響を受けることなく、汚染物質の除染をおこなうことができる。
【0039】
除染システム1の除染部4は、排気管内にシャワー42を配置し、シャワー42におけるオゾン水の吐出口の下方に形成される排気管の開口から除染部4のテント41内の気体を吸引してテント41外に排気可能に構成してもよい。例えば図11に示すように、除染部4は、横方向に配置される排気管61内に排気ファン62とシャワー42とが配置され、排気管61の下面の一部に開口61aが形成されて構成される。排気管61の開口61aは、シャワー42の吐出口の近傍の下方(オゾン水の吐出口の下方)に形成される。そして、除染部4は、排気ファン62を動作させることによって、排気管61の開口61aから、除染部4のテント41内の気体を吸引し、排気管61を介してテント41内の気体をテント41外に排気するように構成される。このため、除染システム1では、通常はオゾン水からはオゾンガスが気散しないが、仮に除染部4のテント41内においてオゾン水からオゾンガスが気散した場合においても、テント41内の人が当該オゾンガスを吸引する等して影響を受けないうように、排気管61の開口61aから除染部4のテント41内のオゾンガスを吸引し、排気管61を介してテント41内のオゾンガスをテント41外に排気することができる。なお、除染部4は、シャワー42から吐出されるオゾン水を排気管61の開口61aから排気管61外に吐出するように構成される。
【0040】
また例えば、図12に示すように、除染部4は、縦方向に配置される排気管71内に排気ファン(不図示)とシャワー42とが配置されて構成される。排気管71の下方の開口71aは、シャワー42の吐出口の近傍の下方(オゾン水の吐出口の下方)に配置される。そして、除染部4は、排気ファン(不図示)を動作させることによって、排気管71の開口71aから、除染部4のテント41内の気体を吸引し、排気管71を介してテント41内の気体をテント41外に排気するように構成される。このため、除染システム1では、通常はオゾン水からはオゾンガスが気散しないが、仮に除染部4のテント41内においてオゾン水からオゾンガスが気散した場合においても、テント41内の人が当該オゾンガスを吸引する等して影響を受けないうように、排気管71の開口71aから除染部4のテント41内のオゾンガスを吸引し、排気管71を介してテント41内のオゾンガスをテント41外に排気することができる。なお、除染部4は、シャワー42から吐出されるオゾン水を排気管71の開口71aから排気管71外に吐出するように構成される。
【0041】
また例えば、図13に示すように、除染部4は、横方向に配置される排気管81内に排気ファン82と門型のシャワー配管49の上部が配置され、排気管81の下面に複数の開口81a・81a・・・が形成されて構成される。排気管81の開口81aは、シャワー配管49の吐出口49aの近傍の下方(オゾン水の吐出口の下方)に形成される。そして、除染部4は、排気ファン82を動作させることによって、排気管81の複数の開口81a・81a・・・から除染部4のテント41内の気体を吸引し、排気管81を介してテント41内の気体をテント41外に排気するように構成される。このため、除染システム1では、通常はオゾン水からはオゾンガスが気散しないが、仮に除染部4のテント41内においてオゾン水からオゾンガスが気散した場合においても、テント41内の人が当該オゾンガスを吸引する等して影響を受けないうように、排気管81の開口81aから除染部4のテント41内のオゾンガスを吸引し、排気管71を介してテント41内のオゾンガスをテント41外に排気することができる。なお、除染部4は、排気管81の開口81a・81aから門型のシャワー配管49の吐出口49a・49aから吐出されるオゾン水を排気管81外に吐出するように構成される。また、除染部4における門型のシャワー配管49は、その上部に複数のオゾン水の吐出口49a・49aが下方に向かって開口されて構成される。
【符号の説明】
【0042】
1 除染システム
2 タンク
3 オゾン水生成装置
4 除染部
5 再生部
41 テント
42 シャワー
43 水受
44 すのこ
図1
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図3
図4
図5
図6
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図13