特許第5775403号(P5775403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775403
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】配線接触構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/03 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   H01R13/03 Z
   H01R13/03 D
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-198131(P2011-198131)
(22)【出願日】2011年9月12日
(65)【公開番号】特開2013-62053(P2013-62053A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2014年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】森 喜久男
(72)【発明者】
【氏名】土屋 和春
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−212020(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0299841(US,A1)
【文献】 特開平05−266933(JP,A)
【文献】 特開2010−073625(JP,A)
【文献】 特開平08−022858(JP,A)
【文献】 特開2013−204102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波の信号伝送に用いられる高速伝送コネクタにおける導体配線同士の配線接触構造であって、
第1の導体配線の断面と、第2の導体配線の断面とが接触する部分に形成された空隙に、誘電性ペーストが充填されていることを特徴とする配線接触構造。
【請求項2】
前記第1の導体配線の断面と、前記第2の導体配線の断面とは、メッキによる表面処理がなされていることを特徴とする請求項1に記載の配線接触構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線接触構造に係り、特に高周波の信号伝送に用いられる高速伝送コネクタにおける導体配線同士の配線接触構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車の車両では、各種のデータが高速伝送で通信されるようになっており、それに伴い、コネクタに対する要求が厳しくなっている。高周波信号の高速伝送配線に用いられるコネクタにあっては特に厳しく、高密度化や小型化の要請も強いことから様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば、端子の弾性変形によって可動ハウジングを固定ハウジングに対して移動自在に支持した構成において、高周波信号の高速伝送と端子の高密度化を実現する技術がある(例えば、特許文献1参照)。具体的には、各端子の各ハウジング間に露出する部分と各ハウジングで覆われた他の部分のインピーダンスとの差を小さくする構成とし、各端子内のインピーダンスの不整合による電気信号の乱れを効果的に防止している。その結果、高周波信号の高速伝送が可能となる。また、各端子が弾性変形する際に隣接する端子同士が接触しても、樹脂の被覆によって短絡を防止することができるので、各端子のピッチを小さくすることで、端子の高密度化を図っている。また、高密度化の観点において、グランド/信号用のコンタクト部材の数を最大化しかつバックパネル用の電気的又は機械的完全性を害さない用に配慮されたコネクタシステムがある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−212020号公報
【特許文献2】特開2008−300365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両用高速伝送コネクタにおいては形状の小型化・高密度化からバネの低接触荷重化が求められている。しかし、接触荷重と接触部に生じる電気抵抗は反比例する関係にあることから、電気抵抗を上昇させない低荷重化が課題となっていた。つまり、接触荷重の低減と接触抵抗の低減の両立が求められていた。例えば、円筒状の導体について断面同士を接触することで電気的接続を確保する構造では、両導体の接触荷重を十分に高くすることで、実際の接触面積を大きくするようにしていた。図4に、一般的な、導体同士の接触構造(コネクタ接続構造110)の断面図を示す。図4(b)は、図4(a)の断面構造に、電流の流れを矢印で模式的に示したものである。図示のように、コネクタ接続構造110では、第1の配線20と第2の配線30とを接続するもので、導体22、32の断面部分のメッキ部24、34が、接触部26、36を構成している。ここで、接触部26、36は、表面荒さの観点から、図示のように突形状となっており、接触した状態にあっても空隙部50が形成されている。そして従来では、接触抵抗を低減するために、空隙部50を極力少なくするように考慮され、例えば、弾性力(バネ構造)や嵌合力を用いた接触荷重を強くすることで、空隙部50を潰し接触面積を拡大させたり、空隙部50の導電性ペーストを塗布して、実質的な電気抵抗を低下させたりしていた。しかし、上述の通り、コネクタの小型化等の観点から、接触荷重は小さくしたいという要望があった。また、導電性ペーストを塗布する点については、端子の高密度化により端子間の距離が近くなっており、導電性ペーストの流動性による短絡発生回避の対策が必要となり別の技術が必要となっていた。
【0006】
本発明の目的は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、高周波の信号伝送に用いられる高速伝送コネクタにおける導体配線同士の配線接触構造であって、第1の導体配線の断面と、第2の導体配線の断面とが接触する部分に形成された空隙に、誘電性ペーストが充填されている
前記第1の導体配線の断面と、前記第2の導体配線の断面とは、メッキによる表面処理がなされてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高周波の信号伝送に用いられる高速伝送コネクタにおける導体配線同士の配線接触構造において、接触荷重の低減と接触抵抗の低減の両立を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る、コネクタ接続構造を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る、コネクタ接続構造を示す断面図である。
図3】実施形態および従来技術に係る、コネクタ接続構造における接触抵抗の等価回路を示した図である。
図4】従来技術に係る、コネクタ接続構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係るコネクタ接続構造10を示す斜視図である。図1(a)は第1および第2の配線20、30の接触前の図であり、図1(b)は第1および第2の配線20、30の接触後の図である。コネクタ接続構造10は、高周波の信号伝送に用いられる高速伝送コネクタに適用されるものであり、ここでは、所定の高密度化された多数のコネクタ接続において、ひとつの接続構造を抽出して示している。
【0011】
図示のように、コネクタ接続構造10は、第1の配線20の断面と第2の配線30の断面とを接触させることで接続した構造である。接触荷重Fは、コネクタの嵌合の際に作用する力等によって作用される。なお、バネ摺動による接触荷重Fが作用する構造にも適応できる。
【0012】
具体的には、第1の配線20は、断面が円形状の筒状の導体22と、導体22の断面部分の端部がメッキ処理されたメッキ部24とを備える。メッキ部24の表面が第2の配線30との接触部26となる。断面は、例えば、直径1mm程度であり、第2の配線30の断面と同一である。
【0013】
同様に、第2の配線30は、断面が円形状の筒状の導体32と、導体32の断面部分の端部がメッキ処理されたメッキ部34とを備える。メッキ部34の表面が第1の配線20との接触部36となる。
【0014】
図2に、第1の配線20と第2の配線30とが接触した際のコネクタ接続構造10の断面構造を示す。なお、図2(b)は、図2(a)の断面構造に、電流の流れを矢印で模式的に示したものである。図2(b)では、図4(b)と比較して同じ接触荷重であっても電気抵抗が小さい(電流が大きく流れるように矢印を示している)。
【0015】
第1の配線20と第2の配線30との接続する際に、それらの間に誘電性ペースト40が塗布される。誘電性ペースト40の塗布後、第1の配線20と第2の配線30の各接触部26、36が突き当てられ、コネクタが嵌合される。その結果、接触部26、36の表面荒さに起因して形成される空間(図4の空隙部50に相当する空間)に、誘電性ペースト40が充填される。誘電性ペースト40として、例えば、シリコングリースのような材料がある。
【0016】
従来であれば、上述したように、図4の空隙部50に相当する空間には、導電性ペーストを塗布するなどして、実質的に接触する面積の拡大による接触抵抗の低下を図っていた。しかし、当該発明者は、高周波による信号伝送に用いられるコネクタ接続構造10にあっては、必ずしも接触面積の拡大が必要でないという発想を得た。つまり、高周波による信号伝送の場合は、接触部26、36のインピーダンス特性を適正に設定することで、実質的な接触抵抗を低下させることができるとの知見を得た。そこで、従来のように導電性ペーストではなく、全く逆の特性の材料、つまり電気的導通のない誘電性ペースト40を塗布している。
【0017】
図3に接触抵抗の等価回路のモデルを示す。図3(a)は、本実施形態に係るコネクタ接続構造10に対応するものであって、高周波による信号伝送を想定し、誘電率(ε)が十分に大きい誘電性ペースト40を用いた場合のモデルである。また、図3(b)は、誘電率が極小さく抵抗Rだけに着目したモデルであり、図4の従来技術に対応する。
【0018】
図3(a)に示すように、高周波の信号伝送では、誘電率を高くすることができると、接触抵抗には、容量Cが大きく反映される。また、容量Cの断面積Sと距離dは、接触部26、36の表面荒さの平均値から算出することが可能である。このモデルから分かるように、周波数値はωに反映されるので、高周波の場合、式中の分母が大きくなり、接触抵抗が小さくなる。
【0019】
一方、図4で示した従来技術の構成の場合、実際の接触面積は断面積全体に対して数%程度のことが多く、接触抵抗低下のために可能な限り接触荷重Fを大きくするようにしていた。しかし、本実施形態では、空隙部50に相当する空間を潰すために接触荷重F(図1参照)を大きくする必要がない。つまり、コネクタの嵌合力や弾性力を小さくすることができ、コネクタの小型化・軽量化が容易となる。また、端子配列が高密度化した場合であっても、導電性ペーストのように短絡発生を考慮する必要がない。
【0020】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素及びその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0021】
10 コネクタ接続構造
20 第1の配線
22、32 導体
24、34 メッキ部
26、36 接触部
30 第2の配線
40 誘電性ペースト
図1
図2
図3
図4