特許第5775410号(P5775410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5775410建物ユニット及びユニット建物の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775410
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】建物ユニット及びユニット建物の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   E04B1/348 V
   E04B1/348 P
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-218058(P2011-218058)
(22)【出願日】2011年9月30日
(65)【公開番号】特開2013-60794(P2013-60794A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2014年4月9日
(31)【優先権主張番号】特願2011-183292(P2011-183292)
(32)【優先日】2011年8月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081385
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 修治
(72)【発明者】
【氏名】加藤 耕太
【審査官】 土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−073493(JP,A)
【文献】 特開2010−281164(JP,A)
【文献】 特開2007−263536(JP,A)
【文献】 特開2001−193166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階建物ユニットの上に載置される上階建物ユニット床パネル内に水平方向に延在する配管又は配線が工場にて取付けられるとともに、該上階建物ユニットのパネルに沿って垂直方向に延在する配管又は配線が工場にて取付けられ、
上階建物ユニットを下階建物ユニットの上に載置し、垂直方向に延在する配管又は配線と、水平方向に延在する配管又は配線とを分岐接続する分岐接続部材を、下階建物ユニットの領域内において、上階建物ユニットの床パネルの下面に取付けることを特徴とするユニット建物の施工方法。
【請求項2】
2つの下階建物ユニットの境界部を除いて天井面材を取付け、この2つの下階建物ユニットを隣接して配置し、
前記配管又は配線が取付けられている2つの上階建物ユニットを、それぞれ上記2つの下階建物ユニットの上に載置し、
上記2つの下階建物ユニットの境界部の天井面材が取付けられていない部分を利用し、上記2つの上階建物ユニットの間で配管又は配線の接続作業を行なった後、
上記2つの下階建物ユニットの境界部に、つなぎ天井面材を取付ける請求項1に記載のユニット建物の施工方法。
【請求項3】
前記配管又は配線が取付けられている2つの上階建物ユニットの境界部を除いて床面材を取付け、
上記2つの上階建物ユニットを、それぞれ2つの下階建物ユニットの上に載置し、
上記2つの上階建物ユニットの境界部の床面材が取付けられていない部分を利用し、上記2つの上階建物ユニットの間で配管又は配線の接続作業を行なった後、
上記2つの上階建物ユニットの境界部に、つなぎ床面材を取付ける請求項1に記載のユニット建物の施工方法。
【請求項4】
前記配管又は配線の接続が、床パネルの外周枠に設けられた挿通孔を通じてなされる請求項2又は3に記載のユニット建物の施工方法。
【請求項5】
前記下階建物ユニットにおける分岐接続部材の下方に天井面材を設ける請求項1〜4のいずれかに記載のユニット建物の施工方法。
【請求項6】
前記下階建物ユニットの天井が、構造強度を有さない薄型なものである請求項1〜5のいずれかに記載のユニット建物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物ユニット及びユニット建物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユニット建物を構成する建物ユニットであって、特許文献1に記載の如く、天井構面に設けられる天井面材の上面に配管を取付けてなるものがある。天井構面は天井梁に複数本の天井小梁を架け渡して構成され、これらの天井小梁に天井面材を取付けている。天井梁は約20cmの高さがあり、その高さの範囲内に配管を納めており、天井小梁や天井面材は天井梁の下面より低い位置になる。このため、(ユニット高さが同じなら)天井の室内高が天井梁の高さ相当分低くなる。
【0003】
他方、特許文献2に記載の如く、天井構面を有さない建物ユニットがある。この建物ユニットの天井パネルは、構造強度を有さず、天井枠材に天井面材を取付けただけの薄型になる。このため、天井構面を有する前述の建物ユニットに比して、(ユニット高さが同じなら)天井の室内高が天井梁がない分だけ高くとれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-101496
【特許文献2】特開2001-193166
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の如くの天井構面を有さず、天井の室内高を高くとろうとする建物ユニットにおいて、特許文献1に記載の如くに天井面材の上面に配管を工場にて取付けようとすると、以下の問題点がある。即ち、天井の室内高が高くとれるメリットを生かすために、天井パネルは建物ユニットの極力上部に取付けられており、その天井面材の上面に配管を取付けると、建物ユニットの全高がその配管の取付け相当分だけ高くなり、交通法上の輸送制限高を超えてしまう。
【0006】
尚、建物ユニットの全高を交通法上の輸送制限高に納めるため、天井の室内高を下げると、天井の室内高を高くとるメリットが低減してしまう。
【0007】
本発明の課題は、ユニット建物の天井裏に配管又は配線を納めながら、天井の室内高を高くとることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、下階建物ユニットの上に載置される上階建物ユニット床パネル内に水平方向に延在する配管又は配線が工場にて取付けられるとともに、該上階建物ユニットのパネルに沿って垂直方向に延在する配管又は配線が工場にて取付けられ、上階建物ユニットを下階建物ユニットの上に載置し、垂直方向に延在する配管又は配線と、水平方向に延在する配管又は配線とを分岐接続する分岐接続部材を、下階建物ユニットの領域内において、上階建物ユニットの床パネルの下面に取付けるようにしたものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、2つの下階建物ユニットの境界部を除いて天井面材を取付け、この2つの下階建物ユニットを隣接して配置し、前記配管又は配線が取付けられている2つの上階建物ユニットを、それぞれ上記2つの下階建物ユニットの上に載置し、上記2つの下階建物ユニットの境界部の天井面材が取付けられていない部分を利用し、上記2つの上階建物ユニットの間で配管又は配線の接続作業を行なった後、上記2つの下階建物ユニットの境界部に、つなぎ天井面材を取付けるようにしたものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記配管又は配線が取付けられている2つの上階建物ユニットの境界部を除いて床面材を取付け、上記2つの上階建物ユニットを、それぞれ2つの下階建物ユニットの上に載置し、上記2つの上階建物ユニットの境界部の床面材が取付けられていない部分を利用し、上記2つの上階建物ユニットの間で配管又は配線の接続作業を行なった後、上記2つの上階建物ユニットの境界部に、つなぎ床面材を取付けるようにしたものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に係る発明において更に、前記配管又は配線の接続が、床パネルの外周枠に設けられた挿通孔を通じてなされるようにしたものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに係る発明において更に、前記下階建物ユニットにおける分岐接続部材の下方に天井面材を設けるようにしたものである。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれかに係る発明において更に、前記下階建物ユニットの天井が、構造強度を有さない薄型なものであるようにしたものである。
【発明の効果】
【0016】
(請求項1)
(a)下階建物ユニットの天井裏になる上階建物ユニットの床パネル内に配管又は配線を納めることができる。このとき、下階建物ユニットの天井はその天井面材の上面に配管又は配線を取付けない分だけ薄くでき、天井の室内高を高くとることができる。
上述の上階建物ユニットにおいて、更に、壁パネルに沿って垂直方向に延在する配管又は配線が工場にて取付けられる。上階建物ユニットの上方(屋根裏等)に設備機器を設置するシステムにおいて、その設備機器へ接続する配管又は配線を工場で取付けることにより、工場生産化率を高めることができる。
上述の上階建物ユニットを下階建物ユニットの上に載置し、垂直方向に延在する配管又は配線と、水平方向に延在する複数の配管又は配線とを分岐接続する分岐接続部材を下階建物ユニットの領域内に設ける。上階建物ユニットの上側から下階建物ユニットの複数カ所に渡る配管又は配線の接続作業の現地施工性を向上することができる。
【0017】
ここで、分岐接続部材は、下階建物ユニットの領域内において、上階建物ユニットの床パネルの下面に取付けられる。
【0018】
(請求項2)
(b)2つの下階建物ユニットの境界部を除いて天井面材を取付け、この2つの下階建物ユニットを隣接して配置し、上述(a)の2つの上階建物ユニットを、それぞれ上記2つの下階建物ユニットの上に載置し、上記2つの下階建物ユニットの境界部の天井面材が取付けられていない部分を利用し、上記2つの上階建物ユニットの間で配管又は配線の接続作業を行なった後、上記2つの下階建物ユニットの境界部に、つなぎ天井面材を取付ける。
【0019】
2つの下階建物ユニットの境界部を除く部分に予め天井面材を取付けておくことにより下階建物ユニットの工場生産化率を高めるとともに、それら2つの下階建物ユニットの境界部の天井面材が取付けられていない部分を利用して2つの上階建物ユニットの間における配管又は配線の接続作業の現地施工性を向上することができる。
【0020】
(請求項3)
(c)上述(a)の2つの上階建物ユニットの境界部を除いて床面材を取付け、上記2つの上階建物ユニットを、それぞれ2つの下階建物ユニットの上に載置し、上記2つの上階建物ユニットの境界部の床面材が取付けられていない部分を利用し、上記2つの上階建物ユニットの間で配管又は配線の接続作業を行なった後、上記2つの上階建物ユニットの境界部に、つなぎ床面材を取付ける。
【0021】
2つの上階建物ユニットの境界部を除く部分に予め床面材を取付けておくことにより上階建物ユニットの工場生産化率を高めるとともに、それら2つの上階建物ユニットの境界部の床面材が取付けられていない部分を利用して2つの上階建物ユニットの間における配管又は配線の接続作業の現地施工性を向上することができる。
【0022】
(請求項4)
(d)上述(b)、(c)の配管又は配線の接続が、床パネルの外周枠に設けられた挿通孔を通じてなされるものとすることにより、2つの上階建物ユニットの間の配管又は配線の接続作業の現地施工性を向上することができる。
【0026】
(請求項
(e)上述(a)の分岐接続部材を下階建物ユニットの領域内に設けた後、下階建物ユニットにおける分岐接続部材の下方に天井面材を設ける。下階建物ユニットの領域内における分岐接続部材の設置作業、及び分岐接続部材を用いる配管又は配線の分岐接続作業の現地施工性を向上することができる。
【0027】
(請求項
(f)上述(a)〜(e)の下階建物ユニットの天井が、構造強度を有さない薄型なものとすることにより、天井の室内高を確実に高くとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は下階建物ユニットの据付工程を示す模式図である。
図2図2は上階建物ユニットの据付工程を示す模式図である。
図3図3は配管の接続工程を示す模式図である。
図4図4はつなぎ天井面材の取付工程を示す模式図である。
図5図5はつなぎ床面材の取付工程を示す模式図である。
図6図6は上階建物ユニットの床パネルの配管取付状態を示す斜視図である。
図7図7は配管の接続構造を示す模式図である。
図8図8は上階建物ユニットの床パネルと壁パネルの配管取付状態を示す模式図である。
図9図9は配管の分岐接続状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
参考例1)(図1図4図6図7
図1図4に示したユニット建物100は、基礎1の上に複数の下階建物ユニット10Aを載置し、それらの下階建物ユニット10Aの上に複数の上階建物ユニット10Bを載置して構築される。
【0030】
下階建物ユニット10Aと上階建物ユニット10Bは、工場生産され、両者は実質的に同一構成とすることができる。下階建物ユニット10Aと上階建物ユニット10Bは、床パネル20と、床パネル20の外縁部に立設される壁パネル30と、壁パネル30の最上端部に取付けられる天井パネル40とを有して構成される。
【0031】
床パネル20は、図6に示す如く、側根太21A、端根太21Bからなる床枠組21の下面には下枠材21Cを、上面には床面材22を取着して構成される。
【0032】
壁パネル30は、詳しく図示しないが、上枠材、下枠材、縦枠材からなる壁枠組31の表面に壁面材32を取着して構成される。
【0033】
天井パネル40は、詳しく図示しないが、側枠材、野縁からなる天井枠組41の下面に天井面材42を取着して構成される。
【0034】
以下、ユニット建物100の天井裏に配管又は配線を納めながら、天井の室内高を高くとることのできる本発明の施工方法について説明する。
【0035】
下階建物ユニット10Aの上に載置される上階建物ユニット10Bは、工場生産段階で、図6に示す如く、その床パネル20内に水平方向に延在する配管又は配線、本参考例1では空調設備用の可撓ダクトである配管50が取付けられる。配管50は、工場施工段階で、床枠組21の側根太21Aに穿設された挿通孔51に挿通されて床枠組21内の床面材22上に取り回され、不図示の取付バンド等により側根太21Aに固定される。
【0036】
ここで、建築現場で相隣ることとなる2つの上階建物ユニット10B、10Bのうちの一方の上階建物ユニット10B(図2の右側の10B)については、建築現場で他方の上階建物ユニット10B(図2の左側の10B)の側の他の配管50との接続のために引き出される配管50の引き出し端50Aが、当該一方の上階建物ユニット10Bの工場生産段階で床枠組21内にて屈曲された状態で床枠組21外に引き出し可能に納められる。一方の上階建物ユニット10Bに納められる配管50の引き出し端50Aは床枠組21の外周枠を構成する側根太21Aに設けられている挿通孔51から外方に引き出され、他の配管50と接続可能にされる。
【0037】
そして、建築現場で相隣ることとなる2つの上階建物ユニット10B、10Bのうちの他方の上階建物ユニット10B(図2の左側の10B)の側の他の配管50は、当該他方の上階建物ユニット10Bの工場施工段階で床枠組21内の所定の配管位置に固定的に取付けられて納められる。
【0038】
このとき、下階建物ユニット10Aの天井パネル40は構造強度を有さない薄型なものであることが好ましい。上階建物ユニット10Bの天井パネル40も同一構成とすることができる。天井パネル40は、例えば特開2001-193166に記載される如く、天井枠組41の側枠材や野縁をC形鋼、リップ付C形鋼等からなるものとすることにより、構造強度を有さない薄型にすることができる。
【0039】
以下、ユニット建物100の施工手順について説明する。
(1)上階建物ユニット10Bの工場生産段階で、配管50を床パネル20内に前述の如くに取付ける。
【0040】
また、下階建物ユニット10Aの工場生産段階で、2つの下階建物ユニット10A、10Aの天井パネル40はそれらの境界部を除く範囲にだけ天井面材42を取付ける。
【0041】
下階建物ユニット10A、上階建物ユニット10Bを建築現場に輸送する。
【0042】
(2)上述(1)の2つの下階建物ユニット10A、10Aを建築現場の基礎1の上に隣接して載置する(図1)。
【0043】
(3)2つの下階建物ユニット10A、10Aの上に、それぞれ上述(1)の2つの上階建物ユニット10B、10Bを載置する(図2)。
【0044】
(4)2つの下階建物ユニット10A、10Aの境界部の天井面材42が取付けられていない部分を利用し、2つの上階建物ユニット10B、10Bの間で配管50の接続作業を行なう(図3)。
【0045】
このとき、一方の上階建物ユニット10Bの側の配管50の引き出し端50Aを、当該一方の上階建物ユニット10Bの外周枠の側根太21Aに設けてある挿通孔51から引き出し、更にこの挿通孔51に相対し、他方の上階建物ユニット10Bの外周枠の側根太21Aに設けてある挿通孔51から当該他方の上階建物ユニット10Bの床枠組21内に引き入れる。そして、他方の上階建物ユニット10Bの床枠組21内で、一方の上階建物ユニット10Bの側から引き入れた配管50の引き出し端50Aと、他の配管50の端とが継手52を介して接続され、それらの接続部の周囲に接続テープ53が被着される(図7)。
【0046】
(5)2つの下階建物ユニット10A、10Aの境界部の天井面材42が取付けられていなかった部分に、つなぎ天井面材43が取付けられる(図4)。
【0047】
従って、本参考例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)下階建物ユニット10Aの上に載置される上階建物ユニット10Bにおいて、床パネル20内に水平方向に延在する配管50が工場にて取付けられる。
【0048】
下階建物ユニット10Aの天井裏になる上階建物ユニット10Bの床パネル20内に配管50を納めることができる。このとき、下階建物ユニット10Aの天井はその天井面材42の上面に配管50を取付けない分だけ薄くでき、天井の室内高を高くとることができる。
【0049】
(b)2つの下階建物ユニット10Aの境界部を除いて天井面材42を取付け、この2つの下階建物ユニット10Aを隣接して配置し、上述(a)の2つの上階建物ユニット10Bを、それぞれ上記2つの下階建物ユニット10Aの上に載置し、上記2つの下階建物ユニット10Aの境界部の天井面材42が取付けられていない部分を利用し、上記2つの上階建物ユニット10Bの間で配管50の接続作業を行なった後、上記2つの下階建物ユニット10Aの境界部に、つなぎ天井面材43を取付ける。
【0050】
2つの下階建物ユニット10Aの境界部を除く部分に予め天井面材42を取付けておくことにより下階建物ユニット10Aの工場生産化率を高めるとともに、それら2つの下階建物ユニット10Aの境界部の天井面材42が取付けられていない部分を利用して2つの上階建物ユニット10Bの間における配管50の接続作業の現地施工性を向上することができる。
【0051】
(c)上述(b)の下階建物ユニット10Aの天井が、構造強度を有さない薄型なものとすることにより、天井の室内高を確実に高くとることができる。
【0052】
(d)上述(b)の配管50の接続が、床パネル20の外周枠を構成する側根太21Aに設けられた挿通孔51を通じてなされるものとすることにより、2つの上階建物ユニット10Bの間の配管50の接続作業の現地施工性を向上することができる。
【0053】
参考例2)(図5
尚、上階建物ユニット10Bの工場生産段階で、配管50を床パネル20内に取付けるとともに、2つの上階建物ユニット10B、10Bの床パネル20はそれらの境界部を除く範囲にだけ床面材22を取付けるものとしても良い。この場合、2つの下階建物ユニット10A、10Aの天井パネル40はそれらの境界部を含む範囲の全域に天井面材42が取付けられる。
【0054】
そして、上述の下階建物ユニット10A、上階建物ユニット10Bを用いるユニット建物100の施工方法では、2つの上階建物ユニット10B、10Bをそれぞれ2つの下階建物ユニット10A、10Aの上に載置し、2つの上階建物ユニット10B、10Bの境界部の床面材22が取付けられていない部分を利用し、上記2つの上階建物ユニット10B、10Bの間で配管50の接続作業(床パネル20の外周枠の側根太21Aに設けた挿通孔51を用いる等の前記参考例1におけると同様の接続作業)を行なう。その後、図5に示す如く、2つの上階建物ユニット10B、10Bの境界部の床面材22が取付けられていなかった部分に、つなぎ床面材23を取付ける。
【0055】
2つの上階建物ユニット10B、10Bの境界部を除く部分に予め床面材22を取付けておくことにより上階建物ユニット10Bの生産化率を高めるとともに、それら2つの上階建物ユニット10B、10Bの境界部の床面材22が取付けられていない部分を利用して2つの上階建物ユニット10B、10Bの間における配管50の接続作業の現地施工性を向上することができる。
【0056】
(実施例)(図8図9
実施例のユニット建物200は、参考例1のユニット建物100と同様に、基礎1の上に複数の下階建物ユニット10Aを載置し、それらの下階建物ユニット10Aの上に複数の上階建物ユニット10Bを載置して構築される。
【0057】
以下、ユニット建物200の上階の上側から下階の複数ヵ所に渡って配管又は配線するに際し、ユニット建物200の天井裏に配管又は配線を納めながら、天井の室内高を高くとることのできる本発明の施工方法について説明する。
【0058】
下階建物ユニット10Aの上に載置される上階建物ユニット10Bは、工場生産段階で、図8に示す如く、その床パネル20内に水平方向に延在する複数の配管又は配線、本実施例では空調設備用の可撓ダクトである複数の配管50が図6に示した参考例1におけると同様に固定的に取付けられる。
【0059】
ここで、上階建物ユニット10Bの床パネル20内に取付けられた各配管50の一端は、後述する分岐接続部材70との接続のための接続端50Aとされ、各配管50の他端は、下階建物ユニット10Aに設置される給気グリル80との接続のための接続端50Bとされる。それらの接続端50A、50Bは当該上階建物ユニット10Bの工場生産段階で床枠組21内に屈曲された状態で納められる。
【0060】
更に、上階建物ユニット10Bは、工場生産段階で、図8に示す如く、その壁パネル30内に垂直方向に延在する配管又は配線、本実施例では空調用設備の可撓ダクトである配管60が固定的に取付けられる。配管60は、工場生産段階で、壁枠組31の上枠材に穿設された挿通孔から壁枠組31外に引き出し可能にされる状態で、壁枠組31内の縦枠材に取付バンド等により固定され、壁枠組31の下枠材に穿設された挿通孔に挿通され、床枠組21内に挿入される。
【0061】
ここで、上階建物ユニット10Bの壁パネル30内に取付けられた配管60の上端は、建築現場で上階建物ユニット10Bの上方の小屋裏等に設置される空調ユニット等との接続のために壁枠組31外に引き出される接続端60Aとされ、配管60の下端は、後述する分岐接続部材70との接続のために床枠組21内に挿入される接続端60Bとされる。それらの接続端60A、60Bは当該上階建物ユニット10Bの工場生産段階で壁枠組31、床枠組21内に屈曲された状態で納められる。
【0062】
このとき、下階建物ユニット10Aと上階建物ユニット10Bの天井パネル40は、実施例1におけると同様に構造強度を有さない薄型なものであることが好ましい。
【0063】
以下、ユニット建物200の施工手順について説明する。
(1)上階建物ユニット10Bの工場生産段階で、各配管50を床パネル20内に、配管60を壁パネル30内に、前述の如くに取付ける。
【0064】
また、下階建物ユニット10Aの工場生産段階で、下階建物ユニット10Aの天井パネル40は分岐接続部材70が配置されることとなる領域を除く範囲にだけ天井面材42を取付ける。天井面材42が取付けられる居室Aと取付けられない居室Bの間には、間仕切壁33が立設される(図9)。
【0065】
下階建物ユニット10A、上階建物ユニット10Bを建築現場に輸送する。
【0066】
(2)下階建物ユニット10Aを建築現場の基礎1の上に載置する。
【0067】
(3)下階建物ユニット10Aの上に、上階建物ユニット10Bを載置する(図9)。
【0068】
(4)下階建物ユニット10Aの天井面材42が取付けられていない部分を利用し、下階建物ユニット10Aの領域内に配置されることとなる分岐接続部材70を上階建物ユニット10Bの床パネル20の下面に取付ける。そして、この分岐接続部材70に各配管50の接続端50Aと、配管60の接続端60Bとを分岐接続する。
【0069】
尚、配管60の接続端60Aは上階建物ユニット10Bの壁パネル30における壁枠組31の上枠材から外部に引き出され、上階建物ユニット10Bの上方の小屋裏等に設置される空調ユニット等に接続される。
【0070】
(5)下階建物ユニット10Aの分岐接続部材70が配置された領域であって、天井面材42が取付けられていなかった部分に、下がり天井面材44が取付けられる(図9)。
【0071】
(6)各配管50の接続端50Bが各天井面材42、44に設けた挿通孔からそれらの天井下の居室A、Bの側に引き出され、それらの接続端50Bに各居室A、Bのための給気グリル80が接続される。その後、各給気グリル80が各天井面材42、44の下面に取付けられる。
【0072】
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)下階建物ユニット10Aの上に載置される上階建物ユニット10Bにおいて、床パネル20内に水平方向に延在する配管50が工場にて取付けられる。
【0073】
下階建物ユニット10Aの天井裏になる上階建物ユニット10Bの床パネル20内に配管50を納めることができる。このとき、下階建物ユニット10Aの天井はその天井面材42の上面に配管50を取付けない分だけ薄くでき、天井の室内高を高くとることができる。
【0074】
(b)上述(a)の上階建物ユニット10Bにおいて、更に、壁パネル30に沿って垂直方向に延在する配管60が工場にて取付けられる。上階建物ユニット10Bの上方(屋根裏等)に設備機器を設置するシステムにおいて、その設備機器へ接続する配管60を工場で取付けることにより、工場生産化率を高めることができる。
【0075】
(c)上述(b)の上階建物ユニット10Bを下階建物ユニット10Aの上に載置し、垂直方向に延在する配管60と、水平方向に延在する複数の配管50とを分岐接続する分岐接続部材70を下階建物ユニット10Aの領域内に設ける。上階建物ユニット10Bの上側から下階建物ユニット10Aの複数カ所に渡る配管50、60の接続作業の現地施工性を向上することができる。
【0076】
分岐接続部材70は上階建物ユニット10Bの床パネル20の下面に現地にて取付けることができる。或いは、分岐接続部材70は下階建物ユニット10Aの壁パネル30の上部に工場又は現地にて取付けることもできる。
【0077】
(d)上述(c)の分岐接続部材70を下階建物ユニット10Aの領域内に設けた後、下階建物ユニット10Aにおける分岐接続部材70の下方に天井面材44を設ける。下階建物ユニット10Aの領域内における分岐接続部材70の設置作業、及び分岐接続部材70を用いる配管50の分岐接続作業の現地施工性を向上することができる。
【0078】
(e)上述(c)、(d)の下階建物ユニット10Aの天井が、構造強度を有さない薄型なものとすることにより、天井の室内高を確実に高くとることができる。
【0079】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、下階建物ユニット10Aの領域内に設けられた分岐接続部材70に分岐接続される配管50は、当該下階建物ユニット10Aの上に載置される上階建物ユニット10Bの床パネル20内に水平方向に延在されて当該下階建物ユニット10A内に取付けられる給気グリル80等に接続されるものに限らず、当該下階建物ユニット10Aの上に載置された上階建物ユニット10Bの床パネル20から隣接する他の上階建物ユニット10Bの床パネル20内に水平方向に延在されて当該下階建物ユニット10Aに隣接する他の下階建物ユニット10Aに取付けられる給気グリル80等に接続されるものでも良い。
【0080】
また、上階建物ユニット10Bの壁パネル30に沿って垂直方向に延在される配管60は、壁パネル30内に限らず、壁パネル30に沿って設けられるパイプシャフト内に設けられるものでも良い。
【0081】
また、本発明では、配管として換気・空調設備用ダクト以外に、給排水管、空調用冷媒管等を適用するものでも良い。また、配線として電力線・情報線等の配線を適用するものでも良い。また、それらの配管、配線を入れるための鞘管等を適用するものでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、下階建物ユニットの上に載置される上階建物ユニットにおいて、床パネル内に水平方向に延在する配管又は配線が工場にて取付けられる。これにより、ユニット建物の天井裏に配管又は配線を納めながら、天井の室内高を高くとることができる。
【符号の説明】
【0083】
10A 下階建物ユニット
10B 上階建物ユニット
20 床パネル
21 床枠組
21A 側根太(外周枠)
22 床面材
23 つなぎ床面材
30 壁パネル
31 壁枠組
40 天井パネル
42 天井面材
43 つなぎ天井面材
44 下がり天井面材
50 配管(配管又は配線)
50A 引き出し端
51 挿通孔
60 配管
70 分岐接続部材
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9