(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の波形がなす台形形状と前記第2の波形がなす台形形状の大きさおよび形状の差異と、前記X線源の要調整量との間の定数を予め記憶する定数記憶手段(80)を備え、
前記調整判定手段が、前記X線源の調整方向を判定するとともに、前記大きさおよび形状の差異と前記定数記憶手段に記憶された定数とに基づいて前記X線源の要調整量を判定し、
前記表示手段が、前記調整判定手段により判定された調整方向および要調整量を表示することを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載のX線異物検出装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
まず構成について説明する。
【0025】
図1に示すように、X線異物検出装置1は、搬送部2と検出部3とを筐体4の内部に備え、表示器5を筐体4の前面上部に備えている。
【0026】
搬送部2は、被検査物Wを所定間隔をおいて順次搬送するものである。この搬送部2は、例えば筐体4の内部で水平に配置されたベルトコンベアにより構成されている。搬送部2は、
図1に示す駆動モータ6の駆動により予め設定された搬送速度で搬入口7から搬入された被検査物Wを搬出口8側(図中X方向)に向けて搬送面としてのベルト面2a上を搬送させるようになっている。筐体4の内部においてベルト面2a上を搬入口7から搬出口8まで貫通する空間は搬送路21を形成している。
【0027】
検出部3は、順次搬送される被検査物Wに対し、搬送路21の途中の検査空間22においてX線を照射するとともに被検査物Wを透過するX線を検出するものであり、搬送路21の途中の検査空間22の上方に所定高さ離隔して配置されたX線発生器9と、搬送部2内にX線発生器9と対向して配置されたX線検出器10を備えている。
【0028】
X線発生器9は、不図示の筐体の内部に円筒状のX線源としてのX線管31を備えた構成で、筐体とX線管31は絶縁油または絶縁樹脂等により絶縁されている。本実施の形態では、X線管31は、後述する2軸調整機構によりX軸上(搬送部2の搬送方向)およびY軸上(搬送部2の幅方向)で移動可能となっている。X線管31の陰極からの電子ビームを陽極のターゲットに照射させてX線を生成している。X線管31は、その長手方向が被検査物Wの搬送方向(X方向)となるよう配置されている。X線管31により生成されたX線は、下方のX線検出器10に向けて、検査空間22(
図1、
図2参照)の上面に配置された図示しないスリットにより略三角形状のスクリーン状となって搬送方向(X方向)を横切るように照射されるようになっている。
【0029】
なお、このスリットは、2軸調整機構により変位するX線管31とともに変位するように構成されている。
【0030】
X線検出器10は、搬送される被検査物Wの搬送方向(X方向)の平面上で搬送方向と直交するY方向に複数の検出素子を直線状に並べたX線ラインセンサ50を備えている。本実施の形態では、X線ラインセンサ50として、
図7に示すように、ベルト面2aを挟んでX線管31に対向する位置(略鉛直下方)に、縦置き配置、すなわち鉛直方向に配置された2つのX線ラインセンサ51、52を備えるか、または、
図3に示すように、ベルト面2aを挟んでX線管31に対向する位置(略鉛直下方)に、横並び配置、すなわち搬送方向に配置された2つのX線ラインセンサ51、52を備えるようになっている。
【0031】
図7においては、X線ラインセンサ51の下方、すなわち、X線管31から離隔する方向にX線ラインセンサ52が配置されている。
【0032】
また、
図3においては、X線ラインセンサ51の下流にX線ラインセンサ52が配置されている。
【0033】
X線ラインセンサ51は、X線管31から照射されて被検査物Wを透過した低エネルギーの検出信号を出力し、X線ラインセンサ52は、X線管31から照射されて被検査物Wを透過した高エネルギーの検出信号を出力するようになっている。
【0034】
本実施の形態では、例えば、X線ラインセンサ51にX線を減衰するフィルタを装着したり、X線ラインセンサ51の感度を弱めることにより、X線ラインセンサ52の検出信号をX線ラインセンサ51より高エネルギー化させるようになっている。
【0035】
すなわち、X線異物検出装置1は、1つのX線管31と2つのX線ラインセンサ51、52とを備え、2つのX線ラインセンサ51、52からの画像を合成して異物を強調させた画像を得るエネルギーサブトラクション法を採用した構成となっている。
【0036】
なお、X線ラインセンサ51、52は、X線を受けて光(蛍光)を発する図示しないシンチレータおよびこのシンチレータからの光を受光する受光素子を備えている。
【0037】
ここで、本実施の形態では、X線検出器10は、内蔵する図示しないA/D変換部によりX線ラインセンサ51、52の検出信号(輝度値データ)を出力するとともに、この検出信号(輝度値データ)をデジタルデータに変換した濃度データをX線画像のデータのデータとして出力するようになっている。なお、X線検出器10の外部にA/D変換部を備える構成としてもよい。
【0038】
X線ラインセンサ51、52を備えるX線検出器10からは、後述する総合制御部40(
図2参照)での異物混入の有無の判定に必要なX線画像のデータを出力するようになっている。
【0039】
図2に示すように、搬送路21内の天井部21aには、搬送方向(X方向)に沿って複数個所にX線遮蔽用の遮蔽カーテン16が吊り下げ配置されている。遮蔽カーテン16は、X線を遮蔽する鉛粉を混入したゴムシートをのれん状(上部が繋がっており下部が帯状に分割された状態)に加工したものから構成されており、検査空間22から搬送路21を介してX線が筐体4の外部に漏えいすることを防止するものである。
【0040】
遮蔽カーテン16は、本実施の形態では、搬入口7と検査空間22との間、および検査空間22と搬出口8との間にそれぞれ2枚ずつ設けられており、1つの遮蔽カーテン16が被検査物Wと接触して弾性変形して隙間が生じた場合でも、他の遮蔽カーテン16がX線を遮蔽するので漏えい基準量を超えることなくX線の漏えいを防止できるようになっている。
【0041】
なお、検査空間22の上面にはスリットが配置され、検査空間22の下面、側面は、X線の遮蔽のために筐体4等により略閉塞されている。搬送路21における遮蔽カーテン16、スリット、および筐体4等により囲まれた内側の空間が検査空間22を構成している。
【0042】
X線異物検出装置1は、X線検出器10から受け取った濃度データに基づく被検査物W中の異物の有無の判定を含む総合的な制御を行う総合制御部40を備えている。
【0043】
総合制御部40は、X線異物検出装置1の総合的な制御を行うものであり、X線ラインセンサ51、52からの濃度データを検出して所定のタイミングの濃度データをそれぞれ有効化するデータ検出部61、62と、データ検出部61、62からの濃度データをそれぞれ複数記憶する記憶部43と、X線ラインセンサ51、52からの濃度データの画像(以下、単に画像という)に対して合成処理、フィルタ処理等の画像処理を施す画像処理部44と、画像処理部44で画像処理が施された画像に対して被検査物Wと異物との判別を行って異物の混入の有無を判定する判定部48とを備えている。判定部48による判定結果は表示器5に表示されるようになっている。
【0044】
データ検出部60は、本実施の形態では2つのデータ検出部61、62からなり、X線ラインセンサ51、52からの濃度データに対して所定のタイミングで入力された濃度データ、すなわち、所定のデータ有効化入力タイミングの範囲のデータだけをそれぞれ有効化するようになっている。
【0045】
記憶部43は、X線ラインセンサ51、52から出力されたデータのうち、データ検出部61、62で有効化されたデータを一時的に記憶するものであり、画像を高速に記憶および読み出しが可能なメモリから構成されている。
【0046】
画像処理部44は、X線ラインセンサ51、52からの濃度データの画像に対して合成処理、フィルタ処理等の画像処理を施すようになっている。
【0047】
判定部48は、画像処理部44で画像処理が施された画像に対して、画像上の被検査物Wの中から異物を検出し、異物の混入の有無を判定するようになっている。
【0048】
また、X線異物検出装置1は、X線発生器9のX線出力、被検査物Wの搬送速度、X線検出器10の検査パラメータ、動作モード等の設定操作、選択操作が行われる設定部49を備えており、この設定部49は、筐体4の前面上部の表示器5の隣に配置されている。
【0049】
図2、
図4に示すように、本実施の形態では、X線管31のX軸、Y軸の2軸上の位置を調整する機構として、内部にX線管31を備えたX線ユニット33を2軸上で変位可能に支持する支持機構100を備えている。ここで、X線ユニット33は、高電圧発生部を含んだモノタンク型の構成としてもよいし、高電圧発生部を別ユニットとした構成としてもよい。
【0050】
支持機構100は、内部にX線管31を備えたX線ユニット33を上面で支持する第1ステージ101と、第1ステージ101を下方から支持する第2ステージ102と、第2ステージ102を下方から支持する第3ステージ103とを備えている。
【0051】
第1ステージ101は、第1ステージ101の両端下面の凸部101aが第2ステージ102の上面の凹部102a内を案内されることにより、Y軸上をスライド移動可能に第2ステージ102に支持されている。
【0052】
第2ステージ102は、第2ステージ102の両端下面の凸部102cが第3ステージ103の上面の凹部103c内を案内されることにより、X軸上をスライド移動可能に第3ステージ103に支持されている。
【0053】
第2ステージ102のY軸上の一端側には、第1ステージ101の一端側に当接して第1ステージ101のY軸上の位置を調整するY軸調整部材111が、第2ステージ102と一体または別体に形成された取り付けステー102bを介して設けられている。
【0054】
第2ステージ102のY軸上の他端側には、第1ステージ101の他端側に当接してこの第1ステージ101をY軸調整部材111の側に押圧する圧縮ばね113が設けられている。
【0055】
Y軸調整部材111は、マイクロメータと同様の機構からなっており、そのY軸調整ハンドル111aが手動操作またはY軸駆動モータ112により回転されるとプランジャ111bが前進または後退し、第1ステージ101のY軸上の位置を変位させるようになっている。
【0056】
Y軸駆動モータ112は、パルス駆動するステッピングモータから構成されており、その出力軸がY軸調整ハンドル111aに接続されている。
【0057】
第3ステージ103のY軸上の一端側には、第2ステージ102に回動可能に設けられたL字状部材116の一端部に当接してL字状部材116の他端部を変位させることにより、第2ステージ102のX軸上の位置を調整するX軸調整部材114が、第3ステージ103と一体または別体に形成された取り付けステー103bを介して設けられている。
【0058】
第3ステージ103の他端側には、第2ステージ102の他端側に当接してこの第2ステージ102をX軸調整部材114の側に押圧する圧縮ばね117が設けられている。X軸調整部材114は、マイクロメータと同様の機構からなっており、そのX軸調整ハンドル114aが手動操作またはX軸駆動モータ115により回転されると、L字状部材116を介して第2ステージ102のX軸上の位置を変位させるようになっている。
【0059】
X軸駆動モータ115は、パルス駆動するステッピングモータから構成されており、その出力軸がX軸調整ハンドル114aに接続されている。
【0060】
また、本実施の形態では、X線管31のX軸、Y軸の2軸上の位置を調整するときは、
図4に示すように、X線画像が比較的濃く出力されるポリエチレンブロック等からなる直方体の被検査物Wを基準被検査物Wsとして用い、X線ラインセンサ51が出力するX線画像データおよびX線ラインセンサ52が出力するX線画像データから得られる基準被検査物Wsの搬送方向の濃度変化を表す第1の波形および第2の波形の形状を比較し、2つのX線画像の大きさと形状が等しくなるようなX線管31の2軸上の位置の調整方向(および調整量)を求めるようになっている。
【0061】
ここで、第1の波形および第2の波形は、
図6に示すように、基準被検査物WsのX軸方向(またはY軸方向)を横軸とし、X線画像データを基に被検査物Wとの背景との差が大きくなるような輝度値に変換して縦軸としたときの波形であり、基準被検査物Wsの輝度値に対応する部分は台形形状となる。また、第1の波形および第2の波形は波形整形して形成されており、例えば、X軸方向を横軸とした場合は、Y軸方向の所定の検出区間の平均値を1つのデータとし、X軸方向に走査するようにしている。
【0062】
ここで、
図6において、第1の波形がなす台形形状のX軸上における上流側の側辺の長さをL1L、下流側の側辺の長さをL1R、第2の波形がなす台形形状のX軸上における上流側の側辺の長さをL2L、下流側の側辺の長さをL2Lで示す。また、第1の波形がなす台形形状の下底のX軸上における上流側の端点の角度をθ1L、下流側の端点の角度をθ1R、第2の波形がなす台形形状の下底のX軸上における上流側の端点の角度をθ2L、下流側の端点の角度をθ2Rで示す。また、第1の波形がなす台形形状および第2の波形がなす台形形状の所定の高さにおいて、第1の波形がなす台形形状のX軸上における幅をL1H、第2の波形がなす台形形状のX軸上における幅をL2Hで示す。なお、L1H、L2Hは、本実施の形態では、第1の波形がなす台形形状および第2の波形がなす台形形状の中間の高さにおける幅(半値幅)を用いている。
【0063】
X線ラインセンサ51とX線ラインセンサ52のうち、X線管31から照射されたX線の入射角が小さい方の波形において、台形形状の下底の長さが長くなる。
【0064】
総合制御部40は、X線ラインセンサ51が出力するX線画像データおよびX線ラインセンサ52が出力するX線画像データから得られる基準被検査物Wsの搬送方向の濃淡変化を示す第1の波形および第2の波形の形状を比較し、2つのX線画像の大きさと形状が等しくなるようなX線管31の位置の調整方向、要調整量を求める手段として、調整判定部81を備えている。調整判定部81は、基準被検査物Wsの搬送方向の濃淡変化を示す第1の波形および第2の波形をそれぞれ取得し、第1の波形形状と第2の波形形状の差異に基づいて、X線管31の調整方向を判定するようになっている。
【0065】
図3に示すように、X線ラインセンサ51、52が横並び配置されている場合において、
図5に示すように、X線管31が、X線ラインセンサ51とX線ラインセンサ52の中間のライン上の位置C(適正位置)ではなく、組み付け誤差等による原因でこのラインより下流側(右側)の位置Dに配置されているときの調整判定部81の動作を説明する。
【0066】
この場合、調整判定部81は、第1の波形がなす台形形状および第2の波形がなす台形形状の所定の高さにおいて、第1の波形がなす台形形状の幅L1Hが第2の波形がなす台形形状の幅L2Hより長いとき、または、第1の波形がなす台形形状の下底の上流側の端点の角度θ1Lが第2の波形がなす台形形状の下底の下流側の端点の角度θ2Rより小さいとき、または、第1の波形がなす台形形状の上流側の側辺の長さL1Lが第2の波形がなす台形形状の下流側の側辺の長さL2Rより長いとき、
図5の状態であると認識し、X線管31の調整方向が、搬送方向上流側であると判定するようになっている。
【0067】
本実施の形態では、X線管31の2軸上の位置を測位する位置センサ等を備えていないため、X線管31が適正位置となるための要調整量(距離)を直接的に求めることはできないが、X軸(またはY軸)において、第1の波形と第2の波形のそれぞれの台形における下底の長さの差異と要調整量との間に定数による一定の関係を有しているため、X軸、Y軸のそれぞれの定数を記憶しておくことにより、調整判定部81に要調整量を算出させることができる。
【0068】
そこで、総合制御部40は、上記の定数をX軸、Y軸毎に予め記憶しておく定数記憶部80を備えている。そして、調整判定部81は、定数記憶部80に記憶されている定数と、基準被検査物Wsを用いて取得した第1の波形と第2の波形の台形の下底の長さの差異に基づいて、X線管31のX軸、Y軸の要調整量を調整するようになっている。
【0069】
なお、定数は、予めX線管31をX軸(またはY軸)上で意図的に所定距離移動させたときの第1の波形と第2の波形の台形の下底の長さの差異の変化量から求めることができる。
【0070】
また、調整判定部81は、判定結果を表示器5に出力するようになっている。表示器5には、例えば、X線管31の調整方向および要調整量として"X軸:−1.5mm、Y軸:+3mm"等のメッセージが表示される。
【0071】
総合制御部40は、調整判定部81が判定したX線管31の調整方向および要調整量に応じて、Y軸駆動モータ112、X軸駆動モータ115を駆動制御する駆動制御部82を備えている。
【0072】
駆動制御部82は、調整判定部81が判定した調整方向、要調整量に応じて、Y軸駆動モータ112、X軸駆動モータ115の駆動パルスを決定し、その駆動パルスによりY軸駆動モータ112、X軸駆動モータ115を駆動するようになっている。
【0073】
このため、X線管31の調整方向および要調整量が判定されると、調整方向および要調整量が表示器5に表示されるとともに、駆動制御部82によりY軸駆動モータ112、X軸駆動モータ115が駆動制御され、X線管31の2軸上の位置が適正位置に調整されることとなる。
【0074】
本実施の形態では、総合制御部40の動作モードとして自動調整モードと手動調整モードを有し、動作モードが自動調整モードに設定されているときは、表示器5による調整方向および要調整量の表示と、駆動制御部82によるY軸駆動モータ112、X軸駆動モータ115の駆動制御の両方を行い、動作モードが手動調整モードに設定されているときは、表示器5による調整方向および要調整量の表示のみを行い、ユーザーがY軸調整ハンドル111a、X軸調整ハンドル114aを操作するようになっている。
【0075】
次に、上記のように構成されたX線異物検出装置1の動作を説明する。
【0076】
まず、動作モードが自動調整モードに設定されている場合は、総合制御部40は、基準被検査物Wsを走査してX線ラインセンサ51およびX線ラインセンサ52から第1の波形と第2の波形をそれぞれ取得し、調整判定部81により、第1の波形の形状と第2の波形の形状の差異に基づいて、X線管31のX軸上の調整方向、要調整量を判別し、判別結果を表示器5により表示するとともに、駆動制御部82によりX軸駆動モータ115を駆動制御する。これにより、X線管31のX軸上の位置が適正位置に調整される。
【0077】
ついで、総合制御部40は、再び基準被検査物Wsを走査して第1の波形、第2の波形を取得し、調整判定部81により、第1の波形の形状と第2の波形の形状の差異に基づいて、X線管31のY軸上の調整方向、要調整量を判別し、判別結果を表示器5により表示するとともに、駆動制御部82によりY軸駆動モータ112を駆動制御する。これにより、X線管31のY軸上の位置が適正位置に調整される。
【0078】
一方、動作モードが手動調整モードに設定されている場合は、総合制御部40は、基準被検査物Wsを走査してX線ラインセンサ51およびX線ラインセンサ52から第1の波形と第2の波形をそれぞれ取得し、調整判定部81により、第1の波形の形状と第2の波形の形状の差異に基づいて、X線管31のX軸上の調整方向、要調整量を判別し、判別結果を表示器5により表示する。これにより、ユーザーがX軸調整ハンドル114aを操作することで、X線管31のX軸上の位置が適正位置に調整される。
【0079】
ついで、総合制御部40は、再び基準被検査物Wsを走査して第1の波形、第2の波形を取得し、調整判定部81により、第1の波形の形状と第2の波形の形状の差異に基づいて、X線管31のY軸上の調整方向、要調整量を判別し、判別結果を表示器5により表示する。これにより、ユーザーがY軸調整ハンドル111aを操作することで、X線管31のY軸上の位置が適正位置に調整される。
【0080】
なお、調整判定部81がX線管31の調整方向のみを判定するように構成してもよく、この場合、利用者は、基準被検査物Wsを用いた画像の取得と、表示器5に表示された調整方向に従ったX線管31の目安距離分の調整とを数回繰り返すことにより、X線管31を適切な位置に調整することができる。
【0081】
次に、
図7に示すように、X線ラインセンサ51、52が縦置き配置されている場合においての動作を説明する。
【0082】
この場合、調整判定部81は、X線管31の位置を搬送方向であるX軸方向の第1の波形および第2の波形がなす台形形状の一端側の傾斜に対し、傾斜の差が小さくなるように調整方向を判定している。この場合の傾斜の差は、例えば、傾斜の長さ(台形の側辺の長さ)、傾斜角度(台形の底角の大きさ)、スロープ幅(台形の傾斜部の水平方向幅)等について求めており、傾斜の差と移動方向が一時記憶される。
【0083】
また、調整方向は、一時記憶されている前回の傾斜の差と比較し、前回よりも差が大きければ、前回の移動方向とは反対方向であると判定し、前回よりも差が小さければ、前回の移動方向と同一方向であると判定している。なお、傾斜の差が一時記憶されていない初回の調整方向の判定の場合は、所定の方向を指定するようになっている。
【0084】
また、動作モードが自動調整モードに設定されている場合は、
図8に示すように、X線管31の位置を搬送方向であるX軸方向に故意に変位させて、X線管31の複数個所の位置において、X線ラインセンサ51、52のそれぞれのX軸方向の中心を結んだ直線上より上流側に位置しているときの第1の波形および第2の波形と下流側に位置しているときの第1の波形および第2の波形とで、
図9に示すように、傾斜の差のグラフを求めることにより、X軸方向におけるX線管31の最適位置を算出する。傾斜の差の最小となる位置(U字形状のグラフの底部に相当する位置)が最適位置であり、このときX線ラインセンサ51、52のそれぞれのX軸方向の中心を結んだ直線上にX線管31が位置することとなる。すなわち、X線管31のX軸上の調整方向に関しては、調整判定部81は、傾斜の差の小さくなる方向がX線管31の調整方向であると判別する。また、調整判定部81は、
図9の傾斜の差のグラフに基づいて要調整量を判定する。
【0085】
以上のように、本実施の形態に係るX線異物検出装置1は、X線管31を、搬送面に平行な平面上において搬送部2の搬送方向上流側または搬送方向下流側に位置調整可能に支持する支持機構100と、第1のX線画像データおよび第2のX線画像データから被検査物Wの搬送方向の濃淡変化を示す第1の波形および第2の波形をそれぞれ取得し、第1の波形形状と第2の波形形状の差異に基づいて、X線管31の調整方向を判定する調整判定部81と、調整判定部81により判別された調整方向を表示する表示器5と、を備えたことを特徴とする。
【0086】
この構成により、表示器5には、X線管31の搬送方向の調整方向が表示されるので、表示された調整方向に従ってX線管31の位置を利用者が調整することにより、X線画像データにおける被検査物Wの大きさと形状を略一致させることができる。したがって、エネルギーサブトラクション法により得る2つのX線画像上の被検査物Wの大きさと形状を略一致させ、異物検出性能の低下を防止することができる。
【0087】
また、本実施の形態に係るX線異物検出装置1は、X線ラインセンサ51の搬送方向下流側にX線ラインセンサ52が配置され、調整判定部81が、第1の波形および第2の波形の所定の高さにおいて、第1の波形の幅L1Hが第2の波形の幅L2Hより長いとき、X線管31の調整方向が、搬送方向上流側であると判定することを特徴とする。
【0088】
また、本実施の形態に係るX線異物検出装置1は、X線ラインセンサ51の搬送方向下流側にX線ラインセンサ52が配置され、調整判定部81が、第1の波形がなす台形形状の下底の上流側の端点の角度θ1Lが第2の波形がなす台形形状の下底の下流側の端点の角度θ2Rより小さいとき、X線管31の調整方向が、搬送方向上流側であると判定することを特徴とする。
【0089】
また、本実施の形態に係るX線異物検出装置1は、X線ラインセンサ51の搬送方向下流側にX線ラインセンサ52が配置され、調整判定部81が、第1の波形がなす台形形状の上流側の側辺の長さL1Lが第2の波形がなす台形形状の下流側の側辺の長さL2Rより長いとき、X線管31の調整方向が、搬送方向上流側であると判定することを特徴とする。
【0090】
この構成により、X線ラインセンサ51とX線ラインセンサ52とが横並び配置されている場合であっても、調整判定部81がX線管31の調整方向を正確に判定することができる。
【0091】
また、本実施の形態に係るX線異物検出装置1は、第1の波形がなす台形形状と第2の波形がなす台形形状の大きさおよび形状の差異と、X線管31の要調整量との間の定数を予め記憶する定数記憶部80を備え、調整判定部81が、X線管31の調整方向を判定するとともに、大きさおよび形状の差異と定数記憶部80に記憶された定数とに基づいてX線管31の要調整量を判定し、表示器5が、調整判定部81により判定された調整方向および要調整量を表示することを特徴とする。
【0092】
この構成により、X線管31の調整方向だけでなく、要調整量の判定および表示を行うことで、短時間または少ない試行回数でX線管31を適切な位置に調整することができる。
【0093】
また、本実施の形態に係るX線異物検出装置1は、支持機構100に支持されたX線管31を搬送方向上流側または搬送方向下流側に変位させるX軸駆動モータ115と、調整判定部81により判定された調整方向および要調整用に応じてX軸駆動モータ115を駆動制御する駆動制御部82と、を備えたことを特徴とする。
【0094】
この構成により、判定された調整方向および要調整用に応じて駆動制御部82がX軸駆動モータ115を駆動制御するので、自動的にX線管31を適切な位置に調整することができる。
【0095】
また、本実施の形態に係るX線異物検出装置1は、X線ラインセンサ51の下方にX線ラインセンサ52が配置され、調整判定部81が、第1の波形がなす台形形状の一端側の傾斜と第2の波形がなす台形形状の同一側の傾斜の差が小さくなるようにX線管31の調整方向を判定することを特徴とする。
【0096】
この構成により、X線ラインセンサ51とX線ラインセンサ52とが縦置き配置されている場合であっても、調整判定部81がX線管31の調整方向を正確に判定することができる。