(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体素子をスイッチング動作させることにより交流電力を直流電力に変換する電力変換装置及び直流電力を交流電力に変換する電力変換装置(例えば、特許文献1参照。)では、半導体素子として絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(以下、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)という。)などが用いられる。半導体素子に過大な電流が流れると半導体素子が破壊されるので、過電流から各半導体素子を保護するために、電力装置には、各半導体素子を保護するための過電流保護装置が設けられる場合が多い。
【0003】
図8は、従来技術に係る電力変換装置の構成を示すブロック図であり、
図9は、
図8の過電流保護回路22Bの構成を示す回路図である。また、
図10において、(a)は、
図8の駆動信号生成回路1Bによって生成されるキャリア波Sc1及びSc2と、信号波Srと、駆動信号Sd1とを示すタイミングチャートであり、(b)は、
図8の駆動信号生成回路1Bによって生成されるキャリア波Sc1及びSc2と、信号波Srと、駆動信号Sd2とを示すタイミングチャートである。
【0004】
図8において、従来技術に係る電力変換装置は、駆動信号生成回路1Bと、駆動回路11,12,13,14と、過電流保護回路21B,22B,23B,24Bと、3レベルインバータ回路2とを備えて構成される。なお、
図8において、1相分の構成のみを示す。また、
図8において、3レベルインバータ回路2は、直流電源P1及びP2と、それぞれIGBTであるトランジスタQ1,Q2,Q3,Q4と、環流ダイオードD1,D2,D3,D4と、クランプダイオードD5,D6と、スナバキャパシタCP1,CP2とを備えて構成される。さらに、
図9において、過電流保護回路22Bは、電圧検出回路31と、抵抗33及びキャパシタ34を備えたフィルタ回路32と、コンパレータ35と、電圧源36とを備えて構成される。なお、他の過電流保護回路21B,23B,24Bは、それぞれ過電流保護回路22Bと同様に構成され、過電流保護回路22Bと同様に動作する。
【0005】
図8において、直流電源P1及びP2は互いに直列に接続され、所定の直流電圧Eをそれぞれ発生する。また、トランジスタQ1〜Q4は、直流電源P1の正極と直流電源P2の負極との間に、互いに直列に接続される。また、環流ダイオードD1,D2,D3,D4は、それぞれトランジスタQ1,Q2,Q3,Q4に逆並列に接続される。クランプダイオードD5のアノードは直流電源P1とP2との間の接続点に接続される一方、カソードはトランジスタQ1とQ2との間の接続点に接続される。さらに、クランプダイオードD6のカソードは直流電源P1とP2との間の接続点に接続される一方、アノードはトランジスタQ3とQ4との間の接続点に接続される。スナバキャパシタCP1は、クランプダイオードD5のアノードとトランジスタQ1のコレクタとの間に接続され、スナバキャパシタCP2は、クランプダイオードD6のカソードとトランジスタQ5のエミッタとの間に接続される。
【0006】
また、
図8において、駆動信号生成回路1Bは、信号波Srと、2つのキャリア波Sc1,Sc2とを生成する(
図10(a)及び
図10(b)参照。)。ここで、信号波Srは、所定の基本周波数を有しかつゼロレベルを基準レベルとする正弦波である。また、キャリア波Sc1は、ゼロレベルを基準として所定の正の直流バイアス(
図10(a)の例では、+0.5である。)を有しかつ所定の搬送波周波数(PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)周波数)を有する三角波である。なお、搬送波周波数は、基本周波数より高くなるように設定される。一方、キャリア波Sc2は、ゼロレベルを基準として所定の負の直流バイアス(
図10(b)の例では、−0.5である。)を有しかつ上述した搬送波周波数を有する三角波である。キャリア波Sc1とSc2とは、実質的に同一の位相を有する。
【0007】
図8において、駆動信号生成回路1Bは、キャリア波Sc1を信号波Srと比較し、キャリア波Sc1と信号波Srとが交差する各タイミングにおいてトランジスタQ1とQ3とが相補的にオンオフするように、トランジスタQ1を駆動するための駆動信号Sd1(
図10(a)参照。)と、トランジスタQ3を駆動するための駆動信号Sd3とを生成する。さらに、駆動信号生成回路1Bは、キャリア波Sc2を信号波Srと比較し、キャリア波Sc2と信号波Srとが交差する各タイミングにおいてトランジスタQ2とQ4とが相補的にオンオフするように、トランジスタQ2を駆動するための駆動信号Sd2(
図10(b)参照。)と、トランジスタQ4を駆動するための駆動信号Sd4とを生成する。なお、上下短絡を防止するために、トランジスタQ1がオフした後、所定の期間長のデッドタイムを設けて、トランジスタQ3をオンする。同様に、トランジスタQ2がオフした後、所定の期間長のデッドタイムを設けて、トランジスタQ4をオンする。駆動信号Sd1〜Sd4は、それぞれ駆動回路11〜14に出力される。
【0008】
さらに、
図8において、駆動回路11〜14はそれぞれ、入力される駆動信号Sd1〜Sd4に基づいて、トランジスタQ1〜Q4を駆動するための駆動電圧V11〜V14を生成し、トランジスタQ1〜Q4の各ゲート−エミッタ間に印加する。以上説明したように駆動信号Sd1〜Sd4が生成されるので、信号波Srがゼロレベルを超えている半周期期間(以下、正の半周期期間という。)において、トランジスタQ2は常にオンされ、トランジスタQ4は常にオフされ、トランジスタQ1とQ3とは搬送波周波数で相補的にオンオフされる。また、信号波Srがゼロレベル未満である半周期期間(以下、負の半周期期間という。)において、トランジスタQ3は常にオンされ、トランジスタQ1は常にオフされ、トランジスタQ2とQ4とは搬送波周波数で相補的にオンオフされる。この結果、ダイオードD2とD3との間の接続点から、3個の電圧レベルE,0及び−Eを有する出力電圧Voutが出力される。
【0009】
図9の過電流保護回路22Bにおいて、電圧検出回路31はトランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧Vce2を検出し、当該検出された電圧Vce2に対応するVce検出電圧V31をフィルタ回路32に出力する。フィルタ回路32は、抵抗33の抵抗値及びキャパシタ34の容量値の積によって決定される時定数τを有するローパスフィルタ回路であって、Vce検出電圧V31に対して低域通過ろ波を行って、ろ波後のろ波後電圧V32をコンパレータ35の非反転入力端子に出力する。また、電圧源36は、トランジスタQ2に流れるコレクタ電流I2の所定の過電流しきい値に対応する所定の過電流検出用電圧Vrを発生して、コンパレータ35の反転入力端子に出力する。コンパレータ35は、ろ波後電圧V32を過電流検出用電圧Vrと比較し、ろ波後電圧V32が過電流検出用電圧Vrより大きいときは、トランジスタQ2に過電流しきい値を超えるコレクタ電流Ic2が流れたことを示すハイレベルの過電流検出信号S22Bを発生する。一方、ろ波後電圧V32が過電流検出用電圧Vr以下であるときは、ローレベルの過電流検出信号S22Bを生成する。過電流検出信号S22Bは駆動信号生成回路1及び駆動回路12に出力される。なお、過電流保護回路22Bにおいて、電圧検出回路31と、フィルタ回路32とは、トランジスタQ2のオン期間のみに動作するように制御される。
【0010】
図8において、過電流保護回路21B,23B,24Bはそれぞれ、過電流保護回路22Bと同様に、トランジスタQ1,Q3,Q4に過電流しきい値を超えるコレクタ電流が流れているか否かを検出し、当該検出結果を示す過電流検出信号S21B,S23B,S24Bを駆動回路11,13,14と、駆動信号生成回路1Bとに出力する。駆動回路11,12,13,14はそれぞれ、ハイレベルの過電流検出信号S21B,S22B,S23B,S24Bに応答して、トランジスタQ1,Q2,Q3,Q4をオフするための駆動電圧V11,V12,V13,V14を生成してトランジスタQ1,Q2,Q3,Q4のゲート−エミッタ間に印加する。また、駆動信号生成回路1Bは、過電流検出信号S21B,S22B,S23B,S24Bに基づいて、トランジスタQ1〜Q4のうちの少なくとも1つのトランジスタに過電流が流れたとき、全てのトランジスタQ1〜Q4をオフするように駆動信号Sd1〜Sd4を生成する。これに応答して、全てのトランジスタQ1〜Q4はオフされ、過電流から保護される。
【0011】
図11は、
図8の電力変換装置の正常動作時の動作を示すタイミングチャートである。
図11において、タイミングt1においてトランジスタQ2の駆動信号Sd2の電圧レベルがローレベルからハイレベルになると、これに応答してトランジスタQ2がオンし、トランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧Vce2は低下し、トランジスタQ2にコレクタ電流Ic2が流れ出す。また、電圧検出回路31及びフィルタ回路32は動作を開始する。さらに、フィルタ回路32からのろ波後電圧V32は、時定数τで徐々に上昇する。この間は、コレクタ電流Ic2が所定の過電流しきい値を超えていても、ろ波後電圧V32は過電流検出用電圧Vrを超えないので、過電流検出信号S22Bの電圧レベルはローレベルのままである。トランジスタQ2に過電流しきい値を超えるコレクタ電流Ic2(過電流)が流れ、時定数τが経過したタイミングt2より後のタイミングt3において、ろ波後電圧V32が過電流検出用電圧Vrを超えると、ハイレベルの過電流検出信号S22Bが生成される。これに応答して、駆動回路12はトランジスタQ2をオフするように駆動信号Sd2を生成し、駆動信号生成回路1Bは全てのトランジスタQ1〜Q4をオフするように駆動信号Sd1〜Sd4を生成する。なお、トランジスタQ2がオンしてから、ハイレベルのろ波後電圧V32が生成されるまでの期間の期間長Ta(τ<Ta)は、トランジスタQ2の短絡耐量(トランジスタQ2に短絡電流が流れ出してからトランジスタQ2が破壊されるまでの時間である。)以下となるように設定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図12は、
図8の過電流保護回路22BがトランジスタQ3のスイッチングの影響を受けた場合の
図8の電力変換装置の動作を示すタイミングチャートである。
図12において、タイミングt4においてトランジスタQ2の駆動信号Sd2の電圧レベルがローレベルからハイレベルになると、これに応答してトランジスタQ2がオンする。そして、トランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧Vce2は低下し、トランジスタQ2にコレクタ電流Ic2が流れ出す。また、電圧検出回路31及びフィルタ回路32は動作を開始する。さらに、フィルタ回路32からのろ波後電圧V32は、時定数τで徐々に上昇する。
図12の場合、トランジスタQ2のコレクタ電流Ic2は過電流しきい値を超えていないので、過電流保護回路22Bのフィルタ回路32からのろ波後電圧V32は過電流検出用電圧Vrを超えず、過電流検出信号S22Bの電圧レベルはローレベルのままである。
【0014】
ところで、
図10(b)に示すように、トランジスタQ2は上述した正の半周期期間において常にオンされており、この正の半周期期間にトランジスタQ3はオンオフされる。
図12において、正の半周期期間内のタイミングt5においてトランジスタQ3がオンすると、3レベルインバータ回路2の寄生インダクタンス及び寄生キャパシタンスの影響により、トランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧Vce2が変動する。このため、トランジスタQ2に過電流しきい値を超えるコレクタ電流Ic2(過電流)が流れていないにも関わらず、過電流保護回路22Bのフィルタ回路32からのろ波後電圧V32は徐々に上昇する。そして、コレクタ−エミッタ間電圧Vce2の変動が一定期間継続すると、過電流保護回路22Bのフィルタ回路32からのろ波後電圧V32が過電流検出用電圧Vrを超え、過電流保護回路22Bのコンパレータ35はハイレベルの過電流検出信号S22Bを生成する。これに応答して、全てのトランジスタQ1〜Q4がオフされてしまう。
【0015】
以上説明したように、従来技術に係る過電流保護回路22Bは、トランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧Vce2を検出し、検出された電圧をフィルタ処理した後に過電流検出用電圧Vrと比較する。このため、フィルタ回路32の時定数τを十分に大きく設定しないと、トランジスタQ2が基本周波数の半周期にわたってオンしているときに他のトランジスタがオンしてコレクタ−エミッタ間電圧Vce2が変動すると、トランジスタQ2の過電流を誤って検出してしまう。
【0016】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、マルチレベルインバータ回路の各半導体素子の過電流の誤検知を防止できる過電流保護装置と、当該過電流保護装置及びマルチレベルインバータ回路を備えた電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の発明に係る過電流保護装置は、
互いに直列に接続された2個の直流電源の正の電位と負の電位との間に、互いに直列に接続された第1、第2、第3及び第4の半導体素子と、
上記第1乃至第4の半導体素子にそれぞれ逆並列に接続された第1乃至第4の還流ダイオードと、
上記2個の直流電源の接続点から上記第1及び第2の半導体素子の接続点に接続された第1のクランプダイオードと、
上記第3及び第4の半導体素子の接続点から上記2個の直流電源の接続点に接続された第2のクランプダイオードとを備えたマルチレベルインバータ回路のための過電流保護装置において、
所定の基準レベル及び所定の基本周期を有する信号波を、上記基準レベルに対して所定の正の直流バイアス及び所定の負のバイアスをそれぞれ有する第1及び第2のキャリア波のうちの一方のキャリア波と比較して、当該比較結果に基づいて上記第1及び第3の半導体素子をそれぞれオンオフ駆動するための第1及び第3の駆動信号を生成して第1及び第3の半導体素子にそれぞれ出力し、上記信号波を上記第1及び第2のキャリア波のうちの他方のキャリア波と比較して、当該比較結果に基づいて上記第2及び第4の半導体素子をそれぞれオンオフ駆動するための第2及び第4の駆動信号を生成して第2及び第4の半導体素子にそれぞれ出力する駆動信号生成回路と、
上記各半導体素子に対応して設けられ、上記各半導体素子の両端電圧を検出し、当該両端電圧に対して低域通過ろ波を行い、当該ろ波後電圧が所定の過電流検出用電圧を越えたとき、上記各半導体素子に過電流が流れたことを示す過電流検出信号を生成して上記駆動信号生成回路に出力して上記各半導体素子を保護する4個の過電流保護回路とを備え、
上記駆動信号生成回路は、上記信号波が上記基準レベルとなるタイミングを検出し、当該検出したタイミングから上記基本周期の半分の期間にわたって、当該期間において常にオンされる半導体素子に対応して設けられた過電流保護回路の動作を実質的に停止するように制御することを特徴とする。
【0018】
第2の発明に係る過電流保護装置は、
互いに直列に接続された2個の直流電源の正の電位と負の電位との間に、互いに直列に接続された第1、第2、第3及び第4の半導体素子と、
上記第1乃至第4の半導体素子にそれぞれ逆並列に接続された第1乃至第4の還流ダイオードと、
上記2個の直流電源の接続点から上記第1及び第2の半導体素子の接続点に接続された第1のクランプダイオードと、
上記第3及び第4の半導体素子の接続点から上記2個の直流電源の接続点に接続された第2のクランプダイオードとを備えたマルチレベルインバータ回路のための過電流保護装置において、
所定の基準レベル及び所定の基本周期を有する信号波を、上記基準レベルに対して所定の正の直流バイアス及び所定の負のバイアスをそれぞれ有する第1及び第2のキャリア波のうちの一方のキャリア波と比較して、当該比較結果に基づいて上記第1及び第3の半導体素子をそれぞれオンオフ駆動するための第1及び第3の駆動信号を生成して第1及び第3の半導体素子にそれぞれ出力し、上記信号波を上記第1及び第2のキャリア波のうちの他方のキャリア波と比較して、当該比較結果に基づいて上記第2及び第4の半導体素子をそれぞれオンオフ駆動するための第2及び第4の駆動信号を生成して第2及び第4の半導体素子にそれぞれ出力する駆動信号生成回路と、
上記各半導体素子に対応して設けられ、上記各半導体素子の両端電圧を検出し、当該両端電圧に対して低域通過ろ波を行い、当該ろ波後電圧が所定の過電流検出用電圧を越えたとき、上記各半導体素子に過電流が流れたことを示す過電流検出信号を生成して上記駆動信号生成回路に出力して上記各半導体素子を保護する4個の過電流保護回路とを備え、
上記4個の過電流保護回路のうち、上記第2及び第3の半導体素子にそれぞれ設けられた各過電流保護回路は、当該過電流保護回路に設けられた半導体素子がオンしてから、当該半導体素子の短絡耐量より大きくかつ当該半導体素子がオンした後上記第2及び第3の半導体素子のうちの他方の半導体素子がオンするまでの期間より小さいように設定されたしきい値時間が経過したとき、当該過電流保護回路の動作を実質的に停止させるタイマ回路を備えたことを特徴とする。
【0019】
第3の発明に係る電力変換装置は、
上記マルチレベルインバータ回路と、
第1又は第2の発明に係る過電流保護装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明に係る過電流保護装置及び当該過電流保護装置を備えた電力変換装置によれば、駆動信号生成回路は、信号波が基準レベルとなるタイミングを検出し、当該検出したタイミングから基本周期の半分の期間にわたって、当該期間において常にオンされる半導体素子に対応して設けられた過電流保護回路の動作を実質的に停止するように制御するので、マルチレベルインバータ回路の各半導体素子の過電流の誤検知を防止できる。
【0021】
また、第2の発明に係る過電流保護装置及び当該過電流保護装置を備えた電力変換装置によれば、第2及び第3の半導体素子にそれぞれ設けられた各過電流保護回路は、当該過電流保護回路に設けられた半導体素子がオンしてから、当該半導体素子の短絡耐量より大きくかつ当該半導体素子がオンした後第2及び第3の半導体素子のうちの他方の半導体素子がオンするまでの期間より小さいように設定されたしきい値時間が経過したとき、当該過電流保護回路の動作を実質的に停止させるタイマ回路を備えたので、マルチレベルインバータ回路の各半導体素子の過電流の誤検知を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態及び上述した背景技術において、同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0024】
第1の実施形態.
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置の構成を示すブロック図であり、
図2は、
図1の過電流保護回路22の構成を示す回路図である。また、
図3において、(a)は、
図1の駆動信号生成回路1によって生成されるキャリア波Sc1及びSc2と、信号波Srと、駆動信号Sd2とを示すタイミングチャートであり、(b)は、
図1の駆動信号生成回路1によって生成される過電流保護回路制御信号Sa2を示すタイミングチャートであり、(c)は、
図1の駆動信号生成回路1によって生成される過電流保護回路制御信号Sa3を示すタイミングチャートである。
【0025】
図1において、本実施形態に係る電力変換装置は、駆動信号生成回路1と、駆動回路11,12,13,14と、過電流保護回路21B,22,23,24Bと、3レベルインバータ回路2とを備えて構成される。なお、
図1において、1相分の構成のみを示す。
図1において、本実施形態に係る電力変換装置は、従来技術に係る電力変換装置(
図8参照。)に比較して、駆動信号生成回路1B及び過電流保護回路22B,23Bに代えて駆動信号生成回路1及び過電流保護回路22,23を備えた点が異なる。また、
図1において、駆動信号生成回路1と、過電流保護回路21B,22,23,24Bとは、3レベルインバータ回路2のための過電流保護装置を構成する。以下、従来技術に係る電力変換装置との相違点のみを説明する。
【0026】
図2において、過電流保護回路22は、電圧検出回路31と、抵抗33及びキャパシタ34を備えたフィルタ回路32と、コンパレータ35と、電圧源36及び37と、スイッチSWとを備えて構成される。
図2において、電圧検出回路31はトランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧Vce2を検出し、当該検出された電圧Vce2に対応するVce検出電圧V31をフィルタ回路32に出力する。フィルタ回路32は、抵抗33の抵抗値及びキャパシタ34の容量値の積によって決定される時定数τを有するローパスフィルタ回路であって、Vce検出電圧V31に対して低域通過ろ波を行って、ろ波後のろ波後電圧V32をスイッチSWの接点aに出力する。また、電圧源36は、トランジスタQ2に流れるコレクタ電流I2の所定の過電流しきい値に対応する所定の過電流検出用電圧Vrを発生して、コンパレータ35の反転入力端子に出力する。さらに、電圧源37は、過電流検出用電圧Vrより低い所定の電圧Vaを発生して、スイッチSWの接点bに出力する。
【0027】
また、
図2において、スイッチSWは駆動信号生成回路1からのローレベルの過電流保護回路制御信号Sa2(詳細後述する。)に応答して接点a側に切り換えられる一方、ハイレベルの過電流保護回路制御信号Sa2に応答して接点b側に切り換えられる。スイッチSWは、過電流保護回路制御信号Sa2に応答して、ろ波後電圧V32及び電圧Vaのうちの一方を、制御端子cを介して選択的にコンパレータ35の非反転入力端子に出力する。コンパレータ35は、スイッチSWの制御端子cから出力された電圧を過電流検出用電圧Vrと比較し、スイッチSWから出力された電圧が過電流検出用電圧Vrより大きいときは、トランジスタQ2に過電流しきい値を超えるコレクタ電流Ic2が流れたことを示すハイレベルの過電流検出信号S22を発生する。一方、制御端子cが過電流検出用電圧Vr以下であるときは、ローレベルの過電流検出信号S22を生成する。過電流検出信号S22は駆動信号生成回路1及び駆動回路12に出力される。なお、過電流保護回路22において、電圧検出回路31と、フィルタ回路32とは、トランジスタQ2のオン期間のみに動作するように制御される。また、トランジスタQ2がオンされたとき、スイッチSWは接点a側に切り換えられる。
【0028】
図1において、過電流保護回路23は過電流保護回路22と同様に構成され、トランジスタQ3に過電流しきい値を超えるコレクタ電流が流れているか否かを検出し、当該検出結果を示す過電流検出信号S23を生成して、駆動回路13及び駆動信号生成回路1に出力する。駆動回路12及び13はそれぞれ、ハイレベルの過電流検出信号S22及びS23に応答して、トランジスタQ2及びQ3をオフするための駆動電圧V12及びV13を生成してトランジスタQ2及びQ3の各ゲート−エミッタ間に印加する。
【0029】
図1において、駆動信号生成回路1は、
図8の駆動信号生成回路1Bと同様に、信号波Srと、2つのキャリア波Sc1,Sc2とを生成する(
図3(a)、
図10(a)及び
図10(b)参照。)。具体的には信号波Srは、所定の基本周波数を有しかつゼロレベルを基準レベルとする正弦波である。以下、基本周波数に対応する周期を基本周期という。また、キャリア波Sc1は、ゼロレベルを基準として所定の正の直流バイアス(
図3(a)の例では、+0.5である。)を有しかつ所定の搬送波周波数を有する三角波である。なお、搬送波周波数は、基本周波数より高くなるように設定される。一方、キャリア波Sc2は、ゼロレベルを基準として所定の負の直流バイアス(
図3(a)の例では、−0.5である。)を有しかつ上述した搬送波周波数を有する三角波である。キャリア波Sc1とSc2とは、実質的に同一の位相を有する。
【0030】
図1において、駆動信号生成回路1は、キャリア波Sc1を信号波Srと比較し、キャリア波Sc1と信号波Srとが交差する各タイミングにおいてトランジスタQ1とQ3とが相補的にオンオフするように、トランジスタQ1を駆動するための駆動信号Sd1と、トランジスタQ3を駆動するための駆動信号Sd3とを生成する。さらに、駆動信号生成回路1は、キャリア波Sc2を信号波Srと比較し、キャリア波Sc2と信号波Srとが交差する各タイミングにおいてトランジスタQ2とQ4とが相補的にオンオフするように、トランジスタQ2を駆動するための駆動信号Sd2と、トランジスタQ4を駆動するための駆動信号Sd4とを生成する。なお、上下短絡を防止するために、トランジスタQ1がオフした後、所定の期間長のデッドタイムを設けて、トランジスタQ3をオンする。同様に、トランジスタQ2がオフした後、所定の期間長のデッドタイムを設けて、トランジスタQ4をオンする。駆動信号Sd1〜Sd4はそれぞれ、駆動回路11〜14に出力される。駆動回路11〜14はそれぞれ、入力される駆動信号Sd1〜Sd4に基づいて、トランジスタQ1〜Q4を駆動するための駆動電圧V11〜V14を生成し、トランジスタQ1〜Q4の各ゲート−エミッタ間に印加する。
【0031】
従って、信号波Srがゼロレベルを超えている正の半周期期間において、トランジスタQ2は常にオンされ、トランジスタQ4は常にオフされ、トランジスタQ1とQ3とは搬送波周波数で相補的にオンオフされる。また、信号波Srがゼロレベル未満である負の半周期期間において、トランジスタQ3は常にオンされ、トランジスタQ1は常にオフされ、トランジスタQ2とQ4とは搬送波周波数で相補的にオンオフされる。この結果、ダイオードD2とD3との間の接続点から、3個の電圧レベルE,0及び−Eを有する出力電圧Voutが出力される。
【0032】
また、
図1において、駆動信号生成回路1は、過電流検出信号S21B,S22,S23,S24Bに基づいて、トランジスタQ1〜Q4のうちの少なくとも1つのトランジスタに過電流が流れたとき、全てのトランジスタQ1〜Q4をオフするように駆動信号Sd1〜Sd4を生成する。これに応答して、全てのトランジスタQ1〜Q4はオフされ、過電流から保護される。
【0033】
さらに、
図1において、駆動信号生成回路1は、2つのキャリア波Sc1,Sc2の基準レベルであるゼロレベルを信号波Srが交差するタイミングを検出し、信号波Srのレベルがゼロレベルより高いときは、ハイレベルの過電流保護回路制御信号Sa2を生成して過電流保護回路22のスイッチSWに出力するとともに、ローレベルの過電流保護回路制御信号Sa3を生成して過電流保護回路23のスイッチSWに出力する。一方、信号波Srのレベルがゼロレベルより低いときは、ローレベルの過電流保護回路制御信号Sa2を生成して過電流保護回路22のスイッチSWに出力するとともに、ハイレベルの過電流保護回路制御信号Sa3を生成して過電流保護回路23のスイッチSWに出力する。
【0034】
なお、信号波Scがゼロレベルと交差するタイミングと、キャリア波Sc2の山のタイミングが一致すると、トランジスタQ2がオンするタイミングとハイレベルの過電流保護回路制御信号Sa2を出力するタイミングが一致してしまうので、過電流保護回路22において過電流を検知できなくなる。同様に、信号波Scがゼロレベルと交差するタイミングと、キャリア波Sc1の谷のタイミングが一致すると、トランジスタQ3がオンするタイミングとハイレベルの過電流保護回路制御信号Sa3を出力するタイミングが一致してしまうので、過電流保護回路23において過電流を検知できなくなる。このため、信号波Srがゼロラインをクロスする各タイミングが、キャリア波Sc2の山のタイミング及びキャリア波Sc1の谷の各タイミングと一致しないように、信号波Sr及びキャリア波Sc1,Sc2を生成するための回路を設計する必要がある。
【0035】
図4は、
図1の電力変換装置の動作を示すタイミングチャートである。
図4において、タイミングt11において、駆動信号生成回路1はハイレベルの駆動信号Sd2と、ローレベルの過電流保護回路制御信号Sa2とを生成する。ハイレベルの駆動信号Sd2に応答してトランジスタQ2はオンし、トランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧Vce2は低下し、トランジスタQ2にコレクタ電流Ic2が流れ出す。また、過電流保護回路22の電圧検出回路31及びフィルタ回路32は動作を開始し、スイッチSWは接点a側に切り換えられる。このため、タイミングt11以降、過電流保護回路22のコンパレータ35には、過電流保護回路22の制御端子cを介して、フィルタ回路32からのろ波後電圧V32が出力される。過電流保護回路22のフィルタ回路32からのろ波後電圧V32は、時定数τで徐々に上昇する。
図4の場合、トランジスタQ2のコレクタ電流Ic2は過電流しきい値を超えていないので、過電流保護回路22のフィルタ回路32からのろ波後電圧V32は過電流検出用電圧Vrを超えず、過電流検出信号S22の電圧レベルはローレベルのままである。
【0036】
タイミングt12において、駆動信号生成回路1は、信号波Srのレベルがゼロレベルより高くなったことを検出すると、ハイレベルの過電流保護回路制御信号Sa2を生成して過電流保護回路22のスイッチSWに出力する。これに応答して、過電流保護回路22のスイッチSWは接点b側に切り換えられ、過電流保護回路22は実質的に動作を停止してローレベルの過電流検出信号S22を生成する。さらに、タイミングt12から所定の期間長のデッドタイムが経過すると、タイミングt13において、駆動信号生成回路1はハイレベルの駆動信号Sd3を生成する。これに応答して、トランジスタQ3はオンする。
【0037】
タイミングt12以降の正の半周期期間においてトランジスタQ2は常にオンしており、正の半周期期間内のタイミングt13においてトランジスタQ3がオンすると、3レベルインバータ回路2の寄生インダクタンス及び寄生キャパシタンスの影響により、トランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧Vce2が変動する。しかしながら、過電流保護回路22は実質的に動作を停止しているので、トランジスタQ3がオンしたことに伴ってトランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧Vce2が変動しても、過電流を誤検知しない。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る駆動信号生成回路1と過電流保護回路22とによれば、トランジスタQ2を、トランジスタQ2のスイッチングが要因で発生する過電流から保護できる。また、駆動信号生成回路1は、信号波Srが基準レベルとなるタイミングを検出し、当該検出したタイミングから基本周期の半分の期間にわたって、当該期間において常にオンされるトランジスタQ2に設けられた過電流保護回路22の動作を実質的に停止するように制御する。これにより、トランジスタQ2が常にオンしている正の半周期期間において、過電流保護回路22の動作を実質的に停止させるので、他のトランジスタQ1及びQ3のスイッチングに起因してトランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧Vce2が変動しても、過電流を誤検知しない。過電流保護回路22は、正の半周期期間において、トランジスタQ2以外のトランジスタQ1及びQ3のスイッチングに起因する過電流を検知できないが、当該過電流をトランジスタQ1,Q3の過電流保護回路21B,23によって検知できるので、トランジスタQ2を過電流から保護ができる。
【0039】
また、本実施形態に係る駆動信号生成回路1と過電流保護回路23とによれば、トランジスタQ3を、トランジスタQ3のスイッチングが要因で発生する過電流から保護できる。また、駆動信号生成回路1は、信号波Srが基準レベルとなるタイミングを検出し、当該検出したタイミングから基本周期の半分の期間にわたって、当該期間において常にオンされるトランジスタQ3に設けられた過電流保護回路23の動作を実質的に停止するように制御する。これにより、トランジスタQ3が常にオンしている負の半周期期間において、過電流保護回路23の動作を実質的に停止させるので、他のトランジスタQ2及びQ4のスイッチングに起因してトランジスタQ3のコレクタ−エミッタ間電圧Vce3が変動しても、過電流を誤検知しない。過電流保護回路23は、負の半周期期間において、トランジスタQ3以外のトランジスタQ2及びQ4のスイッチングに起因する過電流を検知できないが、当該過電流をトランジスタQ2,Q4の過電流保護回路22,24Bによって検知できるので、トランジスタQ3を過電流から保護ができる。
【0040】
従って、本実施形態によれば、基本周期の半周期期間にわたって常にオンするトランジスタの過電流保護回路による過電流の誤検知を防止できる。また、従来技術に係る過電流保護回路22Bでは、フィルタ回路32の時定数τを十分に大きく設定する必要があったが、本実施形態に係る過電流保護回路22によれば、フィルタ回路32の時定数τをトランジスタQ2の短絡耐量以下の任意の値に設定できる。
【0041】
第2の実施形態.
図5は、本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置の構成を示すブロック図であり、
図6は、
図5の過電流保護回路22Aの構成を示す回路図である。
図5において、本実施形態に係る電力変換装置は、駆動信号生成回路1Aと、駆動回路11,12,13,14と、過電流保護回路21B,22A,23A,24Bと、3レベルインバータ回路2とを備えて構成される。なお、
図5において、1相分の構成のみを示す。本実施形態に係る電力変換装置は、第1の実施形態に係る電力変換装置(
図1参照。)に比較して、駆動信号生成回路1及び過電流保護回路21,24に代えて駆動信号生成回路1A及び過電流保護回路21A,24Aを備えた点が異なる。また、駆動信号生成回路1Aと、過電流保護回路21B,22A,23A,24Bとは、3レベルインバータ回路2のための過電流保護装置を構成する。以下、第1の実施形態に係る電力変換装置との相違点のみを説明する。
【0042】
図6において、過電流保護回路22Aは、電圧検出回路31と、抵抗33及びキャパシタ34を備えたフィルタ回路32と、コンパレータ35と、電圧源36及び37と、タイマ回路40と、スイッチSWとを備えて構成される。なお、過電流保護回路23Aは過電流保護回路22Aと同様に構成される。
【0043】
図5において、駆動信号生成回路1Aは、
図8の駆動信号生成回路1Bと同様に、信号波Srと、2つのキャリア波Sc1,Sc2とを生成し(
図10(a)及び
図10(b)参照。)、信号波Srとキャリア波Sc1,Sc2とを用いて駆動信号Sd1〜Sd4を生成する。さらに、駆動信号生成回路1Aは、駆動信号生成回路1Bと同様に、駆動信号Sd1〜Sd4を駆動回路11〜14にそれぞれ出力する。さらに、駆動信号生成回路1Aは、駆動信号Sd2を過電流保護回路22Aのタイマ回路40(
図6参照。)に出力するとともに、駆動信号Sd3を過電流保護回路23Aのタイマ回路40に出力する。
【0044】
図6において、過電流保護回路22Aは、
図2の過電流保護回路22と比較して、タイマ回路40をさらに備えた点が異なる。
図6において、タイマ回路40は、駆動信号Sd2の立ち上がりタイミングにおいて動作を開始してリセットされ、ローレベルの過電流保護回路制御信号S40を生成してスイッチSWに出力する。そして、タイマ回路40は、動作開始から所定のしきい値時間T1が経過したときにハイレベルの過電流保護回路制御信号S40を生成して、スイッチSWに出力する。ここで、しきい値時間T1は、トランジスタQ2の短絡耐量Tより大きく、かつトランジスタQ2がオンしてから次にトランジスタQ3がオンするまでの所定の期間T23より小さいように設定される。なお、トランジスタQ1〜Q4の各短絡耐量は実質的に互いに等しい。
【0045】
図6において、スイッチSWはタイマ回路40からのローレベルの過電流保護回路制御信号S40に応答して接点a側に切り換えられる一方、ハイレベルの過電流保護回路制御信号S40に応答して接点b側に切り換えられる。スイッチSWは、過電流保護回路制御信号S40に応答して、ろ波後電圧V32及び電圧Vaのうちの一方を、制御端子cを介して選択的にコンパレータ35の非反転入力端子に出力する。コンパレータ35は、スイッチSWの制御端子cから出力された電圧を過電流検出用電圧Vrと比較し、スイッチSWから出力された電圧が過電流検出用電圧Vrより大きいときは、トランジスタQ2に過電流しきい値を超えるコレクタ電流Ic2が流れたを示すハイレベルの過電流検出信号S22Aを発生する。一方、制御端子cが過電流検出用電圧Vr以下であるときは、ローレベルの過電流検出信号S22Aを生成する。過電流検出信号S22Aは駆動信号生成回路1A及び駆動回路12に出力される。なお、過電流保護回路22Aにおいて、電圧検出回路31と、フィルタ回路32とは、トランジスタQ2のオン期間のみに動作するように制御される。
【0046】
図5において、過電流保護回路23Aは過電流保護回路22Aと同様に構成され、トランジスタQ3に過電流しきい値を超えるコレクタ電流が流れているか否かを検出し、当該検出結果を示す過電流検出信号S23Aを生成して、駆動回路13及び駆動信号生成回路1Aに出力する。なお、過電流保護回路23Aにおいて、タイマ回路40は、駆動信号Sd3の立ち上がりタイミングにおいて動作を開始してリセットされ、ローレベルの過電流保護回路制御信号S40を生成してスイッチSWに出力する。そして、過電流保護回路23Aのタイマ回路40は、動作開始から所定のしきい値時間T2が経過したときにハイレベルの過電流保護回路制御信号S40を生成して、スイッチSWに出力する。ここで、しきい値時間T2は、トランジスタQ3の短絡耐量より大きく、かつトランジスタQ3がオンしてから次にトランジスタQ2がオンするまでの所定の期間より小さいように設定される。なお、上述したように、トランジスタQ1〜Q4の各短絡耐量は実質的に互いに等しいので、第1及び第2のしきい値時間T1,T2は互いに実質的に同一になるように設定される。駆動回路12及び13はそれぞれ、ハイレベルの過電流検出信号S22A及びS23Aに応答して、トランジスタQ2及びQ3をオフするための駆動電圧V12及びV13を生成してトランジスタQ2及びQ3の各ゲート−エミッタ間に印加する。
【0047】
また、
図5において、駆動信号生成回路1Aは、過電流検出信号S21B,S22A,S23A,S24Bに基づいて、トランジスタQ1〜Q4のうちの少なくとも1つのトランジスタに過電流が流れたとき、全てのトランジスタQ1〜Q4をオフするように駆動信号Sd1〜Sd4を生成する。これに応答して、全てのトランジスタQ1〜Q4はオフされ、過電流から保護される。
【0048】
図7は、
図5の電力変換装置の動作を示すタイミングチャートである。
図7において、タイミングt21において、駆動信号生成回路1Aはハイレベルの駆動信号Sd2と、ローレベルの過電流保護回路制御信号Sa2とを生成する。ハイレベルの駆動信号Sd2に応答してトランジスタQ2はオンし、トランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧Vce2は低下し、トランジスタQ2にコレクタ電流Ic2が流れ出す。また、過電流保護回路22Aの電圧検出回路31と、フィルタ回路32と、タイマ回路40とは動作を開始し、スイッチSWは接点a側に切り換えられる。このため、タイミングt21以降、過電流保護回路22Aのコンパレータ35には、過電流保護回路22Aの制御端子cを介して、フィルタ回路32からのろ波後電圧V32が出力される。過電流保護回路22Aのフィルタ回路32からのろ波後電圧V32は、時定数τで徐々に上昇する。
図7の場合、トランジスタQ2のコレクタ電流Ic2は過電流しきい値を超えていないので、過電流保護回路22Aのフィルタ回路32からのろ波後電圧V32は過電流検出用電圧Vrを超えず、過電流検出信号S22Aの電圧レベルはローレベルのままである。
【0049】
タイミングt21からしきい値時間T1が経過すると、タイミングt22において、過電流保護回路22Aのタイマ回路40は、ハイレベルの過電流保護回路制御信号S40を生成して過電流保護回路22AのスイッチSWに出力する。これに応答して、過電流保護回路22AのスイッチSWは接点b側に切り換えられ、過電流保護回路22Aは実質的に動作を停止してローレベルの過電流検出信号S22Aを生成する。さらに、タイミングt22から所定の期間長のデッドタイムが経過すると、タイミングt23において、駆動信号生成回路1Aはハイレベルの駆動信号Sd3を生成する。これに応答して、トランジスタQ3はオンする。
【0050】
タイミングt22以降の正の半周期期間においてトランジスタQ2は常にオンしており、正の半周期期間内のタイミングt23においてトランジスタQ3がオンすると、3レベルインバータ回路2の寄生インダクタンス及び寄生キャパシタンスの影響により、トランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧Vce2が変動する。しかしながら、過電流保護回路22Aは実質的に動作を停止しているので、トランジスタQ3がオンしたことに伴ってトランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧Vce2が変動しても、過電流を誤検知しない。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る駆動信号生成回路1Aと過電流保護回路22Aとによれば、トランジスタQ2を、トランジスタQ2のスイッチングが要因で発生する過電流から保護できる。また、トランジスタQ2が常にオンしている正の半周期期間において、過電流保護回路22Aの動作を実質的に停止させるので、他のトランジスタQ1及びQ3のスイッチングに起因してトランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧Vce2が変動しても、過電流を誤検知しない。過電流保護回路22Aは、正の半周期期間において、トランジスタQ2以外のトランジスタQ1及びQ3のスイッチングに起因する過電流を検知できないが、当該過電流をトランジスタQ1,Q3の過電流保護回路21B,23Aによって検知できるので、トランジスタQ2を過電流から保護ができる。
【0052】
また、本実施形態に係る駆動信号生成回路1Aと過電流保護回路23Aとによれば、トランジスタQ3を、トランジスタQ3のスイッチングが要因で発生する過電流から保護できる。また、トランジスタQ3が常にオンしている負の半周期期間において、過電流保護回路23Aの動作を実質的に停止させるので、他のトランジスタQ2及びQ4のスイッチングに起因してトランジスタQ3のコレクタ−エミッタ間電圧Vce3が変動しても、過電流を誤検知しない。過電流保護回路23Aは、負の半周期期間において、トランジスタQ3以外のトランジスタQ2及びQ4のスイッチングに起因する過電流を検知できないが、当該過電流をトランジスタQ2,Q4の過電流保護回路22A,24Bによって検知できるので、トランジスタQ3を過電流から保護ができる。
【0053】
従って、本実施形態によれば、基本周期の半周期期間にわたって常にオンするトランジスタの過電流保護回路による過電流の誤検知を防止できる。また、従来技術に係る過電流保護回路22Bでは、フィルタ回路32の時定数τを十分に大きく設定する必要があったが、本実施形態に係る過電流保護回路22Aによれば、フィルタ回路32の時定数τをトランジスタQ2の短絡耐量T以下の任意の値に設定できる。
【0054】
なお、上記各実施形態において、各トランジスタQ1〜Q4に対応して設けられる過電流保護回路を、過電流保護回路21B,22,22A,23,23A,24Bのように構成したが、本発明はこれに限られない。過電流保護回路21B,22,22A,23,23A,24Bはそれぞれ、各トランジスタの両端電圧を検出し、当該両端電圧に対して低域通過ろ波を行い、当該ろ波後電圧が所定の過電流検出用電圧を越えたとき、トランジスタに過電流が流れたことを示す過電流検出信号を生成して駆動信号生成回路1又は1Aに出力して各トランジスタQ1〜Q4を保護すればよい。
【0055】
さらに、過電流保護回路22,23はそれぞれ、駆動信号生成回路1からの過電流保護回路制御信号Sa2,Sa3に応答して、動作を実質的に停止すればよい。またさらに、過電流保護回路22Aは、トランジスタQ2がオンしてから所定の第1のしきい値時間T1が経過したとき、当該過電流保護回路22Aの動作を実質的に停止させるタイマ回路を備えればよく、過電流保護回路23Aは、トランジスタQ3がオンしてから所定の第2のしきい値時間T2が経過したとき、当該過電流保護回路23Aの動作を実質的に停止させるタイマ回路を備えればよい。ここで、第1のしきい値時間T1は、トランジスタQ2の短絡耐量より大きく、かつトランジスタQ2がオンしてから次にトランジスタQ3がオンするまでの期間より小さいように設定され、上記第2のしきい値時間T2は、トランジスタQ3の短絡耐量より大きく、かつトランジスタQ3がオンしてから次にトランジスタQ2子がオンするまでの期間より小さいように設定される。なお、一般に、第1及び第2のしきい値時間T1,T2は互いに実質的に同一になるように設定される。
【0056】
また、上記各実施形態に係る電力変換装置は3レベルインバータ回路2を備えたが、本発明はこれに限られず、4レベル以上のマルチレベルインバータ回路を備えてもよい。