特許第5775449号(P5775449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5775449最良のWLAN−PS導出解を選択することによるハイブリッド衛星/WLAN測位システムを使用した位置を決定する方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775449
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】最良のWLAN−PS導出解を選択することによるハイブリッド衛星/WLAN測位システムを使用した位置を決定する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/46 20100101AFI20150820BHJP
   G01S 19/48 20100101ALI20150820BHJP
【FI】
   G01S19/46
   G01S19/48
【請求項の数】21
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2011-512722(P2011-512722)
(86)(22)【出願日】2009年6月5日
(65)【公表番号】特表2011-523062(P2011-523062A)
(43)【公表日】2011年8月4日
(86)【国際出願番号】US2009046504
(87)【国際公開番号】WO2009149417
(87)【国際公開日】20091210
【審査請求日】2012年5月29日
(31)【優先権主張番号】61/059,580
(32)【優先日】2008年6月6日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507135744
【氏名又は名称】スカイフック ワイヤレス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アリザデー−シャブディズ,ファルシド
【審査官】 中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/133968(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/057737(WO,A1)
【文献】 特開2000−338217(JP,A)
【文献】 特開2004−251714(JP,A)
【文献】 特表2009−536809(JP,A)
【文献】 特表2010−509571(JP,A)
【文献】 特開2001−235337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00− 5/14
G01S19/00−19/55
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星測位情報を使用した無線LAN(WLAN)及び衛星を使用することができる装置のための位置推定であるWLAN位置導出解の精度を高める方法において、
1つ又はそれ以上のWLANアクセスポイントに基づいてWLANと衛星を使用することができる装置に対して一組の有力なWLAN位置導出解を決定することと、
少なくとも2つの取得された異なる衛星から、WLANと衛星を使用することができる装置のために衛星情報を取得することと、
有力なWLAN導出解のそれぞれのために、前記取得された衛星のそれぞれのための値の計算に基づき測位される、前記有力なWLAN導出解のそれぞれと前記衛星情報との間の一致性に基づき、有力なWLAN位置導出解の組から最良のWLAN位置導出解を決定するために少なくとも2つの異なる衛星からの衛星情報を使用することを備えている方法。
【請求項2】
有力なWLAN位置導出解の前記組から前記最良のWLAN位置導出解を決定するために前記少なくとも2つの異なる衛星からの前記衛星情報を使用することは、
前記衛星情報に対する前記有力なWLAN位置導出解のそれぞれを検証することと、
前記衛星情報を満足する前記有力なWLAN位置導出解のどれかに基づいて前記最良のWLAN位置導出解を選択することを備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有力なWLAN位置導出解の前記組から前記最良のWLAN位置導出解を決定するために前記少なくとも2つの異なる前記衛星からの衛星情報を使用する段階は、
前記衛星情報と一致しない有力なWLAN位置導出解を削除することを備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記値は内部衛星測位システム(SPS)受信機クロックバイアスであって、前記衛星情報はSPS位置導出解を計算するのに使用される、未処理のSPS測位を含み、
前記WLAN位置導出解の前記衛星情報との一致性は、前記有力なWLAN位置導出解のそれぞれ前記衛星情報を、内部SPS受信機クロックバイアスを計算するための公式に利用すること、及びそれぞれの有力なWLAN位置導出解に対して、取得された衛星のそれぞれの前記内部SPS受信機クロックバイアスを、前記公式を使って計算し、前記有力なWLAN位置導出解のそれぞれのための、前記取得された衛星における、前記内部SPS受信機クロックバイアスの一致性を決定するために、
前記有力なWLAN位置のそれぞれのための、前記取得された衛星における、前記内部SPS受信機クロックバイアスを比較すること、によって測定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記有力なWLAN位置導出解のそれぞれに対する前記内部SPS受信機クロックバイアスの前記一致性は、前記取得された衛星における、前記内部SPS受信機クロックバイアスの比較に基づき決定され、及び、前記WLAN位置導出解及び前記WLANの実際の、推定されていない位置と衛星を使用することができる装置との間の距離を示すものとして使用される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記有力なWLAN位置導出解のそれぞれに対する、取得された衛星のそれぞれのための前記内部SPS受信機クロックバイアスの前記一致性は、前記有力なWLAN位置のそれぞれに対する前記取得された衛星における、前記内部SPS受信機クロックバイアスの比較に基づき決定され、及び、前記WLAN位置導出解及び前記衛星情報の間の一致性を示すものとして使用され、
所与のWLAN位置導出解に対して前記取得した衛星に亘って実質的に同じ前記内部SPS受信機クロックバイアスは、良好な位置推定であることを示し、
さらに、所与のWLAN位置導出解に対して前記取得した衛星に亘る内部SPS受信機クロックバイアスの不均一値は、不良な位置推定であることを示す、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記衛星情報は、衛星位置データ、衛星速度データ、疑似距離測定、ドップラー周波数測定、信号伝送時間、衛星の状態情報、及び地上での衛星信号の測定を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
衛星測位情報を使用した無線LAN(WLAN)及び衛星を使用することができる装置のための位置推定であるWLAN位置導出解の精度を高めるシステムにおいて、
測位モジュールであって、
1つ又はそれ以上のWLANアクセスポイントから情報を受信するためのWLANモジュールと、
少なくとも2つの取得された異なる衛星から衛星情報を取得するための衛星測位モジュールと、を備えている測位モジュールと、
1つ又はそれ以上のWLANアクセスポイントに基づいて一組の有力なWLAN位置導出解を決定するために、前記WLANモジュールの中に組み込まれる論理と、
有力なWLAN導出解のそれぞれのために、前記取得された衛星のそれぞれのための値の計算に基づき測位される、前記有力なWLAN導出解のそれぞれと前記衛星情報との間の一致性に基づき、有力なWLAN位置導出解の前記組から最良のWLAN位置導出解を決定するために前記少なくとも2つの異なる衛星からの前記衛星情報を使用するために、前記測位モジュールの中に組み込まれる論理と、を備えているシステム。
【請求項9】
有力なWLAN位置導出解の前記組から前記最良のWLAN位置導出解を決定するために前記少なくとも2つの異なる衛星からの前記衛星情報を使用するために前記測位モジュールの中に位置している前記論理は、前記衛星情報に対する前記有力なWLAN位置導出解のそれぞれを検証するため及び前記衛星情報を満足する前記有力なWLAN位置導出解のどれかに基づいて最良のWLAN位置導出解を選択するため、の論理を更に備えている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記値は内部衛星測位システム(SPS)受信機クロックバイアスであって、前記衛星情報はSPS位置導出解を計算するのに使用される、未処理のSPS測位を含み、
前記WLAN位置導出解の前記衛星情報との一致性は、前記有力なWLAN位置導出解のそれぞれ前記衛星情報を、内部SPS受信機クロックバイアスを計算するための公式に利用すること、及びそれぞれの有力なWLAN位置導出解に対して、取得された衛星のそれぞれの前記内部SPS受信機クロックバイアスを、前記公式を使って計算し、前記有力なWLAN位置導出解のそれぞれのための、前記取得された衛星における、前記内部SPS受信機クロックバイアスの一致性を決定するために、
前記有力なWLAN位置のそれぞれのための、前記取得された衛星における、前記内部SPS受信機クロックバイアスを比較すること、によって測定される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記有力なWLAN位置導出解のそれぞれに対する取得された衛星のそれぞれに対する前記内部SPS受信機クロックバイアスの前記一致性は、前記取得された衛星における前記内部SPS受信機クロックバイアスの比較に基づき決定され、及び、前記WLAN位置導出解及び前記WLANの実際の、推定されていない位置と衛星を使用することができる装置の間の距離を示すものとして使用される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
取得された衛星のそれぞれの前記有力なWLAN位置導出解のそれぞれに対する前記内部SPS受信機クロックバイアスの前記一致性は、前記有力なWLAN位置のそれぞれに対する前記取得された衛星における、前記内部SPS受信機クロックバイアスの比較に基づき決定され、及び、前記WLAN位置導出解及び前記衛星情報の間の一致性を示すものとして使用される、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
所与のWLAN位置導出解に対して前記取得した衛星に亘って実質的に同じ前記内部SPS受信機クロックバイアスは、良好な位置推定であることを示す、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
所与のWLAN位置導出解に対して前記取得した衛星に亘る内部SPS受信機クロックの不均一値は、不良な位置推定であることを示す、請求項10に記載のシステム
【請求項15】
前記衛星情報は、衛星位置データ、衛星速度データ、疑似距離測定、ドップラー周波数測定、信号伝送時間、衛星の状態情報、及び地上での衛星信号の測定を備えている、請求項8に記載のシステム。
【請求項16】
有力なWLAN位置導出解の前記組を決定することは、
前記WLAN位置導出解の予測誤差に基づいてWLAN位置導出解の周囲の不確定区域を決定することを含み、前記不確定区域は、複数の有力なWLAN位置導出解を有しており、
さらに、有力なWLAN位置導出解の前記組から最良のWLAN位置導出解を決定することは、
前記衛星情報を最もよく満足する前記WLAN位置の不確定区域の内側で前記WLAN位置導出解を決定することを含んでいることと特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記不確定区域をグリッドに分割し、当該グリッドの各点の前記衛星情報を使用して前記WLAN位置導出解を評価することを備えている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記値は内部衛星測位システム(SPS)受信機クロックバイアスであって、各グリッド点の前記衛星情報を利用して取得されたそれぞれの衛星の前記内部SPS受信機クロックバイアスを決定することを更に備えている、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記一組の有力なWLAN位置導出解を決定する前記論理は、前記WLAN位置導出解の予測誤差に基づいてWLAN位置導出解の周囲の不確定区域を決定する論理を含み、前記区域は、複数の有力な位置導出解を有しており、
さらに、前記衛星情報を用いて、有力なWLAN位置導出解の前記組から最良のWLAN位置導出解を決定するための論理は、前記衛星情報を最もよく満足する前記WLAN位置導出解として、前記装置の位置を決定する論理を含んでいることを特徴とする、請求項8に記載のシステム。
【請求項20】
前記不確定区域を決定する論理は、当該不確定区域をグリッドに分割し、
前記最良のWLAN位置導出解を決定するための論理は、前記グリッドの各点の前記衛星情報を使用して前記WLAN位置導出解を評価することを特徴とする請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記最良のWLAN位置導出解を決定するための論理は、各グリッド点の前記衛星情報の前記内部SPS受信機クロックバイアスを決定する、請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概略的には、ハイブリッド測位システムに、より厳密には、位置推定の精度を改善し、測位サービスの可用性をより多くのユーザーへ増大させ、消費電力を下げ、更にユーザーの位置推定における予測誤差の推定を改善するための無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)を利用した測位システム(WLAN‐PS)及び衛星を利用した測位システム(SPS)に関する。
【0002】
本出願は、2008年6月6日出願の米国仮特許出願第61/059,580号「統合化されたWLANを利用した及び衛星を利用した測位システム」の米国特許法第119条(e)下の恩典を請求し、その全体を参考文献としてここに援用する。
【0003】
本出願は、以下の参考文献に関連している。
同時出願の米国特許出願第(未定)号「ハイブリッド測位システムで環境情報を使用するシステム及び方法」、
同時出願の米国特許出願第(未定)号「ハイブリッド測位システムでクロックバイアス精度を維持するシステム及び方法」、
同時出願の米国特許出願第(未定)号「ハイブリッド測位システムで衛星測定値を使用してWLAN‐PS推定位置を改善するシステム及び方法」、
同時出願の米国特許出願第(未定)号「ハイブリッド測位システムで初期位置としてWLAN−PS推定位置を使用して位置を決定する方法及びシステム」、
同時出願の米国特許出願第(未定)号「ハイブリッド測位システムで予測誤差推定の精度を高める方法及びシステム」、
同時出願の米国特許出願第(未定)号「ハイブリッド測位システムで静止したユーザーの検出のための方法及びシステム」及び
同時出願の米国特許出願第(未定)号「ハイブリッド測位システムでWLANアクセスポイントにフィルターをかけるために衛星測位システムを使用するシステム及び方法」である。
【背景技術】
【0004】
近年、多くの携帯型計算装置が飛躍的に増えてきており、より進んだ移動及び無線のサービスの必要性を作り出している。移動電子メール、携帯用無線電話サービス、多人数参加型ゲーム及びコールフォロイング(call−following)は、如何に新しい用途が、移動装置で出現しているのか、ということの実例である。更に、ユーザーは、現在の自分の位置を利用するだけでなく更にその様な位置情報を他者と共有する利用を必要とする/求めるようになっている。親は自分の子供の動きを把握することを望み、監督者は、会社の配達車両の位置を追跡する必要があり、商用旅行者は、処方箋を受け取るために最寄りの薬局を見つけようとする。全てのこれらの例では、個人が自身の現在位置又は他の誰かの位置を知る必要がある。今日まで、我々は、行き方を尋ねること、ヒトに電話して所在を尋ねること又は被雇用者に自身の位置を報告させるためにその時々到着を報告させること、を頼りにしていた。
【0005】
位置を利用したサービスは、地理的な位置を計算し、それらをユーザー又はサービスへ報告する新しい装置の能力を活用する携帯型の利用の新たな領域である。それらのサービスの例は、局地天気、最新交通情報及び運転方向を取得することから子供を追跡する人、仲間を探す人及び都市コンシェルジェサービスに及んでいる。それらの新しい位置感知型装置は、全て、同じ一般概念を使用している様々な技術を頼りにしている。既知の基準点から発せられた無線信号を測定することで、それらの装置は、それらの基準点に対するユーザーの位置を数学的に計算することができる。それぞれのそれらのアプローチは、信号及び測定値の特質及び採用している位置決めアルゴリズムによって、長所及び短所を有している。
【0006】
米国政府によって運営されているナブスター全地球位置把握システム(GPS)は、基準点として中軌道にある約24の軌道衛星を活用している。GPS受信機を装備するユーザーは、受信機が「視野内に」4つ又はそれ以上の衛星が存在しているだけ十分な空を見ることができれば、真位置の数メートル範囲内で、いつどこにいても自身の三次元位置(緯度、経度及び高度)を推定することができる。セルラー電話会社は、ユーザーの又は携帯装置の位置を決定するために携帯電話基地局から発せられる及び携帯電話基地局で受信される信号を使用してきた。アシスト型GPS(AGPS)は、屋内にいる可能性のある及び天空遮断の理由でGPS信号の減衰に対処しなければならない携帯ユーザーの位置を推定するためにGPSとセルラー基地局の技術の両方を組み合わせている別のモデルである。このモデルでは、セルラーネットワークは、衛星位置、クロックオフセット、現在時刻の正確な推定及び携帯基地局の位置に基づいてユーザーの概略的な位置についての情報を伝送することで、GPS受信機が信号受信を改善することを助けようと試みる。以下において、GPS及びAGPSは区別されない。
【0007】
基準点として衛星を使用する全ての測位システムは、本明細書では、衛星を利用した測位システム(SPS)と称している。GPSは、本明細書執筆時点では、唯一の運用中のSPSであり、他のシステムは開発下又は計画中である。GLONASSと呼ばれるロシア製システム及びGalileoと呼ばれるヨーロッパ製システムは、今後数年以内に運用される可能性がある。全てのその様なシステムは、本明細書ではSPSと称している。GPS、GLONASS及びGalileoは、全て、三辺測量の、即ち位置が分かっている衛星までの距離の測定値に基づいて位置を推定するという同じ基本概念に基づいている。各事例では、衛星は、受信機に特定の瞬間に衛星位置を算出させる或るパラメータの値を伝送する。受信機から衛星までの距離は、信号の伝送時間の観点から測定される。それらの距離測定値は、衛星及び受信機(ユーザー装置)のクロック間の同期化の欠如に起因する通常的なバイアスを含む可能性があり、疑似距離値と称される。衛星クロック及び受信機(ユーザー装置)クロック間の同期化の欠如は、受信機クロック及び衛星クロック間の相違を生じ、ここでは内部SPS受信機クロックバイアス又は受信機クロックバイアスと呼ばれる。三次元位置を推定するためには、三次元測定に加えて4つの衛星が受信機のクロックバイアスを推定する必要がある。各衛星からの付加的な測定値は、ドップラー周波数の形式の疑似距離比率に対応する。下文での未処理のSPS測定値への言及は、疑似距離値及びドップラー周波数の測定値を標準的には意味するように意図されている。SPSデータへの言及は、衛星によるデータ放送を標準的には意味するように意図されている。SPS方程式への言及は、衛星からの測定値及びデータをSPS受信機の位置及び速度に関係付ける数学的な方程式を意味するように意図されている。
【0008】
WLANを利用した測位は、携帯電話ユーザーの位置を決定するためにWLANアクセスポイントを使用する技術である。大都市圏内のWLANを利用した測位システムは、幾つかの研究室によって調査されてきた。この分野における最も重要な調査活動は、Place Lab(www.placelab.com、Microsoft及びIntelによって後援を受けている事業)、カリフォルニア大学、サンディエゴ・アクティブキャンパス事業(アクティブ・キャンパス―携帯電話技術を介した教育コミュニティの維持、技術報告書#CS2002−0714)及びMIT学内位置測定システムによって実施されてきた。本明細書執筆時点では、市場には、唯1つの民間の大都市圏内WLANを利用した測位システムが存在しており、それは、本明細書ではSkyhook Wireless, Inc.(www.skyhookwireless.com)のWPS(WiFi測位システム)製品と称されている。
【0009】
図1は、WiFi信号に基づく従来式WLANを利用した測位システムを図示している。測位システムは、携帯電話又はユーザー装置101に在る測位ソフトウェア103を含んでいる。特定の目標地理上の区域全体に亘って、制御/共通チャネル信号を使用して情報を伝送する複数の固定無線アクセスポイント102が存在している。装置101は、それらの伝送を監視している。それぞれのアクセスポイントは、MACアドレスとして知られている独自のハードウェア識別子を含んでいる。クライアント測位ソフトウェア103は、その領域内の802.11アクセスポイントからの伝送を受信し、無線信号の特性を使用して計算装置の地理的位置を計算する。それらの特性は、MACアドレス、802.11アクセスポイントの独自の識別子、信号の到着時間(TOA)及びクライアント装置101での信号強度を含んでいる。クライアントソフトウェア103は、観測された802.11アクセスポイントをアクセスポイントの参考データベース104のアクセスポイントと比較する。この参考データベース104は、装置101に存在していてもよい又はしていなくてもよい。参考データベース104は、計算された地理的位置及びシステムが収集した全てのアクセスポイントの電力プロファイルを含んでいる。電力プロファイルは、様々な位置の信号電力又は信号TOAの測定値の収集から生成されてもよい。それらの周知の位置又は電力プロファイルを使用して、クライアントソフトウェア103は、アクセスポイント102の周知の位置に対するユーザー装置101の位置を計算し、装置101の緯度及び経度、又は緯度、経度及び高度、の形式の絶対地理的座標を決定する。それらの読み出しは、その後、友人を探す人、地方探索ウェブサイト、フリート管理システム及びE911サービスのような位置ベースの用途に供給することができる。
【0010】
本明細書における検討では、アクセスポイントからの未処理のWLAN測定値は、標準的には、受信信号強度(RSS)及び/又は到着時間(TOA)及び/又は到着時間差(TDOA)を意味するように意図されている。データへの言及は、MACアドレス、その1つ又はそれ以上の記録、1つ又はそれ以上の電力プロファイル及びそのアクセスポイントの以前の測定値に基づく他の特質を意味するように標準的には意図されている。WLAN‐PS方程式への言及は、WLAN‐PS測定値及びデータを携帯装置の位置に関係付ける数学方程式を意味するように意図されている。
【0011】
WLANを利用した測位システムは、屋内又は屋外で使用することができる。ユーザーの近辺にWLANアクセスポイントが存在することが唯一の要件である。WLANを利用した測位システムは、位置を推定するために論理を採用する以外には何も修正せずに既存の市販のWLANカードを使用して活用することができる。
【0012】
図2は、WLAN‐PSとSPSを統合する従来式の方法を図解しており、この方法は、WLAN‐PS201及びSPS206、そして位置組み合わせ論理210で構成されている。
【0013】
WLAN‐PS201及びSPS206は、独立型システムであり、それぞれは互いのシステムから独立して作動することができる。従って、それぞれのシステムの結果を互いのシステムから独立して計算することができる。各システムの予測誤差推定の付随した推定位置は、位置組み合わせ論理210に供給され得る。予測誤差推定は、更に、本明細書ではHPE(水平位置誤差)と称されている。SPS206及びWLAN‐PS201の位置更新の公称比率は、1秒に1回である。位置組み合わせ論理210は、両方のシステムによって同じ秒に計算された位置推定を組み合わせる。
【0014】
WLAN‐PS201は、WLANアクセスポイントを使用することで携帯装置の位置を推定する従来式のシステムである。WLAN‐PS201は、WLAN AP202のスキャナ、WLAN AP203を選択する装置、三辺測量モジュール204及びHPE推定装置205を含んでいてもよい。
【0015】
WLANスキャナ202は、受信電力(RSS、受信信号強度)及び/又は信号の到着時間(TOA)を検出することで携帯装置周辺のWLAN APを検出する。能動的走査、受動的走査又は受動的走査及び能動的走査の組み合わせを含むWLAN APを検出するために異なる方法を使用することができる。
【0016】
選択WLAN AP装置203は、携帯装置の位置を推定するために最良のWLAN APの組を選択する。例えば、10のWLAN APが検出され、1つのAPがシカゴに位置しており、残りはボストンに位置しており他に情報は何もない場合、ボストンAPが選択される。これは、シカゴAPがボストンに移されたことを示している。従来式のシステムでは、最良のWLAN APの組は、受信信号強度、ノイズ分配の信号及び移動される可能性を含む、信号WLAN APの対応するパラメータに加えてWLAN APの地理学上の分布に基づいて選択される。
【0017】
三辺測量モジュール204は、WLAN APと、携帯装置の位置を推定するために対応する測定値及び特性と、を使用している。WLAN APから受信した信号強度又はTOA測定値は、携帯装置からWLAN APまでの距離を推定するために使用されている。周知の位置を備える異なるWLAN APからの距離推定の合算は、携帯装置の位置を計算するために使用されている。三辺測量204は、最近隣と呼ばれる方法を使用することもでき、当該方法では、携帯装置の電力読み出しに類似する又は最近接する電力プロファイルを備えた位置が、携帯装置の最終位置として報告される。各WLAN AP又は全受信可能範囲の電力プロファイルは、受信可能範囲の詳細な調査によってシステムの較正段階で見つけることができる。
【0018】
HPE推定装置205は、携帯装置の位置推定の予測誤差を推定するモジュールである。その全体を参考文献としてここに援用する、同時係属Skyhook無線特許出願第11/625,450号「WLANを利用した測位システムの中の測位誤差を推定するシステム及び方法」で説明されたように、HPE又は水平位置調整誤差は、以前に走査したAP及びそれらの特性及び更に受信信号の特性に基づいて計算される。
【0019】
SPSシステム206は、衛星信号受信機及び測定装置207、三辺測量装置208及びSPS HPE推定モジュール209で構成されている。
【0020】
衛星信号受信機及び測定装置207は、装置の視界の中の衛星から信号を受信し、受信信号を復号し、各衛星からの衛星パラメータを測定する。測定値は、疑似距離、搬送周波数及びドップラー周波数を含んでいてもよい。
【0021】
三辺測量装置208は、ユーザー装置の位置、携帯装置の移動速度及び移動方向を推定するために、少なくとも4つの衛星からの測定値及び視界の中の衛星の位置を使用する。
【0022】
HPE推定装置209は、推定位置の予測誤差を推定する。HPE推定装置209は、従来式であり、衛星の幾何学及び衛星からの受信信号の信号品質に基づく予測誤差、例えばDOP(精度低下率)、及びC/N(搬送波対ノイズ比)などを計算する。
【0023】
位置組み合わせ論理210は、WLAN−PS201及びSPS206からほとんど同じ秒の間に計算された位置及びHPE推定を受信する。言い換えれば、同時に行われる測定値と推定値は、比較され且つ組み合わされる。実際には、1秒以内の測定値及び推定値は、同時と考えることができる。ユーザー装置の位置組み合わせ論理210は、それらの1つを選択すること又はそれらを線形に組み合わせることで1つの推定位置を報告する。例えば位置組み合わせ論理は、報告された予測誤差又はHPEに基づいてWLAN−PS201又はSPS206によって提供された推定位置の1つを選択してもよく、又はHPEに照らして両方のシステムによる推定位置の加重平均を報告してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本願発明は、最良のWLAN−PS導出解を選択することでハイブリッド衛星/WLAN測位システムを使用して位置を決定する方法及びシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
幾つかの実施形態では、衛星測位情報を使用するWLANを利用した位置推定の精度を高める方法は、1つ又はそれ以上のWLANアクセスポイントに基づいてWLANと衛星を使用することができる装置に対して一組の有力なWLAN位置導出解を決定することと、少なくとも2つの異なる衛星から、WLANと衛星を使用することができる装置のために衛星情報を取得することと、有力なWLAN位置導出解の組から最良のWLAN位置導出解を決定するために少なくとも2つの異なる衛星からの衛星情報を使用することと、を含んでいてもよい。
【0026】
幾つかの実施形態では、有力なWLAN位置導出解の組から最良のWLAN位置導出解を決定するために少なくとも2つの異なる衛星からの衛星情報を使用することは、衛星情報に対する有力なWLAN位置導出解のそれぞれを検証すること及び衛星情報を満足する有力なWLAN位置標定のどれかに基づいて位置を選択することを含んでいてもよい。
【0027】
幾つかの実施形態では、有力なWLAN位置導出解の組から最良のWLAN位置導出解を決定するために少なくとも2つの異なる衛星からの衛星位置情報を使用する段階は、衛星情報と一致しない有力なWLAN位置導出解を削除することを含んでいてもよい。
【0028】
幾つかの実施形態では、衛星情報と一致したWLAN位置導出解は、有力なWLANを利用した位置推定のそれぞれを衛星測定値に適用すること及びそれぞれの有力なWLANを利用した位置推定に対して内部SPS受信機クロックバイアスを計算すること、によって測定されてもよい。
【0029】
幾つかの実施形態では、有力なWLANを利用した位置推定のそれぞれに対する内部SPS受信機クロックの一致性は、WLANを利用した位置推定及び衛星測位システムの有力な導出解の間の距離を示すものとして使用することができる。
【0030】
幾つかの実施形態では、有力なWLANを利用した位置推定のそれぞれに対する内部SPS受信機クロックの一致性は、WLANを利用した位置推定及び衛星測定値の間の一致性を示すものとして使用することができる。
【0031】
幾つかの実施形態では、所与のWLANを利用した位置推定に対して取得した衛星に亘って実質的に同じ内部SPS受信機クロックバイアスは、良好な位置推定であることを示すことができる。
【0032】
所与のWLANを利用した位置推定に対して取得した衛星に亘る内部SPS受信機クロックの不均一値は、不良な位置推定であることを示すことができる。
【0033】
幾つかの実施形態では、有力なWLAN位置導出解の組は、クラスターを含んでいてもよい。
【0034】
幾つかの実施形態では、衛星情報は、領域、表面又は曲線の形式の衛星位置導出解を提供してもよい。
【0035】
幾つかの実施形態では、方法は、それぞれのWLAN位置導出解から衛星位置導出解までの距離によってWLAN位置導出解を重み付けすることを含んでいてもよい。
【0036】
幾つかの実施形態では、方法は、衛星位置導出解まで短い距離、例えば10メートルを有するWLAN位置導出解を選択することを含んでいてもよい。
【0037】
幾つかの実施形態では、方法は、衛星位置導出解まで長い距離、例えば1,000メートルを有するWLAN位置導出解を削除することを含んでいてもよい。
【0038】
幾つかの実施形態では、衛星情報は、衛星位置データ、衛星速度データ、疑似距離測定、ドップラー周波数測定及び信号伝送時間を含んでいてもよい。
【0039】
幾つかの実施形態では、本出願は、衛星測位情報を使用してWLANを利用した位置推定の精度を高めるシステムに関しており、1つ又はそれ以上のWLANアクセスポイントから情報を受信するWLANモジュールと、少なくとも2つの異なる衛星から衛星情報を取得する衛星測位モジュールと、を含んでいてもよい測位モジュールと、1つ又はそれ以上のWLANアクセスポイントに基づいて一組の有力なWLAN位置導出解を決定するWLANモジュールの中に組み込まれる論理と、有力なWLAN位置導出解の組から最良のWLAN位置導出解を決定するために少なくとも2つの異なる衛星からの衛星情報を使用するために測位モジュールの中に組み込まれる論理と、を含んでいる。
【0040】
幾つかの実施形態では、本出願は、衛星測位情報を用いてWLANを利用した測位推定の精度を高めるハイブリッド測位システムを有する携帯装置に関している。幾つかの実施形態では、携帯装置は、1つ又はそれ以上のWLANアクセスポイントから情報を受信するWLANモジュールと、少なくとも2つの異なる衛星からの衛星情報を取得する衛星測位モジュールと、を含んでいてもよいハイブリッド測位モジュールと、1つ又はそれ以上のWLANアクセスポイントに基づいて一組の有力なWLAN位置導出解を決定するためにWLANモジュールの中に組み込まれる論理と、有力なWLAN位置導出解の組から最良のWLAN位置導出解を決定するために少なくとも2つの異なる衛星からの衛星情報を使用するために測位モジュールの中に組み込まれる論理と、を含んでいてもよい。
【0041】
幾つかの実施形態では、方法は、WLANと衛星を使用することができる装置の範囲内でWLAN APを検出することと、装置の複数の有力な衛星位置を提供するために少なくとも2つの衛星から衛星測定値を取得することと、WLAN APから装置の有力な衛星位置までの距離に基づいてそれぞれのAPに重みを付与することと、によって、WLANアクセスポイント(AP)を重み付けするために衛星測定値を使用することでWLANと衛星を使用することができる装置の位置を決定することを含んでいてもよい。
【0042】
幾つかの実施形態では、方法は、装置の位置を決定するために位置アルゴリズムでAP毎に重みを使用することを含んでいてもよい。
【0043】
幾つかの実施形態では、装置の有力な衛星位置は、装置のための有力な位置導出解の領域を含んでいてもよい。
【0044】
幾つかの実施形態では、高い重みは、装置の有力な衛星位置に近い可能性のあるAPに対応している。
【0045】
幾つかの実施形態では、装置の位置の衛星推定に近接しているということは、APの受信可能範囲の10倍以内の距離を含んでいる場合がある。
【0046】
幾つかの実施形態では、低い重みは、装置の位置の衛星推定から離れている可能性のあるAPに対応している。
【0047】
幾つかの実施形態では、APがAPの受信可能範囲の10倍を上回る距離に位置する場合、WLAN APは、装置の位置から離れている場合がある。
【0048】
幾つかの実施形態では、WLAN APが装置の有力な衛星位置から離れていると決定される場合、WLANと衛星を使用することができる装置の位置は、離れているWLAN APからのデータがなくても計算することができる。
【0049】
幾つかの実施形態では、重みは、装置のWLAN APの位置と装置の有力な衛星の位置の間の一致性に基づいていてもよい。
【0050】
幾つかの実施形態では、方法は、装置の有力な衛星位置と一致していないWLAN APを削除することを含んでいてもよい。
【0051】
幾つかの実施形態では、WLAN AP位置の衛星情報との一致性は、WLAN AP位置のそれぞれを衛星測定値に適用し、WLAN AP位置毎に内部SPS受信機のクロックバイアスを計算することで測定されてもよい。
【0052】
幾つかの実施形態では、方法は、初期位置としての各WLAN APの位置及び各衛星からの測定値を考察することで、内部SPS受信機のクロックバイアスを計算することを含んでいてもよい。
【0053】
幾つかの実施形態では、WLAN APのそれぞれに対する内部SPS受信機クロックバイアスの一致性は、WLAN AP位置と有力な衛星装置の位置の間の距離を示すものとして使用することができる。
【0054】
幾つかの実施形態では、方法は、内部SPS受信機クロックバイアスの標準偏差又は平均平方誤差を計算することを含んでいてもよい、各WLAN AP位置に対する内部SPS受信機クロックバイアスの一致性を計算することを含んでいてもよい。
【0055】
幾つかの実施形態では、本出願は、WLANアクセスポイント(AP)を重み付けするために衛星測定値を使用することでWLANと衛星を使用することができる装置の位置を決定するためのシステムを説明しており、システムは、1つ又はそれ以上のWLANアクセスポイントからの情報を受信するためのWLANモジュールと、少なくとも2つの異なる衛星からの衛星情報に基づいて装置の複数の有力な装置位置を提供するための衛星測位モジュールと、を含んでいてもよいハイブリッド測位モジュールと、WLAN APから装置の有力な衛星装置位置までの距離に基づいて各APに重みを付与する測位モジュールの中に含まれる論理と、を含んでいてもよい。
【0056】
幾つかの実施形態では、本出願は、初期のWLANを利用した位置決定を改善するために2つ又はそれ以上の衛星測定値を使用することで、WLANと衛星を使用することができる装置の位置を決定する方法に関しており、WLAN測位システムを使用してWLANと衛星を使用することができる装置の位置を推定することと、少なくとも2つの衛星から衛星位置測定値を収集することと、を含んでおり、方法は、WLAN位置推定の予測誤差に基づいてWLAN位置推定の周囲の不確定要素区域を決定することであって、不確定要素区域は、複数の有力な位置導出解を有している、不確定要素を決定することと、衛星測定値を最もよく満足するWLAN位置不確定要素の内側で装置位置推定を決定することと、を含んでいてもよい。
【0057】
幾つかの実施形態では、方法は、不確定要素区域をグリッドに分割することを含んでいてもよい。
【0058】
幾つかの実施形態では、方法は、グリッドの各点の衛星測定値を使用してWLAN位置推定を評価することを含んでいてもよい。
【0059】
幾つかの実施形態では、方法は、各グリッド点の衛星測定値の内部SPS受信機クロックバイアスを決定することを含んでいてもよい。
【0060】
幾つかの実施形態では、方法は、装置の位置を決定するために衛星測定値の内部SPS受信機クロックバイアスの一致性を使用することを含んでいてもよい。
【0061】
幾つかの実施形態では、装置の位置は、衛星測定値に対して最も一致性のある内部SPS受信機クロックバイアスを提供するグリッド点であってもよい。
【0062】
幾つかの実施形態では、グリッドの大きさは、位置決定のための精度要件に基づいていてもよい。
【0063】
幾つかの実施形態では、精度要件は、約10メートルであってもよい。
【0064】
幾つかの実施形態は、衛星測位情報を使用してWLANを利用した位置推定の精度を高めるシステムに関している。システムは、ハイブリッド測位モジュールと、1つ又はそれ以上のWLANアクセスポイントから情報を受信するWLANモジュールと、少なくとも2つの異なる衛星からの衛星情報を取得する衛星測位モジュールと、WLAN位置推定の予測誤差に基づいてWLAN位置推定周囲の不確定要素区域を決定するWLAN測位モジュールの中の論理であって、当該区域は、複数の有力な位置導出解を有している、論理と、最も衛星測定値を満足するWLAN位置推定として装置位置を決定するハイブリッド測位モジュールの中の論理と、を含んでいてもよい。
【0065】
幾つかの実施形態では、方法は、WLANと衛星を使用することができる装置のWLAN位置推定を計算することと、WLANと衛星を使用することができる装置の位置を決定するために衛星位置システムの中で初期位置としてWLAN位置推定を使用することと、を含んでいてもよい。
【0066】
幾つかの実施形態では、システムは、1つ又はそれ以上のWLANアクセスポイントから情報を受信することと、WLANと衛星を使用することができる装置の位置推定を計算することと、のためのWLANモジュールと、
少なくとも4つの異なる衛星から衛星情報を取得するための衛星測位モジュールであって、衛星測位モジュールは、最終位置推定のために初期位置としてWLAN位置推定を使用している、衛星測位モジュールと、を含んでいてもよい測位モジュールを含んでいてもよい。
【0067】
幾つかの実施形態では、WLANと衛星を使用することができる装置の位置決定の予測誤差を決定する方法は、WLAN位置推定及びWLAN位置推定のための予測誤差推定を決定することと、少なくとも2つの衛星から測定値を取得することと、衛星測位システム測定値のWLAN測位システム位置推定に対する一致性を評価することで位置決定の予測誤差を決定することと、を含んでいてもよい。
【0068】
幾つかの実施形態では、WLAN位置推定と衛星測位システム測定値の間の一致した測定値は、位置決定により低い予測誤差をもたらすことができる。
【0069】
幾つかの実施形態では、WLAN位置推定と衛星測位システム測定値の間の一致していない測定値は、位置決定により高い予測誤差をもたらすことができる。
【0070】
幾つかの実施形態では、測定値の一致性は、WLAN測位システム位置推定と衛星測位システム測定値によって提供される有力な導出解の間の距離を含んでいてもよい。
【0071】
幾つかの実施形態では、WLANを利用した位置推定に対する内部SPS受信機クロックの一致性は、WLANを利用した位置推定と衛星測定値の間の一致性を示すものとして使用されてもよい。
【0072】
幾つかの実施形態では、方法は、WLANと衛星を使用することができる装置の位置決定の予測誤差を含んでいてもよく、WLANを利用した位置推定とWLAN位置推定用の予測誤差推定を決定することを含んでおり、方法は、衛星を利用した位置推定と衛星を利用した位置推定のための予測誤差推定を決定することを含んでいてもよく、方法は、衛星測位システム位置推定のWLAN測位システム位置推定に対する一致性を評価することで、位置決定の予測誤差を決定することを含んでいてもよい。
【0073】
幾つかの実施形態では、より低い予測誤差を有する位置推定は、WLANと衛星を使用することができる装置の位置として選択されてもよい。
【0074】
幾つかの実施形態では、方法は、WLAN位置推定と衛星測位システム位置推定を比較することで位置決定の予測誤差を決定することを含んでいてもよい。
【0075】
幾つかの実施形態では、WLAN位置推定と衛星測位システム位置推定の間の一致した測定値は、位置決定により低い予測誤差をもたらすことができる。
【0076】
幾つかの実施形態では、WLAN位置推定と衛星測位システム位置推定の間の一致していない測定値は、位置決定により高い予測誤差をもたらすことができる。
【0077】
幾つかの実施形態では、推定の一致性は、衛星測位システム位置推定とWLAN測位システム位置推定の間の距離を含んでいてもよい。
【0078】
幾つかの実施形態では、方法は、WLANを利用した位置推定と衛星測位システム位置の間の一致性を示すものとして使用されてもよい、WLANを利用した位置推定用の内部SPS受信機クロックを含んでいてもよい。
【0079】
幾つかの実施形態は、衛星測位情報を使用してWLANを利用した位置推定の精度を高めるためのシステムに関している。システムは、WLAN位置推定を計算するために1つ又はそれ以上のWLANアクセスポイントから情報を受信するためのWLANモジュールと、少なくとも2つの異なる衛星から衛星情報を取得するための衛星測位モジュールと、を含んでいる測位モジュールと、衛星測位システム測定値のWLAN測位システム位置推定に対する一致性を評価することで位置決定の予測誤差を決定するための測位モジュールの中に組み込まれる論理と、を含んでいてもよい。
【0080】
幾つかの実施形態は、衛星測位情報を使用してWLANを利用した位置推定の精度を高めるシステムに関している。システムは、1つ又はそれ以上のWLANアクセスポイントから情報を受信するための且つWLAN位置推定を計算する目的の、WLANモジュールと、衛星位置推定を計算するために少なくとも4つの異なる衛星から衛星情報を取得するための衛星測位モジュールと、を含んでいる測位モジュールと、衛星測位システム位置推定のWLAN測位システム位置推定に対する一致性を評価することで位置決定の予測誤差を決定するための測位モジュールの中に組み込まれる論理と、を含んでいてもよい。
【0081】
幾つかの実施形態では、受信した衛星信号のドップラー周波数を測定することで、衛星を使用することができる装置が静止しているか否かを決定する方法は、少なくとも2つの衛星から衛星測定値を取得することであって、衛星測定値は、ドップラー周波数測定値を含んでいる、少なくとも2つの衛星から衛星測定値を取得することと、衛星を使用することができる装置の位置の概略的な推定を取得することと、衛星を使用することができる装置の内部周波数オフセットを計算することと、を含んでいてもよい。
【0082】
幾つかの実施形態では、方法は、衛星の運動を説明するためにドップラー周波数測定値を及び装置のドップラー周波数を提供するために内部周波数オフセットを、調整することを含んでいてもよい。
【0083】
幾つかの実施形態では、方法は、装置のドップラー周波数が小さい場合、装置は静止していると決定することを含んでいてもよい。
【0084】
幾つかの実施形態では、方法は、衛星毎の内部周波数オフセットが実質的に同じ値である場合、装置は静止していると決定することを含んでいてもよい。
【0085】
幾つかの実施形態では、小さいドップラー周波数は、毎時1.609344キロメートル未満の衛星を使用することができる装置の動きに対応するドップラー周波数であってもよい。
【0086】
幾つかの実施形態では、装置が静止していると決定される場合、方法は、省電力特徴を、衛星を使用することができる装置の中に位置するWLAN測位システムに実装することを含んでいてもよい。
【0087】
幾つかの実施形態では、省電力特徴は、WLAN測位システムによって、例えば毎分1回より低い頻度で装置位置を更新することを含んでいてもよい。
【0088】
幾つかの実施形態は、受信した衛星信号のドップラー周波数を測定することで衛星を使用することができる装置が静止しているか否かを決定するためのシステムに関している。当該システムは、少なくとも2つの異なる衛星からの衛星情報を取得するための衛星測位モジュールであって、衛星測定値はドップラー周波数測定値を含んでいる、衛星測位モジュールと、衛星の運動を説明するためにドップラー周波数測定値を、及び装置のドップラー周波数を提供するために衛星を使用することができる装置の周波数オフセットを、調節するための衛星測位モジュールの中に位置しており、装置のドップラー周波数が小さい場合、装置は静止していると決定する、論理と、を含んでいる測位モジュールを含んでいてもよい。
【0089】
幾つかの実施形態は、装置が位置する環境の特性を使用してWLANと衛星の測位システムを使用することができる装置の位置を決定するための方法に関しており、装置は、装置の距離範囲にあるWLAN APを検出することと、装置によって検出されたWLAN APに基づいて参考データベースから環境特性を取得することと、環境特性に基づいて、WLAN測位システム又は衛星測位システムを使用するかどうかを決定することと、を含んでいてもよい。
【0090】
幾つかの実施形態では、環境特性は、AP付近の建築物密度、AP付近の建築物高さ及びAPがビルの谷間又は都市部又は郊外部に位置しているかどうか、で構成される群から選択される。
【0091】
幾つかの実施形態では、装置がビルの谷間にあると決定することができる場合、装置は、WLAN測位システムだけに基づいて自らの位置を決定するであろう。
【0092】
幾つかの実施形態では、装置が郊外部にあると決定することができる場合、装置は、衛星測位システムだけに基づいて自らの位置を決定するであろう。
【0093】
幾つかの実施形態では、環境特性は、装置の位置を推定する方法を選択するために衛星測位システムによって使用されてもよい。
【0094】
幾つかの実施形態では、環境特性は、装置の位置を推定する方法を選択するためにWLAN測位システムによって使用されてもよい。
【0095】
幾つかの実施形態は、装置が位置している環境の特性を使用して装置の位置を決定するハイブリッド測位システムに関しており、当該システムは、1つ又はそれ以上のWLANアクセスポイントから情報を受信するためのWLANモジュールであって、環境特性を含んでいるWLANモジュールと、衛星情報を取得するための衛星測位モジュールと、を含んでいる測位モジュールと、環境特性に基づいてWLAN測位システム又は衛星測位システムを使用するかどうかを決定するために測位モジュールの中に組み込まれる論理と、を含んでいる。
【0096】
幾つかの実施形態では、WLANアクセスポイント(AP)を使用することで衛星測位システム受信機の内部クロックの安定性を維持するための方法は、基準として1つ又はそれ以上のWLAN APを使用することで衛星測位システム受信機の内部クロック精度を維持することを含んでいてもよい。
【0097】
幾つかの実施形態では、内部クロック精度を維持することは、WLAN APによって伝送される及び衛星測位システム受信機によって受信される、1つ又はそれ以上の信号の1つ又はそれ以上の時間間隔を測定することを含んでいてもよい。
【0098】
幾つかの実施形態では、WLAN APは、衛星測位システムクロックと同期することで内部クロック精度を維持している。
【0099】
幾つかの実施形態では、WLAN APは、衛星測位システムクロックと同期するために衛星測位システム受信機を含んでいてもよい。
【0100】
幾つかの実施形態では、WLAN APは、衛星測位システムクロックと同期するために中央側に接続されてもよい。
【0101】
幾つかの実施形態では、WLAN APは、正確な内部発振器受信機を使用することで内部クロック精度を維持してもよい
【0102】
幾つかの実施形態では、方法は、WLAN APから、内部発振器の精度についての情報又はタイミングの予測誤差を受信することと、衛星受信機の内部クロックバイアスを修正及び維持するために異なるWLAN APからタイミング測定値を選択することと、を含んでいてもよい。
【0103】
幾つかの実施形態では、方法は、内部発振器の衛星受信機の精度より高い内部発振器の精度を備えたWLAN APを選択することを含んでいてもよい。
【0104】
幾つかの実施形態では、WLAN APは、地方自治体のAPであってもよく、地方自治体のAPは、衛星測位システムクロックと同期化される。
【0105】
幾つかの実施形態では、衛星測位システム受信機は、WLAN受信機を含んでいてもよい。
【0106】
幾つかの実施形態では、衛星測位受信機は、基準として1つ又はそれ以上のWLAN APを使用することで内部クロックバイアスを維持している。幾つかの実施形態では、WLAN APは、地方自治体のAPであってもよい。
【0107】
本発明の様々な実施形態のより完全な理解のため、この後に続く添付図面と関連させながらこれより下記の説明に論及してゆく。
【図面の簡単な説明】
【0108】
図1】WLAN測位システムの高レベルアーキテクチャを図解している。
図2】WLAN‐PS及びSPSを統合する従来式の方法のためのシステムを図解している。
図3】開示する主題の幾つかの実施形態によるWLAN‐PS及びSPS統合導出解を提供するシステムを図解している。
図4】開示する主題の幾つかの実施形態による2つの衛星からの未処理のSPS測定値を使用して有力なWLAN‐PS導出解の間で導出解を選択する実施例を図解している。
図5】WLAN−PS及びSPSを統合するシステムを図解しており、ここでは未処理のSPS測定値が開示する主題の幾つかの実施形態によって最良の導出解を選択するためにWLAN‐PSに提供されている。
図6】開示する主題の幾つかの実施形態によるSPSの有力な導出解に基づいて有力なWLAN‐PS導出解の間で導出解を選択する実施例を図解している。
図7】開示する主題の幾つかの実施形態による未処理のSPS測定値に基づいて最良の組のWLAN APを選択する実施例を図解している。
図8】WLAN−PS及びSPSを統合し、開示する主題の幾つかの実施形態によるWLAN‐PSの一組のWLAN APを選択するために、2つ又はそれ以上の衛星から未処理のSPS測定値を使用するシステムを図解している。
図9】開示する主題の幾つかの実施形態による携帯装置の位置の最良の推定を探し出すためにSPSに対するWLAN−PSによって提供される位置推定及び不確実性要素を検討するシステムを図解している。
図10】開示する主題の幾つかの実施形態によるグリッド法を使用することで携帯装置の位置の最良の推定を探し出すためにSPSに対するWLAN−PSによって提供される位置推定及び不確実性要素を検討するシステムを図解している。
図11】WLAN−PS及びSPSを統合するシステムを図解しており、ここでは未処理のSPS測定値は、本開示の主題の幾つかの実施形態によるWLAN‐PS位置推定を改良するために使用されている。
図12】WLAN−PS及びSPSを統合するシステムを図解しており、ここではWLAN−PS位置推定は、開示する主題の幾つかの実施形態による初期の位置推定として提供されている。
図13】開示する主題の幾つかの実施形態によるSPS及びWLAN‐PSの情報を使用することで予測誤差の推定の精度を高める実施例を図解している。
図14】開示する主題の幾つかの実施形態によるSPS及びWLAN‐PSの情報を使用することで予測誤差の推定の精度を高めるシステムを図解している。
図15】開示する主題の幾つかの実施形態による2つ又はそれ以上の衛星に基づく静止したユーザーの検出用システムを図解している。
【発明を実施するための形態】
【0109】
開示する主題の実施形態は、ハイブリッド測位システムを作るためにWLANを利用した測位システム(WLAN‐PS)及び衛星を利用した測位システム(SPS)を統合する方法を提供している。統合された又はハイブリッドのシステムは、測位及び速度推定及び方位推定の精度及び予測誤差推定の精度を高めるため、及び独立して機能する各個別のシステムと比較して消費電力を低減するために、1つ又はそれ以上のシステムからの測定値を組み合わせるシステムを指している。ハイブリッド測位システムを作り出すためにWLAN−PS及びSPSを統合する方法は、別の入力として未処理のSPS測定値をWLAN−PSへ及び別の入力としてWLAN‐PS最終推定をSPSに追加することができる。2つ又はそれ以上の衛星からの未処理のSPS測定値は、WLAN−PSが位置推定、HPE及び静止ユーザー検出の精度を高めることを支援することができる。WLAN−PS初期位置推定及び他の推定は、同様に、SPSが初回測位時間(TTFF)及び電力消費を低減することを支援することができる。ハイブリッド測位システムは、更に、精度向上又は他の推定に関する値を追加していない時には、WLAN−PS又はSPSの動作を停止することで、別々に作動するWLAN−PS及びSPSと比較して電力消費を低減することができる。
【0110】
図3はWLAN−PS301及びSPS306のハイブリッドシステムのブロック図を図解している。
【0111】
SPS306は、図2のSPS206と同じ装置から構成されており、出力311及び(本明細書でより詳細に検討される)WLAN−PSからの入力312が追加された、市販の従来式の衛星測位装置である。衛星受信機及び測定装置207は、全ての従来式SPS受信機306の一部であり、未処理のSPS測定値は、SPS測定の重要な一部である。しかしながら、ここでは、未処理のSPS測定値は、出力311で示すように、SPS306の外部で使用されている。全ての市販されるSPS受信機が、未処理のSPS測定値をSPS306の外部の装置へ公開するわけではない。例えば、SiRF Technology社(カリフォルニア州、サンノゼ)製のStar III GPSは、未処理のSPS測定値を標準インターフェイスの一部として提供している。しかしながら、その様な測定値を提供しない他のGPS受信機も幾つかある。未処理のSPS測定値を標準インターフェイスの一部として公開していないSPS受信機では、SPS受信機306は、未処理のSPS測定値へのアクセスを認めるように修正される。
【0112】
WLAN−PS301は、未処理のSPS測定値311を受信するように構成されている点を除いて、図2に示すWLAN−PS201と同様の様式で機能している。未処理のSPS測定値のWLAN−PS301との統合は、WLAN AP選択装置303、三辺測量装置304及びHPE推定装置305の設計を変えている。WLAN−PS301は、SPS306からの測位又は導出解が何らなくとも、少なくとも2つの衛星が獲得される場合には未処理のSPS測定値の利点を生かすことができる。
【0113】
未処理のSPS測定値を受信した後のWLAN−PS301のこの設計変更を本明細書でより詳細に検討する。
【0114】
1つの実施形態下では、開示する方法は、WLANを利用した測位システム(WLAN−PS)及び衛星を利用した測位システム(SPS)を統合しており、ここでは、WLAN−PSは、携帯装置の一組の有力な位置を提供し、当該有力な位置の中で、SPS測定値に最も適合する1つが、最終位置推定として選択される。
【0115】
この実施形態は、WLANを利用した測位システム(WLAN−PS)及び衛星を利用した測位システム(SPS)を統合する方法を更に提供することができ、ここでは、WLAN−PSは、携帯装置用の一組の有力な位置を提供し、有力な位置は、複数の有力なSPS装置位置導出解までの距離によって重み付けされる。言い換えると、重みは、WLAN−PSの有力な導出解がどれ程衛星測定値に一致しているのかによってWLAN−PS有力な導出解に割り当てられる。重みをそれぞれの有力な位置に割り当てた後、様々なアルゴリズムをWLAN−PS有力な位置を組み合わせる又は選択するために使用することができる。例えば、最終記録位置を、全ての有力な位置の平均を用いて重み付けすることができ、低い重みの位置は、記録され得る平均の重みの付けられた位置から除去することができる又は最高の重みが付けられた位置だけを記録することができる。選択は、個別の重みがゼロ及び1である重み付けの特別な事例であってもよい。
【0116】
例えば、幾つかの区域におけるWLAN APの高密度の理由から、WLAN−PSは、所与の位置の中で10のWLAN APを検出する場合がある。検出されたWLAN APは、1つよりも多くのクラスターを形成してもよい。クラスターは、互いの受信可能範囲で一組のAPと画定される。WLAN APの受信可能範囲が周知でない場合、公称受信可能範囲を考察してもよい。WLAN APの公称受信可能範囲又は標準的な受信可能範囲は、数千のWLAN APの受信可能範囲を測定することで統計的に獲得され、この文書の執筆時、100m及び250mの間の数字が報告されている。例えば、携帯装置が15のWLAN APを検出し、その内10は、高層ビルの中に位置し、他の5つは高層ビルから離れた(例えば高層ビルから500メートル離れた)オフィスビルの中に位置する場合、検出されたWLAN APは、それぞれ、10及び5の大きさをした2つのクラスターとして考えることができる。従来式の測位アルゴリズムは、高いほうの数のAPを備えたクラスター、即ち10のAPのクラスターを選択するであろう。従来式の手法下では、位置は高層ビルの中のどこかであろう。しかしながら、2つ又はそれ以上の衛星からの未処理のSPS測定値が、たとえSPSからの位置測定を備えていなくてもクラスター情報を備えていると考えられる場合、未処理のSPS測定値は、複数のクラスターからWLAN APの適正なクラスターを選択するために使用することができる。この実施例では、携帯装置も同様にSPS方程式を満足させるので、5つのWLAN APのクラスターは、携帯装置の位置に最近接するクラスターとして選択されてもよい。SPS測定値も、同様に、有力なSPS導出解からの推定距離によって、重みを5つ及び10のAPのクラスターに割り当てるために使用することができる。重みをクラスターに割り当てた後、論理は、クラスターの推定結果を組み合わせ、1つの位置だけを記録するために使用され得る。例えば、クラスターの推定結果の重み付けされた平均、最大重みを有するクラスターの推定又はより高い重みを有するクラスターの推定の平均は、最終推定結果として報告することができる。
【0117】
第1の段階は、ユーザー装置を位置付けるための基準点として使用されるであろうWLANアクセスポイントを検出することである。WLANアクセスポイントは、無作為に分散され、それらは、更に、時間と共に動く場合がある。従って、WLAN測位システムは、エンドユーザーによって検出されるWLANアクセスポイントの全てのクラスターを識別するためにクラスター化アルゴリズムを適用する。
【0118】
WLANアクセスポイントのクラスターは、互いの受信可能範囲内にある一組のWLANアクセスポイントである。アクセスポイントの通常の受信可能範囲よりクラスターから更に離れているWLANアクセスポイントは、新しいクラスターとして考えられる。
【0119】
例えば、ユーザーが、4つのアクセスポイントを検出し、その内の3つは、ボストンに、その内の1つはシアトルに位置している。従って、それらは、2つのクラスターを形成しており、即ちボストンの1つは3つのWLANアクセスポイントを備え、シアトルの1つは、1つのWLANアクセスポイントを備えている。WLANアクセスポイントの各クラスターは、WLAN測位システムの中で離れた位置になってもよい。携帯装置が更に2つ又はそれ以上の衛星から信号を取得する場合、衛星測定値は、WLANアクセスポイントのクラスターを選択するため又はWLANアクセスポイントのクラスターを拒否するために使用されてもよい。2つ又はそれ以上の衛星測定値は、領域(容積、表面又は曲線)の形式をした一組の導出解を提供する。有力なWPS導出解のSPS有力な導出解に対する近接性は、WPS導出解を重み付け、選択又は拒否するための基準になり得る。言い換えれば、WLAN−PS導出解がSPS導出解に近いほど、WLAN−PS導出解の品質は高くなる。
【0120】
例えば図4は、5つのWLANアクセスポイント404から成るWLAN−PS401を示している。WLANアクセスポイントは、この実施例では2つのクラスター、第1のクラスター402及び第2のクラスター403を形成している。それぞれのクラスターは、ユーザー装置の位置を推定するために使用することができる。ユーザー装置が少なくとも2つの衛星405から信号を取得する場合、2つ又はそれ以上の衛星406の有力な導出解を、幾つかのクラスターを選択又は削除するために使用してもよい。この実施例では、2つ又はそれ以上の衛星の有力な導出解を帯域406として示している。クラスター402は、クラスター403と比べて有力な衛星導出解帯域406により近くなっている。従って、クラスター402は選択され、クラスター403は拒否され得る。
【0121】
図5は、SPS及びWLAN−PSの統合された導出解のブロック図を図解している。SPS506は、標準の市販される装置であってもよいが、図3で検討したような未処理のSPS測定値を提供することができなければならない。未処理のSPS測定値311は、WLAN AP503及び三辺測量装置504へ方向付けられる。
【0122】
WLAN AP選択装置503は、WLANスキャナ202から入力としてデータを受信する。WLAN AP選択装置503は、アクセスポイント間の距離に基づいてWLAN APを集めてクラスター化する。WLAN AP選択装置503は、クラスターを識別するだけでなく、クラスター毎に異なる組のWLAN APを選択する。それぞれの異なるクラスターは、異なる位置推定をもたらし得る。全ての異なる組のクラスターは、三辺測量装置504で使用することができ、異なる位置推定をもたらし得る。クラスターに基づく位置推定は、SPS有力な導出解からのクラスター距離によって重み付けされてもよく、又はSPS有力な導出解からのクラスター距離によって選択されてもよい。クラスターが衛星距離導出解に(短距離で)近接していると考えられる場合、クラスターは、高い重みを割り当てられ得る。例えば、クラスターは、衛星距離導出解から約10メートル離れて位置する場合など。クラスターが衛星距離導出解から(長距離で)離れていると考えられる場合、例えばクラスターが衛星距離導出解から約100メートル又は1,000メートル離れて位置する場合などでは、クラスターには低い重みが割り当てられ得る。
【0123】
SPS導出解は、以下のように得ることができる。各衛星測定値では、標準的には、携帯装置の位置の4つの未知の座標(x、y、z)及びSPS受信機の内部クロックバイアスが存在している。2つ又はそれ以上の衛星からの未処理のSPS測定値は、方程式からSPS受信機の内部クロックバイアスを削除するために使用することができる。この場合、結果は、ユーザー装置の位置の座標(x、y、z)の関数になり、一般的な形式として以下のように書くことができる。
F(x、y、z)=0
【0124】
この関数は、衛星の数に基づいて区域、表面、又は曲線を表現することができる。従って、2つ又はそれ以上の衛星からの未処理のSPS測定値は、最終の位置推定を有せずとも、一組の有力な導出解をもたらすことができる。
【0125】
WLAN−PSの異なる導出解及びSPS有力な導出解の間の距離は、各WLAN−PS導出解を重み付けするための基準として使用することができる。重みを各WLAN−PS有力な導出解に割り当てた後、論理は、導出解を組み合わせる又は有力な導出解から導出解を選択するために使用することができる。
【0126】
更に、SPS測定値及びWLAN−PSによって提供される位置の間の一致性は、WLAN−PSによって提供される位置と携帯装置の位置の間の距離を示すものとして使用することができる。ユーザー装置の位置は、(1)有力なWLAN−PS位置をユーザー装置の位置の概略的な推定として使用すること(即ちそれぞれの有力なWLAN−PS位置をx、y、zとして使用すること)及び(2)各衛星からの測定値を使用して、各WLAN−PS位置推定毎に最終の未知の内部衛星受信機クロックバイアスを計算すること、で計算することができる。WLAN位置推定毎の、計算された(近い将来では各衛星毎に計算された)内部衛星受信機クロックバイアスの間の一致性は、WLAN−PSの位置推定と携帯装置の実際の位置の間の距離を示すものとして使用することができる。良好なWLAN−PS推定値は、一致した受信機クロックバイアス推定値を有するであろう、即ちWLAN−PS推定位置が、衛星毎にx、y、z位置として使用される時には、受信機クロックバイアスは、例えば互いの約10%以内で、実質的には同じであろう。しかしながら、WLAN−PS位置がユーザー装置の位置の不良な推定であれば、WLAN−PS位置は、衛星毎に様々な衛星受信機クロックバイアス推定を生み出すであろう、例えば受信機クロックバイアスは、10%より多く変化するであろう。
【0127】
衛星測定値毎に得られるクロックバイアスがCiで示される場合、Ciの一致性は、所与の位置(この場合、WLAN−PSによって決定される位置)と衛星方程式を満足する位置の間の距離の測定として使用することができる。Ciの一致性は、以下のような、
【数1】

Ciの標準偏差又はCi推定の平均平方誤差などの異なる数学的な手法で測定することができる。
【0128】
MSEの値は、Ci標本の一致性の指標として使用することができる。従って、WLAN−PSの全ての有力な位置は、SPSの未処理の測定値で検証することができ、Ciの一致性は、実際の携帯装置の位置までの導出解の距離の指標として使用することができる。この距離は、携帯装置の位置を計算する過程で、APを重み付けする又は選択する又は非選択化する(除外する)ために他のWLAN APパラメータと共に使用することができる。
【0129】
図6は、領域606の形式のSPS導出解及びWLAN測位システム601を示しており、ここではWLANアクセスポイント604が第1のクラスター602及び第2のクラスター603を形成している。携帯装置の2つ又はそれ以上の衛星605の取得は、更に、一組の有力な衛星装置の導出解606をもたらすことができる。SPS導出解606及びWLAN−PS導出解602の間の一致性は、この実施例ではWLAN−PSの602導出解である最良の導出解を選択するために使用される。SPSとWLAN−PSの間の一致性は、それらの両方が導出解の一部と同じ位置を説明している又は最終推定位置が両方のシステムの導出解の内の1つであることを意味している。更に、APのクラスターは、SPS有力な導出解までの距離によって重み付けされてもよい。
【0130】
開示する主題の別の実施形態は、未処理のSPS測定値を使用することでWLANアクセスポイントを重み付けする方法を提供している。未処理のSPS測定値を使用することでエンドユーザーの位置を推定するためにWLANアクセスポイントの最良の組を選択することは、重みをWLAN APに割り当てる特殊な事例であり得る。携帯装置の位置を推定するためにWLANアクセスポイントの最良の組を重み付け又は選択するために使用される他の基準に加えて、未処理のSPS測定値を使用してもよい又は他の基準と組み合わせてもよい。他の基準及び重みは、受信信号強度に基づく重み又は受信信号の往復時間に基づく重みである。WLAN−PSは、携帯装置の位置を推定するためにWLAN−AP及びその特性を使用する。
【0131】
WLAN APの特性は、受信信号強度(RSS)、位置又は位置の推定、信号対ノイズ比及び到着時間(TOA)を、これらに限定するわけではないが、含んでいてもよい。2つ又はそれ以上の衛星からの未処理のSPS測定値は、WLAN APの位置(又は推定位置)と携帯装置の実際の位置の間の距離を示すものを計算するために使用される。距離のこの表示は、携帯装置の位置を推定するためにWLAN APの最良の組みを選択するために使用することができる又は距離の指標は、装置の位置からの距離によってWLAN APを重み付けするために使用することができる。少なくとも2つの衛星からの未処理のSPS測定値は、SPSから位置推定を有している又は有していない状態で、この工程で使用することができる。距離がWLAN APの受信可能範囲の10倍を上回る場合、距離は遠いと考えられる。近い又は遠くないと考えられる距離は、WLAN APの受信可能範囲の10倍以内の距離である。遠いと考えられるWLAN APは、測位計算から削除することができる。
【0132】
図7は、WLAN−PS及びSPSの統合型導出解の実施例を示しており、ここでは、携帯装置は5つのWLANアクセスポイント702を検出し、2つの衛星704から信号及び未処理の測定値を取得している。この実施例では、WLANアクセスポイントは、携帯装置の周囲に無作為に広がり、WLANアクセスポイント702と2つの衛星703の有力な導出解の間の距離は、WLANアクセスポイントと携帯装置の実際の位置の間の距離を示すものとして使用することができる。有力なSPS導出解703の領域は、2つの衛星からの測定値を使用して計算される。WLANアクセスポイント702とSPS有力な導出解703の間の距離は、WLANアクセスポイントと携帯装置の実際の位置の間の距離の指標として使用される。この実施例では、全てのWLANアクセスポイント702−1は、SPS有力な導出解703に非常に近接しているが、1つのWLANアクセスポイント702−2はそうではない。従って、WLANアクセスポイント702―2と有力なSPS導出解703の間のより長い距離は、他の検出されたWLANアクセスポイント702−1と比較して、WLANアクセスポイント702−2と携帯装置の位置の間のより大きい距離の指標である。従って、WLANアクセスポイント702−2は、SPS有力な導出解までの距離によって重み付けされ得る、又は携帯装置位置を計算するためにAPの組から除去され得る。
【0133】
図8は、WLAN−PS801及びSPS806の統合導出解を図解しており、ここでは全てのモジュールは、WLAN AP803を選択すること以外は図2と同じである。WLAN AP803の選択では、更に、入力として未処理のSPS測定値311を受信している。これらの未処理の測定値は、WLAN APの位置(又は推定位置)と携帯装置の位置の間の距離を推定するために使用される。
【0134】
前述の実施形態で検討したように、この実施形態では、2つ又はそれ以上の衛星からのSPS測定値を使用して、WLAN AP位置(又は推定位置)と携帯装置の実際の位置の間の距離の表示を計算する必要性が存在している。未処理のSPS測定値とWLAN APの間の一致性は、WLAN APの位置と携帯装置の位置の間の距離を示すものとして使用することができる。一致性は、(1)WLAN APの位置を携帯装置の位置の推定として使用すること及び(2)各衛星からの測定値に基づいてWLAN APの位置毎に受信機のクロックバイアスを計算することで、計算することができる。計算した受信機クロックバイアス間の一致性は、WLAN AP位置と携帯装置の実際の位置の間の距離の指標として使用することができる。
【0135】
言い換えれば、疑似距離測定値を用いてWLAN APの位置をSPS方程式の初期位置に適用した後、唯一残っている未知の要素は、全てのSPSの未処理の測定値に対して同じある、受信機クロックバイアスである。衛星測定値毎に得られるクロックバイアスがCiで示される場合、Ciの一致性は、所与の位置(この場合、WLAN APの位置)と衛星方程式を満足する位置の間の距離の測定として使用される。Ciの一致性は、以下のような、
【数2】

Ciの標準偏差又はCi推定の平均平方誤差などの異なる数学的な手法で測定することができる。
【0136】
MSEの値は、Ci標本の一致性の指標として使用することができる。従って、全ての検出されたWLAN APの位置は、SPSの未処理の測定値で検証することができ、Ciの一致性は、携帯装置の位置までの距離の指標として使用することができる。この指標は、携帯装置の位置を計算する過程でAPを重み付け、選択又は除去するために他のAPパラメータと共に使用することができる。
【0137】
開示する主題の別の実施形態の下では、WLAN−PSが、有力な位置導出解が存在する領域を提供するシステム及び方法が提供されており、当該提供される領域の中で、携帯装置の最終の位置推定が、2つ又はそれ以上の衛星からのSPS測定値に基づいて選択される。
【0138】
図9は、統合されたWLAN−PS及びSPSを示しており、ここではWLAN−PS901は、幾つかの不確定要素903と共に携帯装置の位置の推定を提供している。不確定要素903は、WLAN−PSの予測誤差であり得る。携帯装置は、2つ又はそれ以上の衛星902からの信号を更に取得する。WLAN−PSによって報告される不確定要素区域903の中の全てのポイントを使用して、衛星測定値に最も適合する位置904は、携帯装置の位置の最良の推定として選択される。
【0139】
その領域で衛星の導出解に適合する最良のポイントは、不確定要素区域903を小グリッドに分割し、図10に示すようなそれぞれのグリッド点を評価することで探し出すことができる。グリッド線間の距離は、位置推定の必要な精度及びSPS測定値の品質に基づいていてもよい。精度要件及びSPS測定値品質が高いほど、できるグリッド線間の距離が小さくなり、且つ位置推定がより正確になる。例えばグリッド線は、約5メートル及び約100メートルの間だけ離れていてもよく、約10メートル離れていれば望ましい。
【0140】
この実施形態では、SPS衛星902の数は、2つ又はそれ以上であってもよい。このシステム又は方法は、SPSが、携帯装置の位置をそれ自体では決定することができないが、SPS疑似距離方程式と最も一致する物を最良の位置904として選択するために、WLAN−PS有力な導出解903をSPS情報で検証することができる事例で使用することができる。
【0141】
図11は、WLAN−PS1101及びSPS1106の統合導出解を示しており、ここでは、WLAN−PSによって提供される最終位置推定は、2つ又はそれ以上の衛星からのSPS測定値311を使用することで改良されている。新しいモジュール、改良モジュール1111は、WLAN−PS三辺測量結果、それらの測定値の対応する不確定要素及び2つ又はそれ以上の衛星からのSPS測定値を受信する従来式WLAN−PSに追加される。この情報を使用して、改良モジュール1111は、携帯装置の位置の推定を報告する。
【0142】
例えば、WLAN‐PSが、有力な位置導出解の圏域を改良モジュール1111に提供する場合。圏域の大きさは、幾つかの実施形態のそれぞれの位置推定のために計算することができる、又はWLAN−PSの不確定要素の公称値を使用することができる、WLAN−PS(予測誤差)の位置推定の不確定要素に対応している。例えば、Skyhook無線WLAN−PSの中央誤差は、約30mであり、WLAN−PS誤差の公称値として使用することができる。次の段階では、2つ又はそれ以上の衛星からのSPS測定値は、SPS測定値を最もよく満足するWLAN−PSによって特定される領域の中でポイントを探し出すために使用することができる。衛星毎の衛星方程式は以下のように
Fi(x,y,z,b)=0
と書ける。
【0143】
その(x、y、z)は、携帯装置の位置であり、bは、SPS受信機の内部クロックバイアスを示している。WLAN−PSによって特定される領域の中の任意のポイントは、携帯装置の位置(x、y、z)の推定を提供し、内部クロックバイアスは、それぞれの取得衛星に対して計算される。全ての測定値は、同じSPS受信機によってほぼ同時に行われるので、SPS受信機の内部クロックバイアスは、全てのSPS測定値に対してほぼ同じでなければならない。従って、先に論じたように、異なる取得衛星から計算されたSPS受信機の受信機クロックバイアス間の一致性は、携帯装置の位置推定(x、y、z)と実際の位置の間の距離を示すことができる。SPS受信機の計算された内部クロックの一致性は、受信機クロックバイアス測定値の標準偏差を計算することで測定することができる。
【0144】
WLAN−PSによって特定される領域がグリッドに分割される場合、SPS方程式は各グリッド点で検証される。全ての取得衛星に対して最も一致性を有する受信機クロックバイアスを提供するグリッド点は、携帯装置の最良の位置推定である。
【0145】
本発明の別の実施形態は、初期位置としてのWLAN−PSの位置推定をSPSに提供することでSPSの取得時間を短縮する方法を提供している。WLAN−PSによって初期位置を提供することは、SPSの取得期間を短縮し、それによってSPSの初回測位時間を短縮する。衛星の測位システムは、既に初期位置を受信する方法を提供しており、当該システムがSPSの内部に提供された初期位置を使用する方法は、一般的に周知である。本システムは、衛星測位システム用の初期位置の源としてWLAN−PS位置推定を使用する。SPS衛星の位置は如何なる時も周知であるので、携帯装置の概略的な位置の知識は、SPSが探索する衛星の組を、全ての衛星ではなく、装置にとって実際に可視的な衛星の組まで減らすことに役立ち得、それによって探索時間を短縮する。
【0146】
図12は、WLAN−PS201及びSPS1203を図解しており、ここではWLAN−PSは、SPSシステムに初期位置1211を提供している。従って、WLAN−PS201によって携帯装置1211の推定される位置は、初期位置としてSPS1202に提供することができる。携帯装置の初期位置を知ることは、SPS1202が装置の位置を探索し、装置の位置の測位時間を短縮するために、最良の組の衛星を選択することに役立つことができる。
【0147】
WLAN−PS及びSPSは、独立して機能し、位置推定、位置推定の予測誤差、速度及び方位推定を含む携帯装置の特質の推定を提供することができる。しかしながら、WLAN−PSは、SPSに比べて初回測位時間(TTFF)がかなり短いので、WLAN−PSによる推定位置は、携帯装置の初期位置としてSPSに提供することができ、位置を探し出すのに必要な時間を短縮している。
【0148】
初期位置の受け取りは、SPSの標準的な動作であり、SPS受信機のほとんどは、初期位置を受信する方法を提供している。ここでWLAN−PSは、初期位置をSPSに提供する源として使用されている。
【0149】
本発明の別の実施形態は、SPS及びWLAN−PSの統合位置導出解の位置推定の予測誤差の精度を高め、各個別のシステム毎に誤差を誤差位置結果と比較する方法を提供している。予測誤差推定は、推定位置付近の不確定要素区域を提供している。WLAN−PS及びSPSの推定位置が互いの不確定要素区域の中にある場合、不確定要素区域は、両方のシステムから推定される位置の間の距離に基づいて縮小される。WLAN−PS及びSPSの推定位置が互いの不確定要素区域の中にない場合、不確定要素区域は両方のシステムから推定される位置の間の距離に基づいて増大される。WLAN−PS及びSPSの推定位置の内の1つだけが他のシステムの不確定要素区域の内側に入る場合、不確定要素区域は、各システムから推定される誤差の品質に基づいて縮小又は増大することができる。位置推定の推定誤差は、通常95%信頼区間を報告しているが、何らかの他の信頼区間を更に報告してもよい。
【0150】
本発明の別の実施形態は、SPS及びWLAN−PSの統合された位置導出解の位置推定の予測誤差の精度を高める方法を提供している。WLAN−PSは、位置推定を提供しており、SPSは、少なくとも2つの衛星を取得している。予測誤差推定は、推定WLAN−PS位置の周囲の不確定要素区域を提供している。WLAN−PSの推定位置及び未処理のSPS測定値の間の一致性は、予測誤差推定を減らす又は増やす基準として使用されている。WLAN−PSの推定位置及び未処理のSPS測定値が一致する場合、不確定要素区域は、SPS有力な導出解からWLAN−PS推定位置の間の距離に基づいて減らされる。WLAN−PSの推定位置及び未処理のSPS測定値が一致していない場合、不確定要素区域は、SPS有力な導出解からWLAN−PS推定位置の間の距離に基づいて増やされる。
【0151】
図13は、WLAN−PS位置推定1301及び推定のWLAN−PS予測誤差1303並びに更にSPS位置推定1302及び推定のSPS予測誤差1304を図解している。各システムによって報告される不確定要素は、位置推定の予測誤差である。
【0152】
その様なシステムでは、SPS及びWLAN−PSは、それぞれ、位置推定及び更にその位置推定における予測誤差の推定を提供している。両方のシステムによって提供される位置推定の予測誤差は、位置推定の誤差のより良い推定を提供するために結合される。例えば、各システムが、報告された位置周囲の区域を推定位置の不確定要素として提供する場合(1303及び1304)、統合システムは、最終位置推定の不確定要素を推定するために不確定要素区域の重複部1305及び更に推定位置間の距離1306を考察する。SPS及びWLAN−PSによって推定される位置の間の距離が大きいほど、位置推定の予測誤差は高くなる。別の実装では、システムは、最終位置推定として最も低い不確定要素を備える位置推定を選択することができる。
【0153】
図14は、統合WLAN−PS及びSPSシステムのブロック図を図解しており、ここでは、それぞれのシステムの予測誤差は従来式の方法を用いて計算され、結果は、統合誤差推定システム装置1411に提供される。統合誤差推定1411は、WLAN−PS及びSPSによって報告された位置の間の一致性を考察することで最終予測誤差を計算する。一致性は、先に論じたように、受信機クロックバイアスを比較することで決定することもできる。
【0154】
幾つかの実施形態では、SPSは、携帯装置が静止していることを検出することができる。一般的には、携帯装置の速度又は速さを推定するために4つのSPS衛星から測定値を受け取る。本方法及び本システムは、2つ又はそれ以上の衛星からのドップラー周波数測定値の一致性を検証することで、僅か2つの衛星からの測定値を使用して携帯装置が静止しているか否かを決定することができる。装置が静止している場合、SPSからのドップラー測定値は、装置の初期位置に対する衛星の運動及び受信機のクロックの周波数オフセットによって完全に説明されなければならない。受信機クロックオフセットは、2つ又はそれ以上の衛星からのドップラー測定値を与えられて推定することができる。ユーザーが静止しているという仮説は、推定受信機周波数バイアスがSPSドップラー方程式で置き換えられた後、残余部の大きさに基づいている。
【0155】
携帯装置が静止していることが分かると、ハイブリッドシステムは、装置が動いている時とは異なってWLAN−PSに応答させることができる。例えば、WLAN−PSは、それほど頻繁ではなく、例えば1秒に1回、位置の更新を行うことで電力を節約することができる。更に、WLAN−PSは、携帯装置が静止している時間間隔を通して検出されたWLANアクセスポイントの全てを考察し、携帯装置の改良された位置を推定するために集合的な情報を使用することができる。これは、WLAN−PSが、アクセスポイントから受信した信号強度のより良い推定を取得することができ、及びユーザーが静止している時には、多重通路に起因する電源変動をより一層緩和することができるからである。多重通路は、2つ又はそれ以上の通路を通って受信アンテナに届く無線信号をもたらし、電力を変動させる伝播現象であり、それは、無線伝播分野の専門家には周知の現象である。
【0156】
図15は、2つ又はそれ以上の衛星に基づく静止したユーザーの検知を図解している。
【0157】
携帯装置1503が2つ又はそれ以上の衛星1501、1502を検出する場合、携帯装置は静止している又は衛星からの受信信号のドップラー測定から動いていることを決定することができる。
【0158】
第1の段階は、WLAN−PSによって計算することができる携帯装置1503の概略的な位置を探しだすことである。携帯装置の位置についてのこの概略的な推定は、他の測位技術によっても同様に提供され得る。携帯装置の位置についての概略的な推定は、約2キロメータまでの誤差を有する場合があるが、WLAN−PSによる位置の概略的な推定の精度は最大で2百メートルである。
【0159】
携帯装置は、図15では衛星1501及び1502で示される、少なくとも2つの衛星からの信号を取得することができる。携帯装置は、更に、信号取得の正にその時点の衛星の速度が分かっている。言い換えれば、携帯装置1503が時間tに衛星1501及び1502から信号を取得する場合、時間tの時点の衛星の速度を携帯装置は分かっている。全ての衛星は、いつの時点においてもその速度を送信しているので、携帯装置1503は、衛星から受信したメッセージを復号化することで取得した衛星1501及び1502の速度を確定することができる。携帯装置は、他の源、例えばセルラーネットワークから衛星速度を受信することもできる。
【0160】
速度は、大きさ及び方向を備えたベクトルであり、衛星1501及び1502に関してそれぞれ速度V1及びV2で示されている。衛星の運動に起因するドップラー周波数は、速度に基づいて計算される。衛星毎のドップラー周波数を得るための簡易方程式は、以下のようである。
【数3】
【0161】
λは、SPS無線の波長であり、どの様なSPSシステムでも既知のものであり、fdは、ドップラー周波数である。
【0162】
携帯装置は、各衛星から受信した信号の周波数を測定する。各衛星の伝送周波数は分かっているので、携帯装置は、受信信号周波数及び伝送信号周波数間の差を測定することができる。受信周波数及び伝送周波数の差は、衛星1501及び1502ではそれぞれfm1及びfm2と表示される。
【0163】
内部クロックの携帯装置周波数オフセットがf0であり、携帯装置1503の速度がvmである場合、各衛星から測定される周波数は、以下のように計算される。
【数4】
【0164】
角度α1及びα2は、衛星の速度ベクトルと、衛星1501及び1502それぞれに関して携帯装置を衛星まで結ぶ線と、の間に存在する。携帯装置は、装置の位置、衛星の位置及び衛星の速度ベクトルに基づいて角度を計算することができる。携帯装置が静止している場合、上記の方程式は以下のように書き換えられる。
【数5】
【0165】
これらの方程式で携帯装置に関して未知の要素は、f0だけであり、各衛星の方程式それぞれから見つけることができる。携帯装置が静止している場合、全ての取得衛星からのf0の値は、同じになるであろう。言い換えれば、全ての取得衛星のための方程式から得られるf0の値が同じではない場合、携帯装置は静止していない。
【0166】
開示する主題の別の実施形態は、WLAN−PSを使用することで携帯装置の環境特性を提供する方法に関している。WLAN APは、測位目的で調査される比較的小さい受信可能範囲を有する静止した無線送受信機である。調査過程の間、WLAN APと関連付けられる特性の1つは、環境特性であり得る。その後、携帯装置によって検出されたWLANアクセスポイントは、携帯装置が作動している環境を決定するためにまとめて使用される。環境特性は、WLANアクセスポイントの属性、例えばAP付近の建築物の密度、AP付近の建築物の高さ及びAPがビルの谷間、都市又は郊外にあるか否か、として考えてもよい。アクセスポイントの環境特性に関するデータは、アクセスポイントの関連データベースに存在する場合があり、ユーザー装置によってそこで取得することができる。区域の細分性は、WLANアクセスポイントで特徴付けられるが、様々であってもよく、建築物ほど小さい又は周辺地域ほど大きい場合がある。環境情報は、位置取得を処理するシステム及び/又は電力管理用のシステムを調整するために、SPS、WLAN−PS及び更に両方のシステムの統合導出解によって使用することができる。例えば、携帯装置がビルの谷間環境にあるという事実についての情報は、ハイブリッドシステムにWLAN−PSだけを信頼するようにさせ、一方で郊外環境にある場合、SPSは、携帯装置の位置及び他の属性を推定する主要な源と見なされるであろう。
【0167】
開示する主題及びシステムの別の実施形態は、WLAN APを使用することでSPS受信機の内部クロックの安定性を維持する方法を提供している。これは、安定したクロックを備えたWLAN装置によって伝送される信号の既知の時間間隔を測定することで実現することができる。SPS受信機の内部クロックの安定性を維持することは、位置決定に重要である。例えば、それは、衛星信号をより高速で取得すること、より低電力で作動することが可能であること及び更に、より少ない衛星で位置決定(位置推定)を提供すること、に有用である。WLAN規格は、WLAN802.11規格DIFS(DCFフレーム間空間)、SIFS(短フレーム間空間)又はスロット時間などにあるような、幾つかのパケットヘッダ、幾つかのパケットの幾つかの分野を、これらに限定するわけではないが、含む一定の時間間隔を画定しており、携帯装置は、長期に亘って内部クロックバイアスを測定し安定性を維持するためにそれらの既知の時間間隔を使用することができる。
【0168】
様々なクロック安定性を備えたWLANアクセスポイントが存在する場合がある。この場合、安定したクロックを備えているアクセスポイントを特定するデータは、WLAN APの特性の一部として考えることができる及び/又は特性は、アクセスポイントのデータベースにあり、そこから取得することができる。
【0169】
初期位置及びクロック情報を提供することに加えて、WLAN測位システムは、WLANを使用することができるSPS受信機にクロック更新を提供することができる。全てのSPS受信機は、GPSクロック情報の表示を維持するために内部発振器を備えている。しかしながら、それらの発振器は、時間の正確な測定を維持することに不備があるので、SPS受信機内部のクロックは、漂動する。このクロック漂動は、位置推定誤差を引き起こす場合がある。正確なGPSクロック情報をSPSシステムに提供しているWLAN−PSによって、WLAN測位システムは、その様な位置推定誤差の回避を促進する。更に、SPS受信機は、GPSクロック情報の高度に正確な測定を維持することができるので、それらは、位置推定計算ではノイズ比(SNR)値よりも比較的低い信号で作動することができる。SPS受信機によるSPSタイミング維持は、衛星から受信された信号の時間の不確定要素を減らす。従って、ノイズから信号を引き出すことはより容易であり、SPS受信機は、SPS信号の観点から、より弱い信号を検出し、より厳しい位置で作動することができる。従って、方法の態様は、SPS受信機が、そのような望ましいSPS信号状態を下回る区域で作動することを可能にする。
【0170】
本開示の別の実施形態は、初期のタイミング及び位置情報をSPS受信機に提供することでSPS受信機推定の精度を高めるために、WLAN地方自治体ネットワークを使用することに関している。WLAN地方自治体ネットワークは、WLAN技術を用いて無線接続を提供するために、市の役人によって又はその管理下で市に設置される市全域に及ぶWLANネットワークである。WLAN地方自治体ネットワークデータを用いてSPS受信機の位置推定精度を改良する方法及びシステムの態様は、以下の項目から構成される。
【0171】
GPSクロック情報を提供することによってSPS位置推定を支援するために、地方自治体WLANアクセスポイントは、GPSクロックと同期化されなければならない。地方自治体ネットワークのWLANアクセスポイントは、以下の例証的な方法、(1)地方自治体ネットワークの各WLAN APは、GPS無線信号からGPSクロック情報を引き出す装置を装備することができる、SPSを使用することができるWLAN APの使用、(2)GPSクロック情報は、1か所で引き出され、その後地方自治体ネットワークの全てのWLAN APに分配されることができる、同期化される集権的クロック分配エンティティの使用及び(3)WLAN APの高品質発振器の使用、の内の1つを用いることでGPSクロックと同期化することができる。発振器は時間を測定し、GPSクロックとの同期化を維持するために使用されている。WLAN AP発振器の品質がSPS受信機の発振器よりも高い限り、WLAN APによって提供されるタイミングは、SPS受信機よりも高くなるであろう。従って、SPS受信機は、内部クロックを使用するよりも良好にタイミングを維持するために、WLAN APを使用することができる。GPSクロック情報を引き出す単一のモジュール(ここでは「クロック分配エンティティ」)は、GPSクロック情報を引き出し、その後、ネットワークの全てのWLANアクセスポイントにタイミングを提供する唯一のユニット及び唯一の位置である。
【0172】
更に、WLAN受信機がSPS受信機に統合される場合、SPS受信機は、WLAN地方自治体ネットワークのWLANアクセスポイントから受信された信号からタイミング情報を引き出すためにWLAN受信機を使用することができる。初期タイミングをSPS受信機に提供する着想は、WLAN地方自治体ネットワークに関して説明されてきたが、それは、GPSクロックに同期化されるどのようなWLANネットワークにも適用することができる。
【0173】
本発明の説明及び実施形態を検討すれば、本発明の本質から逸脱すること無く本発明を実現する中で修正及び均等な置き換えを行うことができることは、当業者には理解頂けるであろう。従って、本発明は、上文で明示的に説明した実施形態によって制限されるように意図されてはおらず、本発明はこの後の特許請求の範囲によってのみ制限される。更に、開示される実施形態の特徴は、追加的な実施形態を作り出すために本発明の範囲の中で組み合わせる、再配置するなどを行うことができる。
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