【文献】
Yakugaku Zasshi,2008年 1月,Vol. 128(1),p. 21-28
【文献】
Tissue Engineering,2008年,Vol. 14, No. 3,p. 197-205
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の複数の細胞の第1の部分を表面の近傍にもたらし、第1の複数の細胞を表面への第1の複数の細胞の少なくとも第2の部分が表面に接着するのを可能にするのに十分な時間、表面の近傍に維持することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
1または複数の磁性ナノ粒子を含む第2の複数の細胞を準備し、磁場を時間とともに変動させて第1の複数の細胞および第2の複数の細胞を操作して、第1の複数の細胞の少なくとも第2部分と第2の複数の細胞の少なくとも第3の部分との間の相互作用をもたらすことをさらに含む、請求項19に記載の方法。
磁場を時間とともに変動させて、第1の複数の細胞および第2の複数の細胞を操作して第1の複数の細胞の少なくとも第2部分と第2の複数の細胞の少なくとも第3の部分とを近傍にもたらすことをさらに含む、請求項23に記載の方法。
磁場を時間とともに変動させて、第1の複数の細胞および第2の複数の細胞を操作して、第1の複数の細胞の少なくとも第2部分と第2の複数の細胞の少なくとも第3の部分とを物理的に接触させることをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本特許または出願のファイルは、カラーで製作された少なくとも1つの図面を含む。カラーの図面(複数可)を含むこの特許または特許出願の公報のコピーは、要請および必要な費用の納付により庁から提供される。
【0029】
本開示には、種々の改変および代替の形態が許容されるが、具体的な例示の実施形態を図面に示し、本明細書により詳細に記載する。しかし、具体的な例示の実施形態についての記載は、本発明を開示される特定の形態に限定することを意図せず、逆に、本開示は、添付の特許請求の範囲により部分的に記載される全ての改変および等価物をカバーすることが理解されるべきである。
【0030】
本開示は、全般的に、医薬、細胞生物学、ナノテクノロジーおよび細胞培養に有用なシステムおよび方法に関する。特に、少なくともいくつかの実施形態において、本開示は、細胞および材料の磁気誘導およびパターン形成のためのシステムおよび方法に関する。これらのシステムおよび方法のいくつかの具体的な用途は、表面から離れた細胞の浮遊培養、浮遊細胞のパターンの作製および操作、ならびに表面上での細胞のパターン形成培養である。
【0031】
本開示は、概して、磁場と磁性ナノ粒子とを組み合わせて、人工的な環境で培養された細胞のパターンおよび/または細胞の集合体の形状を制御するための実質上のプラットフォームまたは足場を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、磁場の変動による細胞の操作、細胞のパターン形成および/または集合体の成形も可能にし得る。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、磁性材料自体をパターン形成することに用いて、医薬、細胞生物学、ナノテクノロジーおよび細胞培養に関する多くの有用な応用を可能にすることができる。本明細書においてそのうちのいくつかのみが開示される本開示のデバイスおよび方法の多くの潜在的な利点の1つは、本開示の実施形態が、細胞および材料を、非常に柔軟に操作およびパターン形成することを可能にし得ることである。いくつかの実施形態において、このことは、外部から(操作される溶液と直接接触することなく)行うことができ、このことは、その完全性が汚染または取扱いにより容易に損われ得る生物学的システムおよび分子システムを操作するために興味の尽きない価値を有する
18〜24。いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、持ち運びでき、比較的安価であり、製造が容易である。本開示のいくつかの実施形態は、光学顕微鏡観察およびフォース顕微鏡観察の多くの異なる様式と連結してよい。
【0032】
本開示のシステムおよび方法は、従来のシステムおよび方法に対して、いくつかのその他の利点をもたらす。例えば、あるいくつかの実施形態において、本開示のシステムおよび方法は、外部の物体が材料と直接接触することなく該材料の加工を可能にし得る。このような非接触型加工は、部分的に、磁場とそのような磁場に応答する材料との使用により達成してよい。さらに、本開示のシステムおよび方法は、あるいくつかの実施形態において、加工中に材料に与える機械力(mechanical force)の正確な制御を可能にし得る。このような制御は、例えば、材料がこのような機械力に対して感受性である1または複数の細胞、すなわち機械感受性細胞を含む場合に、有利であり得る。このような細胞は、それに限定されないが、幹細胞を含む。さらに、あるいくつかの実施形態において、本開示のシステムおよび方法は、磁場を生じるかもしくは除去するか、磁場の強度を増加するかもしくは減少させるか、または磁場を変調する能力のような、本開示のシステムおよび方法において用いられる磁場の正確な操作を可能にし得る。
【0033】
本開示の実施形態は、リアルタイムでの集合体および/または組織形状の柔軟で足場によらない(「実質上の足場」)操作により3D細胞成長をもたらし得る。あるいくつかの実施形態は、表面、コア粒子またはマトリクスの混乱性の影響を除き、細胞を迅速に濃縮して細胞間相互作用を促進し得る。このような実施形態は、特定の培地もしくは温度制御および/または使用前の処理を必要とせず、標準的な培養および診断技術と適合し得る。
【0034】
細胞は、本開示の実施形態によると、複数の細胞タイプで培養してよい。細胞は、制御された様式で近傍へ導いて、物理的または化学的であり得る細胞シグナル伝達およびその他の細胞間相互作用を促進してよく、このことは、細胞の特性または挙動に影響し得る。このことの1つの例は、in situモニタリングを伴う共培養対比アッセイである。磁気式浮遊は、特定の培地、工学的に作製された足場、成形されたゲルおよび/またはバイオリアクタを必要としないことがある。本開示の実施形態は、バイオテクノロジー、創薬、幹細胞研究または再生医薬における一連の用途に適し得る単純、柔軟かつ効果的な方法を提供し得る。
【0035】
磁気式浮遊は、本開示の実施形態によると、研究および応用についての大きい潜在力を有する3D細胞培養の方法を提供し得る。これは、従来の2D成長方法および現在利用可能な3D培養方法論に対して著しい利点を有し得る。2D培養と比較して、細胞は、細胞継代を必要とせずにより迅速に成長でき、このことは、時間が重大な障害である感受性細胞を成長させるために重要である。確立された3D成長方法とは対照的に、磁気式浮遊は、特定の培地、または特別に設計された材料、工学的に作製された足場、成形されたゲルおよび/もしくはバイオリアクタの組み立てを必要としないことがある。これはまた、集合体形状の空間的および時間的制御、細胞間相互作用のより迅速で制御可能な開始、イメージング診断とのより容易な統合、改善された成長速度およびスケーラビリティを提供し得る。
【0036】
本開示の実施形態は、多くの細胞ベースの応用の開発についての現存する問題と取り組み得る。いくつかの実施形態は、組織アッセイについての新規な方法をもたらし得る。いくつかの実施形態は、早い成長速度、利用可能なレベルの制御、細胞間相互作用の増進およびイメージング技術との適合性を原因として、ハイスループット創薬において価値を有し得る。いくつかの実施形態による方法は、細胞との表面接触を回避し得る。このような方法は、幹細胞研究において用いるために見込みがある。なぜなら、2D細胞培養においてしばしば用いられるポリマー表面またはガラス表面との接触は、幹細胞の生態を変更させ得るからである。多細胞集合体を空間的および時間的にパターン形成する能力は、組織工学について利点をもたらし得る。実際的な観点から、いくつかの実施形態による技術は、迅速で、容易で、安価であり、標準的な細胞培養手順からほとんど改変を必要としないことがある。
【0037】
Au−MIO−ファージ材料は、本開示のいくつかの実施形態によると、細胞を導入せずにまたは細胞を導入する前にパターン形成し得る。ファージヒドロゲルのパターン形成は、なかでも、ファージが細胞成長のための足場、細胞栄養分の貯蔵およびナノ粒子、DNAまたはRNA送達のための細胞特異的であり得るベクターとして作用する能力のような多くの特性を有し得るので、有用であり得る。
【0038】
細胞を含む本開示のあるいくつかの実施形態について、細胞は、磁性ナノ粒子を含有するか、それらに貼り付けられた磁性ナノ粒子を有するか、または細胞の集合体中に包埋された磁性ナノ粒子を有し得る。磁性ナノ粒子を細胞内部にまたは細胞上にまたは集合体内に配置するための任意の方法は、本開示の範囲内である。あるいくつかの実施形態において、ヒドロゲルを、細胞および集合体の中ならびにそれらの上に付着し、注入し、かつ混入するために用いてよい
13。例えば、ヒドロゲルを、細胞内に磁性ナノ粒子を導入するために用いてよく、時間とともに細胞が成長するにつれて、磁性ナノ粒子を細胞から排出して、集合体の細胞外マトリクスに捕捉し得る。適切なヒドロゲルは、金(Au)および/または磁性酸化鉄(MIO、マグネタイト、Fe
3O
4)のようなナノ粒子とバクテリオファージとで構成され得る(Au−MIO−ファージ)。適切なヒドロゲルは、少なくとも1つの磁性ナノ粒子を含有すべきであり、それは超常磁性、常磁性、強磁性および/またはフェリ磁性のいずれであってもよい。例示の実施形態を
図1に示す。さらに、本開示のその他の実施形態は、磁性ナノ粒子を細胞内に侵入させるか、細胞上に付着させるか、または細胞の集合体中に混入させるためのその他の方法を提供する。当該技術において知られるその他の方法は、細胞ターゲティング実在物(例えば細胞またはタンパク質特異的受容体)で被覆された磁性ビーズ、または磁性ナノ粒子を含有するリポソームと、細胞シートをin vitroで構築して送達するために印加される磁場である
14〜17。異なる方法は異なる利点を有することができ、本開示の利点を有する当業者は、どの方法(複数可)がより有利であるかを理解するであろう。例えば、リポソームは、大量のナノ粒子を送達できる場合がある。ヒドロゲルおよび被覆磁性ビーズは、特定の細胞を標的にするように設計され得る。例えば、細菌ファージと1または複数種のナノ粒子とで作製されたヒドロゲルは、細胞成長、細胞栄養分の貯蔵、またはナノ粒子、DNAもしくはRNA送達のための細胞特異的であり得るベクターとして作用し得る。細菌ファージと1または複数種のナノ粒子とで作製されたヒドロゲルは、ナノ粒子を細胞上に付着させ、ナノ粒子を細胞内に注入する能力を有することができ、このことは、化学的および機械的なレベルで細胞を改変および制御することを可能にする大きい価値を有し得る
13。
【0039】
本開示のシステムおよび方法において有用なファージ(バクテリオファージともいう)は、細菌に感染できるいくつかのウイルスのいずれか1つのことをいう。通常、バクテリオファージは、タンパク質外殻と、DNAまたはRNAであり得る遺伝物質を含む内部空間とを含む。あるいくつかの実施形態において、ファージは、それらに限定されないが、fd、flまたはM13バクテリオファージのような繊維状ファージであってよい。あるいくつかの実施形態において、ファージは、fdバクテリオファージである。適切なファージ、およびファージとナノ粒子を含む組成物、およびそのような組成物を形成する方法の例は、その開示の全体がここに参照により組み込まれる国際出願公報WO2006/060171に記載される
13。
【0040】
あるいくつかの実施形態において、本開示のシステムは、それらに限定されないが、バクテリオファージ上に提示されるかもしくはバクテリオファージに機能的に連結されたペプチドまたはタンパク質のようなターゲティング部分をさらに含み得る。ターゲティング部分は、バクテリオファージ、導電性集合体またはバクテリオファージ集合体に機能的に連結されてよい(バクテリオファージの表面上に提示されることを含む)。あるいくつかの実施形態において、ターゲティング部分はペプチドであってよく、具体的な実施形態において、ペプチドは、環状ペプチドであってよい。このような環状ペプチドは、それらに限定されないが、CX7C(式中、Cはシステインであり、Xは無作為のアミノ酸である)の形態の環状ペプチドを含む。あるいくつかの実施形態において、抗体または単鎖抗体のようなより大きいタンパク質ドメインも、ファージ上に提示できるか、またはファージと機能的に連結でき、すなわちターゲティング部分である
69。集合体は、システムの構成成分、例えばファージまたはナノ粒子と機能的に、特に共有結合により連結されたターゲティング部分も含み得る。あるいくつかの実施形態において、ターゲティング部分はペプチドである。適切なターゲティングペプチドターゲティング部分は、その関連する開示が参照により組み込まれる国際特許出願公報WO2006/060171に記載される
13。あるいくつかの実施形態において、ターゲティング部分は、バクテリオファージのpHIまたはpVIIIタンパク質に含まれる。あるいくつかの実施形態において、ターゲティング部分は、pIIIおよび/もしくはpVIIIタンパク質、好ましい実施形態においてpVIIIタンパク質で提示されるかまたはそれらに含まれるペプチドをスクリーニングすることにより同定してよい。
【0041】
本開示のシステムは、導電性ナノ粒子の組織化された充填を促進する組織化剤をさらに含んでよい。組織化剤は、それらに限定されないが、ペプチド、ピロール、イミダゾール、ヒスチジン、システインまたはトリプトファンを含み得る。さらに、本開示のシステムは、治療用分子または核酸のような治療剤を含んでよい。あるいくつかの実施形態において、組織化剤は、凝集を誘導するか、または2つ以上の粒子を連結させて集合体を形成することができ、格子のような分子の規則的な配置を誘導する物質に限定されない。あるいくつかの実施形態において、治療剤は、組織化剤である。あるいくつかの実施形態において、本開示のシステムは、医薬的に許容され得る組成物に含まれてよい。本開示のあるいくつかの実施形態は、バクテリオファージを含むかまたはバクテリオファージと機能的に連結された細胞をさらに含むシステムを含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、Au−MIO−ファージは、ボトムアップ式自己集合方法
39、40を用いてAuとマグネタイト磁性ナノ粒子とファージとから集合し得る。色および微細構造が暗視野顕微鏡観察で観察でき、Au−ファージ集合体(MIOを欠く)について以前に報告された観察と定性的に類似し得る
40。通常、Au−MIO−ファージシステムは、Au−ファージヒドロゲルの挙動に匹敵でき、これは、
図1に示すように静電的相互作用により大多数が安定化され得る
39、40。AuおよびMIOの粒子はともに、水溶液条件下(pH6.0)で負電荷を獲得でき
39〜41、正に荷電したファージに誘引され得る。ファージとMIOはAuなしではヒドロゲルを形成しないことがあるが、このことは、MIOがファージとの間の架橋の確立にあまり効果的でない可能性を示唆する。いくつかの場合において、わずかにより小さいサイズのMIO粒子または多分散サイズ分布が、架橋の確立の効率を低減し得る。MIOナノ粒子は、
図1、Au−MIO−ファージおよび対照Au−ファージヒドロゲルのT
2*強調MR画像(MRI)に示すような通常の磁気共鳴イメージング(MRI)コントラストエンハンサーであってよい。
【0043】
本開示のシステムおよび方法に有用なナノ粒子は、典型的に、1または複数の金属導電性ナノ粒子を含む。しばしば、金属導電性ナノ粒子は、磁化されるか、または磁性を有し得るであろう。あるいくつかの実施形態において、金属導電性ナノ粒子は、Au、Ag、Pt、Ti、Al、Si、Ge、Cu、Cr、W、Feまたは対応する酸化物を含む。特定の実施形態において、導電性ナノ粒子は、それに限定されないがAu−マグネタイトクラスタのようなAuクラスタである。あるいくつかの実施形態において、導電性ナノ粒子は、約2nm〜約100μmの直径であってよい。あるいくつかの実施形態において、複数のナノ粒子が、導電性または非導電性であり得るその他の材料中に包埋されてよい。あるいくつかの実施形態において、ナノ粒子は、導電性または非導電性の材料で被覆されてよい。Au−マグネタイトクラスタナノ粒子を含有する本開示のシステムの例を、
図1に示す。
【0044】
いくつかの実施形態において、磁性ナノ粒子は、通常、任意のタイプの磁性材料のものであってよい。例えば、適切な磁性ナノ粒子は、マグネタイトで作製され得る。あるいくつかの実施形態において、マグネタイト磁性ナノ粒子は、30nm未満のサイズを有してよい。なぜなら、マグネタイト粒子は、このサイズ範囲において超常磁性であり得るからである。その他の実施形態において、マグネタイト磁性ナノ粒子は、より大きいサイズを有してよく、バルクフェリ磁性の残留磁化の特徴を示してよい。適切な磁性ナノ粒子は、多分散粒子サイズが50nm未満のものであってよく、PVP(ポリビニルピロリドン)の界面活性剤で安定化されてよい。このような適切な磁性ナノ粒子は、Sigma−Aldrichから商業的に入手可能であり得る。適切な磁性ナノ粒子についてのその他の選択肢の例の部分的なリストは、純鉄、ニッケル、コバルト、CoFe
2O
4およびNdFeBを含む。適切な磁性ナノ粒子は、被覆されていてもよいし、または被覆されていなくてもよい。本開示の利点を有する当業者は、どの材料およびコーティングの選択肢が任意の所定の特定の状況について最適かを理解しているであろう。
【0045】
磁性ナノ粒子は、MRIイメージング
25、細胞ソーティング
25、表面パターン形成
26〜30、細胞の機械的馴化
28および機械感受性膜の特性の研究
28のような生物学的用途において広く用いられている。マグネタイトは、磁性ナノ粒子の一般的な選択である。なぜなら、30nm未満のサイズのマグネタイトナノ粒子は超常磁性であり得、より大きいサイズのマグネタイトナノ粒子は、バルクフェリ磁性の残留磁化の特徴を示し得るからである。両方の場合において、粒子は、最大の印加される磁場に誘引され得る
31。多くの種類の磁性ナノ粒子を、特定のタンパク質を標的にするように改変してよく、多くの種類の磁性ナノ粒子が生体適合性であることが示されている
28。任意のタイプの材料の磁性ナノ粒子を用いることは、本開示の精神に含まれる。本開示の利点を有する当業者は、どのタイプの材料が特定の状況について最適かを理解しているであろう。例えば、マグネタイトは、大きい飽和磁化を有し、よって、比較的少ない粒子を用いて比較的大きい力を生じ得るので、よい選択であり得る。これは、また、商業的に容易に入手され、多くの研究がこれを用いてなされているので、多少、標準的である。さらに、磁性ナノ粒子は、被覆されていてもよいし、または被覆されていなくてもよい。その他の適切な選択肢の例の部分的なリストは、純鉄、ニッケル、コバルト、CoFe
2O
4およびNdFeBを含む。
【0046】
磁性材料を含み得るマイクロキャリア
34またはコア粒子
35も、非独立性細胞の係留のための表面を提供するために用いられており、懸濁培養の利点を可能にする。コア粒子、ビーズ、細胞培養ビーズ、マイクロビーズまたはマイクロマイクロキャリアとも呼ばれるマイクロキャリアは、固形粒子であり、典型的にはナノサイズよりも大きく、生存細胞の係留および成長を支持し得る
34、35。いくつかの実行において、マイクロキャリアは、細胞よりも大きい。磁化粒子は、好ましくは、コラーゲンのような細胞接着性材料で被覆されて、細胞接着を促進する
35。細胞は、細胞同士の界面が細胞−ビーズ界面よりも大きくなる前に、ある程度の期間、典型的に増殖する。また、集合体内にとどまるビーズは、組織の機械特性に影響し得、このことは、組織工学的用途にとって重要である。マイクロキャリアビーズを用いて小さい構造または少数の細胞をパターン形成することも、ビーズが大きすぎるので、困難であり得る。
【0047】
図1は、本開示のあるいくつかの実施形態において細胞の中および細胞上ならびに集合体の中にナノ粒子を送達するために用いるAu−MIO−ファージヒドロゲルの例を示す。
図1Aは、水中のMIO含有ヒドロゲル(矢印で示す)の例示的なバイアルを示す。
図1Bは、ナノ粒子(球体)とファージ(伸長した構造)との静電的相互作用の例示的なスキームを示す。黄色(金)と茶色(MIO)のナノ粒子が示される(一定の縮尺で描かれていない)。
図1Cは、溶液中の精製ヒドロゲル、MIO含有ヒドロゲル(上のパネル)、平均T2
*=76msとMIO非含有ヒドロゲル対照(下のパネル)、平均T2
*=253msとの例示的なMRI画像(T2強調)を示す。MIO含有ヒドロゲルと陰性対照との画像コントラストは、MIOナノ粒子の存在下でのT2
*緩和定数の低減に起因する(尺度バー=2mm)。
【0048】
いくつかの実施形態によると、永久磁石または帯電ワイヤのいずれかを用いて創出される磁場は、磁性ナノ粒子に、よって細胞および/または集合体に力を印加し得る。このような力は、細胞および/または集合体を、最大磁場振幅に向かって移動させるか、またはそれらを最大磁場振幅の領域内に保持し得る。磁場の成形および変化の柔軟性を原因として、細胞の形状およびそれらが形成する、得られる組織の見本は、
図2に示すように成形され、変化し得る。本開示の利点を有する当業者は、永久磁石、帯電磁石またはある組み合わせを用いるのがより有利であるかを理解しているであろう。例えば、永久磁石は、より大きい磁場および力を生じて、より多くの細胞を収集し得る。ワイヤは、磁場パターンを形成するのにより容易にパターン形成でき、より小さい構造を作製でき、操作のためにより柔軟であり得る。
【0049】
図2は、本開示のいくつかの実施形態によるAu−MIO−ファージの磁気式移動を示す。この図示において、Au−MIO−ファージは、ファージおよびMiOナノ粒子と同じ濃度での異なるサイズのAuナノ粒子(18nm、上のパネル;30nm、中のパネル;および45nm、下のパネル)を用いて調製し得る。ここで、具体的に用いたヒドロゲルは、Au−MIO AAVP−RGD−4C(AAVP、アデノウイルス関連ウイルスファージ)
38であるが、ファージの特定の種類は、本発明の成功にとって重要でない。異なるサイズで調製されたヒドロゲルは、磁場に対して異なる応答を示し得るが、通常、これらは、磁場が最強であるところに全て誘引され得る。このデータについて、磁石に向かって指示する矢印により示すように、永久磁石をウェルのすぐ外側に配置してよい。
【0050】
いくつかの実施形態において、細胞は、磁気式に浮遊させ得る。
図3に示すように、細胞は、表面から離れて3次元において成長でき、時に浮遊細胞培養とよばれる。例えば、マウスC17.2神経幹細胞(NSC)は、そのように培養し得る
25。細胞は、気液界面で成長し得る。神経幹細胞は、培養プレートの平底表面に付着でき、MIO含有ヒドロゲルの調製物を、ピペット操作により分散させてよい。しばしば、ヒドロゲルフラグメントのサイズ分布は、重要でないことがある。
図3Aに示すように、混和物を標準的な組織培養条件下でインキュベートしてよい。終夜のインキュベーションは、標的のファージ粒子と金ナノ粒子が哺乳動物細胞外膜に接着して、受容体媒介内部移行を受けることを示す共焦顕微鏡を用いる以前の研究
39、40と同様の結果をもたらし得る。
図3Bに示すように、神経幹細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)ですすいでよく、ヒドロゲル残存物を除去してよい。神経幹細胞は、表面から、標準的なトリプシン:EDTA処理
39、40により剥離してよい。磁石は、
図3Cに示すように、組織培養皿の上に配置してよい。神経幹細胞とMIO含有ヒドロゲルとの混和物は、高磁場の領域へのナノ粒子の誘引により、気液界面に向かって共に上昇し得る
31。いくつかの実施形態において、磁場は、(近くの、近傍のおよび/または物理的に接触している)浮遊細胞の集合体を一緒に濃縮でき、細胞間相互作用、例えば化学的または機械的経路による細胞シグナル伝達を可能にする。細胞は、表面張力のために液体を離れることができないことがある。
図3Dに示すように、特徴的で再現可能な分岐形態を有する大規模および小規模の3D多細胞集合体特徴の証拠が存在し得る
42、43。
【0051】
本開示のあるいくつかの実施形態において、細胞は、表面から離れて磁気式に浮遊してよく、このことは、集合体の浮遊したパターンおよび形状の創出および操作を含む3D集合体の培養を可能にし得る。いくつかの実施形態において、集合体の形状は、特定の2Dもしくは3Dパターンまたは分布を形成することに影響し得る。1より多い細胞タイプが存在する場合、集合体の形状への影響は、集合体内の細胞の異なる集団の相対的な配置を変化させることも含み得る。例えば、異なる細胞タイプの層が形成され得る。層はシートとして形成されるか、または層は、1つのタイプの細胞が別のタイプの細胞の中央の集合体の周囲に成長する場合のように、放射状に変動してよい。このような実施形態の図示を、
図3〜13に示す。
【0052】
本開示のシステムおよび方法において用いる磁場は、任意の適切な供給源により提供されてよい。このような供給源は、それらに限定されないが、磁石により生じる磁場、電流の流れにより生じる磁場、またはそれらの組み合わせを含む。あるいくつかの実施形態において、電流の流れにより生じる適切な磁場を、1または複数の導電性ワイヤを通じる電流の流れによりもたらしてよい。いくつかの実施形態は、特に、環状磁石を用いる。磁性ナノ粒子は、環状磁石の対称軸に優先的に引かれ得るが、光は、環状磁石の中央の開放部を通過することが可能である。これらの2つの効果が一緒になって、環状磁石を用いて細胞を浮遊させる場合に、集合体および細胞培養のよりよい視覚化が可能になり得る。環状磁石は、従来、永久の円形磁石であるが、中央の開放部を与える任意の形状寸法の任意のタイプの磁石が、本開示の精神に含まれる。環状磁石の例を、
図3CおよびDに示す。
【0053】
超電導MRI磁石の内腔でのような非常に大きい磁場(>4T)は、生物学的材料の自然な反磁性により細胞を浮遊させるために用いられており
32、より小さい磁石を用いて、高濃度の常磁性塩を含む培地中に浸漬した細胞を捕捉できる
33。
【0054】
集合体の3D形状を制御するためのその他のスキームは、特別に設計された材料、工学的に作製された足場
36、成形されたゲル、および/または回転もしくは振動をベースとするバイオリアクタの組み立てを必要とし得る。しばしば、このような材料および装置は高価で、細胞特異的で、生体適合性ではないことがあり、これらのことがそれらの応用性を制限する。細胞接着を促進し、細胞外マトリクスを模倣するかまたはその形成を促進する生物分解性多孔性足場およびタンパク質マトリクスは、3D ex vivo組織試料を生成するために日常的に用いられるが
37、これらは、構築物内へのおよび細胞間相互作用の確立をもたらすまでの細胞の遅い増殖
14〜17、ならびに細胞特性を乱さない生体適合性足場の設計における課題
7、11に苦しむことがある。
【0055】
本開示の実施形態は、リアルタイムでの組織形状の柔軟で足場によらない(「実質上の足場」)操作により3D細胞成長をもたらし得る。あるいくつかの実施形態は、表面、コア粒子またはマトリクスの混乱性の影響を除き、細胞を迅速に濃縮して細胞間相互作用を促進する。このような実施形態は、特定の培地もしくは温度制御および/または使用前の処理を必要としないものであり得、標準的な培養および診断技術と適合し得る。
【0056】
図3は、本開示のいくつかの実施形態による浮遊細胞集合体を示す。それぞれのフレームの上のパネルは、模式図を示し、対応する下のパネルは、プロセスの同じ段階での神経幹細胞(NSC)の代表的な顕微鏡写真であり得る。
図3Aは、細胞を覆って分散されたAu−MIO−ファージヒドロゲルを示し、ここで、混合物をインキュベートして、ナノ粒子を細胞上および細胞の中に送達し得る。濃い斑点は、ヒドロゲルの肉眼で見えるフラグメントを示す。
図3Bは、洗浄中に除去され得る過剰の非相互作用性ヒドロゲルフラグメントを示す。
図3Cは、磁石を配置した場合に空気−培地界面まで上昇した磁化混和物を示す。この画像は、15分間の浮遊の後の混和物を示す。
図3Dは、12時間の浮遊の後に形成された特徴的で再現可能な多細胞構造を示す。より濃い領域は、細胞の塊の光学的厚さの増加に起因し得る。それぞれの図面での尺度バーは、30μmである。
【0057】
図4は、本開示のあるいくつかの実施形態による、細胞付着がない細胞の磁気式浮遊を示す。
図4Aは、懸濁細胞と15分間インキュベートしたAu−MIO−ファージを示す。インキュベーションの後に、Au−MIO−ファージと細胞との混和物を、細胞培養皿に移してよい。磁石を加えて、磁化細胞を浮遊させてよい。
図4Bは、浮遊開始の15分後および浮遊開始の48時間後の浮遊mCherry発現正常ヒト星状細胞の位相差(左)および蛍光顕微鏡写真(右)であり、尺度バーは200μmである。48時間までに、多細胞スフェロイドが観察できる。
図4Cの最も右のパネルは、スフェロイドの拡大画像を示す(mCherry蛍光、50μm尺度バー)。
【0058】
いくつかの実施形態は、表面付着なしでの磁気式浮遊による浮遊培養の手順を提供する。懸濁細胞を、Au−MIO−ファージとインキュベートしてよい。インキュベーションは約15分間続いてよく、その時間の後に、懸濁細胞を、
図4に示すように磁気式に浮遊させてよい。本開示を特定の理論または作用機構に限定することなく、それでもなお、現在のところ、浮遊細胞対非浮遊細胞の収率は、Au−MIO−ファージの量、インキュベーション時間、磁場の強度および勾配、ならびに磁石から底表面までの距離に影響されると考えられる。
図4BおよびCに示すように、mCherry形質移入正常ヒト星状細胞は、15分間および48時間培養してよい。このような手順は、より単純でより迅速な技術を提供し得るが、細胞の収率はより低いことがある。このような手順は、表面付着の必要性をなくすことができるので、凍結貯蔵から溶解してすぐの細胞ストックに用いてよい。この技術は、多様な細胞タイプに用いてよい。例えば、ヒト膠芽腫細胞(
図5)、分化神経幹細胞(
図6)、ヒト星状細胞(
図7)、膠芽腫集合体(
図8)および黒色腫(
図9)。
【0059】
図5は、本開示のいくつかの実施形態による磁気式浮遊細胞の集合体を示す。ヒト膠芽腫細胞(下の矢印)を、磁性酸化鉄(MIO)含有ヒドロゲルで処理し、組織培養プレートの頂部に付着させた磁石(上の矢印)により創出される磁場により空気−培地界面に保持してよい。この図は、尺度バーが5mmであり、画像が培養48時間で撮影されたことを示す。
【0060】
図6は、本開示の実施形態による磁気式浮遊分化マウス神経幹細胞(NSC)を示す。表面付着NSCを、マイトマイシン(分化のために1μg/ml)で8時間処理した後に、細胞を懸濁した。この図は、浮遊開始の24時間後を示す。
【0061】
図7は、本開示のあるいくつかの実施形態による磁気式浮遊ヒト星状細胞を示す。
【0062】
図8は、本開示のあるいくつかの実施形態による磁気式浮遊膠芽腫集合体を示す。
【0063】
図9は、本開示のあるいくつかの実施形態による磁気式懸濁黒色腫(B16)細胞を示し、これはシートとして成長し得る。希であるが致死的なタイプの皮膚癌である黒色腫は、通常、メラニン形成細胞と呼ばれる色素細胞の制御されない成長から現れる悪性腫瘍である。
【0064】
哺乳動物細胞は、最終的には、ファージのような生物学的材料を処理し得るが
38、金属ナノ粒子の細胞における運命は、よく理解されていない。本開示のいくつかの実施形態は、しかし、浮遊集合体におけるMIOナノ粒子の長期の存在を証明し得る。例えば、浮遊培養の数ヵ月後に、磁場を除去した場合に生存多細胞集合体は降下でき、磁場を再び印加した場合に再浮遊できる。細胞中のMIOナノ粒子の長期の動態は、完全には理解されていない
44〜46。しかし、
図10に示すように、透過型電子顕微鏡(TEM)分析は、浮遊培養の約1週間後に、浮遊ヒト膠芽腫細胞が、ナノ粒子の大多数を、培地および/または細胞外マトリクスに放出し得ることを示し得る。これらの観察の分子機構(複数可)(例えば分泌、アポトーシス細胞死または組み合わせ)を決定することなく、集合体中への金属ナノ粒子の明らかな「混入」が、比較的延長された期間にわたって集合体を浮遊させるこのシステムの能力を説明し得る。
【0065】
本開示のある実施形態に従って、磁気式浮遊により成長したヒト膠芽腫細胞のスフェロイドの断面のTEMは、
図10に示すように、異なる段階でのナノ粒子の場所を示す。例えば、浮遊24時間後には、ナノ粒子の大半は、以前の報告と一貫して
39、47、48、細胞質に含まれ得る。細胞は、培養8日後にナノ粒子を処理し、これらは細胞外マトリクス(ECM)に現れ得る。スフェロイドの細胞分裂および成長が、おそらく、ナノ粒子の異なる分布(外の領域よりもむしろスフェロイドの中央に優先的に存在する)を導き得る。
【0066】
図10は、本開示の実施形態に従って、磁気式浮遊により成長したヒト膠芽腫細胞の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。
図10の左に向かって、ナノ粒子(黒色)を、培養24時間後に細胞の内部に見ることができる。
図10の真ん中において、ナノ粒子を、培養8日後に組織スフェロイドの中央領域に見ることができるが、ほとんどを細胞外マトリクスに見ることができる。
図10の右に向かって、スフェロイドの外の領域(培養8日後)は、検出可能なナノ粒子を含んでいないように見える。この図示において、尺度バーは5μmである。集合体の粘着性および集合体内のナノ粒子の保持は、本文中に記載するように集合体を浮遊させることを可能にし得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、磁気式浮遊による培養は、3D集合体を生成し得る。
図11に示すように、走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、本開示の実施形態に従って、磁気式浮遊の下で成長したヒト膠芽腫細胞の3Dの性質を示し得る。例えば、SEM画像は、後方散乱電子検出器およびデジタルカメラを備えた、Peabody、MAのJEOL USA,Inc.から商業的に入手可能なJSM5900走査型電子顕微鏡を用いて取り込んでよい。さらに、ヒト膠芽腫細胞の多細胞構造を、固定し、臨界点で乾燥させ、Au/Pdで被覆してよい
49。
【0068】
図11は、本開示の実施形態による3D構造からの浮遊培養を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。磁気式浮遊の下で24時間成長したヒト膠芽腫細胞のSEMは、左に向かって見ることができ、8日のものは右に向かって見ることができ、尺度バーは100μmである。
【0069】
いくつかの実施形態は、従来の方法から有利に比較される結果をもたらし得る。例えば、磁気式浮遊による培養は、従来の2D培養と比較して有利な結果をもたらし得る。細胞成長は、
図12Aに示すように、mCherryの安定タンパク質発現からの蛍光を監視することにより、8日間にわたって遺伝子改変ヒト膠芽腫細胞の形成速度、サイズおよび生存能を視覚的および定量的に監視することにより評価してよい。細胞は、浮遊から30分以内に一緒になり得る。さらに、粘着性多細胞集合体は、24時間までに出現でき、スフェロイド形状は3〜8日の間に形成され得る。mCherryタンパク質発現からの強い赤色蛍光が観察でき、このことにより3D集合体内での細胞生存能が確認できる。いくつかの実施形態において、集合体は、少なくとも12週間以上ほど長く維持できる。磁気式浮遊細胞の成長速度は、標準的な2D培養プレートで培養した細胞の成長速度と比較して、
図12Bに示す。浮遊細胞の成長について示される指数関数的な傾向とは対照的に、2Dで培養した細胞は、表面付着集合体の典型的な特徴である直線的な成長パターンを示す
50。浮遊細胞の3D成長中にアクセス可能な容量を部分的に原因として、大きい集合体を、標準的な2D組織培養に通常必要とされる剥離/再播種サイクル(「継代」)なしで達成できる。
【0070】
本開示の実施形態による磁気式浮遊により培養された細胞は、in vivo組織との類似性を示し得る。このような類似性は、あるいくつかの用途について利点を有し得る。例えば、ヒト膠芽腫細胞におけるタンパク質発現は、類似性を示し得る。
図12Cは、浮遊細胞、ペトリ皿の2D表面上で成長した細胞、および免疫不全マウスにおける腫瘍異種移植片内の細胞中のマーカーN−カドヘリンの発現の比較を示す。本開示を特定の理論または作用機構に限定することなく、それでもなお、現在のところ、ホモタイプ細胞接着相互作用により細胞間相互作用を媒介する膜貫通タンパク質である
51N−カドヘリンは、3D成長細胞のin vivo様特性の少なくともいくらかを実際に反復する発現パターンをもたらし得ると考えられる。実際に、2D集合体は、細胞質および核の中に散乱するが、膜には存在しないN−カドヘリンを示し得るが、浮遊細胞は、膜、細胞質および細胞接合部の中でN−カドヘリンを発現する(腫瘍異種移植片において観察されるタンパク質発現パターンと類似)。この観察は、Ofekらにより最近報告された結果
51と定性的に一貫し、ここでは、in vitroで成長した軟骨も、浮遊において、2D培養に対して、異なるN−カドヘリン発現パターンを生じた。浮遊なしでは、MIO含有ヒドロゲルおよび/または磁場のいずれの組み合わせを用いても付着膠芽腫におけるN−カドヘリン発現の検出可能な変化がないことがある。よって、いくつかの実施形態において、in vitro細胞の磁気により誘発される浮遊は、免疫不全マウスにおけるヒト脳腫瘍異種移植片の労力および費用がかかる作製および維持
52よりも補足的により安価な代替を提供し得る。全般的に、磁気式浮遊は、従来の人工的培養技術を用いて得られる生存生物における細胞により類似した細胞を生成し得ることが示される。
【0071】
図12は、本開示のあるいくつかの実施形態による、浮遊細胞集合体と、2D集合体およびマウス異種移植片との比較を示す。
図12Aは、8日間の間隔にわたって監視した浮遊ヒト膠芽腫細胞の位相差(上)および蛍光(下;安定的形質移入によるmCherry発現細胞)顕微鏡写真を示す。数時間以内に、細胞は一緒になり得る。24時間までに、最終的にスフェロイドを形成するヒト膠芽腫細胞の明確な多細胞集合体が存在し得る。この図示において、尺度バーは200μmである。
図12Bにおいて、12Aにおける浮遊細胞集合体についての時間の関数としての細胞数を示す(四角の青色の線は、指数関数的成長傾向を示す)。代表的な2D集合体も示す(三角の赤色の線は、直線的な傾向を示す)。
図12Cは、ヒト膠芽腫異種移植片を含有するマウス脳と、3D磁気式浮遊で48時間培養したヒト膠芽腫細胞と、ガラスのスライド・カバーグラスに付着したヒト膠芽腫細胞の標準的な2D集合体とのN−カドヘリンの免疫蛍光(赤色、Alexafluor555)および核染色(青色、DAPI)を示し、尺度バーは10μmである。
【0072】
本開示のあるいくつかの実施形態による方法は、細胞パターン形成、形状制御および時間依存的形状操作を提供し得る。上記のように、磁気式浮遊は、高磁場領域へのMIOナノ粒子の誘引に起因し得る。いくつかの実施形態において、磁場は、適切に成形された磁石により成形されるか、または電磁石を用いてもしくは永久磁石を移動させることにより時間的に変動してよい。このような実施形態において、細胞を空間的にパターン形成し、ちょうどよいときに構造を操作するための大きな可能性がある。磁場は、通常、
図13に示すように、磁化多細胞集合体がその上に成形される調節可能な不可視足場として機能し得る。そのことにより、全ての長さの尺度での複雑な細胞形状が、例えば、電磁石および微細加工技術の使用により実現できる。
【0073】
異なる直径および変動する磁力強度の環形状永久磁石を用いる多細胞膠芽腫集合体構造は、
図13に示すように、浮遊し得る。得られる構造は、用いる磁場の特性を直接反映し得る。最大で最強の磁石は、
図13Bに示すように、最大の構造を生じさせ得る。さらに、メニスカスでの磁場パターンが軸上で極小値を有し得るので(イメージング穴の下で)、細胞は、磁場の最大値をたどる環状パターンに成長し得る。これもまた
図13Bに示すより小さい穴を有する小さい磁石について、軸上の磁場最小値は、細胞の高さにて重要でないか、または消滅し得る。このことは、環形状のものよりもむしろ、緻密な多細胞集合体を結局は生じ得る。
【0074】
本開示の実施形態による磁気式浮遊は、細胞のパターンの時間的および/または空間的な正確な制御をもたらし得る。細胞同士を近傍にもたらすことは、元来別個の細胞の集団同士の相互作用を促進し得る。このことは、in situでの視覚化または分子イメージングに対して伝導性の環境において行い得る。例えば、このようなシステム属性は、(i)
図3〜9の単細胞タイプおよび(ii)共培養されたヒト膠芽腫細胞(GFP形質移入;緑色の細胞)と正常ヒト星状細胞(mCherry形質移入;赤色の細胞)との間の
図13C〜Dにおける対比アッセイでの異なる細胞タイプ(または集団)を用いて示される。元来別々に培養した集合体は、
図13Cに示すように(時間ゼロとみなす)磁気的に対比でき、それらの相互作用は、
図13Dに示すように14日間にわたって監視できる)。細胞構造を分ける明確な界面が最初は明らかであるが、12時間までに、集団は融合し始め、それらの個別の球形状を失い得る。3日後に、対比アッセイは、正常ヒト星状細胞で構成される構造に侵襲するヒト膠芽腫細胞との単一のスフェロイドに合体し得る。これらの実施形態は、星状細胞脳腫瘍の最も一般的で侵襲性で致死的なタイプである
53〜57多形膠芽腫の関係において実際的な用途を有し得る。正常ヒト星状細胞は、通常、脳および脊髄を形成する主な細胞タイプであり、in vivoで脳組織への悪性神経膠腫侵襲を支持することが知られている
58。浮遊培養は、臨床結果と長年関連づけられてきた
58対比培養アッセイにおける正常脳細胞の脳腫瘍侵襲性の分析のために用いることができる。
【0075】
いくつかの実施形態において、2より多い細胞タイプおよび/または細胞集団を共培養してよい。浮遊細胞は、供給層の存在下で培養してよい。細胞および受容体に印加される力は、例えば、電磁石を用いるかもしくは永久磁石を移動させることによって磁場を変化させることにより、変動させてよい。これらの方法は、幹細胞研究でのような細胞の機械感受性機構の研究において実際的な用途を有し得る。
【0076】
生存生物における組織との著しい類似性を示す浮遊細胞を示す
図12とともに、
図13は、薬物効力アッセイおよび薬物スクリーニングアッセイの基礎を形成する、いくつかの実施形態による磁気式浮遊の能力を示す。種々の化合物を導入して、それらのいずれかが癌の浸潤を遅くするかを見てよい。陽性の結果は、見込みのある癌と戦う薬物を示し得る。結果は、浮遊細胞が生体組織に類似するという事実のために、生存生物における腫瘍に対する薬物の効力を示し得る。
【0077】
図13は、本開示の実施形態による細胞培養、共培養および侵襲アッセイとしても知られる対比アッセイ中の細胞の形状および位置の制御を示す。
図13Aは、13Bにおける3D細胞集合体のために用いた環状磁石の計算された磁場パターンを示す。高さおよび半径は、磁石の内半径(R)により定めた。13Bのi、iiおよびiiiの磁石は、それぞれ2.8、2.3および1.7mmのR値を有する。それぞれの磁石について、外半径は、約4Rであり、厚さはRとほぼ等しい。普遍的プロットは、標準化された座標の関数としての磁場プロファイルの近似を与える。色の尺度は直線であり、フレームBのi、iiおよびiiiについてB
maxはおよそ3000、2000および1500Gである。磁石の中央をz=0とする。黒色の線は、フレームBのi、iiおよびiiiにおける細胞集合体の高さを示す。磁化ヒドロゲルおよび細胞は、最大磁場の領域に誘引され得るが、表面張力のために培地を離れることができない。
図13Bは、
図13Aに記載される磁場から集合した、得られたヒト膠芽腫スフェロイドを示す。最大半径の磁石(i)について、集合体の高さにて、磁場は対称軸から離れてピークに達し、環形状細胞パターンを導く。細胞は、この空間的分布を浮遊開始からすぐに示し、ここで、尺度バーは400μmである。これらの3D多細胞構造を、それぞれのウェルの上に環形状磁石に付着させることにより改変したカバーを有する組織培養プレートで培養した。
図13Cは、別々に培養し、次いで、一緒に磁気誘導した(時間=0)ヒト膠芽腫細胞(緑色;GFP発現細胞)および正常ヒト星状細胞(赤色;mCherry標識)の明視野ならびに蛍光顕微鏡写真を示す。
図13Dは、10.5日間監視した、
図13Cにおけるヒト膠芽腫細胞と正常星状細胞との対比を示す。ヒト膠芽腫細胞による正常ヒト星状細胞で構成されるスフェロイドへの侵襲が、悪性神経膠腫侵襲性の標準的アッセイとして働く
34。この図において、尺度バーは200μmである。
【0078】
本開示の別の実施形態は、表面上の細胞プリントまたはパターン形成を提供し得る。例えば、このことは、細胞の集合体を表面に磁気誘導することにより行うことができ、
図14および15に示すように、いくつかの細胞が表面に付着し、細胞の球が表面の上で移動して細胞のパターンを形成することが可能になる。代わりに、このことは、細胞についての所望の形状の磁場プロファイルを創出し得る帯電ワイヤまたは永久磁石のいずれかを用いて達成でき、このことにより、
図16〜20に示すように、最初は遊離の細胞が、所望のパターンに貼り付けられるように磁場内を移動することが可能になる。
【0079】
いくつかの実施形態において、細胞は、プリント技術を用いて表面上にパターン形成してよい。表面上への細胞のプリントは、組織/臓器置換および創傷治癒
60〜68のような広範囲の医薬的用途のために有利であり得る。
図14および15は、細胞プリンティング/グラフィングのための本開示のあるいくつかの実施形態の可能性を示す。いくつかの実施形態において、この手順は、細胞をAu−MIO−ファージで処理した後に達成できる。ここで、細胞を所望の期間浮遊させてよく、この期間は数分から数日まで変動でき、細胞は、パターン形成のために表面まで磁気誘導され得る。いくつかの実施形態において、細胞が表面に付着し始めた後に、細胞は、次いで、3D構造を新しい位置に移動し得るが、表面に付着した細胞が付着したままである。いくつかの実施形態において、細胞は、細胞浮遊を迂回して、プリント磁気パターンまで直接磁気的に誘導される細胞であってよい。これらのいずれかの手順を用いて、細胞を表面に付着させ、生存したままにし得る。これらの手順は、表面上に細胞のパターンを生成し得る。例えば、
図15は、この方法で表面上に書かれた文字Nを示す。
【0080】
図14は、本開示のいくつかの実施形態による、細胞プリント技術を用いた表面上の細胞パターン形成の例を示す。最初は浮遊させた集合体を、プラスチック表面に誘導した。12時間後に、いくつかの細胞は、集合体の外へ遊走し、プラスチックに付着した。
【0081】
あるいくつかの実施形態は、リソグラフィーによるパターン形成を永久磁石と組み合わせてよい。例えば、小さい磁場パターンを用いる場合、均一なバックグラウンドの磁場に、大きい永久磁石または電磁石を用いてよい。表面は、重力の点で任意の方向に方向づけてよく、平坦でなくてよい。このことにより、磁性粒子の磁化が増加し、ナノ粒子、細胞および材料に対する力が増加し得る。
【0082】
図15は、本開示のある実施形態による細胞プリント技術を用いる表面上の細胞パターン形成の例を示す。細胞プリント技術を用いた磁気によりパターン形成したGFP発現HGBMの蛍光画像。左に向かって、組織培養プラスチック上に、Au−ファージ−MIO処理HGBM細胞を、組織培養プレートの表面にて特定の点に磁気誘導することにより文字Nが生じたことが観察できる。右に向かって、Nパターンの先端に付着されたHGBM細胞の顕微鏡写真を見ることができる(点線で起訴される)。
【0083】
本開示のいくつかの実施形態は、細胞を表面上のパターンまで誘引する帯電ワイヤまたは永久磁場を用いる表面上の細胞パターン形成を提供し得る。帯電ワイヤは、種々の技術により、表面の中もしくは表面上に創出してよいか、または表面の中もしくは表面上に貼り付けてよいか、または表面の上もしくは下の近傍に保持してよい。いくつかの実施形態において、表面上の導電性材料のリソグラフィーによるパターン形成を用いてワイヤを形成してよい。見本のパターンを
図16に示す。このようなワイヤにより生じる力のプロファイルの例を、
図17に示す。サファイア基板上のワイヤの試作を、その上の組織培養(生体試料としても知られる)ウェルとともに、
図18に示す。電流を発生させ、顕微鏡設定へ組み込むための装置とともに試作の写真を、
図19に示す。
図20は、ワイヤを通過して、細胞とMIOナノ粒子を含有するヒドロゲルとを誘引する磁場を創出する電流を示す。同様の効果を生じ得る磁場パターンを、バルク永久磁石のような永久磁石材料のパターン、磁気記録テープ上のパターンまたは磁気データ保存コンピュータハードドライブで用いるような材料のパターンを用いて生成してもよい。
【0084】
図16は、本開示の実施形態に従って、細胞の表面パターンを作製するための帯電ワイヤについての見本のリソグラフィーパターンのクローズアップを示す。50μmの尺度バーは、上の3つの形のみに当てはまる。
【0085】
図17は、本開示のいくつかの実施形態に当てはめることができる見本の磁力計算を示す。力のプロファイルは、ワイヤの1ミクロン上の2本の並行帯電ワイヤを横切る断面についての電流の二乗と磁気双極子モーメントについて標準化してよい。MIO含有ヒドロゲルおよび細胞は、力がゼロを横切る位置に誘引され得る。
【0086】
図18は、本開示の実施形態によるリソグラフィーによりパターン形成したワイヤについての試作のマイクロデバイス構成を示す。帯電ワイヤは、リソグラフィーの標準的な技術を用いてパターン形成した後に、金を電気めっきしてよい。ネガティブまたはポジティブのいずれのフォトレジストを用いてもよく、得られるパターンは、用いたマスクの反転である。図の左側に示すものは、リソグラフィーマスクの例である。右側は、リソグラフィーによりパターン形成した金ワイヤを有するサファイア顕微鏡スライドである。スライドの頂部には、プラスチック試料ウェルのアレイがある。サファイアは、基板としての良好な選択であり得る。なぜなら、これは、光学的に透明で、電気絶縁性で、熱伝導性で、光学的に光沢が出て、かつ局部加熱の際に破砕しにくいからである。
【0087】
図19は、本開示のいくつかの実施形態において有用な顕微鏡設定とマイクロチップデバイスとを示す。左側は、マイクロチップを有する顕微鏡を示す。右側は、チップのクローズアップを示し、電気接続およびプラスチック試料ウェルを示す。
【0088】
図20は、本開示の実施形態による、パターン形成マイクロデバイスを用いた神経幹細胞の操作および表面パターン形成を示す。C17.2マウス神経幹細胞は、ヒドロゲル内で48時間培養してよい。
図20Aに示すものは、電流が印加されていない。
図20Bは、4Aの電流を印加した場合にAuワイヤパターンに向かって移動した細胞集合体を示す。ここで、ワイヤは、細胞および培地のための容器を形成するプラスチックよりも下にあるので、細胞はワイヤと接触していない。ウェル中の細胞は、実験を行った48時間後にまだ生存可能であった。
【0089】
本開示のさらに別の実施形態は、
図21〜24に示すように、同じシステムおよび方法を用いて、細胞を含まないAu−MIO−ファージの表面上にパターン形成し得る。
【0090】
図21は、パターン形成された磁場を作製するための、帯電ワイヤを用いるAu−MIO−ファージのパターンの形成を示す。同様のパターンを、磁気記録テープでのような永久磁石、またはコンピュータハードドライブで用いるような固体磁石材料を用いて作製し得る。浮遊パターンも形成でき、操作できる。Au−MIO−ファージの勾配を、
図22に示すように、磁場における勾配の創出により形成してよい。
【0091】
図21は、本開示の実施形態による、パターン形成マイクロデバイスを用いた、細胞を含まないAu−MIO−ファージ材料の操作およびパターン形成を示す。ヒドロゲルパターン形成は、リソグラフィーによりパターン形成したAuワイヤに電流を印加することにより生じ得る。このことにより、ヒドロゲルは、ワイヤ間またはループの中央にある磁場の最大に向かって移動し得る。
図21Aおよび21Bはともに、最初のフレームでは電流が印加されていないことと、45秒の間隔で4.0Aまでの勾配で上昇し、最も右のパターンに示すようにヒドロゲルのパターンを生成する電流を順に示す。
【0092】
本開示の実施形態によると、磁場は、所望の効果に応じて、培養容器の底の表面から細胞を離昇させるか、または懸濁している細胞を収集するか、または細胞を表面まで引っ張るための強度および十分な強度の勾配を有し得る。細胞は、大量の培地中で浮遊するか、または気液界面に導かれることができ、ここでは表面張力により細胞は液体培地から離れない。細胞の位置を制御するために、細胞あたりの磁性材料の量ならびに磁場の強度および勾配は、パターン形成を妨げ得る細胞に対するその他の力を克服するのに十分であり得る。このことは、標準的な公式により予測される広範囲のパラメータをもとに達成できるが、パラメータは、本開示の具体的な実施形態に依存してよい。例えば、細胞の表面または浮遊でのパターン形成および操作のために、少なくとも0.01pg/細胞のマグネタイトが必要である。より多くの磁性材料を100μg/細胞まで用いることができ、これはより大きい力を生じ得る。より大きいかまたはより小さい磁化を有する材料は、それぞれより小さいかまたはより大きい濃度を必要とする。1G〜10
5G程度で.01G/cm〜10
5Gの磁場勾配の典型的な磁場を、用途に応じて用いてよい。最適条件を見出すための単純な実験を行うことができる。
【0093】
図22は、明視野顕微鏡写真(透過光)を用いて示す、本開示の実施形態による磁場勾配を用いるAu−MIO−ファージ勾配発生を示す(尺度バー、20μm)。この画像は、永久磁石をマイクロウェルの隣に配置することにより生じるヒドロゲル勾配に起因する透過光の変化を示し(図の下の矢印により示されるように、暗い領域でのより高い密度)、マイクロウェルでは、ヒドロゲル合成の一部としてAu−FeOナノ粒子溶液をファージ溶液に加えた。
【0094】
細胞は、高いヒドロゲル濃度の領域において自発的に濃縮してよく、そのことにより、
図23に示すように、ヒドロゲルを最初にパターン形成することが、細胞をパターン形成するための別の方法を提供してよい。ヒドロゲルは、ヒドロゲルを形成するかまたは磁性ナノ粒子を取り込む能力を著しく変更することなく、異なる種類のファージを用いて形成し得る。ファージは、RGD−4Cペプチドを発現するファージのように、細胞に優先的に結合する細胞特異的受容体とともに設計してよい。培養ウェルの下に2つの永久磁石を用いるある実施形態において形成されたヒドロゲルAu−MIO−RGD−4Cのパターンは、16時間インキュベートした黒色腫細胞(B16)のパターン形成を導き得る(上、受容体媒介)。fd−tetペプチドを発現するファージは、同様に強くは細胞と結合しないものであり得るので、Au−MIO−fd−tetヒドロゲルは、対照として働き得る(下、対照)。2つの永久磁石は、磁場が反対方向を指すように各ウェルの下に配置してよく、そのことにより磁石が互いに反発する。ヒドロゲルおよびナノ粒子は、ファージ上に提示された、細胞接着を媒介するインテグリン結合ペプチドモチーフにより細胞に取り込まれかつ/または細胞に付着してよい。このことにより、各磁石の近くの強い磁場の領域に細胞がより濃縮され得る(磁石間の細胞の間隙により示される)。これとは対照的に、対照ヒドロゲル(下)細胞は、マイクロウェル全体を覆い得る。
【0095】
図23は、本開示のいくつかの実施形態による、ヒドロゲルの磁場パターン形成を用いる受容体標的細胞パターン形成を示す。ヒドロゲルは、異なる種類のファージを用いて、ヒドロゲルを形成するかまたは磁性ナノ粒子を取り込む能力を著しく変更することなく形成し得る。ファージは、RGD−4Cペプチドを発現するファージのように、細胞に優先的に結合する細胞特異的受容体を用いて設計してよい。培養ウェルの下に2つの永久磁石を用いるこの場合に形成されたヒドロゲルAu−MIO−RGD−4Cのパターンは、16時間インキュベートした黒色腫細胞(B16)のパターン形成を導き得る(上、受容体媒介)。fd−tetペプチドを発現するファージは、同様に強くは細胞と結合しないので、Au−MIO−fd−tetヒドロゲルは、対照として働き得る(下、対照)。2つの永久磁石は、磁場が反対方向を指すように各ウェルの下に配置してよい(磁石は互いに反発する)。ヒドロゲルおよびナノ粒子が、ファージ上に提示された、細胞接着を媒介するインテグリン結合ペプチドモチーフにより細胞に取り込まれかつ/または細胞に付着するシステムにより、各磁石の近くの強い磁場の領域に細胞がより濃縮される(磁石間の細胞の間隙により示される)。これとは対照的に、対照ヒドロゲル(下)細胞は、マイクロウェル全体を覆った。
【0096】
ファージは、遺伝子送達ベクターとして働くように改変し得るので、ヒドロゲルのパターン形成は、
図24に示すように、遺伝物質のパターン形成された形質移入を導き得る。いくつかの実施形態において、アデノウイルス関連ウイルスファージ(AAVP)
38を用いて、優れた遺伝子送達ツールのためのAu−MIO−AAVPを形成してよい。AAVPとファージヒドロゲルとの組み合わせは、ナノ粒子の運命を追跡するために強力なツールであり得る。さらに、この組み合わせは、遺伝子翻訳が生じる場所を示し、多モードイメージング、磁気誘導および遺伝子/RNA送達の組み合わせのために示すことができる。より高い濃度のヒドロゲルを有する領域の細胞は、より高いレベルの形質移入を示すことができ、遺伝子のパターン形成された発現を生じる。このアプローチも、遺伝子サイレンシングツールに向かって誘導される小型RNAの送達と解釈してよい。この遺伝子送達能力は、既に論じた細胞パターン形成方法のいずれに組み込んでもよい。
【0097】
図24は、本開示の実施形態による、Au−MIO−AAVPを用いる磁気誘導遺伝子形質移入を示す。ここでは、KS1767細胞を、Au−MIO AAVP−RGD−4Cとインキュベートする。Au−MIO AAVP−RGD−4C(AAVP、アデノウイルス関連ウイルスファージ)
38は、ターゲティング特性、および優れた遺伝子送達ツールとしてのヒドロゲルの磁気誘導を有するファージベースのベクターの効率的な遺伝子形質導入を統合してよい。左のパネルは明視野画像であり、右は、GFP発現細胞の蛍光画像である。同じマイクロウェル内で、直線は、磁石が磁性ナノ粒子を保持するAu−MIO AAVP−RGD−4Cを濃縮した領域(永久磁石はウェルの下に配置される)と、より低い磁場があり、濃縮がない領域とを分ける境界を示す。より高い濃度のヒドロゲルを有する領域の細胞は、著しい形質移入レベルを示し得る(およそ6倍より大きい)。
【0098】
いくつかの実施形態は、従来の方法から有利に比較される結果をもたらし得る。例えば、磁気式浮遊による培養は、確立された3D細胞培養方法と比較して有利な結果をもたらし得る。通常の3D培養マトリクス製品は、BD,Inc.から商業的に入手可能なMatrigel(コピーライト)である。Matrigelは、通常、精製基底膜マトリクスからなり、マウスに由来し、3D細胞集合体の「代表的な存在」とみなされている
7。Matrigel中に分散された細胞は、十分な細胞遊走および分裂のための時間が経過した後に、著しい細胞間相互作用を有するより大きい多細胞構造のみを形成し得る。Matrigelマトリクスは、細胞外マトリクスおよびポリマーゲル/足場に基づく多くの確立された3D細胞培養モデルにおいて認識された困難性である
2、59高いレベルの回折、散乱、不透過率および自発蛍光も生じ得る。Matrigelは、ほとんどの細胞を培養するために望ましくない無血清条件を必要とすることと、高価な成長因子の補充を必要とすることを含むさらなる制限を示し得る。Matrigelで成長した組織は、マウスタンパク質が免疫応答を惹起し得るので、ヒトに導入できない。最後に、Matrigelを用いると細胞の空間的または時間的な操作が可能でないが、以下に示すように、このことは、磁気式浮遊を用いると簡単である。
【0099】
本開示は、あるいくつかの実施形態において、細胞と、該細胞内に配置されているかまたは細胞上に付着しているかまたは細胞に混入している複数のナノ粒子であって、その少なくとも1つのタイプが磁性であるナノ粒子と、複数の該ナノ粒子の少なくとも1つに力を印加する、帯電ワイヤおよび/または永久磁石により創出される磁場とを含むシステムを提供する。
【0100】
本開示は、あるいくつかの実施形態において、細胞と、該細胞内に配置されているかまたは細胞上に付着しているかまたは細胞に混入している複数のナノ粒子であって、その少なくとも1つのタイプが磁性であるナノ粒子と、帯電ワイヤまたは永久磁石により創出される磁場であって、複数の該ナノ粒子の少なくとも1つに力を印加し、該細胞を、液体培地中で懸濁してまたは気液界面で成長するように表面から離す磁場とを含むシステムを提供する。細胞は、次いで、懸濁しながら成長することが可能である。
【0101】
本開示は、あるいくつかの実施形態において、細胞と、該細胞内に配置されているかまたは細胞上に付着しているかまたは細胞に混入している複数のナノ粒子であって、その少なくとも1つのタイプが磁性であるナノ粒子と、帯電ワイヤまたは永久磁石により創出される磁場であって、複数の該ナノ粒子の少なくとも1つに力を印加し、該細胞を、液体培地中で懸濁してまたは気液界面で成長するように表面から離す磁場とを含むシステムを提供する。細胞は、次いで、懸濁しながら成長することが可能であり、磁場は、表面上の特定の場所に細胞をもたらすように変更されるので、いくつかの細胞がそこに付着する。磁場は、次いで、細胞が別の場所に付着してパターンを形成するように変更される。
【0102】
本開示は、あるいくつかの実施形態において、細胞と、該細胞内に配置されているかまたは細胞上に付着しているかまたは細胞に混入している複数のナノ粒子であって、その少なくとも1つのタイプが磁性であるナノ粒子と、帯電ワイヤまたは永久磁石により創出される磁場であって、複数の該ナノ粒子の少なくとも1つに力を印加し、該細胞を、特定のパターンで成長するように表面に向かって導く磁場とを含むシステムを提供する。
【0103】
本開示は、あるいくつかの実施形態において、ファージと、該ファージ内に配置されている複数のナノ粒子と、複数の該ナノ粒子の少なくとも1つに力を印加する、帯電ワイヤまたは永久磁石により創出される磁場とを含むシステムを提供する。
【0104】
本開示は、あるいくつかの実施形態において、ファージと、該ファージ内に配置されている複数のナノ粒子と、1または複数の導電性ワイヤとを含むシステムであって、1または複数の該ワイヤの少なくとも一部分が該ファージと接触しているシステムを提供する。
【0105】
本開示は、あるいくつかの実施形態において、ファージと、複数のナノ粒子と、1または複数の導電性ワイヤとを含む材料であって、1または複数の該ワイヤの少なくとも一部分が該ファージと接触している材料を準備するステップと、磁場を生じるように1または複数の導電性ワイヤの1または複数に電流を導通させるステップと、該磁場に応答して該材料が変更されることを可能にするステップとを含む、材料を加工する方法を提供する。
【0106】
本開示は、あるいくつかの実施形態において、複数の細胞を浮遊させる方法を提供する。この方法は、磁場を設けるステップを含んでよい。この方法は、複数の細胞の少なくともいくつかを磁場の中に浮遊させるステップであって、該複数の細胞が磁性ナノ粒子を含むステップも含んでよい。
【0107】
本開示は、いくつかの実施形態において、細胞を培養する方法も提供する。この方法は、複数の細胞を準備するステップを含んでよい。この方法は、磁場を設けるステップも含んでよい。この方法は、複数の細胞の少なくともいくつかを磁場の中に浮遊させるステップであって、該複数の細胞が磁性ナノ粒子を含むステップも含んでよい。この方法は、浮遊を、集合体を形成するために細胞成長を可能にするのに十分な時間維持するステップも含んでよい。
【0108】
本開示は、その他の実施形態において、細胞を操作する方法も提供する。この方法は、第1の複数の細胞を準備するステップを含んでよい。この方法は、磁場を設けるステップも含んでよい。この方法は、第1の複数の細胞の少なくともいくつかを磁場の中に浮遊させるステップであって、該第1の複数の細胞が磁性ナノ粒子を含むステップも含んでよい。この方法は、磁場を時間とともに変動させて、第1の複数の細胞の少なくとも第1の部分を操作するステップも含んでよい。
【0109】
本開示は、特定の実施形態において、ナノ粒子を調製する方法も提供する。この方法は、磁性ナノ粒子を含むヒドロゲルを準備するステップを含んでよい。この方法は、磁場を設けるステップも含んでよい。この方法は、ヒドロゲルを磁場にさらすステップも含んでよい。
【0110】
本開示は、さらに別の実施形態において、複数の細胞を浮遊させるためのシステムも提供する。このシステムは、磁場を含んでよい。このシステムは、磁場中に配置され、磁性ナノ粒子を含む複数の細胞も含んでよい。
【0111】
本開示のよりよい理解を促進するために、特定の実施形態の以下の実施例を示す。以下の実施例は、どのような様式でも、本開示の範囲全体を限定または規定するとは解釈されるべきではない。
【実施例】
【0112】
磁性ナノ粒子を含有するヒドロゲル集合体を、以下のようにして形成した。ヒドロゲルは、MIOナノ粒子を含めること以外は、記載されたナノ加工手順
39、40により作製した。金ナノ粒子溶液(50±8nm直径)を、通常のクエン酸塩還元
70手順に従って(クエン酸ナトリウム:塩化Au(III)の0.8:1.0のモル比;Sigma−Aldrich)調製した。金ナノ粒子溶液(吸光度
530nm=1.2〜1.5単位)をMIOナノ粉末(マグネタイトと明記される、多分散粒子サイズ<50nm;PVP(ポリビニルピロリドン)の界面活性剤で安定化;Sigma−Aldrich)と、0.3mg/mlの濃度まで混合することにより、MIO含有ヒドロゲルを調製した。ファージ希釈物を、ピコピュア(picopure)水(H
2O)中の10
9形質導入単位(TU)/μlで調製した。最後に、ファージ溶液、および金ナノ粒子と酸化鉄溶液を等容量で混合し、4℃にて終夜、ヒドロゲル形成のために放置した。実験的に用いる前に、それぞれの上清は、可視光領域での消光測定により証明されるように、ナノ粒子を含まないことが示され、データは、全ての金属ナノ粒子が、得られたヒドロゲルに取り込まれたことを示す。
【0113】
MIO含有ヒドロゲル中で培養した細胞を、以下のようにして磁気式に浮遊させた。表面付着細胞(およそ80%集密まで成長)を、培養細胞が利用可能な表面積(培養フラスコのサイズ)1cm
2あたり1μlのヒドロゲルで処理し、終夜インキュベートした。処理細胞をトリプシンおよびEDTAにより剥離した。トリプシンを、遠心分離により除去した。細胞を、組織培養ペトリ皿に入れた
39、40。ネオジム磁石を付着させた上部カバーを、直ちに配置した。細胞系統および用いた対応する培養培地は、ヒト膠芽腫由来LN−229またはU−251MG細胞(GFPおよびmCherry形質移入)および正常ヒト星状細胞(mCherry形質移入)を、10%胎仔ウシ血清(FBS)含有ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、およびピルビン酸ナトリウム2mM、グルタミン、ペニシリンおよびストレプトマイシンを補ったDMEM高グルコース10%FBS中でであった。C17.2マウス神経幹細胞は、ピルビン酸ナトリウム2mM、グルタミン、ペニシリンおよびストレプトマイシンを補った10%FBS含有DMEM高グルコースで培養した
71。
【0114】
図12に示すように、細胞生存能および用いた細胞数は、細胞を剥離した後に確認した。細胞を、生存能について、トリパンブルー排除を用いて確認し、標準的な血球計数器を用いて計数した。この同じ実験において、細胞集団の半分(およそ3×10
4)を移動させて、2D表面付着試料に播種し、残りの半分を播種して3D浮遊集合体を形成した。最後に、浮遊多細胞構造内の細胞数を、構造の推定容量(その形状およびサイズから)を単細胞の平均容量(およそ1.0nL)で除することにより推定した。
【0115】
図1は、4.7T、40cm Bruker Biospec MRI装置を用いて獲得した磁気共鳴画像を示す。ヒドロゲルは、撮像のために、12mlのプラスチックコニカルチューブに入れた。
【0116】
図4、7、8、12、13、14、15に示すように、Bosc、NHA(正常ヒト星状細胞)および以下のヒトHGBM細胞系統:LN229およびU251は、10%胎仔ウシ血清(FCS)を補ったダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で成長させた。形質移入およびレトロウイルス感染が記載された。それぞれレトロウイルスベクターpCXbおよびpCXp中のm−cherryおよびeGFPをBosc細胞に形質移入して、レトロウイルス含有上清を生成し、これを形質移入の48時間後に回収して、以前に記載されたようなNHA、NSCおよびGBM細胞の感染のために用いた。細胞を、感染の48時間後に選択培地:ブラストサイジン(mCherry)またはピューロマイシン(eGFP)中で処理し、維持して、蛍光タンパク質を安定的な様式で発現させた。
【0117】
ヒト膠芽腫細胞の多細胞集合体を、1%グルタルアルデヒド含有10mM PBS中で、磁気式浮遊の24時間後および8日後に固定した。これらの構造を、次いで、Formvarで予め被覆されたニッケルメッシュ網上に置き、炭素で蒸発させたものを、パラフィルム上の0.1%ポリ−L−リジン(Sigma Diagnostics)の滴上で5分間漂わせた。過剰の溶液を網から、網の端を濾紙に注意深く接触させることにより除去した。網は、いずれのステップでも完全に乾燥させないようにした。網を、パラフィルム上の試料の滴上で1時間漂わせた。過剰の流体を除去し、網を、次いで、蒸留水中の1%モリブデン酸アンモニウム含有0.02%BSA(pH7.0)の滴上で1分間漂わせた。過剰の流体を除去し、網を終夜乾燥させた。透過型電子顕微鏡画像を、AMT Advantage(Deben UK Limited、Suffolk、U.K.)デジタル電荷結合素子カメラシステムを取り付けた透過型電子顕微鏡(JEM−1010、JEOL)により獲得した。
【0118】
よって、本開示は、言及した目的および利点ならびに本開示において固有の目的および利点を達成するためにうまく適応されている。上記に開示される特定の実施形態は、実例となるだけである。なぜなら、本開示は、異なって、しかし本明細書の教示の利点を有する当業者に明らかな等価な様式で改変され、実施され得るからである。さらに、本明細書に示される構成または設計の詳細について、以下の特許請求の範囲に記載される以外の限定は意図しない。よって、上記で開示される特定の実例となる実施形態は、変更または改変してよく、すべてのそのような変形が、本開示の範囲および精神に含まれるとみなされることが明らかである。特に、本明細書に開示される全ての数値範囲(「約a〜約b」または等価であるが「およそa〜b(a to b)」または等価であるが「およそa〜b(a−b)」の形式)は、それぞれの数値範囲の累積集合(すべての部分集合の集合)に言及すると理解され、数値のより広い範囲内に含まれる全ての範囲を示す。また、特許請求の範囲での用語は、特許権者により明示的にそして明確に定義されない限り、それらの平易な通常の意味を有する。
【0119】
参考文献