特許第5775456号(P5775456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5775456水素および酸素の混合ガス発生装置およびそれを用いた内燃機関
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5775456
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】水素および酸素の混合ガス発生装置およびそれを用いた内燃機関
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20060101AFI20150820BHJP
   C25B 1/04 20060101ALI20150820BHJP
   C25B 11/10 20060101ALI20150820BHJP
   F02M 25/12 20060101ALI20150820BHJP
   C25B 15/02 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   C25B9/00 A
   C25B1/04
   C25B11/10 B
   F02M25/12 C
   C25B15/02 302
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-530755(P2011-530755)
(86)(22)【出願日】2010年9月10日
(86)【国際出願番号】JP2010005553
(87)【国際公開番号】WO2011030556
(87)【国際公開日】20110317
【審査請求日】2013年9月9日
(31)【優先権主張番号】特願2009-231942(P2009-231942)
(32)【優先日】2009年9月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510244514
【氏名又は名称】株式会社レガルシィ
(73)【特許権者】
【識別番号】509254535
【氏名又は名称】トラストハイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】柳原 伸光
(72)【発明者】
【氏名】今村 充生
【審査官】 川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−240152(JP,A)
【文献】 特開2007−330844(JP,A)
【文献】 特開2004−197211(JP,A)
【文献】 特開平11−256382(JP,A)
【文献】 特開2001−252663(JP,A)
【文献】 特開平08−215309(JP,A)
【文献】 特開2005−320416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/04, 9/00,15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、
該電源に電気的に接続され、予め設定した電圧異常時の電流または予め設定した温度異常時の電流に設定可能な電流設定手段と、その電流設定手段に指令を送る電流制御手段とを有するインバータと、
該インバータと電気的に接続され、該インバータから電圧が印加される陽極および陰極とを内部に有する電解槽と、
純水に予め所定の周波数の超音波振動を印加して製造され、該電解槽の内部に貯藏されるナノ水と、
該インバータは、該インバータから該電解槽の該陽極と該陰極とに実際に流れた電流の値を検出する電流検出手段と、
該電解槽内のナノ水の温度を検出する温度センサと該温度センサが検出したそのナノ水の温度を監視する温度監視手段とを備え、該電流検出手段が検出した電流を目標電流に保つように該ナノ水への該電圧の印加量の制御を行う水素酸素ガス発生装置であって、
前記インバータは、前記電流検出手段が該電解槽の該陽極と該陰極とにかかる電圧の異常を検知した際には、前記予め設定した電圧異常時の電流となるように電圧を制御し、該温度センサにより検出されたナノ水の温度が、前記ナノ水が水蒸気を発生する限界温度に達した際に、前記温度異常時の電流に設定するように前記電流制御手段に指令を送り、該電流制御手段は、該電流設定手段に指令を送って、前記予め設定した温度異常時の電流となるように電圧を制御する水素酸素ガス発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水素酸素ガス発生装置であって、該水素酸素ガス発生装置は内燃機関に接続され、該インバータは該内燃機関の出力軸の回転数に応じて、該回転数に応じた所定の目標電流値に切換えることを特徴とする水素酸素ガス発生装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水素酸素ガス発生装置であって、該陽極および該陰極は、イリジウムまたはプラチナ層を表面に有するチタン合金であることを特徴とする水素酸素ガス発生装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の水素酸素ガス発生装置であって、該陽極および該陰極のそれぞれは、長辺の縁と短辺の縁を有する形状であって、短辺の縁が該ナノ水の深さ方向となるように該電解槽に浸漬されていることを特徴とする水素酸素ガス発生装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の水素酸素ガス発生装置であって、該電解槽は、樹脂製であることを特徴とする水素酸素ガス発生装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の水素酸素ガス発生装置であって、
該電解槽は、
該電解槽の上蓋に発生する水素酸素ガスを集める集ガス口と、
前記集ガス口を囲むように配置される複数の衝立とを備え、
前記複数の衝立のうち隣接する衝立の間には、隙間を有することを特徴とする水素酸素ガス発生装置。
【請求項7】
燃料ガスを吸入して燃焼させる内燃機関であって、
請求項1から6のいずれか一項に記載した水素酸素ガス発生装置で発生した水素ガスと酸素ガスとを該燃焼前に該燃料ガスに混合して燃焼させることを特徴とする内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラウンガスたる水素および酸素の混合ガス(以下、「水素酸素ガス」とよぶ)の発生装置およびそれを用いた内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、さまざまな技術分野で、環境への配慮を重視した技術開発がなされている。特に、内燃機関など、化石燃料の燃焼を利用した技術分野では、COの排出量を削減することを目的とした技術開発が盛んである。たとえば、燃焼プロセスを持たない技術への転換により、COの排出量を削減することは一つの方法である。実用化されているハイブリッド車を含め、様々なタイプの発電・蓄電技術を利用する電気駆動の乗用車などはその例である。
【0003】
しかしながら、現在の技術水準では、燃焼プロセスを持たない技術への転換ができず、あくまで化石燃料の燃焼プロセスが不可避となる技術分野も存在する。たとえば、大きな駆動力を必要とする船舶や、大型自動車、ボイラなどである。このような技術分野では、排気されるガスに含まれる有毒ガスやCOガスの低減化により環境への配慮を実現することが考えられる。排気されるガスに含まれる有毒ガスやCOガスの低減化は、燃焼効率を上昇させて、燃焼プロセスを如何に完全燃焼に近づけるかの点に集約される。また、燃焼効率を上昇させることにより、必要な燃料も減るため、燃費も向上する。
【0004】
燃焼効率を上昇させる方法として、たとえば特許文献1に開示されるように水素酸素ガスを利用する方法がある。ここでは、一般に使用されている水の電気分解により発生する水素ガスと酸素の化学当量比を2:1として混合するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3131938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般に使用されている水の電気分解の原理を用いた水素ガスおよび酸素ガスの発生方法では、発生量には限界があり、水素酸素ガス装置で利用する場合には、燃焼が安定しやすい大型の定置式とせざるをえなかった。すなわち、負荷変動が多い駆動力源として水素酸素ガス装置を利用する場合には、従来の水の電気分解では安定的な水素酸素ガスの供給が困難であり、燃焼効率を上昇させて燃焼プロセスを完全燃焼に近づけることは困難であった。
【0007】
特に、従来の水素酸素ガス装置で水素酸素ガスを大量に発生させるには、100Vなどの高い電圧で高い電流を使用している。また、通電による熱で、水蒸気が多く発生する問題がある。乗用車などの車両や船舶などにおいては、低電流の状態で多量の水素ガスを発生させることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、低電流で水素ガスを発生させ、水蒸気の発生が少ない水素酸素ガス発生装置を提供することを目的としている。
【0009】
本願発明は、内燃機関での燃焼を完全燃焼に近づけるために水素酸素ガスを利用する際に、に安定的な水素酸素ガスの供給ができる水素酸素ガス発生装置を提供することを目的としている。
【0010】
本願発明は、電源と、該電源に電気的に接続されインバータと、該インバータと電気的に接続され、該インバータから電圧が印加される陽極および陰極とを内部に有する電解槽と、純水に予め所定の周波数の超音波振動を印加して製造され、該電解槽の内部に貯藏されるナノ水とを備える水素酸素ガス発生装置を提供することにある。
【0011】
本願発明の目的は、さらに、電源と、該電源に電気的に接続されインバータと、該インバータと電気的に接続され、該インバータから電圧が印加される陽極および陰極とを内部に有する電解槽と、純水に予め所定の周波数の超音波振動を印加して製造され、該電解槽の内部に貯藏されるナノ水とを備える水素酸素ガス発生装置を用いた内燃機関を提供することにある。
【発明の効果】
【0012】
従来の水素酸素ガス発生装置に比べ、本願発明による水素酸素ガス発生装置では、安定的に多量の水素酸素ガスを発生することができる。ひいては、内燃機関に適用した結果、化石燃料を使用した内燃機関においての燃焼効率を上昇させることができる。これにより、COガスの排出量が低減化できる。
【0013】
さらに、本願発明による水素酸素ガス発生装置では、低い電圧・電流で多くの水素酸素ガスを発生させることができる。そのため、装置全体を小型化でき、乗用車から大型自動車などの車両や船舶などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の水素酸素ガス発生装置を示した図である。
図2A】本発明の水素酸素ガス発生装置の電極構造の例を示した図である。
図2B】本発明の水素酸素ガス発生装置の集ガス部を示した図である。
図3】本発明の実施例1の水素酸素ガス発生装置の系統図である。
図4】本発明の実施例1水素酸素ガス発生装置のインバータの制御フローチャートを示した図である。
図5】本発明の実施例2の水素酸素ガス発生装置の系統図である。
図6】本発明の実施例2水素酸素ガス発生装置のインバータの制御フローチャートを示した図である。
図7】本発明の水素酸素ガス発生装置を利用した内燃機関の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施例1)
図1から図4を参照して、本発明の水素酸素ガス発生装置1について、説明する。図1は、本発明の水素酸素ガス発生装置を示した図である。図2Aは、本発明の水素酸素ガス発生装置の電極構造の例を示した図であり、図2Bは本発明の水素酸素ガス発生装置の集ガス部を示した図である。また、図3は、本発明の実施例1の水素酸素ガス発生装置の系統図である。図4には、インバータの制御フローチャートを示している。
水素酸素ガス発生装置1は、電源2と、インバータ3と、電解槽4と、水素酸素ガス供給管12とを備える。
【0016】
電源2は、電解槽4に電力を供給することができるものであれば、特に制限なく選択することができる。たとえば、電源2は24ボルトの電源とできる。電源2の陽極および陰極は、それぞれインバータ3を介して、電解槽4の陽極側電極板10と陰極側電極11a,11bとに接続されている。電源2の電圧は、インバータ3により、電圧を降下させる。たとえば、本実施例では24ボルトから12ボルトに降下させる。これにより、乗用車、船舶など移動型の乗物に使用することができる。
【0017】
電解槽4は、槽9を上蓋6で閉じる構造の容器である。上蓋6は、絶縁素材によるパッキン8を挟んで、槽9に取り付けられる。上蓋6は、ワッシャー付きボルト25に絶縁パッキン26を挟んで槽9に螺嵌される。これにより、電解槽4の内部で発生する超微粒子たる水素酸素ガスを外部に逃がさない構造となっている。また、電解槽4の内槽には特殊シリコーンを使用し、漏電を防ぐ構造となっている。槽9の各部分には、たとえばアクリル樹脂材を使用すれば内部で発生する熱を外に伝わらないようにすることができる。
【0018】
電解槽4の槽9には、電解液供給口7から電解液が注入され、槽9内に満たされる。電解液としては、いわゆるナノ水31を使用する。本願では、「ナノ水」は、超音波帯の振動を所定の時間だけ純水に印加して予め製造された水と定義する。本実施例では、たとえば36キロヘルツの周波数の超音波振動を24時間加え続けて製造したナノ水を使用した。
また、電解槽4の槽9の電解液中には、たとえば水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のような水酸化物を触媒として添加する。
【0019】
さらに、電解槽4の槽9の電解液中には、トルマリン32を添加してもよい。トルマリンは、たとえばドラバイトトルマリンであって、ある程度大きなものを採用する。マイナスイオンを発する効果が期待できる。たとえば、球体形状のものを採用することができる。これにより、電極への付着物を低減化することができる。
【0020】
電解槽4の電解液中には、電源2の陽極および陰極にそれぞれ接続されている陽極側電極板10と陰極側電極11とが浸漬されている。なお、図1には模式的に1対の陽極側電極板10と陰極側電極11とを示しているが、実際には、図2Aに示すように、陰極側電極板と陽極側電極板とを1つのセットとして、複数の電極のセットを電解液中に浸漬することが好ましい。すなわち、陽極側電極板10a,10bと陰極側電極11aと11bとで一定の間隔で交互に配置するような1セットの陽極側電極板10と陰極側電極11とを構成させる。このような電極セットを複数準備し、電解槽4内に浸漬させる。たとえば、6セットの電極を用いれば、24枚の電極となる。陽極側電極板10a,10bと陰極側電極11aと11bのそれぞれは、材料として、たとえば、強化ステンレス合金(SUS316),チタン合金などを使用することができる。さらに、チタン合金を使用する場合には、イリジウムを表面に蒸着したチタン合金、または表面にメッキ処理でプラチナの表面層を施したチタン合金など、イリジウムまたはプラチナ層を表面に有するチタン合金を使用することができる。ただし、これに制限されるものではない。
【0021】
また、陽極側電極板10a,10bと陰極側電極11aと11bのそれぞれは、長さLの長辺縁と長さDの短辺縁とを有する形状であって、短辺縁側が電解槽4の電解液の深さ方向となるように電解槽4内で電解槽に浸漬させるとよい。たとえば、長さD:長さLは1:2とすることができる。
【0022】
電解槽では、水の電気分解の原理にしたがい、電源2から電力を供給することにより、陽極側電極板10a,10bでは、陽極側電極板10aと10bと電解液とが反応して、水酸化物イオン(OH)を生成するとともに電子を受け取る。その電子は陰極側電極11a,11bに向けて流れる。陰極側電極11a,11bでは、水素イオン(H)が陰極側電極11の電子を受け取って、水素分子(H)となる。電解液としては、単なる純水ではなく、水分子のクラスターが崩れて水分子単体となっているナノ水を用いることにより、電解液中で、水素イオン(H)および水酸化物イオン(OH)を生成しやすくなる。また、トルマリンを用いることにより、陰極側電極11a,11bでの電子の放出が促進される。さらに、トルマリンを球体化・粒状化することで、電極への付着物を低減化し電極の持続性を高めることができる。
【0023】
図2Bに示すように、電解槽4の上蓋6には、電解槽4で発生した水素酸素ガスを搬送する水素酸素ガス供給管12が接合されている。水素酸素ガス供給管12は集ガス口12aで上蓋6とから内部に連通している。電解槽4の内部側にあたる集ガス口12a付近の上蓋6には、衝立6a,6b,6c,6dが、集ガス口12aの周りに集ガス口12aを取り囲むように、上蓋6に対して鉛直方向に延在するように取り付けられる。衝立6a,6b,6c,6dのそれぞれの間には、数ミリ程度の隙間を設ける。発生した水酸素ガスは、この隙間を通って、衝立6a,6b,6c,6dで画定される空間を介して、集ガス口12aから水素酸素ガス供給管12に搬送される。衝立6a,6b,6c,6dにより、電解槽4の電解液である水の温度が上昇することで発生する水蒸気はブロックされ、発生した水酸素ガスのみが衝立6a,6b,6c,6dで画定される空間内に入る。水素酸素ガス供給管12への水酸素ガスの流入を防ぐことができる。
【0024】
さらに、水素酸素ガス供給管12には水抜きバルブ13が配置され、衝立6a,6b,6c,6dで画定される空間内に僅かに入り込む水蒸気が、水素酸素ガスとともに水素酸素ガス供給管12内に搬送されてしまった場合でも、水として水素酸素ガス供給管12から除去できる。
【0025】
電解槽4に上記のとおり、ナノ水をとトルマリンを用いることにより、水素発生量が格段に向上する。このため、電源2からの通電量に対する水素発生量が大きくなり、通電量の変化量に対する水素発生量の変動も同時に大きくなってしまう。水素発生量の変動が大きくなると、燃料ガス内に供給される水素酸素ガスの割合が変動し、燃焼効率が安定しない。そこで、電源2からの通電量をインバータ3により制御する必要が生じる。インバータ3により、電解槽4内に流れる実際の電流の量を所定の量に保ち、電解液の温度の上昇を抑えて、安定した水素酸素ガスの発生を図る。
【0026】
インバータ3は、電流設定手段3a、電流検出手段3b、電流監視手段3c、電流制御手段3e、温度監視手段3dおよび電圧監視手段3fを備え、電解液に流す電流を制御する。電流設定手段3aは電源2に接続され、変換された入力電圧が印加される。電流設定手段3aは、電解槽4の陽極側電極板10a,10bと陰極側電極11a,11bとに接続されている。電流設定手段3aは、陽極側電極板10a,10bと陰極側電極11a,11bとに、電流を流すとともに、所定の電流値の目標電流に設定する。インバータ3から陽極側電極板10と陰極側電極11a,11bとに実際に流れた電流の値は、電流検出手段3bにより検出される。検出された電流は、電流監視手段3cにより制御数値に変換される。一方、電解槽4には、温度センサ4aが取り付けてあって、電解槽4の温度が検出される。温度センサ4aにより検出された温度は、温度監視手段3dにより制御用数値に変換される。電圧監視手段3fは、電源2のインバータ3に入力される前の一次側電圧(電源2からインバータ3へ入力される電圧)を検出し、それを制御用数値に変換する。
【0027】
インバータ3のシーケンスにつき、図3を参照して説明する。図3は、本発明の水素酸素ガス発生装置1のインバータ3のフローチャートを示した図である。まず、電流設定手段3aにより、設定電流をゼロとなるように電圧を設定する(S11)。その後、陽極側電極板10a,10bと陰極側電極11a,11b間の電圧を印加して電解液に電流を流し始める。電圧監視手段3fにより、その電圧監視を開始する。電源2からインバータ3にかかる電圧に異常がなければ温度監視(S13)へ移行し、電圧に異常があれば予め設定した電圧異常時の電流に設定するように、電流制御手段3eに指令を送る(S17)。指令を受けた電流制御手段3eは、電流設定手段3aに対し、予め設定した電圧異常時の電流に設定するように指令を送る。これにしたがって、電流設定手段3bは、電圧異常時の電流に設定する。
【0028】
続いて、温度監視(S13)へ移行する。まず、温度センサ4aの温度を検出する(S13)。温度監視(S13)により、電解槽4の温度が限界温度に達していれば、温度異常として、予め設定した温度異常時の電流に設定するように、電流制御手段3eに指令を送る(S18)。指令を受けた電流制御手段3eは、電流設定手段3aに対し、予め設定した温度異常時の電圧に設定するように指令を送る。これにしたがって、電流設定手段3bは、温度異常時の電圧に設定する。ここで限界温度とは、内部の電解液の蒸発が始まる温度であり、水であれば水蒸気の発生が始まる温度である。限界温度を越えないように電流を制御する。
【0029】
温度センサ4aの検出した温度が限界温度に達していなければ、電流監視(S14)へ移行する。設定電流がゼロとなるように電圧を設定した後(S11)、電圧を上昇させて、電流を流し始める。電流監視(S14)では、この電流量を監視する。陽極側電極板10a,10bと陰極側電極11a,11b間の電圧を上昇させると、電気分解が生じるまでは電流は僅かにしか上昇しない。電気分解とともにある時点から電流が急激に増加する。電流検出手段3bにより実際に測定された電流値が、目標電流よりも大きい場合には電流を低下させるべく電圧を下げるように電流制御手段3eに指令を送る(S15)。逆に、電流検出手段3bにより実際に測定された電流値が目標電流よりも小さい場合には、電流を上昇させるべく、電圧を上昇させるように電流制御手段3eに指令を送る(S16)。
【0030】
指令を受けた電流制御手段3eは、その指令に応じて電流を上昇させるように電流設定手段3aに対し指令を送る。これにしたがって、電流設定手段3aは、指令に応じた電流に設定する。電流検出手段3bにより実際に測定された電流の値が、目標電流の範囲内にある場合には、設定電流をそのまま維持するように電流制御手段3aに指令を送るか、またはそのままの状態を保つ。
【0031】
上記の制御ステップにおいて、各ステップは、所定のタイミングで常時繰返される。目標電流は、電解槽4の大きさ、電解液の量によって、予め決定される。たとえば、目標電流が8.0アンペアとなるように設定する、設定電流をゼロとした後(S11)、電圧を上昇させて電流を流し始めると、水素酸素ガスが発生し始めた時点から電流が急激に上昇する。これに併せて、電流制御手段3eが実際に電解液に負荷される電流が一定の目標電流8アンペアとなるように制御する。たとえば、入力電圧の印加タイミングを変化させて電流値が一定の値となるように制御したり、入力電圧を電圧値を変化させて制御するなどの方法がとれる。たとえば、印加タイミングをパルス状とすることで電圧デューティを変化させることもできる。これにより、電流検出手段3bが検出した電流を目標電流に保つように、ナノ水への該電圧の印加量の制御を行うことができる。
【0032】
ナノ水を利用した場合の効果は表1のとおりである。表1は、電解液としてナノ水,純粋および市販イオン水を使用した場合の水素酸素ガスの発生量を比較したものである。電解液としてナノ水,純粋および市販イオン水を使用した際に、電極にかかる目標電流が8.0ボルトになるようにして、インバータ3により電圧デューティを変化させた際に、発生する水素酸素ガスの量を比較した。これから、ナノ水を使用した場合には、電圧デューティが最も低い場合に最も多い水素酸素ガスを発生していることがわかる。ナノ水を使用することで、特に水素酸素ガスの発生量が多くなることを示している。

表1
【0033】
さらに、本実施例では、陰極として、1.5ミリメートル厚のチタン合金板にイリジウムを0.5ミリメートル厚で蒸着させたものを使用した。表2は、ステンレス電極を使用した場合の例との比較である。これから、チタン合金板にイリジウムを蒸着させた場合のほうが、水素酸素ガスの発生量が多いことがわかる。イリジウムを蒸着させたチタン合金電極を使用することで、特に水素酸素ガスの発生量が多くなることを示している。

表2
【0034】
図7は、本発明の水素酸素ガス発生装置1を利用した内燃機関21の説明図である。内燃機関20と吸気口16との間に連通する燃料ガス管19には、水素酸素ガス管12が結合されている。水素酸素ガス発生装置1で発生させた水素酸素ガスは、水素酸素ガス管12を経由して燃料ガス管19に至り、燃料ガスと混合されて内燃機関20に吸入される。これにより、吸気口16から吸入された燃料ガスに水素酸素ガスが混合されて、水素酸素ガスの含有比率が高まって、燃焼効率が向上するとともに、排気ガス21から有害ガスの除去をすることができる。そして、燃焼効率を上昇させることにより、必要な燃料ガスが削減可能であって、燃費も向上する。内燃機関の例としては、一般乗用車から大型自動車、船舶などのエンジンや、ボイラ、焼却炉等が挙げられる。
【0035】
本願の水素酸素ガス発生装置1で発生させた水素酸素ガスを内燃機関で用いた性能評価は、次のとおりである。表3は水素酸素ガス発生装置を用いた内燃機関の性能比較例である。内燃機関として6000ccクラスエンジンを搭載した船舶において、水素酸素ガス発生装置1を搭載させたものと非搭載のものとにおいて、燃料(ガソリン)の消費量を比較した。船舶は岸壁に停泊させて、1500(rpm)のアイドリング状態で比較実験を行った。この実験では、水素酸素ガス発生装置を用いた場合に、毎分1000ccの水素酸素ガスを混合している。この実験からも、水素酸素ガス発生装置1を使用した内燃機関において、燃費が向上していることがわかる。これは、燃焼効率が上昇したことを意味する。

表3
【0036】
(実施例2)
図5図6図7を参照して、別の実施例としての本発明の水素酸素ガス発生装置1について、説明する。実施例1と実施例2は基本的に同じであるが、その違いは、内燃機関20の状態をインバータ3の制御に取り込む点にある。図5は、本発明の実施例2の水素酸素ガス発生装置1の系統図である。図6には、その場合のインバータの制御フローチャートを示している。インバータ3の内部以外の水素酸素ガス発生装置1は、実施例1と同様である。以下、実施例1と異なる部分について説明し、実施例1と同じ部分の説明は省略する。
【0037】
図6に示すように、内燃機関には出力軸があって、その出力軸の回転数を回転センサにより検出する。回転センサによる回転数の検出には、いろいろな方法が考えられ、たとえば、オルタネータの回転数を検出する方法でも良い。
【0038】
インバータ3には、電流設定手段3a、電流検出手段3b、電流監視手段3c、電流制御手段3e、温度監視手段3dおよび電圧監視手段3fに加え、内燃機関動力部の回転数の監視を行う回転数監視手段3gを備えている。電流設定手段3a、電流検出手段3b、電流監視手段3c、電流制御手段3e、温度監視手段3dおよび電圧監視手段3fの動作は、実施例1と同じである。図6におけるフローチャートにおいて、S21からS28までは、S11からS18と対応し、各動作は同じである。
【0039】
実施例2で回転数監視手段3gは内燃機関の出力軸があって、その出力軸の回転数に応じて、目標電流を変更する。フローチャートでは、温度監視(S23)の後に、出力軸の回転数に応じて、目標電流を切り替える変更するステップを有する(S24)。たとえば、0から800(rpm)においては目標電流を0.5アンペアに設定し、800から1500(rpm)においては目標電流を8.0アンペアに設定し、1500(rpm)を越えた場合には目標電流を8.0アンペアから20.0アンペアに設定する。切り替えるべき目標電流値のグループは、回転数に応じた所定の目標電流値として、予め決定しておく。それぞれの目標電流に設定した後における電流監視のステップ(S24,S25,S26)へ移行する。
【0040】
すなわち、電流監視(S24)で、電流量を監視する。陽極側電極板10a,10bと陰極側電極11a,11b間の電圧を上昇させると、電気分解が生じるまでは電流は僅かにしか上昇しない。電気分解とともにある時点から電流が急激に増加する。電流検出手段3bにより実際に測定された電流値が、目標電流よりも大きい場合には電流を低下させるべく電圧を下げるように電流制御手段3eに指令を送る(S25)。逆に、電流検出手段3bにより実際に測定された電流値が目標電流よりも小さい場合には、電流を上昇させるべく、電圧を上昇させるように電流制御手段3eに指令を送る(S26)。指令を受けた電流制御手段3eは、その指令に応じて電流を上昇させるように電流設定手段3aに対し指令を送る。これにしたがって、電流設定手段3aは、指令に応じた電流に設定する。電流検出手段3bにより実際に測定された電流の値が、目標電流の範囲内にある場合には、設定電流をそのまま維持するように電流制御手段3aに指令を送るか、またはそのままの状態を保つ。制御ステップにおいて、各ステップは、所定のタイミングで常時繰返される点も実施例1と同じである。目標電流は、電解槽4の大きさ、電解液の量によって、予め決定される。たとえば、回転数が1000(rpm)の場合には、目標電流が8.0アンペアとなるように設定する(S29)。電圧を上昇させて電流を流し始めると、水素酸素ガスが発生し始めた時点から電流が急激に上昇する。これに併せて、電流制御手段3eが実際に電解液に負荷される電流が一定の目標電流8.0アンペアとなるように制御する。制御の方法も実施例1と同様で、たとえば、入力電圧の印加タイミングを変化させて電流値が一定の値となるように制御したり、入力電圧を電圧値を変化させて制御するなどの方法がとれる。たとえば、印加タイミングをパルス状とすることで電圧デューティを変化させることもできる。
【0041】
これにより、内燃機関の最適の状態の水素ガスを発生させることができるとともに、水蒸気を発生させる温度上昇に使われる無駄な電力のしようを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本願発明による水素酸素ガス発生装置は、内燃機関を含め燃焼プロセスを有する装置に広く適用することができる。特に、低い電圧・電流で十分な水素酸素ガスを発生させられるため、車両・船舶の内燃機関に適用することができる。
【0043】
この出願は2009年9月10日に出願された日本国特許出願第2009−231942からの優先権を主張するものであり、その内容を引用してこの出願の一部とするものである。
【符号の説明】
【0044】
1 水素酸素ガス発生装置
2 電源
3 インバータ
4 電解槽
10 陽極側電極板
11 陰極側電極板


図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7